JP2006223952A - 有害物質捕捉材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 充分な透水性・吸着性を備えて良好な液体浄化能を発揮するとともにコストの低廉な有害物質捕捉材を提供する。
【解決手段】 短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部の水を混練したものを所定形状に成型・固化してなり、空隙率が40〜50%の有害物質捕捉材とした。
【選択図】 図4

Description

本発明は、有害物質捕捉材およびその製造方法に関し、殊に、木質細片をセメント系バインダで所定形状にした成型体であって、液体に接触させることで含有する有害物質、特に有害重金属を吸着・捕捉して浄化する、有害物質捕捉材およびその製造方法に関する。
従来より、活性炭など所定のイオンに対し吸着能を発揮する小片を所定のバインダで結合させてフィルタに成型したものに、重金属などの有害物質を含む液体を通過させることで吸着・捕捉してこれを浄化する技術が知られており、廃液の通路等における濾過材或いは構成材を兼ねたものとして、広く用いられている。
例えば、特開平8−295578号公報や特開平8−325076号公報には、炭化物を混入した多孔質の水質浄化用コンクリートブロックが記載され、また、特開平11−278958号公報には、アルミナセメントに木質系炭化物および活性アルミナを含有させて成型し、上記コンクリートブロックよりも強度と耐久性を増したコンクリート成型体が記載されている。また、合成樹脂に所定のイオンに対する吸着能を発揮する官能基を導入したビーズ状のものを、所定形状に成型して吸着材としたものも、よく知られている。
一方、炭化物等からなる吸着材を混入しないコンクリート系の液体浄化用成型体も知られている。例えば特開2004−305910号公報には、コンクリート塊からの副産微粉を主成分として球状または管状に成型したものが記載されている。これは、副産微粉が加工により多孔質になって重金属を吸着しやすくなるとともにイオン結合により吸着状態を堅固に維持するため、高い有害物質捕捉能を発揮するものである。
ところで、上述した各有害物質捕捉材は構造材も兼ねており、成型体の強度・耐久性を確保する必要性から空隙率がさほど大きくはないため、透水性が通常の浄水フィルタ等と比べて不充分であり、主として成型体の表面付近で有害物質を吸着・捕捉することを想定したものである。
そのため、これらは単位面積当たりの液体通過量が少なく単位体積当たりの有害物質吸着能も高くはないため、廃液流量が比較的大きな場合にはこれを充分に浄化することが困難である。そのため、有害物質を含む比較的大量の廃水を短時間に処理するためには、大量の有害物質捕捉材および大きな処理容積を要して処理コストが割高になってしまう、という問題がある。
この問題に対し、例えば、特開平5−270937号公報には空隙率を高めても強度が低下しないセラミックフィルタが記載されており、特開2003−10614号公報には活性炭成分に特定のバインダを混合の上成型・焼成してなり、所定レベルの透水性を備えた多孔質体からなる浄水器用フィルタが記載されている。これらは、吸着材に特定のバインダを添加・成形し所定条件で焼成することにより、適度な空隙を形成するようにしたものである。
斯かるフィルタは所定レベルの透水性を有していることから、単位面積当たり比較的大量の液体を短時間で通過させることができる。しかしながら、これらは吸着材やバインダが高価であったり、作成に際し焼成工程を要して工程数が多くなったりするため、製作コストが高騰して広く普及しにくいという問題がある。
特開平8−295578号公報 特開平8−325076号公報 特開平11−278958号公報 特開2004−305910号公報 特開平5−270937号公報 2003−10614号公報
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、充分な透水性・吸着性を備えて良好な液体浄化能を発揮するとともにコストの低廉な有害物質捕捉材を提供することを課題とする。
