JP2006240981A - 非水硬化性コーティング組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 石灰を被膜成分として含む非水硬化性のコーティング組成物について、乾燥被膜のひび割れという問題を解消してなる組成物を提供する。また石灰を被膜成分として含む非水硬化性のコーティング組成物について、塗膜のひび割れを抑制する方法を提供する。
【解決手段】 石灰を被膜成分として含む非水硬化性のコーティング組成物の一成分に、キレート作用を有する化合物を使用する。好ましくは分子量1000以下、より好ましくは600以下のカルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物または還元性有機酸系キレート化合物などの有機系キレート、または燐酸塩や硫酸塩などの無機系キレートを使用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、石灰を被膜成分として含む非水硬化性のコーティング組成物、及びその調製方法に関する。より詳細には、本発明は被膜にひび割れが生じにくい、すなわち耐ひび割れ性の被膜を形成することができる非水硬化性のコーティング組成物、及びその調製方法に関する。さらに本発明は、石灰を被膜成分として含む液状またはペースト状のコーティング組成物を用いて形成される被膜について、ひび割れを抑制するための方法に関する。
石灰を主成分とする気硬性の被覆材料として、古くから漆喰およびドロマイトプラスターが知られている。これらの被覆材料は、落ち着きのある重厚な仕上がり感に加えて、調湿性(吸湿性及び放湿性)、防カビ性、抗菌性、消臭性、および防火性といった機能に優れているため、シックハウス症候群が問題となっている昨今、環境改善用塗材として再び見直されている。
しかしながら、漆喰やドロマイトプラスターは、乾燥硬化時の収縮が大きく、ひび割れを発生しやすく脆いという欠点がある。特に厚塗り時には乾燥収縮率が大きくなるため、ひび割れが発生しやすい。このため、従来の漆喰やドロマイトプラスターは、割れ防止のためにすさ(麻、藁、紙などを短く裁断したもの)等の繊維材料を配合した材料を用いて、1〜2mm以下の厚さに薄塗りし、一旦乾燥硬化させた後に、上から上塗りすることを繰り返して所望の厚さに仕上げる施工方法が採用されている。さらに、割れを防止するためには、重ね塗り時にコテの押さえ具合を調整しながら被膜の乾燥収縮を平均にならすという高度な職人技が要求される。このため、漆喰やドロマイトプラスターの施工には、熟練した技術と長い工期が必要とされ、その結果、費用が多大になるという問題があった。
こうした漆喰やドロマイトプラスターの乾燥時のひび割れを防止する方法として、従来から種々の方法が提案されている。例えば、被覆組成物として、消石灰及び/又はドロマイトプラスター、スチレンブタジエンゴムラテックス、ウェランガム及び界面活性剤を含む石灰系プラスター組成物を使用する方法(特許文献1)、消石灰に特定の割合で珪砂、合成樹脂、すさ、クレイ成分、分散剤、セルロース系増粘剤及び消泡剤を含む組成物を使用する方法(特許文献2)、消石灰に特定の割合で骨材、合成樹脂バインダー、及び小麦ファイバーを含む組成物を使用する方法(特許文献3)、並びに石灰系プラスターに、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体とビニル単量体を乳化重合して得られるラテックスを含む石灰系プラスター改質剤を配合した石灰系プラスター組成物を使用する方法(特許文献4)が提案されている。
しかしながら、これらの方法は、いずれも漆喰やドロマイトプラスターの被膜のひび割れを防止する方法としては十分ではない。
特開2003−171167号公報 特開2001−192255号公報 特開2003−306614号公報 特開2002−12460号公報
本発明は、石灰を含む被膜の乾燥時のひび割れを解消してなる非水硬化性コーティング組成物を提供することを目的とする。より詳細には本発明は、乾燥時のひび割れを抑制しながら、一度に厚塗りしたり、さざ波やウエーブ仕上げなどといった様々なテクスチャーに仕上げることが可能な、石灰を含む非水硬化性コーティング組成物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、石灰を被膜成分として含むコーティング組成物について、被膜のひび割れを抑制するための方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく日夜鋭意研究を重ねていたところ、石灰を被膜成分として含むコーティング組成物に、カルシウムイオンに対してキレート作用を有する化合物(キレート化合物)を配合することによって、厚塗りした場合でも被膜にひび割れが生じにくくなることを見いだし、かかる技術が当業界の長年の課題であった漆喰やドロマイトプラスターの乾燥初期のひび割れを解消する上で極めて有用であることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。
本発明は下記I〜VIIIに掲げる態様を含む:
I.非水硬化性コーティング組成物
(I-1)石灰、結合剤、キレート化合物および水を含有することを特徴とする非水硬化性コーティング組成物。
(I-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(I-1)記載の非水硬化性コーティング組成物。
(I-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(I-2)記載の非水硬化性コーティング組成物。
(I-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載の非水硬化性コーティング組成物。
(I-5)さらに白色顔料を含むことを特徴とする(I-1)乃至(I-4)いずれかに記載の非水硬化性コーティング組成物。
(I-6)ケイ素化合物を含むことを特徴とする(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載の非水硬化性コーティング組成物。
(I-7)ケイ素化合物が、ゼオライト、シリカ、珪藻土、フライアッシュ、ケイ酸ナトリウム、およびメタケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である(I-6)に記載する非水硬化性コーティング組成物。
(I-8)コーティング組成物が塗料、塗材、シーラー、またはプライマーである(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載の非水硬化性コーティング組成物。
II.非水硬化性コーティング組成物包装体
(II-1)上記(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する非水硬化性コーティング組成物を容器内に収納してなる非水硬化性コーティング組成物包装体。
(II-2)容器が可撓性容器である(II-1)記載の非水硬化性コーティング組成物包装体。
III.耐ひび割れ性の被膜を形成する非水硬化性コーティング組成物の製造方法
(III-1)石灰を含む被膜成分とキレート化合物とを水とともに混合して液状またはペースト状に調製する工程を有する、耐ひび割れ性の被膜を形成する非水硬化性コーティング組成物の製造方法。
(III-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(III-1)記載の方法。
(III-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(III-2)記載の方法。
(III-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載の方法。
IV.耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成する方法
(IV-1)コーティング組成物として、石灰、キレート化合物および水を含む組成物を用いることを特徴とする、耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成するための方法。
(IV-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(IV-1)記載の方法。
(IV-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(IV-2)記載の方法。
(IV-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(IV-1)または(IV-3)記載の方法。
V.ひび割れ抑制方法
(V-1)石灰を被膜成分として含む被膜のひび割れ抑制方法であって、被膜形成用のコーティング組成物として石灰、キレート化合物および水を含有する組成物を用いることを特徴とする方法。
(V-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(V-1)記載の方法。
(V-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(V-2)記載の方法。
(V-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(V-1)乃至(V-3)のいずれかに記載の方法。
VI.ひび割れが抑制された被膜(耐ひび割れ性の被膜)を有する被覆物
(VI-1)上記(IV-1)乃至(IV-4)または(V-1)乃至(V-4)のいずれかに記載する方法によって形成される、耐ひび割れ性の被膜を有する被覆物。
VII.チクソトロピー性の緩和方法
(VII-1)キレート化合物を配合することを特徴とする、石灰および水を含む組成物のチクソトロピー性の緩和方法。
(VII-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(VII-1)記載の方法。
(VII-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(VII-2)記載の方法。
