しかしながら、前記従来技術における波面補正には次のような問題点がある。
まず、従来技術ではグレーティング10の曲げのみによって前記波面補正を行なっているが、この曲げによってグレーティング10が破損する可能性がある。また、グレーティング10の表面には精密な溝が刻まれており、その波長選択性能を低下させずに曲げられる曲率の許容範囲には限界がある。そのため、グレーティング波面15の歪みが前記許容範囲よりも大きくなった場合は、この方法ではグレーティング波面15に対する波面補正を行なうことができなくなり、エキシマレーザ4の前記波長特性が低下する。
また、前記波面補正は前記狭帯域化ユニット12をエキシマレーザ4に搭載し、エキシマレーザ4を発振させて、その波長特性を計測しながら行なわなければならない。そのため、実際に発振させるまでは波面補正の効果が不明であり、波面補正がうまくゆかなかった場合には前記狭帯域化ユニット12の一部の光学部品を交換するなどして波長特性を再計測しなければならないため、原因の究明に長時間を要する。また、前記波面補正には熟練を必要とするため、作業者によって波面補正の結果が異なり、波長特性に関する繰り返し精度のばらつきが大きくなる。
さらに、個々の光学部品が波面を歪める程度は大きくなくても、これらを組み合わせることによって前記波面の歪みが増幅されることがある。従来技術では、各々の光学部品をランダムに組み合わせ、結果として生じた波面の歪みに対応してグレーティング10で波面補正を行なっている。そのため、各々の光学部品の特性が不明であり、組み合わせの選択を誤ると適切な光学部品を不適切であると判断して放棄することがあるなど、部品購入のコストが増大する。
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、波面が最適化されたエキシマレーザ用光学部品の組み合わせにより構成できる狭帯域発振エキシマレーザの波面最適化方法を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、第1発明は、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4において、それぞれの光学部品に対して既知の波面を入射させた際の出射波面41の形状である波面特性W(X,Y) を測定し、このそれぞれの波面特性W(X,Y) に基づいて、エキシマレーザ4から出射するレーザ光3の波面であるレーザ波面39の波面形状KL(X,Y)を演算し、このレーザ波面39の波面形状KL(X,Y)が所定の形状になるように選択及び調整された光学部品を備えている。
また、第2発明は、狭帯域化を行なうための光学部品を有する狭帯域化ユニット12を備え、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4において、それぞれの光学部品に対して既知の波面を入射させた際の出射波面41の形状である波面特性W(X,Y) を測定し、このそれぞれの波面特性W(X,Y) に基づいて、狭帯域化ユニット12から出射するレーザ光3の波面であるユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を演算し、このユニット波面34の波面形状KU(X,Y)が所定の形状になるように選択及び調整された狭帯域化ユニット12の光学部品を備えている。
また、第3発明は、発振したレーザ光3を整形するビームエキスパンダ9と、ビームエキスパンダ9の出射光を入射して狭帯域化するグレーティング10とを有する狭帯域発振エキシマレーザ4において、それぞれの光学部品に対して既知の波面を入射させた際の出射波面41の形状である波面特性W(X,Y) を測定し、このそれぞれの波面特性W(X,Y) に基づいて、前記ビームエキスパンダ9から出射するレーザ光3の波面を構成する成分であるグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を演算し、このグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)が所定の形状になるように選択及び調整された前記ビームエキスパンダ9の光学部品を備えている。
また、第4発明は、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4において、前記狭帯域発振エキシマレーザ4に既知の波面を入射させた際の出射波面41であるレーザ波面39の波面形状KL(X,Y)を測定して、この波面形状KL(X,Y)が所定の形状になるように波面を調整する調整手段を備えている。
