従来技術の熱源装置では、負荷端末の運転に伴って湯水を供給すべく加熱手段を動作させた際に、負荷端末において消費される熱エネルギー量が加熱手段の動作に伴って発生する熱エネルギー量よりも小さい場合に発生する余剰の湯水を貯留手段に貯留し、熱エネルギーの浪費を防止する構成とされている。そのため、従来技術の熱源装置の多くは、省エネルギーの観点から、加熱手段の動作を最小限に抑制するために貯留手段に所定温度以上の湯水が満杯となるまで貯留されていることを条件として加熱手段の動作を停止させる構成とされている。従って、従来技術の熱源装置は、負荷端末において消費される熱エネルギー量が加熱手段の動作によって発生する熱エネルギー量以上となり、余剰の熱エネルギー量が発生しない場合であっても加熱手段の動作が停止する構成とされていた。
上記したように、従来技術の熱源装置は、負荷端末において大きな熱エネルギー量の消費がある場合であっても貯留手段に高温の湯水を貯留する余裕がないと加熱手段の動作が停止し、負荷端末への湯水の供給が滞ってしまうという問題があった。
ここで、従来技術の熱源装置では、加熱手段としてエンジンや燃料電池のような装置を採用し、これらの装置において発生した排熱を利用して湯水を加熱する構成を採用したものが多数存在する。このような加熱手段は、暖機運転を行うなどせねばならず、起動直後のエネルギー効率が低いものが多い。そのため、前記のような加熱手段を採用した熱源装置において十分なエネルギー効率を確保するためには、加熱手段の起動や停止の頻度を抑制することが望ましい。しかし、従来技術の熱源装置は、貯留手段に貯留されている高温の湯水の残量に応じて熱源装置が起動、停止する構成であるため、貯留手段に貯留されている湯水の使用状況等によって加熱手段が頻繁に起動や停止を繰り返し、エネルギー効率が低下する可能性が高いという問題があった。
そこで、上記した問題を解決すべく、本発明は、加熱手段の起動や停止の頻度が低く、エネルギー効率の高い熱源装置の提供を目的とする。
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、液体を加熱する加熱手段と、当該加熱手段において発生した熱エネルギーを液体を介して貯留する貯留手段と、前記加熱手段において加熱された液体を介して熱エネルギーの供給を受けて動作する負荷端末と、制御手段とを具備し、貯留手段に貯留されている液体を外部に排出する排出動作モードと、加熱手段において所定温度に達するまで加熱された液体を貯留する貯留動作モードと、加熱手段を動作させつつ、当該加熱手段の動作に伴って加熱された液体を負荷端末に供給する負荷動作モードとを含む複数の動作モードから一又は複数の動作モードを選択して動作可能であり、制御手段が、過去における熱負荷の変動に基づいて将来の熱負荷の変動を予測する予測動作を行うと共に、前記貯留動作モードの完了後に行われる排出動作モードにおける排出予定量に基づいて貯留予定量を設定し、当該貯留予定量に基づいて貯留動作モードにおける目標貯留量を設定するものであり、以下の条件(1)および(2)を満足することを条件として目標貯留量調整動作を行い、目標貯留量を前記貯留予定量よりも少なく設定することを特徴とする熱源装置である。
(1) 貯留動作モードの完了時を基準とする所定の期間内において負荷動作モードによる動作が行われることが予測される。
(2) (1)の負荷動作モードにおいて本来であれば負荷端末に供給される予定の液体を負荷端末に供給せず貯留手段に貯留すると仮定した場合に、貯留手段においてエネルギーの貯留限界を超えるものと予測される。
上記したような構成の熱源装置では、貯留手段に対して排出動作モードにおける排出予定量に基づいて設定された貯留予定量だけ貯留されていると、加熱手段の動作に伴って高温の液体が余剰に発生しても貯留手段に貯留できない可能性がある。そのため、貯留手段に高温の液体を貯留する余裕がない場合であって、負荷動作モードによる熱エネルギーの消費があると予測されていたにもかかわらず、実際のエネルギー消費量が予測よりも少ない場合は、加熱手段を動作させても高温の液体を貯留できず、熱エネルギーを浪費してしまう可能性がある。従って、貯留動作モードの完了後に所定温度以上の液体をさらに貯留する余裕がない場合であって、負荷動作モードによる熱エネルギーの消費量が予測よりも少なかったり、負荷動作モードによる動作が行われない場合は、熱エネルギーの浪費を最小限に食い止めるべく加熱手段を停止せざるを得ない。
ここで、上記したように、一般的に使用されている加熱手段の多くは、起動や停止を繰り返すとエネルギー効率が低下する傾向にある。そのため、熱源装置におけるエネルギー効率を改善するためには、貯留動作モードの完了後において負荷動作モードでの動作が行われると想定される場合に、仮にこの負荷動作モードでの動作によって消費される熱エネルギー量が予測よりも少なくても加熱手段の起動や停止の頻度が最小限となるように制御されることが望ましい。
そこで、かかる知見に基づき、本発明の熱源装置は、貯留動作の完了時を基準とする所定の期間内に負荷動作モードによる熱エネルギーの消費が想定される場合に、目標貯留量調整動作を行い、貯留動作モードの完了時における目標貯留量を排出動作モードでの排出予定量に基づいて設定される貯留予定量よりも少なく設定する構成とされている。そのため、貯留手段に高温の液体を貯留した後に行われる予定であった負荷動作モードが行われなかったり、この負荷動作モードで実際に消費される熱エネルギー量が予定よりも少ない場合であっても、加熱手段の動作によって発生した熱エネルギーを液体を介して貯留手段に貯留しておくことができ、エネルギー効率の低下を阻止できる。
また、上記したように、本発明の熱源装置は、貯留動作モードの完了後に行われる予定であった負荷動作モードの有無や負荷動作モードでの消費エネルギーの大小にかかわらず加熱手段の起動や停止の頻度を最小限に抑制できる。そのため、本発明の熱源装置は、加熱手段の起動や停止に伴うエネルギーロスが少なく、エネルギー効率が高い。
また、同様の知見に基づいて提供される請求項2に記載の発明は、液体を加熱する加熱手段と、当該加熱手段において発生した熱エネルギーを液体を介して貯留する貯留手段と、前記加熱手段において加熱された液体を介して熱エネルギーの供給を受けて動作する負荷端末と、制御手段とを具備し、加熱手段において所定温度に達するまで加熱された液体を貯留する貯留動作モードと、当該貯留動作モードを経て貯留手段に貯留された液体を外部に排出する排出動作モードと、加熱手段を動作させつつ、当該加熱手段において加熱された液体を負荷端末に供給する負荷動作モードとを含む複数の動作モードから一又は複数の動作モードを選択して動作可能であり、制御手段が、過去における熱負荷の変動に基づいて将来の熱負荷の変動を予測する予測動作を行うと共に、前記貯留動作モードの完了後に行われる排出動作モードにおける排出予定量に基づいて貯留予定量を設定し、当該貯留予定量に基づいて貯留動作モードにおける目標貯留量を設定するものであり、以下の条件(1)および(2)を満足することを条件として目標貯留量調整動作を行い、目標貯留量を前記貯留予定量よりも少なく設定することを特徴とする熱源装置である。
