JP2006219685A - ポリビニールアルコール組成物 - Google Patents

ポリビニールアルコール組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2006219685A
JP2006219685A JP2006148526A JP2006148526A JP2006219685A JP 2006219685 A JP2006219685 A JP 2006219685A JP 2006148526 A JP2006148526 A JP 2006148526A JP 2006148526 A JP2006148526 A JP 2006148526A JP 2006219685 A JP2006219685 A JP 2006219685A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
pva
salt
hydrate
inorganic salt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006148526A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006219685A5 (ja
Inventor
Junichi Kubo
純一 久保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ako Kasei Co Ltd
Original Assignee
Ako Kasei Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ako Kasei Co Ltd filed Critical Ako Kasei Co Ltd
Priority to JP2006148526A priority Critical patent/JP2006219685A/ja
Publication of JP2006219685A publication Critical patent/JP2006219685A/ja
Publication of JP2006219685A5 publication Critical patent/JP2006219685A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課 題】透明性に優れたポリビニールアルコール(PVA)組成物の提供。
【解決手段】PVAが、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態にあるとき、水が存在すると、水和物、潮解性の水溶性無水無機塩、又は水溶性無機塩水和物を添加し、塩水和物としてPVA中に取り込んだ後、膜、シート、成形品などの固形物を形成することによってポリビニールアルコール組成物を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリビニールアルコール(PVA)組成物に関する。
更に詳しくは、無機塩水和物を導入することによる、従来にない特殊な性質を有するポリビニールアルコール(PVA)組成物に関する。
ポリマーに無機塩を添加することは昔からしばしば行われている。例えば、増量剤、難燃剤、充填剤等に数多く使用されている。しかし、これらはポリマーに物理的に混合するものであり、添加により、一般に透明性が低下したり、変色したり、性質が大きく変化する。また、このために添加量には自ずと制限がある。
本発明者は、既に水又は実質的に水を含む溶液に溶けた状態又はエマルジョンの状態にあるポリマーに無機塩水和物を添加することにより、透明性、弾力性を保持したポリマーが得られることを見出し、この性質を利用した特許を既に出願した(特願2001−314090号、特願2001−118259号)。
本発明は、ここで得られた知見をPVAに適用し、発展させたものである。
また、ポリビニールアルコール(PVA)は、広い範囲で使用されているポリマーであり、重合度及びけん化度により多くの種類のものが製造されている。また、PVAヒドロゲルと呼ばれるものもある。これは、PVA水溶液を低温に保持することにより作られるもので、多量の水を含んだゲル状のもので、軟質で透明な物質であるが、本発明とは本質的に異なるものである(詳細は後述)。
しかし、PVAに無機塩水和物を添加する試みはほとんどなされていない。したがって、PVAに無機塩水和物を添加した場合の現象及び得られる物質の特徴については、ほとんど知られていない。
