JP2006230252A - ポリペプチド発現システム - Google Patents

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Abstract

【課題】足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞において、前記ウイルスを介した生物学的な手法により、迅速に容易に、高い効率で、ポリペプチドを発現させる。手段を提供すること。
【解決手段】足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入されたウイルス易感染性細胞、それを含有したポリペプチド発現システム及びポリペプチドの大量発現用の発現システム、並びにそれを用いるポリペプチドの発現方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリペプチド発現システムに関する。さらに詳しくは、ポリペプチドの大量生産を行ないうる、ポリペプチド発現システム、ポリペプチドの発現方法及びそれに用いるウイルス易感染性細胞に関する。
チャイニーズハムスターオバリー細胞〔Chinese hamster ovary(CHO) cell〕は、主に、細胞の機能解析に用いられている細胞の1つである。
近年、CHO細胞の中から足場非依存性増殖をできるクローンを選別し、モノクローナル抗体などのタンパク質を大量に生産する哺乳類細胞系として使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、かかるCHO細胞は、レトロウイルス等による感染に抵抗性を示し(例えば、非特許文献2参照)、レトロウイルス等の感染を阻害する物質を産生している可能性が示唆されている。
そのため、CHO細胞における異種タンパク質の発現には、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等の物理学的な遺伝子導入方法により、発現対象の核酸を導入する必要がある。また、CHO細胞を用いる異種タンパク質の発現システムは、生物学的活性の発現が確かめられている既知配列の核酸を、薬剤耐性遺伝子等を保持したベクター等を介して導入し、薬剤選抜によりクローナルなCHO細胞を選択する必要がある。そのため、CHO細胞を用いる異種タンパク質の発現システムは、複雑な操作が必要であり、時間を要し、発現対象の核酸が既知である必要があるという欠点がある。

トゥリル(Trill)ら著、「COS細胞及びCHO細胞におけるモノクローナル抗体の生産(Production of monoclonal antibodies in COS and CHO cells.)」、Curr Opin Biotechnol.、 1995年10月、第6巻、第5号、p553−560 タイシュ(Teich N.)著、「RNA癌ウイルス(RNA tumor viruses)」、1984年、第1巻、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、p25−208
本発明は、1つの側面では、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルス(例えば、レトロウイルス等)の感染を阻害する物質を産生する動物細胞、例えば、CHO−S細胞等において、前記ウイルスを介した生物学的な手法によりポリペプチドを発現させること、高い効率で、ポリペプチドを前記細胞で発現させること、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し発現させること、迅速に容易に操作できること等の少なくとも1つを達成する、ポリペプチド発現システムを提供することに関する。また、本発明は、他の側面では、前記細胞において、前記ウイルスを介した生物学的な手法によりポリペプチドを発現させること、高い効率で、ポリペプチドを前記細胞で発現させること、前記細胞において、迅速かつ簡便な操作で、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質を発現させること等の少なくとも1つを達成する、ポリペプチドの発現方法を提供することに関する。本発明は、別の側面では、前記ポリペプチドの発現方法を行なうに適したウイルス易感染性細胞を提供することに関する。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載から明らかであり、導き出される。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入されてなる、ウイルス易感染性細胞、
〔2〕 該動物細胞が、チャイニーズハムスターオバリー細胞である、前記〔1〕記載のウイルス易感染性細胞、
〔3〕 該ウイルスが、エコトロピックレトロウイルスである、前記〔1〕又は〔2〕記載のウイルス易感染性細胞、
〔4〕 該ウイルスに対するレセプターが、アミノ酸トランスポーターである、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞、
〔5〕 該アミノ酸トランスポーターが、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含有したポリペプチドである、前記〔4〕記載のウイルス易感染性細胞、
〔6〕 A)前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞と、
B)発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するためのウイルス由来のベクターと、
を含有してなる、ポリペプチド発現システム、
〔7〕 該ウイルス由来のベクターが、
a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と
を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置されてなり、配列番号:3に示される塩基配列からなるベクターである、前記〔6〕記載のポリペプチド発現システム、
〔8〕 該ウイルス由来のベクターが、d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能になるように配置されてなるベクターである、前記〔6〕又は〔7〕記載のポリペプチド発現システム、
〔9〕 該ウイルス由来のベクターが、e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されてなるベクターである、前記〔6〕又は〔7〕記載のポリペプチド発現システム、
〔10〕 該ウイルス由来のベクターが、e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されてなるベクターである、前記〔8〕記載のポリペプチド発現システム、
〔11〕 A’)前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するためのウイルス由来のベクターを保持したウイルスを感染させたウイルス感染細胞と、
B’)前記〔9〕又は〔10〕記載のウイルス由来のベクターと、
を含有してなる、ポリペプチドの大量発現用の発現システム、
〔12〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、下記I)又はII)のウイルス由来のベクター:
(I)a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と、
e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されてなるウイルス由来のベクター、又は
(II)a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と、
d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸と、
e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されてなるウイルス由来のベクター、
を保持するウイルスを感染させ、目的とするポリペプチドを発現させることを特徴とする、ポリペプチドの発現方法、
〔13〕 (1)前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、及び
(2)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
を含む、前記〔12〕記載の発現方法、
〔14〕 (1)前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、
(2’)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスをさらに感染させ、ウイルス多重感染細胞を得る工程、
(3)前記ステップ(2’)で得られたウイルス多重感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
を含む、前記〔12〕記載の発現方法、並びに
〔15〕 足場非依存的な増殖能を有し、かつエコトロピックレトロウイルスレセプターをコードする核酸が発現可能に導入されてなる、チャイニーズハムスターオバリー細胞、
に関する。
本発明のポリペプチド発現システムによれば、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルス(例えば、レトロウイルス等)の感染を阻害する物質を産生する動物細胞、例えば、CHO−S細胞等において、前記ウイルスを介した生物学的な手法により、迅速に容易に、高い効率で、ポリペプチドを発現させることができ、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し発現させることができるという優れた効果を奏する。また、本発明のポリペプチドの発現方法によれば、迅速かつ簡便に、高い効率で、前記細胞において、前記ウイルスを介した生物学的な手法によりポリペプチドを発現させることができ、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質を発現させることができるという優れた効果を奏する。本発明のウイルス易感染性細胞によれば、本発明のポリペプチドの発現方法を迅速に容易に行なうことができ、高い効率で、ポリペプチドを発現させることができ、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し発現させることができるという優れた効果を奏する。
