JP2006245818A - 回線特性提示システムおよび回線特性提示方法 - Google Patents

回線特性提示システムおよび回線特性提示方法 Download PDF

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Abstract

【課題】xDSLの接続業者側が個々のユーザの使用する回線における伝送可能な理想の通信速度を提示したり、見積もられた通信速度に対して実際の速度がかけ離れているような場合に、その原因を解析することのできる回線特性提示システムおよび回線特性提示方法を提供する。
【解決手段】局側装置に収容されたそれぞれの回線の初期トレーニングを行い(ステップS201)、その結果を取得して回線の線路長を解析する(ステップS203)。次に信号対雑音比の解析が行われて理想伝送速度が算出される(ステップS205)。この速度と実際の速度が比較され(ステップS206)、両者が実質的に同一の場合以外の場合には、各種のモデルを用いて問題の解析が行われる(ステップS210)。その結果はディスプレイ等に表示あるいは通知される(ステップS211)。
【選択図】図2

Description

本発明は、信号の伝送速度を測定する回線特性提示システムおよび回線特性提示方法に係り、特にxDSLの伝送特性の診断に好適な回線特性提示システムおよび回線特性提示方法に関する。
銅線を用いた既存の電話回線を使用して高速のデータ通信を可能とする通信技術として、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)が広く利用されている。ADSL等のxDSL(x Digital Subscriber Line)技術を用いた通信サービスは、ベストエフォート型サービスと呼ばれている。ベストエフォート型サービスとは、最善の努力を行うが、結果としてのサービス品質自体は保証しないというサービス形態である。データの伝送速度が、線路長や雑音などの環境で変化するためにこのようなサービスの形態が存在する。xDSLでは、一般に線路長が短かったり、雑音が少ない環境で伝送速度が大きくなる。反対に、線路長が長かったり、雑音が大きい環境では伝送速度が小さくなる。
ところで、xDSLに影響する雑音として最も支配的なものは、他の回線からの漏話である。その他に、電話線を分岐するブリッジタップや保安器あるいは電話線の周囲に配置されたガス検知器等の設備の影響によって通信特性が劣化するおそれもある。回線のデータ伝送量が十分でないような場合には、ユーザからのクレームが発生することがある。
そこで、xDSLのサービスを新たに受けようとする者がモデムを実際に使用して回線の伝送速度を検討できるようにすることが第1の提案として提案されている(たとえば特許文献1参照)。この第1の提案では、モデムをxDSLのサービスを新たに受ける自宅等に実際に取り付けて、パーソナルコンピュータを使用して回線特性を測定するようになっている。
また、第2の提案として、加入者回線についての電気的測定から電気的な回線特徴の値を決定し、ニューラルネットワークを用いて電気的な特徴の値の一部を処理することが提案されている(たとえば特許文献2参照)。この第2の提案では、試験を行うに際して、試験対象となる回線を通信ネットワークから切断する。そして、交換機側の内部装置に接続して電気的測定を実行する。
特開2002−314702号公報(第0038〜第0042段落、図5) 特開2003−518787号公報(第0018、第0019段落、図1)
このうちの第1の提案は、新規にxDSLのサービスを受ける場合を想定している。第2の提案も交換機側が回線を通信ネットワークから切断して試験を行う。このため、新規にサービスを受ける者に対してのみこのような特性試験を行うのは事実上困難である。したがって、xDSLの接続業者は、それぞれの契約締結後のユーザ宅の通信に関する環境を把握するためには、その都度、初期トレーニングを行い、このとき線路長や信号対雑音比(SNR:Signal to Noise ratio)の周波数特性、あるいは各キャリアごとのビットマップを測定することにしていた。そして、これらの測定結果を手動で集積し、これらを解析して問題が存在する場合には問題の解決を図っていた。
このような従来の手法では、次のような問題があった。
(1)ユーザの置かれている環境の下で、xDSLにおけるサービスが可能な理想的な通信速度を、個々のユーザが知ることができなかった。xDSLは環境によって通信速度に大きな差が生じる。このため、ユーザが置かれた環境によっては、通信に予期しない悪影響が生じる場合がある。このような悪影響が当初から生じていた場合には、そのユーザにおける理想的な通信速度をユーザ自体が知りえないことになる。
