JP2006237010A - 酸化物高温超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

酸化物高温超電導線材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超電導線の外周部に位置する金属が超電導体内へ拡散せずに臨界電流密度の低下を抑制できる酸化物高温超電導線材を提供する。
【解決手段】酸化物高温超電導線材は、酸化物高温超電導体1と、酸化物高温超電導体1を被覆し、銀を含む材料からなるシース体2と、シース体2を被覆する耐熱性酸化物セラミックス材料3と、高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス材料3に対して不活性な被覆体4とを備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、酸化物高温超電導線材およびその製造方法に関し、特に、電力、輸送、高エネルギ、医療などの分野で用いられる酸化物高温超電導線材とその製造方法に関するものである。
近年、酸化物の焼結体が高い臨界温度で超電導性を示すことが報告され、この超電導体を利用して超電導技術の実用化が促進されている。イットリウム系の酸化物は90Kで、ビスマス系の酸化物は110Kで超電導現象を示すことが報告されている。これらの酸化物超電導体は、比較的安価で入手できる液体窒素中で超電導特性を示すため、実用化が期待されている。
このような超電導体にたとえば電力供給用の交流電流を流すためには、超電導体を銀シースで被覆し、その銀シースを絶縁体(高抵抗体)で被覆し、その絶縁体をさらに金属で被覆したような超電導線材が用いられる。
超電導線材を銀シースで被覆するのは伸線加工などを施した際に超電導体の結晶構造が崩れるのを防ぐためである。銀シースを絶縁体で被覆するのは、交流損失を低下させるためである。絶縁体を金属で被覆するのは、超電導線材に必要とされる可撓性を得るためである。
このような構造の超電導線材は、たとえば、国際公開公報WO96/28853号(特許文献1)や特開平10−50152号公報(特許文献2)に記載されている。
国際公開公報WO96/28853号に記載された方法では、超電導体の周囲を銀などで取囲み、さらにその周囲を金属で取囲み、その金属を酸化させることにより銀と金属との間に金属酸化物からなる絶縁体を形成している。
また、特開平10−50152号公報に記載された方法では、超電導体を銀で取囲み、その周囲を抵抗性合金(高抵抗体)で取囲み、その抵抗性合金を酸化させることにより銀と抵抗性合金の間に絶縁性酸化物を形成している。
国際公開公報WO96/28853号 特開平10−50152号公報
しかしながら、上述の2つの公報に記載された技術では、ともに、絶縁性の酸化物を形成する際には金属を酸化するため、この酸化の際に金属が超電導体へ拡散し、超電導体の結晶構造が変化する。そのため、超電導線の臨界電流密度が低下するという問題があった。
そこで、この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、超電導線の外周部に位置する金属が超電導体内に拡散せず臨界電流密度の低下を抑制できる酸化物高温超電導線材とその製造方法を提供することである。
酸化物高温超電導線材は、酸化物高温超電導体と、酸化物高温超電導体を被覆し、銀を含む材料からなるシース体と、シース体を被覆し、耐熱性酸化物セラミックス粉末を原料とする高抵抗体と、高温酸化性雰囲気中で高抵抗体に対して不活性な材料からなり、高抵抗体を被覆する被覆体とを備え、シース体は複数本存在し、複数本のシース体のそれぞれの間には高抵抗体が介在しており、酸化物高温超電導体、シース体および高抵抗体を被覆体に嵌合させて少なくとも一回塑性加工を施すことで得られる。
好ましくは、塑性加工は伸線加工である。
好ましくは、シース体を構成する材料は、Ag、Ag−Au合金およびAg−Sb合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む。
上記の酸化物高温超電導線材の製造方法であって、耐熱性酸化物セラミックス粉末の平均粒径が10μm以下である。
耐熱性酸化物セラミックス粉末の平均粒径が1μm以下である。
この発明に従えば、超電導線の外周部に位置する金属が超電導体内に拡散せず、臨界電流密度の低下を防止できる酸化物高温超電導材を提供できる。
以下、実施例について述べる。
Bi23と、PbOと、SrCO3と、CaCO3と、CuOとを混合して、組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度850℃で4時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。
