JP2006221815A - 薄膜磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気ヘッドスライダの磁気抵抗効果素子(MR)素子の出力特性を向上するためにMR素子高さを±0.020μm以下の精度で加工すること。
【解決手段】2枚の板ばね26にて垂直変位する複数の上下軸27と、アダプタ20を介して上下軸27に個別に研磨荷重を与える複数の荷重付加機構19の組を、研磨ヘッド位置決め機構16に所定のピッチで配列固定し、個々の上下軸27の下端部に粘着性弾性体29を介して磁気ヘッドスライダ1を個別に保持させて研磨定盤15に押圧し、研磨加工中にインプロセスで各磁気ヘッドスライダ1のMR素子の抵抗値を抵抗検知用回路基板31にて検知しながら個別に研磨荷重を制御する。これにより、MR素子の素子高さ精度±0.010μm以下を実現することが可能になり、MRヘッドの再生出力が安定するとともに、MR製造プロセスの歩留りを向上することができる。
【選択図】図10

Description

本発明は、再生素子として磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッドに係わり、特に、磁気抵抗効果素子の素子高さを高精度に制御するための薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
近年、磁気ディスク装置においては、小型・大容量化が進んでおり、現在3.5インチと2.5インチサイズのディスクを用いた小型磁気ディスク装置が主流になっている。このような小型ディスク装置では、ディスクの回転速度が遅いため、再生出力がディスク速度に依存する磁気誘導型ヘッドでは、再生出力の低下が問題になる。
これに対し、磁界の変化によって抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子を用いた磁気抵抗効果型ヘッドでは、再生出力がディスク速度に依存しないため、小型磁気ディスク装置においても高い再生出力を得ることができる。また、磁気抵抗効果型ヘッドでは、高密度化に伴う狭トラック化に対しても磁気誘導型磁気ヘッドと比べて高い再生出力を得られることから、小型化・大容量化に適した磁気ヘッドであると考えられている。磁気抵抗効果型ヘッドには、MR(Magneto Resistive)素子を用いたMRヘッドとGMR(Giant Magneto Resistive)素子を用いたGMRヘッドとTMR(Tunneling Magneto Resistive)素子を用いたTMRヘッドがある。ここでは、上記3種類のヘッドをまとめてMRヘッドと呼ぶ。
一方、MRヘッドでは、磁界の変化に起因するMR素子の抵抗値変化を検出するため、磁気ヘッドスライダのディスクに対向する面(以下、浮上面と呼ぶ)にMR素子を露出させて使用する構造が最も再生効率が高い。浮上面にMR素子が露出する露出型MRヘッドでは、浮上面加工時にMR素子の一部を研磨加工することにより、浮上面にMR素子端部を露出させている。そして、MR素子の浮上面と直角方向の寸法をMR素子高さと呼び、このMR素子高さは研磨加工において寸法を制御している。MRヘッドでは、このMR素子高さによって、再生出力が変化するため、MR素子高さがばらつくと、再生出力が変動するという問題が生じる。したがって、MRヘッドの再生出力変動を抑制するためには、研磨加工工程においてMR素子高さを高精度に寸法制御することが必要となる。
このMR素子高さは、その寸法を小さくすることで感度が高くなることから、年々寸法が小さくなっている。現在、MR素子高さは0.1〜0.4μmになっており、面記録密度100Gbit/in2 以上の磁気ディスク装置に搭載するMRヘッドでは、0.1μm以下になると考えられる。これにともない、MR素子高さの加工精度の要求値も年々高精度化する傾向にあり、面記録密度100Gbit/in2以上の磁気ディスク装置に搭載するMRヘッドでは、±0.02μm以下の加工精度が要求されると考えられる。
MR素子高さの制御研磨方法としては、特開昭63−191570号公報(特許文献1)に記載されているように、素子の形成工程においてMR素子とは別に形成してある測定用のパターン(抵抗検知素子と呼ぶ)の抵抗値を測定し、測定した抵抗値をMR素子高さに換算することで研磨加工中のMR素子高さをインプロセスでモニタリングして寸法を制御する方法が一般的である。制御方法としては、ロウバー内に形成した数十ポイントの抵抗検知素子の抵抗値から換算したMR素子高さを2次曲線もしくは4次曲線で近似し、この近似曲線の傾き成分、2次曲がり成分、うねり成分が小さくなるように研磨加工中にロウバーに加える荷重を制御することで、ロウバー内のMR素子高さを制御している。
また、MRヘッドの製造プロセスとしては、MR素子高さを主に制御する素子高さ制御研磨工程と、主に浮上面の平面度・表面粗さ・加工段差を低減するために行われるバータッチラップ工程の2工程で浮上面を研磨する方法が一般的である。バータッチラップ工程としては、特開平5−298646号公報(特許文献2)に記載されているように弾性体を介してロウバーを治具に接着することで、ロウバーを研磨定盤の表面に密着させ、定盤の形状を浮上面に転写する方法が代表的である。
特開昭63−191570号公報 特開平5−298646号公報
上記説明した現状のMRヘッドの製造プロセスでは、下記の原因によりMR素子高さの加工精度に誤差が生じる。
(1)ウエハ上にMR素子と抵抗検知素子を形成する際に使用する露光マスクの形成誤差
(2)ウエハ上にMR素子と抵抗検知素子を形成する際の露光工程の誤差
(3)抵抗検知素子とMR素子が位置的に離れていることから生じる誤差
(4)素子高さ制御研磨工程において補正しきれないロウバー内のMR素子高さ分布の傾き成分・2次曲がり成分・うねり成分によって生じる誤差
(5)抵抗検知素子の抵抗値をMR素子高さに換算する際の誤差
(6)抵抗検知素子の抵抗値または抵抗値換算MR素子高さが所定の値に達した時に加工を終了する際の停止寸法誤差
(7)バータッチラップ工程において発生する加工量のばらつき
従来の素子高さ制御研磨工程とバータッチラップ工程から成るMRヘッド製造プロセスでは、MR素子高さに対して上記(1)〜(7)の7項目の誤差が生じるため、MR素子高さ精度±0.02μm以下を満足することは非常に困難である。
本発明の目的は、MR素子高さの誤差要因を最小にすることにより、磁気ヘッドスライダにおけるMR素子高さを高精度に加工するための研磨加工技術を提供することにある。
本発明の他の目的は、MR素子高さが高精度に加工された磁気ヘッドスライダを高い歩留りで製造することにある。
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁気抵抗効果素子を再生素子に用いた磁気ヘッドスライダの磁気記録媒体に対向する浮上面を研磨加工する工程において、前記磁気ヘッドスライダが横に連結されたロウバーの少なくとも2つ以上の前記磁気抵抗効果素子もしくは抵抗値モニタ用素子の抵抗値を測定し、該抵抗値を用いて前記ロウバーに加える研磨荷重分布を制御して前記浮上面を研磨加工する第1の研磨工程と、前記第1の研磨工程後に前記ロウバーを個々の前記磁気ヘッドスライダに切断加工する切断工程と、研磨面に対して垂直方向にスライドする案内機構の各々に前記磁気ヘッドスライダを個別に固定し、各磁気ヘッドスライダに設けられた前記磁気抵抗効果素子もしくは抵抗検知素子の抵抗値を個別に測定して前記磁気ヘッドスライダの浮上面を研磨加工し、前記磁気抵抗効果素子もしくは前記抵抗検知素子の抵抗値が所定の値に達した時点で当該磁気ヘッドスライダの浮上面の研磨加工を終了する第2の研磨工程と、を備えてなる。