(2)このような環境上の問題点がある場合には、これを解決すれば通信速度を向上させることができる。しかしながら、環境上の問題の原因を究明するには、時間と手間が掛かり、一般に容易ではない。なぜなら、原因の究明のためには、変復調装置としてのモデムの初期トレーニングを行い、その結果として得られた情報を人間が解析する必要があるからである。しかも、知識と経験を有する解析者に依頼することが必要とされるからである。
そこで、本発明の目的は、xDSLの接続業者側が個々のユーザの使用する回線における伝送可能な理想の通信速度を提示することのできる回線特性提示システムを提供することにある。
また、本発明では見積もられた通信速度に対して実際の速度がかけ離れているような場合に、その原因を解析することのできる回線特性提示システムおよび回線特性提示方法を提供することにある。
本発明では、(イ)局側装置に収容されたそれぞれの回線に接続され、初期トレーニングで対応する回線の特性を測定する回線測定手段を備えたモデムと、(ロ)局側装置側でこのモデムの初期トレーニングで測定される測定データを解析して解析対象となった回線の測定結果としての信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得手段と、(ハ)この測定結果取得手段によって取得された解析対象となった回線についての信号対雑音比およびその回線の線路長を用いて現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出手段と、(ニ)この理想伝送速度算出手段の算出結果を提示する算出結果提示手段とを回線特性提示システムに具備させる。
すなわち本発明では、モデムの初期トレーニングで得られた測定結果としての信号対雑音比およびその回線の線路長を用いて、局側装置側で現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出するようにしている。ここで回線の線路長は、初期トレーニングで得られた測定結果を用いて算出してもよいし、別の手法で算出あるいは測定した値を用いてもよい。算出結果提示手段が理想伝送速度算出手段の算出結果を提示するので、必要に応じて現実の伝送速度との比較を行うことができる。
また本発明では、(イ)局側装置に収容されたそれぞれの回線に接続され、初期トレーニングで対応する回線の特性を測定する回線測定手段を備えたモデムと、(ロ)局側装置側でこのモデムの初期トレーニングで測定される測定データを解析して解析対象となった回線の測定結果としての線路長、信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得手段と、(ハ)この測定結果取得手段によって取得された解析対象となった回線についての信号対雑音比および線路長から現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出手段と、(ニ)この理想伝送速度算出手段の算出結果と解析対象となった回線について測定結果取得手段によって取得された実際の伝送速度を比較する伝送速度比較手段と、(ホ)この伝送速度比較手段の比較結果から実際の伝送速度が理想伝送速度と実質的に相違するときその原因を解析する原因解析手段と、(へ)この原因解析手段の解析結果を提示する解析結果提示手段とを回線特性提示システムに具備させる。
すなわち本発明では、モデムの初期トレーニングで得られた測定結果としての信号対雑音比およびその回線の線路長を用いて、局側装置側で現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出するようにしている。ここで回線の線路長は、初期トレーニングで得られた測定結果を用いて算出してもよいし、別の手法で算出あるいは測定した値を用いてもよい。伝送速度比較手段は、理想伝送速度算出手段の算出結果と解析対象となった回線について測定結果取得手段によって取得された実際の伝送速度を比較する。そして、両者に実質的な相違が存在する場合に原因解析手段がその原因を解析することになる。解析結果は、ディスプレイや電子メール等の手段を用いて提示される。