粉砕により得られた粉末を温度800℃で2時間加熱処理して脱気した後、外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしての銀パイプに粉末を充填した。粉末を充填した銀パイプを外径が20mmφとなるように伸線加工した。表1で示す高抵抗体としての平均粒径1μmのセラミックス粉末とともに外径23mmφ、内径22mmφの第2のパイプとしての銀パイプに伸線加工後の線材を充填し、銀パイプの外径が1.44mmφとなるまで伸線加工を施し線材を得た。得られた線材を切断して線材の本数を61本にし、この61本の線材を束ねて外径14mmφ、内径13mmφの第3のパイプとしての銀パイプに嵌合し、外径が1.25mmφとなるまで伸線加工を施した。得られた線材の厚さが0.25mmとなるように圧延加工を施しテープ状の線材を得た。この線材に温度845℃で50時間熱処理を施した後室温まで冷却し、次いで厚さが0.22mmとなるように圧延加工を施した後に温度840℃で50時間熱処理して酸化物高温超電導線材を得た。
得られた酸化物高温超電導線材について、線材中のセラミックス粉末を除去して液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。得られた測定結果を表1に示す。
Figure 2006237010
表1より、酸化アルミニウムや酸化マグネシウムなどを高抵抗体として用いれば臨界電流密度が特に高くなることがわかる。また、サンプル1とサンプル7について交流損失を測定したところ、サンプル7についての交流損失はサンプル1についての交流損失の1/10以下であった。
図1は、サンプル7の断面を模式的に示す図である。
図1を参照して、銀からなるシース体2がビスマス系の酸化物高温超電導体1を被覆していた。耐熱性酸化物セラミックス3(Al23)がシース体2を被覆していた。銀からなる被覆体4が耐熱性酸化物セラミックス3を被覆していた。
実施例1では、第1のパイプとして外径25mmφ、内径22mmφの銀パイプを用いたが、実施例2では、第1のパイプとして外径25mmφ、内径22mmφの表2で示す組成の銀合金パイプを用いた。また、実施例1では、高抵抗体をさまざまに変化させたが、実施例2では、高抵抗体は平均粒径が0.8μmの酸化アルミニウムとした。その他の工程についてすべて実施例1と同様にした。
このようにして得られた酸化物高温超電導線材について実施例1と同様にして臨界電流密度を測定した。得られた結果を表2に示す。
Figure 2006237010
表2中Ag−10at%Mgとは、マグネシウム原子の個数の割合が全体の10%であることを示す。表2よりサンプル22では、マグネシウムの添加量が多いために臨界電流密度が低下していることがわかる。
実施例3では、セラミックス粒子として平均粒径1.2μmの酸化マグネシウム(MgO)を用い、さらに、第2と第3のパイプの材質をさまざまに変化させて超電導線材の臨界電流密度を測定した。
すなわち、まず実施例1と同様の組成のBi23、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOの混合粉末を作製した。この混合粉末を実施例1と同様の第1のパイプとしての銀パイプに充填し、銀パイプの外径が20mmφになるまで伸線加工を施した。伸線加工後の銀パイプと平均粒径1.2μmの酸化マグネシウム(MgO)粉末とを表3で示す組成の外径23mmφ、内径22mmφの第2のパイプに充填し、パイプの外径が1.44mmφとなるまで伸線加工を施し線材を得た。得られた線材を切断して線材の本数を61本とし、これら61本の線材を束ねて外径が14mmφ、内径13mmφで表3で示す組成の第3のパイプとしてのパイプに嵌合し、パイプの外径が1.25mmφとなるまで伸線加工を施した。その後、実施例1と同様の熱処理や圧延加工を施し超電導線材を作製し、この超電導線材の臨界電流密度を実施例1と同様の方法により測定した。得られた結果を表3に示す。
Figure 2006237010
表3中、サンプル45の「インコネル600」は、組成が原子比でNi:Fe:Cr:Cu=0.758:0.08:0.16:0.002の合金を示し、サンプル46の「インコロイ」は、組成が原子比でNi:Fe:Cr=0.34:0.46:0.2の合金を示す。表3より、サンプル32と33の臨界電流密度が低下していることがわかる。
実施例4では、実施例1で示すセラミックス粉末に導電性金属粉末を添加してサンプルを作製した。
