JP2006230283A - 柑橘類果実 - Google Patents

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Abstract

【課題】 かびの発生およびかびの増殖が抑制され、腐敗が抑制されている柑橘類果実の提供。
【解決手段】 果皮表面にカピリン、ペクチン分解酵素活性阻害作用を示すポリフェノール、HLBが8〜20のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、及び、脂肪酸グリセリドを含有する組成物を接触させる処理を行った柑橘類果実である。組成物におけるカピリンとポリフェノールの重量濃度比は、カピリン:ポリフェノール=1:1〜1000であると良い。また、カピリンの濃度が2000ppmm未満であることが好適である。ポリフェノールは、最適には、タンニン酸が選択される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、かびが発生することを抑制する処理が施された果実、特に、柑橘類果実に関するものである。
収穫された柑橘類果実は、多量の水分を含んでおり、かびが発生・増殖する宿主となる。わが国が多湿気候であることは、柑橘類果実にかびが発生・増殖することを促進する要因となっている。果実にかびが発生し、増殖すると、腐敗が生じると共に外観を損ねる。つまり、腐敗は、果実の商品価値を低下させる上、産地評価を失墜させるものとなる。従って、果実の腐敗が抑制されていること、即ち、かびの発生・増殖が抑制されていることは重要である。
従来から保存料を使用して食品全般の腐敗を抑制する手段が講じられている。この場合、保存料による人体への悪影響を回避するべく、使用することができる保存料は、限定されたものとなっている。下記の(化1)に示す構造式で表される有効成分としてカピリンを含むカワラヨモギ抽出物が、保存料として使用可能な化合物であると非特許文献1に開示されている。
Figure 2006230283
また、非特許文献2には、天然果実にかびが発生・増殖して腐敗に至るまでの機構が開示されている。その機構は、植物の細胞壁の構成成分であって植物細胞間を結合する役割を担っているペクチンが、かびが分泌する酵素により分解されるというものである。そして、非特許文献3には、ポリフェノールがペクチン分解酵素の活性を阻害することが開示されている。
「既存添加物名簿収載品目リスト注解書」、1999年、p.162 宇田川俊一「食品のかび汚染と危害」幸書房出版社、2004年 飯田貢「酵素の利用」化学工業日報社、1981年
しかしながら、抗かび目的でカピリンが使用されている柑橘類果実は、かびの発生が抑制されている期間が短期間である問題がある。その上、かびの増殖が十分に抑えられていない。そのため、柑橘類果実は、腐敗が十分に抑制されていないものとなっている。
他方で、腐敗防止による日持ち向上のためにポリフェノールが使用されている柑橘類果実も、カピリン同様に、かびが発生するまでの期間が短期間であり、かびの増殖が十分に抑えられていない。そのため、果実の腐敗は、十分に抑制されていない。

その他、果実の収穫前に薬剤を果実に散布してかびによる腐敗の防止を図ろうとしても、腐敗の完全防止が不可能なことが実情である。
係る事情に鑑み、本発明は、かびの発生が抑制されているとともに、発生したかびの増殖が抑制されている柑橘類果実を提供することを目的とするものである。
本発明者は、カピリン又はペクチン分解酵素の活性を阻害するポリフェノールを単独で表面接触させた柑橘類果実よりも、両者を含有する組成物を表面接触させた柑橘類果実が、格別にかびの発生が抑制され、且つ、かびの増殖も抑制されているものとなって、耐腐敗性に優れたものとなることを見出した。更に、本発明者は、HLBが8〜20のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、および脂肪酸グリセリドをも組成物に含有させることで、一段とかびの発生・増殖が抑制されている柑橘類果実となることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、カピリン、ペクチン分解酵素活性阻害作用を示すポリフェノール、HLBが8〜20のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、及び、脂肪酸グリセリドを含有する組成物を果皮表面に接触させて処理したことを特徴とする柑橘類果実である。
前記組成物におけるカピリンとポリフェノールとの重量濃度比が、カピリン:ポリフェノール=1:1〜1000であると良い。好適には、1:30〜100となるものである。また、前記組成物においては、カピリン濃度が2000ppm未満であることが好適である。カピリン濃度が2000ppm以上である場合には、腐敗が抑制されていない果実となることがあり、果実の腐敗抑制にバラつきが生じる。