MR素子高さの誤差要因を最小にすることにより、磁気ヘッドスライダにおけるMR素子高さを高精度に加工することが可能な研磨加工技術を提供できる。
MR素子高さが高精度に加工された磁気ヘッドスライダを高い歩留りで製造することができる、という効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
始めに、本発明の研磨加工装置および薄膜磁気ヘッドの製造技術にて得られる磁気ヘッドスライダが組み込まれる磁気ディスク装置の概要について説明する。図1は稼働状態の磁気ディスク装置における磁気ヘッドのディスクに対する浮上状態の一例を示す概念図である。CSS(Contact Start Stop)方式の磁気ディスク装置では、磁気記録媒体であるディスク2の回転による動圧を利用することで、磁気ヘッド(磁気ヘッドスライダ1)をディスク2の表面から微小量だけ浮上させ、スライダの端部に形成された磁気記録再生素子によってデータの記録再生を行なっている。このとき、ディスク2の表面と磁気ヘッドスライダ1との間隔を浮上量hと呼び、ディスクに対する磁気ヘッドスライダ1の角度を仰角θと呼ぶ。
図2に例示されるように、MRヘッドを用いた磁気ディスク装置の記録再生は、次のように行われる。
(1)コイル5と上部磁性膜6からなる記録素子により、ディスク表面を磁化することにより、記録が行われる。
(2)磁化されているディスク2の表面と磁気ヘッドスライダ1が相対的に移動することで、ディスクに書き込まれたS、Nの極性により、MR素子4(磁気抵抗効果素子4)の抵抗値が変化する。このMR素子4の抵抗値変化を検出することにより、ディスクの表面に書き込んだデータが再生される。
次に、MRヘッドの構造について説明する。図3はMRヘッドの構造の一例を示す斜視図である。MRヘッドは、セラミックスのウエハ3の表面に誘導型磁気変換素子とMR素子4をスパッタリング、マスク形成、エッチング等に代表される薄膜工程により形成される。これを切断加工することで、複数個の磁気ヘッドスライダが連なったロウバー12の形態とし、さらにロウバー12を切断加工することで磁気ヘッドスライダ1の形態にしている。次に、素子部の構造について説明する。誘導型磁気記録素子はコイル5と上部磁性膜6、上部シールド膜8により構成されており、上部磁性膜6の端部は、浮上面に露出し、この露出部によりデータの記録を行う。そして、上部磁性膜6の近傍には、MR素子4が配置されており、その両端には電極7が接続される。また、MR素子のデータ再生時のノイズを低減するために、上部シールド膜8と下部シールド膜9にMR素子4が挟まれる構造となっている。露出型のMRヘッドでは、MR素子4は浮上面11に露出する構造になっていることから、MR素子4の浮上面と直角方向の高さであるMR素子高さHは、この研磨加工によってその寸法が決まる。そして、このMR素子高さHは、データを再生する際の再生出力に大きく影響することから、研磨加工時の加工公差は非常に狭くなっている。
次に、素子高さ制御研磨工程について説明する。図4はロウバーの外観斜視図であり、図5は、その一部側面を拡大して示す側面図である。
ロウバー12は、磁気ヘッドスライダ1が横に数十個連なった状態であり、素子高さ制御研磨工程は、このロウバー12の状態で加工される。ロウバー12の一側面には図5に例示されるように、記録素子を構成するコイル5に接続される一対の外部接続端子5aおよび外部接続端子5bと、MR素子4に接続される二つの外部接続端子4aおよび外部接続端子4bが露出している。また、図5に例示されるように、ロウバー12には、磁気ヘッドスライダ1と磁気ヘッドスライダ1の間に切断部12aを設けており、この切断部12aに浮上面研磨加工時にMR素子高さHを検出するための抵抗検知素子13(および、その外部接続端子13a,外部接続端子13b)が形成される。この抵抗検知素子13の一部が研磨加工により除去される際の抵抗値の変化を研磨加工中に検出し、この抵抗値をMR素子高さHに換算することで、ロウバー12内のMR素子高さHの分布をモニタリングする方法が一般的なMR素子高さHの測定方法である。そして、素子高さ制御研磨工程では、このMR素子高さHの分布が均一になるようにロウバー12に加わる研磨圧力を制御し、MR素子高さHが大きい部分の研磨圧力を高く設定し、MR素子高さHが小さい部分の研磨圧力を低く設定することで、ロウバー12内のMR素子高さHを制御している。
現在の磁気ヘッドスライダ1のサイズとしては、ピコスライダと呼ばれるサイズが主流となっており、そのスライダサイズとしては幅b=1.2mm,長さ:Ls=1.0mm,高さ:t=0.3mmである。そして、ロウバー12のサイズとしては、幅b:1.2mm,長さL:40〜80mm,高さt:0.30〜0.33mmとなっている。ロウバー12の長さが他の寸法と比較して非常に長い理由としては、ロウバー12の長さを長くすることにより1本のロウバー12に含まれるスライダ数が増加し、それだけ生産性が向上するためである。しかし、ロウバー12の長さを長くすると、ロウバー12の剛性が低下するため、ロウバー12に2次曲り成分と3次曲線以上の高次曲線成分(うねり成分と呼ぶ)が生じ易くなる。ロウバー12に2次曲り成分とうねり成分が生じると、ロウバー12内のMR素子にも2次曲り成分とうねり成分が生じる。MR素子並びの2次曲り成分に関しては比較的容易に補正することが可能であるが、MR素子並びのうねり成分に関しては補正するのが困難である。よって、素子高さ制御研磨工程では、補正しきれないうねり成分が素子高さ精度を劣化させていると言える。
次にバータッチラップ工程について説明する。上記説明した素子高さ制御研磨工程では、素子高さを制御するためにロウバー12に偏荷重を加えるため、以下に説明する技術的課題が発生する。
(1)偏荷重により、研磨加工後の浮上面平面度が劣化する。
(2)偏荷重により、浮上面と研磨定盤表面との密着性が低下することから、表面粗さ・加工段差が劣化する。
上記技術的課題を解決するために、浮上面の研磨工程を素子高さ制御研磨工程とバータッチラップ工程の2工程に分けるプロセスを採用している磁気ヘッドの製造メーカが多い。バータッチラップは、浮上面平面度・表面粗さ・加工段差を向上するための浮上面研磨工程である。バータッチラップは、次のような手順で作業が行われる。
・研磨治具に粘着性のある弾性体シートを張り付け、この弾性体シートの表面にロウバーを固定する。
・ロウバーを固定した研磨治具をバータッチラップ盤に固定する。
・予めダイヤモンド砥粒を埋め込んだ固定砥粒定盤を回転させるとともに、研磨治具を揺動させる。
・弾性体表面に固定したロウバーの浮上面を一定荷重で固定砥粒定盤に接触させた状態で、固定砥粒定盤とロウバーを摺動させることにより研磨加工が行われる。