また、第5発明は、狭帯域化を行なうための光学部品を有する狭帯域化ユニット12を備え、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4において、前記狭帯域化ユニット12に既知の波面を入射させた際の出射波面41であるユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を測定し、この波面形状KU(X,Y)が所定の形状になるように波面を調整する調整手段を有する狭帯域化ユニット12を備えている。
また、第6発明は、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4の波面最適化方法において、既知の波面を入射させた際の出射波面41の形状である波面特性W(X,Y) をそれぞれの光学部品に対して測定し、このそれぞれの波面特性W(X,Y) に基づいて、各光学部品を組み合わせた際の波面形状K(X,Y) を演算し、この波面形状K(X,Y) が所定の形状となるように前記各光学部品の選択を行なうようにしている。
また、第7発明は、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4の波面最適化方法において、狭帯域化ユニット12を組み立て、前記狭帯域化ユニット12に既知の波面を入射させた際の出射波面41であるユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を前記組み立てられた狭帯域化ユニット12に対して測定し、この波面形状KU(X,Y)が所定の形状となるように光学部品の調整を行なうようにしている。
また、第8発明は、狭帯域発振を行なう狭帯域発振エキシマレーザ4の波面最適化方法において、狭帯域発振エキシマレーザ4を組み立て、この狭帯域発振エキシマレーザ4に既知の波面を入射させた際の出射波面41であるレーザ波面39の波面形状KL(X,Y)を前記組み立てられたエキシマレーザ4に対して測定し、この波面形状KL(X,Y)が所定の形状となるように光学部品の調整を行なうようにしている。
第1発明によれば、エキシマレーザの各光学部品について波面特性を計測し、これに基づいて光学部品を選択して組み合わせ、エキシマレーザから出射するレーザ波面の波面形状が所定の形状になるようにしている。レーザ波面の波面形状は、波長特性に対して最適形状を有するので、これによって実際に発振を行なわずとも波長特性を又は所定の範囲に収めるように最適化することができ、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。
第2発明によれば、狭帯域化ユニットの各光学部品について波面特性を計測し、これに基づいて光学部品を選択して組み合わせ、狭帯域化ユニットから出射するユニット波面の波面形状が所定の形状になるようにしている。ユニット波面の波面形状は、波長特性に対して最適形状を有するので、これによって実際に発振を行なわずとも波長特性を又は所定の範囲に収めるように最適化することができ、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。
第3発明によれば、各光学部品について波面特性を計測し、これに基づいて光学部品を選択して組み合わせ、ビームエキスパンダを出射してグレーティングに入射するレーザ光の波面形状を所定の形状にするようにしている。これにより、波面補正のためにグレーティングを大きく曲げる必要がなくなるので、グレーティングの波長選択特性が低下せず、好適に波面補正を行なえる。また、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。
第4発明によれば、狭帯域発振エキシマレーザに既知の波面を入射させた際の出射波面であるレーザ波面の波面形状を測定し、これを所定の形状になるように光学部品を調整している。レーザ波面の波面形状は、波長特性に対して最適形状を有するので、これによって実際に発振を行なわずとも波長特性を又は所定の範囲に収めるように最適化することができ、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。また、個々の光学部品の前記波面特性によらず、エキシマレーザ全体を最適化することが可能である。