すなわち、実施例1で第2のパイプにセラミックス粉末を充填する工程において表4中のセラミックス粉末と導電性金属粉末とを混合した粉末を充填し、その後、実施例1と同様の手法により超電導線材を製造してサンプル51〜56を得た。サンプル53〜サンプル56では、銀や金などの導電性金属粉末を添加したことにより、線材の表面と中心部の超電導フィラメント部とで導電性が得られた。そのため、耐熱性酸化物セラミックスとしてのセラミックス粉末を除去せずに液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。サンプル51および52については、セラミックス粉末を除去して液体窒素中で直流4端子法により臨界電流密度を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2006237010
表4より、導電性金属粉末を添加した場合でも臨界電流密度が低下しないことがわかる。
図2は、サンプル53の断面を模式的に示す図である。
図2を参照して、銀からなるシース体7がビスマス系の酸化物高温超電導体6を被覆していた。耐熱性酸化物セラミックス8(Al23)と導電性金属粉末9がシース体7を被覆していた。銀からなる被覆体10が耐熱性酸化物セラミックス8と導電性金属粉末9とを被覆していた。
実施例5では、実施例1で用いたアルミナの表面に金または銀を蒸着させた粉末を用意し、この粉末を第2のパイプに充填した。
すなわち、実施例5では、実施例1中の第2のパイプにセラミックス粉末を充填する工程において、表5で示すように、蒸着金属材料を有さない酸化アルミニウムまたは蒸着金属材料が蒸着された酸化アルミニウムの粉末を充填した。その後、実施例1と同様の工程に従いサンプル61〜63で示す超電導線材を得た。
得られたサンプル62および63については実施例4で得られたサンプルと同様に超電導線材の表面と中心部の超電導フィラメント部とで導電性が得られたのでセラミックス粉末を除去せずに液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。また、サンプル61については、セラミックス粉末を除去して液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。得られた結果を表5に示す。
Figure 2006237010
表5より、蒸着金属材料を用いても臨界電流密度がほとんど低下しないことがわかる。
Bi23、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕した後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕した粉末を温度850℃で4時間熱処理した後ボールミルで粉砕した。
粉砕して得られた粉末を温度800℃で2時間加熱処理して脱気した。この粉末を外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしての銀パイプに充填し、粉末を充填した銀パイプを外径が1.30mmφとなるように伸線加工した。伸線加工により得られた線材を切断して線材の本数を61本とした。
平均粒径が0.8μmで表6で示す組成の高抵抗体としてのセラミックス粉末を用いて外径が12.9mmφの円柱状の圧粉体を作製し、その圧粉体に内径が1.30mmφの孔を61個あけた。この孔のそれぞれに上述の工程で得られた61本の線材を挿入した。線材が挿入された圧粉体を外径が14mmφ、内径が13mmφの第2のパイプとしての銀パイプに挿入し、銀パイプの外径が1.25mmφとなるまで伸線加工を施した。さらに、銀パイプの厚さが0.25mmとなるまで圧延加工を施しテープ状の線材を得た。
このテープ状の線材を温度845℃で50時間熱処理した後室温まで冷却しテープ状の線材の厚さが0.22mmとなるように圧延加工を施した後に温度840℃で50時間熱処理して酸化物高温超電導線材を得た。
得られた線材について、線材内のセラミックス粉末を除去して液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。得られた結果を表6に示す。
Figure 2006237010
表6より、酸化物セラミックスを用いていない場合には、臨界電流密度が低下していることがわかる。
図3は、サンプル77の断面を模式的に示す図である。
図3を参照して、サンプル77では、ビスマス系の酸化物高温超電導体1をシース体12が被覆していた。高抵抗体としての耐熱性酸化物セラミックス13(Al23)がシース体12を被覆していた。銀からなる被覆体14が耐熱性酸化物セラミックス13を被覆していた。
Bi23と、PbOと、SrCO3と、CaCO3とCuOを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度850℃で4時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。
粉砕により得られた粉末を温度800℃で2時間加熱処理して脱気した後に粉末を外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしての銀パイプに充填した。粉末を充填した銀パイプを外径が1.30mmφとなるように伸線加工した。伸線加工を施した線材を切断して線材の本数を61本とした。