(1) 排出動作モードの開始前までに負荷動作モードでの動作が開始されることが予測される。
(2) (1)の負荷動作モードにおいて本来であれば負荷端末に供給される予定の液体を負荷端末に供給せず貯留手段に貯留すると仮定した場合に、貯留手段においてエネルギーの貯留限界を超えるものと予測される。
かかる構成によれば、貯留手段に高温の液体を貯留した後に行われる予定であった負荷動作モードが行われなかったり、この負荷動作モードで実際に消費される熱エネルギー量が予定よりも少ない場合であっても、加熱手段の動作によって発生した熱エネルギーを液体を介して貯留手段に貯留しておくことができる。
また、本発明の熱源装置は、予測に反して負荷動作モードが行われなかった場合であっても、この負荷動作モードで負荷端末に供給されるはずであった液体を貯留手段に貯留することができる。従って、本発明の熱源装置は、予測に反して負荷動作モードによる動作が中止された場合であっても加熱手段の動作を継続させることができ、加熱手段の起動や停止に伴うエネルギーロスを最小限に抑制できる。
ここで、上記したように、加熱手段として採用可能なものには、起動直後のエネルギー効率が低く、ある程度運転を継続しないと十分なエネルギー効率を達成できないものがある。そのため、この種の加熱手段を採用した熱源装置では、加熱手段の起動や停止の頻度がなるべく少ないことが望ましい。
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項3に記載の発明は、加熱手段が所定の予備運転の後に所定のエネルギー効率に到達するものであり、目標貯留量調整動作が、加熱手段の起動から停止までの期間における平均エネルギー効率が所定の基準エネルギー効率を超えるまで加熱手段を動作させたと仮定した場合、当該加熱手段の動作に伴って発生すると想定される所定温度の液体の量として調整貯湯量を設定し、貯留予定量から前記調整貯湯量に相当する量を減少させることによって目標貯留量を設定する動作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置では、加熱手段を起動して湯水の加熱を開始した後、加熱手段におけるエネルギー効率がある所定の基準エネルギー効率に達するまでの間は少なくとも加熱手段の動作を継続させることができる。そのため、本発明の熱源装置は、加熱手段の起動や停止に伴うエネルギーロスが殆ど発生せず、エネルギー効率が優れている。
ここで、上記した熱源装置では、目標貯留量調整動作を行うことにより目標貯留量を設定する構成とされているが、貯留手段の貯留容量に対して貯留予定量が少ない場合は、目標貯留量の調整を行わないまま加熱手段が動作しても、これにより加熱された湯水を貯留手段に貯留できることがある。このような場合は、目標貯留量を調整しなくても加熱手段において加熱された液体をむやみに放出してしまうといった不具合が起こらない。
一方、貯留予定量が少ない場合は、排出動作モードに備えて用意しておくべき所定温度の液体の貯留量に対して目標貯留量の調整によって減少する貯留量の割合が増えるため、負荷動作モードが予定通りに行われると、目標貯留量が排出動作モードにおいて必要とされる高温の液体の量(排出予定量)に比べてかなり少なくなる。そのため、このような場合は、湯水の不足量を補うべく排出動作モードの開始前や開始後に加熱手段を起動して高温の液体を貯留手段に補充する必要が生じるが、この補充速度が排出動作モードにおける液体の排出速度に比べて遅いと排出動作モードの途中で高温の液体が不足してしまう可能性がある。すなわち、貯留予定量が貯留手段の貯留容量と同等あるいは貯留容量に近い場合は、不意に負荷動作モードが行われないこととなった場合のエネルギー効率の低下が懸念され、貯留予定量が貯留手段の貯留容量に比べて十分少ない場合は、目標貯留量調整動作に伴う高温の液体の貯留量不足が懸念される。
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項4に記載の発明は、貯留予定量が貯留手段の貯留容量を基準として所定の範囲内であることを条件として目標貯留量調整動作が行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置は、貯留予定量が貯留手段の貯留容量を基準として所定の範囲内にあり、目標貯留量の調整を行わないまま加熱手段が動作すると加熱された液体が放出され、エネルギーロスが発生すると想定される場合に限って目標貯留量が調整される。そのため、本発明の熱源装置は、貯留予定量が貯留手段の貯留容量に近い場合であって、予測されていた負荷動作モードによる動作が行われない場合であっても加熱手段を動作させることができ、エネルギー効率の低下を防止することができる。また、本発明の熱源装置は、貯留予定量が貯留手段の貯留容量に比べて十分少ない場合は目標貯留量の調整を行わないまま加熱手段が動作しても加熱手段において発生した余剰の熱エネルギーを液体を介して貯留手段に貯留しておくことができる。従って、本発明の熱源装置は、貯留予定量の多少にかかわらず加熱装置において発生した熱エネルギーを有効利用できる。
上記したように貯留予定量が貯留手段の貯留容量に近い場合は、排出動作モードで排出されると想定される貯留予定量に比べて目標貯留量が少なくても、排出動作モードでの動作開始前あるいは動作開始後に加熱手段を動作させて高温の液体を貯留手段に補充すれば目標貯留量調整動作に伴う高温の液体の貯留量不足を解消できる可能性が高い。また逆に、貯留予定量が貯留手段の貯留容量に比べて十分少ない場合は、排出動作モードで排出されると想定される貯留予定量に比べて目標貯留量を少なく設定すると、排出動作モードにおいて高温の液体が不足してしまう可能性がある。本発明の熱源装置は、貯留予定量が貯留手段の貯留容量に近い場合に限って目標貯留量調整動作を行い、目標貯留量を貯留予定量よりも少なく設定するものであるため排出動作モードの際に高温の液体が不足するといった不具合が発生しない。
請求項5に記載の発明は、目標貯留量調整動作が、条件(1)において行われると予測されている負荷動作モードでの動作に伴って発生すると想定される熱エネルギー量が所定の調整基準エネルギー量以上であることを条件として行われる動作であり、調整基準エネルギー量が、前記負荷動作モードにおいて本来であれば負荷端末に供給されるべき液体が貯留手段に導入されたと仮定した場合に、当該液体の導入に伴って貯留手段の外部に排出される液体が持つ熱エネルギー以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱源装置である。