第5発明によれば、前記狭帯域化ユニットに既知の波面を入射させた際の出射波面であるユニット波面の波面形状を測定して、これを所定の形状になるように光学部品を調整している。ユニット波面の波面形状は波長特性に対して最適形状を有するので、これによって実際に発振を行なうことなしに波長特性を最適化するか、又は所定の範囲に収めることができ、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。また、個々の光学部品の前記波面特性によらず、狭帯域化ユニット全体を最適化することが可能である。
第6発明によれば、各光学部品に対して波面特性を測定し、これらの光学部品を組み合わせた際にこれらの光学部品から出射するレーザ光の波面形状を演算によって導き、これが所定の形状となるように光学部品の選択を行なっている。光学部品の波面形状は波長特性に対して最適形状を有するので、これによりあらかじめ適切な光学部品の組み合わせを選択してエキシマレーザを組み立てることができ、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。
第7発明によれば、狭帯域化ユニットを組み立て、この狭帯域化ユニットに既知の波面を入射させた際の出射波面であるユニット波面の波面形状を測定して、これが所定の形状になるように狭帯域化ユニットの各光学部品を調整している。この狭帯域化ユニットの波面形状は波長特性に対して最適形状を有するので、これを所定の形状に調整することにより、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。また、組み立てた光学部品をレーザに搭載する前に調整を行なうことができるので、実際に発振を行なうことなしに波長特性を所定の範囲に収めることができ、搭載してから調整がうまくゆかないということがなく、調整時間を短縮できる。また、調整時に発振のための電力が不要であり、調整のためのコストを低減できる。
第8発明によれば、狭帯域発振エキシマレーザを組み立て、このエキシマレーザに既知の波面を入射させた際の出射波面であるレーザ波面の波面形状を測定して、これが所定の形状になるようにエキシマレーザの各光学部品を調整している。エキシマレーザの波面形状は波長特性に対して最適形状を有するので、これを所定の形状に調整することにより、良質な光品位のレーザ光を得ることができる。また、組み立てた光学部品をレーザに搭載する前に調整を行なうことができるので、実際に発振を行なうことなしに波長特性を所定の範囲に収めることができ、搭載してから調整がうまくゆかないということがなく、調整時間を短縮できる。また、調整時に発振のための電力が不要であり、調整のためのコストを低減できる。
以下、図を参照しながら、本発明に係わる実施形態を詳細に説明する。なお、図において同一の符号を付したものは、従来技術と同一の構成を表すものとする。
図1〜図2に基づいて、第1の実施形態を説明する。図1に、フィゾー干渉計によって、測定対象8であるプリズム7の特性を計測する際の構成を示す。同図において、例えばKrFエキシマレーザの発振波長である248nmの発振波長に近い発振波長を持つアルゴン倍波レーザ25から発振したレーザ光29を基準光とし、このレーザ光29を拡散レンズ26、ビームスプリッタ28及びコリメータレンズ27を透過させて拡大し、拡大された平面波40を部分透過ミラーからなる参照ミラー31に入射させる。この参照ミラー31は両面が平行に精密研磨されており、透過或いは反射による波面の歪みを最小限に抑えている。
前記レーザ光29は、前記参照ミラー31で一部が反射されて参照光となり、一部は参照ミラー31を透過して、測定対象8であるプリズム7に入射する。プリズム7を透過した光の波面を出射波面41とすると、これがミラー24に垂直に入射して反射され、前記プリズム7を逆向きに透過して参照ミラー31に逆向きに入射し、波面42を有した測定光となる。ミラー24は、前記参照ミラー31と同様にその表面が平坦に精密研磨されており、入射した光の波面をそのままの形で反射するようにしている。
