ところが、図12のような従来のオイルを必要とするスクロール圧縮機では、油上がり(圧縮空気中へのオイルの混入)や、オイルの乳化などの問題を生じる。このため、鉄道車両用のスクロール圧縮機などにおいては、このような問題を解決することができ、また、メンテナンスの容易さや環境への影響の面からも、オイルを必要としない(オイルフリーの)スクロール圧縮機が強く望まれている。しかしならが、現在でも小容量(例えば400L/min程度)のオイルフリースクロール圧縮機は実用化されているものの、大容量(例えば1500L/min程度)のオイルフリースクロール圧縮機はいまだ実用化されていない。スクロール圧縮機をオイルフリーとする場合に特に問題となるのが圧縮時の温度上昇であり、このことが大容量化の最大の妨げとなっている。つまり、空気を圧縮して例えば大気圧から880kPa(9kgf/cm2)(ゲージ圧)まで昇圧させる場合には圧縮空気の温度が例えば20℃程度から300℃程度まで上昇するため、放熱をすることが必要であるが、スクロール圧縮機の容量(圧縮空気量)を大きくしようとすると、圧縮空気の温度上昇による熱量の増加が非常に大きくなるため、オイルを用いずに放熱することが非常に難しくなる。このため、現状では、容量を大きくする場合には小容量のオイルフリースクロール圧縮機を複数台用いる必要があり、装置全体の大型化やコストアップなど招いてしまう。
そこで、詳細は後述するが、本発明では2段圧縮のスクロール圧縮機とすることなどによって大容量化を図っている。しかし、本発明のスクロール圧縮機の2段圧縮と図14に示すスクロール圧縮機の2段圧縮とは全く構成の異なるものである。図14に示すような2段圧縮構造のスクロール圧縮機ではモータ回転軸22の両端部に低圧段の圧縮部27と高圧段の圧縮部28とを設けるため、即ち、2体の圧縮部27,28を要するため、構成が複雑で大型化し、コストもかかる。また、モータ回転軸22の一端側(低圧段側)と他端側とに作用する圧力が異なるために力のバランスが悪くなり、モータ回転軸22の長さも長くなるため、十分な補強を施すことが必要になる。従って、このことからも装置の大型化やコストアップなどを招く。
従って本発明は上記の事情に鑑み、オイルフリーとすることができて且つ大容量化を図ることができ、また、構成が簡易で補強の必要性などもあまりなくコストの低減を図ることもできるオイルフリー圧縮機を提供することを課題とする。
上記課題を解決する第1発明のスクロール圧縮機は、同方向に並行して巻かれた渦巻状の2条の低圧側ラップと高圧側ラップとを有するとともに前記高圧側ラップの高さが前記低圧側ラップの高さよりも低い第1のスクロールと、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な2条の低圧側溝部と高圧側溝部とを有するとともに前記高圧側溝部の底面の深さが前記低圧側溝部の底面の深さよりも浅い第2のスクロールとを有し、前記低圧側溝部と前記低圧側溝部内に位置する前記低圧側ラップとを有してなる低圧段と、前記高圧側溝部と前記高圧側溝部内に位置する前記高圧側ラップとを有してなる高圧段とを有することにより、前記低圧段で圧縮した圧縮流体を前記低圧段から排出して前記高圧段に供給し、前記高圧段で更に圧縮する2条2段圧縮の構造とした圧縮部と、
前記第1のスクロール又は前記第2のスクロールを旋回させる旋回駆動手段と、
前記圧縮部の前記低圧段から排出されて前記圧縮部の前記高圧段へ供給される圧縮流体を冷却する流体冷却手段とを備えたことを特徴とする。
また、第2発明のスクロール圧縮機は、第1発明のスクロール圧縮機において、
前記高圧段の外周側端部の周方向位置と前記低圧段の外周側端部の周方向位置とが一致していて、前記高圧段の外周側端部が前記低圧段の外周側端部の内側に位置していることを特徴とする。
また、第3発明のスクロール圧縮機は、第1発明のスクロール圧縮機において、
前記低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたことを特徴とする。
また、第4発明のスクロール圧縮機は、第2発明のスクロール圧縮機において、
前記低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたことを特徴とする。
また、第5発明のスクロール圧縮機は、第4発明のスクロール圧縮機において、
前記高圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第1の圧縮流体排出孔の位置を、前記低圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第2の圧縮流体排出孔の位置よりも内側にすることにより、前記高圧段の圧縮比が、圧縮部全体の圧縮比の平方根となるようにしたことを特徴とする。
また、第6発明のスクロール圧縮機は、第1又は第2発明のスクロール圧縮機において、前記第1の低圧側ラップ及び第1の高圧側ラップの先端と、前記低圧側溝部及び前記高圧側溝部の周縁部とにシール材を設けたことを特徴とする。
また、第7発明のスクロール圧縮機は、同方向に並行して巻かれた渦巻状の4条の第1の低圧側ラップと第2の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の高圧側ラップとを有するとともに前記第1の高圧側ラップ及び前記第2の高圧側ラップの高さが前記第1の低圧側ラップ及び前記第2の低圧側ラップの高さよりも低い第1のスクロールと、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な4条の第1の低圧側溝部と第2の低圧側溝部と第1の高圧側溝部と第2の高圧側溝部とを有するとともに前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の底面の深さが前記第1の低圧側溝部及び前記第2の低圧側溝部の底面の深さよりも浅い第2スクロールとを有し、前記第1の低圧側溝部と前記第1の低圧側溝部内に位置する前記第1の低圧側ラップとを有してなる第1の低圧段と、前記第2の低圧側溝部と前記第2の低圧側溝部内に位置する前記第2の低圧側ラップとを有してなる第2の低圧段と、前記第1の高圧側溝部と前記第1の高圧側溝部内に位置する前記第1の高圧側ラップとを有してなる第1の高圧段と、前記第2の高圧側溝部と前記第2の高圧側溝部内に位置する前記第2の高圧側ラップとを有してなる第2の高圧段とを有することにより、前記第1の低圧段で圧縮した圧縮流体を前記第1の低圧段から排出して前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方に供給し、前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方で更に圧縮するとともに、前記第2の低圧段で圧縮した圧縮流体を前記第2の低圧段から排出して前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方に供給し、前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方で更に圧縮する4条2段圧縮の構造とした圧縮部と、
前記第1のスクロール又は前記第2のスクロールを旋回させる旋回駆動手段と、
前記圧縮部の前記第1の低圧段から排出されて前記圧縮部の前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方へ供給される圧縮流体を冷却し、且つ、前記圧縮部の前記第2の低圧段から排出されて前記圧縮部の前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方へ供給される圧縮流体を冷却する流体冷却手段とを備えたことを特徴とする。
また、第8発明のスクロール圧縮機は、第7発明のスクロール圧縮機において、
前記第1の高圧段の外周側端部の周囲方向位置と前記第1の低圧段の外周側端部の周方向位置とが一致していて、前記第1の高圧段の外周側端部が前記第1の低圧段の外周側端部の内側に位置しており、且つ、前記第2の高圧段の外周側端部の周囲方向位置と前記第2の低圧段の外周側端部の周方向位置とが、前記第1の高圧段及び前記第1の低圧段の周方向位置と点対称の位置で一致していて、前記第2の高圧段の外周側端部が前記第2の低圧段の外周側端部の内側に位置していることを特徴とする。
また、第9発明のスクロール圧縮機は、第7発明のスクロール圧縮機において、
前記第1の低圧段及び前記第2の低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたことを特徴とする。