・一定時間研磨加工した後に研磨治具ごとロウバーを固定砥粒定盤の表面から離すことにより研磨加工が終了する。
バータッチラップでは、弾性体を介してロウバーを固定砥粒定盤に押しつけることにより、ロウバーを定盤に倣わせることができる。これによりロウバー浮上面と固定砥粒定盤表面が密着性が向上し、ロウバーの浮上面平面度のばらつきが小さくなると共に、表面粗さ・加工段差を低減できる。しかし、バータッチラップに関しては、以下に説明する技術的課題がある。
(1)研磨定盤上の周速は内周側に対して外周側が高いことから、ロウバー内の加工量分布に傾きが発生しやすい。
(2)ロウバーを張り付ける弾性体の厚さばらつきが大きい場合には、弾性体の厚さばらつきに対応してロウバー内に加工量分布が発生する。
(3)バータッチラップの加工時間の設定条件によって、加工過剰や加工不足が発生する。
上記した3つの技術的課題により、バータッチラップでは研磨加工量に分布(加工量ばらつきと呼ぶ)が発生する。この加工量ばらつきは、MR素子高さHの精度を劣化させることから、MRヘッド製造プロセスにおいて、大きな技術的課題になっている。
次に、MRヘッドの製造プロセスにおける素子高さ精度の誤差要因についてまとめた結果を下記に記す。
(1)ウエハ上にMR素子と抵抗検知素子を形成する際の露光マスクの形成誤差
(2)ウエハ上にMR素子と抵抗検知素子を形成する際の露光工程の誤差
(3)抵抗検知素子とMR素子が位置的に離れていることから生じる誤差
(4)素子高さ制御研磨工程において補正しきれないロウバー内のMR素子高さHの傾き成分・2次曲がり成分・うねり成分によって生じる誤差
(5)抵抗検知素子の抵抗値をMR素子高さHに換算する際の誤差
(6)抵抗検知素子の抵抗値または抵抗値換算のMR素子高さHが所定の値に達した時に加工を終了する際の停止寸法誤差
(7)バータッチラップ工程において発生する加工量のばらつき
上記誤差要因の中で、(1)〜(4)、(7)の誤差はロウバー(スタック)の形態で浮上面を加工することによって発生すると考えられる。
よって、本発明では、ロウバー12の状態ではなく、ロウバー12を個別に分離した個々の磁気ヘッドスライダ1の形態でMR素子高さ制御研磨を行うことで、MR素子高さHの誤差要因を大幅に削減する。すなわち、本発明では、スライダの形態でMR素子高さ制御研磨加工を行うための薄膜磁気ヘッドの製造方法と研磨加工装置を提供する。
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図6は本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置の一例である素子高さ制御スライダタッチラップ装置の平面図であり、図7は、その側面図である。
本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置は、以下の7つの構成要素により構成されている。
1.工具である研磨定盤15を回転駆動するためのベースラップ盤14
2.20個のスライダを固定し、個々のスライダを垂直方向に移動させるための20組のガイドを具備したスライダガイド機構18
3.スライダガイド機構18の20組のガイドの各々に対して、個別に垂直方向の荷重を加えてガイドを垂直方向に動かすとともに、個々のスライダを研磨定盤15に押しつけることで研磨荷重を加える20組のエアシリンダを具備した荷重付加機構19
4.スライダガイド機構18に固定した磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面との間隔を測定するためのギャップセンサ21
5.ギャップセンサ21の測定データを基に、荷重付加機構19とスライダガイド機構18とギャップセンサ21を垂直方向に動かし、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面との隙間を所定の距離に位置決めする研磨ヘッド位置決め機構16
6.研磨ヘッド位置決め機構16とギャップセンサ21、スライダガイド機構18、荷重付加機構19から構成される研磨ヘッドを水平方向に往復運動させるための揺動機構17
7.磁気ヘッドスライダ1の磁気抵抗効果素子または抵抗検知素子の抵抗値を研磨加工中にインプロセスで測定するための抵抗検知回路
次に、上記説明した構成要素の仕様と構造について説明する。
1.ベースラップ盤
ベースラップ盤14は、ボールベアリングとACサーボモータを用いた一般的なラップ盤である。
本実施の形態のベースラップ盤14の仕様は、一例として、取り付け可能な定盤サイズ:φ380mm、定盤回転数:0.1〜60回転/分(制御用の制御コンピュータ60からの信号により回転数の変更が可能)、である。
2.揺動機構
磁気ヘッドスライダ1の浮上面を研磨加工する際には、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と工具である研磨定盤15の表面が研磨加工中に密着していることが非常に重要である。この密着性が悪い場合には、研磨後の浮上面の表面粗さ、加工段差、平面度が劣化することがわかっている。一方、揺動機構17にガタや剛性の弱い部分が存在すると、研磨加工中の揺動機構17の往復運動にともなって、研磨ヘッドに首振り運動が発生する。この研磨ヘッドの首振り運動が発生すると、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と工具である研磨定盤15の表面の密着性が低下することから、研磨後の磁気ヘッドスライダ1の浮上面11の表面粗さ、加工段差、平面度が劣化するという技術的課題が発生する。この技術的課題を解決するために、本実施の形態の揺動機構17には、コンパクトで剛性が高く、且つ制御性の良い直動ステージ(ACサーボモータ、ボールねじ、LMガイドによって構成されているステージ)を使用している。また、本実施の形態の揺動機構17では、垂直・水平方向の剛性を向上するために、図6および図7に示すように、揺動機構17を案内する揺動軸17aの両端部を支柱17bで支持した門型の支持構造を採用している。
また、直動ステージとして、クロスローラガイドを用い、ACモータにて駆動する構成でもよい。クロスローラガイドの場合には、LMガイドよりもさらにガタを防止して、研磨ヘッドの高精度の支持および揺動変位が可能となる。
本実施の形態の揺動機構17の仕様は、一例として、揺動ストローク:LMガイドの場合は200mm(クロスローラガイドの場合は50mm)、揺動速度:max300mm/secである。
3.研磨ヘッド位置決め機構
研磨ヘッド位置決め機構16には、案内方式としてクロスローラガイド16bを用い、上下方向の移動と位置決めにACモータ16aを用いた。
本実施の形態の研磨ヘッド位置決め機構16をの構成仕様を列挙すると一例として、案内方式:クロスローラガイド(16b)、ストローク:80mm、送りねじ:精密ボールねじ、Z軸駆動:ACモータ(16a)、Z方向の最小設定量:0.1μmである。
4.ギャップセンサ