平均粒径が0.5μmで表7に示す組成の高抵抗体としてのセラミックス粉末を厚さが0.1mmの銀からなる板の一方の面の上に塗布し、セラミックス粉末と銀からなる板状体を作製した。この板状体を上述の61本のそれぞれの線材に巻付けて、板状体が巻付けられた61本の線材を束ねて外径が14mmφ、内径が13mmφの第2のパイプとしての銀パイプ内に嵌合し、この銀パイプの外径が1.25mmφとなるように伸線加工を施した。さらに、伸線加工後の銀パイプの厚さが0.25mmとなるように圧延加工を施しテープ状の線材を得た。このテープ状の線材を温度845℃で50時間熱処理した後、室温まで冷却し、厚さが0.22mmとなるように圧延加工を施した。その後、温度840℃で50時間熱処理してサンプル91〜103で示す超電導線材を得た。
得られたサンプル92〜103については、線材中のセラミックス粉末を除去して液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。サンプル91については、得られた線材の状態のままで液体窒素中で臨界電流密度を4端子法により測定した。得られた結果を表7に示す。
Figure 2006237010
表7よりセラミックス粉末が酸化物以外のサンプルについては臨界電流密度が低下していることがわかる。
また、サンプル91とサンプル97について交流損失を調べたところ、サンプル97の交流損失はサンプル91の交流損失の1/10以下であった。
図4はサンプル97の断面を模式的に示す図である。図4を参照して、ビスマス系の酸化物高温超電導体21をシース体22が被覆していた。シース体22を板状体が被覆していた。板状体のセラミックス部分23の端部23aおよび23bは互いに接触していなかった。銀からなる被覆体24が板状体を覆っていた。
Bi23と、PbOと、SrCO3と、CaCO3とCuOを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度850℃で4時間熱処理した後ボールミルで粉砕した。
粉砕により得られた粉末を温度800℃で2時間加熱処理して脱気した後に、粉末を外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしての銀パイプに充填した。粉末を充填した銀パイプを外径が20mmφとなるように伸線加工をした後に平均粒径が0.5μmの高抵抗体としての酸化アルミニウム(Al23)粉末とともに外径23mmφ、内径22mmφの銀パイプに充填し、銀パイプの外径が1.44mmφとなるように伸線加工して線材を得た。
得られた線材を切断して線材の本数を61本とし、この61本の線材を束ねて外径が14mmφ、内径が13mmφの銀パイプに嵌合し、銀パイプの外径が1.25mmφとなるように伸線加工を施して線材を得た。
さらに、この線材に、ツイストピッチ10mmでツイスト加工を施し、厚さ0.25mmとなるように圧延加工を施しテープ状の線材を得た。このテープ状の線材を温度845℃で50時間熱処理した後室温まで冷却し厚さが0.22mmとなるように圧延加工を施した。圧延加工後に温度840℃で50時間熱処理をして酸化物高温超電導線材を得た。
得られた線材について酸化アルミニウムを除去して液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。また、従来のように、酸化物超電導体が銀のみによって覆われている銀シース線材についても液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。その結果、銀シース線材の臨界電流密度は33000A/cm2であり、本発明による線材の臨界電流密度は32500A/cm2であり、両者の差は認められなかった。また、上述の工程で得られた線材の交流損失を液体窒素中で測定した。さらに、銀シース線材の交流損失を液体窒素中で測定した。その結果、本発明の線材の交流損失は銀シース線材の交流損失の1/10であった。
Bi23と、PbOと、SrCO3と、CaCO3と、CuOとを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度850℃で4時間熱処理した後にボールミルで粉砕した。
粉砕により得られた粉末を温度800℃で2時間加熱処理して脱気した後、粉末を外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしての銀パイプに充填した。粉末を充填した銀パイプを外径が20mmφとなるように伸線加工した後に平均粒径が0.5μmの高抵抗体としての酸化マグネシウム(MgO)粉末とともに外径23mm、内径22mmの銀パイプに充填し、銀パイプの外径が0.44mmφとなるまで伸線加工を施した。