(VII-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(VII-1)乃至(VII-3)のいずれかに記載の方法。
VIII.ポゾラン反応抑制方法
(VIII-1)キレート化合物を共存させることを特徴とする、石灰、ケイ素化合物および水を含む組成物中で生じるポゾラン反応を抑制する方法。
(VIII-2)キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、(VIII-1)記載の方法。
(VIII-3)有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(VIII-2)記載の方法。
(VIII-4)キレート化合物が、分子量600以下のキレート化合物である(VIII-1)乃至(VIII-3)のいずれかに記載の方法。
(VIII-5)ケイ素化合物が、ゼオライト、シリカ、珪藻土、フライアッシュ、ケイ酸ナトリウム、およびメタケイ酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である(VIII-1)乃至(VIII-4)のいずれかに記載の方法。
IX.キレート化合物の使用
(IX-1)耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成する水含有コーティング組成物の製造のための、キレート化合物の使用。
(IX-2)チクソトロピー性が緩和された石灰および水を含む組成物の製造のための、キレート化合物の使用。
(IX-3)ポゾラン反応が抑制された石灰、ケイ素化合物および水を含む組成物の製造のための、キレート化合物の使用。
本発明のコーティング組成物によると、キレート化合物の配合によって被膜にひび割れに対する抵抗性を与えることができるため、従来石灰を被膜成分として含む非水硬化性のコーティング組成物(漆喰、ドロマイトプラスター、石灰系仕上げ塗材、石灰系塗料など)について問題となっていた乾燥時の被膜のひび割れを有意に抑制することができる。ゆえに、本発明のコーティング組成物は、ひび割れの発生が抑制されてなる(耐ひび割れ性の)被膜の形成に有効に使用することができる。また本発明のコーティング組成物によれば、熟練した技術がなくても、ひび割れを生じることなく所望の厚みや所望の模様を有する被膜を形成することができ、簡便に意匠性に優れた被覆物を調製することができる。
また本発明のひび割れ抑制方法または耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成する方法によると、石灰を被膜成分として含むコーティング組成物に関して長年の問題であった乾燥初期のひび割れを抑制することができる。このため、本発明の方法は、石灰を含むコーティング組成物について耐ひび割れ性の被膜を形成するために有効に使用することができる。また本発明の方法によれば、熟練した技術がなくても、ひび割れを生じることなく所望の厚みや所望の模様を有する被膜を形成することができ、簡便に意匠性に優れた被覆物を調製することができる。
I.非水硬化性コーティング組成物
本発明の非水硬化性コーティング組成物は、石灰を被膜成分として含むコーティング組成物であって、成分として、上記石灰に加えてキレート化合物、結合剤、および水を含有することを特徴とするものである。
ここで「非水硬化性」とは、コーティング組成物が水存在下で凝結固化しないこと、言い換えれば、水を含んだまま使用可能な状態で保存可能であることを意味する。より詳細には、保存後もそのまま又は必要であれば多少攪拌・混練したり、若しくは少量の水を添加して混合するだけで、コーティング材(塗料、塗材、シーラー、プライマーなど)として使用できる性質を備えることを意味する。この意味において、本発明の非水硬化性コーティング組成物は、セメントや石こうなどの水硬性物質を含み、水存在下で凝結固化する性質を有する組成物とは区別される。
また「コーティング組成物」とは、対象物に塗布または吹きつけ塗工されることによって被膜を形成する組成物であり、具体的には塗料、塗材、シーラー、プライマーなどを制限なく挙げることができる。耐ひび割れ性の被膜が形成できるという効果を有効に利用できることから、好ましくは仕上げ材として使用されえる塗料や塗材である。なかでも好適には、建築物の天井や内外壁面;クロスやボードやパネルなどの建築部材;家具;トンネル壁面、ガードレール材、遮音壁材、防護壁材、橋梁構造物などの土木用部材;などの下地や仕上げに使用される塗料や塗材を挙げることができる。
石灰としては、具体的には酸化カルシウムを主成分とする生石灰、及び水酸化カルシウムを主成分とする消石灰を挙げることができる。なお、これらの石灰としては、工業用石灰、塩焼き石灰、貝灰(貝焼灰)、建築・土木部材などの廃材から再生された再生石灰を使用することもできる。これらの石灰は1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは、気硬性材料で漆喰やドロマイトプラスターの主原料となる消石灰である。なお、ここで生石灰とは主成分として酸化カルシウムを含有する石灰、消石灰とは水酸化カルシウムを含有する石灰をそれぞれ意味し、その限りにおいて他成分として、炭酸カルシウム(カルサイト,アラゴナイト,バテライト,塩基性炭酸カルシウム及び非晶質炭酸カルシウムなどの沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)及びドロマイト(CaMg(CO3)2)などを含有していることを特に妨げるものではない。また、消石灰は他成分として生石灰(酸化カルシウム)を、生石灰は他成分として消石灰(水酸化カルシウム)を含んでいても良い。従って、本発明のコーティング組成物には、消石灰を主成分として水で練り上げた漆喰、白雲石を焼成し水を作用して生成する水酸化マグネシウムと水酸化カルシウム(消石灰)を主成分として水で練り上げたドロマイトプラスターが含まれる。
なお、コーティング組成物に配合する上記石灰の割合は、特に制限されないが、コーティング組成物の固形分100重量%あたりの石灰の配合割合として通常5〜95重量%の範囲から適宜選択することができる。石灰の配合割合の下限値として10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、または40重量%を挙げることができる。また上限値として80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、または60重量%を挙げることができる。より具体的な配合割合として、制限されないが、15〜75重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは35〜70重量%、さらにまた好ましくは40〜70重量%、特に好ましくは40〜65重量%、また特に好ましくは40〜60重量%を例示することができる。
本発明のコーティング組成物に配合される水の割合は特に制限されない。好ましくはコーティング組成物100重量%あたり水が10〜70重量%の割合で含まれるような範囲から適宜選択することができる。この場合、コーティング組成物は固形分が30〜90重量%の割合になるように調製される。より具体的には、例えばコーティング組成物をスプレー、ローラーまたは刷毛塗りに適した液状形態(所謂、塗料形態)に調製する場合には通常水が30〜60重量%、好ましくは35〜50重量%の割合で含まれるように調製するのが望ましい。またコーティング組成物を鏝塗りに適したペースト状形態(所謂、塗材形態)に調製する場合には通常水が10〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の割合で含まれるように調製するのが望ましい。
本発明で使用するキレート化合物は、キレート作用に基づいてカルシウムイオンなどの金属イオンを捕捉ないしは封鎖するイオン封鎖能を有する化合物(イオン封鎖剤)であり、かかる作用を有するものであれば、特にその種類を制限するものではない。通常分子量が2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは700以下、さらに好ましくは600以下、さらにまた好ましくは500以下、特に好ましくは50〜450程度の分子量を有する低分子量のキレート化合物である。
かかるキレート化合物として、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物、および還元性有機酸系キレート化合物などの有機系キレート化合物;ケイ酸塩、リン酸塩及び硫酸塩といった無機系キレート化合物を挙げることができる。これらのキレート化合物は、いずれも当業者で周知である。
制限はされないが、カルボン酸系キレート化合物としては、シュウ酸、プロピオン酸、スピクルスポール酸(spiculisporic acid)、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、マロン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの異性体等のカルボン酸またはその塩;クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、ヒドロキシマロン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルクロン酸、β-D-グルコピラヌロン酸、サリチル酸、マンデル酸、グルコヘプタン酸、アラボン酸、およびこれらの異性体等のヒドロキシカルボン酸またはその塩;ニトリル三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、L-グルタミン酸二酢酸(GLDA)、L-アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、ジメルカプトールコハク酸(DMSA)、及びメチルグリシン二酢酸(MGDA)などのアミノカルボン酸またはその塩;ジヒドロキシエチルグリシン(DEG)、トリエタノールアミン(TEA)、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HEIDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、及び1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)等のヒドロキシアミノカルボン酸またはその塩;カルボキシメチルタルトロン酸(CMT)、及びカルボキシメチルオキシ琥珀酸(CMOS)等のエーテルカルボン酸またはその塩;などを挙げることができる。なお、水中で遊離して上記のカルボン酸となる化合物、例えば水中で遊離してグルコン酸となるグルコノデルタラクトンまたはその塩も本発明でいうカルボン酸系キレート化合物に含まれる。
