JP2006248012A - 熱転写用塗装金属板及びそれを用いた印刷塗装金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱機械分析法で測定される軟化開始温度が150℃以上の上塗り塗膜を、昇華転写法で印刷模様が付与される塗膜に使用している。シリコーン変性率:1〜50%,数平均分子量:5000〜50000,メラミン含有量:5〜50質量部,OH価:50〜150の熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂をベースとする塗料から成膜された上塗り塗膜が好ましい。
【選択図】 図1
Description
上塗り塗膜は、更にトリアジン系及び/又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含んでも良い。
所定パターンで昇華性染料が塗布された転写シートを熱転写用塗装金属板に重ね合わせて加圧・加熱することにより、転写シートから塗装金属板の上塗り塗膜に昇華性染料が移行し、着色模様が上塗り塗膜に付与された印刷塗装金属板が得られる。
下塗り塗膜2は、下地金属板1に対する密着性の良好なポリエステル系,エポキシ系等の熱硬化型樹脂をベースにした塗料から成膜される。下地金属板1の色調を隠す場合、有色の色調をつけた下塗り塗膜2を膜厚:10〜20μmで形成する。下地金属板1の色調を十分隠蔽する上で10μm以上の膜厚が必要であるが、20μmを超える厚膜では焼付け時に塗膜に残留している溶剤が急激に気化し"ワキ"と称されるピンホール状の塗膜欠陥の発生傾向が強くなる。
上塗り塗膜3のベース樹脂として、塗膜に荷重を加えた状態で昇温して塗膜の軟化開始温度を測定する熱機械分析法(TMA)で得られる軟化開始温度が150℃以上の熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂を使用する。軟化開始温度は、昇華転写時に加圧・加熱される塗膜の挙動を的確に表す指標であり、加圧・加熱に起因する欠陥を持ち込ませないため150℃以上の軟化開始温度が必要である。150℃を下回る軟化開始温度では、昇華性染料が塗布された転写シートを熱転写用塗装金属板に重ねて昇華温度に加熱圧着した後で転写シートを塗装金属板から剥がすと、転写シートの跡がプレッシャーマークとして塗膜に残りやすくなる。
シリコーン変性は塗膜の耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性,耐汚染性を改善し、変性率:5%以上で改善効果がみられるが、50%を超える過剰変性は塗膜の加工性に悪影響を及ぼす。
耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性,耐水性等の物性は、樹脂の分子量によっても影響を受け数平均分子量:5000未満では不十分になる。低すぎる分子量は、硬化収縮を大きくし、硬化した塗膜にクラック等が発生する原因でもある。しかし、50000を超える数平均分子量では、粘性が高くなり過ぎ塗料化適性に欠ける。
更に、高温での転写時にプレッシャーマークの発生を抑える上で、樹脂のガラス転移温度(Tg)を150℃以上に調整することが好ましい。150℃を下回るガラス転移温度(Tg)では、塗膜に転写シートが押し付けられた高温状態で転写シートの凹凸表面が塗膜に転写されプレッシャーマークが発生しやすくなる。
これらの紫外線吸収剤は、単独でも、2種以上を混合しても使用できる。紫外線吸収剤の配合量は、塗料の不揮発成分:100質量部に対して3〜22質量部に調整することが好ましい。3質量部未満の配合量では、上塗り塗膜に浸透した昇華性染料の耐光性が不十分になりやすい。逆に22質量部を超えて過剰配合すると、塗膜の耐汚染性,加工性,外観等が劣化しやすく、塗膜が着色する原因にもなる。
ヒンダートアミン系光安定剤には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(三共製:SANOL LS770),ビス(1,2,2,6,6-ペンダメチル-4-ピペリジル)セバケート(三共製:SANOL LS765),1-{2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(三共製:SANOL LS2626),4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(三共製:SANOL LS744),8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン(三共製:SANOL