そこで、本発明は、短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部の水を混練したものを所定形状に成型・固化してなり、空隙率が40〜50%の有害物質捕捉材とした。
このように、木質細片に通常のセメントよりも粉末度の高いセメント系バインダの比較的少量と水とを混練して成型することにより、バインダが木質細片の表面に薄膜状態となって、これらを結合・固化して多孔質体を形成するものであるが、斯かる有害物質捕捉材は、空隙率が高いために透水性に優れるとともにバインダ表面で形成される空隙の合計表面積が極めて大きなものとなり、所定の有害物質イオンに対する優れた吸着能を発揮するものとなる。
従って、斯かる比較的安価な材料からなる有害物質捕捉材は、液体浄化フィルタとして低コストで高度な液体浄化能を発揮するものとなり、粉末度が高く木質細片表面に対し短時間で強力な接着力を発揮し少量でも結合力の強いセメント系バインダを用いて、比重の軽い木質細片を結合させたことで、有害物質捕捉材として比重の極めて軽いものとなることに加え、短時間で固化して優れた強度・耐久性を備えたものとなる。
また、上述した有害物質捕捉材において、木質細片は平均粒径1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が木質細片全体に対し25〜35体積%含まれたものとする。これにより、細長い木質細長片が絡み合って間隙の連通性が高くなるとともに補強繊維としても機能するため、高い透水性を発揮しながら充分な強度・耐久性を発揮するものとなる。
さらに、上述した有害物質捕捉材に用いるセメント系バインダは、その組成においてポルトランドセメントが90体積%以上を占めるものとすれば、安価で入手しやすく比較的短時間で固化するポルトランドセメントをバインダに用いたことで低コスト且つ短期間で製造できるものとなる。そして、このセメント系バインダとして、ポルトランドセメントに所定の添加剤を添加することにより得たセメント系土壌硬化剤を用いるものとすれば、有機物にも親和性の高い土壌硬化剤からなるバインダ自体が木質細片表面に堅固に結合するため、少ないバインダ量でも固化後の強度・耐久性が一層優れたものとなる。
さらにまた、上述した有害物質捕捉材は、木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部の水を混練したものを型枠に投入した後、振動プレスを所定時間与えて成型し、形状が安定してから型枠を取り外して所定期間被覆養生するものとした、有害物質捕捉材製造方法により製造されるものとすれば、比較的簡易な工程により低廉な製造コストでムラの少ない均一な多孔質体を得ることができ、均一な透水性と強度を備えたものとなる。
加えて、短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものをブロック状に成型・固化してなり、空隙率が25〜35%の屋外用構造材を兼ねた有害物質捕捉材とすれば、雨水などで運ばれた有害物質を捕捉する有害物質捕捉能を保持しながら、細骨材により一層強度・耐久性に優れたものとなり、空隙部および浸透性を備えたセメント系バインダの薄膜内部の木質細片が保水材として機能し、地表の乾燥を回避するとともに気化熱による冷却効果を発揮することもできる。
更に加えて、この屋外用構造材を兼ねた有害物質捕捉材において、木質細片は平均粒径が1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が木質細片全体に対し25〜35体積%含まれたものとすれば、強度・耐久性に極めて優れるとともに透水性に優れたものとなる。
木質細片をセメント系バインダの比較的少量で成型・固化させて有害物質捕捉材とした本発明によると、空隙率の高い多孔性材料となって良好な透水能および吸着能を備えたものとなり、優れた液体浄化能を発揮するものである。また、安価で入手容易な木質細片を粉末度の高いセメント系バインダで結合させて成型したことで、強度・耐久性に優れるとともに製作コストおよび維持コストの低廉な有害物質捕捉材として提供することができるものである。