上記した構成の熱源装置では、予測に反して負荷動作モードによる動作が行われないこととなった状態で、負荷動作モードで使用されるはずであった液体を貯留手段に導入してもエネルギー損が発生しない。従って、本発明によれば、予測に反して負荷動作モードによる動作が行われないこととなっても、加熱手段の動作を継続させ、これにより発生した熱エネルギーを有効利用できる。
請求項6記載の発明は、加熱手段が、以下の条件(1)および(2)のうち(1)のみを満足することを動作禁止条件とし、以下の(2)を満足することを条件として動作が許可されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱源装置である。
(1) 貯留手段に貯留されている所定温度以上の液体の残量が所定量以上である。
(2) (1)の状態において負荷動作モードでの動作開始要求があり、当該動作開始要求に伴って負荷動作モードでの動作を開始すると仮定した場合に、負荷端末に供給される液体の熱エネルギー量が所定の解除基準エネルギー量を超えるものと想定される。
また、同様の知見に基づいて提供される請求項7に記載の発明は、液体を加熱する加熱手段と、当該加熱手段において発生した熱エネルギーを液体を介して貯留する貯留手段と、前記加熱手段において加熱された液体を介して熱エネルギーの供給を受けて動作する負荷端末と、制御手段とを具備し、加熱手段において所定温度に達するまで加熱された液体を貯留手段に貯留する貯留動作モードと、貯留手段に貯留されている液体を外部に排出する排出動作モードと、加熱手段を動作させつつ、当該加熱手段において加熱された液体を負荷端末に供給する負荷動作モードとを含む複数の動作モードから一又は複数の動作モードを選択して動作可能であり、制御手段が、過去における熱負荷の変動に基づいて将来の熱負荷の変動を予測する予測動作を行うものであり、加熱手段が、以下の条件(1)および(2)のうち(1)のみを満足することを動作禁止条件とし、以下の(2)を満足することを条件として動作が許可されることを特徴とする熱源装置である。
(1) 貯留手段に貯留されている所定温度以上の液体の残量が所定量以上である。
(2) (1)の状態において負荷動作モードでの動作開始要求があり、当該動作開始要求に伴って負荷動作モードでの動作を開始すると仮定した場合に、負荷端末に供給される液体の熱エネルギー量が所定の解除基準エネルギー量を超えるものと想定される。
本発明の熱源装置では、貯留手段に貯留されている所定温度以上の液体の残量が所定量を越えている状態で加熱手段が動作しても、加熱手段において加熱された高温の湯水を貯留手段に貯留できず、熱エネルギーを浪費することとなる可能性があるため、所定温度以上の液体の残量が所定量以上であることを加熱手段の動作禁止条件としている。ここで、上記したように、加熱手段において加熱された湯水は、貯留手段に貯留される以外に、負荷端末に供給される場合もある。そのため、本発明の熱源装置は、負荷動作モードで作動する場合であっても、これにより消費される熱エネルギー量がある程度のエネルギー量を超える場合には、貯留手段への所定温度以上の液体の流入量が減少したり殆ど流入しなくなるものと想定される。
かかる知見に基づき、本発明の熱源装置では、負荷動作モードで動作することが予測され、これにより消費される熱エネルギー量が所定の解除基準エネルギー量を超えると想定される場合に上記した動作禁止条件を解除して加熱手段を動作させる構成としている。従って、本発明の熱源装置は、貯留手段に所定温度以上の液体を貯留する余裕がない状態であっても熱エネルギーを浪費することなく加熱手段を動作させることができ、負荷動作モードによる動作を継続できる。
上記したように、本発明の熱源装置は、貯留手段に所定温度以上の液体を貯留する余裕がない場合であっても、負荷動作モードでの動作により消費される熱エネルギー量が解除基準エネルギー量を超えるものと想定されることを条件として加熱手段の動作を継続させることができる。そのため、本発明によれば、加熱手段の起動、停止の頻度を最小限に抑制し、これに伴うエネルギーロスを低減できる。
また、本発明の熱源装置は、負荷動作モードにおいて消費される熱エネルギー量が解除基準エネルギー量を超える場合、すなわち負荷端末における熱エネルギーの需要が高いと想定される場合における加熱手段の起動、停止の頻度が少ない。そのため、本発明の熱源装置では、負荷動作モードでの動作時に貯留手段に貯留されている所定温度以上の液体の多少にかかわらず負荷端末に加熱手段において加熱された液体が殆ど途切れることなく供給される。従って、本発明によれば、負荷端末の使用感を損なうことなく動作可能な熱源装置を提供できる。
上記請求項6又は7に記載の熱源装置において、解除基準エネルギー量は、加熱手段を作動させることによって発生する熱エネルギー量であることが望ましい。(請求項8)
請求項1乃至8のいずれかに記載の熱源装置において、加熱手段は、排熱を利用して湯水を加熱するものであってもよい。(請求項9)
かかる構成によれば、エネルギー効率に優れた熱源装置を提供できる。
本発明によれば、加熱手段の起動や停止の頻度が低く、エネルギー効率の高い熱源装置を提供できる。
続いて、本発明の一実施形態である熱源装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の熱源装置である。熱源装置1は、湯水を貯留する貯留タンク2(貯留手段)を備えた貯留型の熱源装置であり、貯留タンク2に、給水・給湯系統3および貯留・暖房系統5を接続した構成となっている。また、貯留型熱源装置1は、湯水や熱媒体の加熱制御等の一連の動作を制御する制御手段6を具備している。
貯留タンク2は、湯水や不凍液等の熱媒体を貯留可能なものであり、本実施形態では湯水が貯留されている。貯留タンク2は、内径がDで高さがAの円筒形状をした筒体である。貯留タンク2は、熱媒体を介して熱エネルギーを貯留する熱エネルギーの貯留手段として機能する。
貯留タンク2は、熱源装置1の設置直後等を除けば、通常湯水で満杯の状態として使用されるものである。貯留タンク2は、底部に設けられた入水口10から湯水を導入することにより頂部側に溜まっている湯水を出水口12から押し出すことができる。貯留タンク2内の湯水は、底部に設けられた出水口18から排出され、貯留タンク2の外部に配された加熱手段24等で加熱され、頂部の入水口19から貯留タンク2に戻る。そのため、貯留タンク2内に貯留される湯水は、貯留タンク2の頂部側から底部側に向かう方向に低温となる温度成層を形成する。