本発明者は、PVAに無機塩水和物を添加する実験を数多く行った結果、或る条件下でこれを行うと、極めて特徴的な現象が見られ、特徴のある製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来、PVAに無機塩を添加することはいくつか提唱されている。例えば、特開昭59‐20644号公報では、骨格となる基体高分子にPVA及び水溶性無機塩類を加え、帯電性を防止しようという試みが記載されている。しかし、この特許は、(1)基体高分子が存在し、帯電性を防止する添加物としてPVA及び無機塩類を加えるものであり、本発明のように、PVAに無機塩類を加えたもの自体を特殊な材料として提唱しようというものではないこと、(2)PVAが水に溶解した状態で無機塩類を加えるという記載は全くないこと、(3)添加される無機塩類が水和物の状態でPVA中に取り込まれるという記載はどこにもないことから、本発明は本引用特許とは全く別個の考え方によるものである。
また、従来からPVAハイドロゲルと呼ばれるものがある。これは、PVA水溶液を低温(氷点下)に保持することにより得られるもので、多量の水分子を含んでいるにもかかわらず、水には溶けない物質で、コンニャク状の軟かい物質である。
本発明のPVA組成物は、このPVAハイドロゲルとは本質的に異なるものである。
すなわち、PVAハイドロゲルにおいては、低温に保持することにより、多量の水分子を含有するものであるが、本発明では常温又は加熱した状態(80℃以下)で十分乾燥することにより、いわゆる自由水としての水の含有量は10wt%/PVA以下である(一部吸着水としての水が存在するので0にはならない)。
しかし、無機塩水和物としてPVA中に取込まれた水の大部分は乾燥によっても除去されることはなく、PVA中に残存する。これはいわゆる上記自由水とは異なるもので、自由水とは異なる挙動を示す。
すなわち、未だその詳細な構造は明らかでないが、PVA中においても、無機塩との何らかの相互作用が存在するため、上記の乾燥条件では大部分は除去されない。
この意味において、本発明のPVA組成物は従来からのPVAハイドロゲルとは基本的に異なるものである。
また、特開平1−230659号公報に、PVAハイドロゲルに2価の金属塩を添加することにより得られる粘着性PVAハイドロゲルが提示されているが、「金属塩を添加する」点に類似点があるものの、上記のとおり、本発明のPVA組成物とPVAハイドロゲルは本質的に異なるものであり、また得られる物質も全く異なるものである。
特開昭59−20644号公報 特開平1−230659号公報 特開2003−003079号公報 特願2001−118259号
本発明は、PVAに無機塩水和物を添加することにより、従来にない性質を有する物質を提供しようとするものである。
本発明は、PVAに無機塩水和物を添加することにより、従来にない性質を有する物質を提供しようとするものであるが、基本的には以下の構成から成る。
(1)ポリビニールアルコール(PVA)が、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態にあるとき、水が存在すると水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物を添加し、塩水和物としてPVA中に取り込んだ後、常温又は加熱した状態で十分に乾燥し、膜、シート及び成型品等の固形物を形成することを特徴とするポリビニールアルコール成型物。
(2)上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物が、潮解性を有することを特徴とする(1)のPVA成型物。
(3)上記基材PVAが、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態をつくるため、温度を高くすることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のPVA組成物。
(4)上記基材PVAが、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態をつくるため、水の他に第3成分を添加することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のPVA成型物。
(5)上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物の添加量が、1〜150wt%/PVAであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のPVA成型物。
(6)上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物の添加量が150〜300wt%/PVAであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のPVA成型物。
すなわち、本発明はPVAに無機塩水和物を極めて均一に添加することにより、従来ない性質を有する物質を提供しようとするものであるが、その基本となるものは先の(1)に述べたことである。
