JP2006218831A - 圧密化単板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の圧密化単板の製造方法においては、密閉可能な容器10内に、単板1を、一対の畳織金網2,3間に挟んだ状態で収容した後、該容器を密閉した状態で、単板1と両畳織金網2,3との積層体を、圧縮しながら加熱する。
【選択図】 図1
Description
特許文献2には、密閉容器に排気管を設けて、プレスを維持した状態で排気管から高圧水蒸気を放出し密閉空間内を減圧することが記載されているが、その場合においても、単板内部に高圧水蒸気が残留し、それによる割れの発生を防止することができない。
非特許文献1の方法は、非密閉系での圧密化処理であるため、短時間では圧縮変形を充分に固定化することができない。
本発明の他の目的は、低比重軟質木を利用した、曲げ強度や表面硬度の高い合板を提供することにある。
また、請求項1又は2記載の圧密化単板の製造方法により低比重軟質木の単板から製造した圧密化単板を、合板の少なくとも一層として用いた合板を提供することにより、上記目的を達成したものである。尚、単板と両畳織金網との積層体は、単板と各畳織金網との間が接合されていることを意味するものではない。
本発明の合板によれば、低比重軟質木を利用した、曲げ強度や表面硬度の高い合板を提供することができる。
しかしながら、生単板は、含水率が高いため単板内部から多量の水蒸気が発生する。そのため、短時間で圧密単板から高圧水蒸気を放出することがポイントである。例えば、図1に示すような、圧密治具10に収容して密閉状態下に、圧縮及び加熱した後、密閉治具に取り付けたリークバルブを開放しただけでは、単板内部に高圧水蒸気が残留し、プレス解放時に圧密単板がバラバラに割れてしまうが、本発明では、金網で単板を挟んだ状態で圧密化を行うため、リークバルブを開く等により、減圧する際に、金網内の空間を、単板内部の高圧水蒸気が抜けるため短時間で単板内部から高圧水蒸気を排出することができる。
含水率は、下記の式で求められる。
含水率(%)=(W1−W2)/W2 ×100
(W1:乾燥前の重量(g)、W2:全乾重量(g)
全乾重量:乾燥機中で100〜105℃で乾燥し、恒量に達したと認められるときの重量)
本発明において、低比重軟質木の単板とは、比重が0.2〜0.5のものをいう。また、低比重軟質木の単板は、好ましくは比重0.25〜0.45のものであり、例えばファルカータ(albizzia falcataria)(比重0.30)、ラジアータパイン(pinus radiata)(比重0.43)、中国ポプラ(populus)(比重0.35)、スギ(cryptomeria japonica)(比重0.38)等を挙げることができる。
圧縮率は、下記式で求められる。
圧縮率(%)=(圧縮前厚さ(mm)−圧縮後厚さ(mm))/圧縮前厚さ(mm) ×100
(但し、圧縮後厚さは、加熱及び加圧後、容器から取り出し、冷却した後の厚みである。)
そして、下型11と上型12とを、凸部12aを凹部11aの開口部に嵌合させるようにして組み合わせることにより、内部に密閉空間が形成される。
下型11の下部には、密閉空間内の高圧水蒸気を排出する排気弁(リークバルブ)14が設けられている。
畳織金網とは、縦線は太い線を使用し間隔を開けて、横線は細い線を使用しお互いが接するまで網目を詰めるようにして織った畳表状の織り方の金網であり、平織と綾織の2種類の織り方がある。
平畳織金網は、縦線と横線を交互に組み合わせて織り上げた金網であり、一般的に使用されている平織金網のような平面的な網目ではなく、縦線と横線によってつくられた空間を粒子が通過するため、液体や空気のろ過、脱水に適した金網である。また、太い線径を使用しているため金網の強度が強く、高圧力下での耐久性に優れている。
綾畳織金網は、縦線と横線がお互いに2本以上乗り越して織り上げた綾織式の畳織金網であり、平畳織金網に比べて太い線径を使用して細かく織ることができるため、緻密で強固な、分離用金網である。
平織金網(非畳織金網)では金網が単板にくい込んでしまうため金網を使う効果がない。そのため、本発明で使用する金網は、高温、高圧力状態で耐久性の高い畳織金網である。金網の網目が圧密単板に転写しにくくするためにメッシュが細かく耐久性の高い綾畳織金網を使用することが望ましい。
図3に、平畳織の金網の一例を示し、図4に、綾畳織の金網の一例を示した。