伸線加工により得られた線材を切断して線材の本数を61本とし、61本の線材を束ねて外径が14mmφ、内径が13mmφの銀パイプに嵌合し、銀パイプの外径が1.25mmφとなるように伸線加工を施した。同様の工程を経て、外径が1.25mmφの線材を6本準備した。6本の線材を束ねて撚りピッチ70mmで撚線加工を施し、この撚線の厚さを0.5mmとなるように圧延加工を施しテープ状の線材を得た。
この線材を温度845℃で50時間熱処理した後に室温まで冷却し、テープ状の線材の厚が0.45mmとなるように圧延加工を施した後に温度840℃で50時間熱処理して酸化物高温超電導線材を得た。
得られた線材について、酸化マグネシウムを除去した後に液体窒素中で臨界電流密度を直流4端子法により測定した。また、従来の銀シース線材を用意し、この銀シース線材の臨界電流密度を液体窒素中で直流4端子法により測定した。その結果、銀シース線材の臨界電流密度は35000A/cm2であり、本発明による線材の臨界電流密度は34500A/cm2と両者に差は認められなかった。
また、本発明による線材の交流損失を液体窒素中で測定した。また、従来の銀シース線材の交流損失を液体窒素中で測定した。その結果、本発明による線材の交流損失は銀シース線材の交流損失の1/5であった。
Bi23と、PbOと、SrCO3と、CaCO3と、CuOとを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2.0:2.0:3.0の粉末を得た。得られた粉末を温度700℃で12時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度800℃で8時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。粉砕後の粉末を温度850℃で4時間熱処理した後、ボールミルで粉砕した。
粉砕により得られた粉末を温度800℃で2時間熱処理して脱気した後に外径25mmφ、内径22mmφの第1のパイプとしてのAg−10at%Au合金パイプに充填し、粉末を充填したパイプを外径が1.30mmφとなるように伸線加工して線材を得た。得られた線材を切断して線材の本数を61本とした。
平均粒径が0.8μmの酸化アルミニウム(Al23)粉末を用いて外径が12.9mmφの円柱状の圧粉体を作製し、その圧粉体の内側に内径が1.30mmφの孔を61個あけた。この孔に上述の工程で作製した61本の線材のそれぞれを挿入し、線材が挿入された圧粉体を外径14mmφ、内径13mmφの第2のパイプとしてのAg−10at%Au合金パイプに挿入し、合金パイプの外径が1.25mmφとなるように伸線加工を施し線材を得た。
さらに、線材の厚さが0.25mmとなるまで圧延加工を施してテープ状の線材を得た。このテープ状の線材を温度845℃で50時間熱処理した後に室温まで冷却し、次いで、厚さが0.22mmとなるように圧延加工を施しテープ状の線材を得た。得られたテープ状の線材を10枚重ねて温度840℃で50時間熱処理して酸化物高温超電導線材リードを得た。
得られたリードについて温度4.2K〜77.3Kまでの熱侵入量の測定を行なった。また、同じ条件で、従来の銀シース線材について熱侵入量を測定した。従来の銀シース線材による電流リードでは500Aで熱侵入量は0.28W/kAであったが、本発明のよるリードでは、500Aで熱侵入量は0.05W/kAであり、熱侵入量を従来の1/5以下に低減できた。
この発明の1つの局面に従った酸化物高温超電導線材は、酸化物高温超電導体と、シース体と、高抵抗体と、被覆体とを備える。シース体は、酸化物高温超電導体を被覆し、銀を含む材料からなる。高抵抗体は、シース体を被覆し、耐熱性酸化物セラミックスを含む材料からなる。被覆体は、高温酸化性雰囲気中で高抵抗体に対して不活性な材料からなり、高抵抗体を被覆する。
このように構成された酸化物高温超電導線材においては、高温酸化性雰囲気において高抵抗体と被覆体が不活性であるため、すなわち、高抵抗体と被覆体とが反応しにくいため、熱処理時に被覆体を構成する材料が酸化物高温超電導体へ拡散するのを防止することができる。そのため、酸化物高温超電導体の結晶構造が変化せず、臨界電流密度の低下を抑制することができる。
シース体は複数本存在し、複数本のシース体のそれぞれの間には高抵抗体が介在していることが好ましい。この場合、交流電流を流した場合にさらに交流損失を低下させることができる。
酸化物高温超電導体はフィラメント状であることが好ましい。
耐熱性酸化物セラミックスは、温度800℃以上の酸化性雰囲気中で安定なセラミックス材料であることが好ましい。
耐熱性酸化物セラミックスは、Al23、MgO、CoO、Co34、SiO2、Bi2Sr2CuOXおよび(Sr,Ca)2CuO3からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
