JP2006241373A - セルロースエステル組成物及びそれから得られる成形物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、DSが高い場合であっても、機械的強度、透明性、更に耐熱性を低下させることなく、生分解性速度が改良された(即ち、機械的強度、透明性、耐熱性、生分解性に優れた)セルロースエステル組成物、及び、それから得られる成形物を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、セルロースエステル100重量部に対して、下式で表されるポリオキサレートを1〜100重量部含有させて成るセルロースエステル組成物にある(式中、Rは、分岐構造或いは脂環式構造を含んでいてもよい、主鎖の炭素数が3〜12であるアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)。
【化1】
Figure 2006241373

【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロースエステル組成物、更に詳しくは、機械的強度及び透明性に優れた生分解性のセルロースエステル組成物及びそれから得られる成形物に関する。
工業部材から生活雑貨に至る幅広い各種物品には、ポリオレフィン等の合成樹脂が大量に使用されている。しかし、これらの合成樹脂は、高性能と長期安定性を目的に開発されているため、自然界に放出された後は分解されずにいつまでも原形を保っている。このため、使用済みの各種物品はごみとして収集されて焼却又は埋立てにより処理されているが、実際には散乱ごみが多量にあるなど、自然の生態系への悪影響が指摘されている。このような状況から、土中又は水中の微生物によって炭酸ガスと水に分解される生分解性ポリマーが、最終的には環境中に残存しないことから、前記のような環境問題を軽減できるものとして注目されてきている。
生分解性ポリマーの一つとして、安価で循環可能な資源から得られる天然物由来のセルロース系ポリマーが知られている。しかし、セルロースは可塑性がなく融点も示さないことから、合成樹脂としての利用を図るには不適当である。このため、熱可塑性を付与する目的でセルロースのエステル化が行われているが、得られるエステル化物(セルロースエステル)は、エステル基による置換度(DS)を高くすれば可塑性は期待できるものの、天然物由来にも拘らず、生分解性が著しく低下するという問題を有していた。
このようなセルロースエステルの生分解性を向上させるために、他の生分解性ポリマーをブレンドすることが知られている。例えば、非特許文献1には、セルロースアセテートプロピオネートにポリアルキレングルタレートなどをブレンドしてブレンド物を得る方法が報告されている。しかし、この方法では、確かにブレンドによって生分解性が改良されているが、これはDSが低い場合(例えば、DS2.2以下)であって、それ以上の置換度であればポリアルキレングルタレートなどの分解が進むのみで、満足できるものではない。更に、このブレンド物では、生分解性について限られた範囲で改善が認められるとしても、反面、機械的強度が大きく低下し透明性も劣るという問題が指摘されている。また、ポリアルキレングルタレートなどは低融点ポリマーであるため、そのブレンド物では耐熱性が著しく低下することも明らかである。このように、従来の技術では、他の生分解性ポリマーのブレンドによって、機械的強度、透明性、更に耐熱性を損なうことなく、セルロースエステルの生分解性を改良することはできなかった。
一方、特許文献1には、シュウ酸と脂肪族アルコールとのオリゴエステルが優れた生分解性を示すものとして開示されている。しかしながら、このオリゴエステルは、実用的な合成樹脂として使用するには機械的強度が充分とは言い難く、特に弾性率などの剛性の向上が望まれていた。
また、特許文献2には、生分解性ポリマーとしてポリエチレンオキサレートが開示され、更に酢酸セルロースを配合してなる組成物が開示されている。しかし、この組成物は、物性等についての記載が全くない上に、ポリエチレンオキサレートの融点が酢酸セルロースよりかなり低いことから、実質的に成形品を得ることが難しいものであるのは明らかである。
Prog.Polym.Sci.,vol.26,1603(2001) 特開2002−145691号公報 特開平9−316181号公報
従来、エステル基による置換度(DS)の高いセルロールエステルでは、機械的強度、透明性、更に耐熱性を損なうことなく、生分解性を改良する方法は知られていなかった。本発明は、DSが高い場合であっても、機械的強度、透明性、更に耐熱性を低下させることなく、生分解性速度が改良された(即ち、機械的強度、透明性、耐熱性、生分解性に優れた)セルロースエステル組成物、及び、それから得られる成形物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、セルロースエステルに一定量のポリオキサレートをブレンドすることによって、生分解性を低下させることなく、得られるブレンド物の機械的強度や透明性や耐熱性を改良できることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(1)セルロースエステル100重量部に対して、下式で表されるポリオキサレートを1〜100重量部含有させて成るセルロースエステル組成物にある(式中、Rは、分岐構造或いは脂環式構造を含んでいてもよい、主鎖の炭素数が3〜12であるアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)。