貯留タンク2の側方には、内部に貯留されている熱媒体の温度を直接的あるいは間接的に検知する温度センサ4(温度検知手段)が上下方向に4つ設置されている。温度センサ4は、貯留タンク2に貯留されている熱媒体の温度を所定容量毎に検知可能な位置に設置されており、熱媒体の温度を検知する温度検知手段として機能すると共に、貯留タンク2内に貯留されている所定の温度の熱媒体の容量を検知する容量検知手段としても機能する。すなわち、貯留タンク2内には湯水の温度成層が形成されるため、例えば温度センサ4a,4bによって検知された湯水の温度がa度であり、温度センサ4cによって検知された湯水の温度がb度(a>b)であり、貯留タンク2の頂部から温度センサ4bまでの高さをA1とした場合、貯留タンク2内にはa度以上の湯水が貯留タンク2の頂部から温度センサ4bまでの容量である(D/2)2×π×A1に相当する容量だけ貯留されていることとなる。
貯留タンク2は、上記したように底部側に入水口10と出水口18とを有し、頂部側に出水口12と入水口19を有する。入水口10および出水口12には、給水・給湯系統3が接続されており、出水口18および入水口19には貯留・暖房系統5が接続されている。
給水・給湯系統3は、図1に示すように、給水配管7と、貯留タンク2の頂部側に接続された給湯配管8とから構成されている。給水配管7は、外部の給水源から湯水を供給するものであり、貯留タンク2の底部側に設けられた入水口10に接続されている。給水配管7の中途には、入水温度検知手段11が設置されている。また、給湯配管8は、貯留タンク2の頂部に設けられた出水口12に接続された配管である。給湯配管8は、貯留タンク2内に貯留されている湯水を給湯栓13に向けて供給するための配管である。給湯配管8の中途には、給湯栓13における出湯量を検知するための給湯量検知センサ15が設けられている。
貯留・暖房系統5は、貯留循環流路16と負荷循環流路17とによって構成されている。貯留循環流路16は、貯留タンク2の底部に設けられた出水口18と頂部に設けられた入水口19とを繋ぐ配管であり、出水口18から吸い出した湯水を入水口19側に戻す循環流路である。すなわち、貯留循環流路16は、出水口18側から入水口19側に向けて湯水が流れる流路である。貯留循環流路16は、湯水の流れ方向上流側、すなわち出水口18側から順に循環ポンプ20、加熱手段24、補助熱源21、貯湯温度センサ22、分配弁23および貯湯流量センサ25が配された構成を有する。貯留循環流路16は、出水口18から循環ポンプ20に至る貯留上流管路26と、循環ポンプ20から分配弁23に至る貯留中流管路27と、分配弁23から貯留タンク2の入水口19に至る貯留下流管路28とに大別される。
循環ポンプ20は、湯水を貯留循環流路16の上流側から吸い込み、下流側(補助熱源21側)に向けて湯水を排出するポンプである。また、補助熱源21は、貯留循環流路16内を流れる湯水を加熱するためのものであり、例えば従来公知の給湯装置等を採用することができる。補助熱源21は、湯水の加熱能力が加熱手段24よりも高く、主として貯留タンク2に貯留されている高温の湯水の量が必要量よりも多い場合に使用されるものである。
加熱手段24は、ガスエンジンや燃料電池等のような発電デバイス等の作動に伴って発生する排熱を利用して湯水を加熱するものやヒートポンプ等が採用されている。加熱手段24は、暖機運転等の予備運転を必要とし、所定のエネルギー効率を発揮するまでに所定の期間を要する。すなわち、加熱手段24は、起動以後の平均エネルギー効率が所定のレベルに達するまでに所定の期間を要する。従って、加熱手段24は、起動や停止を繰り返すよりも起動後所定の期間が経過するまで運転を継続させる方が平均エネルギー効率が高い。
加熱手段24の動作は制御手段6により制御されており、所定の条件を満たした際に動作する構成とされている。さらに具体的には、加熱手段24は、基本的には貯留タンク2に高温の湯水が所定量以上貯留されていることを条件として動作を停止する構成とされている。すなわち、貯留タンク2内に高温の湯水が十分貯留されている場合は、加熱手段24の動作に伴って排熱が発生し、この排熱により湯水を加熱しても、この湯水を貯留タンク2に貯留することができず、熱エネルギーの浪費に繋がる可能性が高い。そのため、本実施形態の熱源装置1では、貯留タンク2に高温の湯水が所定量以上貯留されている場合は、基本的に制御手段6が加熱手段24を停止させる構成とされている。
一方、熱源装置1において、貯留タンク2に既に所定温度の湯水が所定量だけ貯留されている場合は、所定温度以上の湯水をこれ以上貯留できない場合や、加熱手段24において加熱された湯水と貯留タンク2に貯留されている湯水との置換が起こるとエネルギー的に損をするものと想定される。すなわち、貯留タンク2に既に所定温度の湯水が所定量だけ貯留されている場合は、貯留タンク2に高温の湯水を貯留しておく余裕がなく、加熱手段24を動作させて高温の湯水を発生させてもエネルギー損が発生するおそれがある。しかし、貯留タンク2に高温の湯水を貯留する余裕がない場合であっても、負荷端末30が運転を行う場合であって、負荷端末30に単位時間当たりに供給すべき湯水の量が加熱手段24によって単位時間当たりに加熱可能な湯水の量以上である場合はエネルギー損が発生しない。そのため、加熱手段24は、貯留タンク2に高温の湯水が所定量以上貯留されている場合であっても、負荷端末30において消費される熱エネルギー量が加熱手段24の加熱能力よりも大きいことを条件として動作を継続する。換言すれば、加熱手段24は、単位時間当たりに負荷端末30において消費される所定温度以上の湯水の消費量が、単位時間当たりに加熱手段24によって所定温度以上に加熱可能な湯水の量よりも多ければ、貯留タンク2に貯留されている高温の湯水の量、すなわち貯留タンク2に貯留されている熱エネルギー量の大小にかかわらず動作を継続する。
貯湯温度センサ22は、補助熱源21および加熱手段24において加熱された湯水の温度を検知するものである。また、分配弁23は、貯留循環流路16内を流れる湯水を貯留タンク2側に戻る湯水と、負荷循環流路17側に向かう湯水とに分配するためのものである。貯湯流量センサ25は、分配弁23よりも湯水の流れ方向下流側に配されている。貯湯流量センサ25は、分配弁23を通過し、貯留タンク2側に戻る湯水の量を検知するために設置されたものである。
負荷循環流路17は、負荷往き管路31と、負荷戻り管路32とを有し、貯留循環流路16を構成する貯留中流管路27と組み合わさって循環流路を形成したものである。負荷往き管路31は、負荷端末30に対して湯水を供給する管路であり、貯留中流管路27の下流側に配された分配弁23に接続されている。負荷戻り管路32は、負荷端末30から排出される湯水が流れる管路であり、貯留中流管路27の循環ポンプ20よりも上流側に接続されている。負荷循環流路17は、貯留中流管路27内を流れ、分配弁23において分配された湯水が流れ、負荷端末30において熱エネルギーを放出した湯水を貯留中流管路27に配された循環ポンプ20よりも上流側に戻す循環流路である。
