JP2006247672A - Ni基溶湯の連続鋳造用モールドフラックスおよびNi材の連続鋳造方法 - Google Patents

Ni基溶湯の連続鋳造用モールドフラックスおよびNi材の連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 Ni含有量が90質量%以上であるNi材を、表面疵を発生させることなく連続鋳造する。
【解決手段】 Ni含有量が90質量%以上であるNi基溶湯の連続鋳造に用いるモールドフラックスである。下記式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sである。
T.CaO/SiO2={(CaO)+0.7182×(CaF2)}/(SiO2)。
【効果】 Ni含有量が90質量%以上であるNi材を、表面欠陥を発生させることなく連続鋳造により製造できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、Niを90質量%以上含有するNi基溶湯を連続鋳造するのに適したモールドフラックス、および、このモールドフラックスを用いてNiを90質量%以上含有するNi材(以下、純Ni材という。)を連続鋳造する方法に関するものである。
Ni材を連続鋳造により製造した場合には、表面疵の発生が問題になるので、従来は、インゴット鋳造によってNi材を製造する場合が多かった。
しかしながら、表面疵を発生させることなく、連続鋳造によってNi材を製造できれば、生産能率の向上が図れることは言うまでもない。
このような観点から、低熱伝導性材料により構成した水冷鋳型を使用し、冷却速度を遅くすることで、表面疵を発生させることなく、NiやNi−Cu系合金を連続鋳造することが、特許文献1で提案されている。
特開平6−304701号公報
しかしながら、Niの鋳造温度は1450℃から1500℃程度あって、非常に高温である。従って、特許文献1に記載された低熱伝導性材料で構成した鋳型では、鋳型の表面温度が高くなりすぎ、変形が生じる。鋳型が変形すると、鋳型からの抜熱が不均一になるので疵が発生したり、また、ブレークアウトが発生して鋳造できなくなる場合がある。
なお、粘度、凝固温度、結晶性を適正に規定することで、Niを30質量%以上含有するNi基合金を連続鋳造により製造した場合における縦割れや横割れなどの表面欠陥の発生を防止するモールドパウダー、および、このモールドパウダーを用いた連続鋳造方法が、特許文献2で提案されている。
特開2003−94151号公報
しかしながら、この特許文献2で提案されたモールドパウダーおよび連続鋳造方法では、鋳片の表層部に気泡性欠陥が発生したり、鋳片を曲げた後、矯正するタイプの連続鋳造機を用いた場合に、矯正により鋳片表面に割れが発生する場合があるという問題があった。
本発明が解決しようとする問題点は、従来、純Ni材を、とくに気泡性欠陥や鋳片矯正時の表面割れなどの表面疵を発生させることなく連続鋳造することができなかったという点である。
本発明のNi基溶湯の連続鋳造用モールドフラックスは、
Ni含有量が90質量%以上であるNi材を、とくに気泡性欠陥や鋳片矯正時の表面割れなどの表面疵を発生させることなく連続鋳造できるようにするために、
Ni含有量が90質量%以上であるNi基溶湯の連続鋳造に用いるモールドフラックスであって、
下記(1)式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、
質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、
かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sであることを最も主要な特徴としている。
T.CaO/SiO2={(CaO)+0.7182×(CaF2)}/(SiO2)… (1)
前記本発明における、CaO、SiO2およびCaF2は、モールドフラックス中のCaO、SiO2およびCaF2の含有量(質量%)を示す。
また、本発明の純Ni材の連続鋳造方法は、
前記本発明のNi基溶湯の連続鋳造用モールドフラックスを用いて純Ni材を連続鋳造する方法である。
但し、この本発明の純Ni材の連続鋳造方法を実施するに際し、湾曲型連続鋳造機または垂直曲げ型連続鋳造機を使用する場合には、鋳片を曲げ矯正する際の鋳片表面温度の平均値を800℃以上で行う。なお、この場合に、鋳片表面温度の平均値を800℃以上として行うことの限定理由は後述する。
本発明によれば、Ni含有量が90質量%以上である純Ni材を、とくに気泡性欠陥や鋳片矯正時の表面割れなどの表面欠陥を発生させることなく連続鋳造により製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、新しい着想から、発明成立に至るまでの過程と共に詳細に説明する。
純Ni材は鋼と比較して、熱伝導率が高く、表面張力が低く、高温での延性が低いという物性値の相違がある。
熱伝導率が高いということは、温度勾配がつきにくい、もしくは冷却され易いということから溶湯メニスカスの温度が低下しやすく、また、表面張力が低いということと併せて、介在物や気泡がバルクから離脱され難いということである。
発明者が引っ張り試験を実施したところ、純Niは高温状態では良好な延性を示すが、800℃未満では急激に脆化し、ほとんど延性を示さない状態となることが判明した。
Niの製造方法は様々である。発明者は、Niについての種々の製造方法や、他の金属の製造方法を調査し、以上の物性を考慮して数々の実験と試行錯誤を行い、以下の知見を得た。