平織の金網を2枚重ねて使用した場合には、金網の耐久性が低く、また、圧密化単板表面に網目が付きやすい。
(準備工程)
先ず、単板1を、図1に示すように、一対の畳織金網2,3間に挟んだ状態で、圧密治具10内にセットする。圧密治具10は、加熱手段を有する加圧装置、例えばホットプレス(図示せず)に取り付ける。具体的には、ホットプレスの上盤に上型12を固定し、下盤に下型11を固定する。圧密治具10は、ホットプレスにより加熱され、単板の加熱温度はホットプレスにより調節する。尚、圧密化単板の厚さ調整は、下型の凹部の底部にスペーサー(金属板)15を設置して行う。
圧密治具10の上型が、畳織金網2に接する程度までプレス上盤を下降させ5秒〜15秒、単板1を加熱する。この加熱により木材をある程度軟化させることができる。これは、単板内部の水分が水蒸気化し、圧密治具からわずかに漏れる程度が望ましい。時間が短いと軟化が不充分となり密閉が不充分となる場合や、単板が潰れた状態となる場合がある。また、時間が長いと単板内部の水分が蒸発し圧縮変形の固定化が不充分となる。
圧密治具10の上型と下型とを密着させてOリング13を圧縮することにより、圧密治具10内部が密閉された状態となる。この状態においては、単板1と畳織金網2,3との積層体に対して、ホットプレスによる圧力と熱が加わっており、また、木材中の水分が気化し水蒸気が発生することで、圧密治具10の内部圧力が上昇し水蒸気処理が行われる。これにより、単板1が圧縮されると共に、その圧縮状態が永久固定化される。
ホットプレス等の加圧機構によるプレス圧力は、2.9〜4.9N/mmであることが好ましく、加熱温度は180〜220℃、特に200〜220℃であることが好ましい。加熱時間は、加熱温度によるが、120秒から10分であることが好ましく、60秒から5分であることがより好ましい。
加熱圧締状態でリークバルブ14を開き密閉治具内部の高圧水蒸気を排出し、密閉治具内部を大気圧に減圧する。
(乾燥工程)
加熱圧締状態を1分〜2分程度維持し圧密化単板を乾燥する。
(冷却工程)
密閉容器を開放し圧密化単板を取り出した後、圧密化単板をコールドプレスで冷却する。この冷却工程は、圧密化単板のあばれ、波打が減少するため、行うことが好ましい。
尚、上述した方法においては、加圧装置の加熱手段により、圧密治具10(容器)を加熱したが、圧密治具10の下型や上型自体に加熱手段を設けても良く、また、圧密治具10の下型及び/又は上型は、加圧手段の上盤又は下盤と一体不可分とされていても良い。また、下型の凹部の底部にスペーサー15を設置するのに代えて、凹部の深さの異なる下型に交換して、圧縮率や圧密化単板の厚み等を調整することもできる。
合板を構成する圧密化単板及び非圧密化単板を併用する場合の非圧密化単板は、低比重軟質造林木を原木とするものが好ましい。本発明は、低比重軟質造林木を使用できる点において特に有用であるが、本発明で使用する単板の原木は、造林木に制限されない。
(実施例1)
ファルカータから得られた平面視正方形状の生単板(370mm×370mm×3.3mm,含水率70%に調整)を、表1に示す金網(平面視における形状及び寸法は単板と同じ,単板の両側で同じ金網を使用)間に挟んだ状態で、上述した構成の圧密治具10における凹部11a(内寸500mm×500mm)内に配置し、上述した好ましい圧密化処理と同様にして、圧密治具10を密閉した状態で、単板と両畳織金網との積層体を圧縮しながら加熱した後、減圧、乾燥、冷却して、圧密化単板を得た。大気圧への減圧後には、直ちにプレスを解圧した。
第1圧締工程の加熱温度及び加熱時間は、200℃及び10秒とし、第2圧締工程の加熱温度及び加熱時間は、200℃及び300秒とした。第1圧締工程のプレス圧力は0.05N/mm2、第2圧締工程のプレス圧力は3.9N/mm2とした。
冷却工程は、温度は室温(10℃〜20℃)、プレス圧力1.0N/mm2で60秒間隔行った。尚、圧縮率は、50%とした。
実施例1において、用いる金網を表1に示すものに代えた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。
実施例1において、単板の何れの面側にも金網を配さない以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。
(比較例2)
実施例1において、単板の片面側のみに金網を配さない以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。
