JP4401702B2 - 癌遺伝子の探索方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌遺伝子を効率的に探索する方法に関する。また、該方法により得られた癌遺伝子を導入した細胞株を用いる癌の治療に有用な物質を探索する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌は細胞増殖、細胞死の制御が破綻した状態であり、その原因として細胞の増殖や細胞死等に関与する遺伝子の変異や発現異常などがあげられる。変異や発現異常を起こした癌遺伝子を同定することは発癌の原因を解明し、その治療にも役立つことからさまざまな方法が考案され工夫が重ねられてきた。癌遺伝子を探索する方法としては、癌細胞から得られた遺伝子を、他の細胞に遺伝子導入し、形質の変化した細胞に導入された遺伝子を解析し、同定する方法があげられる。Whiteheadらはレトロウイルスベクターに癌細胞から得た遺伝子を組み込み、NIH3T3細胞に遺伝子導入し、形質が変化した細胞を得ることによって効率良く癌遺伝子を同定することを報告している(非特許文献1参照)。しかし、これまでの方法では、遺伝子源とした癌細胞で実際に変異や遺伝子の転座がおきているような癌遺伝子しか単離できない。
【0003】
TELは、Etsファミリーに属する転写因子である。TEL遺伝子は、白血病などの癌細胞において、染色体転座により、さまざまな遺伝子と融合遺伝子を形成することが知られている(非特許文献2参照)。たとえば、TEL遺伝子とJAK2(非特許文献3参照)、ABL1(非特許文献4参照)、ARG/ABL2(非特許文献5参照)、SYK(非特許文献6参照)、血小板由来増殖因子β受容体(PDGFβR)(非特許文献7参照)、ニューロトロフィン3受容体TRKC(非特許文献8参照)、繊維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)(非特許文献9参照)等のチロシンキナーゼ遺伝子との融合遺伝子が報告されている。これらのTELとチロシンキナーゼとの融合タンパク質においては、TELのhelix-loop-helix構造を有するポインテッド領域(以後、PNT領域と略する)を介した、タンパク質のオリゴマー化が起こることによりチロシンキナーゼの恒常的活性化が生じ、細胞の癌化に関与すると考えられている。本知見に基づき、受容体型チロシンキナーゼであるPDGFβRおよびFLT3それぞれの遺伝子とTEL遺伝子との融合遺伝子を作製し、この融合遺伝子を細胞に導入することにより、恒常的に活性化したチロシンキナーゼを発現する細胞を作製し、細胞の癌化の機序を解析する研究が報告されている(非特許文献10および11参照)。これまでに、TEL遺伝子との融合遺伝子として見出されたキナーゼ遺伝子はいずれも、チロシンキナーゼファミリーに属する遺伝子であり、セリン/スレオニンキナーゼ遺伝子は報告されていない。
【0004】
【非特許文献1】
モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and Cellular Biology),(米国),1995年,第15巻,第2号,p.704−710
【非特許文献2】
リューケミア(Leukemia),(イギリス),1999年,第13巻,第1号,p.6−13
【非特許文献3】
サイエンス(Science),(米国),1997年,第278巻,第5341号,p.1309−1312
【非特許文献4】
キャンサー・リサーチ(Cancer Research),(米国),1995年,第55巻,第1号,p.34−38
【非特許文献5】
ブラッド(Blood),(米国),1999年,第94巻,第12号,p.4370−4373
【0005】
【非特許文献6】
ブラッド(Blood),(米国),2001年,第97巻,第4号,p.1050−1055
【非特許文献7】
セル(Cell),(米国),1994年,第77巻,第2号,p.307−316
【非特許文献8】
ブラッド(Blood),(米国),1999年,第93巻,第4号,p.1355−1363
【非特許文献9】
キャンサー・リサーチ(Cancer Research),(米国),2001年,第61巻,第23号,p.8371−8374
【非特許文献10】
エクスペリメンタル・ヘマトロジー(Experimental Hematology),(オランダ),2000年, 第28巻,第5号,p.584−593
【非特許文献11】
リューケミア(Leukemia),(イギリス),2001年,第15巻,第7号,p.1001−1010
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法で見いだされてきた癌遺伝子は、遺伝子源とした癌細胞で、変異や転座を起こしている遺伝子に限定されてきた。本発明の目的は、癌遺伝子として、細胞をトランスフォームする機能を有するDNAを、cDNAライブラリーから網羅的に探索し取得する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、人工的にTELのPNT領域を含むポリペプチドをコードするDNAの下流にcDNAを組み込んだcDNAライブラリーを作製し、宿主細胞で発現させることにより、新規な癌遺伝子として、TELのPNT領域を含むポリペプチドをコードするDNAとcDNAとの融合DNAを網羅的に探索する方法を考案し、また該探索方法により得られる癌遺伝子を用いる癌の治療に有用な物質を探索する方法を見出した。本発明は、以下の(1)〜(17)に関する。
【0008】
(1)以下の(a)〜(d)の工程を含む、癌遺伝子の探索方法。
(a)ベクターのプロモーターの下流に、TELのPNT領域をコードするDNAとcDNAとの融合DNAが連結した構造を有するcDNAライブラリーを作製する
(b)宿主の細胞に(a)で作製したcDNAライブラリーを導入し、TELのPNT領域をコードするDNAとcDNAとの融合DNAを発現させる
(c)cDNAライブラリーを導入した(b)の細胞から、トランスフォームした細胞を選択する
(d)(c)で選択された細胞に導入された融合DNAの塩基配列を解析し、該融合DNAを癌遺伝子として同定する
(2)(b)の工程において、宿主の細胞がサイトカイン依存性の細胞であり、かつ(c)の工程において、サイトカイン非依存性の増殖を示す細胞を、トランスフォームした細胞として選択する、(1)に記載の方法。
(3)(a)の工程において、プロモーターが、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターである(1)または(2)に記載の方法。
(4)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターの下流にTELのPNT領域をコードするDNAを連結した構造を有するレトロウイルスベクター。
(5)配列番号40のアミノ酸配列を含むポリペプチドのC末に配列番号1〜5のいずれかのアミノ酸配列を含むポリペプチドが付加した融合ポリペプチドをコードするDNA。
【0009】
(6)配列番号40のアミノ酸配列を含むポリペプチドのC末に以下の(i)〜(iii)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドが付加した融合ポリペプチドをコードするDNA。
(i)配列番号6の179、189、191、199、200、205、213、220、225、228、232および233番目のうちのいずれかの位置のアミノ酸から512番目のアミノ酸までのアミノ酸配列
(ii)配列番号7の47、55、102、194、200および227番目のうちのいずれかの位置のアミノ酸から505番目のアミノ酸までのアミノ酸配列
(iii)配列番号8〜14のいずれかのアミノ酸配列
(7)配列番号40のアミノ酸配列を含むポリペプチドが配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチドである(5)または(6)に記載のDNA。
(8)配列番号15〜39のいずれかの塩基配列を含むDNA。
(9)(5)〜(8)のいずれか1項に記載のDNAをベクターに組み込んだ組換え体DNA。
(10)宿主の細胞に(9)に記載の組換え体DNAを導入することにより、トランスフォームした細胞。