すなわち、(1)において、PVAは水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態にあるが、これに水が存在すると水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は無機塩水和物を添加すると、この塩は水に溶解するが、この溶媒を気化させることにより、塩は結晶水を持った水和物としてPVA組成物中に取り込まれる。
すなわち、PVAが水を含む溶液に溶解状態にあるときに、無機塩水和物としてポリマー中に取り込まれることが本発明の重要な要素である。
このような方法で、PVAに塩水和物を添加すると、塩水和物はPVA中で極めて微細に、均一に分散され、添加により透明性が向上する場合が多い。塩によっては、添加により着色する場合もあるが、適切な塩を選択することにより、着色を全く避けることが可能である。
一般に、塩の添加量の増加により、より軟かくなる傾向があり、この場合引張り強さは減少するが、逆に伸びは大きくなる。X線の測定結果から、塩の添加により、PVAの結晶性が低下しており、上記の軟かくなる傾向及び透明性の向上も理解される。
本発明で驚くべきことは、適切な塩を選択すると、塩水和物/PVAを150/100wtまで増加しても、透明で弾力性のあるゴム状のシート(例えば厚さ0.5mm)及びフィルム(例えば厚さ0.1mm)が得られる。塩水和物(結晶Kを含む)/PVA=150/100wtというと、外観はまったくのポリマーであるが、これはもはやポリマーというより実質は塩である。
また、この物質中には全体の20wt%以上の水が含まれていると考えられ、このように多量の水を含有しているにもかかわらず、上記のように、透明で弾力性のあるゴム状物質が得られるというのは驚くべきことであり、またその応用は多方面にわたる。
このような物質が従来のポリマーと異なる性質を有するのは当然で、事実、後述の実施例に示すように、物理的、電気的、誘電的、その他で極めて特異な性質を示す。
上記のように、塩水和物/PVA=150/100wt程度まではシート、膜、その他成型品への自由な成型が可能であり、その特異な性質と相まって種々の用途への利用が考えられる。
しかし、これ以上塩の添加量を増すと、常温ではシート状及びフィルム状のものは得られず、縮んだブロック状のものが得られる。しかし、この物質も軟かく、弾力性があり、ゴム状の感触のものであり、外観上はポリマー様のものであるが、これはもはや塩としての性質が支配的であり、この性質を利用した充填剤等への応用が可能である。
もちろん、100/100wt以下では、添加量の増加により軟らかくなる傾向が見られるものの、ほとんど元のPVAと変わらず(透明性は上回る場合が多い)、しかもその物性(例えば誘電特性)は元のPVAとは著しく異なる。この性質を利用した種々の利用が考えられる。
本発明の一つの特徴は、PVAが水又は実質的に水を含む溶液に溶解した状態において、水溶性の無機塩又は無機塩水和物を添加することにある。このことにより、無機塩及びPVAは完全に均一な溶液となるが、この溶液から溶媒を気化させることにより、無機塩は水和物としてPVA中に取り込まれる(PVA中で水がどのような形で存在するのかは不明)。
このような方法により、無機塩は極めて均一的に、しかも微細にPVA中に存在することとなり、先に述べたように、添加量を増しても、透明で弾力性に富んだプラスチック状又はゴム状の物質が得られる。
従って、まずは、PVAが水又は実質的に水を含む溶液に溶解した状態を作ることが必要である。PVA(商品名「ポバール」)は、その重合度及びケン化度によって様々な性状のものが製造されている。そのうち、最も一般的なケン化度97以上、重合度1700以上のポバールは一般に常温では水に溶け難い。従って、このような常温で、水に難溶なポバールに本方法を適用する場合には、温度を上げて溶解せしめた後、請求項に示した塩又は塩水和物を添加する。この場合の温度は、100℃前後で十分である。また、十分な溶解状態又はエマルジョンの状態をつくるために、アルコール類他の第三成分を添加することも有効である。
なお、常温で水に溶解するポバールについては加熱する必要がないことは言うまでもない。
PVAは、もともと含水性を有するポリマーである。したがって、帯電性は比較的低いポリマーであり、その表面抵抗は10Ω近辺(常温、相対湿度40%)である。しかし、これに潮解性を有する無機塩又は無機塩水和物を本発明の方法により添加すると、その表面抵抗は大巾に低下する。例えば、Ca(NO・4HOをPVA100重量部に5重量部添加することにより、表面抵抗は10〜10Ω(常温、相対温度40%)に低下する。かくして、外観、物理性状は、PVAと殆ど変らず、表面抵抗10〜10Ωという極めて帯電性の低いポリマーを得ることが可能である。