更に本発明では、(イ)局側装置側で回線に接続されたモデムの初期トレーニングを回線ごとに所定のタイミングで繰り返す初期トレーニング実行ステップと、(ロ)この初期トレーニング実行ステップで回線別にモデムから得られた回線の測定データを収集して解析し、解析対象となったそれぞれの回線の測定結果としての線路長、信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得ステップと、(ハ)この測定結果取得ステップで取得されたそれぞれの回線についての信号対雑音比および線路長から現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出ステップと、(ニ)この理想伝送速度算出すステップで算出した算出結果と解析対象となったそれぞれの回線について測定結果取得ステップで取得された実際の伝送速度を比較する伝送速度比較ステップと、(ホ)この伝送速度比較ステップの比較結果から実際の伝送速度が理想伝送速度と実質的に相違する回線についてその原因を解析する原因解析ステップと、(へ)この原因解析ステップの解析結果を提示する解析結果提示ステップとを回線特性提示方法に具備させる。
すなわち本発明では、局側装置側が初期トレーニング実行ステップで回線に接続されたモデムの初期トレーニングを回線ごとに所定のタイミングで繰り返すことにしている。そして、測定結果取得ステップで、回線別にモデムから得られた回線の測定データを収集して解析し、それぞれの回線の測定結果としての線路長、信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する。理想伝送速度算出ステップでは、測定結果取得ステップで取得されたそれぞれの回線についての信号対雑音比および線路長から現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する。そして、実際の伝送速度が理想伝送速度と実質的に相違する回線については、原因解析ステップでその原因を解析し、解析結果提示ステップで解析結果を提示することになる。
以上説明したように本発明によれば、局側装置側が各回線の特性をこれらの回線を切断することなく測定することができる。したがって、xDSLのサービスを行う接続業者は、新たにサービスを開始する際だけでなく、サービスの開始した後のそれぞれの回線について定期的あるいは不定期に各回線の特性をチェックすることができ、各種の通信環境の変化によって生じる問題を解析して、伝送速度の低下となる原因を把握し、問題の解消に努めることができる。また、このように各回線の特性を繰り返しチェックして回線ごとの最新のデータを保存しておくことで、これを必要に応じて公開し、収益を得ることも可能になる。
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例における回線特性提示システムの概要を表わしたものである。本実施例の回線特性提示システム100は、電話の交換を行う局側装置部101と、これと通信用線路102で接続されたユーザ側の宅内装置103とによって構成されている。局側装置部101は、通信用線路102と接続されたディジタル加入線(DSL:Digital Subscriber Line)の局側装置としてのxTU(xDSL Transceiver Unit)−C111と、このxTU−C111に接続されて各種解析を行う解析装置112と、この解析装置112に接続され、解析した結果を表示する表示装置113と、同じく解析装置112に接続され、解析に必要な情報を蓄積するデータベース114を備えており、xDSLのサービスを行う接続業者が回線特性提示システム100の管理を行うようになっている。ここで、宅内装置103は、図示を簡略化するために1つだけ図示している。宅内装置103には、xTU−R116が通信用線路102に接続されている。
ところで、ITU−T(International Telecommunications Union - Telecommunications Standardization Sector)勧告G.992.1では、ADSLの技術仕様を規定している。このG.992.1に準拠したADSL装置は、変調方式としてDMT(Discrete MultiTone modulation)方式を採用している。このDMT方式では、最初の6トーン分(0〜25kHz)を通常の電話の通信に割り当て、7〜31トーン(25〜138kHz)をアップリンク用に使用する。31から128トーン(138〜550kHz)まで、あるいは31から256トーン(138〜1104kHz)までをダウンリンク用に使用する。
DMT方式では、モデムが通信を開始する前に初期トレーニングを行うようになっている。この初期トレーニングで回線の線路長や各キャリアの信号対雑音比を測定する。そして、このとき測定した信号対雑音比を基にして各キャリアに配置するビットを決定し、最終的な伝送速度を決定する。本実施例の回線特性提示システム100で、通信用線路102を介して接続されたxTU−C111とxTU−R116は、前記したG.992.1に準拠したADSL装置となっているものとする。