(11)(10)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞の癌細胞に特有の形質を抑制する物質を探索する方法。
(12)(10)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞の癌細胞に特有の形質を抑制する物質を選択することにより、該細胞に導入したDNAがコードするキナーゼの活性を阻害する物質を探索する方法。
(13)(10)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞の癌細胞に特有の形質を抑制する物質を選択することにより、癌の治療に有用な物質を探索する方法。
(14)宿主の細胞がサイトカイン依存性の細胞である(10)に記載の細胞。
(15)(14)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を抑制する物質を選択することにより、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を抑制する物質を探索する方法。
【0010】
(16)(14)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を抑制する物質を選択することにより、該細胞に導入したDNAがコードするキナーゼの活性を阻害する物質を探索する方法。
(17)(14)に記載の細胞と試験物質とを接触させ、試験物質を接触させなかった場合と比較して、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を抑制する物質を選択することにより、癌の治療に有用な物質を探索する方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
1.癌遺伝子を探索する方法
本発明の癌遺伝子の探索方法は、(1)適当な発現ベクターのプロモーターの下流に、TELのPNT領域(以下、TEL PNTと略す)を含むポリペプチドをコードするDNAとcDNAとを融合させたDNAを連結した構造を有するcDNAライブラリーを作製し、(2)このcDNAライブラリーを宿主の細胞に導入して融合DNAを発現させた後、(3)トランスフォームした細胞を選択し、(4)選択した細胞に導入したDNAの配列を解析し、癌遺伝子を同定する方法である。そのままでは細胞をトランスフォームできないが、オリゴマー化することにより恒常的に活性化し、細胞をトランスフォームできるようになるポリペプチドが、細胞には多数存在するが、従来の方法では、これらのポリペプチドの遺伝子を癌遺伝子として単離できなかった。本方法では、cDNA中のこれらのポリペプチドをコードするcDNAをTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAとの融合DNAとし、宿主細胞内で発現させることにより、これらのポリペプチドはオリゴマー化して恒常的に活性化し、細胞をトランスフォームできるようになる。本発明において「トランスフォームする」とは、細胞を、元の細胞の形質とは異なる、癌細胞に特有な形質を少なくとも一つ有するように変化させることを意味する。本発明において、「癌遺伝子」とは、宿主の細胞に導入し、発現させたときに、該細胞がトランスフォームするような機能を有するDNAを意味する。「癌細胞に特有な形質」としては、例えば、サイトカイン非依存的な増殖、足場非依存性の増殖、増殖の接触阻害の喪失等があげられる。
【0012】
したがって、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAとこれらのポリペプチドをコードするcDNAとの融合DNAを、癌遺伝子として網羅的に取得することが可能となる。以下、(1)〜(4)の各工程を説明する。
【0013】
(1)cDNAライブラリーの作製
cDNAライブラリーは、動物細胞用の発現ベクターのプロモーターの下流に、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAを挿入したベクターを調製し、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの3'側に、適当な細胞から取得したcDNAを挿入することによって作製することができる。
【0014】
動物細胞用の発現ベクターは、動物細胞で機能するプロモーター、ベクターを導入した細胞を選択するための、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を有していることが必要である。さらに、ベクターの調製が容易なように、宿主を大腸菌にしたときに、大腸菌で自立複製できるオリジンと、ベクターを導入した宿主大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子を有していることが好ましい。
【0015】
ベクターとしては、通常のプラスミドベクターでもウイルスベクターでもよいが、種々の宿主細胞に効率よく、DNAを導入でき、導入後のDNAが安定している、レトロウイルスベクターが好ましい。
ベクターに挿入したDNAを発現させるための、動物細胞で機能するプロモーターとしては、宿主の細胞の種類によらず、下流につなげたDNAを大量に発現させる強力なプロモーター活性を有するものが好ましい。このようなプロモーターとしては、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(以下、GAPDHプロモーターとよぶ)があげられる。レトロウイルスベクターにおいても、プロモーター活性を有する5'の長い末端反復配列(以下、LTRと略す)の他に、GAPDHプロモーターを有していることが好ましい。プロモーターの下流には、DNAを挿入するために、適当な制限酵素サイトを有することが好ましい。このようなベクターとして、モロニーマウス白血病ウイルス(以下、MoMLVと略す)の5' LTRおよび3' LTR、GAPDHプロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子およびColE1オリジンを有するpHNGAPをあげることができる。
【0016】
TEL PNTを含むポリペプチドは、TELのアミノ酸配列の57〜108番目の配列(配列番号40)を含むポリペプチドであればよく、該配列のN末またはC末にさらに1〜数十個のアミノ酸配列が付加してもよい。該ポリペプチドとしては、例えば、配列番号41のアミノ酸配列からなる、TELのN末端154アミノ酸のポリペプチド断片、該配列のC末にEcoRIアダプター由来の5アミノ酸が付加した、配列番号42に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド等をあげることができる。また、このようなポリペプチドのN末にさらにFlagエピトープ(配列番号55)、インフルエンザウイルス・ヘマグルチニン・エピトープ(以下、HAエピトープと表す、配列番号56)などのタグ配列を含むアミノ酸配列を付加したポリペプチドも、TEL PNTを含むポリペプチドに含まれる。TELのcDNAの配列から、PNT領域を含む断片をコードする適当な領域を選択し、該領域の塩基配列に基づいたプライマーを用いてヒトcDNAを鋳型としたPCRを行うことにより、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAを調製することができる。また、TEL PNTを含むポリペプチドが、タグ配列を含むアミノ酸配列をN末に付加したポリペプチドの場合は、上記のPCRにおいて、フォワードプライマーとしてTELのcDNAに基づく配列の5'側に、タグ配列を含むアミノ酸配列をコードする配列を付加したプライマーを用いることにより、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAを調製することができる。あるいは、タグ配列をコードする2本鎖DNAを、化学合成やPCRを利用して作製するか、pFLAG-CMV2(コダック社製)等のタグ配列を含むベクターから制限酵素切断により単離し、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAに結合させることにより調製することができる。
【0017】
得られたTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAを上記発現ベクターのプロモーターの下流に挿入し、得られたベクターに下記のcDNAを挿入することにより、cDNAライブラリーを作製することができる。なお、上記のTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの調製時に用いるリバースプライマーを、5'端にNotIおよび別の適当な制限酵素の認識配列を有するものを用い、cDNAを正しい方向で挿入できるようにすることが好ましい。
【0018】
cDNAは、適当な細胞あるいは組織から、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載の方法によって、あるいはファーストトラック(FastTrack)mRNA単離キット(インビトロジェン社製)等のキットを用いてmRNAを抽出する。抽出したmRNAをGubler-Hoffman法〔Gene, 25, 263 (1983)〕により、mRNAを鋳型として、オリゴdTプライマーを用いて逆転写酵素反応によりcDNAの第1鎖を合成した後、リボヌクレアーゼHおよびDNAポリメラーゼIを用いた反応により2本鎖cDNAを合成することができる。cDNAをベクターのプロモーターに対して正しい方向で挿入するためには、オリゴdTプライマーの5'側に、NotIの認識配列を有することが好ましい。mRNAを抽出する細胞や組織は、哺乳類のものであれば、いかなる細胞や組織でもよいが、ヒトの細胞や組織、細胞株が好ましい。癌患者から採取した癌細胞あるいは癌組織を用いることもできる。合成した2本鎖cDNAの末端に、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの下流の制限酵素サイトの突出末端となるような2本鎖DNAのアダプターを付加し、さらにNotIで切断する。このcDNAを、ベクターのTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの下流の制限酵素サイト−NotI間に挿入することにより、cDNAが正しい方向で挿入されたcDNAライブラリーを作製することができる。
【0019】
(2)宿主細胞へのcDNAライブラリーの導入
宿主細胞としては、癌化していない細胞株を用いる。細胞株としては、サイトカイン依存性細胞、例えばIL-3依存性の細胞である32DおよびBa/F3、あるいはNIH3T3などをあげることができる。
【0020】
宿主の細胞へのcDNAライブラリーの導入は、ライブラリーのベクターによって適切な方法で行う。通常のプラスミドベクターの場合は、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)〕等をあげることができる。
ウイルスベクターの場合は、ウイルスのパッケージングに必要な蛋白質を発現するパッケージング細胞を樹立し、このパッケージング細胞にウイルスベクターを導入するか、ウイルス粒子形成に必要な蛋白質の発現ベクターを作製し、このベクターをヒト腎癌系細胞株293細胞等の細胞に共導入し、細胞を培養することにより、高濃度の組換えウイルスを含む培養上清(以下、ウイルス上清とよぶ)を得ることができる。得られたウイルス上清を、宿主の細胞に添加して培養することにより、宿主細胞にウイルスを感染させ、cDNAライブラリーを導入することができる。ウイルスのパッケージングに必要な蛋白質としては、レトロウイルスベクターの場合にはMoMLVなどのレトロウイルス由来のgag、pol、envや水疱性口内炎ウイルス(VSV)のG蛋白質などをあげることができる。
【0021】
(3)トランスフォームした細胞の選択
cDNAライブラリーを導入した細胞を、選択培地で培養し、増殖してきた細胞のコロニーを単離することにより、トランスフォームした細胞を選択することができる。トランスフォームした細胞が有する癌細胞に特有の性質としては、サイトカイン非依存的な増殖、足場非依存性の増殖、増殖の接触阻害の喪失等をあげることができる。選択培地は、宿主の細胞が増殖できず、トランスフォームした細胞だけが増殖できるような培地であり、例えば、サイトカイン依存性の細胞を宿主とした場合は、そのサイトカインを含まない培地、足場非依存性の増殖をしない細胞を宿主とした場合は、軟寒天培地をあげることができる。増殖の接触阻害の喪失の場合は、特に選択培地を用いなくとも、癌遺伝子の発現により、トランスフォームした細胞が増殖を続け、増殖巣を形成するので、増殖巣を単離すればよい。
【0022】
(4)融合DNAの配列の解析と、癌遺伝子の同定
(3)で選択した細胞は、cDNAが染色体に挿入されているので、細胞から染色体DNAを抽出し、該DNAを鋳型にして、ベクターのTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAよりも上流の配列およびcDNAを挿入した制限酵素サイトよりも下流の配列にそれぞれ対応したプライマーを用いたPCRにより、導入されたTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAとcDNAとの融合DNAを単離することができる。得られた融合DNAは、癌遺伝子と考えられるので、ジデオキシ法やDNAシークエンサーにより、塩基配列を解析し、癌遺伝子の配列を明らかにすることができる。また、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAに融合したcDNAの配列をクエリーとして、塩基配列データベースを検索することにより、恒常的に活性化されたときに、細胞をトランスフォームする機能を有するポリペプチドをコードしている相手方の遺伝子を同定することができる。
【0023】
上記の方法で得られる新規な癌遺伝子として、配列番号15〜39のいずれかの配列を含むDNAをあげることができる。配列番号15〜39の配列は、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAにLYN、HCK、FGR、SYK、FLT3、TYK2、ARAF1のいずれかのcDNAのキナーゼドメインをコードする領域を含む断片が同じフレームで融合した融合DNAの塩基配列である。
【0024】
これらの癌遺伝子のうち、配列番号15〜33、38および39の配列を含むDNAのような、LYN、HCK、FGR、TYK2またはARAF1遺伝子とTEL遺伝子との融合遺伝子は、これまでに知られておらず、本発明により初めて見いだされたものである。これらの5遺伝子とTEL遺伝子との融合遺伝子は、宿主細胞内で、コードするキナーゼがPNT領域を介してオリゴマー化し、その結果、恒常的に活性化し、細胞をトランスフォームすると考えられる。したがって、配列番号15〜33、38および39の配列だけでなく、LYN、HCK、FGR、TYK2またはARAF1のキナーゼドメインをコードする領域を含むcDNAと、TEL PNTをコードするDNAとが同じフレームで融合しているDNAは、細胞をトランスフォームする能力があると考えられる。
【0025】
以上から、本発明の探索方法により得られる癌遺伝子には、TEL PNT(アミノ酸配列:配列番号40)を含むポリペプチドのC末にLYN、HCK、FGR、TYK2、ARAF1のキナーゼドメインのアミノ酸配列(それぞれのアミノ酸配列を配列番号1〜5に示す)のいずれかを含むポリペプチドが付加した融合ポリペプチドをコードするDNA、TEL PNTを含むポリペプチドのC末に、(1)LYNのアミノ酸配列(配列番号6)の179、189、191、199、200、205、213、220、225、228、232および233番目のうちのいずれかの位置のアミノ酸から512番目のアミノ酸までのアミノ酸配列、(2)HCKのアミノ酸配列(配列番号7)の47、55、102、194、200および227番目のうちのいずれかの位置のアミノ酸から505番目のアミノ酸までのアミノ酸配列、(3)FGRのアミノ酸配列の221〜529番目のアミノ酸配列(配列番号8)、(4)SYKのアミノ酸配列の115または365番目のアミノ酸から635番目のアミノ酸までのアミノ酸配列(配列番号9または10)、(5)FLT3のアミノ酸配列の602または605番目のアミノ酸から993番目のアミノ酸までのアミノ酸配列(配列番号11または12)、(6)TYK2の776〜1187番目のアミノ酸配列(配列番号13)、(7)ARAF1の303〜606番目のアミノ酸配列(配列番号14)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドが付加した融合ポリペプチドをコードするDNA、これらのDNAにおいて、TELのPNTドメインを含むポリペプチドが、TELの1〜154番目のアミノ酸配列(配列番号41)を含むポリペプチドであるDNAが含まれる。これらのDNAは、ヒトcDNAからPCRにより、上記のDNAがコードするLYN、HCK、FGR、SYK、FLT3、TYK2またはARAF1のcDNAの部分断片を単離し、(1)で得られるTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと結合させることによっても、得ることができる。