ホスホン酸系キレート化合物としては、フィチン酸、アミノメチレンホスホン酸(NMP)、アミノトリメチルホスホン酸(NTMP)、メチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等のヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)等のホスホノカルボン酸誘導体、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、並びにこれらの塩を挙げることができる。
スルホン酸系キレート化合物としては、ジメルカプトプロパノールスルホン酸(DMPS)またはこの塩を挙げることができる。
還元性有機酸系キレート化合物としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸などの還元性(抗酸化作用)を有する有機酸ならびにこれらの塩を挙げることができる。
無機系キレート化合物としては、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウムおよびオルソケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩;オルソ燐酸ナトリウム、リンピロ燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、テトラ燐酸ナトリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム等の燐酸塩;硫酸ナトリウムおよびスルファミン酸等の硫酸塩を挙げることができる。好ましくは燐酸塩である。ケイ酸塩は、他の無機系キレート化合物または有機系キレート化合物と組み合わせて使用することが好ましい。
上記に掲げる各種化合物の塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、またはストロンチウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;プロトン化されたアミンまたはプロトン化されたアルカノールアミンの塩;亜鉛や鉄などの金属塩を例示することができる。好ましくはナトリウム塩である。なお、これらの各種キレート化合物は水和物であってもよい。
これらのキレート化合物は1種単独で使用することもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明のコーティング組成物に配合されるキレート化合物の割合は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に制限されず、そのカルシウムイオン封鎖力(捕捉力)に応じて、またコーティング組成物中に含まれる石灰の種類やコーティング組成物の用法(例えば、薄塗りや厚塗りの別など)などに応じて、コーティング組成物100重量%あたり通常0.01〜5重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.02〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%の割合を例示することができる。
本発明で使用する結合剤としては、石灰同士の初期接着を高めたり、またコーティング組成物の施工面に対する付着力を高める性質を有するものであればよく、天然糊料(つのまた、フノリ、うるち米、海藻糊、銀杏糊、膠、カゼイン、デキストリン、増粘多糖類など)、合成糊料(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメトルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルアルコールなどの化学糊)、合成樹脂、または無機接着剤(ケイ酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、セラミックス等)をそれぞれ任意に使用することができる。
ここで合成樹脂としては水溶性又は水分散性樹脂が好ましく、具体的にはスチレン−アクリルエステル,スチレン−アクリロニトリル及びスチレン−アクリルアミド−アクリル酸エチルなどのスチレン/アクリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステルや酢酸ビニル−メタクリル酸エステル等の酢酸ビニル/アクリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル等のブタジエン/アクリル共重合体、塩化ビニル/アクリル共重合体、塩化ビニリデン/アクリル共重合体、ベオバ/アクリル共重合体、アクリル共重合体、塩化ビニル/エチレン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/ベオバ共重合体、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/ベオバ共重合体、酢酸ビニル/フマール酸エステル(例えば酢酸ビニル/フマール酸ジブチル等)、酢酸ビニル/マレイン酸エステル(例えば酢酸ビニル/マレイン酸ジブチル等);ベオバ/エチレン、アクリル変性・アルキド樹脂、アクリル変性・酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコン変性アクリル樹脂等のビニル系合成樹脂またはポリウレタン樹脂を例示することができる。耐候性の観点から、好ましくはアクリル系の樹脂である。アクリル系の樹脂としてより好適には、特許第3094227号公報に記載される(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、または(メタ)アクリロニトリルの少なくとも1つをモノマー成分として構成される重合体(ホモポリマー、コポリマー)を例示することができる(特許第3094227号公報、段落[0015]〜[0017]参照。当該特許公報の記載は本発明の明細書の記載として援用される)。
また増粘多糖類としては、ウェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、およびタマリンドシードガムなどの天然植物または微生物に由来するガム質を挙げることができる。
本発明のコーティング組成物に配合する上記結合剤の割合は、特に制限されないが、例えば、コーティング組成物の固形分100重量%あたりの結合剤の配合割合としては固形換算で通常0.2〜50重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%である。
本発明のコーティング組成物は、石灰、キレート化合物、結合剤及び水を基本成分とするものであるが、本発明の効果を奏することを限度として、他の成分を含有することができる。かかる成分としては好適には顔料、特に白色顔料を挙げることができる。
本発明に用いられる白色顔料としては、有機顔料及び無機顔料の別を問わないが、好ましくは無機の白色顔料である。具体的には酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、アンチモン白及びジルコニアよりなる群から選択される少なくとも1種の無機白色顔料を挙げることができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて用いることもできる。好ましくは酸化チタン、または酸化チタンと他の白色顔料との組み合わせである。酸化チタンは、白色顔料としての使用態様を備えるものであれば、ルチル形、アナタース形及びブルッカイト形のいずれも使用することができる。好ましくはルチル形である。なお、酸化チタンは分散性や耐久性などの性能の向上を目的としてAl23・nH2OやSiO2・nH2O等の含水金属酸化物などで表面処理されていてもよい。白色顔料の粒子径は、特に制限されないが、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.5μmを例示することができる(電顕法による一次粒子経)。
白色顔料の配合割合は、本発明の効果を妨げるものでなければよく、特に制限されない。好ましくはコーティング組成物に含まれる石灰100重量部に対して少なくとも0.05重量部であり、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上である。白色顔料の配合割合が多いほど塗り継ぎむらが抑制でき、またコーティング組成物を着色した場合の発色や着色安定性がよく、さらに被膜の色むら、色褪せ(色飛び)および色差が抑制できるため好ましい。例えば、石灰100重量部に対して白色顔料200重量部の割合で使用することも可能であるが、通常は石灰100重量部に対して0.1〜100重量部、0.1〜80重量部、0.5〜60重量部、1〜50重量部、1〜40重量部の範囲から適宜選択して用いることができる。なお制限はされないが、コーティング組成物の固形分100重量%あたりの配合割合として、固形換算で例えば0.05〜40重量%、好ましくは0.25〜30重量%、より好ましくは0.5〜25重量%を例示することができ、これらの範囲を目安にして適宜調整することができる。
また顔料として着色顔料(有色顔料)を配合することができる。なお、着色顔料(有色顔料)は上記白色顔料と組み合わせて配合することにより、良好かつ均一に発色し、色むら(塗り継ぎむらを含む)、色飛びおよび色差が有意に抑制された被膜を形成することができる。