また、第10発明のスクロール圧縮機は、第8発明のスクロール圧縮機において、
前記第1の低圧段及び前記第2の低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたことを特徴とする。
また、第11発明のスクロール圧縮機は、第10発明のスクロール圧縮機において、
前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第1の圧縮流体排出孔及び第2の圧縮流体排出孔の位置を、前記第1の低圧側溝部及び前記第2の低圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第3の圧縮流体排出孔及び第4の圧縮流体排出孔の位置よりも内側にすることにより、前記第1の高圧段及び前記第2の高圧段の圧縮比が、圧縮部全体の圧縮比の平方根となるようにしたことを特徴とする。
また、第12発明のスクロール圧縮機は、第7又は第8発明のスクロール圧縮機において、
前記第1の低圧側ラップ、前記第2の低圧側ラップ、前記第1の高圧側ラップ及び前記第2の高圧側ラップの先端と、前記第1の低圧側溝部、前記第2の低圧側溝部、前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の周縁部とにシール材を設けたことを特徴とする。
また、第13発明のスクロール圧縮機は、第1又は第7発明のスクロール圧縮機において、
前記流体冷却手段は、前記旋回駆動手段の回転軸に取り付けられて同回転軸とともに回転する羽根を有してなる冷却ファンを有し、この冷却ファンから送風される冷却風によって前記流体を冷却する構成であることを特徴とする。
また、第14発明のスクロール圧縮機は、第13発明のスクロール圧縮機において、
前記冷却ファンへの吸込み風を前記圧縮部全体を通して導入することを特徴とする。
第1発明のスクロール圧縮機によれば、第1発明のスクロール圧縮機は、同方向に並行して巻かれた渦巻状の2条の低圧側ラップと高圧側ラップとを有するとともに前記高圧側ラップの高さが前記低圧側ラップの高さよりも低い第1のスクロールと、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な2条の低圧側溝部と高圧側溝部とを有するとともに前記高圧側溝部の底面の深さが前記低圧側溝部の底面の深さよりも浅い第2のスクロールとを有し、前記低圧側溝部と前記低圧側溝部内に位置する前記低圧側ラップとを有してなる低圧段と、前記高圧側溝部と前記高圧側溝部内に位置する前記高圧側ラップとを有してなる高圧段とを有することにより、前記低圧段で圧縮した圧縮流体を前記低圧段から排出して前記高圧段に供給し、前記高圧段で更に圧縮する2条2段圧縮の構造とした圧縮部と、前記第1のスクロール又は前記第2のスクロールを旋回させる旋回駆動手段と、前記圧縮部の前記低圧段から排出されて前記圧縮部の前記高圧段へ供給される圧縮流体を冷却する流体冷却手段とを備えたことを特徴とするため、次のような効果を得ることができる。
即ち、本第1発明のスクロール圧縮機は1体の圧縮部に低圧段と高圧段とを備えた2条2段圧縮の構造であるため、従来のようなモータ回転軸の両端部に低圧段の圧縮部と高圧段の圧縮部とを設けた2段圧縮構造のスクロール圧縮機に比べて、2体の圧縮部を要しないため、モータ回転軸(駆動軸)を短くすることができ、モータ回転軸の一端側と他端側に異なる力が作用するということもないため、補強の必要性もあまりないことから、簡易な構成で2段圧縮を実現することができ、コストの低減も図ることができる。しかも、圧縮部の低圧段から排出されて圧縮部の高圧段へ供給される圧縮流体を流体冷却手段によって冷却するため、高圧段においても圧縮流体の温度があまり高くならない。このため、本第1発明のスクロール圧縮機は、オイルフリーとすることができて且つ大容量化を図ることができる。
また、第2発明のスクロール圧縮機によれば、前記高圧段の外周側端部の周方向位置と前記低圧段の外周側端部の周方向位置とが一致していて、前記高圧段の外周側端部が前記低圧段の外周側端部の内側に位置していることを特徴としているため、高圧段の外側には常に低圧段が存在することになり、高圧段に圧縮空気のチップ漏れが生じたとしても、当該圧縮空気は低圧段に流入することになるため、圧縮空気の漏れによる圧縮性能の低下を防止することができる。
また、第3発明のスクロール圧縮機によれば、前記低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、第4発明のスクロール圧縮機においても、前記低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、第5発明のスクロール圧縮機によれば、前記高圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第1の圧縮流体排出孔の位置を、前記低圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第2の圧縮流体排出孔の位置よりも内側にすることにより、即ち、前記高圧段の圧縮流体を前記低圧段の圧縮流体よりも内側で排出させることにより、前記高圧段の圧縮比が、圧縮部全体の圧縮比の平方根となるようにしたため、高圧段の外周側端部の周方向位置を低圧段の外周側端部の周方向位置に一致させるために高圧段の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)しても、高圧段の圧縮比を所定の圧縮比にすることができる。
また、第6発明のスクロール圧縮機によれば、第1又は第2発明のスクロール圧縮機において、前記第1の低圧側ラップ及び第1の高圧側ラップの先端と、前記低圧側溝部及び前記高圧側溝部の周縁部とにシール材を設けたため、圧縮空気のチップ漏れを、より確実に防止することができる。この場合、圧縮途中(低圧段と高圧段の間)で圧縮空気を冷却することにより、圧縮空気の温度上昇を抑制しているため、シール材として入手容易な樹脂製のものを用いることができる。
また、第7発明のスクロール圧縮機によれば、同方向に並行して巻かれた渦巻状の4条の第1の低圧側ラップと第2の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の高圧側ラップとを有するとともに前記第1の高圧側ラップ及び前記第2の高圧側ラップの高さが前記第1の低圧側ラップ及び前記第2の低圧側ラップの高さよりも低い第1のスクロールと、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な4条の第1の低圧側溝部と第2の低圧側溝部と第1の高圧側溝部と第2の高圧側溝部とを有するとともに前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の底面の深さが前記第1の低圧側溝部及び前記第2の低圧側溝部の底面の深さよりも浅い第2スクロールとを有し、前記第1の低圧側溝部と前記第1の低圧側溝部内に位置する前記第1の低圧側ラップとを有してなる第1の低圧段と、前記第2の低圧側溝部と前記第2の低圧側溝部内に位置する前記第2の低圧側ラップとを有してなる第2の低圧段と、前記第1の高圧側溝部と前記第1の高圧側溝部内に位置する前記第1の高圧側ラップとを有してなる第1の高圧段と、前記第2の高圧側溝部と前記第2の高圧側溝部内に位置する前記第2の高圧側ラップとを有してなる第2の高圧段とを有することにより、前記第1の低圧段で圧縮した圧縮流体を前記第1の低圧段から排出して前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方に供給し、前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方で更に圧縮するとともに、前記第2の低圧段で圧縮した圧縮流体を前記第2の低圧段から排出して前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方に供給し、前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方で更に圧縮する4条2段圧縮の構造とした圧縮部と、前記第1のスクロール又は前記第2のスクロールを旋回させる旋回駆動手段と、前記圧縮部の前記第1の低圧段から排出されて前記圧縮部の前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか一方へ供給される圧縮流体を冷却し、且つ、前記圧縮部の前記第2の低圧段から排出されて前記圧縮部の前記第1の高圧段又は前記第2の高圧段の何れか他方へ供給される圧縮流体を冷却する流体冷却手段とを備えたことを特徴とするため、次のような効果を得ることができる。