本発明の方法において用いられる塩の条件は、(1)水溶性であること、(2)水が存在すると、結晶水を持った水和物になる性質を有することである。すなわち、添加時の塩の形態としては無水物であっても、塩水和物として、溶解しているPVA中に取込まれることが必要である。これを満足する塩の種類としては、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩及び酸化物等が例示される。
先に述べたように、本発明の方法に従って無機塩をPVAに添加する場合、ポリマーとしての形態を失わず、すなわち透明性、弾力性、ゴム状性質を失わず、300wt%/PVA程度まで添加が可能である。ただし、その添加量によって軟らかさとそれに伴う物理的性質は変化するので、その用途は自ずと異なってくる。
本発明は従来ない性質を有するPVA組成物の提供である。すなわち、PVAにある種の無機塩を独特の条件下で添加することにより、添加量300wt%/PVAに至るまで、透明で弾力性のあるプラスチック状又はゴム状で、独特の性質を有する物質を提供する。
さらに詳しく述べると、
(1)50wt%/PVA以下の場合
添加により、軟らかさは増す傾向が見られるものの、この範囲では無添加PVAと外観、性状に著しい変化は見られない。ただし、その電気的性質(例えば導電性)及び誘電特性(例えばキャパシタンス)は大きく変化する。シート、フィルム、その他への成型は容易である。
(2)50〜150wt%/PVA
無添加PVAと比べてやや軟らかくなり(添加量の増加により軟かさが増す)、プラスチック状又はゴム状を呈す。適切な塩を選ぶことにより、着色はなく、かえって透明性を増す。シート及びフィルムへの成形も可能である。
(3)150wt%/PVA以上
常温での添加―乾燥によっては、シート状又はフィルム状固形物は得られず、縮んだブロック状のものが得られる。しかし、透明で弾力性があり、ゴム状を呈す。組成的には殆ど塩と考えられ、PVAはもはやバインダーとして働いていると考えられ、「ゴム状をした塩(水和物)」として種々の用途が開けるものと考えられる。
すなわち、添加量が小さい場合には、元のPVAの外観、性状を損なうことなく電気特性、誘電特性の著しく異なった物質を得ることができ、添加量を増していくと軟かくなるものの、添加量150wt%/PVA程度までは透明で弾力性のあるゴム状の物質が得られ、この物質はシート、フィルム等への加工も容易である。添加量をさらに増加すると、シートやフィルムへの加工は困難になるが、透明性、弾力性、ゴム状性質は失うことなく保たれる。
このように、添加量を変えると、軟らかさとそれに伴う物理的性状は変化するが、一貫して透明性、弾力性は失われず、プラスチック状又はゴム状を呈す。そして、これらの物質は従来の物質にない特異な性質を示す。
本発明のPVA組成物を得るためには、既述の塩水和物並びにPVAを含んだ溶液から溶媒を除き(普通は気化による)、膜、シート、成型品などの固形物を得るが、この溶媒を気化させるのは、常温又は加熱した状態で行われる。
常温では、一般には、相対湿度約40%において、1日以上2週間以下、また加熱(80℃以下)した状態では、一般には10時間〜50時間で十分である。
この乾燥が十分かどうかは、普通には重量変化で見ることができる。同一条件下での重量変化がほとんど無くなることにより乾燥が十分と判断される。
本発明のPVA組成物の特徴をより具体的に明確にするため、以下に実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(引張試験及び老化試験)
ケン化度97%、平均重合度1,800のPVA(顆粒)200gに蒸留水300gを加え、さらにCa(NO・4HO,Mg(NO・6HO, Al(NO・9HOをそれぞれ10wt%/PVA、60wt%/PVA、100wt%/PVA、150wt%/PVAになるように加えた後、系全体を100℃に加熱し、十分に攪拌し、均一な液とした後、10cm×10cm×1cmのポリフッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン)製の型に厚さ1mmとなるよう計算された量を均一に流し込み、20℃、相対湿度40%にコントロールされたチャンバー中で5日間放置し、厚さ1mmの膜を形成した。
なお、比較のために、塩水和物を加えないサンプルも同時に作成し、ブランクとした。
形成した膜は、塩水和物の添加量の増加に従い、徐々に軟かくなるものの、すべて透明で弾力性のあるプラスチック状又はゴム状であった。
ブランクを含めたこれらそれぞれの膜について、JIS K6251の引張試験による引張強さ(MPa)及び切断時伸び(%)を測定した。
結果を表1に示す。
また、これらのサンプルのいくつかについて、老化試験(ギャー式、70℃、72時間)を実施した。
結果を表2に示す。
本実施例で用いたCa、Mg及びAlの硝酸塩は(1)水に容易に溶け、(2)水が存在すると結晶水を持った水和物を生成することから、本発明に該当する代表的な無機塩の一つである。