本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置では、スライダガイド機構18のガイドのストロークが短いことから、スライダガイド機構18を含む研磨ヘッドのZ方向の位置決めが重要となる。この理由としては、スライダガイド機構18のガイドのストロークよりも、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と工具である研磨定盤15の表面との間隔が大きい場合には、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面が接触せず、研磨加工が進行しないためである。
この課題に対して本実施の形態では磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面との間隔を精度よく測定するために、静電容量型の変位計をギャップセンサ21として用いた。研磨ヘッドの位置決め制御としては、A/Dコンバータ40を介して変位計の出力を制御コンピュータ60に取り込むとともに、制御コンピュータ60により研磨ヘッド位置決め機構16のACモータ16aの制御を行うことで、研磨ヘッドの高精度な位置決めを実現している。
また、ギャップセンサ21としては、静電容量型の変位計に代えて、渦電流変位センサを用いることもできる。この渦電流変位センサを用いた場合には、研磨定盤15リブリカント等の影響を受けることなく、より高精度に研磨ヘッドの研磨定盤15に対する変位を計測することが可能になる。
5.荷重付加機構
本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置では、各磁気ヘッドスライダ1の抵抗値をインプロセスで測定しながら研磨加工を行うため、磁気ヘッドスライダ1の磁気抵抗効果素子もしくは抵抗検知素子と抵抗検知用回路基板31を結線するために、ワイヤボンディングを用いている。ワイヤボンディングでは、結線する対象を段差1.5mm以内の同一平面上に配置することが必要になる。このため、本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置では、磁気ヘッドスライダ1を横に一直線に並べた状態で研磨加工することが必要となる。一方、本実施の形態の装置に搭載する研磨定盤はφ380mmであり、1つの研磨ヘッドに対して使用可能な定盤半径方向の長さとしては100mm程度である。この100mmの中に、磁気ヘッドスライダ1を一直線に並べ、水平方向に揺動させることが必要であるため、1回の研磨加工で研磨するスライダ数を増やすことでスループットを向上し、且つ磁気ヘッドスライダ1を一直線に並べるためには、磁気ヘッドスライダ1を横に並べるピッチを狭くすることが必要になる。この理由により、本実施の形態の装置では、磁気ヘッドスライダ1を並べる間隔を3.3mmに設定した。これにともなって、個々の磁気ヘッドスライダ1に研磨荷重を付加するための荷重付加機構19においても、磁気ヘッドスライダ1を並べるピッチと同様に3.3mmピッチでアクチュエータを並べることが必要になる。一方、本実施の形態では荷重付加機構19のアクチュエータとしてエアシリンダを採用しており、エアシリンダでは圧力を受ける面の断面積と圧縮空気の圧力により最大荷重が決まることから、エアシリンダ軸22をφ4mmに設定している。よって、φ4mmのエアシリンダ軸22をX方向に3.3mmピッチで並べることはできない。
この技術的課題を解決するために、本実施の形態の荷重付加機構19では、図8の平面図および図9の側面図に例示されるように、エアシリンダ50を千鳥状に配置した。このような構造のマルチエアシリンダを用いることで、荷重付加機構19をコンパクトにまとめるとともに、荷重伝達経路を簡素化することで、荷重の伝達ロスを最小限にしている。ここでは、荷重付加機構19のアクチュエータとしてエアシリンダ50を用いたが、ボイスコイルまたはピエゾ素子を用いることもできる。
本実施の形態の荷重付加機構19の構成仕様の一例を列挙すると、エアシリンダ50の数:20本/研磨ヘッド、使用圧縮空気の圧力:500kPa、エアシリンダ50の荷重設定範囲:±6N、エアシリンダ50の圧力制御:電空レギュレータ52、エアシリンダ50の荷重方向の切り替え:電磁バルブ51、である。
6.スライダガイド機構
スライダガイド機構18は、磁気ヘッドスライダ1をZ方向(垂直方向)にのみスライドさせ、他の方向(X方向、Y方向、回転方向)に動かないように拘束することを目的とした構成要素である。そして、スライダガイド機構18には、次の配慮が必要になる。
(1)揺動機構17において説明したように、研磨加工中における磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面との密着性は、研磨後の磁気ヘッドスライダ1の浮上面11の表面粗さ、加工段差、平面度に大きな影響を及ぼすことがわかっている。スライダガイド機構18の個々のガイドにおいて、X方向(揺動運動方向)の剛性が低い場合には、研磨加工中の揺動機構17の往復運動によって、個々のガイドに首振り運動が発生し、上記密着性が低下する。よって、スライダガイド機構18では、個々のガイドのX方向の剛性を高くすることが必要である。
(2)スライダガイド機構18のガイド端部に磁気ヘッドスライダ1を固定する作業とワイヤボンディング作業は、素子高さ制御スライダタッチラップ装置の機外で行うことから、スライダガイド機構18は容易に着脱できる構造にする必要がある。
本実施の形態では、スライダガイド機構18の構造として、板ばね方式スライダガイド機構18Aとボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bの2方式のスライダガイド機構を採用した。
図10に板ばね方式スライダガイド機構18Aを採用した場合の研磨ヘッド断面図を示す。図10において、取り付けプレート28と板ばね26と上下軸27によって構成される構造体が板ばね方式スライダガイド機構18Aである。上下軸27を2枚の板ばね26により取り付けプレート28と固定することで、上下軸27はZ方向にだけ動くことが可能になり、X方向及びY方向および回転方向には拘束される。板ばね方式スライダガイド機構18Aでは、上下軸27と2枚の板ばね26により構成される一組のガイドが3.3mmピッチで直線上に20組並んでおり、それぞれのガイドが取り付けプレート28に固定されている。
これに対して、荷重付加機構19は、φ4mmのエアシリンダ軸22を千鳥状に配置することでエアシリンダ軸22のピッチを3.3mmにしているため、荷重付加機構19から板ばね方式スライダガイド機構18Aに直接荷重を伝達させる場合には、エアシリンダ軸22と上下軸27のY方向の接触位置が2ポイントになる。これにより、エアシリンダ軸22に同じ荷重を加えても、板ばね26のたわみ角に差が生じてしまう。この技術的課題を解決するために、板ばね方式スライダガイド機構18Aを用いる研磨ヘッドの場合には、荷重付加機構19と板ばね方式スライダガイド機構18Aの間にアダプタ20を設置している。アダプタ20は、ボールスプライン軸を荷重付加機構19と同じ3.3mmピッチで千鳥状に配置し、ボールスプライン軸23の先端にY軸変更プレート24を取り付けることで、図10に示すように、エアシリンダ軸22と上下軸27のY方向の接触位置を、X方向に一直線上に配列された複数の上下軸27の各々の中心に一致させるようにしている。