Figure 2006241373
また、本発明のセルロースエステル組成物の好ましい態様には、次のものが挙げられる。
(2)ポリオキサレートの数平均分子量が20000〜70000で、セルロースエステルの数平均分子量が10000〜500000である前記(1)のセルロースエステル組成物。
(3)ポリオキサレートがポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレートである前記(1)又は(2)のセルロースエステル組成物。
(4)セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネートである、前記(1)〜(3)のいずれかのセルロースエステル組成物。
更に、本発明は、(5)前記いずれかのセルロースエステル組成物から得られる成形物にもある。
本発明により、生分解性に乏しいセルロースエステルに適度な生分解性を付与して、機械的強度や透明性、更に耐熱性を損なうことなく生分解性が改良された(即ち、機械的強度、透明性、耐熱性、生分解性に優れた)セルロースエステル組成物及びそれから得られる成形物を提供することができる。このセルロースエステル組成物は、フィルム或いはシート、各種成形品、繊維製品など、従来、セルロース系ポリマーが使用されている広範な用途に用いることができる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明で使用するセルロースエステルは、一般的にはセルロースを適当な脂肪酸化合物(脂肪酸無水物、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩化物など;脂肪酸部分の炭素数は好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜6である)でエステル化することで製造される実用的な強度を有する充分な高分子量のものであればよく、市販品を入手できる。その数平均分子量(M)は10000〜500000、好ましくは30000〜200000である。代表的なものとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートカプロエート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースオクタノエート、セルロースラウレート、セルロースステアレート、セルロースエイコサノエートなどが挙げられる。また、エステル基による置換度(DS)は好ましくは2.2〜2.8程度である。
本発明で使用するポリオキサレートは前記式で表すことができる。その分子量は特に制限されないが、後述するように、セルロースエステルとの溶融混練時に両者の溶融粘度が大きく異なると均一な組成物を得ることが難しくなるので、セルロースエステルの分子量との関係で選択されるべきで、一般的に言えば、ポリオキサレートの数平均分子量(M)は20000〜70000、更には25000〜70000であることが好ましい。前記化学式の「n」によって表される重合度が、数平均分子量が20000未満になるような低い値であると、得られる成形物の強度が低くなる。また、「n」が大きすぎると生分解性が悪くなる。なお、該ポリオキサレートの重量平均分子量(M)は30000〜200000の範囲であることが好ましく、重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)の比(M/M)で規定される分子量分布は1〜5が好ましい。
本発明で使用するポリオキサレートの脂肪族ジオールユニットは、前記式のアルキレン基Rにより規定される。アルキレン基Rの炭素鎖が短かすぎると、ポリオキサレートが硬くて脆いものとなる。アルキレン基Rの炭素鎖が長すぎると、ポリオキサレートが疎水的になり、生分解性が低下して好ましくない。従って、前記化学式のアルキレン基Rは主鎖の炭素数が3〜12であるものが好適である。なお、アルキレン基Rは主鎖の炭素数が偶数でも奇数でもよく、直鎖構造に限らず、分岐構造或いは脂環式構造を含んでいても差し支えない。