被覆体を構成する材料は、銀、銀合金、酸化物分散銀、ステンレス鋼およびニッケル合金からなる群より選ばれ少なくとも1種を含むことが好ましい。ここで、「酸化物分散銀」とは、金属の銀の中に酸化物の粒子が分散したものをいう。
銀合金は、Ag−Mg合金、Ag−Mn合金、Ag−Au合金、Ag−Sb合金およびAg−Pd合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
酸化物分散銀は、Al23、MgO、Mn23、Li2Oからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化物の粒子を銀の中に分散したものであることが好ましい。ここで、これらの酸化物分散銀については、[Ag−Al23]のように表示し、金属の銀の中にアルミナ(Al23)が均一に分散したものであることを示す。他のものについても同様である。
ステンレス鋼は、SUS304(JIS呼称)またはSUS310(JIS呼称)であることが好ましい。
ニッケル合金は、Ni−Cr−Fe合金であることが好ましい。
耐熱性酸化物セラミックスには導電性金属が添加されていることが好ましい。
導電性金属は、銀、銀合金、金および金合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
シース体を構成する材料は、Ag、Ag−Au合金およびAg−Sb合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
酸化物高温超電導体は、Bi(Pb)−Sr−Ca−Cu−O系高温超電導体であることが好ましい。
上述のような酸化物高温超電導線材は、酸化物高温超電導電流リード線であることが好ましい。
この発明の1つの局面に従った酸化物高温超電導線材の製造方法は、銀を含む材料からなる第1のパイプに、熱処理により酸化物高温超電導体となる原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填する工程と、原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填した第1のパイプを第2のパイプ内に配置する工程と、第1のパイプの外周面と第2のパイプの内周面との間に耐熱性酸化物セラミックス粉末を充填する工程とを備える。第2のパイプは高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性な材料からなる。酸化物高温超電導線材の製造方法は、耐熱性酸化物セラミックス粉末を充填した第2のパイプに塑性加工と熱処理とを施す工程をさらに備える。
このような工程に従った酸化物高温超電導線材の製造方法においては、第2のパイプは高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックスに対して不活性であるため、すなわち反応しにくいため、熱処理中に第2のパイプを構成する材料が耐熱性酸化物セラミックス粉末を介して第1のパイプ内の原料粉末か酸化物高温超電導体の粉末へ拡散することがない。そのため、原料粉末や酸化物高温超電導体の粉末の組成が変化せず、臨界電流密度の低下を抑制することができる。
この発明の別の局面に従った酸化物高温超電導線材の製造方法は、銀を含む材料からなる第1のパイプに、熱処理により酸化物高温超電導体となる原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填する工程と、孔を有する圧粉体を耐熱性酸化物セラミックス粉末から作製する工程と、原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末が充填された第1のパイプを圧粉体の孔に挿入する工程と、第1のパイプが挿入された圧粉体を第2のパイプ内に配置する工程とを備える。第2のパイプは、高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性な材料からなる。酸化物高温超電導線材の製造方法は、圧粉体が配置された第2のパイプに塑性加工と熱処理とを施す工程をさらに備える。
このような工程に従った酸化物高温超電導線材の製造方法は、第2のパイプは高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性であるため、すなわち反応しにくいため、熱処理中に第2のパイプを構成する材料が耐熱性酸化物セラミックス粉末を介して第1のパイプ内の原料粉末や酸化物高温超電導体の粉末へ拡散することがない。そのため、原料粉末や酸化物高温超電導体の粉末の組成が変化せず、臨界電流密度の低下を抑制することができる。