着色顔料としては、白以外の有色顔料であれば、特に制限されない。また、有機顔料及び無機顔料の別を問わない。具体的にはカーボンブラックや酸化鉄(鉄黒)等の黒色顔料:カドミウムレッド,べんがら(赤色酸化鉄),モリブデンレッド、鉛丹等の赤色顔料:黄鉛(クロムイエロー),チタンイエロー,カドミウムイエロー,黄色酸化鉄(黄鉄),タン,アンチモンイエロー,バナジウムスズイエロー,バナジウムジルコニウムイエローの黄色顔料:酸化クロム,ビリジアン,チタンコバルトグリーン,コバルトグリーン,コバルトクロムグリーン,ビクトリアグリーン、フタロシアニングリーン等の緑色顔料:または群青,紺青,コバルトブルー,セルリアンブルー,コバルトシリカブルー,コバルト亜鉛シリカブルー等の青色顔料などを例示することができる。好ましくは、耐アルカリ性の着色顔料であり、より好ましくは、黒色酸化鉄(鉄黒)、べんがら(赤色酸化鉄)、または黄色酸化鉄(黄鉄)などの酸化鉄や群青等の酸化金属、またはカーボンブラックを主成分とする着色顔料である。なお、これらは1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせてもよく、所望の色になるように組み合わせや配合割合を適宜調整することができる。また色土を使用することもできる。
着色顔料の配合割合は、使用する着色顔料の種類や希望する着色の色によって適宜調整することができ、特に制限はされない。
本発明のコーティング組成物の粘度は、慣用の塗料または塗材として使用できる粘度であれば特に制限されない。拘束はされないが、コーティング組成物をスプレー、ローラーまたは刷毛塗りに適するように調製する場合は、25℃で300cps以上、好ましくは300〜10,000cps、より好ましくは700〜10,000cpsの範囲を、また鏝塗りに適するように調製する場合は25℃で2,000〜30,000cps、好ましくは5,000〜20,000cpsの範囲となるように調製することができる。コーティング組成物の粘度調整は、固形分含量(水分含量)を調節したり、結合剤の種類やその配合割合を調節したり、また必要に応じてさらに増粘剤を配合して調節してもよい。
ここで増粘剤は、水との相溶性がよく水溶性または水分散性を有し、さらにコーティング組成物の主成分である石灰と相溶性のあるものが好適に使用される。具体的には親水性高分子化合物を例示することができる。
親水性高分子化合物としては、第4級アンモニウム塩基やアミノ基等のカチオン性の親水性基を有するカチオン性の親水性高分子化合物を例示することができる。かかる親水性高分子化合物として、具体的にはアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩(共)重合体、ポリアミノメチルアクリルアミドの塩若しくは第4級アンモニウム塩、アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミド共重合体の塩もしくは第4級アンモニウム塩、ポリアミノメチルアクリルアミドの塩若しくは4級塩、キトサンの塩酸塩,硫酸塩若しくは酢酸塩、カチオン化デンプン、ポリエチレンイミン、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物の共重合物、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化グアガム、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化デンプンなどが例示される。
また親水性高分子化合物として、水酸基、エーテル基、アミド基等の非イオン性の親水性基を有するノニオン性の親水性高分子化合物を例示することができる。かかる親水性高分子化合物として、具体的にはポリビニルアルコール、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のホルマリン縮合物、ポリエチレンポリアミンプロピレンオキサイド・エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール共重合物、ポリグリコールエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物;グアガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガム、クリスタルガム、プルラン、キサンタンガムの天然のガム剤;メチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が例示される。
好ましくは、コーティング組成物中に存在し得る例えば石灰などの電解性物質の挙動に影響を与えず、その存在に関わらず使用できる点から、ノニオン性の親水性高分子化合物である。中でも好ましくは天然のガム質、およびセルロース誘導体である。
また、増粘剤として水酸基を有する親水性高分子化合物を用いることもできる。ここで水酸基を有する親水性高分子化合物として、具体的には燐酸デンプン、カチオン化デンプン、デンプン/アクリル酸/アクリル酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化デンプンなどのデンプン類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、カラギーナン、アルギン酸またはその塩、キトサンまたはその塩、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化グアガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カードラン、プルラン、キチン、タマリンドシードガム、デキストラン、デキストリンなどの多糖類;ポリビニルアルコール;グリセリンやポリエチレングリコールなどの多価アルコールなどを例示することができる。
好ましくは、水酸基を有するノニオン性の親水性高分子化合物である。かかるものとして、具体的には、ポリビニルアルコール、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のホルマリン縮合物、ポリエチレンポリアミンプロピレンオキサイド・エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール共重合物、ポリグリコールエステル、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物;グアガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラヤガム、クリスタルガム、プルラン、キサンタンガム等のガム剤;メチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が例示される。好ましくは、メチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体である。
また親水性化合物として、糖類を配合することもできる。例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース等の単糖類:マルトース、シュークロース、ラクトース、トレハロース等の二糖類:マルトトリオース、ラフィノース等の三糖類:オリゴ糖:及びソルビトールなどの糖アルコース等の糖類を挙げることができる。
コーティング組成物に配合する上記各種の親水性高分子化合物の割合は、特に制限されず、コーティング組成物の固形分100重量%あたりに含まれる割合として固形換算(総量)で通常0.01〜5重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.03〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。なお制限はされないが、コーティング組成物100重量%中に親水性高分子化合物が0.003〜3重量%、好ましくは0.009〜2重量%、より好ましくは0.015〜2重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%の割合となるように調整することが望ましい。
なお、本発明のコーティング組成物は、ケイ素化合物(一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウムなど)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、四塩化ケイ素、シラン、シリコン、ケイ素樹脂)またはこれを成分として含む物質(例えば、珪藻土、シリカ、ゼオライト、フライアッシュ、水ガラスなど)を配合することもできる。通常、水酸化カルシウムの中に可溶性シリカを配合すると、ポゾラン反応が生じ、不溶性のシリカ質化合物が生成して硬化する。本発明のコーティング組成物はキレート化合物を配合していることにより、ケイ素化合物を配合した場合でもポゾラン反応(硬化現象)が抑制され、水含有状態で流動性が維持できるという長所を備えている。なお、これらのケイ素化合物の配合割合は特に制限されない。例えば、珪藻土、シリカ、ゼオライトまたはフライアッシュなどの場合、コーティング組成物100重量%中、0.5〜90重量%の範囲から選択することができ、通常1〜60重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の割合を挙げることができる。また水ガラスなどのケイ酸ナトリウムの濃水溶液の場合、コーティング組成物100重量%中に0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の割合で配合することができる。
さらに本発明のコーティング組成物には、その他の任意成分として、本発明の効果を妨げない範囲で、体質顔料、油、スサやツタなどの繊維、光触媒、分散剤、湿潤剤、減水剤、流動化剤、消泡剤、充填剤、pH調整剤、界面活性剤、防水剤等を配合することもできる。
ここで体質顔料としては、タルク,カオリンクレー,水酸化アルミニウム,炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質(沈降性)炭酸カルシウム),ベントナイト,硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウム、バライト粉)、ホワイトカーボン、シリカなどを例示することができる。