まず、モールドフラックスについては、溶融Niの表面張力が鋼よりも低いので、バランスをとるために溶融フラックスの表面張力を低下させ、これら溶融Niと溶融フラックスとの界面張力を低下させないと、溶融Ni中のガス気泡を離脱することができない。
また、Niの鋳造温度はもともとの液相線温度が炭素鋼よりも低く、通常のステンレス鋼なみであることから、純Ni材の連続鋳造に使用するモールドフラックスの凝固点は、普通鋼の連続鋳造に使用するものよりも低く、概ねステンレス鋼用程度に調整する必要がある。
また、Niは熱伝導率が高いので、メニスカスの温度が低下しやすく、そのために気泡が離脱しにくいという問題もあるので、モールドフラックス中の炭素濃度を十分に確保し、酸化による発熱を促進する必要がある。
さらに、Niはオーステナイト単相凝固であるので、結晶粒が粗大化して粒界割れが発生しやすいため、フラックスフィルムには結晶化による緩冷却機能も必要である。
本発明のモールドフラックスは、発明者の以上の知見をもとになされたものであり、
前記(1)式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、
質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、
かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sである物性を有するものである。
本発明のモールドフラックスにおいて、フラックスの組成で、前記(1)式で表される塩基度が0.5未満であると、フラックスフィルムがガラス化しすぎて、鋳片の冷却が強くなりすぎ、表面に割れが発生する。また、粘度が所定の値より大きくなりすぎるなどの問題も発生する。
一方、塩基度が0.9より大きいと、溶融フラックスの表面張力が大きくなりすぎて、溶融Ni中の気泡が離脱しにくくなり、気泡性欠陥が発生しやすくなる。
従って、本発明では、前記(1)式で表される塩基度を、0.5以上、0.9以下とした。
また、モールドフラックスの凝固点が1100℃より高い場合は、フラックスが融解し難くなって潤滑不良が発生する。一方、モールドフラックスの凝固点が900℃未満であった場合には、適正な溶融層厚さが確保されず、過大な溶融層厚さになって保温性が損なわれるとともに、鋳片表面に割れが発生しやすいという問題が発生する。
従って、本発明では、モールドフラックスの凝固点を900℃以上、1100℃以下とした。
また、モールドフラックス中のC含有量が1.5質量%未満の場合には、炭素の燃焼熱が足らずにメニスカスの温度が低下し、気泡性欠陥が発生しやすい。一方、5質量%より多い場合は溶融速度が遅くなりすぎ、潤滑不良が発生しやすいという問題が発生する。
従って、本発明では、モールドフラックスのC含有量を1.5質量%以上、5質量%以下とした。
また、モールドフラックスの粘度については、1300℃の粘度が0.1Pa・s未満の場合は、粘度が低すぎて巻き込みが発生したり、流入が不均一になって割れが発生したりする。一方、1Pa・sより大きいと、流入不足になって鋳型と鋳片との間に焼き付きが発生し易くなる。
従って、本発明では、モールドフラックスの1300℃における粘度を0.1Pa・s以上、1Pa・s以下とした。
また、モールドフラックス中のFは結晶化に関わる元素であって、このF含有量が2質量%未満であると、結晶化せずにガラスになるために、鋳片の冷却が大きくなりすぎて鋳片の表面に割れが発生する。また、液相がうまく生成せずに潤滑不良となる。一方、10質量%より多いと浸漬ノズルの溶損速度が大きくなるという問題が発生する。
従って、本発明では、モールドフラックス中のF含有量を2質量%以上、10質量%以下とした。
本発明の純Ni材の連続鋳造方法は、
前記本発明のNi基溶湯の連続鋳造用モールドフラックスを用いて純Ni材を連続鋳造する方法である。
この本発明の純Ni材の連続鋳造方法を実施するに際し、使用する連続鋳造機の種類は特に限定されないが、Niはオーステナイト単相凝固であって、粒径が大きくなり易く、粒界での割れが発生し易いので、曲げや矯正の応力が発生しない垂直連続鋳造機を用いて鋳造することが望ましい。
湾曲型連続鋳造機や、垂直曲げ型連続鋳造機のように、曲げ矯正の応力が発生する連続鋳造機を使用する場合には、曲げ矯正時の鋳片表面温度の平均値を800℃以上としなければならない。800℃未満の場合には脆化域に入るので簡単に表面割れが発生するからである。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
鋳型厚さ150mm、幅950mmの湾曲型連続鋳造機と垂直型連続鋳造機を使用して、純Niの鋳造を行った。鋳造に供した純Niの化学成分を下記表1に、また、鋳造条件を下記表2に示す。
Figure 2006247672
Figure 2006247672
本発明で規定する範囲を全て満足するNo.1の条件(本発明例)で鋳造を行った場合、鋳造は順調に実施でき、鋳片の表面品質も問題なかった。
また、使用する連続鋳造機を湾曲型から垂直型に変えた他はNo.1と同じ条件で鋳造を行ったNo.12(本発明例)でも、鋳造は順調に実施でき、鋳片の表面品質も問題なかった。
一方、塩基度が本発明で規定する範囲より小さい、No.2の条件(比較例)で鋳造を行った場合、凝固点が本発明で規定する範囲より低い、No.4の条件(比較例)で鋳造を行った場合、1300℃における粘度が本発明で既定する範囲よりも低いNo.8の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、共に鋳造は順調に行えたものの、鋳片に表面割れが発生した。