上記構成の本発明に係る柑橘類果実は、表面に所定の組成物を接触させて処理したものであるので、かびの発生・増殖が抑制されている果実となり、果実の腐敗も抑制されているものとなる。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態における柑橘類果実は、表面に抗かび性組成物を接触させて処理したものである。
柑橘類は、ミカン科の温州ミカン、夏ミカン、伊予柑等のカンキツ属、キンカン属、カラタチ属の植物を指す。
抗かび性組成物を果実の果皮表皮に接触させる処理は、特にその接触方法は問われない。例えば、組成物に果実を浸漬する浸漬法、組成物を果皮表面に塗布する塗布法、組成物を果皮表面に噴霧する噴霧法等の方法により行なわれる。組成物中におけるカピリンが150ppm以上である場合には、浸漬法を採らず、噴霧法を採ることが好適である。浸漬法を採った場合には、果実表皮に浸透する組成物量が過大となり易く、果実表皮が変色する等の薬害が発生することがある。なお、噴霧法を採った場合、果実一果に対する組成物の噴霧量は、果実重量の0.05〜0.4重量%であると良い。
本実施形態における抗かび性組成物には、カピリン、ポリフェノール、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、及び、脂肪酸グリセリドを含有する組成物が使用される。抗かび性組成物は、更に、水および/又はエタノールを含有するものであっても良い。
組成物中におけるカピリン濃度は、組成物の接触方法に噴霧法を採った場合であっても、2000ppm以上であると果実の腐敗抑制にバラつきが生じて防除価が低下する傾向があるので、2000ppm未満であることが好ましい。より好適なカピリン濃度は、30ppmを超えるものであり、噴霧法を採用した場合の更に好適な濃度は、150〜1500ppmの濃度である。
カピリンは、カワラヨモギに含まれているものを使用すると良い。この場合、カピリンを含有するカワラヨモギ抽出エキスを使用すると良い。カワラヨモギ抽出エキスは、カワラヨモギを溶媒に浸漬した後、カワラヨモギを溶媒から除去、次いで、この除去した溶媒を留去することによって得られる。また、水蒸気中にカワラヨモギを暴露後、この水蒸気を集めることによって、カワラヨモギ抽出エキスを得ることができる。
カワラヨモギ抽出エキスを得るために使用するカワラヨモギは、植生しているカワラヨモギの地上部の部分を使用すると良く、乾燥した花穂を使用することが好適である。また、カワラヨモギを浸漬する溶媒には、一価又は多価アルコール、ケトン類、エーテル類、炭化水素等の有機溶媒や水を単独又は混合して使用すると良い。一価のアルコールには、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが例示される。多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、グリセリンが例示される。また、ケトン類には、アセトン、メチルエチルケトンが、エーテル類には、メチルエーテル、石油エーテルが、炭化水素には、ヘキサン、シクロヘキサンが例示される。好適には、エタノール又は含水エタノールを使用することである。
カワラヨモギ抽出エキスを得るために、カワラヨモギを浸漬した溶媒からこの溶媒を留去するには、溶媒が低沸点溶媒の場合、加熱によって溶媒を蒸発留去すると良く、溶媒が高沸点溶媒の場合、低沸点の展開溶媒を使用した液体クロマトグラフィーによって適宜カピリンを含む成分を分離した後に展開溶媒を加熱蒸発させて留去すると良い。加熱によって溶媒を蒸発させるときには、通常、減圧条件下で行われる。なお、カワラヨモギ抽出エキスを得るために使用した溶媒が本実施形態における抗かび性組成物としての使用に支障が生じないときには、溶媒を蒸発留去しなくても良い。
なお、カワラヨモギ抽出エキス中のカピリン濃度を高濃度化する場合には、さらにカワラヨモギ抽出エキスに水を添加した後この水を留去、及びカワラヨモギ抽出エキスとn−ヘキサンによる液―液抽出を行った後のn−ヘキサンを採取してn−ヘキサンを留去することの一方又は双方の操作を行うと良い。
ポリフェノールは、ペクチン分解酵素活性阻害作用を示すものが選択される。ポリフェノールとは、ベンゼン環に複数の水酸基が結合した芳香族化合物の総称であり、例えば、タンニンが該当する。タンニンは、ダイオウ、ローズマリー酸、没食子酸や、リンゴ、芍薬および桂皮等から抽出することができるタンニン等の縮合型タンニン、並びに、タンニン酸、チョウジ等の加水分解型タンニンが該当し、好適には加水分解型タンニンである。タンニン酸を含有する組成物で処理した果実は、特に腐敗が抑制されているので、タンニン酸が最適である。