前記脂肪族ジオールユニット源としては、アルキレン基Rの主鎖の炭素数が3〜12である脂肪族ジオールが使用される。このような脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、trans(又はcis)−1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これら脂肪族ジオールはポリオキサレート中に2種類以上含有されていてもよい。脂肪族ジオールの中では、セルロースエステルに近い融点を示すポリオキサレートを与えるものが好ましく、例えば、セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネートである場合、脂肪族ジオールとしては1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適である。
脂肪族ジオールユニットの構造は、ポリオキサレートの融点や結晶化速度などへ著しく影響を及ぼすため、溶融加工条件或いは成形物の使用温度に応じた適切な脂肪族ジオールを選択することになる。本発明では、脂肪族ジオールの中で1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適である。
前記脂肪族ジオールには、必要に応じて、ポリオキサレートの溶融加工性或いは成形物の機械的特性を改良する目的で、多価アルコール化合物(前記脂肪族ジオールを除く)を一部含有させてもよい。このような多価アルコール化合物としては、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。但し、多価アルコール化合物の含有割合は脂肪族ジオールの30モル%以下、更には10モル%以下であることが好ましい。多価アルコール化合物が多すぎると、重合時或いは溶融加工時にゲル化を招く恐れがあって好ましくない。
更に、前記脂肪族ジオールには、ポリオキサレートの耐熱性を上げるなどの所望に応じて、芳香族ジオールを一部含有させてもよい。このような芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、p−キシリレングリコール、ハイドロキノンなどが挙げられる。但し、芳香族ジオールの使用割合は脂肪族ジオールの50モル%未満である。芳香族ジオールが多すぎると、ポリオキサレートの生分解性が悪くなる恐れがあって好ましくない。
本発明で使用するポリオキサレートのシュウ酸源としては、シュウ酸、シュウ酸ジアルキル(シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル等)、シュウ酸ジアリール(シュウ酸ジフェニル、シュウ酸ジp−トリル等)などが使用できる。これらシュウ酸源は組み合わせて使用することもできる。
更に、前記シュウ酸源には、ポリオキサレートの耐熱性を上げるなどの所望に応じて、テレフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルや炭酸ジフェニル等の炭酸エステルを一部含有させてもよい。但し、これらエステルの使用割合は前記シュウ酸源の50モル%未満であり、多すぎるとポリオキサレートの生分解性が悪くなる恐れがあって好ましくない。
本発明で使用するポリオキサレートは、一般的によく知られている重縮合反応(好ましくは溶融重合)により製造することができる。例えば、前記シュウ酸源と脂肪族ジオールを触媒と共に反応器に充填して適切な重合条件下で重縮合することにより製造できる。触媒としては、P、Ti、Ge、Zn、Fe、Sn、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Ca、Hfなどの化合物が好ましい。特に、有機チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく、例えば、チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等)、ジスタノキサン化合物(1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等)、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレートなどが高活性で好適である。
本発明のセルロースエステル組成物は、前記セルロースエステル100重量部に対して、前記ポリオキサレートを1〜100重量部、好ましくは5〜90重量部、更に好ましくは10〜70重量部含んで成るものである。ポリオキサレートの含量が1重量部未満であると生分解性の改善効果が充分ではなく、逆に100重量部を超えると機械的強度が低下して好ましくない。
本発明のセルロースエステル組成物には、セルロースエステル及びポリオキサレートの他に、必要に応じて他の成分(添加剤、他の重合体等)を単独又は複数で配合することもできる。添加剤としては、結晶核剤、顔料、染料、耐熱剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、発泡剤、安定剤、充填剤(タルク、クレイ、モンモリロナイト、マイカ、ゼオライト、ゾノトライト、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末等)、強化材(ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維等)、難燃剤、可塑剤、防水剤(ワックス、シリコンオイル、高級アルコール、ラノリン等)などが挙げられ、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