油としては、従来漆喰材料に使用されている油を広く使用することができ、例えば菜種油、亜麻仁油、サフラワー油、ヒマワリ油、アボガド油、月見草油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、胡麻油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、ヒマシ油、エマ油、キリ油、ニガー種子油、カポック油、紅花油、むらさき種子油、サクラソウ種子油、ツバキ油等の各種の植物油を挙げることができる。
スサやツタなどの繊維としては、従来漆喰材料に使用されている天然繊維やポリエチレンやテトロンなどの化学繊維や小麦ファイバーなどを挙げることができる。天然繊維としては、はますさ、白毛すさ、南京すさ、さらしすさ、油すさ、および紙すさなどを挙げることができる。
光触媒としては光触媒活性を有する酸化物を例示することができる。かかる光触媒活性を有する酸化物としては、酸化チタン、酸化ルビジウム、酸化コバルト、酸化セシウム、酸化クロム、酸化ロジウム、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化第二鉄、三酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化ルテニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化ニオブ及び酸化タンタルなどの無機酸化物が例示できる。
分散剤及び湿潤剤としては、いずれも通常塗料や塗材に配合して用いられるものの中から適宜選択することができ、例えばアルキルナフタレンスルホン酸ソーダのホルマリン縮合物、ポリアクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステルやアルキルフェノールエーテル、スルホコハク酸誘導体、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとのブロックポリマーなどを例示することができる。
減水剤または流動化剤としては、リグニンスルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系、ポリスチレンスルホン酸系、ポリカルボン酸系などの界面活性剤を例示することができる。
消泡剤としては、通常塗料、塗材や建築用吹き付け材に配合して用いられるものの中から適宜選択することができる。例えば、オクチルアルコール、グリコール誘導体、シクロヘキサン、シリコン、プルロニック系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の各種の抑泡剤及び破泡剤を挙げることができる。
充填剤としては、例えば珪砂、寒水砂、パーライト,バーミキュライト,シラス球及び汚泥焼成骨材などの再生骨材等の無機質骨材(細骨材)の他、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、ベントナイト、ギブサイト、マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト、酸性白土、陶石、ロウ石、長石、石灰石、石膏、ドロマイト、マグネサイト、滑石、トルマリン、珪藻土、フライアッシュなどの天然無機質材料;水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、天然カルシウム等の水不溶性金属水酸化物;トベルモナイトやゾノトライト等のケイ酸カルシウム系水和物;カルシウムアルミネート水和物、カルシウムスルホアルミネート水和物等の各種酸化物の水和物;アルミナ、シリカ、含水ケイ酸、マグネシア、酸化亜鉛、スピネル、合成炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウムなどの合成無機質などの粉末状、繊維状もしくは粒状の無機材料を挙げることができる。
防水剤としては、特に制限されないが、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、オルガノアルコキシシラン等を例示することができる。
本発明のコーティング組成物の調製は、基本的に上記の各成分を混合して塗材または塗料の常套方法、例えば調合用機器(ミキサー、シェーカー、ミル、ニーダーなど)等を用いて混合することにより実施することができる。このとき、使用用途や塗工方法に応じて適宜所望の粘度に調整することもできる。
斯くして調製される本発明のコーティング組成物によれば、形成した被膜のひび割れ、特に乾燥初期のひび割れを抑制することができる。この理由は定かではないが、キレート化合物のキレート作用(カルシウムイオン捕捉作用)によって、乾燥初期のひび割れを誘因するとされている被膜の乾燥収縮を抑制するか、または乾燥収縮に対して抵抗性を与え、収縮またはその歪みによって生じる被膜のひび割れが抑制できているものと考えることができる。
従って本発明のコーティング組成物は、ひび割れの発生が抑制されてなる(耐ひび割れ性の)被膜の形成に有効に使用することができる。特に本発明のコーティング組成物は、材料そのものが優れたひび割れ抑制効果(耐ひび割れ性)を備えているため、従来の熟練した施工技術なくてもひび割れのない被膜を形成することができ、自由自在に厚塗りや凹凸を形成するなど被膜に様々なテクスチャーを施すことが可能である。
本発明のコーティング組成物は、制限されないが、建築用または土木用の塗材または塗料として有用である。また家具等の塗料や塗材としても有用である。具体的には例えば各種建築物の天井面や壁(内・外壁)面等の内装面及び外装面の塗装(塗工);建築物の天井や壁(内・外壁)の下地材や化粧材として用いられる各種の建築用部材(クロス、パネル、ボード)の塗装(塗工);またトンネル壁面、ガードレール、遮音壁及び防護壁などの道路構造物の表面、及び橋梁構造物の表面等の塗装(塗工);並びにトンネル壁、遮音壁、防護壁などの各種壁材や橋梁構造物の各種部材等の土木用部材(パネル、ボード、柱)の塗装(塗工)に使用することができる。また、本発明のコーティング組成物は常法に従って塗装若しくは塗工した後、乾燥前に、凹凸模様付けローラーやコテで模様付けをおこなったり、被膜表面を処理することによってさらに意匠仕上げを施すこともできる。
II.非水硬化性コーティング組成物包装体
上記本発明のコーティング組成物は、調製後、耐水性容器に充填され、当該容器に収納された状態で消費者に提供される。よって、本発明は上記非水硬化性コーティング組成物を容器内に収納してなる非水硬化性コーティング組成物包装体を提供する。
ここでコーティング組成物を収容するために使用される容器は、耐水性であることが必須であるが、コーティング組成物の液性から、さらに少なくとも該組成物と接触する内側面が耐アルカリ性を有するものであることが好ましい。このためには、耐アルカリ性容器を用いる方法、フィルムや缶などの容器の内側面を耐アルカリ性樹脂でコーティングする方法、容器の内側面に耐アルカリ性樹脂フィルムを採用する方法などを用いることができる。
また容器として可撓性容器を用いることもできる。可撓性容器としては、フィルムもしくはシートからなる容器を挙げることができるが、かかる容器はコーティング組成物に含まれる石灰(消石灰)の二酸化炭素吸収による固化を防止するために、二酸化炭素バリア性を有していることが好ましい。かかる二酸化炭素バリア性を有する容器としては、容器内に収容されたコーティング組成物が悪影響(固化)を受けない程度に二酸化炭素透過抵抗性を有するものであればよい。一般に二酸化炭素バリア性素材として、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、各種の(ポリ)塩化ビニリデンコートフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)コートフィルム、ポリエステル(特にPVDCコートポリエステル)、ナイロン(特にPVDCコートナイロン)、ポリビニルアルコール、ビニロン、塩化ビニリデン、セロハン(ラッカーコートセロハン、ポリマーコートセロハン)、アルミ箔ラミネートフィルム、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの無機物質の蒸着フィルムなどの合成樹脂が知られている。本発明においては、特に制限されることなく二酸化炭素バリア性のあるフィルムを任意に選択して使用することができる。なお、一般に、本発明が対象とするコーティング組成物を耐水性容器に気密状態で収容し、常温(20±5℃)で少なくとも1ヶ月間保存した場合に、内部のコーティング組成物に硬化が認められない場合は、当該容器は二酸化炭素バリア性があると判断できる。
好適な容器としては、上記素材に限定されることなく、200g/m/24hrs/atm(20℃、dry)以下の二酸化炭素透過度を有するフィルムで構成されたものを例示することができる。好ましくは100g/m/24hrs/atm(20℃、dry)以下、より好ましくは50g/m/24hrs/atm(20℃、dry)以下、さらに好ましくは20g/m/24hrs/atm(20℃、dry)以下、さらに好ましくは10g/m/24hrs/atm(20℃、dry)以下である(ASTM D1434−58、厚さ25.4μ)。このような二酸化炭素バリア性を有する容器は、公知のガスバリア性素材、特に二酸化炭素透過バリア性素材の厚みを調整したり、フィルムを該素材からなるラミネート層を含むように2層以上の複層若しくは多層フィルムとして調製することで達成することができる。
さらに容器は、内部に収容したコーティング組成物から水分が蒸散することによる乾燥固化をより強固に防止して安定性を高めるために、さらに水蒸気バリア性を備えていることが好ましい。かかる水蒸気バリア性は、容器内に収容されたコーティング組成物が悪影響(乾燥固化)を受けない程度に、水蒸気透過抵抗性を有するものであればよい。