抗かび性組成物中におけるポリフェノールの含量は、特に限定されるものではなく、カピリンとの重量濃度比が、カピリン:ポリフェノール=1:1〜1000であると良い。好適には、1:30〜100である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルは、特に、Griffinの経験式から計算されるHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance Value値)が8〜20のものが選択され、好ましくは、14〜20のものが選択される。抗かび性組成物にHLBが8〜20のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステルが含有されていることにより、果実が腐敗することを一層抑制する。ショ糖脂肪酸エステルが選択されているときは、腐敗が極めて抑制された果実となる。これは、所定のエステルにより、果実の果皮表面内への組成物浸透が促進されるためであると推測される。抗かび組成物中における含有量は、特に限定されるものでなく、カピリンとの重量濃度比が、カピリン:ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル=1:1〜1000であると良い、好ましくは1:10〜200である。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルが選択されているとき、その濃度が高まるにつれて果実表面のべた付く触感が生じ易くなるが、ショ糖脂肪酸エステルが選択されているとき、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりも果実表面のべた付く触感が抑制される。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノカプリレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレエートが該当する。中でも、デカグリセリンモノミリステートが好適である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、水酸基価から算出される平均重合度が2〜20のポリグリセリンを使用すると良い。この水酸基価から算出される平均重合度(n)とは、末端分析法によって算出される値であり、次式(式1)及び(式2)から算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
前記水酸基価とは、エステル化物中に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのエステル化物に含まれる遊離のヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、1996年度版」に準じて算出される。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを製造するには、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸を水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を使用し、反応温度160〜260℃、窒素ガス雰囲気下においてエステル化することによって製造される。モノエステルを製造する場合、グリセリンと脂肪酸の仕込みモル比が1:1になるようにしてエステル化が行われる。なお、製造されたポリグリセリン脂肪酸エステルのケン化価は、35〜140の範囲であると良い。
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルが例示される。これらのエステルは、モノエステルとポリエステルの混合物として市販されており、モノエステルが含有されているものを選択すると良い。好適には、ショ糖モノミリスチン酸エステルを含有するショ糖エステルを選択することである。
脂肪酸グリセリドは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドのうち一種又は二種以上を含有する脂肪酸グリセリドが使用される。
脂肪酸グリセリドは、例えば、公知の脂肪酸とグリセリンをエステル化する方法によって製造される。脂肪酸グリセリドを製造する場合に使用する脂肪酸は、酪酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノクチン酸、アラギン酸等が使用され、これらの脂肪酸のうち一種又は二種以上選択して使用すると良い。