即ち、本第7発明のスクロール圧縮機は1体の圧縮部に第1の低圧段と第2の低圧段と第1の高圧段と第2の高圧段とを備えた4条2段圧縮の構造であるため、従来のようなモータ回転軸の両端部に低圧段の圧縮部と高圧段の圧縮部とを設けた2段圧縮構造のスクロール圧縮機に比べて、2体の圧縮部を要しないため、モータ回転軸(駆動軸)を短くすることができ、モータ回転軸の一端側と他端側に異なる力が作用するということもないため、補強の必要性もあまりないことから、簡易な構成で2段圧縮を実現することができ、コストの低減も図ることができる。しかも、圧縮部の第1の低圧段及び第2の低圧段から排出されて圧縮部の第1の高圧段及び第2の高圧段へ供給される圧縮流体を流体冷却手段によって冷却するため、第1の高圧段及び第2の高圧段においても圧縮流体の温度があまり高くならない。このため、本第7発明のスクロール圧縮機は、オイルフリーとすることができて且つ大容量化を図ることができる。
また、第8発明のスクロール圧縮機によれば、前記第1の高圧段の外周側端部の周囲方向位置と前記第1の低圧段の外周側端部の周方向位置とが一致していて、前記第1の高圧段の外周側端部が前記第1の低圧段の外周側端部の内側に位置しており、且つ、前記第2の高圧段の外周側端部の周囲方向位置と前記第2の低圧段の外周側端部の周方向位置とが、前記第1の高圧段及び前記第1の低圧段の周方向位置と点対称の位置で一致していて、前記第2の高圧段の外周側端部が前記第2の低圧段の外周側端部の内側に位置していることを特徴としているため、第1の高圧段の外側には常に第1の低圧段が存在し、第2の高圧段の外側には常に第2の低圧段が存在することになり、第1の高圧段や第2の高圧段に圧縮空気のチップ漏れが生じたとしても、当該圧縮空気は第1の低圧段や第2の低圧段に流入することになるため、圧縮空気の漏れによる圧縮性能の低下を防止することができる。
しかも、この場合、第1の低圧段及び第1の高圧段の外周側端部と第2の低圧段及び第2の高圧段の外周側端部とが点対称の位置関係となっているため、圧縮空気によって旋回スクロールの旋回軸に作用する力に偏りがない。つまり、本クロール圧縮機の圧縮部では左右の圧縮空気の圧力が等しくなって圧縮部に作用する力のバランスがよくなる。このため、更に補強の必要性が低減されて構成の簡易化を図ることができる。
また、第9発明のスクロール圧縮機によれば、前記第1の低圧段及び前記第2の低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、第10発明のスクロール圧縮機においても、前記第1の低圧段及び前記第2の低圧段の圧縮比は、圧縮部全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、第11発明のスクロール圧縮機によれば、前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第1の圧縮流体排出孔及び第2の圧縮流体排出孔の位置を、前記第1の低圧側溝部及び前記第2の低圧側溝部の内周側端部の底面に設けられた第3の圧縮流体排出孔及び第4の圧縮流体排出孔の位置よりも内側にすることにより、即ち、前記第1の高圧段及び前記第2の高圧段の圧縮流体を前記第1の低圧段及び前記第2の低圧段の圧縮流体よりも内側で排出させることにより、前記第1の高圧段及び前記第2の高圧段の圧縮比が、圧縮部全体の圧縮比の平方根となるようにしたため、第1の高圧段の外周側端部の周方向位置を第1の低圧段の外周側端部の周方向位置に一致させるために第1の高圧段の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)し、第2の高圧段の外周側端部の周方向位置を第2の低圧段の外周側端部の周方向位置に一致させるために第2の高圧段の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)しても、第1の高圧段及び第2の高圧段の圧縮比を所定の圧縮比にすることができる。
また、第12発明のスクロール圧縮機によれば、前記第1の低圧側ラップ、前記第2の低圧側ラップ、前記第1の高圧側ラップ及び前記第2の高圧側ラップの先端と、前記第1の低圧側溝部、前記第2の低圧側溝部、前記第1の高圧側溝部及び前記第2の高圧側溝部の周縁部とにシール材を設けたため、圧縮空気のチップ漏れを、より確実に防止することができる。この場合、圧縮途中(低圧段と高圧段の間)で圧縮空気を冷却することにより、圧縮空気の温度上昇を抑制しているため、シール材として入手容易な樹脂製のものを用いることができる。
また、第13発明のスクロール圧縮機によれば、前記流体冷却手段は、前記旋回駆動手段の回転軸に取り付けられて同回転軸とともに回転する羽根を有してなる冷却ファンを有し、この冷却ファンから送風される冷却風によって前記流体を冷却する構成であるため、即ち、旋回駆動手段を冷却ファンの駆動源としても利用するため、冷却ファンを別途設置する場合に比べて構成が簡易であり、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
また、第14発明のスクロール圧縮機によれば、冷却ファンに導入される冷却風によりあらかじめ圧縮部全体を冷却することができるため、冷却風の導入路を単独に設ける場合に比べ、効率的に圧縮部を冷却することができ、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は特に鉄道車両のブレーキなどの圧縮空気源として利用される鉄道車両用スクロール圧縮機に適用して有用ものであるが、これに限定するものではなく、鉄道車両用以外の各種の装置や設備の圧縮空気源などとして用いられるスクロール圧縮機にも適用することできる。また、本発明は空気を圧縮するスクロール圧縮機に限らず、空気以外の流体を圧縮するスクロール圧縮機にも適用することができる。
<実施の形態例1>
図1は本発明の実施の形態例1に係るオイルフリーの2条2段スクロール圧縮機における圧縮空気の流れを示すフローブロック図、図2は前記2条2段スクロール圧縮機の構成図である。また、図3は図2のB−B線矢視断面拡大図、図4は前記2条2段スクロール圧縮機の圧縮部の構成要素である固定スクロールの構成を示す平面図(図3から旋回スクロールを取り除いた状態の図)、図5は前記圧縮部の構成要素である旋回スクロールの構成を示す斜視図、図6は図3のC−C線矢視断面拡大図、図7,図8及び図9は前記圧縮部において前記旋回スクロールが旋回する様子を示す図である。また、図10は前記圧縮部の他の構成を示す断面図である。
まず、図1に基づいて概要を説明すると、本実施の形態例1のスクロール圧縮機は圧縮部31と、流体冷却手段としてのインタークーラ32及び冷却ファン33と、吸入チリコシ34とを有している。そして、圧縮部31は低圧段35と高圧段36とを有する2段圧縮構造となっている。従って、空気(大気)は吸入チリコシ34で除塵された後、まず、圧縮部35の低圧段35に吸入され、この低圧段35で圧縮されて大気圧から所定の中間圧まで昇圧された後、低圧段35から排出(吐出)される。そして、この排出された圧縮空気をインタークーラ32において、冷却ファン33からの冷却ファン入側導入路60を通って導かれた送風(冷却風)により冷却した後、圧縮部31の高圧段36に供給し、高圧段36で更に圧縮することにより所定の高圧に昇圧して排出(吐出)する。即ち、1体の圧縮部31で空気を2段圧縮し、且つ、この2段圧縮の途中(低圧段と高圧段の間)で圧縮空気の冷却も行っている。
例えば、圧縮部31全体で(即ち低圧段及び高圧段の圧縮により)空気(大気)を絶対圧力の1kgf/cm2から10kgf/cm2まで昇圧させる場合、低圧段35では圧縮空気が例えば20℃から150℃程度まで上昇するため、この圧縮空気をインタークーラ32において例えば20℃程度まで冷却する。この場合、高圧段36では圧縮空気の温度が例えば20℃程度から150℃程度までしか上昇しないことになる。なお、インタークーラ32において実際にどの程度の温度まで圧縮空気を冷却するかは、圧縮部31の構成材料などの条件によって適宜決定すればよい。また、圧縮部31の低圧段35と高圧段36における圧縮効率をよくするため、低圧段35の圧縮比は、圧縮部31全体の圧縮比の平方根としている。例えば、圧縮部31全体で(即ち低圧段及び高圧段の圧縮により)空気(大気)を絶対圧力の1kgf/cm2から10kgf/cm2まで昇圧させる場合には圧縮部31全体の圧縮比が10であるため、低圧段35の圧縮比は10の平方根(約3.1)とする。このとき高圧段36の圧縮比も約3.1となる。