水蒸気バリア性素材として、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、各種(ポリ)塩化ビニリデンコートフィルム、防湿セロハン(ラッカーコートセロハン、ポリマーコートセロハン)、ポリエステル、PVDCコートポリエステル、PVDCコートナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度、特に高密度ポリエチレン)、リニアローデンポリエチレン、延伸ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、アルミ箔ラミネートフィルム、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの無機物質の蒸着フィルムなどの合成樹脂が知られている。なお、一般に、本発明が対象とするコーティング組成物を耐水性容器に気密状態で収容し、常温(20±5℃)で少なくとも1ヶ月間保存した場合に、内部のコーティング組成物に乾燥固化が認められない場合は、当該容器は水蒸気バリア性があると判断できる。
好適な可撓性容器としては、上記素材に限定されることなく、40g/m・24hrs(37.8℃、90%RH)以下の水蒸気透過度を有するフィルムで構成されたものを例示することができる。水蒸気透過度として、好ましくは30g/m・24hrs(37.8℃、90%RH)以下、より好ましくは20g/m・24hrs(37.8℃、90%RH)以下、さらに好ましくは10g/m・24hrs(37.8℃、90%RH)以下である(ASTM E−96、厚さ25.4μ)。このような水蒸気バリア性は、公知の水蒸気バリア性素材の厚みを調整したり、フィルムを該素材からなるラミネート層を含むように2層以上の複層若しくは多層フィルムとして調製することで達成することができる。
また可撓性容器は、一種の樹脂から構成される単層フィルムからなるものであっても、また2種以上の樹脂フィルムの積層構造(ラミネート層またはコート層)を有する複層若しくは多層フィルムからなるものであってもよい。また、なお、無延伸フィルム、延伸フィルム(一軸延伸、二軸延伸)の別を問うものではない。好ましくは少なくとも一面がポリビニルアルコール(PVA)樹脂でコーティングされたフィルム(PVAコート2軸延伸ポリプロピレンフィルムなど)、少なくとも一面がポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂でコーティングされたフィルム(PVDCコート2軸延伸ポリプロピレンフィルム、PVDCコートポリエステルフィルム、PP/PVA/PVDC/PPなど)、ポリオレフィン無延伸共押出多層フィルム(PP/PE/PP、ポリオレフィン(PE、PP等)/ポリ塩化ビニリデン/ポリオレフィン)などが例示されるが、特にこれらに制限されるものではない。
上記においてさらにより最適な容器としては強度、耐衝撃性、耐ピンホール性、ヒートシール性、または耐アルカリ性といった性質に優れた合成樹脂を素材とするフィルムから構成されることが好ましい。かかる種々異なる性質を充足させるために、複層又は多層フィルムを使用してもよい。この場合、少なくとも容器の内側層に耐アルカリ性及びヒートシール性を持たせることが好ましい。耐アルカリ性樹脂としては塩化ビニル、酢酸ビニル、ウレタン樹脂などを例示することができる。好ましくはビニルポリマーの単独重合体(例えば、重量平均分子量2万以上のものが例示される)もしくは共重合体及び/または耐アルカリ性ウレタン樹脂(例えば、重量平均分子量10万以上のものが例示される)を含むものであり、特にポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を好適に例示することができる。なお、本発明において耐アルカリ性とは、内容物であるコーティング組成物を入れて常温で3ヶ月、好ましくは6ヶ月放置した場合でも、目視で容器フィルムの溶解や腐蝕が観察されないことをいう。より好適には下記の加速試験で耐アルカリ性が得られるものを用いることが望ましい。
<耐アルカリ性評価の加速試験>
耐水性容器に1規定の水酸化カリウム水溶液を入れ、50℃の恒温器中に6時間放置し、次いで室温に18日間放置した後に、水酸化カリウム水溶液を取り出して、目視で容器内面の溶解や腐蝕の有無を評価する。
フィルムの場合、採用する厚さ(容器の厚さ)は、上記二酸化炭素バリア性および水蒸気バリア性を充足することを限度として特に制限されないが、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜200μmである。厚さが2μm未満であると、強度、耐衝撃性、耐ピンホール性及び二酸化炭素透過バリア性が不十分となり易く、また300μmを著しく超えると可撓性(柔軟性)や透明性が不十分になりやすい。より好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは10〜80μmである。
フィルムとしての透明性は特に要求されないが、内容物として収容するコーティング組成物が耐候性に優れているため光による影響が少ないこと、及び内容物が外から認識できるほうが商品として好ましいことから、透明性を有することが望ましい。この場合、透明性とは目視により内容物がみえることを意味する。
さらに本発明で用いる可撓性容器は、使用時に開封しやすいように、易引裂性を備えていてもよい。易引裂性技術としては従来公知の技術を任意に使用することができ、例えばVノッチやUノッチの形成、ティアテープ使用、針状フィラーの使用、ミシン目形成、またはフィルム表面に微細な傷を付ける等の方法が例示できる。また、上記性質を充足することを限度として、フィルムの中間層に一軸延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートした易開封性材料(例えば、二軸延伸ポリエステルフィルム/一軸延伸ポリオレフィンフィルム/無延伸ポリオレフィンフィルムの三層ラミネートフィルムなど)を使用することもできる。また本発明で用いる容器は、開口部にジッパーなどの再閉鎖手段を備えていてもよい。
かかる可撓性容器へのコーティング組成物の充填・密封方法は特に制限されないが、好ましくは、充填時に空気ができるだけ混入しないように充填し、次いで充填口をヒートシール(バーシール、熱溶融シール、熱溶断シール)、インパルスシール、高周波シールまたは超音波シールなどの常法に従って気密封鎖(密封)する方法を挙げることができる。なお、空気ができるだけ混入しないように充填する方法としては、例えば脱気条件、真空条件またはN2ガス置換条件下で充填する方法やコーティング組成物を容器に充填した後、脱気しながら充填口を封鎖する方法を例示することができる。
容器として可撓性容器に収納されてなるコーティング組成物包装体の例を図1〜2に示す。
石灰は高いチクソトロピックな流動特性を備えているため、その水分散体を一定期間静置しておくと凝集して流動性が極めて悪くなる。これは攪拌など力を与えることでもとの流動性に戻るものの、静置すると再び凝集して流動性が悪くなる。これに対して、本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の成分としてキレート化合物を用いることによって、石灰が本来有する高いチクソトロピックな流動特性が緩和低減されて流動性が著しく改善されるとともに、凝集が抑制されるという特長を備えている。このため、上記耐水性容器(通常の塗料収納容器、及び可撓性容器を含む)に充填収容されたコーティング組成物は、かかる包装体の形態で、調製時の均一な状態(流動性、粘度)を安定に保つことができる。このため、従来必須であった使用時の再攪拌や揉みほぐしなどの手間を簡略化することが可能である。
III.耐ひび割れ性の被膜形成方法(被膜のひび割れ抑制方法)、及び当該方法によって形成される被覆物
上記で述べるように、石灰を被膜成分として含む水含有コーティング組成物において、キレート化合物を用いることによって、塗布後の被膜にひび割れ抵抗性を付与し、乾燥時のひび割れを有意に防止することができる。このため、本発明は、耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成するための方法、言い換えれば石灰を被膜成分として含む被膜のひび割れ抑制方法を提供する。
かかる方法は、被膜形成に使用する水含有コーティング組成物として、石灰に加えてキレート化合物を含む組成物を用いることを特徴とする。
ここでコーティング組成物の調製に使用される石灰の種類や配合量、キレート化合物の種類や配合量、水の配合量は、前記Iの項に記載した通りであり、これを援用することができる。
かかるコーティング組成物は、石灰、キレート化合物、および水を基本成分とするものであるが、被膜のひび割れ抑制を妨げないことを限度として、他の成分を含有することができる。かかる成分としては、好適には結合剤を挙げることができ、また必要に応じて増粘剤を配合することもできる。さらに必要に応じて、白色顔料、着色顔料(有色顔料)、体質顔料、油、すさなどの繊維、光触媒、分散剤、湿潤剤、消泡剤、充填剤、pH調整剤、界面活性剤、減水材、流動化剤、防水剤などを配合することもできる。これらの成分の種類や配合量、及び調合方法などは、前記Iの項に記載の通りであり、ここでもこの記載を援用することができる。
かかるコーティング組成物を被膜形成に使用することで、耐ひび割れ性の石灰含有被膜を形成することができる。その施工方法やコーティング組成物を塗布・塗工する対象物(被塗布物)は特に制限されない。
例えば被塗布物としては、制限されることはないが、好適には建築物の天井や壁(内・外壁)の下地材や化粧材として用いられる各種の建材、例えばクロス、ボード及びパネル等を挙げることができる。なお、かかる対象物は表面がシーラー処理等の各種処理がなされていてもよい。また、トンネル壁材、ガードレール材、遮音壁材、防護壁材及び橋梁構造物として用いられる各種の土木用の部材、例えばパネル、ボードを挙げることができる。クロスとしては、例えば建築用の内装(室内の壁や天井等)に用いられるクロス材料を広く挙げることができる。クロス材料としては紙や各種繊維からなる不織布または織布等の繊維質シートを挙げることができる。具体的には、紙としては和紙、洋紙(上質紙、中質紙)、クラフト紙、薄葉紙、裏打紙、樹脂含浸紙等、ボール紙、厚紙等のいずれであってもよく、例えば難燃処理を施した紙であって壁紙の施工に適したもの、例えば難燃性裏打紙や不燃紙等も包含される。繊維質シートとしては、例えば天然繊維;ガラス繊維;またはポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン等の合成繊維などを構成素材として得られる多孔性の織布や不織布、編み物等を挙げることができる。なお、上記素材は、1種単独で用いられても、また2種以上を任意で組み合わせて用いることもできる。