図面を参照して、本発明における第一の実施の形態を説明すると、図1は本実施の形態の有害物質捕捉材である、液体浄化フィルタの製造方法を説明するためのフローチャートを示しており、図2はこの液体浄化フィルタを用いた重金属含有廃水浄化システム1Aのシステム構成図であって、主として重金属を含む工場廃水を浄化して河川に放流するまでの手順を示したものである。
尚、本発明において、空隙率とは気中時空隙率を指すとともに、試料への湿潤時間を5分程度の短時間とした場合を指す。従って、空隙率測定において試料を浸水させた場合、最初の短時間で木質細片間の空隙に急速に吸水してから、その後バインダの薄膜を介して徐々に木質細片内部に水が浸透するものであるが、本発明においては最初の短時間で吸水した分を吸水量としたものである。即ち、有害物質捕捉材において木質細片間で形成される空隙容積の全体容積に対する割合を指しており、木質細片内の細胞壁内や細管等で形成される微小空隙まで含むものではない。また、本発明における比表面積とは、JISのセメントの物理試験方法のうち、比表面積試験:R5201による比表面積を指す。
先ず、本実施の形態の有害物質捕捉フィルタの製造方法を、図1のフローチャートを参照しながら説明する。例えば、平板状の工場廃水浄化用フィルタとする場合、平均粒径1〜3mmのおが屑状の木質細片65〜75体積部と、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された細長い木質細長片25〜35体積部とで合計100体積部前後とした木質細片を、ミキサに投入しこれに比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部を加える。斯かるセメント系バインダは、所謂超早強セメント等や、所定のポルトランドセメント系土壌硬化剤をそのまま用いることができる。
そして、ミキサを回して撹拌混合しながら15〜20体積部の水を加える。水は、天候により変動する材料の湿度に応じて量を調整し、適度な粘性を持つまで混練しながら注水する。例えば、木質細片26リットルにセメント系バインダ7.8リットルを加えた場合、通常の湿度であれば注水量は4.5リットル程度となる。
そして、充分に混練してから型枠に投入し、振動プレスを所定時間実施してムラのないように平板状に成型する。尚、この振動プレスは通常10秒程度で充分である。このように振動を与えることで、成型・固化後に均一な多孔質体となり均一な透水性および強度を備えたものとなる。その後、形状が安定してから型枠を取り外し、所定期間被覆養生することで完成する。
このように比較的簡易な手順で完成した液体浄化フィルタは、粉末度の高いセメント系バインダが木質細片表面に強力に接着して薄膜状に覆いながら木質細片同士を堅固に結合させるため、強度・耐久性に優れたものとなる。また、空隙率が40〜50%と極めて高い多孔質体となり、しかも繊維状に細長い木質細片が立体的に絡み合い、空隙の連通性が高いものとなって極めて透水性に優れたものとなる。また、木質細片を覆って結合させるバインダに粉末度の高いセメント系バインダを比較的少量用いたことで、これが木質細片表面に対し極めて密着度の高い薄膜となるため、その膜内外において浸透性を有して木質細片内側と空隙側とで水分が出入りすることが、有害物質イオンに対する吸着能を一層増加させるものと推定される。
上述したように、本実施の形態に係る液体浄化フィルタは、通常は廃棄にコストを要してしまう木質廃材を細片化するだけで利用できるとともに、入手しやすく安価なセメントを主成分としたバインダを用いて、極めて簡単な手順で製造することができるため、重金属等の有害物質捕捉材として低コストで極めて高度な液体浄化能を発揮させることができる。また、比重の軽い木質細片を粉末度が高く結合力の強いセメント系バインダで結合させたことに加え、補強材にもなる木質細長片を混練したことで、比重が軽くしかも強度・耐久性に優れたものとなる。