【0026】
2.癌の治療に有効な物質を探索する方法
癌遺伝子をベクターに組み込んだ組換え体DNAを宿主の細胞に導入することによりトランスフォームした細胞を調製する。このような細胞は、1.(3)で選択したトランスフォームした細胞を用いることもできるし、それとは別に1.(4)で取得される癌遺伝子を、1.(1)に記載した動物細胞用の発現ベクターのプロモーターの下流に挿入した組換え体DNAを作製し、この組換え体DNAを、1.(2)に記載した、癌細胞に特有の形質を有しない宿主の細胞に導入することによって、新しく得ることもできる。
【0027】
上記のトランスフォームした細胞に試験物質を接触させ、該細胞の癌細胞に特有の形質を観察または測定し、試験物質を接触させなかった場合の該形質と比較することにより、該形質を抑制する物質を探索することができる。癌遺伝子がキナーゼ遺伝子の場合は、トランスフォームした細胞が有する癌遺伝子のキナーゼ活性を阻害する物質を、この方法で探索することができる。このような物質は、癌細胞に特有の形質を抑制し、その増殖を抑制するので、癌の治療に有効な物質となる。したがって、この方法で癌の治療に有効な物質を探索することができる。
【0028】
宿主の細胞が、サイトカイン依存性の細胞の場合は、トランスフォームした細胞はサイトカイン非依存性の増殖を示すので、トランスフォームした細胞に試験物質を接触させ、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を測定し、試験物質を接触させなかった場合のサイトカイン非依存性の増殖と比較することにより、該細胞のサイトカイン非依存性の増殖を抑制する物質を探索することができる。癌遺伝子がキナーゼ遺伝子の場合は、トランスフォームした細胞が有する癌遺伝子のキナーゼ活性を阻害する物質を、この方法で探索することができる。このような物質は、癌細胞の増殖を抑制するので、癌の治療に有効な物質となる。したがって、この方法で癌の治療に有効な物質を探索することができる。
【0029】
生体内での毒性や副作用の点から、正常細胞の増殖には影響せず、癌細胞特異的に増殖を抑制する物質が、癌の治療薬としては好ましいが、上記のトランスフォームした細胞のサイトカイン非依存性の増殖の抑制と、癌遺伝子を導入しない宿主細胞のサイトカイン依存性の増殖の抑制の度合いを比較することにより、癌細胞特異的に増殖を抑制する物質を選択でき、非特異的な細胞毒性を示す物質などを選択からはずすことができる。また、各試験物質について、融合の相手遺伝子が異なる融合遺伝子をそれぞれ発現するトランスフォームした細胞間で、サイトカイン非依存性の増殖など、癌細胞特有の形質の抑制の度合いを比較することにより、それぞれの細胞に特異的に癌細胞特有の形質を抑制する物質、例えば、それぞれの細胞が発現するキナーゼを特異的に阻害する物質を選択できる。
【0030】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【0031】
【実施例】
実施例1 癌遺伝子の探索方法
(1)cDNAライブラリーの作製
(a)レトロウイルスベクターpHNGAP/FPNTの構築
レトロウイルスベクターpLRNL〔J. Virol., 65, 1202 (1991)〕のMoMLV 5'LTRの上流のEcoRI-SacI間に、pHCMV-G〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9564 (1994)〕から切り出したサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを挿入し、一過性の発現系で高コピーのレトロウイルスゲノムが転写されるようにした。このベクターをEcoRIで切断後、末端を平滑化し、自己ライゲーションをして、EcoRIサイトを消失させたベクターpCLRNLを作製した。pCLRNLをHindIIIで切断後、自己ライゲーションをしてラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターを除き、pCLNLを作製した。
【0032】
配列番号43および44の配列からなるプライマーGAPDHPRFおよびGAPDHPRRを用いて、健常人cDNAを鋳型としたPCRにより、GAPDHプロモーター断片を増幅した。この断片をBstBIおよびClaIで切断し、pCLNLのBstBI-ClaI間に挿入した。さらにGAPDHプロモーターの下流のClaIサイトに、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)のT3プロモーター、マルチクローニングサイト(SalI、EcoRI、NotIサイトを含む)およびT7プロモーターを含む断片を、T3プロモーターがGAPDHプロモーター側になるように挿入し、pCLNGAPを作製した。
【0033】
pBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)から、アンピシリン耐性遺伝子およびCol E1オリジンを含むSspI-PvuII断片を単離し、以下のようにしてpCLNGAPに導入することにより、高コピーのプラスミドが得られるように改善したベクターpHNGAPを作製した。すなわち、pCLNGAPから、CMVプロモーターからGAPDHプロモーターまでを含むSspI-EcoRI断片を単離した。また、pCLNGAPのEcoRIサイトからMoMLV 3' LTRまでの断片をPCRにより増幅し、EcoRIサイトを切断した。これらの断片とpBluescript SK(-)のSspI-PvuII断片を結合させ、pHNGAPを作製した。
【0034】
配列番号45および46それぞれの配列からなるDNA(FLAGSALFおよびFLAGHINDR)をプライマーおよび鋳型として用いてPCRを行い、Flagエピトープタグ(配列番号55)を含むポリペプチドをコードするDNAを増幅した後、末端のSalIサイトおよびHindIIIサイトで切断したDNA断片を得た。また、TEL PNTを含むポリペプチドとして、TELのN末端154アミノ酸(配列番号41)を含むポリペプチドをコードするDNAを、配列番号47および48それぞれの配列からなるプライマー(TELHINDATGおよびTELECO486R)を用いてヒトcDNAを鋳型としたPCRにより増幅した後、末端のHindIIIサイトおよびEcoRIサイトで切断したDNA断片を得た。これら2つのDNA断片をpHNGAPのGAPDHプロモーターの下流のSalI-EcoRI間に挿入し、FlagエピトープタグおよびTELのN末端154アミノ酸を含むポリペプチドをコードするDNAを含むレトロウイルスベクターpHNGAP/FPNTを作製した。配列番号49にpHNGAP/FPNTのSalIサイトからNotIサイト間の配列を示した。pHNGAP/FPNTの、TELのN末端154アミノ酸をコードするDNAの直後のEcoRI-NotI間にcDNAを挿入することにより、cDNAがコードするポリペプチドをFlagエピトープタグおよびTELのN末端154アミノ酸との融合ポリペプチドとして発現するためのレトロウイルスベクターとなる。
【0035】