本発明は、1つの側面では、A) 足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入された、ウイルス易感染性細胞と、B) 発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するためのウイルス由来のベクターと、
を含有したポリペプチド発現システム(「ポリペプチド発現システム1」とも表記する)に関する。
本発明のポリペプチド発現システム1は、前記A)のウイルス易感染性細胞及び前記B)のウイルス由来のベクターそれぞれの使用方法、それらの保存方法、前記A)のウイルス易感染性細胞と、前記B)のウイルス由来のベクターとを用いて、ポリペプチドを製造する方法、例えば、後述の本発明のポリペプチドの発現方法等の少なくとも1つが記載された使用説明書をさらに含有してもよい。なお、前記使用説明書は、本発明のポリペプチド発現システム1に添付する形態であってもよく、電磁的手法、例えば、電気通信回線を通じて提供する形態であってもよい。
また、本発明のポリペプチド発現システム1は、前記ウイルス易感染性細胞を培養するに適した培地等を適宜含有してもよい。
本発明のポリペプチド発現システム1において、前記B)のウイルス由来のベクターは、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を組み込むに適した状態、例えば、直鎖状の核酸としても提供されうる。
さらに、本発明のポリペプチド発現システム1は、前記B)のウイルス由来ベクターに、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を組み込むに適した試薬、例えば、リガーゼ、DNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、制限酵素等を適宜含有していてもよい。
また、本発明のポリペプチド発現システム1は、前記B)のウイルス由来ベクターをパッケージングするに適したパッケージング細胞をさらに含有していてもよい。
本明細書において、「ポリペプチド発現システム」の用語は、別の側面では、ポリペプチド発現用キットを意味する。
本発明のポリペプチド発現システム1は、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入された、ウイルス易感染性細胞を含有することに1つの大きな特徴がある。したがって、従来、感染を阻害する物質の作用等によりウイルス由来のベクターを用いて感染させることが困難であったウイルス由来のベクターにより、予想外にも、発現対象のポリペプチドを発現させることができるという優れた効果を発揮する。そのため、本発明のポリペプチド発現システム1によれば、慣用のエコトロピックレトロウイルス由来のベクター等を用いることができる。
なお、前記「ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入」とは、染色体に組み込まれる場合のみに限定されるものではなく、一過的に導入される場合、複製起点を有するプラスミドや人工染色体等の形で導入される場合も含まれる。
本発明のポリペプチド発現システム1は、前記細胞と、ウイルス由来のベクターとを含有しているため、本発明のポリペプチド発現システム1によれば、物理学的な遺伝子導入方法により核酸を導入した場合のようにクローナルな形質転換された細胞を実質的に選択することなく、迅速に容易に発現対象のポリペプチドを発現させることができる。
前記「ウイルス」としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、エコトロピックレトロウイルス、エコトロピックウイルスのレセプターを介して感染できる改変レンチウイルス等が挙げられる。前記「ウイルス」としては、具体的には、例えば、エコトロピックレトロウイルスとして、MoLv〔モロニー白血病ウイルス(Moloney Leukemia virus)〕、その他MMTV〔マウス乳癌ウイルス(murine mammary tumor virus)〕、マウス幹細胞ウイルス(murine stem cell virus)等が挙げられる
また、本発明のポリペプチド発現システム1に用いられる細胞は、足場非依存的な増殖能を有する細胞であるため、例えば、大型の培養容器等を用いた大量培養が可能になるため、大量に目的とするポリペプチドを得ることができるという優れた効果を発揮する。前記細胞としては、本質的にエコトロピックウイルスに感染しないか、あるいは感染効率が低い細胞、例えば、ハムスター細胞、ヒト細胞等が挙げられ、より具体的には、例えば、CHO−S細胞〔足場非依存性増殖可能なCHO(チャイニーズハムスターオバリー:Chinese hamster ovary)細胞;ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社供給〕等が挙げられる。前記CHO−S細胞は、操作が容易であり、細胞又は培養培地から発現タンパク質が高効率で回収できる観点から、前記CHO−S細胞が好ましい。
前記レセプターは、ウイルスが細胞に感染する際に必要な細胞表面に局在するタンパク質であればよい。前記レセプターとしては、例えば、エコトロピックレトロウイルスレセプター、アンフォトロフィックレトロウイルスレセプター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)レセプター等が挙げられ、具体的には、例えば、エコトロピックレトロウイルスレセプターとして、アミノ酸トランスポーター等、アンフォトロフィックレトロウイルスレセプターとして、Na依存性リン酸シンポーター(sodium dependent phosphate symporters)〔カバナウ(Kavanaugh)ら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA.、1994年、第91巻、第7051頁〜第7055頁〕等、HIVのレセプターとして、CD4、ケモカインレセプター等(例えば、CCR4)等が挙げられる。
前記アミノ酸トランスポーターとしては、例えば、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含有したポリペプチド等が挙げられる。
前記アミノ酸トランスポーターをコードする核酸(配列番号:1)は、例えば、NIH3T3細胞〔アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)供給〕のmRNAを鋳型とし、配列番号:4に示される塩基配列からなるプライマーと配列番号:5に示される塩基配列からなるプライマーとからなるプライマー対を用い、RT−PCRにより得られうる。
なお、本発明においては、前記レセプターは、前記足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞へのウイルスの感染を可能にする機能を呈するものであれば、天然型のアミノ酸配列からなるポリペプチドに限定されるものではなく、いわゆるバリアントであってもよい。また、本発明においては、前記レセプター又はそのバリアントのアミノ酸配列のうち、ウイルスの結合に機能を発揮する領域と、細胞へのウイルスの感染に機能を発揮する領域とを有するポリペプチドを、前記ウイルスの感染を阻害する物質を産生する細胞中において発現させてもよい。
なお、前記レセプターの機能の評価は、例えば、レセプターを、ウイルスが感染しない細胞に発現させ、ウイルスの感染が起こるかどうかをウイルスに存在するマーカーとなる遺伝子が発現するかどうかをテストすること等により行なわれうる。
すなわち、本発明に用いられるレセプターのバリアントは、前記レセプターの機能の評価の手法により、レセプターとしての機能を有することが示されるものであれば、
A. 天然型のレセプターのアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは、1個又は複数個、好ましくは、1個又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加又は挿入を有する配列を含有したポリペプチド
B. 天然型のレセプターのアミノ酸配列をコードする核酸のアンチセンス鎖とストリンジェント、好ましくは、中ストリンジェント、より好ましくは、高ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする、いいかえれば、十分にハイブリダイズする核酸によりコードされるポリペプチド、
C. 天然型のレセプターのアミノ酸配列と、BLASTアルゴリズムで、Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3の条件下にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも50%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上であるアミノ酸配列を含有したポリペプチド
等であってもよい。ここで、前記ストリンジェントな条件とは、6×SSC〔組成:0.9M NaCl、0.9M クエン酸ナトリウム(pH7.0)〕と0.5重量% (SDS)と5×デンハルトと100μg/ml 変性DNAと50% ホルムアミドとを含有したハイブリダイゼーション溶液中、天然型のレセプターのアミノ酸配列をコードする核酸のアンチセンス鎖の核酸とともに、55℃、よりストリンジェントには、60℃で10時間〜24時間インキュベーションし、ついで、例えば、2×SSC〔組成:0.3M NaCl、0.3M クエン酸ナトリウム(pH7.0)〕、よりストリンジェントには、0.1×SSC〔組成:0.015 NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム(pH7.0)〕等の条件及び/又は室温、ストリンジェントには、42℃以上、よりストリンジェントには、50℃以上、より一層ストリンジェントには、60℃以上等の条件下での洗浄を行なう条件等をいう。かかるストリンジェントな条件は、モレキュラー クローニング ア ラボラトリー マニュアル 第3版〔ザンブルーク(Sambrook)ら、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 3rd ed.(2001)〕等を参照して適宜設定されうる。