また脂肪酸グリセリドには、主成分にトリグリセリドを含有する天然油脂を使用しても良い。天然油脂には、動物脂や動物油である動物油脂、又は、植物脂や植物油である植物油脂の何れを使用しても良い。
動物脂としては、牛乳脂、ヤギ乳脂、牛脂、豚脂、羊脂が例示される。動物油としては、イワシ油、サバ油、サメ肝油が例示される。植物脂としては、ヤシ油、パーム油等である。植物油としては、乾性油、半乾性油及び不乾性油を使用することが可能であり、乾性油としては、アマニ油、キリ油、サフラワー油が例示され、半乾性油としては、大豆油、コーン油、ゴマ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油が例示され、不乾性油としては、オリーブ油、カラシ油、ツバキ油、ヒマシ油、落花生油が例示される。また、前記天然油脂に含まれる構成油脂を分別して使用することも可能である。
脂肪酸グリセリドは、一種又は二種以上の炭素数が8〜12の脂肪酸とグリセリンとをエステル化した脂肪酸グリセリドが使用されることが好適である。
抗かび性組成物に脂肪酸グリセリドが含有されていると、カピリンの揮発防止効果を発揮し、その結果、果実の腐敗抑制を向上させる。組成物中における脂肪酸グリセリドの濃度は、特に限定されず、カピリンとの重量濃度比が、カピリン:脂肪酸グリセリド=1:3〜5000であると良く、好ましくは、1:25〜400である。
抗かび性組成物の調製は、カピリン、ポリフェノール、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、及び、脂肪酸ポリグリセリド全てが混合されていると良い。抗かび性組成物が水を含有する場合には、エタノールも含有させることが、カピリンや脂肪酸グリセリドが組成物中に均一に分散し、果実表面に抗かび性組成物の成分が均等に接触して腐敗抑制が安定したものとなるので好適である。また、キサンタンガム等の増粘剤も抗かび性組成物中に含有させることにより、組成物が保管中に相分離することが抑制され、組成物を接触した果実表面に組成物の各成分が均等に存在することになる。
上記抗かび性組成物を果皮表面に接触させて処理した果実は、かびの発生及び増殖が抑制されたものとなり、腐敗が抑制されたものとなる。なお、緑かび病および青かび病は、全ての柑橘類に発生するものであるが、上記果実は、緑かび病菌や青かび病菌等の糸状菌を原因とするかびの発生、腐敗に対しても、抑制されたものとなる。
以下、本発明を実施例をもとに具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜3、及び、比較例1〜4の柑橘類果実のかび発生試験を試験例1に基づき行なった。実施例1〜3、比較例1〜4、および、試験例1の詳細は次の通りである。
(実施例1)
収穫直後の無傷で大きさや成熟度が同等の温州ミカンの果実を抗かび性組成物に2秒間浸漬し、風乾したものを実施例1の果実とした。ここで、抗かび性組成物を、カワラヨモギに含まれるカピリンを抽出した0.02重量%カピリン溶液、エタノール、デカグリセリンモノミリステート、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(日清オイリオ株式会社製「O.D.O」)、タンニン酸(大日本製薬株式会社製「局方タンニン酸」)、および、水を混合し、カピリンが100ppm、エタノールが50重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、タンニン酸が0.5重量%、残りが水の溶液として調製した。
実施例1において使用したカピリン溶液は、次の通り調製した。10kgのエタノールに乾燥したカワラヨモギの花穂2kgを常温で24時間浸漬した。その後、エタノールを分取・ろ過し、カピリンを含有したエタノール液を得た。これをカピリン溶液とした。カピリン溶液中のカピリン濃度は、0.02重量%であった。なお、カピリン濃度は、高速液体クロマトグラフィーでカピリンの検量線から定量した。
高速液体クロマトグラフィーにおける定量条件は、次の通りである。
株式会社島津製作所製 LC-10Aシステム
カラム:信和化工株式会社製 STR ODS-2 4.6mmI.D.×150mm
移動相:0.5%酢酸水溶液/エタノール=55/45
流速 :0.8ml/min
検出器:UV280nm
試料 :移動相により10倍希釈し、20ml注入
(実施例2)
抗かび性組成物にカピリンが50ppm、エタノールが37.5重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、タンニン酸が0.3重量%、残りが水の溶液を使用した以外は、実施例1と同様にした。