この発明のさらに別の局面に従った酸化物高温超電導線材の製造方法は、銀を含む材料からなる第1のパイプに、熱処理により酸化物高温超電導体となる原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填する工程と、金属板の表面に耐熱性酸化物セラミックス粉末を付着させて板状体を形成する工程とを備える。金属板は、高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性な材料からなる。酸化物高温超電導線材の製造方法は、原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末が充填された第1のパイプに板状体を巻付けて第2のパイプ内に配置する工程をさらに備える。第2のパイプは、高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性な材料からなる。酸化物高温超電導線材の製造方法は、板状体が配置された第2のパイプに塑性加工と熱処理とを施す工程をさらに備える。
このような工程に従った酸化物高温超電導線材の製造方法においては、金属板と第2のパイプを構成する材料は、いずれも高温酸化性雰囲気中で耐熱性酸化物セラミックス粉末に対して不活性であるため、すなわち反応しにくいため、金属板を構成する金属や第2のパイプを構成する材料は熱処理時に耐熱性酸化物セラミックス粉末を介して第1のパイプ中の原料粉末や酸化物高温超電導体の粉末へ拡散することがない。その結果、原料粉末や酸化物高温超電導体の粉末の組成が変化せず、臨界電流密度の低下を抑制することができる。
耐熱性酸化物セラミックス粉末の平均粒径が10μm以下であることが好ましく、さらに、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。
耐熱性酸化物セラミックス粉末の表面に導電性金属が蒸着していることが好ましい。耐熱性酸化物セラミックス粉末には導電性金属粉末が混入していることが好ましい。
第2のパイプに塑性加工と熱処理とを施す工程は、第2のパイプにツイスト加工を施した後に圧縮加工および熱処理を施すことを含むことが好ましい。
第2のパイプに塑性加工と熱処理とを施す工程は、第2のパイプに伸線加工またはツイスト加工を施して複数本の線材を形成し、複数本の線材を束ねて撚線加工を施しさらに圧縮加工と熱処理を施すことを含むことが好ましい。
第1のパイプに原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填する工程は、複数の第1のパイプを準備し、複数の第1のパイプのそれぞれに原料粉末または酸化物高温超電導体の粉末を充填することを含むことが好ましい。
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施例1のサンプル7の断面を模式的に示す図である。 実施例4のサンプル53の断面を模式的に示す図である。 実施例6のサンプル77の断面を模式的に示す図である。 実施例7のサンプル97の断面を模式的に示す図である。
符号の説明
1,6,11,21 酸化物高温超電導体、2,7,12,22 シース体、3,8,13 耐熱性酸化物セラミックス、4,10,14,24 被覆体、23 板状体のセラミックス部分。

Claims (5)

  1. 酸化物高温超電導体と、
    前記酸化物高温超電導体を被覆し、銀を含む材料からなるシース体と、
    前記シース体を被覆し、耐熱性酸化物セラミックス粉末を原料とする高抵抗体と、
    高温酸化性雰囲気中で前記高抵抗体に対して不活性な材料からなり、前記高抵抗体を被覆する被覆体とを備え、
    前記シース体は複数本存在し、複数本の前記シース体のそれぞれの間には前記高抵抗体が介在しており、
    前記酸化物高温超電導体、前記シース体および前記高抵抗体を前記被覆体に嵌合させて少なくとも一回塑性加工を施すことで得られる、酸化物高温超電導線材。
  2. 前記塑性加工は伸線加工である、請求項1に記載の酸化物高温超電導線材。
  3. 前記シース体を構成する材料は、Ag、Ag−Au合金およびAg−Sb合金からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の酸化物高温超電導線材。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の酸化物高温超電導線材の製造方法であって、前記耐熱性酸化物セラミックス粉末の平均粒径が10μm以下である、酸化物高温超電導線材の製造方法。
  5. 前記耐熱性酸化物セラミックス粉末の平均粒径が1μm以下である、請求項4に記載の酸化物高温超電導線材の製造方法。
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