板ばね方式スライダガイド機構18Aを用いる研磨ヘッドでは、以上説明した構成により、次のようにして磁気ヘッドスライダ1の研磨加工が行われる。
なお、板ばね方式スライダガイド機構18Aの仕様を例示すると、搭載可能なスライダの数:20スライダ、上下ガイド(上下軸27)のストローク:100μm、上下ガイド(上下軸27)のX方向(配列方向)ピッチ:3.3mmである。
(1)制御コンピュータ60から電空レギュレータ52にD/Aコンバータ53を介して所定の電圧を加えることにより、電空レギュレータ52により制御コンピュータ60からの電圧に応じた圧力がAIR1に加えられる。このとき、制御コンピュータ60から電磁バルブ51の開閉を制御することで、AIR1の圧力をAIR2に加えるとともに、AIR3の圧力を大気圧にする。これによりエアシリンダ軸22に下向きの荷重が発生し、エアシリンダ軸22が下降する。
(2)エアシリンダ軸22とアダプタ20のボールスプライン軸23とが接触することで、ボールスプライン軸23に下向きの荷重が伝達され、ボールスプライン軸23が下降する。
(3)ボールスプライン軸23に取り付けたY軸変更プレート24と上下軸27が接触することにより、上下軸27に下向きの荷重が伝わり、この荷重により板ばね26(2枚)が下向きにたわむ。
(4)板ばね26(2枚)が下向きにたわむことにより、上下軸27が下降し、上下軸27の端部に粘着性弾性体29を介して固定した磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面が接触し、研磨荷重が発生する。このとき、研磨定盤15を回転駆動させ、揺動機構17を往復運動させることで研磨加工が進行する。
(5)板ばね方式スライダガイド機構18Aの側面に固定した抵抗検知用回路基板31の配線と磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)とをワイヤボンディングにより金ワイヤ30で結線し、磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値を抵抗検知回路54(抵抗検知用回路基板31)により測定し、このデータをA/Dコンバータ55を介して制御コンピュータ60に取り込むことで、研磨加工中の磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値をインプロセスでモニタリングすることができる。
(6)モニタリングしている素子の抵抗値が所定の値に達した際に、制御コンピュータ60から電磁バルブ51の開閉を制御することで、AIR1の圧力をAIR3に加え、AIR2の圧力を大気圧にする。これにより、エアシリンダ軸22に上向きの荷重が発生し、エアシリンダ軸22が上昇する。
(7)エアシリンダ軸22が上昇することにより、アダプタ20のボールスプライン軸23がばね25の復元力により上昇する。
(8)アダプタ20のボールスプライン軸23が上昇することにより、板ばね方式スライダガイド機構18Aの上下軸27が板ばね26(2枚)の復元力により上昇する。
(9)上下軸27が上昇することにより、磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面が離れる。これによりその磁気ヘッドスライダ1の研磨加工が終了する。
次に、ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bを採用した場合の研磨ヘッドの構造について説明する。図11にボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bの研磨ヘッド断面図を示す。ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bにおいても、荷重付加機構19は板ばね方式スライダガイド機構18Aと同一構造にしている。
ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bでは、上下軸としてボールスプライン軸を使用している。ボールスプライン軸は次の特性から、スライダガイド機構18に適していると考えられる。
(1)ガタが非常に小さく、横方向の荷重に対する剛性が高い
(2)軸が回転する方向のガタも非常に小さい
(3)軸方向の動きが非常に滑らかであり、抵抗がほとんどない
但し、全体の直径が3.3mm以下のボールスプライン軸は市販されていないため、本実施の形態では、全体の直径が6mmのボールスプライン軸を使用した。よって、ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bでは、荷重付加機構19と同様に千鳥状にボールスプライン軸を配置している。これにより、ボールスプライン軸32の中心は、Y方向において位置がずれてしまうため、ボールスプライン軸32の端部にそのまま磁気ヘッドスライダ1を固定すると、ワイヤボンディングができなくなってしまう。この技術的課題を解決するために、本実施の形態では、ボールスプライン軸32の端部に長さが異なる2種類のプレート33を固定し、このプレート33に粘着性弾性体29を介して磁気ヘッドスライダ1を固定することで、Y方向の位置が揃うようにX方向に一直線に複数の磁気ヘッドスライダ1を並べた。また、ボールスプライン軸には、板ばね26のような復元力を発生させる機能が無いことから、本実施の形態のボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bでは、図11に示すように各ボールスプライン軸32にばね34を取り付けることで復元力を発生させている。
ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bを用いる研磨ヘッドでは、以上説明した構成により、次のようにして磁気ヘッドスライダの研磨加工が行われる。
ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bの構成仕様は、一例として、搭載可能なスライダ数:20スライダ、上下ガイド(ボールスプライン軸32)のストローク:200μm、上下ガイド(ボールスプライン軸32)のX方向(配列方向)ピッチ:3.3mmである。
(1)制御コンピュータ60から電空レギュレータ52にD/Aコンバータ53を介して所定の電圧を加えることにより、電空レギュレータ52により制御コンピュータ60からの電圧に応じた圧力がAIR1に加えられる。このとき、制御コンピュータ60から電磁バルブ51の開閉を制御することで、AIR1の圧力をAIR2に加えるとともに、AIR3の圧力を大気圧にする。これによりエアシリンダ軸22に下向きの荷重が発生し、エアシリンダ軸22が下降する。
(2)エアシリンダ軸22とボールスプライン軸32とが接触することで、ボールスプライン軸32に下向きの荷重が伝達され、ボールスプライン軸32が下降する。