制御手段6は、熱源装置1の動作全般を司るものであり、CPUを中心として構成される。制御手段6は、CPUに加えて、RAM、ROM、I/Oポート、および、アナログのセンサ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、あるいは、生成されたデジタル制御信号をアナログ制御信号に変換するD/A変換回路などを備えている。制御手段6は、温度センサ4(4a〜4d)や入水温度検知手段11、貯湯温度センサ22の検知温度や、給湯量検知センサ15や貯湯流量センサ25の検知流量、スイッチの切換信号等を参照し、循環ポンプ20や補助熱源21を動作させるものである。制御手段6は、制御に用いる各種の判別基準値を予めROMに格納しており、CPUで上記した各検知手段の検知信号を随時参照し、所定のプログラムに従って処理を行う。
熱源装置1は、貯留タンク2内に高温の湯水を貯留する貯留動作(貯留動作モード)と、給湯栓13から湯水を排出する給湯動作(排出動作モード)と、負荷端末30に対して湯水を供給する暖房動作(負荷動作モード)とを行うことができる。熱源装置1は、貯留動作、給湯動作、暖房動作の各動作を単独で行うことも、複合させて行うこともできる。以下、熱源装置1が貯留動作、給湯動作、暖房動作を行う場合の湯水の流れについて説明する。
熱源装置1が貯留動作を単独で行う場合、制御手段6は、分配弁23の開度調整を行い、貯留循環流路16内を流れる湯水が負荷往き管路31側へ流れ込むのを防止する。制御手段6は、分配弁23の開度調整とほぼ同時に循環ポンプ20を起動し、貯留タンク2内の湯水を底部に設けられた出水口18から貯留循環流路16の貯留上流管路26に吸い出すと共に加熱手段24を起動する。これに伴い、貯留タンク2底部から吸い出された湯水は加熱手段24において加熱され、貯留タンク2の頂部側に戻される。
ここで、貯留動作において貯留循環流路16における湯水の流れは緩やかである。さらに、加熱手段24において加熱された湯水は、貯留タンク2内の湯水に対して十分高温であり、温度差を有する。そのため、貯留動作を行うと、加熱手段24において加熱された高温の湯水によって構成される高温層Hと、貯留タンク2内に残留している低温の湯水によって構成される低温層Lとがごく僅かな混合層Mを挟んで上下方向に層状に蓄積される。これにより、貯留タンク2の内部には、底部から頂部に向けて高温になる温度成層が形成される。
貯留動作が進行すると、貯留タンク2の頂部側に蓄積される高温層Hの容量が徐々に増加していく。制御手段6は、貯留タンク2に設置された温度センサ4a〜4dの検知温度に基づいて高温層Hの容量が所定量Pに達したかを確認する。さらに具体的には、例えば貯留タンク2の頂部から温度センサ4bが設置された位置までの空間に貯留される湯水の量が所定量Pに相当する場合、制御手段6は、温度センサ4bの検知温度が高温層Hの湯水の温度であることを条件として貯留タンク2内に高温の湯水が所定量Pだけ貯留されたものと判断する。制御手段6は、貯留タンク2内における高温層Hの蓄積量が所定量Pに達すると循環ポンプ20および補助熱源21の動作を順次停止し、貯留動作を完了する。
続いて、熱源装置1が給湯動作を行う場合の動作について説明する。熱源装置1が給湯動作を行う場合は、上記した貯留動作によって予め貯留タンク2内に貯留されている湯水が排出される。さらに具体的には、給湯動作を行う場合、熱源装置1には給水配管7および入水口10を介して外部の給水源から貯留タンク2の底部に低温の湯水が供給される。これに伴い、貯留タンク2内に貯留されている湯水が上方側に押し上げられ、頂部側に貯留されている高温層Hを構成する湯水が出水口12を介して給湯配管8側に排出される。貯留タンク2から排出された高温の湯水は、給湯配管8を通過し、給湯栓13から排出される。
熱源装置1が暖房動作を単独で行う場合、制御手段6は、負荷循環流路17内を流れる湯水が貯留下流管路28側に流れ込まないように分配弁23の開度調整を行う。これにより、負荷往き管路31、負荷戻り管路32および貯留中流管路27からなる循環流路が形成される。
分配弁23の開度調整が完了すると、制御手段6は、循環ポンプ20を起動して負荷循環流路17内に湯水を流す。その後、制御手段6は、加熱手段24を起動する。負荷循環流路17内を流れる湯水は、加熱手段24において加熱され、負荷端末30に供給される。
熱源装置1は、上記した貯湯動作、給湯動作および暖房動作をそれぞれ単独で行うことができると共に、必要に応じてこれらの動作を複合させて行うことができる。さらに具体的には、熱源装置1は、貯湯動作と給湯動作を組み合わせて行う貯・給複合動作、貯湯動作と暖房動作とを複合的に行う貯・暖複合動作、給湯動作と暖房動作とを複合させて行う給・暖複合動作、貯湯動作と給湯動作と暖房動作とを複合させて行う貯・給・暖複合動作を行うことも可能である。
貯・給複合動作を行う場合、熱源装置1は、上記した貯湯動作と給湯動作とを平行して行う。すなわち、貯・給複合動作を行う場合、貯留タンク2には、給水配管7を介して外部の給水源から低温の湯水が導入される。貯留タンク2の頂部側に貯留されている高温の湯水は、貯留タンク2の底部から湯水が導入されることによって出水口12から押し出される。出水口12から押し出された高温の湯水は、給湯配管8を介して給湯栓13に供給され排出される。
一方、貯・給複合動作が開始されると、制御手段6は、負荷往き管路31方向への湯水の流れを阻止するように分配弁23を調整する。その後、制御手段6は、循環ポンプ20と加熱手段24とを起動する。これにより、貯留タンク2の底部に存在する低温の湯水が吸い出され、加熱された状態となって貯留タンク2の頂部側に戻される。
熱源装置1が貯・暖複合動作を行う場合、制御手段6は、上記した貯留動作や暖房動作を単独で行う場合と同様に循環ポンプ20と加熱手段24を起動して湯水の加熱を行う。ここで、貯・暖複合動作を行う場合は、分配弁23の開度調整が貯留動作や暖房動作を単独で行う場合と異なる。すなわち、貯・暖複合動作を行う場合、制御手段6は、分配弁23の開度調整を行うことにより、補助熱源21において加熱された高温の湯水の一部を負荷往き管路31を介して負荷端末30に供給し、残部を貯留下流管路28を介して貯留タンク2に供給する。ここで、貯留タンク2に対して供給される湯水と、負荷端末30に対して供給される湯水の分配比は、分配弁23の開度調整により調整される。