前記バリアントは、例えば、天然型のレセプターのアミノ酸配列をコードする核酸を、当業者に周知の変異導入方法で変異を導入すること、前記天然型のレセプターのアミノ酸配列をコードする核酸のアンチセンス鎖の核酸をプローブとして用いて、スクリーニングすること等により得られうる。
また、前記A)の細胞は、慣用のベクター等を用い、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、パーティクルガンを用いたボンバードメント法等の遺伝子導入方法により、前記ウイルスに対するレセプターをコードする核酸を、前記ウイルスの感染を阻害する物質を産生する細胞に導入することにより得られうる。例えば、前記アミノ酸トランスポーターをコードする核酸を発現可能に導入されたCHO−S細胞は、配列番号:1の塩基配列を有する核酸を慣用のベクター等を用い、前記遺伝子導入方法により、CHO−S細胞に導入し発現させることにより得られうる。前記アミノ酸トランスポーターをコードする核酸がCHO−S細胞に導入されたことの確認は、用いられたベクターに由来するマーカーの発現の有無をマーカーに応じた手法により検出すること等により行なわれ得、例えば、レセプターに対する標識抗体を用いたELISAやウエスタンブロット解析による検出、蛍光マーカーの蛍光観察、RT−PCR等による検出等が挙げられる。
なお、本発明においては、前記足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に代えて、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスに難感染性の動物細胞、もともとウイルス感染阻害物質能を有していたが、何らかの人為的な操作、例えば、突然変異処理、遺伝子破壊、アンチセンス技術、RNAi技術等により、ウイルスの感染を阻害する物質を産生しなくなった細胞等を用いてよい。ここで、前記「難感染性」とは、ウイルスレセプターを強制発現した際、その細胞へのウイルスの感染効率が上昇することをいう。前記「難感染性」は、具体的には、例えば、エコトロピックレトロウイルスに対する感染性において、MEF細胞又はNIH3T3細胞と比べて感染効率が低いことをいう。前記ウイルスの感染効率は、例えば、NIH3T3細胞と目的の細胞とを、それぞれ同数培養し、同じウイルスの力価で感染させた場合に、マーカー遺伝子の存在又は発現を指標として比較することにより評価されうる。
本発明は、別の側面では、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入された細胞、すなわち、ウイルス易感染性細胞に関する。
また、本発明は、さらに他の側面では、足場非依存的な増殖能を有し、かつエコトロピックレトロウイルスをコードする核酸が発現可能に導入されてなる、チャイニーズハムスターオバリー細胞に関する。
また、本発明は、他の側面では、前記A)のウイルス易感染性細胞を含有したポリペプチド発現システム(「ポリペプチド発現システム2」とも表記する)に関する。
かかるポリペプチド発現システム2は、前記A)のウイルス易感染性細胞の使用方法、その保存方法、前記A)のウイルス易感染性細胞を用いて、ポリペプチドを製造する方法、例えば、後述の本発明のポリペプチドの発現方法等の少なくとも1つが記載された使用説明書をさらに含有してもよい。なお、前記使用説明書は、本発明のポリペプチド発現システム2に添付する形態であってもよく、電磁的手法、例えば、電気通信回線を通じて提供する形態であってもよい。
前記B)のウイルス由来のベクターとしては、例えば、pCXベクター誘導体、pMX、pBabe、pZip、pGX等に由来するベクター等が挙げられる。前記ウイルス由来のベクターとしては、具体的には、a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と、
を含有し、2つのLTRの間に、該発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、該選択マーカーをコードする核酸とが、それぞれ発現可能に配置されるベクター(例えば、図1に例示されるベクター等)、より具体的には、配列番号:3に示される塩基配列を有するベクター(「pGX」という)が挙げられる。
前記a)のLTRは、ウイルス、例えば、レトロウイルス等、好ましくは、エコトロピックレトロウイルスに由来するもの等が挙げられる。前記LTRは、例えば、下遠野ら、Nature、1980年発行、第285巻、第550頁〜第554頁等に記載のもの等が挙げられる。
前記b)の挿入部位を有する核酸としては、各種制限酵素の認識部位等を有する塩基配列からなる核酸等が挙げられる。なお、前記「挿入部位」には、例えば、各種制限酵素の認識部位(制限酵素切断部位)、組換え部位等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
前記c)の選択マーカーをコードする核酸としては、例えば、蛍光タンパク質(GFP、YFP、BFP、RFP等)をコードする核酸、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。検出の容易性の観点から、前記c)の核酸は、GFPをコードする核酸、ネオマイシンをコードする核酸、ブラストサイジンをコードする核酸、ピューロマイシンをコードする核酸が望ましい。
前記B)のウイルス由来のベクターは、発現細胞を迅速に選択する観点から、発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、選択マーカーをコードする核酸とが、それぞれ発現可能に配置されたものであり、例えば、Internal ribosome entry site(IRES)を配置させることにより、同じmRNAから、発現対象のポリペプチドと、選択マーカーとを発現できるベクターであることが望ましい。
前記B)のウイルス由来のベクターは、d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸をさらに含有するベクターであってもよい。前記タグ配列としては、例えば、グルタチオン S−トランスフェラーゼ、ポリヒスチジンタグ、mycタグ、FLAGタグ等が挙げられる。前記タグ配列をコードする核酸を含有したベクターは、発現対象のポリペプチドを容易に精製することできる点で有利である。すなわち、かかるタグ配列を有するウイルス由来のベクターとしては、前記a)〜c)に加え、前記d)の核酸をさらに含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能になるように配置されてなるベクターが挙げられる。
また、前記B)のウイルス由来のベクターは、発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位に発現対象のポリペプチドをコードする核酸を挿入されたベクターであってもよい。かかるベクターは、
− 前記発現対象のポリペプチドをコードする核酸を保持しないウイルス由来のベクターに、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を挿入し、
− 得られたベクターを、慣用の方法、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、パーティクルガンを用いたボンバードメント法等により、適切なパッケージング細胞にトランスフェクションし、
− 得られた細胞を、適切な条件下にコンフルエントになるまで培養し、前記B)のベクターをパッケージングしたウイルスを産生させ、
− 得られた培養物の上清を回収すること
等により得られうる。すなわち、かかるベクターとしては、前記a)〜c)に加え、前記e)の核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されたベクター;前記a)〜c)に加え、前記e)の核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されたベクター等が挙げられる。
発現対象のポリペプチドとしては、特に限定されるものではなく、種々のポリペプチド、例えば、従来、発現させることが極めて困難であったポリペプチド、具体的には、例えば、分子量100kDa以上のタンパク質、哺乳動物細胞に特異的な修飾を有するタンパク質等が挙げられる。
前記パッケージング細胞としては、例えば、PLT細胞〔北村俊雄博士提供、モリタら(S Morita)ら、Gene Therapy、第7巻、第1063頁〜第1066頁(2000)〕、Bosc23細胞〔293COS及び293T細胞に、レトロウイルスのコンポーネントであるgag、pol及びenvを、別のベクターでトランスフェクションして得られた細胞〕等が挙げられる。
前記B)のウイルス由来のベクターには、誘導可能なプロモーター(例えば、テトラサイクリン、IPTG等により誘導又は抑制されるプロモーター等)や、増幅可能な配列を有するDNA(例えば、DHFR遺伝子やmyc遺伝子の複製起点等)を適宜含有してもよい。
本発明のポリペプチド発現システム1の実施態様の具体例としては、特に限定されないが、塩基性アミノ酸トランスポーターをコードする核酸が発現可能に導入されたCHO−S細胞と、配列番号:3に示される塩基配列を有するベクターとを含有したポリペプチド発現システム;塩基性アミノ酸トランスポーターをコードする核酸が発現可能に導入されたCHO−S細胞と、配列番号:3に示される塩基配列を有するベクターと、使用説明書とを含有したポリペプチド発現システム等が挙げられる。
本発明のポリペプチド発現システム2の実施態様の具体例としては、特に限定されないが、塩基性アミノ酸トランスポーターをコードする核酸が発現可能に導入されたCHO−S細胞を含有したポリペプチド発現システム;塩基性アミノ酸トランスポーターをコードする核酸が発現可能に導入されたCHO−S細胞と、使用説明書とを含有したポリペプチド発現システム等が挙げられる。