次に、図2〜図9に基づいて本2条2段スクロール圧縮機の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、本実施の形態例2のスクロール圧縮機は第1のスクロールとしての旋回スクロール42と第2のスクロールとしての固定スクロール41とを有してなる圧縮部31と、流体冷却手段を構成するインタークーラ32及び冷却ファン33と、冷却ファン入側導風路60と、旋回駆動手段としての電動モータ43と、吸入チリコシ34とを有している。電動モータ43の回転軸43aはカップリグ44を介して駆動軸45に連結されている。駆動軸45は軸受46,47を介してケース48に回転自在に支持されている。駆動軸45の先端部には旋回軸49が突設されており、駆動軸45の軸心と旋回軸49の軸心は偏心している。駆動軸45と旋回軸49の偏心量は例えば8mm程度に設定される。旋回軸49の先端部は軸受50を介して旋回スクロール42に回転自在に結合されている。従って、電動モータ43が作動すると、旋回スクロール42は前記偏心量を旋回半径として回転軸43a(駆動軸45)回りに旋回駆動される。
なお、旋回スクロール42の周縁部には補助のために複数のクランクピン51が設けられている。クランクピン51は、一端側が軸受52を介して旋回スクロール42に回転自在に結合され、他端側が軸受53を介してケース48に回転自在に結合されており、その偏量が駆動軸45と旋回軸49の偏心量に一致している。
吸入チリコシ34は空気供給配管54を介して固定スクロール41に接続されている。空気供給配管54の先端側は圧縮部31の低圧段35の空気吸入孔(詳細後述)に接続されている。インタークーラ32は圧縮空気排出配管55と圧縮空気供給配管56とを介して固定スクロール41に接続されている。圧縮空気排出配管55の基端側は圧縮部31の低圧段31の第2の圧縮空気排出孔(詳細後述)に接続され、圧縮空気供給配管56の先端側は圧縮部31の高圧段36の第1の圧縮空気吸入孔(詳細後述)に接続されている。インタークーラ32にはドレン弁57が設けられている。インタークーラ32において圧縮空気を冷却する際に圧縮空気に含まれている水分が凝縮してインタークーラ32内に溜まったときには、ドレン弁57を開放してインタークーラ32内に溜まっている凝縮水を排出することができるようになっている。
冷却ファン33は電動モータ43の回転軸43aに取り付けられて同回転軸43aとともに回転する羽根33aを有してなるものである。冷却ファン33と圧縮部31との間には冷却ファン入側導入路60が設けられており、冷却ファン33への吸込み風は圧縮部31側から、この冷却ファン入側導入路60を介して導入される。即ち、冷却ファンへの吸込み風を圧縮部31全体を通して導入するようになっている。また、冷却ファン33とインタークーラ32との間に冷却ファン出側導風路58が設けられている。従って、圧縮部31側から冷却ファン入側導入路60を介して吸い込まれた(即ち圧縮部31全体を通して導入された)冷却ファン33の送風(冷却風)が、冷却ファン出側導風路58によりインタークーラ32へと導かれて、インタークーラ32に吹き付けられるようになっている。また、圧縮部31の高圧段36の圧縮空気排出孔(詳細後述)には圧縮空気排出配管59が接続されている。
図3,図5及び図6に示すように、圧縮部31の構成要素である旋回スクロール42は、端板61の端面(側面)61aに突設された2条の第1の低圧側ラップ62と第1の高圧側ラップ63とを有している。第1の低圧側ラップ62は径方向の外側に位置し、第1の高圧側ラップ63は径方向の内側に位置している。そして、第1の低圧側ラップ62と第1の高圧側ラップ63は同方向(図示例では電動モータ43側から見て時計回りの方向)に巻かれた渦巻状であり、互いに並行している。
また、第1の高圧側ラップ63の高さは第1の低圧側ラップ62の高さよりも低くなっている。これは低圧段35の圧縮比を考慮して、高圧段36では低圧段35に比べて圧縮室の容積を小さくする必要があるためである。図示例では第1の高圧側ラップ63の高さを第1の低圧側ラップ62の高さの約1/3としている。これは低圧段35の圧縮比を約3に設定しているためである。但し、第1の高圧側ラップ63の高さを第1の低圧側ラップ62の約1/3とするのは圧縮空気の漏れなどがない理想的な場合であるため、圧縮空気の漏れなどを考慮して、第1の高圧側ラップ63の高さを適宜調整してもよい。例えば第1高圧側ラップ63の高さを第1の低圧側ラップ62の高さの1/2程度にしてもよい。
一方、図3,図4及び図6に示すように、圧縮部31の構成要素である固定スクロール41は、凹部64の底面(端面)67に突設された2条の第2の低圧側ラップ65と第2の高圧側ラップ66とを有している。第2の低圧側ラップ65は径方向の外側に位置し、第2の高圧側ラップ66は径方向の内側に位置している。そして、第2の低圧側ラップ65と第2の高圧側ラップ66は同方向(図示例では電動モータ43側から見て時計回りの方向)に巻かれた渦巻状であり、互いに並行している。また、第2の低圧側ラップ65と第2の高圧側ラップ66は内周側の端部同士が繋がれており、且つ、外周側の端部同士も繋がれている。
従って、このような第2の低圧側ラップ65と第2の高圧側ラップ66とが設けられることにより、固定スクロール41には2条の低圧側溝部68と高圧側溝部69とが形成されている。低圧側溝部68と高圧側溝部69は同方向(図示例では電動モータ43側から見て時計回りの方向)に巻かれた渦巻状であり、互いに並行しているとともに互いに独立している(相互に連通していない)。また、旋回スクロール42では第1の高圧側ラップ63の高さが第1の低圧側ラップ62の高さよりも低いことに対応して、固定スクロール41では高圧側溝部69の底面67の深さが低圧側溝部68の底面67の深さよりも浅くなっている。
そして、図3及び図6に示すように圧縮部31は、固定スクロール41の低圧側溝部68とこの低圧側溝部68内に位置する旋回スクロール42の第1の低圧側ラップ62とを有してなる低圧段35と、固定スクロール41の高圧側溝部69とこの高圧側溝部69内に位置する旋回スクロール42の第1の高圧側ラップ63とを有してなる高圧段36とが設けられており、低圧段35で圧縮して昇圧した空気を高圧段36に供給し、高圧段36で更に圧縮して昇圧する2条2段圧縮の構造となっている。
しかも、高圧段36の外周側端部36aの周方向位置と、低圧段35の外周側端部35aの周方向位置とが一致していて、高圧段36の外周側端部36aが低圧段35の外周側端部35aの内側(径方向の内側)に位置している。即ち、高圧段36の第1の高圧側ラップ63及び高圧側溝部69(第2の高圧側ラップ66)の周方向位置と、低圧段35の第1の低圧側ラップ62及び低圧側溝部68(第2の低圧側ラップ65)の周方向位置とが一致している。つまり、図10に示すような2条2段圧縮のスクロール圧縮機の構成例に比べて、図3に示す2条2段圧縮のスクロール圧縮機では、高圧段36の第1の高圧側ラップ63及び高圧側溝部69(第2の高圧側ラップ66)の長さ(巻数)が、低圧段35の第1の低圧側ラップ62及び低圧側溝部68(第2の低圧側ラップ65)の長さ(巻数)よりも半巻分だけ短く(少なく)なっている。
この場合、スクロール圧縮機の圧縮比は巻数によって変わるため、このままでは高圧段36を圧縮部全体の圧縮比の平方根とすることができない。しかし、スクロール圧縮機では、圧縮空気の排出孔を内側(内周側)にすることによっても圧縮比を大きくすることができる。そこで、高圧段36における高圧側溝部69の内周側端部の底面67に設けられた第1の圧縮空気排出孔72の位置を、低圧段35における低圧側溝部68の内周側端部の底面67に設けられた第2の圧縮空気排出孔73の位置よりも内側(内周側)にして高圧段36の圧縮空気を低圧段35の圧縮空気よりも内側(内周側)で排出させることにより、高圧段36の圧縮比が圧縮部全体の圧縮比の平方根となるようにしている。図示例では高圧段36における圧縮比を約3とするため、圧縮空気排出孔72につながる直前の圧縮室92の大きさ(圧縮室92における底面67の面積)が、高圧段36の最外周側に形成される圧縮室91の大きさ(圧縮室91における底面67の面積)の約1/2.2となるところで第1の圧縮空気排出孔72につながるように配置されている。高圧段36における第1の高圧側ラップ63の背側と第2の低圧側ラップ65の腹側でできる圧縮室、低圧段35における第1の低圧側ラップ62の腹側と第2の低圧側ラップ65の背側でできる圧縮室、及び、第1の低圧側ラップ62の背側と第2の高圧側ラップ66の腹側でできる圧縮室も同様に最外周側に形成される圧縮室の大きさの約1/2.2となるところで第1の圧縮空気排出孔72及び第2の圧縮空気排出孔73にそれぞれつながるように配置されている。