ここで、前記参照光と測定光とはビームスプリッタ28で図中下向きに反射され、結像レンズ35を通過して波面情報を含む干渉縞33をCCDカメラ36に結像する。また前記参照ミラー31は、例えばCPUを備えた干渉計コントローラ38からの指令に基づいて、ピエゾ素子を使ったピエゾアクチュエータ30を駆動することによって図中Z軸方向に微動可能であり、この移動に伴って前記干渉縞33が移動する。この干渉縞33の像を前記干渉計コントローラ38で分析することによって、測定光の波面42の形状を知ることができ、ここから出射波面41の形状を演算することができる。出射波面41の形状は、このプリズム7に平面波40を入射させたときに、どのような出射波面41が出射するかを表したもので、図中X,Y軸の関数として表すことができ、この関数をプリズム7の波面特性Wp(X,Y)と呼ぶ。また、干渉計コントローラ38での演算によって、この波面特性Wp(X,Y)を曲面で近似して、出射波面41の曲率半径Rp を算出することも可能である。このように、同図に示したフィゾー干渉計をプリズム7の波面特性Wp(X,Y)を測定する波面特性測定装置20として利用することができる。
このとき、前記図18に示すように狭帯域化ユニット12に入射する入射波面32が平面波であり、前記測定によってプリズム7A,7Bの波面特性W(X,Y)がそれぞれ波面特性WpA(X,Y) ,波面特性WpB(X,Y) であったとすると、グレーティング10に入射するグレーティング波面15の形状は図中X,Y軸の関数として表すことができる。この関数を波面形状KG(X,Y)と呼び、次の数式1で表される。
KG(X,Y)=WpA(X,Y) +WpB(X,Y)…………(1)
すなわち、各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定することによって、これらの光学部品を通過又は反射した波面の波面形状K(X,Y) を知ることができる。
また、このグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)から、グレーティング波面15の曲率半径RG を演算することができる。この曲率半径RG を、グレーティング10の波長選択特性が低下しない許容範囲内に収めることができれば、前記波面補正を行なうことが可能である。
図2に、狭帯域化ユニット12を構成する各光学部品の前記波面特性W(X,Y)を測定して、前記曲率半径RG を前記許容範囲内に収めるための手順の一例を、フローチャートで示す。まず、狭帯域化ユニット12に使用するプリズム7A,7Bを選定し(ステップS1)、前記図1で説明したように波面特性測定装置20を用いて上記選定したプリズム7A,7Bのそれぞれの波面特性WpA(X,Y) ,WpB(X,Y) を測定し(ステップS2)、そこからそれぞれの波面の曲率半径RA,RB を演算する(ステップS3)。次に、これらの曲率半径RA ,RB が所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS4)、許容範囲に入っていないものについては光学部品を新たに選定して(ステップS5)、ステップS2に戻って波面特性W(X,Y) の再測定を行なう。これは、前記出射波面41の曲率半径Rが許容範囲からはずれているものは、加工精度が悪かったり内部が歪んでいたりしていると判断できるからである。ステップS3で各光学部品の曲率半径Rが許容範囲内であれば、前記数1に従ってグレーティング10に入射するグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を求め(ステップS6)、グレーティング波面15の曲率半径RG を求める(ステップS7)。ここで、この曲率半径RG が、所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS9)、許容範囲に入っていなければグレーティング10を曲げても前記波面補正がうまくゆかないのでステップS1に戻って部品の選定をやり直し、許容範囲内に入っていればこれらの部品を使って狭帯域化ユニット12を組み立てる(ステップS11)。
前記手順の中で、ビームエキスパンダ9が2個のプリズム7A,7B以外に他の光学部品を含んでいる場合は、ステップS2でそれらの光学部品の波面特性W(X,Y) を測定して曲率半径Rを求め、ステップS4でそれらが許容範囲内にあることを確認し、ステップS6でグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を求める際に、数1と同様にそれぞれの波面特性W(X,Y) をすべて足し合わせるようにすればよい。