本発明のポリペプチド発現システムによれば、ポリペプチドの迅速な発現及び精製を行なうことができ、また、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質をコードする核酸を前記細胞に導入し発現させることができる。
また、本発明のポリペプチド発現システムによれば、例えば、大腸菌、酵母等のタンパク質発現系では、150kDaもの分子量を有するポリペプチドの発現、哺乳動物細胞のタンパク質修飾を伴うタンパク質の発現は、困難であるが、物理学的な遺伝子導入法を用いる発現系よりも大きい分子量を有するポリペプチドの発現も可能になる。また、本発明のポリペプチド発現システムによれば、前記発現系に比べ、選択に要する時間を短縮することができ、極めて短時間で発現対象のポリペプチドを得ることができる。したがって、本発明のポリペプチド発現システムによれば、各種変異体の機能解析等のハイスループットの解析が可能になる。
また、本発明は、さらに他の側面では、A’)前記ウイルス易感染性細胞に、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するための前記ウイルス由来のベクターを保持したウイルスを感染させたウイルス感染細胞と、
B’)発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するための前記ウイルス由来のベクターと、
を含有した、ポリペプチドの大量発現用の発現システムに関する。なお、かかるポリペプチドの大量発現用の発現システムにおけるA’)及びB’)の発現対象のポリペプチドは、同一のポリペプチドである。
かかるポリペプチドの大量発現用の発現システムによれば、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するための前記ウイルス由来のベクターを多重感染させることができ、それにより、発現対象のポリペプチドを大量に得ることができる。
本発明は、他の側面では、前記ウイルス易感染性細胞に、下記I)又はII)のウイルス由来のベクター:
(I)a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と、
e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されてなるウイルス由来のベクター、又は
(II)a)2つのLTRと、
b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
c)選択マーカーをコードする核酸と、
d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸と、
e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されてなるウイルス由来のベクター、
を保持するウイルスを感染させ、目的とするポリペプチドを発現させることを特徴とする、ポリペプチドの発現方法に関する。
本発明のポリペプチドの発現方法には、本発明のポリペプチド発現システムを用いることができる。
本発明のポリペプチドの発現方法は、前記ウイルス易感染性細胞と、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターとが用いられているため、足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルス(例えば、レトロウイルス等)の感染を阻害する物質を産生する動物細胞;例えば、CHO−S細胞等において、前記ウイルスを介した生物学的な手法により、迅速かつ簡便な操作で、高い効率で、ポリペプチドを発現させることができる。また、本発明のポリペプチドの発現方法は、前記ウイルス易感染性細胞と前記I)又はII)のウイルス由来のベクターとが用いられているため、前記細胞において、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質を発現させることができる。そのため、本発明のポリペプチドの発現方法によれば、ハイスループットでのタンパク質の機能解析等が可能になる。例えば、迅速にレセプタータンパク質を発現させた細胞を得ることにより、結合物質を迅速にスクリーニングすること、抗体を発現させ、安全性等を迅速に評価すること等の新規医薬品、健康食品、生理活性物質のスクリーニング系を迅速に構築することができる。
本発明のポリペプチドの発現方法は、1つの実施態様では、
(1)前記ウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、及び
(2)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
を含む方法(実施態様1の方法)が挙げられる。
前記工程(1)においては、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターをパッケージングしたウイルスを作製し、得られたウイルスを前記ウイルス易感染性細胞に感染させればよい。
なお、前記工程(1)において、ウイルス由来のベクターは、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターに代えて、他のウイルス、例えば、エコトロピックウイルス由来のベクターを用いてもよい。
また、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターが、慣用のフローサイトメトリーを用いたセルソーターによりソーティング可能な選択マーカー、例えば、GFP等を保持するベクターである場合、前記工程(1)の後、該選択マーカーに基づきソーティングすることにより、発現対象のポリペプチドを発現する細胞を、より効率よく得ることができる。
ついで、工程(2)において、得られたウイルス感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる。
ウイルス感染細胞の培養は、細胞の種類に応じた培養条件下で行なわれうる。
発現対象のポリペプチドは、得られた細胞から、細胞溶解液を調製し、目的のポリペプチドを分離することにより得られる。前記ポリペプチドの分離は、慣用のタンパク質の精製方法により行なわれうる。
ここで、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターが、タグ配列をコードする核酸を保持するものである場合、前記工程(2)において、前記タグ配列に応じたアフィニティーカラムを用いることにより、発現対象のポリペプチドを当該タグ配列との融合ポリペプチドとして容易に分離することができる。具体的には、タグ配列が、GSTの場合、例えば、グルタチオンビーズを用いること、ポリヒスチジンタグの場合、例えば、ニッケルキレートカラムを用いること等により、発現対象のポリペプチドを融合ポリペプチドとして容易に分離できる。発現対象のポリペプチドが、融合ポリペプチドとして得られた場合、適切な手法によりタグ配列を、発現対象のポリペプチドから除去することもできる。
なお、本発明のポリペプチドの発現方法によれば、前記ウイルス易感染性細胞が用いられているため、前記工程1において、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターをパッケージングしたウイルスを多重感染させることもできる。これにより、1細胞あたりの発現対象のポリペプチドの発現量を増大させることができるため、発現対象のポリペプチドを大量に、迅速かつ簡便に得ることができる。
したがって、本発明のポリペプチドの発現方法は、他の実施態様では、
(1)前記ウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、
(2’)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスをさらに感染させ、ウイルス多重感染細胞を得る工程、
(3)前記ステップ(2’)で得られたウイルス多重感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
を含む方法(実施態様2の方法)が挙げられる。なお、かかる実施態様2の方法の各工程における発現対象のポリペプチドは、同一のポリペプチドであってもよく、異種のポリペプチドであってもよい。
前記実施態様2の方法の各工程において、同一のポリペプチドを保持するベクターを用いる場合には、大量にポリペプチドを発現させることができるという優れた効果を発揮する。したがって、かかる実施態様のポリペプチドの発現方法は、ポリペプチドの大量生産に有利である。
また、前記実施態様2の方法の各工程において、異種のポリペプチドを保持するそれぞれ別のベクターを用いる場合には、動物細胞において、効率よく、少なくとも2種のポリペプチドを発現させることができる。したがって、かかる実施態様のポリペプチドの発現方法は、少なくとも2種のポリペプチドが関連して生理学的活性を発揮する事象におけるポリペプチドの発現に有利である。前記「少なくとも2種のポリペプチドが関連して生理学的活性を発揮する事象」としては、複数種のポリペプチドが、多量体を形成して生理学的活性を発揮すること、複数種のポリペプチドが、逐次的又は複合的に作用して生理学的活性を発揮すること等が挙げられる。
前記工程(1)は、前記実施態様1の方法と同様である。なお、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターが、慣用のフローサイトメトリーを用いたセルソーターによりソーティング可能な選択マーカー、例えば、GFP等を保持するベクターである場合、前記工程(1)の後、該選択マーカーに基づきソーティングすることにより、ウイルス感染細胞を濃縮することができ、それにより、発現対象のポリペプチドを発現する細胞を、より効率よく得ることができる。
その後、前記工程(2’)において、前記ステップ(1)と同様の手法により、前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターをパッケージングしたウイルスを感染させる。ここで、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターが、慣用のフローサイトメトリーを用いたセルソーターによりソーティング可能な選択マーカー、例えば、GFP等を保持するベクターである場合、前記工程(1)の後、該選択マーカーに基づきソーティングすることにより、ウイルス多重感染細胞を濃縮することができる。