なお、前述のように第2の圧縮空気排出孔73には圧縮空気排出配管55が接続されており、低圧段35で圧縮された空気が、これらの第2の圧縮空気排出孔73及び圧縮空気排出配管55を介して排出されるようになっている。第1の圧縮空気排出孔72には圧縮空気排出配管59が接続されており、高圧段36で圧縮された空気が、これらの第1の圧縮空気排出孔72及び圧縮空気排出配管59を介して排出されるようになっている。
また、低圧段35では固定スクロール41の低圧側溝部68の外周側端部に空気吸入孔70が形成されており、この空気吸入孔70に空気供給配管54が接続されている。従って、空気(大気)は空気供給配管54及び空気吸入孔70を介して低圧側溝部68内(低圧段35の圧縮室内)に吸入される。高圧段36では固定スクロール41の高圧側溝部69の外周側端部に圧縮空気吸入孔71が形成されており、この圧縮空気吸入孔71に圧縮空気供給配管56が接続されている。従って、インタークーラ33で冷却された圧縮空気は、圧縮空気供給配管56及び圧縮空気吸入孔71を介して高圧側溝部69内(高圧段36の圧縮室内)に吸入される。
図3には旋回スクロール42が90°旋回したときの状態を示している。このとき、低圧段35では、低圧側溝部68内において、第1の低圧側ラップ62の腹側(内径側)には外周側から内周側に向かって順に圧縮室111,112,113が形成され、第1の低圧側ラップ62の背側(外径側)には外周側から内周側に向かって順に圧縮室121,122,123が形成されている。高圧段36では、高圧側溝部69内において、第1の高圧側ラップ63の腹側(内径側)には外周側から内周側に向かって順に圧縮室91,92が形成され、第1の高圧側ラップ63の背側(外径側)には外周側から内周側に向かって順に圧縮室101,102,103が形成されている。
図7〜図9には旋回スクロール42の旋回角度ごとの圧縮部31内(低圧段35,高圧段36)の様子を示している。図7(a)には0°旋回時(第1の低圧側ラップ62の背側による締切時)の様子、図7(b)には30°旋回時の様子、図7(c)には60°旋回時の様子、図7(d)には90°旋回時(第1の低圧側ラップ62の腹側及び第1の高圧側ラップ63の腹側による締切時)の様子を示している。図8(a)には120°旋回時(締切時)の様子、図8(b)には150°旋回時の様子、図8(c)には180°旋回時の様子、図8(d)には210°旋回時の様子を示している。また、図9(a)には240°旋回時(締切時)の様子、図9(b)には270°旋回時(第1の高圧側ラップ63の背側による締切時)の様子、図9(c)には300°旋回時の様子、図9(d)には330°旋回時の様子を示している。これらの図に示すように旋回スクロール42の旋回によって低圧段35及び高圧段36の各圧縮室が徐々に縮小されることにより、空気が徐々に圧縮されて昇圧される。
なお、図6に示すように、旋回スクロール42の第1の低圧側ラップ62の先端には、同先端と固定スクロール41の底面67との間の隙間(チップ隙間)からの圧縮空気の漏れ(チップ漏れ)を防止するためのシール材として、PTFEなどからなる樹脂製で細長いチップシール81が溝84に嵌め込むようにして取り付けられている。旋回スクロール42の第1の高圧側ラップ63の先端にも、同先端と固定スクロール41の底面67との間の隙間(チップ隙間)からの圧縮空気の漏れ(チップ漏れ)を防止するためのシール材として、PTFEなどからなる樹脂製で細長いチップシール82が溝84に嵌め込むようにして取り付けられている。また、図4及び図6に示すように、固定スクロール41の第2の低圧側ラップ65及び第2の高圧側ラップ66の先端など、即ち低圧側溝部68の周縁や高圧側溝部69の周縁部にも、これらの周縁部と旋回スクロール42の端面61aとの間の隙間(チップ隙間)からの圧縮空気の漏れ(チップ漏れ)を防止するためにシール材として、PTFEなどからなる樹脂製で細長いチップシール83がそれぞれ溝84に嵌め込むようにして取り付けられている。また、第1の低圧側ラップ62の側面及び第1の高圧側ラップ63の側面からの圧縮空気の漏れ(メッシュ漏れ)は、これらの側面と低圧側溝部68の側面及び高圧側溝部69の側面との摺接によって防止される。
以上のように、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機は、同方向に並行して巻かれた渦巻状の2条の第1の低圧側ラップ62と第1の高圧側ラップ63とを有するとともに第1の高圧側ラップ63の高さが第1の低圧側ラップ62の高さよりも低い旋回スクロール42と、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な2条の低圧側溝部68と高圧側溝部69とを有するとともに高圧側溝部69の底面67の深さが低圧側溝部68の底面67の深さよりも浅い固定スクロール41とを有し、低圧側溝部68と低圧側溝部68内に位置する第1の低圧側ラップ62とを有してなる低圧段35と、高圧側溝部69と高圧側溝部69内に位置する第1の高圧側ラップ63とを有してなる高圧段36とを有することにより、低圧段35で圧縮した圧縮空気を低圧段35から排出して高圧段36に供給し、高圧段36で更に圧縮する2条2段圧縮の構造とした圧縮部31と、旋回スクロール42を旋回させる電動モータ43と、圧縮部31の低圧段35から排出されて圧縮部31の高圧段36へ供給される圧縮空気を冷却するインタークーラ32と冷却ファン33及び冷却ファン入側導入路60とを備えたことを特徴とするため、次のような効果を得ることができる。
即ち、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機は1体の圧縮部31に低圧段35と高圧段36とを備えた2条2段圧縮の構造であるため、従来(図14)のようなモータ回転軸22の両端部に低圧段の圧縮部27と高圧段の圧縮部28とを設けた2段圧縮構造のスクロール圧縮機に比べて、2体の圧縮部を要しないため、モータ回転軸(駆動軸)を短くすることができ、モータ回転軸の一端側と他端側に異なる力が作用するということもないため、補強の必要性もあまりないことから、簡易な構成で2段圧縮を実現することができ、コストの低減も図ることができる。しかも、圧縮部31の低圧段35から排出されて圧縮部31の高圧段36へ供給される圧縮空気をインタークーラ32及び冷却ファン33で冷却ファン入側導入路60から導かれた冷却風によって冷却するため、高圧段36においても圧縮空気の温度があまり高くならない。このため、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機は、オイルフリーとすることができて且つ大容量化(例えば1500L/min程度の大容量化)を図ることができる。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、高圧段36の外周側端部36aの周方向位置と低圧段35の外周側端部35aの周方向位置とが一致していて、高圧段36の外周側端部36aが低圧段35の外周側端部35aの内側に位置していることを特徴としているため、高圧段36の外側には常に低圧段35が存在することになり、高圧段36に圧縮空気のチップ漏れが生じたとしても、当該圧縮空気は低圧段35に流入することになるため、圧縮空気の漏れによる圧縮性能の低下を防止することができる。つまり、高圧段36では圧縮空気の圧力が高いため、図10のような構成とした場合には圧縮空気が高圧段36の外周側部分から圧縮部31外へ漏れ易い。そこで、この圧縮部31外への圧縮空気の漏を防止するために高圧段36を短くして、高圧段36の外周側端部36aが低圧段35の外周側端部35aの内側に位置するようにしている。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、低圧段35の圧縮比は、全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、高圧側溝部69の内周側端部の底面67に設けた第1の圧縮空気排出孔72の位置を、低圧側溝部68の内周側端部の底面67に設けられた第2の圧縮空気排出孔73の位置よりも内側にして高圧段36の圧縮空気を低圧段の圧縮空気よりも内側で排出させることにより、高圧段36の圧縮比が全体の圧縮比の平方根となるようにしたため、高圧段36の外周側端部36aの周方向位置を低圧段35の外周側端部35aの周方向位置に一致させるために高圧段36の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)しても、高圧段36の圧縮比を所定の圧縮比にすることができる。