MoMLVのgagおよびpolをCMVプロモーター制御下で発現するベクターpCMVgag-pol〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 8033 (1993)〕のCMVプロモーターの上流に、VSVのエンベロープ蛋白であるG蛋白質(以下、VSV-Gと略す)発現ベクターpHCMV-G〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9564 (1994)〕から切り出した、CMVプロモーターおよびVSV-G遺伝子の領域を挿入し、pCGCGPを作製した。pCGCGPは一つのプラスミド上から、MoMLVのgagおよびpolとVSV-Gが同時に発現されるようにしたコンストラクトである。図1AにpHNGAP/FPNTおよびpCGCGPの構造を示した。通常のレトロウイルスベクター発現系では、組換えレトロウイルスを含む培養上清(以下、ウイルス上清とよぶ)を得るために、パッケージング細胞を樹立し、このパッケージング細胞にレトロウイルスベクターを導入する必要があったが、pCGCGPを、pHNGAP、pHNGAP/FPNT等のMoMLVのLTRを利用したレトロウイルスベクターと共に、ヒト腎癌系細胞株293細胞に共導入することにより、パッケージング細胞を樹立する必要がなく、高力価のウイルス上清の作製が可能である。
【0036】
(b)本探索方法の有効性の検証
本発明の探索方法では、オリゴマー化することにより恒常的に活性化し細胞をトランスフォームするポリペプチドをコードするcDNAは、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと融合することにより、細胞をトランスフォームできる癌遺伝子となることが予想される。しかし、たとえ宿主の細胞に導入されたcDNAライブラリー中のDNAがこのような融合DNAであったとしても、(1)cDNAの読みとりフレームがTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの読みとりフレームと一致していない場合、(2)cDNAが5'非翻訳領域を含み、この領域にTEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAの読みとりフレームと一致する終止コドンが存在する場合には、宿主の細胞はトランスフォームしないので、ポジティブクローンとして選択されない。したがって、本発明の方法で、癌遺伝子をクローン化できる確率は、ライブラリーの作製に用いたcDNAに含まれる、オリゴマー化することにより恒常的に活性化し細胞をトランスフォームするポリペプチドをコードするcDNAの割合よりも低くなることが予測される。細胞をトランスフォームできる癌遺伝子が、cDNAライブラリーに、ごく低い割合である1/50000しか含まれない場合でも、ポジティブクローンを検出できるかどうかを検証するため、以下のようなモデル実験を行った。
【0037】
ポジティブコントロールの癌遺伝子として、細胞をトランスフォームする能力を有することが知られているTEL-PDGFβR(TELの1-154アミノ酸とPDGFβRの膜貫通領域および細胞内領域を含む領域の融合ポリペプチド)をコードするDNA、およびネガティブコントロールとして、グリーン蛍光蛋白質(以下、GFPと略す)をコードするDNAをそれぞれpHNGAPのGAPDHプロモーターの下流に組み込んだpHNGAP/TPおよびpHNGAP/GFPを作製した。
【0038】
また、GAPDHプロモーターの有用性を検証するため、pHNGAP/TPのGAPDHプロモーターをヒトリングフィンガー蛋白質(以下、RFPと略す)プロモーターに替えた構造を有するTEL-PDGFβR発現レトロウイルスベクターpHNRFP/TP、および(a)で作製したレトロウイルスベクターpCLRNLのMoMLVの5' LTRの下流にTEL-PDGFβRをコードするDNAを挿入し、MoMLVのLTRの制御下でTEL-PDGFβRを発現するレトロウイルスベクターpHRNL/TPも作製した。これらのベクターの構造を図1Bに示す。
【0039】
10%ウシ胎児血清(以下、FCSと略す。三光純薬社製)を含むイスコフ(Iscove)改変ダルベッコ(Dulbecco)培地(以下、IMDMと略す)10 mlをいれた10 cmシャーレで、293細胞(ATCC番号CRL-1573)を5×105/mlで培養した。24時間後に、PHNGAP/GFPに対し、pHNGAP/TP、pHNRFP/TPおよびpHRNL/TPそれぞれを5万対1の割合(10μg対0.0002μg)で混合し、pCGCGP(10μg)とともにリン酸カルシウム法で、293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション後8時間、24時間後に培地を新しい培地8mlに交換し、48時間後の培養上清(ウイルス上清)を回収した。得られたウイルス上清の1mlを、5×105個のマウスIL-3(以下、mIL-3と略す)依存性細胞株32D(DSMZ番号:ACC 411)に添加して感染させた。培地は、2ng/ml mIL-3を含む10%FCS含有IMDMを用いた。24時間後に細胞をPBSで2回洗い、10%FCS含有IMDMでmIL3非存在下に、96穴プレートに約1×104/ウェルの細胞濃度で培養を開始し、2〜3週間後に細胞増殖が見られたウェルの数を数えた。なお、ウイルス上清に含まれる感染させるウイルスの数は、各ウイルス上清を用いて208F細胞に感染させ、ネオマイシン耐性となった細胞数から測定した。細胞の感染効率は、FACS解析により示されるGFP陽性細胞の割合から算出した。細胞増殖の予測されるウェルの数は、(96ウェルプレートで培養した細胞数)×(細胞の感染効率)×(導入したDNA中のTEL-PDGFβR発現ベクターの割合)から算出した。
【0040】
第1表に示すように、pHNRFP/TPおよびpHRNL/TPでは、この条件下では細胞増殖の見られるウェルは得られなかったが、pHNGAP/TPでは、2ウェルに細胞増殖が見られた。また、これらのウェルで増殖した細胞にTEL-PDGFβR遺伝子が発現していることを、PCRにより確認した。RFPプロモーターおよびMoMLVのLTRではプロモーターの強さがGAPDHプロモーターに劣るため、増殖細胞が得られなかったものと考えられる。なお、細胞増殖が見られたウェルの数は、TEL-PDGFβR発現ベクターの割合から予測される数よりも少なかったが、この原因としては、TEL-PDGFβR遺伝子が導入されても、導入された細胞すべてが増殖できるとは限らないこと、GFP遺伝子に比べTEL-PDGFβR遺伝子の方が大きいため、挿入遺伝子が大きいほうがレトロウイルスの力価が低下するためなどの理由が考えられた。
【0041】
【表1】
Figure 0004401702
【0042】
GAPDHプロモーターが、RFPプロモーターおよびMoMLVのLTRよりも強いプロモーターであることを確かめるため、GFPをリポーターとした以下の実験を行った。pHNRFP/TPおよびpHRNL/TPそれぞれのTEL-PDGFβRをコードするDNAをGFPをコードするDNAに置換した構造を有するGFP発現レトロウイルスベクターを作製した。これらのベクターおよびpHNGAP/GFPをそれぞれ、32D細胞にトランスフェクションし、FACS解析によりそれぞれの細胞のGFPの発現の強さを解析し、比較した。培養は、2ng/ml mIL-3を含む10%FCS含有IMDMを用いた。その結果、GAPDHプロモーターはRFPプロモーターの8〜10倍の強さがあり、RFPプロモーターとMoMLVのLTRはほぼ同等であった。
【0043】
以上から、本発明の癌遺伝子の探索方法においては、強力なプロモーター活性を有するGAPDHプロモーターを有するレトロウイルスベクターを用いてcDNAライブラリーを作製することにより、たとえライブラリーに含まれる癌遺伝子の割合が低くても、十分に癌遺伝子を検出できると考えられた。したがってGAPDHプロモーターを組み込んだレトロウイルスベクターであるpHNGAP/FPNTは、cDNAライブラリーを作製し、そこから網羅的に癌遺伝子を探索するのに有用である。
【0044】
(c)cDNAライブラリーの作製