ついで、前記工程(3)において、得られたウイルス多重感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる。ウイルス感染細胞の培養は、細胞の種類に応じた培養条件下で行なわれうる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、細胞培養のための培地等について、特に断りのない限り、例えば、フレッシュニー(Freshney, R. Ian)、Culture of animal cells A manual of basic technique, 2nd ed.、第66頁−第84頁(1987)、Aran R. Liss. Inc.;カートワイト(Cartwight, T.)ら、Culture media, Basic Cell Culture: A Practical Approach、第57頁〜第91頁(1994)、IRL Press等が参照される。
エコトロピックレトロウイルスレセプター発現CHO細胞の作製
(1)エコトロピックレトロウイルスレセプターのクローニング
NIH3T3細胞〔アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)供給〕から、商品名:Isogen〔株式会社ニッポンジーン製〕を用いて、mRNAを調製した。得られたmRNAと、インビトロジェン社製、商品名:SuperscriptIIと、プライマー対とを用い、RT−PCRを行ない、エコトロピックレトロウイルスレセプター(以下、「EcoR」という)をコードするcDNAを得た。なお、前記プライマー対として、
5'プライマー:5'-gctaccgtggactctgctgtg-3'(配列番号:4)と
3'プライマー:5'-ccggaattctcatttgcactggtccaagttgc-3'(配列番号:5)と
からなるプライマー対を用いた。また、RT−PCRにおけるサーマルプロファイルは、94℃で2分間のインキュベーション後、順に、94℃で1分間と72℃で4分間とを1サイクルとする5サイクル、94℃で1分間と68℃で4分間とを1サイクルとする5サイクル、94℃で1分間と62℃で4分間とを1サイクルとする5サイクル、94℃で1分間と55℃で4分間とを1サイクルとする20サイクル、72℃で10分間のインキュベーションとした。
得られた産物を、BamHIとEcoRIとで、消化し、得られた断片を、商品名:pcDNA3.1〔インビトロジェン(Invitrogen,INC.)社製〕にサブクローニングした。得られたプラスミドを用い、挿入断片の塩基配列を決定した。決定された塩基配列を配列番号:1に示す。
また、前記プラスミドを、BamHIとNotIとで消化して、断片を切り出した。切り出された断片を、pCX4bsr〔赤城剛博士提供;赤城(T. Akagi)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第97巻、第7290頁〜第7295頁、2000年1月20日〕にサブクローニングし、pCX4−BSR−EcoRベクターを得た。
(2)pGXベクターの構築
商品名:EGFPC1ベクター〔クローンテック(Clontech,INC.)社製〕を、NcoIとXhoIとで消化し、GFPをコードする遺伝子を含むNcoI−XhoI断片を得た。前記NcoI−XhoI断片を、予めNcoIとSalIとで消化したpCXbsrベクター(赤城剛博士提供)にサブクローニングし、pCXGFPベクターを得た。
一方、商品名:pGEX4T1〔アマシャム(Amersham,INC.)社製〕を鋳型とし、
5'プライマー:gaagatctaccatgtcccctatactaggttattgg(配列番号:6)と
3'プライマー:cgcgaggcagatcgtcag(配列番号:7)と
を用い、グルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)をコードするcDNAを、PCR法で増幅した。なお、PCRにおけるサーマルプロファイルは、94℃で2分間のインキュベーション後、順に、94℃で1分間と55℃で2分間と72℃で3分間とを1サイクルとする30サイクル、72℃で10分間のインキュベーションとした。
得られたcDNAを、商品名:pBluescriptII〔ストラタジーン(Stratagene,INC.)社製〕のEcoRV部位にサブクローニングした。得られたプラスミドから、BglIIとNotIとで消化して、GSTをコードするcDNA(GST cDNA)を得た。得られたGST cDNAを、BamHIと、NotIとで消化した。得られた断片を、前記pCXGFPにサブクローニングして、pGXベクターを得た。得られたpGXベクターの概略図を図1に示す。また、前記pGXベクターの塩基配列を配列番号:3に示す。
(3)pCX4−BSR−EcoRベクターをパッケージングしたウイルス産生
ウイルス産生には、パッケージング細胞であるPLT細胞〔北村俊雄博士提供、モリタら(S Morita)ら、Gene Therapy、第7巻、第1063頁〜第1066頁(2000)〕を用いた。
前記PLT細胞 1.2×106細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) 4mlに懸濁し、6cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度 5容量%で24時間培養した。
一方、商品名:Fugene6〔ロシュ(Roche)社製〕 10μlと、DMEM 200μlとを混合し、5分間室温で静置させた。得られた混合物に、商品名:pGPベクター(タカラバイオ社製) 1μgと、商品名:PS−eco(タカラバイオ社製) 1μgと、pCX4−BSR−EcoRベクター 1μgとを添加し、混合し、15分間室温で静置した。
得られた混合物を、前記PLTが入ったディッシュに添加し、35℃、CO2濃度 5容量%で24時間インキュベーションし、トランスフェクションを行なった。その後、培地を新たなDMEMに交換し、さらに35℃、CO2濃度 5容量%で24時間インキュベーションした。その後、得られた培養物の上清 4mlを回収し、0.2μm(内径)孔フィルター〔コーニング(CORNING)社製〕に通した。これにより、ウイルス液を得た。
(4)CHO−S細胞に一過的にEcoRを発現させるためのトランスフェクション
CHO−S細胞〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社供給〕 2×106細胞を、商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕 4mlに懸濁させ、得られた懸濁物を、6cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度 8容量%で24時間培養した。なお、培地は、前記商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕に限定されるものではなく、CHO細胞を培養できる培地、DMEM等でも代替できる。
一方、商品名:Fugene6〔ロシュ(Roche)社製〕 10μlと、DMEM 200μlとを混合し、5分間室温で静置させた。得られた混合物に、pCX4−BSR−EcoRベクター 1μgを添加し、15分間室温で静置した。
得られた混合物を、前記CHO−S細胞が入ったディッシュに添加し、37℃、CO2濃度 8容量%で24時間静置した。
(5)pCX4−BSR−EcoRをパッケージングしたウイルスによるCHO−S細胞の感染
前記(4)で得られたCHO−S細胞 4.0×105細胞を、商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕 4mlに懸濁した。得られた懸濁物を、6cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度 8容量%で24時間培養した。
その後、前記ディッシュに、pCX4−BSR−EcoRをパッケージングしたウイルス液 500μl添加して、感染させ、35℃、CO2濃度 5容量%で24時間培養した。その後、培地を新たな商品名:CHO−S−SFMIIに交換し、37℃、CO2濃度 8容量%で24時間培養した。
トランスフェクション後の細胞 4.0×105細胞を、商品名:CHO−S−SFMII 4mlに懸濁した。得られた懸濁物を、6cmディッシュ 1枚に播種した。同様の条件で、トランスフェクション後の細胞を播種したディッシュ 5枚を作製し、それぞれのディッシュ上の細胞について、ブラスチシジンS濃度 2.5μg/ml、5.0μg/ml、10.0μg/ml、12.5μg/ml又は25.0μg/ml存在下に、37℃、CO2濃度 8容量%で7日間培養することにより、薬剤選抜を行なった。また、対照として、トランスフェクションを行なっていないCHO−S細胞についても同様に薬剤選抜を行なった。
その結果、ブラストシチジンS 10μg/mlで薬剤選抜を行なった場合、トランスフェクション後のCHO−S細胞と、トランスフェクションを行なっていないCHO−S細胞との間において有意差が見られた。また、ブラストシチジンS 25.0μg/mlで薬剤選抜を行なった場合にもトランスフェクション後の細胞が生存したため、ブラストシチジンS 25.0μg/ml存在下で1週間培養し、生存したCHO−S細胞(以下CHO−EcoRという)をEcoR発現CHO−S細胞として用いた。
前記実施例1で得られたCHO−EcoR細胞 4.0×105細胞を、商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕 4mlに懸濁し、6cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度 8容量%で24時間培養した。その後、前記培養物に、pGXをパッケージングしたウイルスのウイルス液 500μlを添加し、感染させた。
得られた細胞について、商品名:FACScan(ベクトンディッキンソン社製)でpGXの導入により発現したGFP(緑色蛍光タンパク質)による蛍光の有無を検出した。結果を図2のパネル(B)に示す。