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、第1の低圧側ラップ62及び第1の高圧側ラップ63の先端と、低圧側溝部68及び高圧側溝部68の周縁部にはチップシール81,82,83を設けたため、圧縮空気のチップ漏れを、より確実に防止することができる。この場合、圧縮途中(低圧段と高圧段の間)で圧縮空気を冷却することにより、圧縮空気の温度上昇を抑制しているため、チップシール81,82,83として入手容易な樹脂製のものを用いることができる。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、流体冷却手段が、電動モータ43の回転軸43aに取り付けられて同回転軸43aとともに回転する羽根33aを有してなる冷却ファン33を有し、この冷却ファン33から送風される冷却風によって圧縮空気を冷却する構成であるため、即ち、電動モータ43を冷却ファン33の駆動源としても利用するため、冷却ファンを別途設置する場合に比べて構成が簡易であり、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
また、本実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機によれば、冷却ファン33に導入される冷却風は冷却ファン入側導入路60によって圧縮部31を通るため、即ち、冷却ファン33に導入される冷却風によりあらかじめ圧縮部31全体を冷却することができるため、冷却風の導入路を単独に設ける場合に比べ、効率的に圧縮部31を冷却することができ、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
<実施の形態例2>
図11は本発明の実施の形態例2に係るオイルフリーの4条2段スクロール圧縮機の圧縮部(固定スクロール)の断面図である。
図11に示すように、本4条2段スクロール圧縮機の圧縮部131は第1のスクロールとしての旋回スクロール(図示省略)と第2のスクロールとしての固定スクロール132とを有してなるものであり、4条2段圧縮の構造となっている。なお、本4条2段スクロール圧縮機の全体的な構成は図2の2条2段スクロール圧縮機と同様であり、図2において2条2段圧縮構造の圧縮部31に代えて4条2段圧縮構造の圧縮部131を備えた構成となる。
図4に示すように2条2段スクロール圧縮機の旋回スクロール42には2条の第1の低圧側ラップ62と第1の高圧側ラップ63とが形成されているのに対して、図示は省略するが、本4条2段スクロール圧縮機の旋回スクロールには4条の第1の低圧側ラップと第2の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の高圧側ラップとが形成されている。また、図4に示すように2条2段スクロール圧縮機の固定スクロール41には2条の第2の低圧側ラップ65と第2の高圧側ラップ66とが形成されることにより、2条の低圧側溝部68と高圧側溝部69とが形成されているのに対して、図11に示すように本4条2段スクロール圧縮機の固定スクロール132には4条の第3の低圧側ラップ133と第4の低圧側ラップ135と第3の高圧側ラップ134と第4の高圧側ラップ136とが形成されることにより、4条の第1の低圧側溝部137と第2の低圧側溝部139と第1の高圧側溝部138と第2の高圧側溝部140とが形成されている。
詳述すると、図示は省略するが、圧縮部131の構成要素である旋回スクロールは、端板の端面(側面)に突設された4条の第1の低圧側ラップと第2の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の高圧側ラップとを有している。第1の低圧側ラップは径方向の外側に位置し、第1の高圧側ラップは径方向の内側に位置している。同様に第2の低圧側ラップは径方向の外側に位置し、第2の高圧側ラップは径方向の内側に位置している。そして、第1の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の低圧側ラップと第2の高圧側ラップは同方向に巻かれた渦巻状であり、互いに並行している。
また、第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの高さは第1の低圧側ラップ及び第2の低圧側ラップの高さよりも低くなっている。これは第1の低圧段143及び第2の低圧段145の圧縮比を考慮して、第1の高圧段144及び第2の高圧段146では第1の低圧段143及び第2の低圧段145に比べて圧縮室の容積を小さくする必要があるためである。
一方、図11に示すように、圧縮部131の構成要素である固定スクロール132は、凹部141の底面(端面)142に突設された4条の第3の低圧側ラップ133と第4の低圧側ラップ135と第3の高圧側ラップ134と第4の高圧側ラップ136とを有している。第3の低圧側ラップ133は径方向の外側に位置し、第3の高圧側ラップ134は径方向の内側に位置している。同様に、第4の低圧側ラップ135は径方向の外側に位置し、第4の高圧側ラップ136は径方向の内側に位置している。そして、第3の低圧側ラップ133と第3の高圧側ラップ134と第4の低圧側ラップ135と第4の高圧側ラップ136は同方向に巻かれた渦巻状であり、互いに並行している。また、第3の低圧側ラップ133と第3の高圧側ラップ134と第4の低圧側ラップ135と第4の高圧側ラップ136は内周側の端部同士が繋がれており、且つ、外周側の端部同士も繋がれている。
従って、このような第3の低圧側ラップ133と第3の高圧側ラップ134と第4の低圧側ラップ135と第4の高圧側ラップ136とが設けられることにより、固定スクロール41には4条の第1の低圧側溝部137と第2の低圧側溝部139と第1の高圧側溝部138と第2の高圧側溝部140とが形成されている。第1の低圧側溝部137と第1の高圧側溝部138と第2の低圧側溝部139と第2の高圧側溝部140は同方向に巻かれた渦巻状であり、互いに並行しているとともに互いに独立となっている(相互に連通していない)。また、旋回スクロールでは第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの高さが第1の低圧側ラップ及び第2の低圧側ラップの高さよりも低いことに対応して、固定スクロール132では第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の底面142の深さが第1の低圧側溝部137及び第2の低圧側溝部139の底面142の深さよりも浅くなっている。
そして、圧縮部131は、固定スクロール132の第1の低圧側溝部137とこの第1の低圧側溝部137内に位置する旋回スクロールの第1の低圧側ラップとを有してなる第1の低圧段143と、固定スクロール132の第1の高圧側溝部138とこの第1の高圧側溝部138内に位置する旋回スクロールの第1の高圧側ラップとを有してなる第1の高圧段144と、固定スクロール132の第2の低圧側溝部139とこの第2の低圧側溝部139内に位置する旋回スクロールの第2の低圧側ラップとを有してなる第2の低圧段145と、固定スクロール132の第2の高圧側溝部140とこの第2の高圧側溝部140内に位置する旋回スクロールの第2の高圧側ラップとを有してなる第2の高圧段146とが設けられており、第1の低圧段143で圧縮して昇圧した空気を第1の高圧段144に供給し、第1の高圧段144で更に圧縮して昇圧するとともに、第2の低圧段145で圧縮して昇圧した空気を第2の高圧段146に供給し、第2の高圧段146で更に圧縮して昇圧する4条2段圧縮の構造となっている。なお、必ずしもこれに限定するものではなく、第1の低圧段143で圧縮した空気を第2の高圧段146に供給し、第2の低圧段145で圧縮した空気を第1の高圧段144に供給するようにしてもよい。