本実施の形態の液体浄化フィルタを用いた、重金属含有廃水浄化システム1Aのシステム構成図である図2を参照して、先ず、工場で生成された重金属含有廃水は、前述した製造方法により製造された液体浄化フィルタ21を配設した第一浄化槽2上部のフィルタ水槽20に入る。フィルタ水槽20底部側に底壁として配設された液体浄化フィルタ21を廃水が通過する際に重金属が吸着され、濾過された廃水が底部に溜まる。
尚、斯かる重金属の吸着は、主として液体浄化フィルタ21におけるバインダ薄膜と重金属イオンとのイオン結合であって堅固なものと考えられ、一度吸着された重金属が再び溶出することは殆どない。そして、第一浄化槽2の底部に溜まった廃水は、ポンプで汲み上げられ、水質検査を実施して重金属が所定濃度以下であれば第二浄化槽3に送られ、所定濃度以上であれば第一浄化槽2で再度浄化処理を受ける。
第二水槽3に送られた廃水は、炭フィルタ31が配設されたフィルタ水槽30に入り、有機物等の汚染物質を除去されて底部に溜まる。これが再度水質検査を受けて汚染物質が所定濃度以下であれば、次のpH調整槽4に送られ、所定濃度以上であれば再度第二浄化槽3で再度浄化を受ける。
第二浄化槽3を通過してpH調整槽4に送られた廃水は、有害物質が吸着され浄化された状態となってはいるものの、液体浄化フィルタ21を通過する廃水はアルカリ化されるため、最後にpH調整槽4でpHを所定値まで下げる必要がある。そして、pHが調整され環境に悪影響を与えない状態とされた廃水はそのまま河川等に放流される。
このように、本実施の形態の液体浄化フィルタ21は、重金属吸着フィルタとして用いた場合に、透水性および重金属吸着能に優れたものとなり、重金属を含有する工場廃水を比較的小規模の浄水設備でも効率的に浄化することができる。従って、液体浄化フィルタ21自体の製造コストが低廉であることに加え、廃水浄化設備の建設コストも低廉で済み、さらにはフィルタ材として強度・耐久性に優れているとともに長期間に亘って浄化能を発揮するため、メンテナンスコストも低廉に抑えることができる。
次に、本発における第二の実施の形態である、屋外用構造材を兼ねた有害物質捕捉ブロックについて説明する。この有害物質捕捉ブロックは、上述した木質細片とセメント系バインダとからなる混合物に、さらに細骨材を加えて混練しブロック状に成型してなるものである。
その製造方法は、上述した第一の実施の形態の液体浄化フィルタ21とほぼ同様であり、これに使用する材料に補強用の細骨材として砂25〜35体積部を加えて混練したものを、ブロック状の型枠に投入して振動プレスを加え、上記同様の手順で成型・固化させることで有害物質捕捉ブロックとなる。尚、砂は平均粒径が1mm前後で最大粒径が9mm未満程度のセメントに通常混入される一般的なものでよい。
斯かる有害物質捕捉ブロックは、細骨材が混入されたことで、空隙率が25〜35%となって上述した液体浄化フィルタ21よりもやや透水性が落ちるものとなるが、反面、強度・耐久性に富むものとなるため、屋外用の構造材を兼ねた有害物質捕捉材として多くの用途がある。或いは、平板ブロック状に成型したものを当初は廃液浄化施設で浄化フィルタとして使用し、液体浄化能が所定レベル以下に下がったとき、これを廃棄する代わりに屋外用の構造材として再利用するものとしてもよい。
例えば、25cm×25cm×6cm程度の平板状に成型して屋外歩道用の舗装材に用いれば、雨水などで流出した有害物質を捕捉することに加え、水吸収力および保水能力に優れて水溜まりの発生を防ぐとともに、雨の少ない乾燥時には地表の乾燥を防いで植物の育成に役立つものとなる。或いは、建築物の屋上にこれを配設することで気温上昇時に水分の蒸発による気化熱で冷却効果を発揮することができるものとなる。
以下に、実施例により本発明の有害物質捕捉材についてさらに詳細に説明する。本発明による有害物質捕捉フィルタの有害物質除去能および透水性等について、以下の条件により実験を行い、検証した。
有害物質捕捉材として、直径25cmで4つの異なる厚さの円盤状に作成した4種類の液体浄化フィルタを用意し、それぞれ内径25cm深さ30cmの筒体底部に配設した。そして、図5の実験装置の縦断面図に示すように、これらをそれぞれ水槽の底面から所定高さに支持させ、その上方から水(地下水)にカドミウムを0.119mg/リットル含有させた試料水を連続注水しながら各フィルタ上面から所定高さに水面を維持するようにして濾過させ、それぞれ試料水が所定量通過して濾過されるまでの時間と、その濾過液におけるカドミウム濃度・吸着率・pHを測定した。