なお、図1に示した解析装置112は、CPU(中央処理装置)121と制御用のプログラムを格納した記憶媒体122を備えており、制御用プログラムの内容に応じた制御を行うようになっている。xTU−C111およびxTU−R116も、内部構成の詳細な図示は省略するが解析装置112と同様の回路構成となっている。xTU−C111およびxTU−R116は、内蔵のデータ格納用メモリ125、126に初期トレーニングの結果を記憶するようになっている。また、局側装置部101内のxTU−C111は、宅内装置103側のxTU−R116のデータ格納用メモリ126に格納された初期トレーニングの結果を、通信用線路102を介して収集することができるようになっている。
図2は、このような構成の回線特性提示システムの局側装置部が行う処理の概要を表わしたものである。図1と共に説明を行う。本実施例の回線特性提示システム100では、まず初期トレーニングが行われる。初期トレーニングでxTU−C111およびxTU−R116は、これらの間を接続する通信用線路102の線路長情報と上りおよび下りの各受信側における信号対雑音比と伝送速度を測定する。このとき、xTU−C111およびxTU−R116はこれらの初期トレーニング結果を内蔵のデータ格納用メモリ125、126に格納する(ステップS201)。ここで線路長情報とは、たとえば線路としての通信用線路102の減衰量を表わした情報である。解析装置112は、xTU−C111の前記したメモリから線路長情報と上りおよび下りの各受信側における信号対雑音比を取得する(ステップS202)。次に解析装置112は、xTU−C111から取得したxTU−C111およびxTU−C111による初期トレーニング結果における線路長情報から通信用線路102の線路長を求める(ステップS203)。
図3は、線路長を求めるためのテーブルの一例を示したものである。図1に示した局側装置部101内のデータベース114には、減衰量・線路長対応テーブル131が格納されている。減衰量・線路長対応テーブル131には、標準的な線路における各種の減衰量dec1、dec2、……と、線路長L1、L2、……の対応関係が記載されている。この対応関係は、通信用線路102の種類別にあらかじめ複数のサンプルを基にして測定した値で作成されている。
解析装置112は、データ格納用メモリ125、126から読み出したそれぞれの減衰量を使用して、減衰量・線路長対応テーブル131から対応する線路長を取得する。xTU−C111とxTU−R116で測定した減衰量がわずかに異なるような場合には、これらの平均値を求めて、これを基にして線路長を取得する。減衰量についてのxTU−C111とxTU−R116の測定結果が大きく相違する場合には、平均値をとらずに初期トレーニングを再度行うようにしてもよい。また、図3に示した減衰量・線路長対応テーブル131を使用せずに、データベース114に各線路の減衰量から線路長を求める数式を格納しておき、これを用いて通信用線路102の線路長を算出するようにしてもよい。
次に、解析装置112は、xTU−C111から取得した上りおよび下りの各受信側における信号対雑音比を用いて、雑音が既知の漏話によるものである場合とそれ以外の場合に分けて信号対雑音比を解析する(図2ステップS204)。ここで、雑音が既知の漏話によるものであるとは、測定対象の通信用線路102に隣接する回線にすでに他の方式等による通信装置が入っていることが分かっており、その通信装置の発生する漏話による信号対雑音比への影響が想定できる場合をいう。この場合には、その通信装置の発生する漏話に、理想的な信号対雑音比の値が加算されたことを想定して、通信用線路102における信号対雑音比を求める。ここで、理想的な信号対雑音比とは、通信用線路102漏話が全く発生していない状況における信号対雑音比であり、この状況では白色雑音のみが発生する。「他の方式等による通信装置」による漏話の代表的なものは、隣接する回線がISDN(Integrated Service Digital Network)回線であるような場合である。この場合には、ISDNによる圧縮パルスが、漏話としてADSL等のxDSLに重畳して、ISDN特有の周期的な雑音が発生するという問題がある。