(3)ボールスプライン軸32が下降することで、プレート33に粘着性弾性体29を介して固定した磁気ヘッドスライダ1の浮上面と研磨定盤15の表面が接触し、研磨荷重が発生する。このとき、研磨定盤15を回転駆動させ、揺動機構17を往復運動させることで研磨加工が進行する。
(4)ボールスプライン軸方式スライダガイド機構18Bの側面に固定した抵抗検知用回路基板31の配線と磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)とをワイヤボンディングにより金ワイヤ30で結線し、磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値を抵抗検知回路54(抵抗検知用回路基板31)により測定し、このデータをA/Dコンバータ55を介して制御コンピュータ60に取り込むことで、研磨加工中の磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値をインプロセスでモニタリングすることができる。
(5)モニタリングしている素子の抵抗値が所定の値に達した際に、制御コンピュータ60から電磁バルブ51の開閉を制御することで、AIR1の圧力をAIR3に加え、AIR2の圧力を大気圧にする。これにより、エアシリンダ軸22に上向きの荷重が発生し、エアシリンダ軸22が上昇する。
(6)エアシリンダ軸22が上昇することにより、ボールスプライン軸32がばね34の復元力により上昇する。
(7)ボールスプライン軸32が上昇することにより、磁気ヘッドスライダ1の浮上面11と研磨定盤15の表面が離れる。これにより、その磁気ヘッドスライダ1の研磨加工が終了する。
次に、上記説明した素子高さスライダタッチラップ装置を用いたGMRヘッドの製造プロセスについて説明する。
図12に本実施の形態のMRヘッド製造プロセス図を示す。本実施の形態のMRヘッド製造プロセスの概要を以下に説明する。
1.ウエハプロセス:スパッタリング、イオンミリング、フォトリソグラフィー等の薄膜プロセスにより、ライト素子、リード素子(磁気抵抗効果素子)、抵抗検知素子等を形成する(ステップ101)。
2.基板切断:ダイヤモンド切断砥石を工具としたスライシングにより、ウエハ3をロウバー12もしくはスタックに切り出す(ステップ102)。
3.両面ラップ:基板切断工程において発生するロウバー12(スタック)の2次曲がり量とうねりを低減するために浮上面と裏面の同時研磨を行う(ステップ103)。
4.浮上面粗ラップ:素子高さ制御研磨工程における加工代を最小限にするために、比較的大きなダイヤモンド砥粒の入ったスラリーにより、浮上面の粗加工を行う(ステップ104)。
5.素子高さ制御研磨:ロウバー12(スタック)の状態で素子高さを制御して研磨加工を行う工程であり、素子高さを制御するためにロウバー12(スタック)に偏荷重を加えることでロウバー内に加工量に分布をつくり、この加工量の分布を制御することで素子高さを制御している(ステップ105)。
6.裏面研磨:ロウバー裏面の表面粗さを制御するとともに、ロウバー12の厚さをこの工程において所定の厚さに研磨する(ステップ106)。
7.チップ切断:ダイヤモンド切断砥石を工具としたスライシングにより、ロウバー12を複数の磁気ヘッドスライダ1に切り出す(ステップ107)。
8.素子高さ制御タッチラップ:本実施の形態のメインの工程であり、以下の項目を目的としている(ステップ108)。
・素子高さ精度の向上(磁気抵抗効果素子の抵抗値ばらつき低減)
・浮上面平面度(クラウン、キャンバー、ツイスト)の向上
・浮上面表面粗さの向上
・加工段差の低減
9.浮上面保護膜形成:浮上面研磨後の素子の耐摩耗性と耐腐食性を向上するために、ダイヤモンドライクカーボン膜を浮上面11に形成する。本実施の形態では、スライダの状態で浮上面に保護膜を形成することが必要となる(ステップ109)。
10.浮上面レール形成:磁気ヘッドスライダを回転するディスク表面から10〜20nmの浮上量で飛ばすために、フォトリソグラフィー工程とイオンミリング等により浮上面11にレール11aを形成する(ステップ110)。
次に、本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ工程(ステップ108)の詳細について説明する。また、ここでは板ばね方式スライダガイド機構18Aを用いた場合について説明する。
(1)はじめに、板ばね方式スライダガイド機構18Aを本体から取り外し、上下軸27の端部に2.5×3.0×1.0mmの粘着性弾性体29を取り付ける。粘着性弾性体29の材料としては、ポリウレタンを用いており、接着面をエタノールにより清掃した後、上下軸27の端部にポリウレタン片を押しつけることで、上下軸27にポリウレタン片を固定することができる(ステップ108−1)。
(2)粘着性弾性体29の表面をエタノールで清掃した後に、板ばね方式スライダガイド機構18Aをスライダ位置決め装置に取り付ける。スライダ位置決め装置では、個々の粘着性弾性体29上に磁気ヘッドスライダ1が位置決め・接着される。このとき、粘着性弾性体29のエッジから0.5mm以上離した位置に磁気ヘッドスライダ1を固定する必要がある。これは、粘着性弾性体29のエッジ部は中央部と比較して極端に変形しやすいため、粘着性弾性体29のエッジ近傍に磁気ヘッドスライダ1を固定すると、磁気ヘッドスライダ1と研磨定盤15との密着性が劣化し、スライダ全面が均一に研磨できなくなるためである(ステップ108−1)。
(3)磁気ヘッドスライダ1を固定した後に、板ばね方式スライダガイド機構18Aをワイヤボンディング装置に固定する。そして、磁気ヘッドスライダ1のMR素子4(抵抗検知素子)の一対の外部接続端子4a,4bと抵抗検知用回路基板31の配線との間を金ワイヤにより結線する。このとき、板ばね方式スライダガイド機構18Aに固定した全ての磁気ヘッドスライダ1の各々にワイヤボンディングを行うことが必要である(ステップ108−2)。
(4)ワイヤボンディング後の板ばね方式スライダガイド機構18Aを素子高さ制御スライダタッチラップ盤の本体に取り付ける。また、抵抗検知用回路基板31と本体の間を配線コネクタにより結線する(ステップ108−3)。
(5)制御コンピュータ60にMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値の目標値を入力し、加工をスタートさせる。これにより、予めダイヤモンド砥粒を埋め込んだ研磨定盤15が所定の回転数で回転する。また、揺動機構17が所定の速度で往復運動する。さらに、研磨定盤15上にルブリカント液が所定量だけ滴下される(ステップ108−4)。
(6)ギャップセンサ21(静電容量型変位計)により、ギャップセンサと研磨定盤15との距離(ギャップセンサ21と磁気ヘッド浮上面のZ方向の位置を予め調整しておく)を測定しながら、研磨ヘッド位置決め機構16をACモータ16aにより降下させる(ステップ108−5)。
(7)ギャップセンサ21の測定データが所定の値に達したら、ACモータ16aの回転を止め、励磁する(ステップ108−6)。
(8)制御コンピュータ60から電空レギュレータ52と電磁バルブ51に制御信号を出し、荷重付加機構19の20本のエアシリンダに下向きの圧力を加える(ステップ108−7)。