本実施例からも明らかなように、PVAが水に溶けた状態にあるとき、これらの塩(水和物)を添加し、十分に溶解させた後、常温又は加熱した状態で溶媒を十分に気化させることによって、添加量150wt%/PVAに至るまで透明で弾力性のあるプラスチック状またゴム状の物質が得られる。添加量の増加によって、軟らかくなる傾向があるため、引張り強さは徐々に低下するが、逆に伸びは増加し、150wt%/PVAでは500%以上に達する。
また、70℃で72h加熱による劣化試験においても、引張り強さで見た劣化はむしろ抑えられる傾向を示しており(表2)、少なくとも上記塩水和物の添加により、劣化が促進される傾向は見られない。
なお、ここで試験したサンプルは常温、相対湿度40%で約6ヶ月間放置したが、サンプルの状態に変化はない。
(ヘーズ(曇価)測定)
本発明のPVA組成物がブランク(未添加)に比べて透明性が上回ることを定量的に示すため、実施例1で作成したサンプルのいくつかについて、ヘーズ(曇価)を測定した。
測定は、JIS K7105に依り、使用試験機はスガ試験機(株)製、直読ヘーズコンピューターHGM−2Kを使用した。
測定結果を表3に示す。
また、参考値として全光線透過率も併せて示した。
本測定結果から明らかなように、Ca(No4HO又はMg(No6HOを添加することにより、ヘーズ(%)は減少し、透明性は改善される。なお、ヘーズ3.0(ブランク)というのはかなり透明性が高いことを示し(例えばアクリルは約5.0)、塩水和物の添加により、これが更に改善される。
(体積抵抗率及び摩擦帯電圧)
潮解性を有する塩水和物の添加により、体積抵抗率及び摩擦帯電圧がどのように変化するかを調べた。体積抵抗率はJISK6911(試験電圧15V、21℃、65%RH)に依った。
結果を表4に示す。
表4から明らかなように、無機塩水和物の添加により体積抵抗率、摩擦帯電圧ともに減少する。これは明らかに無機塩の潮解性によるものであり、またPVA中に極めて均一に分散していることを示すものである。
PVAはもともと比較的親水性の高いポリマーであり、体積抵抗率(又は表面抵抗)も比較的低く、帯電が問題になることは多くない。しかし、本実施例からも分かるように、これに潮解性を有する塩(水和物)を添加することにより、体積抵抗が2〜3桁減少する。したがって、PVAにこれらの塩(水和物)を添加することにより、体積抵抗率(又は表面抵抗)の極めて小さなポリマーが製造されることを示している。
(X線回析)
実施例1〜3に用いたPVAは結晶性ポリマーである。これに本発明により無機塩水和物を導入した場合、その結晶性がどう変化するかは、物性の変化をも関連し、重要である。そこで、実施例1で作成したサンプルのうち、Mg(NO・6HOの添加量を変えたサンプルについてX線チャートを採ってみた。
結果を図1〜図3に示す。
すなわち、図1はPVAのみ(ブランク)のX線回析チャート、図2はMg(NO・6HOを60wt%/PVA添加したもの、図3は同じく100wt%/PVA添加したもののX線回析チャートである。
これらのチャートから明らかなことは、(1)塩水和物の添加によりPVAの結晶性が減少する。(2)100wt%/PVAの添加により、PVAの結晶性はほとんど消失する。すなわち、塩水和物は単にPVA中に物理的に溶解しているのではなく、明らかにPVAの結晶性を消失させるような方向でPVA中に導入されている。このことにより、先に再三述べた透明性の向上も理解される。また、塩水和物が極めて微細にPVA中に分散されていることを示している。
(誘電特性)
実施例1に用いたPVAについて、無機塩水和物としてMg(NO・6HOの添加量を変化させて、その誘電特性の変化を見た。
なお、添加の方法は実施例1と同様である。
結果を表5に示す。
表5から次のようなことがわかる。
(1) 低周波数でのキャパシタンスは添加により増加する。
(2) 低周波数での誘電率は添加により大巾に増加する。
(3) 誘電正接は添加により増加の傾向にあり、とくに高周波数になるほど、その傾向が大きい。
(4) インピダンスの絶対値は添加により、減少する。とくに低周波数領域でその傾向が大きい。また、添加により、周波数による変化が小さくなる傾向がある。
また、インピダンスの実数部及び虚数部の測定結果のコールコールプロットから算出された抵抗値(KΩ・cm)を以下の表6に示す。
添加量の増加により一部の抵抗値が増加する(20<60<100)などの不可解な現象はあるものの、添加により抵抗値は大巾に減少する。すなわち、添加により導電性は大巾に増す。とくに、添加量150wt%/PVAでは抵抗値はほとんど0に近付き、導電性は顕著に増加する。
表5及び表6から、塩水和物の添加により、PVAの誘電特性ならびに導電性が著しく変化することがわかる。すなわち、先の実施例にも示したように、塩水和物の添加により、外観、形状はほとんど変化しないが、その電気的、誘電的性質は大きく変化することがわかる。