図4は、データベースに登録されている回線別の漏話発生源の一部を表わしたものである。図1に示すデータベース114には、回線別漏話発生源記憶領域133が設けられており、ここには局側装置部101と個々の宅内装置103を結ぶ回線ごとに漏話の発生源となる既知の装置とそれによる漏話特性が記されている。たとえば、A回線(通信用通路)については、装置d1が登録されており、その漏話における周波数特性としての漏話特性c1が記されている。B回線については、漏話の発生源が登録されていない。これは、漏話の発生源が存在しないということではなく、存在しない場合もあるが、新たに漏話の発生源が出現している場合もある。この場合には、漏話の発生源が確認された時点で本実施例の回線特性提示システム100の管理者がこれを登録することになる。漏話の発生源が無くなった場合にも、これが確認された時点で本実施例の回線特性提示システム100の管理者がその登録を抹消する。
以上のようにして図2のステップS204で信号対雑音比の解析が行われたら、次に解析装置112はこれを基にして理想伝送速度の解析を行う(ステップS205)。ここで理想伝送速度とは、通信用線路102が理想的な通信環境に置かれている場合に得ることができる通信速度をいう。これを回線特性と呼ぶことにする。理想伝送速度は、場合により、見積もりがされた伝送速度と同義である。
図5は、図2のステップ205における理想伝送速度の解析処理の流れを表わしたものである。解析装置112は、まず図4に示す回線別漏話発生源記憶領域133に、解析の対象となる回線に対応した「装置」が登録されているかどうかをチェックする(図5ステップS221)。たとえば図1に示した通信用線路102が「A回線」であるとすると、「装置d1」が登録されている。このように漏話の発生源としての装置が登録されている場合には(Y)、対応する装置の漏話を雑音とする信号対雑音比をその解析の対象となる回線の「信号対雑音比」とする。そして、この「信号対雑音比」に対応した理想伝送速度を算出する(ステップS223)。
一方、図1に示した通信用線路102が「B回線」であるような場合、漏話の発生源としての登録された「装置」は存在しない。このような場合には(ステップS221:N)、白色雑音のみを想定した「信号対雑音比」として処理する(図2、ステップS224)。そして、この「信号対雑音比」に対応した理想伝送速度を解析することになる(ステップS223)。このようにして、現在把握されている環境で最も伝送速度が速くなる理想伝送速度が算出されることになる。
理想伝送速度(Totalrate)の計算は、キャリアiの信号対雑音比をSNRiとするとき、次の(1)式によって求めることができる。
Figure 2006245818
ここで符号Sはシンボルレートを表わしており、ADSLのフルスペック規格としてのG.992.1に準拠した場合には、4KHzとなる。また、符号Γは、9.8dBである。
図2に戻って説明を続ける。ステップS205で理想伝送速度が算出されたら、解析装置112は初期トレーニングの結果として得られた実際の伝送速度とこの算出した理想伝送速度の比較を行う(図2、ステップS206)。この結果、両者がほぼ等しい場合には(ステップS207:Y)、解析対象となった通信用線路102は予想される伝送速度で通信を行うことができることになる。このため、解析装置112はその宅内装置103側のxTU−R116へ至る通信用線路102は問題がないことを表示装置113に表示する(ステップS208)。このような表示と併せて、宅内装置103側のユーザに、理想的な通信速度であることや、その通信速度が他の装置の漏話によって影響を受けている場合にその状況を電子メールによって通知してもよい。また、解析装置112は局側装置部101を運営するxDSLの接続業者のホームページに、各ユーザの回線ごとの通信速度と、それが問題ない通信速度である旨を表示することで内容をこれらのユーザに公開あるいは通知するようにしてもよい。
一方、ステップS207で理想伝送速度と実際の伝送速度に誤差として生じる以上の相違が検出された場合には(N)、理想伝送速度の方が大きいかどうかの判別が行われる(ステップS209)。この結果、理想伝送速度の方が大きい場合には(Y)、何らかの環境上の問題によって実際の伝送速度が低下したことが考えられる。そこで、この場合には、初期トレーニング結果として得られた回線の「信号対雑音比」を、データベース114に蓄積されたさまざまなケースにおける「信号対雑音比」と比較して、問題の解析を行う(ステップS210)。一例としては、データベース114上にさまざまな信号対雑音比モデルを蓄積しておいて、初期トレーニングで得られた結果としての実際の伝送速度と理想伝送速度の差分との相関関係を比較することで、最も相関関係が高いモデルを選択する。