液体浄化フィルタの作成は、木質細片として、3×25mmに細断された細長片8リットルおよび平均粒径1〜3mmのおが屑状の細片18リットル、に対し、セメント系バインダとしてポルトランドセメント系の土壌硬化剤(トラスィル:登録商標、銘柄:R、株式会社松村綜合化学研究所製)を7.8リットル、および水4.5リットルを用いて作成した。尚、使用した木質細片は、群馬県産の杉・檜間伐材のケンタ部分(ミミスリ材、皮を含む)を利用した。尚、この土壌硬化剤の組成は、パンフレットによるとSiO:23%、CaO:60%、Al:5%、Fe:2%、SO:2.2%、MgO:2%、不溶残分:0.3%、その他残り:4.5%、強熱減量1%である。
作成手順として、上記木質細片、および土壌硬化剤をミキサ内に投入し、充分に撹拌混合を行いながら注水した。充分に練り混ぜてから、円盤状に成型するための型枠に投入し、下方から振動を1秒間与えて成型し、さらに上方から振動プレスを10秒間与え、形状が安定した所定時間後に型枠を取り外して所定期間被覆養生させて作成した。作成された液体浄化フィルタは、図3の表面の状態を示す外観写真および図4の断面の状態を示す外観写真から分かるように、空隙率が約45%の空隙に富む多孔質材料となり、極めて比重が軽くしかも堅固なものである。
実験の条件として、液体浄化フィルタの厚さを5cm、10cm、15cm、20cmとし、注水する試料水のフィルタ上面からの維持高さを5cmおよび10cmとなるようにして、それぞれ試料水5リットルと10リットルの通過時間・カドミウム吸着量・吸着率・pH値を測定した。尚、測定装置として偏光ゼーマン原子吸光分光光度計(品番Z−6100、日立製)を用い、測定方法として検量線法を用いた。以下に実験結果をまとめた表を示すとともに、実験結果による液体浄化フィルタの厚さと試料水の通過時間の関係を示すグラフを図6に示す。
以上の実験結果に示すように、フィルタ濾過水のカドミウム濃度は、飲料水におけるカドミウムの環境基準0.01mg/リットルを総てクリアしており、本発明の液体浄化フィルタは、いずれの条件においても良好なカドミウム吸着能を発揮し総ての厚さで吸着率97%以上を示して有害物質捕捉材として良好な吸着能を備えていることが検証された。一方、図6のグラフに示すようにフィルタの厚さと試料水通過時間は相関関係にあり、厚さが増すごとに通過時間を要することが分かり、また、フィルタ上の水の高さ、即ちフィルタにかかる水圧が高い程、通過時間は短くなることが分かった。
従って、液体浄化フィルタとして用いる場合、例えば5cm程度の薄いものでも充分な有害物質吸着能を発揮しながら大量の液体を浄化する点で有利と考えられる。しかし、薄いフィルタほど重金属イオンと結合する官能基が短期間で飽和するとともにフィルタ面積当たりの耐圧性が低くなると予想されるため、使用目的ごとに最適なフィルタ形状を決定する必要があると考えられる。尚、この実験において厚さ5cmの液体浄化フィルタを底板にして、その上に10cmの高さに維持するように連続注水しても、フィルタが破損することはなかった。
以上述べたように、本実施例における液体浄化フィルタは、直径25cmで厚さ5cm〜20cmに成型したことで有害重金属であるカドミウムに対して充分な吸着能を示すとともに高い透水性を発揮し、比較的大量の試料水を処理することができた。従って、本発明の有害物質捕捉材は、重金属等の有害物質浄化フィルタとして極めて有用なものであると考えられる。また、斯かる重金属に対する吸着能は、主としてプラスイオンに対する結合力によるものと推定されるため、プラスイオンであれば重金属以外の有害物質を含んだ液体の浄化フィルタとしても有用であると考えられる。