(塩水和物の過剰添加)
実施例1〜5は、塩水和物/PVAが150wt%以内であり、この場合、シート、フィルムその他の成型品への成形が可能である領域であった。
本実施例では、さらに添加量を増加した場合の例について述べる。
実施例1に述べたPVAを用い、実施例1と同様の方法により、Mg(NO・6HOを200wt%/PVA、300wt%/PVA添加した。
実施例1と同様、20℃、相対温度40%にコントロールされたチャンバー中で5日間放置したサンプルの状況及び物性を以下に示す:
(1)200wt%/PVA
150wt%/PVA以下の場合のようにシート又はフィルムは形成されず、縮んだシート状のものが生成される。
150wt%/PVAといえば、組成的には大部分は塩で、PVAは単なるバインダーの役割をしていると考えられるが、外観は透明なゴム状であり、弾力性を保っている。その形状から、正確な伸び及び引張り強さは測定困難であるが、大略、測定値は以下のとおりである。
伸び=350%
引張り強さ=10Mpa
また、その誘電特性の測定は、同じくその形状から困難であるが、150wt%/PVAまでの測定結果からコールコールプロットから算出される抵抗値はほとんど0に近いと考えられる。すなわち、R=0Ω・cm
また、この物質なかには30wt%以上のHOを含んでいると考えられ、含水ポリマーの一つの形態として、種々の利用が考えられる物質である。
すなわち、組成的には約66wt%が無機塩及び水であるにもかかわらず、透明なゴム状物質である。
(2)300wt%/PVA
実質的には200wt%/PVAと変わらないが、より軟質になり、伸び及び引張り強さは減少する。
伸び=250%
引張リ強さ=5MPa
また、抵抗値はさらに0に近付くと考えられる
R=0 Ω・cm
(添加される塩の種類)
以上述べてきた実施例においては、本発明における代表的な塩水和物であるMg(NO・6HOの例を中心に述べてきた。これは本発明に包含されるすべての塩について述べるのは不可能なためであり、本実施例においては、その他の塩(又は水和物)を添加した場合について述べる。
実施例1に用いたPVAに、MgCl、CaCl、AlBr、K・3HO及びNaHPO・2HOを、それぞれ水和物換算で10wt%及び30wt%添加した。
添加の方法は、実施例1で述べたと同様であり、溶媒気化後のサンプルの状態及び引張り試験の結果を以下の表7に示す。
表7において、上記の塩又は塩水和物の添加によって、先の実施例とほぼ同様のものが得られる。ハロゲン化物は無水塩を添加したが、PVA水溶液に十分な時間溶解させることにより、PVA中には水和物(結晶水を持った塩)として取り込まれるものと考えられる。
(実施例の総括)
以上の実施例1〜7から次のようなことがわかる。
(1)PVA(けん化度97%、平均重合度1800)が水に溶けた状態で、Ca、Mg及びAlの硝酸塩水和物を加えることによって150wt%/PVAまで添加量を増しても、透明で弾力性のあるプラスチック状又はゴム状の物質が得られる。
(2)塩添加量の増加によって、軟らかくなる傾向があるが、150wt%/PVAまでシート、フィルム及びその他の成型品などを形成することが可能である。
(3)上記添加量の増加によって、引張り強さは減少するが、逆に伸びは大きくなる。
(4)上記サンプルの老化試験によって、これら塩水和物の添加はPVAの老化(70℃、72h)に悪影響は及ぼさず、逆に良い方向に向う傾向がある。
(5)適切の塩を選ぶことにより、添加によりPVAの透明性が向上することが確認され、ヘーズ(曇価)1.9〜2.5のものが得られる。
(6)潮解性を有する塩の添加により、PVAの体積抵抗率及び摩擦帯電圧が減少する。
(7)X線回析によると、上記塩水和物の添加によって、PVAの結晶性が明らかに減少し、100wt%/PVAの添加では結晶性はほとんど消失する。
(8)このことから、塩水和物はPVA中に単に物理的に溶解しているのではなく、PVAの結晶性を消失させるような状態でPVA中に導入されている。
(9)上記無機塩水和物の添加により、PVAの誘電特性は大きく変化する。
(10)とくに、コールコールプロットから算出される抵抗値は大巾に減少し、150wt%/PVAではほとんど0に近付く。
(11) 添加量200wt%/PVA以上では、本条件下ではもはやフィルム及びシートの形成は困難になるが、縮んだシート状の物質が生成し、これは透明で弾力性を有するゴム状の物質で伸びもかなりある。
(12) 上記の塩以外の塩においても同様のサンプルが得られる。
このように、本発明のPVA組成物は従来ないものであり、特異な外観及び性質を有するものである。
PVAのみ(ブランク)のX線回析チャート Mg(NO・6HOを60wt%/PVA添加したもののX線回析チャート Mg(NO・6HOを100wt%/PVA添加したもののX線回析チャート