第1の低圧段143では第1の低圧側溝部137内において第1の低圧側ラップの腹側と背側に圧縮室が形成され、第2の低圧段145では第2の低圧側溝部139内において第2の低圧側ラップの腹側と背側に圧縮室が形成され、第1の高圧段144では第1の高圧側溝部138内において第1の高圧側ラップの腹側と背側に圧縮室が形成され、第2の高圧段146では第2の高圧側溝部140内において第2の高圧側ラップの腹側と背側に圧縮室が形成され、これらの圧縮室が、電動モータによる旋回スクロールの旋回により徐々に縮小されることによって空気が圧縮される。
また、上記2条2段スクロール圧縮機の場合と同様に、第1の低圧段143から排出された圧縮空気は、流体冷却手段(インタークーラと冷却ファン)により冷却(例えば20℃程度に冷却)された後に第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか一方に供給され、第2の低圧段145から排出された圧縮空気は、流体冷却手段(インタークーラと冷却ファン)により冷却(例えば20℃程度に冷却)された後に第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか他方に供給される。
また、第1の高圧段144の外周側端部144aの周方向位置と、第1の低圧段143の外周側端部143aの周方向位置とが一致していて、第1の高圧段144の外周側端部144aが第1の低圧段143の外周側端部143aの内側(径方向の内側)に位置している。即ち、第1の高圧段144の第1の高圧側ラップ及び第1の高圧側溝部138(第3の高圧側ラップ134)の周方向位置と、第1の低圧段143の第1の低圧側ラップ及び第1の低圧側溝部137(第3の低圧側ラップ133)の周方向位置とが一致している。同様に、第2の高圧段146の外周側端部146aの周方向位置と、第2の低圧段145の外周側端部145aの周方向位置とが一致していて、第2の高圧段146の外周側端部146aが第2の低圧段145の外周側端部145aの内側(径方向の内側)に位置している。即ち、第2の高圧段146の第2の高圧側ラップ及び第2の高圧側溝部140(第4の高圧側ラップ136)の周方向位置と、第2の低圧段145の第2の低圧側ラップ及び第2の低圧側溝部139(第4の低圧側ラップ135)の周方向位置とが一致している。
つまり、第1の高圧段144の第1の高圧側ラップ及び第1の高圧側溝部138(第3の高圧側ラップ134)の長さ(巻数)が、第1の低圧段143の第1の低圧側ラップ及び第1の低圧側溝部137(第3の低圧側ラップ133)の長さ(巻数)よりも半巻分だけ短く(少なく)なっており、且つ、第2の高圧段146の第2の高圧側ラップ及び第2の高圧側溝部140(第4の高圧側ラップ136)の長さ(巻数)が、第2の低圧段145の第2の低圧側ラップ及び第2の低圧側溝部139(第4の低圧側ラップ135)の長さ(巻数)よりも半巻分だけ短く(少なく)なっている。
そして、第1の低圧段143及び第1の高圧段低圧段144の外周側端部143a,144aと、第2の低圧段145及び第2の高圧段146の外周側端部145a,146aとは、互いに点対称の位置関係となっている(それぞれ径方向の左右両側に位置している)。
また、スクロール圧縮機の圧縮比は巻数によって変わるため、第1の高圧段144及び第2の高圧段146における第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の内周側端部の底面142にそれぞれ設けられた第4の圧縮空気排出孔150及び第3の圧縮空気排出孔149の位置を、第1の低圧段143及び第2の低圧段145における第1の低圧側溝部137及び第2の低圧側溝部139の内周側端部の底面142にそれぞれ設けられた第1の圧縮空気排出孔147及び第2の圧縮空気排出孔148の位置よりも内側(内周側)にして第1の高圧段144及び第2の高圧段146の圧縮空気を第1の低圧段143及び第2の低圧段145の圧縮空気よりも内側(内周側)で排出させることにより、第1の高圧段144及び第2の高圧段146の圧縮比が圧縮部131全体の圧縮比の平方根となるようにしている。図示例では第1の高圧段144及び第2の高圧段146における圧縮比を約3とするため、第3及び第4の圧縮空気排出孔149,150につながるときの圧縮室の大きさ(圧縮室における底面142の面積)を、第1の高圧段144及び第2の高圧段146の最外周側に形成される圧縮室の大きさ(圧縮室における底面142の締切時の面積)の約1/2.2としている。
なお、図示は省略するが、第1の圧縮空気排出孔147及び第2の圧縮空気排出孔148は個別の圧縮空気排出配管によってインタークーラに接続されている。従って、第1の低圧段143及び第2の低圧段145で圧縮された空気は、それぞれ第1の圧縮空気排出孔147、第2の圧縮空気排出孔148及び圧縮空気排出配管を介してインタークーラへと排出(吐出)される。第3の圧縮空気排出孔149及び第4の圧縮空気排出孔150にも個別の圧縮空気排出配管が接続されている。従って、第1の高圧段144及び第2の高圧段146で圧縮された空気は、第3の圧縮空気排出孔149、第4の圧縮空気排出孔150及び圧縮空気排出配管を介して排出(吐出)される。
また、図示は省略するが、第1の低圧段143及び第2の低圧段145では固定スクロール132の第1の低圧側溝部137及び第2の低圧側溝部139の外周側端部に空気吸入孔がそれぞれ形成されており、これらの空気吸入孔に個別の空気供給配管がそれぞれ接続されている。従って、空気(大気)は空気供給配管及び空気吸入孔を介して第1の低圧側溝部137内(圧縮室内)及び第2の低圧側溝部139内(圧縮室内)に吸入される。第1の高圧段144及び第2の高圧段146では固定スクロール132の第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の外周側端部に圧縮空気吸入孔がそれぞれ形成されており、これらの圧縮空気吸入孔とインタークーラとが個別の圧縮空気供給配管によって接続されている。従って、インタークーラで冷却された圧縮空気は圧縮空気供給配管及び圧縮空気吸入孔を介して第1の高圧側溝部138内(圧縮室内)及び第2の高圧側溝部140内(圧縮室内)に吸入される。
また、図示は省略するが、上記2条2段スクロール圧縮機の場合と同様に本4条2段スクロール圧縮機においても、圧縮空気のチップ漏れを防止するためにシール材としてPTFEなどからなる樹脂製で細長いチップシールが、旋回スクロールの第1の低圧側ラップ、第2の低圧側ラップ、第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの先端に溝に嵌め込むようにして取り付けられている。同様に、固定スクロール132の第3の低圧側ラップ133、第4の低圧側ラップ135、第3の高圧側ラップ134及び第4の高圧側ラップ136の先端など、即ち第1の低圧側溝部137、第2の低圧側溝部139、第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の周縁部にも、圧縮空気のチップ漏れを防止するためにシール材として、PTFEなどからなる樹脂製で細長いチップシールが溝に嵌め込むようにして取り付けられている。また、メッシュ漏れは旋回スクロールの第1の低圧側ラップ、第2の低圧側ラップ、第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの側面と、固定スクロール132の第1の低圧側溝部137、第2の低圧側溝部139、第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の側面との摺接によって防止される。
本実施の形態例2に係る4条2段スクロール圧縮機においても、上記実施の形態例1の2条2段スクロール圧縮機と同様の効果を得ることができる。