尚、本発明に係る有害物質捕捉材の開発にあたり、本願発明者らは木質細片について様々な形状・サイズ・量を用い、また、セメント系バインダについて様々な粉末度のものを様々な割合で用いて、成型後の透水性、有害物質吸着性、強度、耐久性について試験した。その結果、上述の解決手段に示した各構成がこれらの観点において優れていたことから採用したものである。また、セメント系バインダとしてポルトランドセメント系土壌硬化剤を使用した場合に、同等の比表面積の早強型ポルトランドセメントよりも強度が増したことから、これを実施例において採用したものである。
即ち、木質細片の短径が1mm未満になると空隙率が不充分となって透水性が大きく低下し、5mmを超えると空隙部分におけるバインダ表面の合計表面積が不充分となって吸着能が急に低下したからである。また、細長い形状の木質細長片を木質細片全体に対し25〜35体積%としたのは、25体積%未満で空隙率が大きく低下し、35体積%を超えると水を通しすぎて吸着能が急に低下するからである。さらに、セメント系バインダは25体積部未満になると結合力が大きくに低下し、35体積部を超えると空隙率が大きく低下し、また、比表面積が5000cm/g未満では木質細片同士の結合力が急に低下して強度・耐久性が不充分となったからである。一方、ポルトランドセメント系土壌硬化剤は、有機物を含む土壌を堅固に固化させる作用に優れている点が、木質細片表面への接着力の強さに影響したものと推定される。
本発明の第一の実施の形態における液体浄化フィルタの製造方法を示すフローチャート。 図1の製造方法により製造された液体浄化フィルタを用いた重金属含有廃水処理システムのシステム構成図。 本発明の実施例において作成した液体浄化フィルタの表面の状態を示す外観写真。 図3の液体浄化フィルタの断面の状態を示す外観写真。 本発明の実施例における実験装置を示す縦断面図。 本発明の実施例における実験結果より求めたフィルタ厚さと液体通過時間との相関を示すグラフ。
符号の説明
1A 重金属含有廃水浄化システム、2 第一浄化槽、3 第二浄化槽、4 pH調整槽、20,30 フィルタ水槽、21 液体浄化フィルタ、31 炭フィルタ

Claims (7)

  1. 短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部の水を混練したものを所定形状に成型・固化してなり、空隙率が40〜50%の有害物質捕捉材。
  2. 前記木質細片は、平均粒径が1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が前記木質細片全体に対し25〜35体積%含まれていることを特徴とする、請求項1に記載した有害物質捕捉材。
  3. 前記セメント系バインダは、その組成においてポルトランドセメントが90体積%を占めていることを特徴とする、請求項1または2に記載した有害物質捕捉材。
  4. 請求項3に記載した有害物質捕捉剤において、前記セメント系バインダがポルトランドセメントに所定の添加剤を添加することにより得たセメント系土壌硬化剤であることを特徴とする有害物質捕捉材。
  5. 木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び15〜20体積部の水を混練したものを型枠に投入した後、振動プレスを所定時間与えて成型し、形状が安定してから型枠を取り外して所定期間被覆養生して製造するものとした、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した有害物質捕捉材の製造方法。
  6. 短径が1mm〜5mmの木質細片100体積部に対し、比表面積5000cm/g以上の粉末度を有するセメント系バインダ25〜35体積部及び細骨材として砂25〜35体積部、及び20〜25体積部の水を混練したものをブロック状に成型・固化してなり、空隙率が25〜35%の屋外用構造材を兼ねた有害物質捕捉材。
  7. 請求項6に記載した有害物質捕捉材において、前記木質細片が、平均粒径が1〜3mmのおが屑状の木質細片中に、短径1〜4mm、長径10〜30mmに細断された木質細長片が前記木質細片全体に対し25〜35体積%含まれていることを特徴とする有害物質捕捉材。




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