慢性単球性白血病患者からインフォームドコンセントによる同意のもとに癌細胞を採取し、RNAを抽出後、Gubler-Hoffman法〔Gene, 25, 263 (1983)〕を用いてcDNA合成を行った。cDNA合成のプライマーには配列番号50の配列からなるNotI T18プライマーを用いた。二本鎖cDNAの合成後、EcoRIアダプター(配列番号51および52の配列からなる2本鎖DNA)を接続し、NotIで切断後、アガロース電気泳動法により、800bp以上の長さのcDNAを切り出した。精製したcDNAは、前述のpHNGAP/FPNTベクターのEcoRI-NotIサイトに挿入することにより、一方向性のcDNAライブラリーを得た。得られたcDNAライブラリーは、エレクトロポレーション法により大腸菌に導入し、アガロースプレートにてライブラリーの力価(独立クローンの数)を測定した。また、この大腸菌を液体培養することにより、導入したcDNAライブラリーを増幅し、プラスミドとして回収した。
【0045】
(2)cDNAライブラリーの宿主細胞への導入
実施例1(1)(c)で回収したcDNAライブラリープラスミド10μgをpCGCGP 10μgとともに、実施例1(1)(b)と同様にして、リン酸カルシウム法で、10 cmシャーレ上で293細胞にトランスフェクションし、ウイルス上清を回収した。得られたウイルス上清8 mlを、宿主細胞である1×106個の32D細胞に感染させた。
【0046】
上記cDNAライブラリーの導入時には実施例1(1)(b)に比べ、ウイルス量および細胞数を多く設定した。これは、(i)cDNAライブラリーにはポリAシグナルが含まれているので、ウイルス力価が若干低くなること、(ii)挿入するcDNAが長いとウイルス力価が低くなるため、長い癌遺伝子検出するためには多くのウイルスをスクリーニングする必要があること、(iii)実施例1(1)(b)では、ポジティブクローンを5万分の1という設定にしたが、実際のcDNAライブラリーの力価は大腸菌への1回のエレクトロポーレーションあたり10-50万クローンであるため、より多くのウイルスをスクリーニングする必要があるなどの理由による。
【0047】
(3)癌遺伝子の解析と同定
レトロウイルス感染から、24時間後に32D細胞をPBSで2回洗い、mIL-3非存在下に96穴プレートに約2×104細胞/ウェルの細胞濃度で培養を開始した。2〜3週間後に、細胞増殖が見られたウェルの細胞を選択し、24穴プレート上で培養し、増殖させた。
【0048】
選択した細胞から、DNA STAT-60(TEL-TEST "B"社製)を用いて染色体DNAを抽出後、ベクターの融合DNAが挿入されたSalI-NotIサイトの上流および下流の配列に対応するT3プライマー(配列番号53)およびT7プライマー(配列番号54)を用いたPCRにより、染色体に挿入された融合DNAを増幅した。増幅したDNA断片は、蛍光色素標識を利用したジデオキシ法を用いて塩基配列を決定し、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと融合する相手のcDNAおよび融合位置を同定した。力価として約200万クローン分のcDNAライブラリーを導入した細胞をスクリーニングし、25クローンの融合DNAが単離された。
【0049】
図3に示すように、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと融合した相手遺伝子の種類は7種類で、さまざまな位置で融合していた。この中には、Srcファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼであるLYN、HCKおよびFGR、JAKファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼであるTYK2、それ以外の非受容体型チロシンキナーゼであるSYK、受容体型チロシンキナーゼであるFLT3、セリン/スレオニンキナーゼであるARAF1のcDNAが含まれていた。これらの相手遺伝子の蛋白質翻訳のフレームはTEL cDNAの蛋白質翻訳のフレームと一致しており、融合した領域には細胞増殖機能をもつキナーゼをコードする領域が含まれていた。得られた癌遺伝子を、「TEL/融合した相手遺伝子の名-相手遺伝子の融合位置にあたるアミノ酸の位置」として、TEL/LYN-179、TEL/LYN-189、TEL/LYN-191、TEL/LYN-199、TEL/LYN-200、TEL/LYN-205、TEL/LYN-213、TEL/LYN-220、TEL/LYN-225、TEL/LYN-228、TEL/LYN-232、TEL/LYN-233、TEL/HCK-47、TEL/HCK-55、TEL/HCK-102、TEL/HCK-194、TEL/HCK-200、TEL/HCK-227、TEL/FGR-221、TEL/SYK-115、TEL/SYK-365、TEL/FLT3-602、TEL/FLT3-605、TEL/TYK2-776、TEL/ARAF1-303と表記し、それぞれの塩基配列を配列番号15〜39に示した。これらの配列は新規な配列であった。
【0050】
本探索方法により、25種類もの新規な配列を有する癌遺伝子、特に、これまでTEL遺伝子との融合で細胞をトランスフォームすることが報告されたチロシンキナーゼ遺伝子とは異なる、LYN、HCK、FGRおよびTYK2の各チロシンキナーゼのcDNAとの融合DNA、および、従来、TEL遺伝子と融合する遺伝子として報告がないセリン/スレオニン型キナーゼ遺伝子として、ARAF1 cDNAとの融合DNAが、それぞれ癌遺伝子として同定された。このことは、本探索方法が新規な癌遺伝子を同定する方法として、有用性が高いことを示している。図2に、本発明の癌遺伝探索方法の概略を示した。
【0051】
実施例2 同定された癌遺伝子の機能解析
(1)トランスフォーム活性の確認
実施例1で得られた融合DNAから、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと融合した7種類のcDNA(LYN、HCK、FGR、TYK2、SYK、FLT3およびARAF1の各cDNA)ごとにそれぞれ1つ(TEL/LYN-232、TEL/HCK-227、TEL/FGR-221、TEL/SYK-365、TEL/FLT3-605、TEL/TYK2-776およびTEL/ARAF1-303)を選択した。これらの融合DNAを、pHNGAPのSalI-NotIサイト間に組み込んだレトロウイルスベクターを作製し、これらのレトロウイルスベクター各10μgとpCGCGP 10μgとを用いて、実施例1(1)(b)と同様にして、ウイルス上清の取得および32D細胞への遺伝子導入を行った。各融合DNAを導入した32D細胞を、G418を含む培地で培養することによりそれぞれの融合DNAを発現する細胞株を樹立した。これらの細胞株を、mIL3非存在下に培養を行い、サイトカイン非依存性の増殖が見られることを確認した(図4)。したがってこれらの融合DNAは、32D細胞をmIL-3非依存性の細胞にトランスフォームできることが確認された。
【0052】
(2)TELのPNT領域の重要性
(1)で選択した融合DNAのうち、TEL/LYN-232、TEL/SYK-365およびTEL/FLT3-605について、TEL PNTをコードする領域を欠失させた融合DNA(それぞれ以下、ΔTEL/LYN-231、ΔTEL/SYK-365およびΔTEL/FLT3-605とよぶ)の発現用レトロウイルスベクターを、以下のようにして作製した。pHNGAP/FPNTのTEL PNTの大部分にあたる、配列番号41のアミノ酸配列の67-144番目のアミノ酸をコードする領域を欠失させたレトロウイルスベクターpHNGAP/FΔPNTを作製した。TEL/LYN-232、TEL/SYK-365およびTEL/FLT3-605から、それぞれLYN、SYK、FLT3のcDNAにあたるEcoRI-NotI断片を単離し、pHNGAP/FΔPNTのEcoRI-NotI間に挿入することにより、ΔTEL/LYN-231、ΔTEL/SYK-365およびΔTEL/FLT3-605それぞれの発現用レトロウイルスベクターを作製した。(1)と同様にして、これらの発現ベクターを導入した32D細胞を樹立した。これらの細胞株を、mIL3非存在下に培養を行ったところ、これらの細胞ではmIL-3非依存性の増殖が得られなかった(図4)。したがって、融合DNAのTEL PNTをコードする領域が、融合DNAのトランスフォーム能に重要な役割を果たしていることが確認された。
【0053】
(3)融合DNAがコードするポリペプチドの恒常的活性化