ボード及びパネルとしては、例えば建築用の内装(室内の壁や天井等)や外装に用いられるボード材料及びパネル材料を広く挙げることができる。具体的には、木質板、合板、中密度繊維板、プラスチック板、セメントモルタル、石綿セメント珪酸カルシウムボード、中空セメント板、木毛セメント板、鋼板パネル、コンクリート板、PCパネル、ALCパネル、石綿スレート、石膏ボード、パーティクルボード、発泡セメントボード、木片セメント板、ケイ酸カルシウムボード、サイディングボードなどを例示することができる。好ましくは、石膏ボード、石膏パーティクルボード、木質板、中密度繊維板、珪酸カルシウムボード、プラスチック板、サイディングボード(金属系、窯業系を含む)等である。また、トンネル壁材、ガードレール材,遮音壁材、防護壁材及び橋梁構造物の各種部材として用いられるボード材料及びパネル材料を挙げることができる。
これらの対象物(建築用部材、土木用部材)へのコーティング組成物の塗布方法は、特に制限されず、ロールコーターやフローコーター、ハケ、ローラーまたはコテ等を用いる塗付け方法及びスプレーや各種ガンを用いた吹きつけ方法等の慣用法を挙げることができる。対象物に塗布されたコーティング組成物は、次いで乾燥されることによって硬化する。乾燥には、自然乾燥法、通風乾燥法、強制乾燥法または加熱乾燥法のいずれもが使用できる。この際、コーティング組成物に含まれる石灰は自ら、またコーティング組成物に結合剤を含む場合は結合剤とともに結合硬化して被覆層を形成するとともに、対象物表面に付着して一体化する。なお、コーティング組成物は必要に応じて形成された被膜層の表面を乾燥前に凹凸模様付きローラーやコテ等で意匠を施したり、乾燥後ヤスリや各種研磨機で研磨ずりして仕上げることもできる。また、コーティング組成物は、被膜層の表面を凹凸模様付きローラーやコテ等で意匠を施した後に、その上から再度うす塗りを施すこともできる。
コーティング組成物から形成される被膜の厚さは、対象物の塗布面が十分に隠蔽被覆される厚さであれば特に制限されず、通常0.1〜15mm厚の範囲から適宜選択することができる。
上記コーティング組成物から形成される被膜を有する被覆物(塗装物)は、被膜が耐ひび割れ性を有しているため、高度な技術を要することなく簡単に施工して調製することができる。またコーティング組成物から形成される被膜は、厚みの高低(凹凸)に関わらず耐ひび割れ性を有しているため、被膜に様々なテクスチャー(意匠)を施すことができる。
IV.チクソトロピー性の緩和低減方法
前述するように、石灰は高いチクソトロピックな流動特性を備えているため、その水分散体を一定期間静置しておくと凝集して流動性が極めて悪くなる。これは攪拌など力を与えることで、もとの流動性に戻るものの、静置すると再び凝集して流動性が悪くなる。このため、石灰を水に分散した液状またはペースト状の塗料や塗材は、使用時に再攪拌や揉みほぐしを行い、流動性をよくする必要があった。こうしたことから、石灰を被膜成分とするコーティング組成物については、被膜に耐ひび割れ性を付与することに加えて、さらにそのチクソトロピックな流動特性を緩和低減することも求められている。
本発明者は、上記耐ひび割れ技術を検討している過程で、石灰を被膜成分とする水含有コーティング組成物に、キレート化合物を配合することによって、石灰が本来有する高いチクソトロピックな流動特性が緩和低減されて流動性が著しく改善され、しかも凝集までもが顕著に抑制されることを見出した。従って、本発明は、石灰および水を含有する組成物のチクソトロピー性を緩和低減する方法を提供する。
かかる方法は、上記するように石灰を被膜成分とする水含有コーティング組成物に、キレート化合物を配合することによって実施することができる。
ここで水含有コーティング組成物の調製に使用される石灰の種類や配合量、水の配合量は、前記Iの項に記載の通りであり、これを援用することができる。
またこれに配合するキレート化合物の種類やその割合も、前記Iの項に記載の通りであり、これを援用することができる。
キレート化合物を配合する対象の水含有コーティング組成物は、石灰および水を基本成分とするものであるが、キレート化合物によるチクソトロピー性の緩和低減作用を妨げないことを限度として、他の成分を含有することができる。かかる成分としては、好適には結合剤を挙げることができ、また必要に応じて増粘剤を配合することもできる。さらに必要に応じて、白色顔料、着色顔料(有色顔料)、体質顔料、油、すさなどの繊維、光触媒、分散剤、湿潤剤、消泡剤、充填剤、pH調整剤、界面活性剤、減水材、流動化剤、防水剤などを配合することもできる。これらの成分の種類や配合量、及び調合方法などは、前記Iの項に記載の通りであり、ここでもこの記載を援用することができる。
V.ポゾラン反応の抑制方法
石灰を含む水含有溶液中に可溶性シリカが含まれていると、当該可溶性シリカが石灰中の水酸化カルシウムと反応して不溶性で硬化性のシリカ質化合物が生成する(ポゾラン反応)。このため、石灰を被膜成分とする非水硬化性組成物に可溶性シリカなどのケイ素化合物が含まれている場合は、水の存在下でポゾラン反応がおこり、凝集物が生じたり凝結固化などの不都合が発生する。こうした理由から、石灰と珪藻土やゼオライトなどのケイ素化合物を水とともに配合した既調合済みのコーティング組成物(塗料や塗材)を開発するためには、石灰とケイ素化合物とのポゾラン反応を抑制して、水を含んだままで安定性を維持することが必要である。
本発明者は、上記技術を検討している過程で、石灰を被膜成分とする水含有コーティング組成物にキレート化合物を配合することによって、ケイ素化合物とのポゾラン反応をも有意に抑制でき、ケイ素化合物を配合しても凝集固化しない水含有コーティング組成物が調製できることを見出した。
そこで、本発明は石灰、ケイ素化合物および水を含有する組成物のポゾラン反応抑制方法を提供する。
かかる方法は、石灰、ケイ素化合物および水を含有する組成物に、キレート化合物を共存させることによって実施することができる。
ここで水含有コーティング組成物の調製に使用される石灰の種類や配合量、ケイ素化合物の種類や配合量、水の配合量は、前記Iの項に記載の通りであり、これを援用することができる。
またこれに配合するキレート化合物の種類やその割合も、前記Iの項の記載に準じることができるが、具体的には、コーティング組成物100重量%あたり通常0.05〜10重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%の割合を例示することができる。
キレート化合物を配合する対象の水含有コーティング組成物は、石灰、ケイ素化合物および水を基本成分とするものであるが、キレート化合物によるポゾラン反応抑制作用を妨げないことを限度として、他の成分を含有することができる。かかる成分としては、好適には結合剤を挙げることができ、また必要に応じて増粘剤を配合することもできる。さらに必要に応じて、白色顔料、着色顔料(有色顔料)、体質顔料、油、すさなどの繊維、光触媒、分散剤、湿潤剤、消泡剤、充填剤、pH調整剤、界面活性剤、減水材、流動化剤、防水剤などを配合することもできる。これらの成分の種類や配合量、及び調合方法などは、前記Iの項に記載の通りであり、ここでもこの記載を援用することができる。
以下、本発明の内容を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明する。ただし、これらの実施例等は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
実験例1
表1に記載の成分を塗材調合用ミキサーに入れて撹拌することにより固形分を水に分散させて、コーティング組成物(実施例1〜3、比較例1)を調製した。なお、キレート化合物としてグルコン酸ナトリウム(実施例1)、クエン酸ナトリウム(実施例2)、及びEDTA・4ナトリウム(実施例3)をそれぞれ用いた。次いで調製した各水含有コーティング組成物をそれぞれ500gずつ耐水性のフィルムバック〔サラン−UB#158:旭化成(株):厚み15μm(ASTM D−3985)、酸素透過度10ml/(m・day・MPa)(20℃、75%RH)(ASTM D−3985)、透湿度1g/(m・day)(38℃、90%RH)(ASTM F−372)〕に充填して開口部を気密状態に脱気しながらヒートシールし、下記に示す性能評価試験に供した。
<コーティング組成物の軟度安定性>
フィルムバックに収容された実施例1〜3及び比較例1の水含有コーティング組成物について常温(20±5℃)下で保存して、調製から24時間後及び48時間後の軟度(塗材の柔らかさ)を観察し、下記の基準に従って評価した。なお、軟度安定性は、下記評価に示すように、各コーティング組成物について調製直後の軟度を基準として各々評価した。
評 価
◎:そのままで極めて良好(調製直後とほぼ同様の柔らかさを有する)
○:若干締まった状態になるが、フィルムバックを数回揉むと簡単に軟らかさが回復する(調製時とほぼ同様の柔らかさに戻る)
△:若干硬く締まった状態になり、調製時と同様の柔らかさに戻すためには、フィルムバックをかなり強い力で複数回揉む必要がある(調製時とほぼ同様の柔らかさに戻る)
×:かなり硬く締まった状態になり、フィルムバックを揉むと柔らかくなるものの調製時と同様の柔らかさには戻らない。
<被膜の耐ひび割れ性>
上記水含有コーティング組成物について、調製直後、保存後24時間後、及び48時間後のものを用いて、試験板(フレキシブル板)に1〜10mm厚で凹凸を付けながらコテ塗り(1回塗り)して1昼夜放置して乾燥させて、被膜のひび割れ状況を観察した。なお、いずれの水含有コーティング組成物も塗工前にはフィルムバックを十分に揉んで、比較例1の保存後48時間のものを除いて、調製時とほぼ同様の柔らかさに調整してから使用した。なお、耐ひび割れ性は、下記評価に示すように、ひび割れが認められない場合を◎とし、ひび割れの度合いに応じて順次○、△および×とした。
評 価
◎:ひび割れが認められない