Claims (8)

  1. ポリビニールアルコール(PVA)が、水又は実質的に水を含んだ(50wt%以上)溶液に溶けた状態にあるとき、水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は結晶水を持った水溶性無機塩水和物を添加し、結晶水を持った塩水和物としてPVA中に取り込んだ後、常温又は加熱した状態で十分に乾燥し、膜、シート及び成型品等の固形物を形成した後も、塩水和物がPVAと化学的に結合し、結晶水として取り込んだ水の50%以上がPVA中に残存し、かつこれら固形物の結晶化度がブランク(塩又は塩水和物を添加しないPVA)の結晶化度の70%以下であることを特徴とするポリビニール成型物。
  2. 重合度1400以上、けん化度95%以上のポリビニールアルコール(PVA)が、水又は実質的に水を含んだ(50wt%以上)溶液に溶けた状態にあるとき、水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は結晶水を持った水溶性無機塩水和物を添加し、結晶水を持った塩水和物としてPVA中に取り込んだ後、常温又は加熱した状態で十分に乾燥し、膜、シート及び成型品等の固形物を形成した後も、塩水和物がPVAと化学的に結合し、結晶水として取り込んだ水の50%以上がPVA中に残存し、かつこれら固形物の結晶化度がブランク(塩又は塩水和物を添加しないPVA)の結晶化度の70%以下であり、全光線透過率がブランクの1%増し以上であり、ガラス転移点温度がブランクの20%以下であり、破断伸びがブランクの20%増し以上であることを特徴とするポリビニール成型物。
  3. 重合度1400以上、けん化度95%以上のポリビニールアルコール(PVA)が、水又は実質的に水を含んだ(50wt%以上)溶液に50℃以上の温度で溶けた状態にあるとき、水が存在すると結晶水を持った水和物になる性質を有する水溶性無水無機塩又は結晶水を持った水溶性無機塩水和物を添加し、結晶水を持った塩水和物としてPVA中に取り込んだ後、加熱した状態で十分に乾燥し、膜、シート及び成型品等の固形物を形成した後も、塩水和物がPVAと化学的に結合し、結晶水として取り込んだ水の50%以上がPVA中に残存し、かつこれら固形物の結晶化度がブランク(塩又は塩水和物を添加しないPVA)の結晶化度の70%以下であり、全光線透過率がブランクの1%増し以上であり、ガラス転移点温度がブランクの20%以下であり、破断伸びがブランクの20%増し以上であることを特徴とするポリビニール成型物。
  4. 上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物が、潮解性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のPVA成型物。
  5. 上記基材PVAが、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態をつくるため、温度を高くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のPVA成型物。
  6. 上記基材PVAが、水又は実質的に水を含んだ溶液に溶けた状態をつくるため、水の他に第3成分を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のPVA成型物。
  7. 上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物の添加量が、1〜150wt%/PVAであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のPVA成型物。
  8. 上記水溶性無水無機塩又は水溶性無機塩水和物の添加量が150〜300wt%/PVAであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のPVA成型物。
JP2006148526A 2006-05-29 2006-05-29 ポリビニールアルコール組成物 Pending JP2006219685A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006148526A JP2006219685A (ja) 2006-05-29 2006-05-29 ポリビニールアルコール組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006148526A JP2006219685A (ja) 2006-05-29 2006-05-29 ポリビニールアルコール組成物