具体的には、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、同方向に並行して巻かれた渦巻状の4条の第1の低圧側ラップと第2の低圧側ラップと第1の高圧側ラップと第2の高圧側ラップとを有するとともに第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの高さが第1の低圧側ラップ及び第2の低圧側ラップの高さよりも低い旋回スクロールと、同方向に並行して巻かれた渦巻状で且つ互いに独立な4条の第1の低圧側溝部137と第2の低圧側溝部139と第1の高圧側溝部138と第2の高圧側溝部140とを有するとともに第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の底面142の深さが第1の低圧側溝部137及び第2の低圧側溝部139の底面142の深さよりも浅い固定スクロール132とを有し、第1の低圧側溝部137と第1の低圧側溝部137内に位置する第1の低圧側ラップとを有してなる第1の低圧段143と、第2の低圧側溝部139と第2の低圧側溝部139内に位置する第2の低圧側ラップとを有してなる第2の低圧段145と、第1の高圧側溝部138と第1の高圧側溝部138内に位置する第1の高圧側ラップとを有してなる第1の高圧段144と、第2の高圧側溝部140と第2の高圧側溝部140内に位置する第2の高圧側ラップとを有してなる第2の高圧段146とを有することにより、第1の低圧段143で圧縮した圧縮空気を第1の低圧段143から排出して第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか一方に供給し、第1の高圧段144又は前記第2の高圧段146の何れか一方で更に圧縮するとともに、第2の低圧段145で圧縮した圧縮空気を第2の低圧段145から排出して第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか他方に供給し、第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか他方で更に圧縮する4条2段圧縮の構造とした圧縮部131と、旋回スクロールを旋回させる電動モータと、圧縮部131の第1の低圧段143から排出されて圧縮部131の第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか一方へ供給される圧縮空気を冷却し、且つ、圧縮部131の第2の低圧段145から排出されて圧縮部131の第1の高圧段144又は第2の高圧段146の何れか他方へ供給される圧縮空気を冷却するインタークーラと冷却ファン及び冷却ファン入側導入路とを備えたことを特徴とするため、次のような効果を得ることができる。
即ち、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機は1体の圧縮部131に第1の低圧段143と第2の低圧段145と第1の高圧段144と第2の高圧段146とを備えた4条2段圧縮の構造であるため、従来(図14)のようなモータ回転軸22の両端部に低圧段の圧縮部27と高圧段の圧縮部28とを設けた2段圧縮構造のスクロール圧縮機に比べて、2体の圧縮部を要しないため、モータ回転軸(駆動軸)を短くすることができ、モータ回転軸の一端側と他端側に異なる力が作用するということもないため、補強の必要性もあまりないことから、簡易な構成で2段圧縮を実現することができ、コストの低減も図ることができる。しかも、圧縮部131の第1の低圧段143及び第2の低圧段145から排出されて圧縮部131の第1の高圧段144及び第2の高圧段146へ供給される圧縮空気をインタークーラ及び冷却ファンで冷却ファン入側導入路から導かれた冷却風によって冷却するため、第1の高圧段144及び第2の高圧段146においても圧縮空気の温度があまり高くならない。このため、本実施の形態例1の4条2段スクロール圧縮機は、オイルフリーとすることができて且つ大容量化(例えば1500L/min程度の大容量化)を図ることができる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、第1の高圧段144の外周側端部114aの周囲方向位置と第1の低圧段143の外周側端部143aの周方向位置とが一致していて、第1の高圧段144の外周側端部144aが第1の低圧段143の外周側端部143aの内側に位置しており、且つ、第2の高圧段145の外周側端部145aの周囲方向位置と第2の低圧段145の外周側端部145aの周方向位置とが第1の高圧段144及び第1の低圧段143の周方向位置と点対称の位置で一致していて、第2の高圧段146の外周側端部146aが第2の低圧段145の外周側端部145aの内側に位置していることを特徴としているため、第1の高圧段144の外側には常に第1の低圧段143が存在し、第2の高圧段146の外側には常に第2の低圧段145が存在することになり、第1の高圧段144や第2の高圧段146に圧縮空気のチップ漏れが生じたとしても、当該圧縮空気は第1の低圧段143や第2の低圧段145に流入することになるため、圧縮空気の漏れによる圧縮性能の低下を防止することができる。
しかも、この場合、第1の低圧段143及び第1の高圧段144の外周側端部143a,144aと第2の低圧段145及び第2の高圧段146の外周側端部145a,146aとが点対称の位置関係となっているため、圧縮空気によって旋回スクロールの旋回軸に作用する力に偏りがないため、更に補強の必要性が低減されて構成の簡易化を図ることができる。つまり、上記(図3参照)の2条2段スクロール圧縮機の圧縮部31では圧縮空気によって圧縮部31に作用する力に偏りが生じることから、これに対応できるだけの多少の補強が必要になる場合があると考えられるが、本4条2段スクロール圧縮機の圧縮部131では左右の圧縮空気の圧力が等しくなって圧縮部131に作用する力のバランスがよくなるため、このような補強の必要性もなくなる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、第1の低圧段143及び第2の低圧段145の圧縮比は、全体の圧縮比の平方根としたため、効率的に圧縮することができる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の内周側端部の底面142に設けた第4の圧縮空気排出孔150及び第3の圧縮空気排出孔149の位置を、第1の低圧側溝部137及び第2の低圧側溝部139の内周側端部の底面142に設けた第1の圧縮空気排出孔147及び第2の圧縮空気排出孔148の位置よりも内側(内周側)にして第1の高圧段144及び第2の高圧段146の圧縮空気を第1の低圧段143及び第2の低圧段145の圧縮空気よりも内側(内周側)で排出させることにより、第1の高圧段144及び第2の高圧段146の圧縮比が全体の圧縮比の平方根となるようにしたため、第1の高圧段144の外周側端部144aの周方向位置を第1の低圧段143の外周側端部143aの周方向位置に一致させるために第1の高圧段144の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)し、第2の高圧段146の外周側端部146aの周方向位置を第2の低圧段145の外周側端部145aの周方向位置に一致させるために第2の高圧段146の長さ(巻数)を半巻分だけ短く(少なく)しても、第1の高圧段144及び第2の高圧段146の圧縮比を所定の圧縮比にすることができる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、旋回スクロールの第1の低圧側ラップ、第2の低圧側ラップ、第1の高圧側ラップ及び第2の高圧側ラップの先端と、固定スクロール132の第1の低圧側溝部137、第2の低圧側溝部139、第1の高圧側溝部138及び第2の高圧側溝部140の周縁部にチップシールを設けたため、圧縮空気のチップ漏れを、より確実に防止することができる。この場合、圧縮途中(低圧段と高圧段の間)で圧縮空気を冷却することにより、圧縮空気の温度上昇を抑制しているため、チップシールとして入手容易な樹脂製のものを用いることができる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、流体冷却手段が、電動モータの回転軸に取り付けられて同回転軸とともに回転する羽根を有してなる冷却ファンを有し、この冷却ファンから送風される冷却風によって圧縮空気を冷却する構成であるため、即ち、電動モータを冷却ファンの駆動源としても利用するため、冷却ファンを別途設置する場合に比べて構成が簡易であり、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
また、本実施の形態例2の4条2段スクロール圧縮機によれば、冷却ファンに導入される冷却風は冷却ファン入側導入路によって圧縮部131を通るため、即ち、冷却ファンに導入される冷却風によりあらかじめ圧縮部131全体を冷却することができるため、冷却風の導入路を単独に設ける場合に比べ、効率的に圧縮部131を冷却することができ、装置の小型化やコスト低減などを図ることができる。
なお、上記実施の形態例1,2では流体冷却手段が空冷の場合について説明したが、必ずしもこれに限定するものではなく、流体冷却手段としては、例えば水冷のものなどでもよい。また、旋回スクロールと固定スクロールは相対的に旋回すればよいため、旋回スクロールを固定スクロールとし、固定スクロールを旋回スクロールとして旋回駆動手段(電動モータ)で旋回するようにしてもよい。