また、他の重合体としては、天然又は合成高分子が挙げられる。天然高分子としては、澱粉、キトサン、アルギン酸、天然ゴムなどが挙げることができ、合成高分子としては、ポリカプロラクトン又はその共重合体、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、コハク酸/アジピン酸コポリエステル、コハク酸/テレフタル酸コポリエステル、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、(3−ヒドロキシブタン酸/4−ヒドロキシブタン酸)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリグルタミン酸エステル、ポリエステルゴム、ポリアミドゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水添SBS等のゴム又はエラストマーなどを挙げることができる。
本発明のセルロースエステル組成物は、前記のセルロースエステル及びポリオキサレートを(必要に応じて前記の他の成分も配合して)公知の方法で混合することによって製造される。最も一般的な方法は、一軸押出機、二軸押出機、二軸ローター混練機等の連続式混練装置、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサー等のバッチ式混練装置を用いて溶融混練するもので、混練方法や条件等について特に制限はない。また、溶剤を用いて溶液ブレンドする方法でもよい。
本発明のセルロースエステル組成物は、各種の成形方法によって、フィルム或いはシート、各種成形品、繊維製品などの成形物にすることが可能である。
フィルム或いはシートは、押出成形法(Tダイ法、インフレーション法等)、プレス法、カレンダーロール法など公知の方法によって得ることができる。得られるフィルム或いはシートは延伸加工(一軸延伸、二軸延伸)が可能であり、他のポリマー、金属、紙等との積層品を製造することもできる。
各種成形品としては、射出成形品、中空成形品、熱成形品(真空成形品、圧空成形品等)、発泡成形品、プレス成形品などが挙げられる。また、繊維製品としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、チョップ、不織布などが挙げられ、その他、ロープ、網、フェルト、織物などの加工品も挙げられる。
本発明のセルロースエステル組成物から得られる成形物は、公知の広範な用途に使用することができる。フィルム或いはシートの用途としては、農業資材(農業・園芸用のマルチフィルム、シードテープ、農薬袋等)、食品廃棄物用袋(堆肥用ゴミ袋、生ゴミ袋等)、事務用品(紙資源回収用コーティング紙、プリントラミ、カードカバー、窓枠封筒、印刷紙用カバーフィルム等)、一般包装用途(紙おむつパックシート、ランドリーバッグ、発泡シート、雑貨用収縮フィルム、レトルト食品用パック、食品包装用フィルム、ラップフィルム等)、ショッピングバッグ、使い捨て手袋などが挙げられる。
各種成形品の用途としては、食品関係(食品トレー、食品容器、食品又は飲料ボトル、生鮮食品用箱、食器等)、日用雑貨関係(化粧品容器、洗剤容器、シャンプー容器、トイレタリー用品等)、農業・園芸関係(育苗資材、鉢、プランター等)、事務用品、スポーツ・レジャー用品、医療器具、電気・電子部品、コンピューター・情報機器部品、自動車部材などが挙げられる。また、繊維製品の用途としては、各種網(魚網、防虫網等)、各種ロープ(農業用ロープ、育木用ロープ等)、各種糸(釣り糸、縫合糸等)、各種不織布製品(紙オムツ、生理・衛生用品等)、フィルター、衣服などが挙げられる。
次に、実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、ポリオキサレートの物性測定、セルロースエステル組成物の製造、成形及び物性評価は以下のように行った。
(1)ポリオキサレートの分子量測定:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量(M)を測定した。測定条件を次に示す。
・使用機種:東ソー製HLC−8020
・カラム:Shodex K−80M(2本)
・溶媒:クロロホルム
・試料濃度:0.3mg/ml
・カラム温度:38℃
・標準試料:ポリスチレン
(2)ポリオキサレートの融点:融点は、示差走査熱量測定(DSC)における第2昇温過程の吸熱ピーク温度とした。測定条件を次に示す。
・使用機種:パーキンエルマー製DSC−7
・第1昇温過程:−100℃〜融点以上(試料により設定)、昇温速度10℃/分、保持5分
・第一降温過程:融点以上(試料により設定)〜−100℃、降温速度10℃/分、保持5分