その結果、パネル(B)に示されるように、EcoRを人為的に発現させたCHO−S細胞のうち、驚くべきことに46%もの細胞において、GFPによる蛍光が検出された。したがって、CHO−S細胞にEcoR遺伝子を導入し、発現させることにより、予想外にも、CHO−S細胞のレトロウイルス感染阻害物質の影響を受けることなく、CHO−S細胞にレトロウイルスが感染することが示唆される。
一方、対照として、CHO−EcoR細胞の代わりに、CHO−S細胞 4.0×105細胞を用いたことを除き、同様に行なった。結果を図2のパネル(A)に示す。
その結果、図2のパネル(A)に示されるように、GFPによる蛍光が実質的に検出できなかったため、CHO−S細胞には、レトロウイルスが感染しないことが示された。
かかる結果より、前記実施例2で示されたCHO−S細胞におけるGFPの発現は、該CHO−S細胞へのレトロウイルスの感染によるものであることがわかる。
さらに、対照として、CHO−EcoR細胞の代わりに、NIH3T3細胞 4.0×105細胞を用いたことを除き、同様に行なった。結果を図2のパネル(C)に示す。
その結果、図2のパネル(C)に示されるように、EcoRを本質的に発現しているNIH3T3細胞のうち、40%の細胞において、GFPの発現が検出された。
したがって、NIH3T3細胞と、CHO−EcoR細胞とは、同程度の感染効率を示すことがわかる。
さらに、前記CHO−EcoR細胞及びSV40T抗原で不死化したMEF(mouse embryonic fibroblast)細胞において、同じウイルス量(500μl)を用いた場合のGFPの発現量を、商品名:FACScan(ベクトンディッキンソン社製)を用いてGFPによる蛍光を測定することにより比較した。結果を図3に示す。
その結果、図3に示されるように、MEF細胞に比べ、CHO−EcoR細胞を用いた場合のほうが、GFPをより高発現することがわかった。
CHO−EcoR細胞を用いたmammalian enabled(Mena)の発現
(1)Mena発現用ベクターをパッケージングしたウイルス産生
Mena全長cDNA〔谷(K. Tani)、J. Biol. Chem.、第278巻、第21685頁〜第21692頁、2003年1月13日〕を、pGXベクターのEcoRI部位に挿入し、pGX−Menaベクターを得た。
前記実施例1の(3)において、pCX4−BSR−EcoRベクターの代わりに、pGX−Menaベクター 1μgを用いることを除き、同様に行ない、ウイルス液を得た。
(2)pGX−MenaベクターをパッケージングしたウイルスによるCHO−EcoR細胞の感染
CHO−EcoR細胞 4.0×105細胞を、商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕 4mlに懸濁した。得られた懸濁物を、6cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度8容量%で24時間培養した。その後、前記ディッシュに、前記(1)で得られたウイルス液 500μlを添加して、感染させ、35℃、CO2濃度5容量%で24時間培養した。その後、培地を新たなCHO−S−SFMIIに交換し、37℃、CO2濃度8容量%で4日間培養した。
得られた細胞 4.0×105細胞を、商品名:CHO−S−SFMII 4mlに懸濁し、6cmディッシュに播種した。
得られた細胞について、商品名:FACSvantage(ベクトンディッキンソン社製)を用いて、蛍光強度が対照の細胞に比べ、10倍以上高い細胞を分取する条件でソーティングし、GFPの蛍光を示す細胞として、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群(1S)を回収した。
(3)pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞によるMena発現
前記pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群(1S) 3×107細胞を、溶解緩衝液〔組成:1重量% TritonTM X−100、10mM Tris−HCl(pH7.6)、50mM NaCl、30mM ピロリン酸ナトリウム、50mM フッ化ナトリウム、20mM β−グリセロリン酸塩、1mM EDTA、1mM エチレングリコールビス2アミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)、1mM バナジウム酸ナトリウム、20μg/ml アプロチニン、1mM フェニルメチルスルホニルフッ化物〕 1000μlに溶解させた。得られたライゼートのうち、20μgタンパク質相当量を、グルタチオンビーズ〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製、商品名:Glutathione SepharoseTM 4B〕 10μlと混合し、GST融合Menaタンパク質をプルダウンした。
前記ライゼートのうち、2μgタンパク質相当量と、前記プルダウンにより得られた試料とを、8重量% SDS−PAGEに供し、ついで、ゲル上のタンパク質を、商品名:Immobilon−P membrane filters〔ミリポア(Millipore)社製〕に転写させた。転写後の膜を、Menaに対する抗体〔谷(K. Tani)ら、J. Biol. Chem.、第278頁、第21685頁〜第21692頁、2003年1月13日〕と共に室温で2時間インキュベーションし、ついで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ウサギ抗体〔ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno Research)社製〕と共に、室温で1時間インキュベーションした。その後、商品名:ECL plus enhanced chemiluminescence solutions〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製〕を用いて、製造者の説明書に従い、発色反応を行ない、それにより、Menaの検出を行なった。その結果を図4のパネル(A)に示す。
図4のパネル(A)に示されるように、CHO-EcoR細胞にウイルスを感染させることができ、それにより、約100kDaの分子量のGST融合Menaを、CHO−EcoR細胞において発現できることがわかる。
また、前記と同様に、前記pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群(1S)及びpGXをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群 5×106細胞のライゼート 500μgを、前記溶解溶液 1mlに懸濁した。得られた懸濁物に、前記グルタチオンビーズ 10μlを添加し、得られた混合物を、1時間、4℃の低温室で振とうさせた。その後、得られた産物を、3000×g、30秒間遠心分離し、上清を除去した。残ったビーズに氷冷リン酸緩衝化生理食塩水 500mlを添加して該ビーズを洗浄し、3000×gで30秒間遠心分離し、上清を除去した。ビーズの洗浄及び遠心分離を、5回繰り返した。洗浄後、2×ストップバッファー〔組成:8重量% グリセロール、4重量% SDS、100mM Tris−HCl(pH6.7)、2容積% β−メルカプトエタノール、0.1% ブロモフェノールブルー(BPB)〕 20μlにビーズをよく懸だくし、105℃で10分間加熱した。得られた産物の上清 全量を、8重量% SDS−PAGEに供し、クマシーブリリアントブルーによりゲル上のタンパク質を染色した。なお、対照として、10、100、500、1000、2000ngのウシ血清アルブミン(BSA)を、同様に、前記8重量% SDS−PAGEに供し、クマシーブリリアントブルーによりゲル上のタンパク質を染色した。その結果を、図4のパネル(B)を示す。
図4のパネル(B)に示されるように、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群では、GST−Menaが検出され、pGXをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群では、GST-Menaは検出されなかった。また、パネル(B)におけるGST−Menaの強度を、コダック社製、商品名:Kodac Digital Science 1D Image Analysis Softwareで解析し、BSAを標準として用いて、タンパク質量を算出した。その結果、GST−Menaのバンドは、200ng相当のタンパク質であることがわかった。したがって、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群 約5×106細胞のライゼート 500μgから、約200ngの精製GST−Menaタンパク質が得られることがわかった。
ウイルスの多重感染によるタンパク質の発現量の増加
(1)pGX−Menaベクターをパッケージングしたウイルスの濃縮ウイルス液の作製
前記PLT細胞 3.5×106細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) 10mlに懸濁し、10cmディッシュに播種し、37℃、CO2濃度 5容量%で24時間培養した。
一方、商品名:Fugene6〔ロシュ(Roche)社製〕 10μlと、DMEM 200μlとを混合し、5分間室温で静置させた。得られた混合物に、商品名:pGPベクター(タカラバイオ社製) 1μgと、商品名:PS−eco(タカラバイオ社製) 1μgと、pGX−Menaベクター 1μgとを添加し、混合し、15分間室温で静置した。
得られた混合物を、前記PLTが入ったディッシュに添加し、35℃、CO2濃度 5容量%で24時間インキュベーションした。その後、培地を新たなDMEMに交換し、さらに35℃、CO2濃度 5容量%で24時間インキュベーションした。その後、得られた培養物の上清 10mlを回収し、0.2μm(内径)孔フィルター〔コーニング(CORNING)社製〕に通した。これにより、ウイルス液を得た。得られたウイルス液を、4℃で、8000×gの条件で16時間遠心分離を行なった。その後、上清を除去し、沈殿ウイルスを、商品名:CHO−S−SFMII〔ギブコ−ビーアールエル(Gibco−BRL)社製〕 100μlに懸濁し、濃縮ウイルス液を得た。
(2)ウイルスの多重感染によるMenaの発現量の変化