(実施例3)
抗かび性組成物にカピリンが50ppm、エタノールが37.5重量%、ショ糖ミリスチン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製ショ糖モノミリスチン酸エステル主成分、商品名「リョートーシュガーエステルM−1695」)が0.5重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、タンニン酸が0.3重量%、残りが水の溶液を使用した以外は、実施例1と同様にした。
(比較例1)
抗かび性組成物にエタノールが50重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、残りが水の溶液を使用した以外は、実施例1と同様にした。
(比較例2)
抗かび性組成物にエタノールが50重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、タンニン酸が0.5重量%、残りが水の溶液を使用した以外は、実施例1と同様にした。
(比較例3)
抗かび性組成物にカピリンが100ppm、エタノールが50重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、残りが水の溶液を使用した以外は、実施例1と同様にした。
(比較例4)
抗かび性組成物に浸漬しなかったこと以外は、実施例1と同様にした。
(試験例1)
1区当たり50果の実施例1〜3および比較例1〜4のいずれかの果実をコンクリート上を5m転動させて付傷させた。その後、果実をビニール袋に収納して、常温で3週間放置した。放置後にかびの発生を観察した。
試験例1の結果を表1に示す。表1中、防除価は、抗かび性組成物に浸漬しなかった比較例4の果実のかび発生率を100とした場合に算出されるものであり、次式によって導き出される値である。
防除価=100−A/B×100
A:実施例1〜3、比較例1〜3のいずれかの果実のかび発生率
B:比較例4の果実のかび発生率
Figure 2006230283
表1において、いずれの比較例の果実についても、防除価が10以下であり、一方、実施例の果実は、防除価が50以上である。従って、比較例の果実よりも格段にかび発生が抑制されている。これは、抗かび性組成物がカピリンとタンニン酸との相乗的なかび発生抑制に加えて、デカグリセリンモノミリステートまたはショ糖ミリスチン酸エステルとトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルで更にかび発生抑制が向上している抗かび性組成物が使用されたことによるものである。なお、実施例1〜3の果実には、薬害発生がなかったことが確認されている。
次に、複数種の柑橘類果実のかび発生抑制試験を、実施例4〜7および比較例5〜8の果実を一試験区当たり30〜50果実使用し、試験例1に準じて行なった。なお、この試験を3〜4回反復した。実施例4〜7の果実は、抗かび性組成物に2秒間浸漬し、風乾したものである。ここで、抗かび性組成物には、カピリンが100ppm、エタノールが37.5重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.1重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが0.5重量%、タンニン酸が0.5重量%、残りが水である溶液を使用した。なお、実施例4〜7の果実に使用した組成物におけるカピリンとデカグリセリンモノミリステート、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルまたはタンニン酸との重量濃度比は、カピリン:デカグリセリンモノミリステート:トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル:タンニン酸=1:10:50:50である。比較例5〜8については、抗かび性組成物で処理していない果実を使用した。
実施例4〜7および比較例5〜8の試験結果を実施例および比較例の果実の品種と共に表2に示す。なお、表2中の防除価は、実施例と同じ品種の比較例の果実(抗かび性組成物を表面接触させていない果実)のかび発生率を100とした場合に計算される値である。また、表中の英文字は、Tukeyの多重詮検定結果(5%)であり、同一文字に有意差はなく、検定は、Arcsin変換した値によるものである。
Figure 2006230283
表2の同品種の実施例および比較例の果実の発生率および防除価を比較すると、比較例の果実よりも実施例の果実の方が、発生率が低く、且つ、防除価の高い結果となっており、かびの発生が抑制されていることを確認することができる。なお、実施例4〜7の果実のいずれも、薬害の発生はなかったことが確認されている。