実施例1において、単板の両側それぞれに、平織の金網を2枚重ねて使用した以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。尚、表1中、単板側とは、単板1に接する金網を意味し、定盤側とは、上型12及びスペーサー15に接する金網を意味する。
得られた圧密化単板の表面を観察し、割れの有無を調べると共に、表面状態を下記の評価基準で評価し、それらの結果を表1に示した。
◎:目視で単板表面の網目がわからない。手でさわってもわずかに感じる程度であり、接 着性問題なし。合板の表面単板に使用してもサンディングの必要なし。
○:目視で網目がわかるが、接着性問題なし。サンディングの必要なし。
△:単板に転写する網目が大きく、接着性が悪い。サンディングが必要。
×1:単板表面の網目が大きい。サンディングで平滑にするのが困難。
×2:金網の耐久性に問題あり。新品では問題ないが使っているうちに圧密治具に接する メッシュ数の小さい金網の影響により単板表面に大きな網目が転写する。
本発明で得られる圧密化単板の曲げに対する特性を評価すると共に、圧縮率が圧密化単板に与える影響を評価するべく、上述した実施例1において、圧縮率を表2に示す値に代えた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を製造し、得られた圧密化単板の曲げ強度や曲げヤング係数を測定して、その結果を、表2に示した。尚、表2中、サンプル15が、上述した実施例1の圧密化単板である。
尚、曲げ強度及び曲げヤング係数は、JIS Z 2101木材の試験方法に準拠して測定した。圧密化単板を曲げる方向は、スパンの方向と試験片の繊維方向が同じ方向とし、中央集中荷重方式にて行った。
上述した実施例1において、使用した単板の含水率を何れも50%とし、また寸法を表3に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を製造した。圧密治具の内部空隙に対する単板の水分量を算出すると共に、回復度を測定して、それらの結果を表3に示した。尚、表3中、サンプル23が、上述した実施例1の圧密化単板である。
回復度(%)=(LR−LC)/(LO−LC) ×100
(但し、LRは回復試験後の全乾状態の厚さであり、LCは圧密後の全乾状態の厚さであり、LOは圧密前の全乾状態の厚さである。)
回復試験は次の方法で行った。圧密化した試験体を105℃で24時間乾燥し圧密後の暑さ(LC)を測定した後、沸騰水中で2時間煮沸し回復試験を行った。その後、105℃で24時間乾燥し回復試験後の厚さ(LR)を測定した。
表3中の治具内部空隙は、上型の凸部が下型の凹部内に入って、その凸部が、上側の金網に突き当たった時点の空隙であり、該空隙に容積(体積)には、スペーサーや金網(金網内の空隙も同様)の体積は含めない。
上述した実施例1において、使用した単板の含水率を表4に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を製造した。圧縮加熱処理中の圧密治具の内圧と、回復度とを測定して、それらの結果を表4に示した。尚、表4中、サンプル35が、上述した実施例1についての結果である。
上述した実施例1において、第2圧締工程における温度条件及び時間を表5に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を製造した。この場合の回復度を求め、それらの結果を表5に示した。尚、表5中、温度200度、時間300秒の結果が、上述した実施例1についての結果である。
1.圧密化単板の製造
厚さ3.3mm×幅950mm×長さ1,850mmのファルカータ生単板を使用し、圧縮率55%、加熱温度200℃、加熱時間300秒の条件で圧密化処理を行い、厚さ1.5mmのファルカータ圧密化単板を製造した。使用した生単板の含水率は70%〜100%である。
ファルカータ生単板は、メッシュ200の畳織金網に挟んだ状態で圧密治具内に配置し、密閉状態で加圧及び加熱して圧密化した。
圧密化単板の製造条件を表6に示す。
尚、乾燥工程は、圧密治具内部圧力を大気圧に開放後実施した。また、冷却工程は、圧密治具から圧密単板を取り出した後、コールドプレスを用いてプレスした。
得られた圧縮率55%の圧密ファルカータ単板について、曲げ強度及び曲げヤング係数を測定した結果、曲げ強度が113MPa、曲げヤング係数が16GPaであり、現在、針葉樹構造用合板に多用されているロシアカラマツ(ラーチ)単板の約1.2倍の曲げ強度、曲げヤング係数があった。また、この圧密化単板の回復度は最大3%であり永久固定化されていた。