(9)板ばね方式スライダガイド機構18Aの20組のガイドの各々にエアシリンダから下向の荷重が伝わり、板ばね26がたわむことにより上下軸27が下がる(ステップ108−8)。
(10)上下軸27の先端に粘着性弾性体29を介して取り付けた磁気ヘッドスライダ1の浮上面が研磨定盤15の表面と接触・摺動することで、研磨加工が進行する。このとき、制御コンピュータ60により、個々のスライダのMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値をインプロセスで検知する。また、板ばね方式スライダガイド機構18Aに固定した20個の磁気ヘッドスライダ1の抵抗値ばらつきが大きい場合には、基準値以上に抵抗値の低い磁気ヘッドスライダ1の研磨荷重を初期の研磨荷重よりも増加させる。これにより、加工代が多いスライダの研磨能率が高くなることから、研磨時間を短縮させることが可能になる(ステップ108−8)。
(11)検知しているMR素子4(抵抗検知素子)の抵抗値が所定の値に達したスライダに関しては、その磁気ヘッドスライダ1に研磨荷重を加えている荷重付加機構19のエアシリンダに対して、制御コンピュータ60から電磁バルブ51に制御信号を出力することで、そのエアシリンダの荷重が下向きから上向きに切り替わる。これにより、その磁気ヘッドスライダ1に対する研磨荷重が0になると共に、板ばね26の復元力により上下軸27が上昇し、磁気ヘッドスライダ1と研磨定盤15の表面が離れる。これにより、その磁気ヘッドスライダ1の研磨加工が終了する(ステップ108−9)。
(12)上記説明したように、磁気ヘッドスライダの磁気抵抗効果素子(抵抗検知素子)の抵抗値が所定の値に達したスライダから研磨加工が終了する(ステップ108−10)。そして、20個全ての研磨加工が終了した時点で、研磨定盤15の回転と揺動機構17の往復運動を止める。また、ルブリカント液の滴下を止める(ステップ108−11)。
(13)研磨ヘッド位置決め機構16のパルスモータを回転させ、研磨ヘッドを原点まで上昇させる(ステップ108−12)。
(14)板ばね方式スライダガイド機構18Aを本体から取り外し(ステップ108−13)、ワイヤボンディングのワイヤを除去する(ステップ108−14)。このとき、磁気ヘッドスライダ1の外部接続端子4a,4bには、金ワイヤの一部が残るため場合によっては、削り取ることが必要になる。
(15)粘着性弾性体29から20個のスライダを取り外す(ステップ108−15)。
以上が本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラッププロセスである。次に、実際の磁気ヘッドスライダ1の加工結果について説明する。
ここで加工した磁気ヘッドスライダ1とスライダタッチラップの研磨加工条件は下記の条件を用いた。
1.磁気ヘッドスライダ
・磁気抵抗効果素子:GMR素子
・スライダサイズ:1.0×1.25×0.3mm
2.スライダタッチラップ条件
(1)抵抗検知
・抵抗検知する素子:GMR素子
・センス電流値:0.2mA
・検知するスライダ数:20スライダ(全数検知)
・スライダタッチラップ前(素子高さ制御浮上面研磨後)の抵抗値:AVE38Ω
・スライダタッチラップ目標抵抗値:46Ω
・ワイヤボンディング:φ25μmの金ワイヤ
(2)研磨定盤
・定盤材質:錫合金定盤
・定盤サイズ:φ380×45mm
・定盤表面の形状修正:ダイヤモンドバイトを用いたフェーシング加工
・埋め込みに用いたスラリー:油性(1/8)μm単結晶ダイヤモンドスラリー
(3)研磨条件
・定盤回転数:10回転/分
・揺動速度:45mm/sec
・揺動ストローク:30mm
・研磨荷重:0.3N/スライダ
・ルブリカント液:油性ルブリカント液
・スライダガイド機構:板ばね方式スライダガイド機構
・粘着性弾性体:ポリウレタンシート(2.5×3.0×1.0mm)
・1バッチに加工するスライダ数:20スライダ
本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置により、上記条件でGMRヘッドを加工し、加工したGMR素子の抵抗値を測定した結果を図13に示す。また、同じ仕様のGMRヘッドを従来のロウバープロセスにより加工した結果を図14に示す。
図13(a)は加工後のGMR素子抵抗値のヒストグラムであり、図13(b)はGMR素子の抵抗値を換算式により換算した素子高さのヒストグラムである。図13(a)の抵抗値分布において、平均値が46.0Ωになっており、GMR素子の抵抗値の平均値が加工目標値と一致していることがわかる。また、このときのヒストグラムの分布がシャープになっており、3σ:2.0Ωの結果より、抵抗値ばらつきが非常に小さいことがわかる。また、GMR素子の抵抗値を換算した素子高さ(MR素子高さH)においても、ヒストグラムの分布がシャープになっており、素子高さ精度は3σ:0.009μmと極めて高いことがわかる。
これに対し、従来のロウバープロセスによって加工した結果は、図14(a)に示すように、GMR素子の加工目標値46.0Ωに対して、加工した平均値が43.2Ωとなっており、加工目標値と平均値にズレが生じていることがわかる。また、図14(b)に示されるGMR素子の抵抗値分布および換算した素子高さの分布についても、ブロードな分布になっており、3σの値も18.2Ωと0.108μmと大きいことがわかる。
以上のGMRヘッドの加工検討結果より、本実施の形態の素子高さ制御スライダタッチラップ装置とスライダタッチラッププロセスを用いることで、MR素子4を用いた磁気ヘッドスライダ1の素子高さ精度を高精度に加工できると言える。
以上説明したように、本実施の形態の研磨加工装置および薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
面記録密度100Gbit/in2 以上の磁気ディスク装置に搭載するMRヘッドでは、MR素子4の出力特性を向上するためにMR素子高さHを±0.020μm以下の精度で加工することが要求される。本実施の形態では、個々の磁気ヘッドスライダ1を個別に垂直方向にスライドするための一組のガイド機構(スライダガイド機構18)と、研磨荷重及び垂直方向にスライドさせるための推力を付加する個別のアクチュエータ(荷重付加機構19)と、磁気ヘッドスライダ1のMR素子4の抵抗値を研磨加工中にインプロセスで検知する抵抗検知用回路基板31を具備した素子高さ制御スライダタッチラップ装置を用いて、複数の磁気ヘッドスライダ1の研磨加工を行うことで、MR素子4の素子高さ精度±0.010μm以下を実現することが可能になる。これにより、MRヘッドの再生出力が安定するとともに、MRヘッドの製造プロセスの歩留りを向上することができる。
また、複数の磁気ヘッドスライダ1の各々を、共通の研磨ヘッド位置決め機構16に装着して一括して加工するので、ロウバーと同レベルのスループットを維持できる。