このように本実施形態によれば、まず各光学部品についてその波面特性W(X,Y) を測定し、それらの波面特性W(X,Y) を足し合わせることによって、グレーティング10に入射するグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を求め、そこから曲率半径RG を演算し、これが所定の許容範囲内に収まるように光学部品を選定している。これにより、実際に狭帯域化ユニット12を組み立てることなく、短時間で前記狭帯域化に適切な部品を選定することができる。そうすれば、前記曲率半径RG が所定の許容範囲内に収まっているので、グレーティング10を曲げて前記波面補正を行なうことが可能であり、良質な光品位のエキシマレーザ4を得ることができる。また、グレーティング10を曲げることなく良好な波長特性を得ることも可能である。
次に、図3〜図7に基づいて、第2の実施形態を説明する。なお、図において同一の符号を付したものは、従来技術及び前記実施形態と同一の構成を表すものとする。図3に、第2の実施形態に係わるエキシマレーザ4の構成を示す。同図に示すように、このエキシマレーザ4の前記狭帯域化ユニット12は、プリズム7A,7B,7C、ミラー37、及びグレーティング10から構成されている。前記実施形態と同様にリアウィンドウ5から出射したレーザ光3は、プリズム7A,7Bを通過する間にその径を拡げられ、ミラー37で反射してプリズム7Cによって再度その径を拡げられ、グレーティング10に入射する。ミラー37は図示しない回転アクチュエータによって図中矢印方向に回転可能であり、この回転によってグレーティング10の選択波長を変更することができる。グレーティング10は、図示しない角度アクチュエータによってレーザ光3の光路に対する角度を制御されており、選択された所定の波長だけを発振させることで前記狭帯域化を行なっている。また、前記実施形態と同様に、図示しない曲率アクチュエータによってグレーティング10を曲げて前記波面補正を行なうことが可能である。
図4に、前記図1のプリズム7と同様に前記グレーティング10やミラー37を測定対象8として設置し、グレーティング10の波面特性Wg(X,Y)やミラー37の波面特性Wm(X,Y)を計測する際の構成を示す。このように、同図に示したフィゾー干渉計を、狭帯域化ユニット12を構成する各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定する波面特性測定装置20として利用することができる。
このとき、狭帯域化ユニット12から出射するレーザ光3の波面をユニット波面34とし、その波面形状を波面形状KU(X,Y)とすると、この波面形状KU(X,Y)は前記数1と同様に、狭帯域化ユニット12を構成する各光学部品の波面特性W(X,Y) を、光路に沿った順序で加えることによって求められる。
そこで、前記図1及び図4に基づいて、狭帯域化ユニット12を構成する各光学部品の波面特性W(X,Y) を計測する。プリズム7A,7B,7C、ミラー37、及びグレーティング10の波面特性W(X,Y) を、それぞれWpA(X,Y) ,WpB(X,Y) ,WpC(X,Y) ,Wm(X,Y),Wg(X,Y)とすると、波面形状KU(X,Y)は次の数式2によって求められる。
KU(X,Y)=WpA(X,Y) +WpB(X,Y) +Wm(X,Y)+WpC(X,Y) +Wg(X,Y)+WpC(X,Y) +Wm(X,Y)+WpB(X,Y) +WpA(X,Y)…………(2)
この波面形状KU(X,Y)から、ユニット波面34の曲率半径RU を求めることができる。ここで、曲率半径RU の逆数を平面度FU とする。
図5に、エキシマレーザ4の前記線幅と、前記ユニット波面34の平面度FUとの関係を示す。前記平面度FU が0になる点が、前記ユニット波面34が平面波となる点である。同図より、平面度FU が、エキシマレーザ4の線幅に対して最適平面度FUop を持つことがわかる。すなわち、エキシマレーザ4の線幅を最小にするためには、平面度FU を最適平面度FUop に一致させれば前記ユニット波面34を最適化でき、前記線幅が最小となる。また、線幅を例えばステッパの露光に必要な線幅許容値以下に抑えるためには、前記平面度FU を所定の許容範囲内に収めるようにすればよい。
さらに、エキシマレーザ4の前記中心波長の安定性(線幅純度とも言う)に関しても、やはり同様の最適平面度FUop2が存在する。すなわち、前記波面特性を例えばステッパの露光に必要な許容範囲内に収めるためには、前記線幅と中心波長の安定性を共に所定の許容範囲内に収めるようにすればよく、そのためには前記平面度FU を所定の許容範囲内に収めるようにすればよい。