次に、塗布と噴霧を組み合わせた方法により調製された実施例8および9の果実のかび発生試験を試験例1に基づき行なった。使用した実施例8および9の果実は、以下の通りのものである。
(実施例8)
収穫直後の無傷で大きさや成熟度が同等の温州ミカンに抗かび性組成物を噴霧及び塗布し、風乾したものを実施例8の果実とした。ここで、抗かび性組成物には、カピリンが500ppm、エタノールが50重量%、デカグリセリンモノミリステートが0.5重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが2.5重量%、タンニン酸が2.5重量%、キサンタンガムが0.2重量%、残りが水の溶液を使用した。
実施例8における組成物の噴霧および塗布を次の装置を使用して行なった。図1は、実施例8における組成物の噴霧および塗布に使用した装置の概略図である。図示の装置は、果実1を搬送する円筒状の搬送ローラー2と、上方から果実1に向けて組成物を噴霧する噴霧ノズル3を備えた装置である。搬送ローラー2は、全周に不織布が巻着された構成をとっており、不織布には、組成物が含浸されている。なお、図1中の矢印は、搬送される果実の移動方向を表したものである。
(実施例9)
抗かび性組成物に、カピリンが200ppm、エタノールが50重量%、ショ糖ミリスチン酸エステルが2.0重量%、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが2.5重量%、タンニン酸が1.2重量%、キサンタンガムが0.2重量%、残りが水の溶液を使用した以外は実施例8と同様にした。
実施例8および9の果実の試験例1に基づく結果を表3に示す。表3中、組成物量とは、組成物量(wt%)=抗かび組成物を噴霧・塗布する前の果実の重量(g)/抗かび組成物を噴霧・塗布した後の果実の重量×100、より算出される値である。
Figure 2006230283
表3に示すとおり、実施例8および9の果実の防除価は、ともに優れていることを確認することができる。なお、試験後の両果実に薬害の発生は認められなかった。
次に実施例10および比較例9の柑橘類果実について、試験例2及び試験例3に基づいてかびの増殖抑制試験を行なった。実施例10、比較例9、試験例2、試験例3の詳細は、次の通りである。
(実施例10)
宮内伊予柑を抗かび性組成物に2秒間浸漬し、風乾した。抗かび性組成物には、実施例4〜7と同じ組成物を使用した。
(比較例9)
抗かび性組成物に浸漬していない無処理の宮内伊予柑を比較例9の果実とした。
(試験例2)
実施例10および比較例9の宮内伊予柑1果当たり4箇所に、5束の虫ピンで、深さ2mm程度に穿孔した。その後、ガーゼに染み込ませた約10個/mlの病原菌を穿孔部に接触させて、病原菌を宮内伊予柑に接種した。ここで、病原菌には、緑かび病菌のベノミル感性菌(MIC値1ppm以下)またはベノミル耐性菌(MIC値10ppm以上)を使用した。病原菌の接種後、一試験区当たり8果とし、25℃の加湿状態で宮内伊予柑を放置した。放置後、2〜4日経過後のかびの発生および発生後の病斑直径を観察した。
(試験例3)
病原菌に青かび病菌のベノミル感性菌(MIC値1ppm以下)またはベノミル耐性菌(MIC値10ppm以上)を使用した以外は、試験例2と同様にして試験を行なった。
試験例2の結果を表4に、試験例3の結果を表5に示す。表4及び5において、表中の英文字は、Tukeyの多重詮検定結果(5%)であり、同一文字に有意差はなく、検定は、Arcsin変換した値によるものである。
Figure 2006230283
Figure 2006230283
表4及び表5において、比較例9よりも実施例10の果実の方が小さい病斑直径であり、実施例10の果実は、表面が穿孔されてかびが増殖し易い状態にあるに関わらず、かびの増殖が抑制されていることを確認することができる。
実施例8における組成物接触方法を説明するための図である。
符号の説明
1 果実
2 搬送ローラー
3 噴霧ノズル

Claims (3)

  1. カピリン、ペクチン分解酵素活性阻害作用を示すポリフェノール、HLBが8〜20のポリグリセリン脂肪酸エステルまたはショ糖脂肪酸エステル、及び、脂肪酸グリセリドを含有する組成物を果皮表面に接触させて処理したことを特徴とする柑橘類果実。
  2. 前記組成物におけるカピリンとポリフェノールとの重量濃度比が、
    カピリン:ポリフェノール=1:1〜1000である請求項1に記載の柑橘類果実。
  3. 前記組成物におけるカピリン濃度が2000ppm未満である請求項1又は2に記載の柑橘類果実。

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