前記実施例3の(2)で得られたpGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群(1S)に、pGX−Menaベクターをパッケージングしたウイルスをさらに感染させた。また、前記濃縮ウイルス液を用い、前記1Sに、pGX−Menaベクターをパッケージングしたウイルスをさらに感染させた。得られた細胞について、商品名:FACScan(ベクトンディッキンソン社製)でGFPによる蛍光強度を測定した。その結果を図5に示す。なお、図中、「1S2」は、1Sの細胞に、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを再度感染させた細胞の細胞群を示し、「1SC」は、1Sの細胞に、前記濃縮ウイルスを用いて、ウイルスを感染させた細胞の細胞群を示す。
その結果、図5に示されるように、1Sに比べ、1S2では、GFP蛍光のピークが2倍程度、1SCでは8倍程度強くなっていることがわかる。
また、前記1Sのうち蛍光強度の高い細胞群を、蛍光強度が相対的に高い細胞を分取する条件下に、ソーティングして、回収した。かかる細胞群を、1SHという。さらに、前記1SCのうち蛍光強度の高い細胞群を、蛍光強度が相対的に高い細胞を分取する条件下に、ソーティングして、回収した。かかる細胞群を、1SCHという。
前記1S、1S2、1SC、1SH及び1SCHのそれぞれについて、3×107細胞を、前記溶解緩衝液 1000μlに溶解させ、各細胞のライゼートを得た。
試料を、SDS−PAGEに供し、前記実施例3の(3)と同様に、Menaを検出した。その結果を、図6に示す。なお、図6中、α−GFP及びα−アクチンについては、5μgタンパク質相当量の試料を、10重量% SDS−PAGEに供した結果であり、α−Menaについては、50ngタンパク質相当量の試料を8重量% SDS−PAGEに供した結果である。
図6に示されるように、1Sの細胞に比べ、1SH、1SC及び1SCHにおいて、タンパク質が過剰発現していることから、濃縮ウイルス液を用いて、多重感染させ、GFPの蛍光強度の高い細胞をソーティングすることで、より目的タンパク質の過剰発現した細胞が得られることがわかる。
また、図6のパネル3)に示されるように、アクチン量は、ほぼそろっているのに対して、パネル1)に示されるように、ソーティングと多重感染とを組み合わせた1SC及び1SCH細胞のライゼート中のMena発現量は、他のものと比較して上昇していることがわかる。
さらに、パネル2)に示されるように、GFP発現量は、Mena発現量の変化と連動して、上昇していることがわかる。したがって、GFPを指標として、Mena発現量が高い細胞を採取できることが示唆される。
c−AblをコードするcDNAとして、pcDNA3c−Abl〔宍戸ら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA.、2000年、第97巻、第6439頁〜第6444頁〕に含まれる核酸を用いた。
得られたcDNAを、pGXのEcoRI部位に挿入し、pGX−c−Ablベクターを得た。
得られたpGX−c−Ablベクターを用い、前記実施例3におけるMenaの代わりに、c−Ablを、同様の手法により、発現させた。
得られた細胞について、商品名:FACSvantage(ベクトンディッキンソン社製)を用いて、蛍光強度が対照の細胞に比べ、10倍以上高い細胞を分取する条件でソーティングし、GFPの蛍光を示す細胞として、pGX−c−Ablをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群を回収した。
得られたpGX−c−Ablをパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群から、前記実施例3の(3)と同様に、ライゼートを調製し、200μgタンパク質相当量を、グルタチオンビーズ〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製、商品名:Glutathione SepharoseTM 4B〕 10μlと混合し、GST融合c−Ablタンパク質をプルダウンした。
前記ライゼートのうち、20μgタンパク質相当量と、前記プルダウンにより得られた試料とを、8重量% SDS−PAGEに供し、ついで、ゲル上のタンパク質を、商品名:Immobilon−P membrane filters〔ミリポア(Millipore)社製〕に転写させた。転写後の膜について、一次抗体として、c−Ablに対する抗体〔商品名:8E9、ファーミンゲン(Pharmingen)社製〕と二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウス抗体〔ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno Research)社製〕とを用い、室温で1時間インキュベーションし、その後、商品名:ECL plus enhanced chemiluminescence solutions〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製〕を用いて、製造者の説明書に従い、発色反応を行ない、それにより、c−Ablの検出を行なった。結果を、図7に示す。
その結果、図7に示されるように、CHO-EcoR細胞に、c−Ablをコードする核酸を保持するベクター(図中、pGX−c−Abl)がパッケージングされたウイルスが感染し、GSTとの融合タンパク質として、c−Ablが、効率よく発現させることができることがわかった。
ウイルスの多重感染によるc−Ablの発現量の変化
前記実施例5で得られたpGX−c−Ablを用い、実施例4と同様の手法により、ウイルスの多重感染によるc−Ablの発現量の変化を調べた。結果を図8に示す。なお、図8中、α−GFP及びα−アクチンについては、5μgタンパク質相当量の試料を、10重量% SDS−PAGEに供した結果であり、α−8E9については、5μgタンパク質相当量の試料を、8重量% SDS−PAGEに供した結果である。
図8のパネル3)に示されるように、アクチン量はそろっているのに対して、パネル1)に示されるように、ソーティングと多重感染とを組み合わせた1SC及び1SCH細胞のライゼート中のc−Abl発現量は、他のものと比較して上昇していることがわかる。また、GFP発現量はc−Abl発現量の変化と連動して、上昇していることがわかる。したがって、GFPを指標として、c−Abl発現量が高い細胞を採取できることがわかる。
Abi−1をコードするcDNAとして、pGAD424Abi−1〔谷ら、J. Biol. Chem.、2003年、第278巻、第21685頁〜第21692頁〕に含まれる核酸を用いた。
得られたcDNAを、pGXのEcoRI部位に挿入し、pGX−c−Abi−1ベクターを得た。
得られたpGX−Abi−1ベクターを用い、前記実施例3におけるMenaの代わりに、Abi−1を、同様の手法により、発現させた。
得られた細胞について、商品名:FACSvantage(ベクトンディッキンソン社製)を用いて、蛍光強度が対照の細胞に比べて10倍以上高い細胞を分取する条件でソーティングし、GFPの蛍光を示す細胞として、pGX−Abi−1をパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群を回収した。
得られたpGX−Abi−1をパッケージングしたウイルスを感染させた細胞の細胞群から、前記実施例3の(3)と同様に、ライゼートを調製し、200μgタンパク質相当量を、グルタチオンビーズ〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製、商品名:Glutathione SepharoseTM 4B〕 10μlと混合し、GST融合Abi−1タンパク質をプルダウンした。
前記ライゼートのうち、20μgタンパク質相当量と、前記プルダウンにより得られた試料とを、8重量% SDS−PAGEに供し、ついで、ゲル上のタンパク質を、商品名:Immobilon−P membrane filters〔ミリポア(Millipore)社製〕に転写させた。転写後の膜について、一次抗体として、Abi−1に対する抗体〔商品名:1G9、谷(K. Tani)ら、J. Biol. Chem.、第278頁、第21685頁〜第21692頁、2003年1月13日〕と二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウス抗体〔ジャクソンイムノリサーチ(Jackson Immuno Research)社製〕とを用い、室温で1時間インキュベーションし、その後、商品名:ECL plus enhanced chemiluminescence solutions〔アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia)社製〕を用いて、製造者の説明書に従い、発色反応を行ない、それにより、Abi−1の検出を行なった。結果を、図9に示す。
その結果、図9に示されるように、CHO-EcoR細胞に、Abi−1をコードする核酸を保持するベクター(図中、pGX−Abi−1)がパッケージングされたウイルスが感染し、GSTとの融合タンパク質として、Abi−1が、効率よく発現させることができることがわかった。
本発明により、足場非依存的な増殖能を有し、ウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞、さらには、例えば、CHO細胞等において、前記ウイルスを介した生物学的な手法によりポリペプチドを発現させることができ、高い効率で、ポリペプチドを前記細胞で発現させること、前記細胞において、迅速かつ簡便な操作で、活性の発現や配列が未知のランダム変異タンパク質を発現させることができ、ハイスループットでのタンパク質の機能解析等が可能になる。
図1は、pGXベクターの概略図を示す。図中、「LTR」は、Long terminal repeat、「GST」は、グルタチオン S−トランスフェラーゼ、IRESは、Internal ribosome entry site、「GFP」は、緑色蛍光タンパク質を示す。