稼働状態の磁気ディスク装置における磁気ヘッドのディスクに対する浮上状態の一例を示す概念図である。 MR素子高さ等のMR素子の構造の再生特性に与える影響を説明する略断面図である。 磁気ヘッド(MRヘッド)の構造の一例を示す斜視図である。 磁気ヘッド(MRヘッド)の製造工程におけるロウバーの一例を示す外観斜視図である。 磁気ヘッド(MRヘッド)の製造工程におけるロウバーの一側面を拡大して示す側面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置の一例である素子高さ制御スライダタッチラップ装置の平面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置の一例である素子高さ制御スライダタッチラップ装置の側面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置における荷重付加機構の構成の一例を示す平面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置における荷重付加機構の構成の一例を示す側面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置の一例である素子高さ制御スライダタッチラップ装置の研磨ヘッドの断面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法を実施する研磨加工装置の一例である素子高さ制御スライダタッチラップ装置の研磨ヘッドの変形例を示す断面図である。 本発明の一実施の形態である薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例を示すフローチャートである。 (a)および(b)は、本発明の磁気ヘッド製造プロセスの加工結果の一例を示すヒストグラムである。 (a)および(b)は、従来の磁気ヘッド製造プロセスの加工結果を示すヒストグラムである。
符号の説明
1…磁気ヘッド(スライダ)、2…ディスク(記録媒体)、3…ウエハ、4…MR素子(磁気抵抗効果素子)、5…コイル、6…上部磁性膜、7…電極、8…上部シールド膜、9…下部シールド膜、10…基板材、11…浮上面、12…ロウバー、13…抵抗検知素子(スライダ間に形成)、14…回転駆動機構(ラップ盤)、15…研磨定盤、16…研磨ヘッド位置決め機構(Z軸スライド機構)、17…揺動機構、18…磁気ヘッドスライダガイド機構、19…荷重付加機構(マルチエアシリンダ)、20…アダプタ、21…ギャップセンサ、22…エアシリンダ軸、23…アダプタ用ボールスプライン軸、24…アダプタ用Y軸変更プレート、25…アダプタ用ばね、26…板ばね方式スライダガイド機構の板ばね、27…板ばね方式スライダガイド機構の上下軸、28…板ばね方式スライダガイド機構の取り付けプレート、29…粘着性弾性体、30…ワイヤボンディングの金ワイヤ、31…抵抗検知用回路基板、32…ボールスプライン軸、33…ボールスプライン軸方式スライダガイド機構のヘッド固定プレート、34…ボールスプライン軸方式スライダガイド機構のばね。

Claims (7)

  1. 磁気抵抗効果素子を再生素子に用いた磁気ヘッドスライダの磁気記録媒体に対向する浮上面を研磨加工する工程において、
    前記磁気ヘッドスライダが横に連結されたロウバーの少なくとも2つ以上の前記磁気抵抗効果素子もしくは抵抗値モニタ用素子の抵抗値を測定し、該抵抗値を用いて前記ロウバーに加える研磨荷重分布を制御して前記浮上面を研磨加工する第1の研磨工程と、
    前記第1の研磨工程後に前記ロウバーを個々の前記磁気ヘッドスライダに切断加工する切断工程と、
    研磨面に対して垂直方向にスライドする案内機構の各々に前記磁気ヘッドスライダを個別に固定し、各磁気ヘッドスライダに設けられた前記磁気抵抗効果素子もしくは抵抗検知素子の抵抗値を個別に測定して前記磁気ヘッドスライダの浮上面を研磨加工し、前記磁気抵抗効果素子もしくは前記抵抗検知素子の抵抗値が所定の値に達した時点で当該磁気ヘッドスライダの浮上面の研磨加工を終了する第2の研磨工程と、
    を備えてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  2. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記第2の研磨工程では、前記案内機構は、前記研磨面を垂直方向に所定量スライドするための平行板ばねもしくはボールスプライン軸を有する磁気ヘッドスライダガイド機構であって、該磁気ヘッドスライダガイド機構の各々の可動軸端部に前記磁気ヘッドスライダを個別に固定し、前記磁気抵抗効果素子もしくは前記抵抗検知素子の抵抗値に対応させて、前記個々の磁気ヘッドスライダに加える研磨荷重を個別に制御することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  3. 請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、請求項2記載の磁気ヘッドスライダガイド機構であって、前記磁気ヘッドスライダは粘着性弾性体を介して前記磁気ヘッドスライダガイド機構の可動軸端部に個別に固定されてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  4. 請求項3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、1片の粘着性弾性体の縦横寸法は前記磁気ヘッドスライダの縦横寸法を上回り、前記粘着性弾性体を介して前記磁気ヘッドスライダを固定した際に、前記磁気ヘッドスライダの4辺全ての方向に対して、前記粘着性弾性体のエッジから前記磁気ヘッドスライダのエッジが少なくとも0.5mm以上離れる位置に前記磁気ヘッドスライダが配置されてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  5. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記磁気ヘッドスライダの磁気抵抗効果素子もしくは抵抗検知素子の抵抗値を測定するための電気回路基板と前記磁気ヘッドスライダの磁気抵抗効果素子もしくは抵抗検知素子の端子との間をワイヤボンディングにより結線したことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  6. 請求項5記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記ワイヤボンディングのワイヤが金線であることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  7. 請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、前記第2の研磨工程の終了後、前記磁気ヘッドスライダに設けられた前記磁気抵抗効果素子もしくは前記抵抗検知素子の抵抗値を測定するための金線を除去する工程が付加されてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
JP2006146380A 2006-05-26 2006-05-26 薄膜磁気ヘッドの製造方法 Pending JP2006221815A (ja)

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