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002317491A Division JP2004149694A (ja) 2002-10-31 2002-10-31 ポリビニールアルコール組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006219685A true JP2006219685A (ja) 2006-08-24
JP2006219685A5 JP2006219685A5 (ja) 2007-05-17

Family

ID=36982199

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006148526A Pending JP2006219685A (ja) 2006-05-29 2006-05-29 ポリビニールアルコール組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006219685A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009073184A (ja) * 2007-08-30 2009-04-09 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 液圧転写印刷用ベースフィルム
JP2009255556A (ja) * 2008-03-19 2009-11-05 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 液圧転写方法及び液圧転写品
JP2017073447A (ja) * 2015-10-06 2017-04-13 Ntn株式会社 圧粉磁心材料、圧粉磁心、およびその製造方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61115936A (ja) * 1984-11-09 1986-06-03 Norihiko Base 細工用成形物
WO2001068746A1 (fr) * 2000-03-15 2001-09-20 Ueda Textile Science Foundation Moulage obtenu a partir d'alcool polyvinylique et son procede de production
JP2004149694A (ja) * 2002-10-31 2004-05-27 Ako Kasei Co Ltd ポリビニールアルコール組成物

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61115936A (ja) * 1984-11-09 1986-06-03 Norihiko Base 細工用成形物
WO2001068746A1 (fr) * 2000-03-15 2001-09-20 Ueda Textile Science Foundation Moulage obtenu a partir d'alcool polyvinylique et son procede de production
JP2004149694A (ja) * 2002-10-31 2004-05-27 Ako Kasei Co Ltd ポリビニールアルコール組成物

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009073184A (ja) * 2007-08-30 2009-04-09 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 液圧転写印刷用ベースフィルム
JP2009255556A (ja) * 2008-03-19 2009-11-05 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 液圧転写方法及び液圧転写品
JP2017073447A (ja) * 2015-10-06 2017-04-13 Ntn株式会社 圧粉磁心材料、圧粉磁心、およびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN101910260B (zh) 含有丙烯酸类树脂的膜、使用该含有丙烯酸类树脂的膜的偏振片及液晶显示装置
TW200815508A (en) Cellulose acylate film, and polarizing plate and liquid crystal display device using the same
CN107501887B (zh) 含特殊结构sag相容剂的高性能聚碳酸酯组合物及其制备方法
JP2010529242A (ja) 高められた応力き裂抵抗性を有する組成物
TW200927818A (en) Chemical-resistant and impact-resistant, thermoplastic resin composition with excellent hydrolysis resistance
WO2020134844A1 (zh) 聚苯乙烯复合材料及其制备方法
JPH0718137A (ja) 帯電防止性樹脂組成物
JP2006219685A (ja) ポリビニールアルコール組成物
CN111500044B (zh) 一种透明静电耗散pc树脂组合物及其制备方法
JP5533858B2 (ja) 光学フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置
KR101765374B1 (ko) 열가소성 투명 수지 조성물, 이의 제조방법 및 이로부터 제조된 성형품
GB2191205A (en) Conductive film-forming composition
JP2014181256A (ja) 樹脂組成物
JP2004149694A (ja) ポリビニールアルコール組成物
JP5950135B2 (ja) 位相差フィルム
JP2006265369A (ja) ポリビニールアルコール組成物
JP2006219685A5 (ja)
JP6637207B1 (ja) 濡れ性向上剤
JP4932695B2 (ja) 液晶性ポリマー組成物
JP2004010714A (ja) 樹脂用配合剤、その製法及びそれを用いた樹脂組成物
JP4918761B2 (ja) 透明性フィルムの製造方法
JP2001114953A (ja) ポリオレフィン系樹脂組成物
JP2003147142A (ja) 熱収縮性塩化ビニル樹脂フィルム
JP3420316B2 (ja) (メタ)アクリル系樹脂組成物
JP7215924B2 (ja) ナノセルロース含有樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20060529

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060529

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070112

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091117

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100118

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100302

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100720