LS440),2-(3,5-ジ-t-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(チバガイギー製:TINUVIN 144),コハク酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)エステル(チバガイギー製:TINUVIN 780FF)、コハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの重縮合物(チバガイギー製:TINUVIN 622LD),ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]}(チバガイギー製:CHIMASSORB 944LD),N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジンの重縮合物(チバガイギー製:CHIMASSORB 119FL),ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(チバガイギー製:TINUVIN 292)、ビス(1-オクタオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(チバガイギー製:TINUVIN 123),HA-70G(三共製),アデカスタブ LA-52,アデカスタブ LA-57,アデカスタブ LA-62,アデカスタブ LA-63,アデカスタブ LA-67,アデカスタブ LA-68,アデカスタブ LA-82,アデカスタブ LA-87(以上、旭電化工業製)等が挙げられる。
マゼンタ系の昇華性染料には、Kayaset Red 026,Kayaset Red 130,Kayaset Red B(日本化薬製),Oil Red DR-99,Oil Red DK-99(有本化学製)、Diacelliton Pink B(三菱化学製),Sumikaron Red E-FBL(住友化学製),Latyl Red B(Du Pont社製),Sudan Red 7b(BASF社製),Resolin Red FB,Ceres Red 7B(Bayer社製)等がある。
このようにして、必要な模様を必要な時に簡便に付与できるため、各種模様付けが要求される意匠鋼板の小ロット生産が容易になる。しかも、所定の模様を付けた意匠鋼板として在庫する必要がなくなり、ニーズに応じた模様付けが可能になる。また、上塗り塗膜3と下地金属板1との間に染料層が単独で存在していないので、従来のラミネート鋼板にみられた層間剥離が生じない。
板厚:0.5mmの亜鉛めっき鋼板を脱脂,表面調整後に塗布型クロメート処理した。
塗装前処理した鋼板に白色塗料を塗装し、板温220℃で1分間焼き付けることにより乾燥膜厚:15μmの白色下塗り塗膜を形成した。白色塗料としては、数平均分子量:5000のポリエステル樹脂をベースとし、樹脂固形分:100質量部に対し30質量部の割合でヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)を配合したポリエステル系樹脂塗料を用いた。
上塗り塗料には、シリコーン変性率:20%,数平均分子量:20000,OH価:100,樹脂固形分100質量部に対するメラミン含有量:30質量部の熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂をベースにした塗料(本発明例)と、数平均分子量:3000,樹脂固形分100質量部に対するメラミン含有量:60質量部の熱硬化型ポリエステル樹脂をベースにした塗料(比較例)の二種を用意した。何れの塗料にも、トリアジン系紫外線吸収剤(チバガイギー社製 TINUVIN 400):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバガイギー社製 TINUVIN 384)=1:1の混合物を塗料不揮発成分基準で8質量部添加した。更に、ヒンダートアミン系光安定剤(チバガイギー社製 TINUVIN 123)を塗料不揮発成分基準で1.5質量部添加した。
熱機械分析計(TAS200システムTMA:リガク製)を用い、−50〜250℃の温度範囲において荷重:98N,昇温速度:10℃/分で各塗装鋼板の押込み深さを測定した。先端径:1mm(先端面積:0.785mm2)の円柱型測定子を使用したので、測定時に98÷(0.785÷106)=0.1248mPaの圧力が加えられたことになる。