また、給・暖複合動作では、上記した給湯動作と暖房動作とが平行して行われる。すなわち、給・暖複合動作では、給水配管7を介して貯留タンク2の底部側に低温の湯水が導入される。貯留タンク2の頂部側に存在する高温の湯水は、貯留タンク2の底部側に流入した低温の湯水によって押し上げられ、頂部側に設けられた出水口12から排出される。
一方、給・暖複合動作では、上記した暖房動作の場合と同様に分配弁23が貯留下流管路28側に湯水が流れ込まないように調整され、貯留中流管路27および負荷往き管路31側に開いた状態とされる。その後、循環ポンプ20および補助熱源21が起動される。これにより、負荷端末30に補助熱源21において加熱された高温の湯水が供給される。
貯・給・暖複合動作では、上記した貯湯動作、給湯動作、暖房動作が平行して行われる。貯・給・暖複合動作では、給水配管7を介して外部の給水源から貯留タンク2の底部に湯水が導入された低温の湯水により貯留タンク2の頂部に蓄積された高温の湯水が押し出され、給湯栓13から排出される。一方、貯・給・暖複合動作が開始されると、制御手段6は、循環ポンプ20および加熱手段24を起動する。これと平行して、制御手段6は、分配弁23の開度調整を行い、貯留中流管路27から貯留下流管路28側および負荷往き管路31側に流入する湯水の分配比を調整する。これにより、補助熱源21において加熱された湯水の一部が負荷端末30に供給されると共に、残部が貯留タンク2側に供給される。
熱源装置1は、制御手段6が過去における動作モードの推移に基づいて将来における動作状況を予測する予測動作を行う。さらに具体的には、制御手段6は、過去の熱源装置1の動作状況を給湯動作、暖房動作および貯湯動作に分けて記憶し、この記憶情報に基づいて将来の熱源装置1の動作を予測する。
ここで、本実施形態の熱源装置1は、給湯動作において単位時間当たりに消費される熱エネルギー量が、暖房動作において単位時間当たりに消費される熱エネルギーよりも大きい。加熱手段24の動作によって発生する熱エネルギー量は、暖房動作において単位時間当たりに消費される熱エネルギーに相当する程度であり、給湯動作において消費される熱エネルギー量よりも小さい。そのため、熱源装置1は、給湯動作が行われると予測される場合は、基本的にこれに先立って上記した貯留動作や、貯留動作を含む複合動作を行うことにより給湯動作において必要とされる熱エネルギーを貯留タンク2に予め貯留しておき、暖房動作を行う際は加熱手段24を動作させて発生する熱エネルギーを使用する構成とされている。そして、突発的な給湯動作があった場合のように貯留タンク2に貯留されている高温の湯水が給湯動作に必要な量に達しない場合は、上記した貯・給複合動作や貯・給・暖複合動作のように給湯動作と平行して貯留動作を行う構成とされている。
上記したように、本実施形態の熱源装置1は、制御手段6によって行われる予測動作の結果に基づいて加熱手段24の動作を動作させたり、貯留タンク2に貯留する湯水の貯留量の調整を行うことにより、エネルギー効率の改善を図っている。しかし、熱源装置1の実際の使用形態が制御手段6による予測と異なる状態となると、加熱手段24がむやみに起動や停止を繰り返すこととなったり、高温の湯水が過剰に発生することとなり、エネルギー効率が低下してしまうおそれがある。従って、熱源装置1において加熱手段24の起動や停止に伴うエネルギーロスを最小限に抑制するためには、暖房動作が予想に反して行われなくなった場合であっても加熱手段24の動作を継続させ、これによって発生した熱エネルギーを有効利用することが望ましい。
熱源装置1は、予想に反して暖房動作が行われなくなった場合に加熱手段24の動作を継続させると、暖房動作に使用されるべき高温の湯水が発生する。そのため、予想に反して暖房動作が行われないこととなった場合にもエネルギー効率を高レベルに維持するためには、本来であれば暖房動作に使用されるはずであった高温の湯水を貯留タンク2に貯留した場合であってもエネルギー的に損失が発生しない状態としておく必要がある。すなわち、暖房動作が予想に反して行われなくなった時に、貯留タンク2内に所定温度以上の湯水が大量に存在する場合は、加熱手段24の動作に伴って発生した湯水を貯留タンク2に貯留できず、大きなエネルギーロスに繋がる可能性が高い。そのため、給湯動作に先駆けて暖房動作が開始されると予測される場合は、給湯動作に備えて行われる貯湯動作において貯留タンク2に貯留される湯水の量を減少させておくことが望ましい。かかる知見に基づき、熱源装置1では、給湯動作の開始前までに暖房動作が開始されることを条件の一つとして貯湯動作における目標貯湯量Tを調整する目標貯湯量調整動作を行う構成とされている。
熱源装置1は、貯留タンク2に加熱手段24で加熱された湯水を貯留する余裕がない場合は、基本的に加熱手段24を停止させる構成とされている。すなわち、熱源装置1では、貯留タンク2に所定温度以上の湯水が所定量以上貯留されていることを加熱手段24の動作禁止条件としている。さらに具体的には、熱源装置1は、基本的に貯留タンク2が所定温度以上の湯水で満杯となっていることを条件として加熱手段24を作動させない構成とされている。
しかし、上記したように加熱手段24は、起動直後におけるエネルギー効率が比較的低く、所定のエネルギー効率を達成するためにはある程度の時間に渡って運転を継続する必要がある。そこで、熱源装置1では、貯留タンク2が所定温度以上の高温の湯水で満たされている場合であっても、暖房動作が行われることを条件として上記した動作禁止条件を解除して加熱手段24を作動させる禁止条件解除動作を行う。以下、本実施形態の熱源装置1に特有の動作である目標貯留量調整動作と、禁止条件解除動作について詳細に説明する。
(目標貯留量調整動作)
制御手段6は、上記したようにして行われる予測動作の結果に基づいて貯留動作における目標貯湯量Tを設定する。さらに詳細には、制御手段6は、貯留動作の完了後に行われる予定の給湯動作において貯留タンク2から排出される排出予定量(以下、給湯予定量Qと称す)に基づいて貯湯予定量Sを設定し、この貯湯予定量Sに基づいて目標貯湯量Tを設定する。さらに具体的には、例えば給湯動作において、貯留タンク2から排出される湯水をそのまま給湯栓13に供給する場合は、給湯予定量Qを貯湯予定量Sと同一としたり、給湯動作において予想以上に湯水が使用される場合を想定して給湯予定量Qを貯湯予定量Sよりも多く設定する構成とすることが可能である。また、例えば、貯留タンク2から排出される湯水を外部の給水源から供給された低温の湯水と混合して湯温調整した後に給湯栓13から湯水を出す構成とした場合は、この混合比率や給水温度等を考慮し、給湯予定量Qにあわせて貯湯予定量Sの調整(目標貯留量調整動作)が行われる。
目標貯湯量Tは、加熱手段24が起動や停止を繰り返すことによるエネルギー効率の低下を防止すべく、予想動作により暖房動作が行われるものと予想したにもかかわらず暖房動作が行われなかった場合にも加熱手段24をむやみに停止しなくてもよいように設定される。