図6に、前記波面特性測定装置20を用いて、前記ユニット波面34の最適化を行なう手順の一例をフローチャートで示す。まず、前記プリズム7A,7B,7C、ミラー37、及びグレーティング10を選定し(ステップS21)、次に、前記図1及び図4で説明したように干渉計を用いて、前記各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定し(ステップS22)、各光学部品の出射波面41の曲率半径Rを演算する(ステップS23)。次に、これらの曲率半径Rが所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS24)、許容範囲に入っていないものについては光学部品を新たに選定して(ステップS25)、ステップS22に戻って波面特性W(X,Y) の再計測を行なう。ステップS24で前記曲率半径Rが許容範囲内であれば、前記数2に従って前記ユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を求め(ステップS26)、それから前記平面度FU を求める(ステップS27)。ここで、この平面度FU が所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS29)、許容範囲に入っていなければステップS21に戻って部品の選定をやり直し、許容範囲内に入っていればこれらの部品を使って狭帯域化ユニット12を組み立てる(ステップS31)。
このとき、同図の手順に、前記実施形態において図2で説明した手順を加えた一例を図7に示す。すなわち、ステップS24とステップS26との間に点線で囲んだ部分を挿入し、各光学部品の曲率半径Rが許容範囲内であることを確認した後、前記グレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を求める(ステップS33)。これは、次の数式3による。
KG(X,Y)=WpA(X,Y) +WpB(X,Y) +Wm(X,Y)+WpC(X,Y)…………(3)
そして、この波面形状KG(X,Y)からグレーティング10に入射するグレーティング波面15の曲率半径RG を求め(ステップS34)、これが所定の許容範囲内にあるか否かを確認し(ステップS35)、許容範囲に入っていなければステップS21に戻って部品の選定をやり直し、許容範囲内に入っていれば、ステップS26に移行して前記波面形状KU(X,Y)を求める。
このように本実施形態によれば、狭帯域化ユニット12の各光学部品についてその波面特性W(X,Y) を測定し、それらの和であるユニット波面34の波面形状KU(X,Y)から、前記平面度FU を求め、これが所定の許容範囲内に収まるように光学部品を選定している。前記図5に説明したように、この平面度FU はエキシマレーザ4の波長特性について最適値を持ち、これを所定の範囲に収めることによって、前記波長特性を所定の範囲に収めることができる。すなわち、この平面度FU が所定の許容範囲になるように狭帯域化ユニット12の光学部品を選定することによって、狭帯域化したレーザ光3の光品位を、要求される範囲に収めることができる。
次に、図8に基づいて第3の実施形態を説明する。なお、図において同一の符号を付したものは、従来技術及び前記実施形態と同一の構成を表すものとする。
図8は、前記波面特性測定装置20を用いて、前記図3に示した狭帯域化ユニット12を測定対象8とし、これから出射するユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を測定する際の構成図である。同図において、前記図1と同様に参照ミラー31を通過したレーザ光29は、プリズム7A,7Bを通過し、ミラー37で反射し、プリズム7Cを通過して、グレーティング10に入射する。グレーティング10で反射した光は、前記の光路を逆向きに通って、測定光として参照ミラー31に入射する。測定光と前記参照光とによって形成された干渉縞33を前記CCDカメラ36上に結像させ、これを前記干渉計コントローラ38で分析することによって、前記波面形状KU(X,Y)を計測することができる。このとき、上述の各光学部品はランダムに選定してもよいし、前記第2実施形態において説明したような手順で選定した光学部品を使用してもよい。