たとえば、ある特定の周波数での「信号対雑音比」が周期的に低下するような測定結果の場合には、トレーニング期間中にユーザの宅内装置103側で電話の呼出音に起因する品質の低下が発生している可能性がある。そこで、このように呼出音のオン・オフに同期した信号対雑音比モデルが相関関係が高いとして選択される場合がある。また、ユーザ宅に回線が増設されたような場合に、他の既存の回線に漏話による影響を生じさせていた特定の装置が、この増設された回線に同様の影響を生じさせている可能性がある。後者の場合には、原因を確定させた後、本実施例の回線特性提示システム100の管理者がこの増設された回線と原因となった「装置」との関係を、図3に示した減衰量・線路長対応テーブル131に登録することになる。
もちろん、解析の対象となった回線の「信号対雑音比」に影響を及ぼす「装置」等が比較的新しく出現して、データベース114にその内容が登録されていない場合があり得る。このような場合、回線特性提示システム100の管理者は伝送速度に及ぼす影響の大きさが無視できない場合等の所定の場合には、公知の手法を用いて原因の解析を行い、問題の解析を行うと共に、必要に応じてその結果をデータベース114に反映させることになる。
回線の伝送速度が低下していることの問題が解析されたら、解析結果が表示装置に表示される(ステップS211)。ステップS208の表示と同様に、該当するユーザに解析結果が電子メール等で通知されたり、局側装置部101に関わるxDSLの接続業者のホームページに内容が公開されてもよい。
一方、ステップS209で理想伝送速度の方が実際の伝送速度よりも小さな場合には(N)、所定のエラー処理が行われる(ステップS212)。通常の場合には、理想伝送速度の方が実際の伝送速度よりも小さいことはあり得ない。したがって、解析装置112がxTU−C111から取得したトレーニング結果にエラーが発生している場合が考えられ、単純に表示装置113に測定結果のエラーを表示してもよい。ただし、本実施例ではステップS205で理想伝送速度を解析する際に、解析の対象となる回線に対応した「装置」が登録されているかどうかを回線別漏話発生源記憶領域133によってチェックしている。このため、この回線別漏話発生源記憶領域133に登録した「装置」がステップS201の初期トレーニングのときに作動していなかったような場合や、すでにその「装置」が存在しなくなったような場合には、見かけ上で実際の伝送速度の方が理想伝送速度よりも速くなる場合が存在する。このような場合にはステップS212のエラー処理で、日時を変えて初期トレーニングをやり直す処理を行うようにすればよい。
この結果として、常に理想伝送速度の方が実際の伝送速度よりも小さな場合には、その「装置」が存在しなくなった可能性が高い。そこで、その「装置」が漏話の発生源となる他の回線の初期トレーニングを行ったり、その「装置」が存在するかを実際に確認することによってエラーの原因を突き止めることができる。これに対して、日時を変えて初期トレーニングをやり直した結果、ステップS207の処理で理想伝送速度が実際の伝送速度とほぼ一致したような場合には、解析装置112は最終的に、その宅内装置103側のxTU−R116へ至る通信用線路102は問題がないことを表示装置113に表示することになる(ステップS208)。
以上の処理のうち、ステップS210で行われる問題解析およびステップS212で行われるエラー処理の中には、日時を要するものもある。しかしながら、回線特性提示システム100が特定のxDSLの接続業者と契約関係にある多くの宅内装置103を対象として伝送特性を一斉に診断するような場合には、診断にある程度の時間あるいは期間が必要となる。したがって、この期間内に、問題の生じる回線を洗い出し、これらについて最終的には専門家を介して問題を究明するものであっても、全体的な伝送特性の診断処理を効率化することになる。また、各種の原因を究明してデータベース114に反映させることで、次回以降の各回線の伝送特性の診断処理を迅速化すると共に、診断の信頼性を向上させることができる。この結果として、本実施例の回線特性提示システム100をxDSLの接続業者が頻繁に起動することで、いち早く、障害の情報とその原因を知ることができる。これにより、各ユーザも各種障害をできるだけ回避した快適な通信環境を得ることができる。
<発明の変形可能性>
本実施例では、ステップS203で初期トレーニングの結果の減衰量から線路長の解析を行ったが、線路長を他のデータを用いて求めてもよい。たとえば、ユーザ宅の電話番号から住所を検索して、その住所と最寄の局側装置部101の配置されている住所との関係から、両者を結ぶ通信用線路102の線路長を求めるようにしてもよい。また、実施例では局側装置側が1つの回線について回線特性を提示する場合について説明したが、局側装置側は定期的に、あるいは不定期にそれぞれの回線について回線特性を解析することで、これらの結果から通信ネットワークの全体の保守管理を行うことができる。