また、塩基度が本発明で規定する範囲より大きい、No.3の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、鋳造は順調に行えたものの、鋳片の表層部に気泡性の欠陥が多量に発生した。
また、凝固点が本発明で規定する範囲より高い、No.5の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、鋳造は順調に行えたものの、潤滑不良が発生し、鋳片表面にカブレ疵が発生した。また、鋳片の表層部には気泡性の欠陥が多量に発生した。
また、C含有量が本発明で規定する範囲より少ないNo.6の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、鋳造は順調に行えたものの、鋳型内のメニスカス温度が低下し、鋳片表層部に気泡性の欠陥が多量に発生した。
反対に、C含有量が本発明で規定する範囲よりも多いNo.7の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、フラックスの炭素濃度が高くなりすぎてフラックスの溶融速度が遅くなり、十分な溶融層が形成されなかった。ブレークアウトには至らなかったものの、鋳造された鋳片表面は潤滑不良であり、ノロカミが多量に発生した。
また、1300℃における粘度が本発明で既定する範囲よりも大きいNo.9の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、フラックスの粘度が大きすぎてフラックスの流入が不足した。ブレークアウトには至らなかったものの、鋳造された鋳片表面は潤滑不良であった。
また、F含有量が本発明で規定する範囲より少ないNo.10の条件(比較例)で鋳造を行った場合は、フラックスのフッ素濃度が低すぎてフラックスの溶融相が安定しなかった。ブレークアウトには至らなかったものの、鋳造された鋳片表面は潤滑不良であった。
反対に、F含有量が本発明で規定する範囲より多いNo.11の条件(比較例)で鋳造した場合は、鋳造は順調に行えたものの、フラックスのフッ素濃度が高すぎて浸漬ノズルの溶損が激しく、1時間以上の鋳造はできなかった。
また、矯正時の平均表面温度が本発明で規定する範囲よりも低いNo.13の条件(比較例)で鋳造を実施した場合は、鋳造は順調に行えたものの、表面には矯正の時に発生した割れが多数観察された。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

Claims (3)

  1. Ni含有量が90質量%以上であるNi基溶湯の連続鋳造に用いるモールドフラックスであって、
    下記式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、
    質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、
    かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sであることを特徴とするNi基溶湯の連続鋳造用モールドフラックス。
    T.CaO/SiO2={(CaO)+0.7182×(CaF2)}/(SiO2
  2. Ni含有量が90質量%以上であるNi材を垂直型連続鋳造機を用いて鋳造する方法であって、
    下記式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、
    質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、
    かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sであるモールドフラックスを使用することを特徴とするNi材の連続鋳造方法。
    T.CaO/SiO2={(CaO)+0.7182×(CaF2)}/(SiO2
  3. Ni含有量が90質量%以上であるNi材を湾曲型連続鋳造機または垂直曲げ型連続鋳造機を用いて鋳造する方法であって、
    下記式で表されるT.CaOのSiO2に対する比(T.CaO/SiO2)で示す塩基度が0.5〜0.9、
    質量%で、F含有量が2〜10%、C含有量が1.5〜5%であって、
    かつ、凝固点が900〜1100℃、1300℃における粘度が0.1〜1Pa・sであるモールドフラックスを用い、
    鋳片を曲げ矯正する際の鋳片表面温度の平均値を800℃以上とすることを特徴とするNi材の連続鋳造方法。
    T.CaO/SiO2={(CaO)+0.7182×(CaF2)}/(SiO2
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008272786A (ja) * 2007-04-27 2008-11-13 Nippon Yakin Kogyo Co Ltd Fe基合金およびNi基合金の連続鋳造方法および連続鋳造用発熱性モールドパウダー
JP2008290087A (ja) * 2007-05-22 2008-12-04 Sanyo Special Steel Co Ltd 高炭素鋼の連続鋳造用モールドパウダー
CN112620599A (zh) * 2020-12-29 2021-04-09 河南通宇冶材集团有限公司 大方坯中高碳钢用超低碱度高玻璃化保护渣及其制备方法

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