すなわち本実施形態では、前記図6に示した手順で演算によって求めた波面形状KU(X,Y)を波面特性測定装置20で実際に計測している。そして、前記平面度FU を演算しながら、前記曲率アクチュエータでグレーティング10の曲率を調整してこの平面度FU を前記所定の許容範囲内に収めるとともに、これを前記最適平面度FUop にさらに近づけることができる。
またこのとき、曲率アクチュエータをグレーティング10だけでなく前記ミラー37にも装着し、前記平面度FU を測定しながらこのミラー37の曲率を調整して前記波面形状KU(X,Y)を最適化することも可能である。また、前記各プリズム7(7A,7B,7C等)に例えばペルチェ素子等の温調素子を貼り、前記平面度FU を測定しながらこの温度を制御してプリズム7の波面特性Wp(X,Y)を変化させ、前記波面形状KU(X,Y)を最適化することも可能である。
このように、前記第1、第2実施形態では各光学部品の波面特性W(X,Y) に基づいて光学部品の選定を行なったのに対し、本実施形態では狭帯域化ユニット12を組み立て、その狭帯域化ユニット12から出射する波面の波面形状KU(X,Y)を波面特性測定装置20で測定している。そして、この波面形状KU(X,Y)に基づいて平面度FU を演算しながら、これを所定の範囲内に収めるように、各光学部品の曲率や温度を調整して前記波面補正を行なっている。このように、波面形状KU(X,Y)をさらに最適化できるので、エキシマレーザ4から出射するレーザ光3の光品位を、さらに良質のものにすることができる。
また本実施形態によれば、狭帯域化ユニット12の調整をエキシマレーザ4に搭載する前に行なうことができるので、搭載してから調整がうまくゆかないということがなく、調整時間を短縮できる。また、調整時に発振のための電力が不要であり、調整のためのコストを低減できる。また、狭帯域化ユニット12をエキシマレーザ4と別の場所で調整して搭載することが可能なので、エキシマレーザ4の波長特性に問題が起きたときなどに狭帯域化ユニット12をあらかじめ調整済みのものと交換することで調整時間を短縮でき、例えばステッパなどのダウンタイムを短縮できる。また、前記狭帯域化ユニット12を波面補正した結果を例えば平面度FU という数値で評価しているので補正の目標値が設定でき、作業者の熟練度によって波面補正の度合いが異なるということがなくなるので、繰り返し精度の良い波面補正が可能である。
次に、図9〜図12に基づいて、第4の実施形態を説明する。なお、図において同一の符号を付したものは、従来技術及び前記実施形態と同一の構成を表すものとする。図9は本実施形態によるエキシマレーザ4の構成図であり、狭帯域化ユニット12内に4個のプリズム7A〜7Dを備えている。このエキシマレーザ4から出射される波面をレーザ波面39、レーザ波面39の形状を波面形状KL(X,Y)、レーザ波面39の曲率半径Rを曲率半径RL 、曲率半径RL の逆数を平面度FL とする。
ここで図10に、エキシマレーザ4の前記線幅と、前記レーザ波面平面度FLとの関係を示す。レーザ波面平面度FL が0になる点が、前記レーザ波面39が平面波となる点である。同図より、前記図5と同様に前記平面度FL が、エキシマレーザ4の線幅に対して最適平面度FLop を持つことがわかる。すなわち、エキシマレーザ4の線幅を最小にするためには、平面度FL を最適平面度FLop に一致させて前記レーザ波面39を最適化すればよい。また、前記線幅を例えばステッパの露光に必要な線幅許容値以下に抑えるためには、前記平面度FL を所定の許容範囲内に収めるようにすればよい。
また、エキシマレーザ4の前記中心波長の安定性に関しても、やはり同様の最適平面度FLop2が存在する。すなわち、前記波長特性を例えばステッパの露光に必要な許容範囲内に収めるためには、前記線幅と中心波長の安定性を共に所定の許容範囲内に収めるようにすればよく、そのためには前記平面度FL を所定の許容範囲内に収めるようにすればよい。