また、本実施例ではxDSLのサービスを行う接続業者が回線特性提示システム100の管理を行うようにしているが、xDSLの接続業者に各回線を提供する電話回線の設備保有を行う会社あるいは組織がこのシステムを運用するようにしてもよい。この場合には、それぞれの接続業者から回線の伝送量を測定する要求を受けてシステムを起動し、その結果に対して料金を接続業者側に請求することも可能である。また、個々のユーザがADSLの新規契約や契約の更新を検討する際に、単に回線の長さからそのユーザの使用している回線の伝送速度を推察させるデータを提供するだけでなく、より正確な伝送速度をユーザに提供するビジネスも実現可能である。
図6は、マンション等の不動産物件の賃貸や購入を検討するユーザに対して、居住場所の回線のより正確な伝送速度を提供するビジネスモデルを実現する伝送量提供システムの概要を表わしたものである。この伝送量提供システム300では、先の実施例で説明した局側装置部101における解析装置112がインターネット接続機能を備えた構成の第1〜第nの局側装置部3011〜301nを備えており、これらがインターネット302に常時接続されている。第1〜第nの局側装置部3011〜301nは、ここでは図示しないがそれぞれ対応するエリアの宅内装置と通信用線路を介して接続されている。
インターネット302には、マンション等の不動産物件の賃貸や購入を検討するユーザに対して仲介業務を行う不動産仲介業者303や、図示しないパーソナルコンピュータを備えたユーザ宅304や、不動産物件の仲介を行うサーバとしての不動産仲介サーバ305および不動産物件の仲介が成功したときにユーザや不動産仲介業者303から所定の手数料を徴収して第1〜第nの局側装置部3011〜301nや不動産仲介サーバ305に対して利益を還元する課金サーバ306が設けられている。
このような伝送量提供システム300では、ユーザがマンション等の不動産物件の賃貸や購入を検討するとき、不動産仲介業者303に出かけたりユーザ宅304で、それぞれの不動産物件の特徴を表わした物件情報の一部として、すでに設備として組み込まれた回線の現状における伝送速度を検討することができる。回線の伝送速度は、実施例で説明したように解析装置112が解析した現状のトレーニング結果を用いるので、単に回線の長さや減衰量から割り出した推測値に比べて精度がよく、インターネットの利用内容に応じた不動産物件をサーチすることが可能になる。また、不動産仲介業者303にとっても、個々の不動産物件におけるすでに契約を行っていた前の居住者が使用した回線の伝送速度の正確な値の提供が可能か否かで、顧客に対して提供するサービスの質が異なってくる。したがって、不動産仲介業者303は不動産仲介サーバ305を積極的に使用して課金サーバ306に料金の支払いを行うことが想定される。また、ユーザはマンション等の不動産の賃貸や購入を行う際に、わずかの付加料金を払ってでもより適切な通信環境の物件を自分で探すことができれば、不動産仲介業者303を介さずにインターネット302でオーナと契約を行うことができ、契約に伴う料金を節約することができる。もちろん、不動産仲介業者303を使用して不動産物件の契約を行うユーザの場合には、この情報提供のサービスを無料で行う不動産仲介業者を選択することが多くなる。
この図6に示した伝送量提供システム300では、xDSLに関する回線の伝送速度を対象としたが、これに限るものではない。たとえば、不動産仲介サーバ305が更に光ファイバ等の他の通信手段とそれぞれの物件における実際の伝送速度を測定する他の回線特性提示システムとも提携することで、物件情報の一部として回線の伝送速度についての情報提供を更に広範囲に拡大することができる。
本発明の一実施例における回線特性提示システムの概要を表わしたブロック図である。 本実施例の回線特性提示システムで局側装置部が行う処理の概要を表わした流れ図である。 本実施例で線路長を求めるテーブルの一部を表わした説明図である。 本実施例でデータベースに登録されている回線別の漏話発生源の一部を表わした説明図である。 ステップ205における理想伝送速度の解析処理を表わした流れ図である。 本発明の変形例における伝送量応答システムの概要を示すシステム構成図である。
符号の説明
100 回線特性提示システム
101、301 局側装置部
102 通信用線路(回線)
103 宅内装置
111 xTU−C
112 解析装置
114 データベース
116 xTU−R
121 CPU
122 記憶媒体
125、126 メモリ
300 伝送量提供システム
302 インターネット
303 不動産仲介業者
304 ユーザ宅
305 不動産仲介サーバ
306 課金サーバ