次に、融合DNAによる蛋白質の恒常的活性化が生じているかを調べる目的で、(1)で樹立した融合DNAを発現する32D細胞のうち、チロシンキナーゼcDNAとの融合DNAであるTEL/LYN-232、TEL/FGR-221、TEL/SYK-365およびTEL/FLT3-605の各発現細胞をmIL-3非存在下で培養し、リン酸化チロシン特異的抗体であるPY20(ICNバイオケミカル社製)を用いてウエスタンブロット法による解析を行った。その結果、各融合DNAがコードするポリペプチドの、チロシンの恒常的なリン酸化が確認された(図5)。TEL/LYN-232、TEL/SYK-365およびTEL/FLT3-605については、それぞれΔTEL/LYN-231、ΔTEL/SYK-367およびΔTEL/FLT3-604との比較を行った。これらのDNAを発現する32D細胞の細胞破砕液に対して、抗Flag抗体を用いた免疫沈降を行った後、免疫沈降物についてPY20を用いたウェスタンブロットを行い、チロシンの恒常的なリン酸化を検出した。その結果、TEL/LYN-232、TEL/SYK-365およびTEL/FLT3-605それぞれの発現細胞では、チロシンの恒常的リン酸化が検出できたが、ΔTEL/LYN-232、ΔTEL/SYK-365およびΔTEL/FLT3-605それぞれの発現細胞では検出できなかった(図6)。このことから、恒常的リン酸化には蛋白質のオリゴマー形成に関与するPNT領域が重要な役割を果たしていることが確認された。
【0054】
(4)オリゴマー形成
TEL/LYN-232およびTEL/SYK-365については、PNT領域を介した蛋白質のオリゴマー化が生じているか確認する実験を行った。pHNGAP/FPNTのFlagエピトープタグをコードする領域をHAをコードする配列に変え、ネオマイシン耐性遺伝子をブラストサイジン耐性遺伝子に変えたpHBGAP/HPNTを作製した(図1C)。pHBGAP/HPNTに、TEL/LYN-232およびTEL/SYK-365から、それぞれLYNおよびSYKのcDNAにあたるEcoRI-NotI断片を単離し、pHBGAP/HPNTのEcoRI-NotI間に挿入することにより、HAを含むTEL/LYN-232ポリペプチド(以下、HTLともよぶ)およびHAを含むTEL/SYK-365ポリペプチド(以下、HTSともよぶ)それぞれの発現用レトロウイルスベクターを作製した。(1)で樹立したTEL/LYN-232ポリペプチド(Flagエピトープタグを含む、以下FTLともよぶ)発現細胞および(3)で作製したΔTEL/LYN-232ポリペプチド(Flagエピトープタグを含む、以下ΔFTLともよぶ)発現細胞に、上記で作製したHTL発現用レトロウイルスベクターを導入し、G418およびブラストサイジンを含む培地で培養することにより、FTLおよびHTLを共発現する細胞32D/FTL/HTLならびにΔFTLおよびHTLを共発現する細胞32D/ΔFTL/HTLを樹立した。同様に、(1)で樹立したTEL/SYK-365ポリペプチド(Flagエピトープタグを含む、以下FTSともよぶ)を発現する細胞および(3)で作製したΔTEL/SYK-365ポリペプチド(Flagエピトープタグを含む、以下ΔFTSともよぶ)を発現する細胞に、上記で作製したHTS発現用レトロウイルスベクターを導入し、FTSおよびHTSを共発現する細胞32D/FTS/HTSならびにΔFTSおよびHTSを共発現する細胞32D/ΔFTS/HTSを樹立した。
【0055】
それぞれの細胞から、細胞破砕液を調製し、蛋白質間の会合が保たれた条件下で、抗Flag抗体により、Flagエピトープタグを含むFTL、ΔFTL、FTSおよびΔFTSを免疫沈降した後、免疫沈降物について、抗HA抗体を用いたウェスタンブロットを行い、免疫沈降物中のHAを含むポリペプチド(HTLまたはHTS)を検出し、HTLまたはHTSが共沈しているかどうかを調べた。図7に示すようにPNT領域があるFTLおよびFTSでは、それぞれHTLおよびHTSも共沈するのに対し、PNT領域を除いたΔFTLおよびΔFTSの場合はHTLおよびHTSは共沈しなかった。この結果によりTEL/LYN-232ポリペプチドおよびTEL/SYK-365ポリペプチドは、それぞれPNT領域を介してTEL/LYN-232ポリペプチド同士、TEL/SYK-365ポリペプチド同士で会合し、オリゴマー化していることが確認された。
【0056】
実施例3 癌遺伝子発現細胞を用いた、サイトカイン非依存的な細胞増殖を抑制する物質の探索方法
試験化合物を添加した培地およびコントロールとして試験化合物を添加しない培地で、実施例2(1)で樹立した、32D細胞を宿主とする癌遺伝子TEL/LYN-232、TEL/HCK-227、TEL/FGR-221、TEL/SYK-365、TEL/FLT3-605、TEL/TYK2-776およびTEL/ARAF1-303をそれぞれ発現する細胞株ならびに遺伝子を導入していない32D細胞を、96ウェルプレートに、TEL/ARAF1-303発現細胞株は10000細胞/ウェル、他の細胞株は5000細胞/ウェルずつ培養した。培地は10% FCS添加IMDMを用い、遺伝子を導入していない32D細胞ではさらに2 ng/mlのmIL-3を添加した。試験化合物としては、チロシンキナーゼ阻害剤であるAG1295、AG1296およびPP2〔いずれも、カルビオケム(Calbiochem)社製〕を用いた。AG1295およびAG1296はPDGFβRの阻害剤、PP2はSrcファミリーのチロシンキナーゼ阻害剤として知られており、AG1296はFLT3も阻害することが報告されている。各試験化合物の培地中の濃度は、AG1295およびAG1296は0.3、1、3および10μmol/L、PP2は1、3、10および30μmol/Lで行った。それぞれ72時間培養した後の生細胞数を、培地にテトラカラー・ワン(TetraColor ONE、生化学工業株式会社製)を添加して3時間培養を続けた後の培地の450nmの吸光度から測定した。試験化合物を含む培地で培養した場合の各生細胞数を、試験化合物を含まない培地で培養した場合の生細胞数を100%としたときの割合で算出した。各培養条件につき3ウェルづつ培養を行い、結果はそれぞれの平均と標準偏差を用いて表した。
【0057】
その結果、図8〜図10に示すように、AG1295は、ほとんど増殖の抑制を示さなかったが、AG1296はTEL/FLT3-605発現細胞に対してのみ、PP2は、TEL/LYN-232、TEL/HCK-227およびTEL/FGR-221をそれぞれ発現する細胞株に特異的に、濃度依存的な、mIL-3非依存的増殖の抑制を示した。これらの結果は、AG1296がFLT3の阻害作用を有すること、LYN、HCKおよびFGRはSrcファミリー属するチロシンキナーゼであり、PP2がSrcファミリーのチロシンキナーゼに特異的な阻害剤であることと、一致するものであった。32D細胞のIL-3依存的な増殖に対しては、これらの物質では、10μmol/LのAG1296がやや抑制した以外は、ほとんど増殖を抑制しなかった。
【0058】
以上から、種々の物質を試験化合物として上記と同様に測定を行うことにより各細胞株のIL-3非依存的な増殖を抑制する物質、例えば、各細胞株で発現しているキナーゼを阻害する物質を探索できることが確認された。生体内での毒性や副作用の点から、正常細胞の増殖には影響せず、癌細胞特異的に増殖を抑制する物質が、癌の治療薬としては好ましいが、各細胞株のIL-3非依存的な増殖の抑制と、32D細胞のIL-3依存的な増殖の抑制とを比較することにより、癌細胞特異的に増殖を抑制する物質を選択でき、非特異的な細胞毒性を示す物質などを選択からはずすことができる。また、性質が異なるキナーゼを発現する細胞株での結果を比較することにより、各細胞株に特異的にIL-3非依存的な増殖を抑制する物質、例えば、各細胞株で発現しているキナーゼを特異的に阻害する物質を選択できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAとcDNAとの融合DNAのライブラリーから、癌遺伝子を探索することが可能である。また、探索の結果得られた癌遺伝子を導入した細胞を用いて、キナーゼ阻害剤等の癌の治療薬に有用な物質をスクリーニングすることが可能である。
【0060】
「配列表フリーテキスト」
配列番号1−発明者:直江知樹;恵美宣彦;安部明弘
配列番号15−TEL/LYN-179
配列番号16−TEL/LYN-189
配列番号17−TEL/LYN-191