図2の測定結果にみられるように、熱硬化型ポリエステル樹脂塗料から成膜された塗膜は、軟化開始温度:軟化が約−20℃で始まり約80℃で終了していた。これに対し、熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂塗料から成膜された塗膜は、軟化開始温度:約180℃,軟化終了温度:約200℃とポリエステル塗膜に比較して大幅に高い軟化抵抗を示した。
シアンの昇華性染料から作製したインクを用い、インクジェットプリンタで出力用紙にシアンのベタ模様を出力した。得られた転写シートを熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂塗料,熱硬化型ポリエステル樹脂塗料それぞれから塗装原板上に形成された上塗り塗膜に重ね合わせ、温度:170℃,圧力:0.5kg/cm2で100秒間加熱圧着した。圧着完了後、塗装鋼板から転写シートを剥離した。
シアンのベタ模様が転写印刷された塗装金属板の塗膜を目視観察し、プレッシャーマークの発生有無を調査した。ポリエステル塗膜を設けた比較例の塗装金属板では、転写印刷後の塗膜全域にプレッシャーマークが付けられていた。他方、本発明例の印刷塗装金属板ではプレッシャーマークが検出されず、シリコーン変性アクリル塗膜の優れた耐プレッシャーマーク性が確認された。
実施例1と同じ塗装原板,白色塗料を用いて乾燥膜厚:15μmの白色下塗り塗膜を形成した後、表1の組成をもつ上塗り塗料を塗布し、板温230℃で1分間焼き付けることにより乾燥膜厚:18μmの上塗り塗膜を形成した。なお、表1以外に、上塗り塗料は、実施例1と同様に紫外線吸収剤の光安定剤を含んでいる。
シアンの昇華性染料から作製したインクを用い、インクジェットプリンタで出力用紙にシアンのベタ模様を出力した。得られた転写シートを各塗装金属板の上塗り塗膜に重ね合わせ、温度:170℃,圧力:0.5kg/cm2で100秒間加熱圧着した。圧着完了後、塗装鋼板から転写シートを剥離した。
シアンのベタ模様が転写印刷された塗装金属板から試験片を切り出し、以下の試験で耐プレッシャーマーク性,加工性,耐疵付き性を調査した。
・耐プレッシャーマーク性
シアンのベタ模様が印刷された塗装金属板の表面を観察し、プレッシャーマークが全く発生していない塗膜を○,プレッシャーマークが発生した塗膜を×として耐プレッシャーマーク性を評価した。
20℃の室内で5tの180度折曲げ試験(試験片と同じ厚みの板を挟んで曲げる場合が1t)により試験片を折曲げ加工し、曲げ部外側に位置する塗膜を観察しクラックの発生状況を調査した。5t曲げでクラックが発生しなかった塗膜を○,クラックが発生した塗膜を×として加工性を評価した。
・耐疵付き性
JIS K5400 6-8.4に準拠し、鉛筆(三菱ユニ)を用いて塗膜に疵をつけ、疵が付かない限界の鉛筆硬度で耐疵付き性を評価した。なお、疵が付かない限界の鉛筆硬度がF以上であれば実用に供し得る。
これに対し、比較例では、耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性,耐汚染性の何れか一つ又は複数が劣っていた。すなわち、シリコーン成分の変性率が低い試料No.9は耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性に劣り、逆にシリコーン成分の変性率が高すぎる試料No.10は加工性に劣っていた。
更に、OH価の低い試料No.13は耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性に劣り、逆にOH価の高い試料No.14は加工性に劣っていた。
また、メラミン配合量の少ない試料No.15は耐プレッシャーマーク性,耐疵付き性に劣り、逆にメラミン配合量が多すぎる試料No.16は加工性に劣っていた。
Claims (3)
- 熱機械分析法(TMA)で測定した塗膜軟化開始温度が150℃以上のシリコーン変性アクリル樹脂をベースとする上塗り塗膜を備えていることを特徴とする熱転写用塗装金属板。
- 熱硬化型樹脂をベースとする下塗り塗膜,熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂をベースとする上塗り塗膜が金属板表面に順次積層されており、熱硬化型シリコーン変性アクリル樹脂のシリコーン変性率が1〜50%,数平均分子量が5000〜50000,OH価が50〜150,樹脂固形分100質量部に対するメラミンの割合が5〜50質量部であることを特徴とする請求項1記載の熱転写用塗装金属板。
- 請求項1又は2記載の熱転写用塗装金属板の上塗り塗膜に浸透した昇華性染料で染料染着層が形成されており、該染料染着層で着色模様が付与されていることを特徴とする印刷塗装金属板。
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