○:起伏の激しい箇所に若干ひび割れが認められるが、平坦部を含む殆どの箇所でひび割れが認められない
△:平坦部にもひび割れが認められる
×:全体にわたってひび割れが著しく認められる。
結果を表1に併せて示す。
Figure 2006240981

キレート化合物を配合しない石灰を含む水含有コーティング組成物(比較例1)は、24時間の保存によって、調製時の柔らかさが消失し、フィルムバック中の内容物が凝集して締まった状態になっており、48時間後には僅かに離水も認められた。一方、キレート化合物としてグルコン酸ナトリウムを配合した石灰を含む水含有コーティング組成物(実施例1)は、48時間の保存後も調製時の柔らかさを有していた。キレート化合物としてクエン酸ナトリウムやEDTA・2Naを配合した石灰を含む水含有コーティング組成物(実施例2および3)は、24時間の保存で若干締まった感じになったが、手で揉むと容易に調製時の柔らかさが回復した。こうした現象の理由は定かではないが、上記結果から、キレート化合物を配合することでカルシウムイオンが捕捉封鎖されて、コロイド化学的な相互作用による石灰粒子の凝集が抑制されるものと考えられた。このことから、キレート化合物を配合することによって、石灰を含む流体の特性であるチクソトロピー性が緩和低減できることがわかった。
また、耐ひび割れ性に関しては、比較例1の水含有コーティング組成物で形成した被膜には保存期間に拘わらず、塗膜の平坦部および起伏部を問わずところどころひび割れが認められたのに対し、グルコン酸ナトリウムを配合した水含有コーティング組成物(実施例1)で形成した被膜は、保存期間に拘わらずひび割れがまったく認められなかった。またキレート化合物としてクエン酸ナトリウムまたはEDTA・Naを配合した水含有コーティング組成物(実施例2、3)で形成した被膜も、凹凸の起伏が激しい一部を除きひび割れが認められなかった。このことから、キレート化合物を配合することによって、石灰を含む被膜の乾燥初期のひび割れを防止することができることがわかった。
実験例2
キレート化合物として表2に記載する化合物を使用して、石灰を含む各種の水含有コーティング組成物を作成し、実験例1と同様の方法により軟度安定性と被膜の耐ひび割れ性を評価した。
Figure 2006240981
具体的には表3〜4に記載の各成分を塗材調合用ミキサーに入れて撹拌することにより固形分を水に分散させて、コーティング組成物(実施例4〜17)を調製した。また対照としてキレート化合物を配合しないで同様にしてコーティング組成物を調製し(比較例2)、また比較として、キレート化合物に代えて、塗料分散剤として知られている高分子ポリカルボン酸系分散剤(アクリル酸とマレイン酸子ポリマーのナトリウム塩:「ポイズ521」、花王(株)製)を用いて同様にしてコーティング組成物(比較例3)を調製した。
次いで調製した各水含有コーティング組成物(実施例4〜17、比較例2〜3)をそれぞれ500gずつ耐水性のフィルムバック〔サラン−UB#158:旭化成(株):厚み15μm(ASTM D−3985)、酸素透過度10ml/(m・day・MPa)(20℃、75%RH)(ASTM D−3985)、透湿度1g/(m・day)(38℃、90%RH)(ASTM F−372)〕に充填して開口部を気密状態に脱気しながらヒートシールし、実験例1と同様にして性能評価試験(軟度安定性および被膜ひび割れ評価試験)に供した。結果を表3〜4に合わせて示す。
Figure 2006240981
Figure 2006240981
キレート化合物を配合しない石灰を含む水含有コーティング組成物(比較例3)は、24時間の保存によって、調製時の柔らかさが消失し、フィルムバック中の内容物が凝集して締まった状態になった。またポリカルボン酸系分散剤を配合した石灰を含む水含有コーティング組成物(比較例2)も、24時間の保存によって調製時の柔らかさが消失して内容物が凝集して多少締まった状態になった。これはフィルムバックを揉むともとの柔らかさが回復したが、保存後48時間もたつと、さらに凝集が進行し、もとの柔らかさに戻すにはかなりの力を要した。一方、キレート化合物を配合した石灰を含む水含有コーティング組成物(実施例4〜17)は、上記の現象が有意に解消されており、24〜48時間の保存によっても調製時の柔らかさがほぼ維持されているか、または少し揉み返すことで調製時の柔らかさに戻すことができた。特にこの実験例では、キレート化合物としてグルコン酸ナトリウム(カルボン酸系キレート化合物)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)(ホスホン酸系キレート化合物)、またはアスコルビン酸ナトリウム(還元性有機酸系キレート化合物)を配合したコーティング組成物に、優れた軟度安定性が認められた。
耐ひび割れ性に関しては、比較例3の水含有コーティング組成物で形成した被膜には保存期間に拘わらず、塗膜の平坦部および起伏部を問わずところどころひび割れが認められ、ポリカルボン酸系分散剤を配合してもひび割れは解消できなかったのに対し(比較例2)、キレート化合物を配合した水含有コーティング組成物(実施例4〜17)によると、上記組成物で見られた被膜のひび割れ現象が顕著に抑制されていた。特にこの実験例では、キレート化合物としてグルコン酸ナトリウム(カルボン酸系キレート化合物)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)(ホスホン酸系キレート化合物)、またはアスコルビン酸ナトリウム(還元性有機酸系キレート化合物)を配合したコーティング組成物について保存期間に拘わらず安定して優れた耐ひび割れ性が認められた。また他のキレート化合物もその配合割合を調整することによって安定した耐ひび割れ性を発揮できるものと考えられた。
なお、キレート化合物によって石灰を含むコーティング組成物から形成される被膜のひび割れが解消できる理由は定かではないが、この実験結果から、石灰を含む流体にキレート化合物を配合して当該流体のチクソトロピー性を緩和低減することによって、被膜内の粒子の凝集が抑制され、その結果、被膜のひび割れが抑制できると考えられる。
実験例3
表5に記載の固形成分を水に分散させて、塗料形態のコーティング組成物(実施例18〜21)を調製した。
具体的には表5に記載の各成分を塗材調合用ミキサーに入れて撹拌することにより固形分を水に分散させて、コーティング組成物(実施例18〜21)を調製した。また比較として、実施例20の処方においてキレート化合物を配合しない以外は同様にしてコーティング組成物(比較例4)を調製した。
次いで調製した各水含有コーティング組成物(実施例18〜21、比較例4)をそれぞれ500gずつ耐水性のフィルムバック〔サラン−UB#158:旭化成(株):厚み15μm(ASTM D−3985)、酸素透過度10ml/(m・day・MPa)(20℃、75%RH)(ASTM D−3985)、透湿度1g/(m・day)(38℃、90%RH)(ASTM F−372))に充填して開口部を気密状態に脱気しながらヒートシールした。調製直後、及び常温(20±5℃)下で48時間放置した後の、外観および性状(塗材の柔らかさ・流動性を含む)をそれぞれ評価した。結果を表5に示す。
Figure 2006240981
比較例4のコーティング組成物は、調製時にすでに内容物の凝集が認められ、48時間経過後にはその凝集物が硬化して全体として非常に硬い組成物となっていた。これは珪藻土の珪素化合物と消石灰のカルシウムイオンとが反応して、ポゾラン(シリカ質化合物)が生じたためと考えられた。一方、実施例18〜21のコーティング組成物はいずれも珪素化合物を含んでいるにも拘わらず凝集や硬化といった不都合な現象(ポゾラン)は認められず、48時間後経過後も柔らかで調製時の流動性を備えていた。このことから、石灰を含むコーティング組成物中にキレート化合物を配合することで、珪素化合物と反応してポゾランを生じることをも防止できることがわかった。斯くしてコーティング組成物の被膜成分として、石灰に加えてゼオライトや珪藻土を使用することが可能となり、その結果、石灰の調湿性を補強することができる。また、コーティング組成物の結合剤として、合成樹脂エマルションやポリビニルアルコールなどの有機化合物に代えて、無機接着剤である水ガラス(Na2O・2SiO2/45%水溶液)を使用することが可能となり、その結果、無機100%のコーティング組成物を調製することができる。
本発明の非水硬化性コーティング組成物包装体の一例を示す図である。 本発明の非水硬化性コーティング組成物包装体の一例を示す図である。

Claims (8)

  1. 石灰、結合剤、キレート化合物および水を含有することを特徴とする非水硬化性コーティング組成物。
  2. キレート化合物が、分子量1000以下の有機系キレート化合物または無機系キレート化合物である、請求項1記載の非水硬化性コーティング組成物。
  3. 有機系キレート化合物が、カルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、燐酸系キレート化合物、スルホン酸系キレート化合物および還元性有機酸系キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2記載の非水硬化性コーティング組成物。
  4. さらにケイ素化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水硬化性コーティング組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載する非水硬化性コーティング組成物を容器内に収納してなる非水硬化性コーティング組成物包装体。
  6. 石灰を含む被膜成分とキレート化合物とを水とともに混合して液状またはペースト状に調製する工程を有する、耐ひび割れ性の被膜を形成する非水硬化性コーティング組成物の製造方法。
  7. 石灰を被膜成分として含む被膜のひび割れ抑制方法であって、被膜形成用のコーティング組成物として石灰、キレート化合物および水を含有する組成物を用いることを特徴とする方法。
  8. 請求項7に記載する方法によって形成されるひび割れが抑制された被膜を有する被覆物。

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