・第二昇温過程:−100℃から融点以上(試料により設定)、昇温速度10℃/分
(3)セルロースエステル組成物の作製:210℃に設定したニーダータイプのバッチ式混練装置に所定量のポリオキサレートを投入して可塑化させた後、所定量のセルロースエステルを添加して溶融混練した。操作は窒素中で行った。
(4)セルロースエステル組成物のシート成形:神籐金属工業所製圧縮成形機を用いてシート成形を行った。即ち、前記溶融混練物をプラスチックカッターでペレット大に切ったものを210℃で5分間予熱して2.9MPaで5分間加圧した後、20℃に急冷してほぼ150ミクロン厚みのプレスシートを作製した。
(5)セルロースエステル組成物成形シートの引張特性:前記プレスシートから打ち抜いたダンベル型試験片を用いて、引張強度と引張弾性率を測定した。測定条件を次に示す。
・使用機種:オリエンテック製テンシロン
・使用試料:JIS2号引張試験片
・引張速度:100mm/分
・測定温度:23℃
・測定湿度:50%RH
(6)セルロースエステル組成物成形シートの透明性:前記プレスシートについて目視により透明性を評価した。
(7)セルロースエステル組成物成形シートの生分解性:前記プレスシートから1cm×2cm程度の大きさの小片を切り出してポリエチレン製ネットに入れ、植物破砕物や鶏糞等を混合したコンポスト中にネットごと埋設した。そして、このコンポストを58℃恒温槽でコンポスト下部から水飽和空気を流通させながら所定時間静置した。所定時間経過後、ネットごと取り出して外観と重量測定による重量残存率(%)により生分解性を評価した。計算は次の式によった。
重量残存率(%)=W/W×100
(Wは埋設処理後の小片重量(mg)、Wは埋設処理前の小片重量(mg)を表す。)
〔参考例〕
1Lセパラブルフラスコに、シクロヘキンサンジメタノール180.02g、シュウ酸ジフェニル302.39g、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレート26.1mgを仕込んで、常圧下、160℃まで1時間で昇温し、更に190℃に昇温して1時間反応させた。次いで、13.3KPa(100mmHg)まで1時間で減圧した後、210℃に昇温すると共に133Pa(1mmHg)まで減圧して1時間反応させた。得られたポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレートは、M:45900、融点:174℃であった。なお、反応は窒素雰気下で行った。
〔実施例1〕
:75000、融点:210℃のセルロースアセテートプロピオネート(アクロス製;DS2.55)100重量部と、前記ポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレート43重量部とからなるセルロースエステル組成物を作製してシート成形した。この成形シートの物性評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜4〕
セルロースアセテートプロピオネートとポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレートとの配合割合を表1に示すように変えたほかは、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
〔比較例1〕
セルロースアセテートプロピオネートのみを用いたほかは、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
Figure 2006241373
本発明の組成物は、フィルム或いはシート、各種成形品、繊維製品など、従来、セルロース系ポリマーが使用されている広範な用途に用いることができる。

Claims (5)

  1. セルロースエステル100重量部に対して、下式で表されるポリオキサレートを1〜100重量部含有させて成るセルロースエステル組成物。
    Figure 2006241373
    (式中、Rは、分岐構造或いは脂環式構造を含んでいてもよい、主鎖の炭素数が3〜12であるアルキレン基を表し、nは正の整数を表す。)
  2. ポリオキサレートの数平均分子量が20000〜70000で、セルロースエステルの数平均分子量が10000〜500000である、請求項1記載のセルロースエステル組成物。
  3. ポリオキサレートがポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレートである、請求項1又は2記載のセルロースエステル組成物。
  4. セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネートである、請求項1〜3のいずれか記載のセルロースエステル組成物
  5. 請求項1〜4のいずれか記載のセルロースエステル組成物から得られる成形物。
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