図2は、pGXをパッケージングしたウイルスの感染により発現したGFPによる蛍光を調べた結果を示す図である。パネル(A)は、pGXをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−S細胞、パネル(B)は、pGXをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞、パネル(C)は、pGXをパッケージングしたウイルスを感染させたNIH3T3細胞をそれぞれ示す。
図3は、pGXをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞におけるGFPの発現量と、pGXパッケージングしたウイルスを感染させたMEF細胞におけるGFPの発現量とを比較した結果を示す図である。
図4は、CHO−EcoR細胞におけるMenaの発現を調べた結果を示す図である。パネル(A)は、Menaに対する抗体を用いたイムイノブロッティングの結果を示し、パネル(B)は、8重量% SDS−PAGEによるライゼートの解析結果を示す。パネル(A)中、「+」は、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞、「−」は、CHO−EcoR細胞である。
図5は、CHO−EcoR細胞へのウイルスの多重感染によるタンパク質発現の変化を調べた結果を示す図である。図中、「1S」は、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞、「1S2」は、1Sの細胞に、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを再度感染させた細胞、「1SC」は、1Sの細胞に、濃縮ウイルス液を用いて、ウイルスを感染させた細胞を示す。
図6は、CHO−EcoR細胞への濃縮ウイルスの感染によるMenaタンパク質発現の変化を調べた結果を示す図である。図中、「1S」は、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞の細胞群、「1SH」は、1Sのうち、GFPによる蛍光強度が高い細胞の細胞群、「1S2」は、1Sの細胞に、pGX−Menaをパッケージングしたウイルスを再度感染させた細胞の細胞群、「1SC」は、1Sの細胞に、濃縮ウイルスを用いて、ウイルスを感染させた細胞の細胞群、「1SCH」は、1SCの細胞のうち、GFPによる蛍光強度が高い細胞の細胞群を示す。
図7は、CHO−EcoR細胞におけるc−Ablの発現を調べた結果を示す図である。パネル(A)は、c−Ablに対する抗体を用いたイムイノブロッティングの結果を示し、パネル(B)は、8重量% SDS−PAGEによるライゼートの解析結果を示す。パネル(A)中、「+」は、pGX−c−Ablをパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞、「−」は、CHO−EcoR細胞である。
図8は、CHO−EcoR細胞への濃縮ウイルスの感染によるc−Ablタンパク質発現の変化を調べた結果を示す図である。図中、「1S」は、pGX−c−Ab1をパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞の細胞群、「1SH」は、1Sのうち、GFPによる蛍光強度が高い細胞の細胞群、「1S2」は、1Sの細胞に、pGX−c−Ab1をパッケージングしたウイルスを再度感染させた細胞の細胞群、「1SC」は、1Sの細胞に、濃縮ウイルスを用いて、ウイルスを感染させた細胞の細胞群、「1SCH」は、1SCの細胞のうち、GFPによる蛍光強度が高い細胞の細胞群を示す。
図9は、CHO−EcoR細胞におけるAbi−1の発現を調べた結果を示す図である。パネル(A)は、Abi−1に対する抗体を用いたイムイノブロッティングの結果を示し、パネル(B)は、8重量% SDS−PAGEによるライゼートの解析結果を示す。パネル(A)中、「+」は、pGX−cAbi−1をパッケージングしたウイルスを感染させたCHO−EcoR細胞、「−」は、CHO−EcoR細胞である。
配列番号:3は、pGXベクターの配列である。
配列番号:4は、プライマーの配列である。
配列番号:5は、プライマーの配列である。
配列番号:6は、プライマーの配列である。
配列番号:7は、プライマーの配列である。

Claims (15)

  1. 足場非依存的な増殖能を有し、かつウイルスの感染を阻害する物質を産生する動物細胞に、該ウイルスに対するレセプターをコードする核酸が発現可能に導入されてなる、ウイルス易感染性細胞。
  2. 該動物細胞が、チャイニーズハムスターオバリー細胞である、請求項1記載のウイルス易感染性細胞。
  3. 該ウイルスが、エコトロピックレトロウイルスである、請求項1又は2記載のウイルス易感染性細胞。
  4. 該ウイルスに対するレセプターが、アミノ酸トランスポーターである、請求項1〜3いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞。
  5. 該アミノ酸トランスポーターが、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を含有したポリペプチドである、請求項4記載のウイルス易感染性細胞。
  6. A)請求項1〜5いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞と、
    B)発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するためのウイルス由来のベクターと、
    を含有してなる、ポリペプチド発現システム。
  7. 該ウイルス由来のベクターが、
    a)2つのLTRと、
    b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
    c)選択マーカーをコードする核酸と
    を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置されてなり、配列番号:3に示される塩基配列からなるベクターである、請求項6記載のポリペプチド発現システム。
  8. 該ウイルス由来のベクターが、d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能になるように配置されてなるベクターである、請求項6又は7記載のポリペプチド発現システム。
  9. 該ウイルス由来のベクターが、e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されてなるベクターである、請求項6又は7記載のポリペプチド発現システム。
  10. 該ウイルス由来のベクターが、e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸をさらに含有し、ここで、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されてなるベクターである、請求項8記載のポリペプチド発現システム。
  11. A’)請求項1〜5いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、発現対象のポリペプチドをコードする核酸を導入するためのウイルス由来のベクターを保持したウイルスを感染させたウイルス感染細胞と、
    B’)請求項9又は10記載のウイルス由来のベクターと、
    を含有してなる、ポリペプチドの大量発現用の発現システム。
  12. 請求項1〜5いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、下記I)又はII)のウイルス由来のベクター:
    (I)a)2つのLTRと、
    b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
    c)選択マーカーをコードする核酸と、
    e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
    を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記b)の核酸の挿入部位に、前記e)の核酸が挿入されてなるウイルス由来のベクター、又は
    (II)a)2つのLTRと、
    b)発現対象のポリペプチドをコードする核酸の挿入部位を有する核酸と、
    c)選択マーカーをコードする核酸と、
    d)発現対象のポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結するためのタグ配列をコードする核酸と、
    e)発現対象のポリペプチドをコードする核酸と、
    を含有し、2つのLTRの間に、前記b)の核酸と、前記c)の核酸と、前記d)の核酸と、前記e)の核酸とが、それぞれ作動可能に配置され、前記d)の核酸が、前記b)の核酸を介して、前記e)の核酸に作動可能に連結されてなるウイルス由来のベクター、
    を保持するウイルスを感染させ、目的とするポリペプチドを発現させることを特徴とする、ポリペプチドの発現方法。
  13. (1)請求項1〜5いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、及び
    (2)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
    を含む、請求項12記載の発現方法。
  14. (1)請求項1〜5いずれか1項に記載のウイルス易感染性細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスを感染させ、ウイルス感染細胞を得る工程、
    (2’)前記ステップ(1)で得られたウイルス感染細胞に、前記I)又はII)のウイルス由来のベクターを保持するウイルスをさらに感染させ、ウイルス多重感染細胞を得る工程、
    (3)前記ステップ(2’)で得られたウイルス多重感染細胞を培養して、目的とするポリペプチドを発現させる工程、
    を含む、請求項12記載の発現方法。
  15. 足場非依存的な増殖能を有し、かつエコトロピックレトロウイルスレセプターをコードする核酸が発現可能に導入されてなる、チャイニーズハムスターオバリー細胞。
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