配列番号18−TEL/LYN-199
配列番号19−TEL/LYN-200
配列番号20−TEL/LYN-205
配列番号21−TEL/LYN-213
配列番号22−TEL/LYN-220
配列番号23−TEL/LYN-225
配列番号24−TEL/LYN-228
配列番号25−TEL/LYN-232
配列番号26−TEL/LYN-233
配列番号27−TEL/HCK-47
配列番号28−TEL/HCK-55
配列番号29−TEL/HCK-102
配列番号30−TEL/HCK-194
配列番号31−TEL/HCK-200
配列番号32−TEL/HCK-227
配列番号33−TEL/FGR-221
配列番号34−TEL/SYK-115
配列番号35−TEL/SYK-365
配列番号36−TEL/FLT3-602
配列番号37−TEL/FLT3-605
配列番号38−TEL/TYK2-776
配列番号39−TEL/ARAF1-303
配列番号42−配列番号41のC末にEcoRIアダプター由来の5アミノ酸が付加したアミノ酸配列
配列番号43−GAPDHプロモーター用のフォワードプライマーGAPDHPRF
配列番号44−GAPDHプロモーター用のリバースプライマーGAPDHPRR
配列番号45−FLAGSALF
配列番号46−FLAGHINDR
配列番号47−TELHINDATG
配列番号48−TELECO486R
配列番号49−pHNGAP/FPNTのSalIサイトとNotIサイト間の塩基配列
配列番号50−NotI T18プライマー
配列番号51−EcoRIアダプター
配列番号52−EcoRIアダプター
配列番号53−T3プライマー
配列番号54−T7プライマー
配列番号55−Flagエピトープタグ
配列番号56−HAエピトープタグ
【0061】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いた各レトロウイルスベクターの5'LTRと3' LTRの間の構造を示す。AはcDNAライブラリーの作製に用いたベクター、Bは本発明の方法の有効性の検証に用いたベクター、Cは癌遺伝子の機能解析に用いたベクターである。
【図2】 本発明の癌遺伝子の探索方法の概略を示す。
【図3】 本発明の方法により単離された癌遺伝子において、TEL PNTを含むポリペプチドをコードするDNAと融合していた相手遺伝子の構造の模式図と融合部位のアミノ酸の位置を示す。
【図4】 本発明で単離された癌遺伝子、TEL PNTをコードする領域を除いた癌遺伝子を発現する32D細胞のサイカイン非依存性の増殖を示す。横軸は培養時間、縦軸は、生細胞数(×105/mL)を示す。●:32D細胞(遺伝子導入なし)mIL-3添加、○(実線):32D細胞(遺伝子導入なし)mIL-3非添加、黒四角:TEL-LYN/232、○(点線):ΔTEL-LYN/232、黒三角:TEL/SYK-365、△(点線):ΔTEL/SYK-365、◆:TEL/FLT3-605、◇(点線):ΔTEL/FLT3-605、×:TEL-HCK/227、*:TEL/FGR-221、+:TEL/TYK2-776、−:TEL/ARAF1-303の各遺伝子を発現する32D細胞での結果を示す。
【図5】 本発明で単離された癌遺伝子がコードするポリペプチドの恒常的活性化を示す。C:32D細胞(遺伝子導入なし)、レーン1:TEL-LYN/232、レーン2:TEL/SYK-365、レーン3:TEL/FGR-221、レーン4:TEL/FLT3-605の各遺伝子を発現する32D細胞でのウェスタンブロットで、上段は抗Flag抗体、下段は抗リン酸化チロシン抗体PY20を用いた結果を示す。
【図6】 単離された癌遺伝子がコードするポリペプチドの恒常的活性化がTEL PNT領域に依存的であることを示す。左から32D細胞(遺伝子導入なし)、ΔTEL-LYN/232、TEL-LYN/232、ΔTEL/SYK-365、TEL/SYK-365、ΔTEL/FLT3-605、TEL/FLT3-605の各遺伝子を発現する32D細胞の抗Flag抗体での免疫沈降物に対するウェスタンブロットを示す。上段は抗リン酸化チロシン抗体PY20、下段は抗Flag抗体を用いた結果を示す。
【図7】 単離された癌遺伝子がコードするポリペプチドが細胞内でオリゴマー形成することを示す。左から32D細胞(遺伝子導入なし)、FTL、ΔFTLおよびHTL、FTLおよびHTL、FTS、ΔFTSおよびHTS、FTSおよびHTSをそれぞれ発現する32D細胞の抗Flag抗体での免疫沈降物に対するウェスタンブロットを示す。上段は抗HAエピトープ抗体、下段は抗Flag抗体を用いた結果を示す。
【図8】 チロシンキナーゼ阻害剤AG1295による、本発明で単離された癌遺伝子を発現する32D細胞の増殖阻害を示す。横軸はAG1295の濃度、縦軸は、阻害剤を添加しない場合の生細胞数に対する、それぞれの濃度での阻害剤添加時の生細胞数の割合(%)を示す。●:32D細胞(遺伝子導入なし)、○:TEL-LYN/232、□:TEL-HCK/227、◇:TEL/FGR-221、△:TEL/SYK-365、×:TEL/FLT3-605、*:TEL/TYK2-776、+:TEL/ARAF1-303の各遺伝子を発現する32D細胞の結果を示す。
【図9】 チロシンキナーゼ阻害剤AG1296による、本発明で単離された癌遺伝子を発現する32D細胞の増殖阻害を示す。横軸はAG1296の濃度、縦軸は、阻害剤を添加しない場合の生細胞数に対する、それぞれの濃度での阻害剤添加時の生細胞数の割合(%)を示す。●:32D細胞(遺伝子導入なし)、○:TEL-LYN/232、□:TEL-HCK/227、◇:TEL/FGR-221、△:TEL/SYK-365、×:TEL/FLT3-605、*:TEL/TYK2-776、+:TEL/ARAF1-303の各遺伝子を発現する32D細胞の結果を示す
【図10】 チロシンキナーゼ阻害剤PP2による、本発明で単離された癌遺伝子を発現する32D細胞の増殖阻害を示す。横軸はPP2の濃度、縦軸は、阻害剤を添加しない場合の生細胞数に対する、それぞれの濃度での阻害剤添加時の生細胞数の割合(%)を示す。●:32D細胞(遺伝子導入なし)、○:TEL-LYN/232、□:TEL-HCK/227、◇:TEL/FGR-221、△:TEL/SYK-365、×:TEL/FLT3-605、*:TEL/TYK2-776、+:TEL/ARAF1-303の各遺伝子を発現する32D細胞の結果を示す
【符号の説明】
CMV:CMVプロモーター
LTR:MoMLV LTR
NEO:ネオマイシン耐性遺伝子
GAP:GAPDHプロモーター
FET:flagエピトープタグをコードするDNA
gag-pol:MoMLV gagおよびpol遺伝子
pA:ポリアデニル化シグナル
TEL:TELのPNT領域を含むN末153アミノ酸をコードするDNA
RFP:RFPプロモーター
RSV:RSVプロモーター
BSD:ブラストサイジン耐性遺伝子
HA:HAエピトープタグをコードするDNA
SH2:Srcホモロジー領域2ドメイン
SH3:Srcホモロジー領域3ドメイン
TM:膜貫通ドメイン
B4:バンド4.1相同領域
CR:保存領域

Claims (3)

  1. 以下の(a)〜(d)の工程を含む、癌遺伝子の探索方法。
    (a)ベクターのプロモーターの下流に、TELのPNT領域をコードするDNAとcDNAとの融合DNAが連結した構造を有するcDNAライブラリーを作製する
    (b)宿主の細胞に(a)で作製したcDNAライブラリーを導入し、TELのPNT領域をコードするDNAとcDNAとの融合DNAを発現させる
    (c)cDNAライブラリーを導入した(b)の細胞から、トランスフォームした細胞を選択する
    (d)(c)で選択された細胞に導入された融合DNAの塩基配列を解析し、該融合DNAを癌遺伝子として同定する
  2. (b)の工程において、宿主の細胞がサイトカイン依存性の細胞であり、かつ(c)の工程において、サイトカイン非依存性の増殖を示す細胞を、トランスフォームした細胞として選択する、請求項1に記載の方法。
  3. (a)の工程において、プロモーターが、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターである請求項1または2に記載の方法。
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