さらに具体的に説明すると、予測動作による予測結果が下記(1)および(2)に示す条件の双方を満たす場合に目標貯湯量調整動作を行う。
(1) 給湯動作の開始前までに暖房動作が開始されることが予測される。
(2)(1)で予測される暖房動作において本来であれば負荷端末30に供給される予定の高温の湯水を負荷端末30に供給せず貯湯タンク2に貯留すると仮定した場合に、貯湯タンク2においてエネルギーの貯留限界を超えるものと予測される。
すなわち、上記(2)は、(1)で予測される暖房動作を行ったと仮定した場合に、給湯動作の開始前までに消費されると想定される湯水が持つ熱エネルギー量が、当該湯水を貯留タンク2に導入することにより貯留タンク2の外部に排出される湯水が持つ熱エネルギー量(調整基準エネルギー量)以上であることを条件とするものである。
さらに具体的に説明すると、図2に示すパターンAや図3に示すパターンBに示す動作パターンのように、給湯動作の開始までの間に暖房動作が開始されないものと想定される場合は、上記(1)の条件に合致しない。この場合、パターンAでは暖房動作自体が行われないため、予期せぬ暖房動作の停止に伴って高温の湯水が余剰に発生するといった不具合が起こらない。また、パターンBのように暖房動作が行われる場合は、給湯動作の開始後であれば予想動作による予想に反して暖房動作が行われなくなった際に加熱手段24を動作させても、これによって発生した湯水を貯留タンク2に貯留することができる。すなわち、加熱手段24の動作に伴って貯留タンク2に所定温度以上の湯水が溜まる貯湯速度が給湯動作に伴う湯水の排出速度よりも遅い。そのため、給湯動作中に不意に暖房動作が行われなくなっても、加熱手段24の運転を継続させ、これにより発生する湯水を貯留タンク2に貯留できる。従って、上記(1)の条件に合致しないパターンAやパターンBに示すような動作予測がなされた場合、制御手段6は、目標貯湯量Tを給湯予定量Qに基づいて導出される貯湯予定量Sに設定する。
一方、図4に示すパターンCや図5に示すパターンD、図6に示すパターンEのように、給湯動作の開始前に暖房動作が開始されるものと想定される場合は、上記(1)の条件を満たす。これらの場合は、予測に反して暖房動作が行われなかったり、暖房動作において消費される熱エネルギー量が予測よりも少ない状態となると、加熱手段24の運転を継続することにより余剰の熱エネルギーが発生することとなる。
この場合、本来であれば暖房動作に使用されるべきであった加熱された湯水が発生する。ここで、加熱手段24の動作に伴って発生した余剰の湯水を貯留タンク2に貯留されている湯水と置換してもエネルギー損が発生しない場合は、加熱手段24において発生した熱エネルギーを湯水を介して貯留タンク2に貯留しておける。さらに詳細には、加熱手段24によって加熱された単位体積当たりの湯水が持つ熱エネルギーq1に対して、この湯水を貯留タンク2に導入した際にこれと置換される湯水の持つ単位体積当たりの熱エネルギー量q2が小さい場合(q1>q2)は、加熱手段24によって加熱された湯水を貯留タンク2に貯留しても熱エネルギーの浪費に繋がらない。すなわち、暖房動作において負荷端末30に供給されると想定される湯水の量が、貯留タンク2の容量から貯留予定量を差し引いた量よりも少ない場合は、前記したようなエネルギーの浪費が発生しない。
しかし、上記(2)のように、暖房動作において給湯動作の開始前までに消費されると想定される熱エネルギー量が、貯留タンク2に湯水を介して貯留可能な熱エネルギー量以上である場合、上記したパターンA,Bの場合と同様に目標貯湯量Tを貯湯予定量Sに設定すると熱エネルギーの浪費が起こる可能性が高い。すなわち、図4〜図6に示すパターンC〜Dのように熱源装置1が動作すると予測される場合、暖房動作の予測が外れ、暖房動作が予測通り行われた際に負荷端末30に供給される予定の湯水を負荷端末30に供給せず、貯留タンク2に貯留すると仮定した場合に、エネルギー損が発生するものと予測される。そこで、上記(1)および(2)の双方の条件に当てはまる場合、制御手段6は、目標貯湯量Tを貯湯予定量Sよりも調整量(調整貯湯量)αだけ少ない(S−α)に設定する目標貯留量調整動作を行う。
ここで、暖房動作の開始から給湯動作の開始までの間における暖房動作の予想継続時間をt1、この予想継続時間t1に渡って加熱手段24を動作させた際に発生する所定温度の湯水の量をβ、加熱手段24が起動してから停止するまでの平均エネルギー効率が所定の基準エネルギー効率を超えるのに要する時間をt2、この時間t2に渡って加熱手段を動作させた際に発生する所定温度の湯水の量をγとした場合、調整量αおよび加熱手段の動作時間tは、下記の条件(A),(B)に基づいて設定される。
(A) β≧γの場合 α=β,t=t1
(B) β<γの場合 α=γ,t=t2
上記したように、制御手段6は、条件(1),(2)に合致することを条件として目標貯湯量Tを貯湯予定量Sから調整量αだけ減じた(S−α)に設定する。その結果、暖房動作が予測通りに行われる場合は、貯湯動作に伴って貯湯量が図4〜図6に実線で示すように(S−α)となるまで増加する。その後、給湯動作が開始されると、制御手段6は、必要に応じて先の貯湯動作において用意できていない調整量αに相当する所定温度の湯水を補充すべくしばらくの間に渡って加熱手段24を動作させる。
一方、暖房動作が予定通りに行われない場合は、貯湯動作によって発生する高温の湯水が貯留タンク2に流入すると共に、暖房動作が行われると予想されていた時間帯に本来であれば負荷端末30において消費されるべきであった高温の湯水が貯留タンク2に流入する。これにより、図4〜図6に二点差線で示すように貯留タンク2における高温の湯水の貯留量が徐々に増加する。暖房動作の予定時間全般に渡って暖房動作が行われない場合は、図4〜図6のように暖房動作の完了予定時刻に貯留タンク2における高温の湯水の貯留量が貯湯予定量Sとなる。また、暖房動作の予定時刻の一部において暖房動作が行われない場合や、負荷端末30の設定温度が低いなどの理由で暖房動作において消費される熱エネルギー量が少ない場合は、暖房動作の完了予定時刻に貯留タンク2における高温の湯水の貯留量が(S−α)以上であり、貯湯予定量Sに満たない程度の量となる。
(禁止条件解除動作)
上記した図5に示すパターンDの場合のように、貯留動作の完了後に暖房動作が行われることが想定されている場合は、予想に反して暖房動作が行われなかった場合に備えて貯留動作における貯留量を調整量αだけ減少させておき、加熱手段24の動作を継続させることができる。しかし、図7に示すパターンFに二点差線で示すように、熱源装置1に対して貯留動作の完了後に予想に反して突発的に暖房動作を行いたい旨の要求が発生する場合がある。このとき、既に貯留タンク2に高温の湯水が所定量W以上(本実施形態では満杯まで)貯留されていると、上記した動作禁止条件に基づき加熱手段24が動作せず、暖房動作を行えないといった不具合が発生する。