Claims (7)

  1. 局側装置に収容されたそれぞれの回線に接続され、初期トレーニングで対応する回線の特性を測定する回線測定手段を備えたモデムと、
    前記局側装置側でこのモデムの前記初期トレーニングで測定される測定データを解析して解析対象となった回線の測定結果としての信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得手段と、
    この測定結果取得手段によって取得された解析対象となった回線についての信号対雑音比およびその回線の線路長を用いて現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出手段と、
    この理想伝送速度算出手段の算出結果を提示する算出結果提示手段
    とを具備することを特徴とする回線特性提示システム。
  2. 局側装置に収容されたそれぞれの回線に接続され、初期トレーニングで対応する回線の特性を測定する回線測定手段を備えたモデムと、
    前記局側装置側でこのモデムの前記初期トレーニングで測定される測定データを解析して解析対象となった回線の測定結果としての線路長、信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得手段と、
    この測定結果取得手段によって取得された解析対象となった回線についての信号対雑音比および前記線路長から現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出手段と、
    この理想伝送速度算出手段の算出結果と前記解析対象となった回線について前記測定結果取得手段によって取得された実際の伝送速度を比較する伝送速度比較手段と、
    この伝送速度比較手段の比較結果から前記実際の伝送速度が前記理想伝送速度と実質的に相違するときその原因を解析する原因解析手段と、
    この原因解析手段の解析結果を提示する解析結果提示手段
    とを具備することを特徴とする回線特性提示システム。
  3. 前記モデムは前記解析対象となった回線の両端に配置されており、前記初期トレーニングで前記測定結果取得手段は回線の両端のモデムから回線の測定結果を取得することを特徴とする請求項1または請求項2記載の回線特性提示システム。
  4. 前記原因解析手段は、各種の信号対雑音比モデルを格納したモデル格納手段と、前記理想伝送速度算出手段の算出した理想伝送速度と前記実際の伝送速度の差分をとる差分演算手段と、この差分演算手段の演算結果と前記モデル格納手段の格納した各種の信号対雑音比モデルの相関関係を比較する相関関係比較手段と、この相関関係比較手段の比較結果から最も相関関係が高いモデルを選択するモデル選択手段を具備することを特徴とする請求項2記載の回線特性提示システム。
  5. 前記測定結果取得手段は、前記局側装置に収容されたそれぞれの回線の測定結果を間隔を置いて取得する手段であり、前記原因解析手段による回線ごとの解析結果を蓄積するデータベースを更に具備することを特徴とする請求項2記載の回線特性提示システム。
  6. 前記データベースにアクセスして所望の回線の特性を提示させる回線特性提示手段と、
    この回線特性提示手段の提示が行われるときこれに対して課金する課金手段
    とを具備することを特徴とする請求項5記載の回線特性提示システム。
  7. 局側装置側で回線に接続されたモデムの初期トレーニングを回線ごとに所定のタイミングで繰り返す初期トレーニング実行ステップと、
    この初期トレーニング実行ステップで回線別に前記モデムから得られた回線の測定データを収集して解析し、解析対象となったそれぞれの回線の測定結果としての線路長、信号対雑音比および信号の伝送速度を取得する測定結果取得ステップと、
    この測定結果取得ステップで取得されたそれぞれの回線についての信号対雑音比および前記線路長から現状の回線における理想的な伝送速度としての理想伝送速度を算出する理想伝送速度算出ステップと、
    この理想伝送速度算出すステップで算出した算出結果と前記解析対象となったそれぞれの回線について前記測定結果取得ステップで取得された実際の伝送速度を比較する伝送速度比較ステップと、
    この伝送速度比較ステップの比較結果から前記実際の伝送速度が前記理想伝送速度と実質的に相違する回線についてその原因を解析する原因解析ステップと、
    この原因解析ステップの解析結果を提示する解析結果提示ステップ
    とを具備することを特徴とする回線特性提示方法。
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