曲げ強度及び曲げヤング係数の測定は、JIS Z 2101木材の試験方法に準拠し、上記の試験1と同様の方法により測定した。圧密化単板を曲げる方向は、スパンの方向と試験片の繊維方向が同じ方向とし、中央集中荷重方式にて行った。試験片は、幅50mm×長さ200mm、スパン150mmとした。
尚、表7中、圧密ファルカータより下の4つの単板は、表中に記載の樹種から得られた単板であり、圧密化処理を行っていないものである。
このファルカータ圧密化単板を表板及び裏板に使用した、厚さ24mm×幅910mm× 長さ1,820mmの合板を試作した。
(1)単板構成
製造する圧密単板貼り合板は、図5にその一部を示すように、表板1A及び裏板1Bに、上述のようにして得られた圧密ファルカータ単板を使用し、ラジアータパイン又はファルカータを芯板及びそえ芯板1Cとして使用して9プライの構成としたものである。表8に示す通り、合板1は、ラジアータパインを芯板及びそえ芯板1Cとし、合板2は、ファルカータを芯板及びそえ芯板1Cとした。
表8は、各層に使用した単板の種類(樹種)、単板の厚さ(プレス前の厚さ)、各層の枚数を示している。即ち、合板1は、表板及び裏板は厚さ1.5mmの圧密ファルカータ単板が各1層、そえ芯板は厚さ3.2mmのラジアータパイン単板が4層、芯板は厚さ8.0mmのラジアータパイン単板が3層の9プライ(9層)の単板構成とした。尚、表板、裏板及び芯板は繊維方向が長さ方向、そえ芯板は繊維方向が幅方向の単板であり、そえ芯板と芯板を繊維方向が交互になるように積層し、表板と裏板それぞれはそえ芯板上に積層した(表板/そえ芯板/芯板/そえ芯板/芯板/そえ芯板/芯板/そえ芯板/裏板)。
接着剤は、フェノール樹脂系接着剤を使用した。主剤であるフェノール樹脂は、Jケミカルズ(旧ホーネンコーポレーション)製の加熱硬化型アルカリ・フェノール樹脂(レゾール型)PF−330を使用し、表9に示した他の原料を混合し粘度調整を行って使用した。
・糊付け〜貼り上げ
接着剤は塗布量を片面200g/m2以上、両面で400g/m2以上とし、そえ芯板に使用する単板の両面にスプレッダーを使用して塗布した。接着剤塗布後、単板を上記(1)の単板構成に記載の構成で積層した。
・プレス
上記の単板の積層物(LVLを意味しない)を、冷圧プレス0.9N/mm2で30分、次に熱圧プレス0.9N/mm2で10分でプレスし、合板を製造した。プレス条件を表10に示した。
得られた合板の比重、曲げ強度、曲げヤング係数を測定し、表11に示した。表11には、比較のため、合板1,合板2に加えて、他の合板の構成及び同様にして測定したそれらの合板の物性を併せて示した。
表11に示すように、圧密ファルカータ単板を、表板及び裏板に使用して得た圧密ファルカータ/ラジアータ合板(合板1)の曲げ強度、曲げヤング係数は、針葉樹構造用合板に使用されている、オールラーチ、ラーチ/ラジアータ、ラーチ/スギと同等の性能があった。また、圧密ファルカータ/ファルカータ合板(合板2)は、これらより少し性能が低いが、床パネルとして使用するには充分な性能を持っており、また、比重は0.4と低く、軽量でありながら高強度の合板であった。
2,3 畳織金網
10 圧密治具(密閉可能な容器)
11 下型
11 凹部
12 上型
20 合板
1A,1B 合板の表材及び裏材として用いた圧密化単板
1C 芯板及びそえ芯板
Claims (5)
- 密閉可能な容器内に、単板を、一対の畳織金網間に挟んだ状態で収容した後、該容器を密閉した状態で、前記単板と前記両畳織金網との積層体を、圧縮しながら加熱することを特徴とする圧密化単板の製造方法。
- 前記単板が、生単板であることを特徴とする請求項1記載の圧密化単板の製造方法。
- 請求項1又は2記載の圧密化単板の製造方法により低比重軟質木の単板から製造した圧密化単板を、合板の少なくとも一層として用いた合板。
- 前記低比重軟質木の単板から製造した圧密化単板を、合板の表材及び/又は裏材を構成する単板として用いた請求項3記載の合板。
- 前記低比重軟質木の単板から製造した圧密化単板を、合板の表材及び裏材を構成する単板として用いると共に、他の層を構成する単板として低比重軟質木の単板を用いた請求項4記載の合板。
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