そこで、熱源装置1では、次の条件(X)のみを満足する場合は加熱手段24の動作を停止させるが、条件(Y)を満足する場合は加熱手段24を動作させる構成としている。
(X) 貯留タンク2に貯留されている高温の湯水の残量が所定量W以上(本実施形態では満杯)である。
(Y) (X)の状態において暖房動作の動作開始要求があり、この動作開始要求に伴って暖房動作を開始すると仮定した場合に、負荷端末30に供給される高温の湯水の熱エネルギー量が所定の解除基準エネルギー量を超えるものと想定される。
さらに具体的には、制御手段6は、貯留タンク2に所定温度以上の高温の湯水が所定量W以上貯留されており、この状態で制御手段6が暖房要求を検知することを条件として、この暖房動作において負荷端末30に供給すべき湯水の単位体積当たりの熱エネルギー量q3と、加熱手段24を作動させることによって加熱される湯水の単位体積当たりの熱エネルギー量q4とを導出して比較する。すなわち、本実施形態では、条件(Y)の解除基準エネルギー量が加熱手段24を作動させることによって加熱される湯水の単位体積当たりの熱エネルギー量q4に設定されている。
上記した条件(Y)を満足する場合は、加熱手段24を動作させてもこれにより発生する熱エネルギーが全て暖房動作に使用され、熱エネルギーの無駄が発生しない。従って、制御手段6は、前記した条件(Y)を満足することを条件として加熱手段24の動作禁止条件を解除して加熱手段24を作動させる。
上記したように、熱源装置1は、制御手段6による予測動作の結果、図4〜図6に示すパターンC〜パターンEに示すように、後に行われる給湯動作に備えて湯水を貯留する貯湯動作の完了時を基準として所定の期間、換言すれば給湯動作の開始前までに暖房動作が行われるという予測が立った際に目標貯湯量調整動作を行い、貯湯動作における目標貯湯量Tを減少させる構成とされている。そのため、熱源装置1は、予定されていた暖房動作が不意に行われなくなっても加熱手段24の動作を継続させることができ、加熱手段24の起動や停止に伴うエネルギーロスが発生しない。
また、熱源装置1は、上記(2)に示す条件、すなわち暖房動作において負荷端末30に供給されると想定される湯水の量が、貯留タンク2の容量から貯湯予定量Sを差し引いた量よりも少ないことを目標貯湯量調整動作を行うための条件としている。すなわち、熱源装置1では、暖房動作が不意に行われないこととなった際に発生する湯水を貯留タンク2に貯留するとエネルギーロスが発生すると想定される場合に限って目標貯湯量調整動作が行われ、目標貯湯量Tが少なく、目標貯湯量調整動作を行うと給湯動作においていわゆる湯切れと称される不具合が発生するおそれがある場合に目標貯湯量調整動作が行われない構成とされている。そのため、熱源装置1は、予想に反して暖房動作が行われない場合であっても熱エネルギーを有効利用できると共に、後の給湯動作において湯切れと称される不具合が発生しない。
上記したように、熱源装置1は、貯留タンク2に高温の湯水が満杯に貯留されている状態で予期せぬ暖房動作が行われることとなった際に、この暖房動作によって消費される熱エネルギー量が加熱手段24の動作に伴って発生する熱エネルギー量以上であることを条件として加熱手段24の動作禁止条件を解除し、加熱手段24の動作を継続させる構成とされている。そのため、熱源装置1は、加熱手段24の起動や停止の頻度が少なく、加熱手段24の起動や停止に伴うエネルギーロスが少ない。また、熱源装置1は、暖房動作において消費されるエネルギー量が多い場合、すなわち負荷端末30における熱エネルギーの需要が高い場合に加熱手段24の動作を継続させ、負荷端末30に対する高温の湯水の供給を継続できるため、エネルギー効率を高レベルに維持しつつ、負荷端末30の使用感を損なうことなく運転できる。
上記実施形態では、貯湯動作が給湯動作の開始予定時刻とほぼ同時に完了する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、貯湯動作が給湯開始予定時刻に対して多少前後してもよい。さらに、貯留タンク2に蓄えられた熱エネルギーを有効利用するためには、熱源装置1において、貯湯動作の完了時刻は、貯留タンク2に貯留されている高温の湯水を給湯動作において排出すべき湯水の温度に維持可能な程度の時間だけ給湯動作の開始予定時刻よりも遅く設定されることが望ましい。すなわち、貯湯動作の完了時刻は、貯留タンク2に貯留されている湯水が放熱しても加熱手段24や補助熱源21を用いて保温したり、給湯動作時に再加熱する必要がない程度の時刻に設定されることが望ましい。また、貯湯動作の完了時刻が給湯開始時刻よりも遅れる場合、この遅延時間は、給湯動作による湯水の排出速度と貯留動作による貯留タンク2への湯水の供給速度とを勘案して給湯動作に必要とされる高温の湯水が不足しない程度とされることが望ましい。
上記実施形態では、エンジンや燃料電池等において発生する排熱を利用して湯水を加熱する排熱加熱手段や電気ヒータ等によって構成される加熱手段24に加えて、従来公知の給湯器のように湯水を素早く加熱可能な補助熱源21を設けた例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば補助熱源21を具備しない構成としたり、加熱手段24をエンジンや燃料電池、電気ヒータ等の適宜の熱源を複数組み合わせて構成されるものとしてもよい。
また、上記した熱源装置1は、貯留タンク2の底部側から取り出された低温の湯水を外部に配された加熱手段24に供給して加熱し、貯留タンク2の頂部に戻すものであり、貯留タンク2の内部に湯水の温度成層が形成されるものであった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば前記したような湯水の循環系統を形成せず、外部において所定温度に加熱された湯水を単に貯留タンク2に貯留する構成であったり、貯留タンク2内に加熱手段24において加熱された湯水によって熱交換加熱する熱交換器を配した構成としてもよい。
上記実施形態の熱源装置1は、貯留タンク2の高さ方向に所定の間隔を開けて4つの温度センサ4を設け、この温度センサ4の検知温度に基づいて所定温度の熱媒体がどれだけ貯留されているかを推算する構成であったが、温度センサ4の数は4つに限定されるものではなく、いくつであってもよい。また、熱源装置1は、貯留タンク2に流入する熱媒体の流入量の積算値に基づいて、貯留タンク2における高温の熱媒体の貯留量を導出する構成としたり、他の手法で貯留量を導出する構成としてもよい。