図11に、前記波面特性測定装置20を用いて前記レーザ波面39の最適化を行なう手順の一例をフローチャートで示す。まず、プリズム7A,7B,7C,7D、ミラー37、グレーティング10、リアウィンドウ5、フロントウィンドウ13、及びフロントミラー14を選定し(ステップS41)、次に、前記図1及び図4で説明したように干渉計を用いて前記各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定し(ステップS42)、各光学部品の曲率半径Rを求める(ステップS43)。次に、各光学部品の曲率半径Rが所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS44)、許容範囲に入っていないものについては光学部品を新たに選定して(ステップS45)、ステップS41に戻って各光学部品の波面特性W(X,Y) の計測を行なう。ステップS44で各光学部品の曲率半径Rが許容範囲内であれば、エキシマレーザ4の部品構成順序で各光学部品の波面特性W(X,Y)を足し合わせて、前記レーザ波面39の波面形状KL(X,Y)を演算する(ステップS46)。さらに前記平面度FU を求め(ステップS47)、この平面度FU が所定の許容範囲に入っているか否かを確認し(ステップS49)、許容範囲に入っていなければステップS41に戻って部品の選定をやり直し、許容範囲内に入っていればこれらの部品を使って前記図9に記載したエキシマレーザ4を組み立てる(ステップS51)。
さらに本実施形態では図12に示すように、前記波面特性測定装置20を使用して、エキシマレーザ4のレーザ波面39における前記平面度FL を測定している。
同図において、前記図1と同様に参照ミラー31を通過したレーザ光29は、フロントミラー14、フロントウィンドウ13、リアウィンドウ5、プリズム7A,7Bを通過し、ミラー37で反射し、プリズム7C,7Dを通過して、グレーティング10に入射する。グレーティング10で反射した光は、前記の光路を逆向きに通ってレーザ波面39となり、測定光として参照ミラー31に入射する。測定光と前記参照光とによって形成された干渉縞33を前記CCDカメラ36上に結像させ、これを前記干渉計コントローラ38で分析することによって、レーザ波面39の波面形状KL(X,Y)を計測し、前記平面度FL を演算できる。
これにより、前記平面度FL を測定しながら、第3の実施形態と同様にグレーティング10やミラー37の曲率、或いはプリズム7の温度等を調整して、この平面度FL をさらに最適化することが可能である。
このように本実施形態によれば、エキシマレーザ4を構成する光学部品についてそれぞれの波面特性W(X,Y) を測定し、それらの和であるレーザ波面39の波面形状KL(X,Y)から、その平面度FL を求めてこれが所定の許容範囲になるようにエキシマレーザ4の各光学部品を選定している。また、このレーザ波面39の平面度FL を計測しながら、前述したグレーティング10やミラー37の曲率、或いはプリズム7の温度等を調整することによって、さらにこの平面度FL を最適化することが可能である。これにより、狭帯域化したレーザ光3の光品位を最適化することができる。またこのとき、前記アパーチャ6の端部における回折の影響も考慮して調整を行なっているので、レーザ波面39の最適化をいっそう正確に行なうことができる。
また、以上の各実施形態の説明においては、前記波面形状K(X,Y) から波面の曲率半径Rを求め、その逆数である平面度Fを演算するようにしているが、このとき図13に示すように、曲率半径Rの代わりにレーザ光3の波面の測定点43の最大値と最小値の差であるPV値PV を算出し、その逆数を演算して、これを許容範囲内に収めるようにしてもよい。また、同様に図14に示すように波面の近似曲線44と測定点43との距離の自乗の総和の平方根であるrms値を算出し、これを許容範囲内に収めるようにしてもよい。これらの値は、前記干渉計コントローラ38で参照ミラー31を移動させながら干渉縞33を分析することによって求めることができる。
以上説明したように、本発明によれば狭帯域化ユニット12における各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定し、それらを合計してグレーティング10に入射するグレーティング波面15の波面形状KG(X,Y)を算出し、これから演算した曲率半径Rを所定の許容範囲内に収めるようにしている。これにより、グレーティング波面15の曲率半径Rを、常にグレーティング10を曲げて前記波面補正を行なえる範囲に収められるので、良質な光品位のエキシマレーザ4を得ることができる。また、グレーティング10を曲げることなく良好な波長特性を得ることも可能である。
また、本発明によれば、狭帯域化ユニット12における各光学部品の波面特性W(X,Y) を測定し、それらの波面特性W(X,Y) を合計して、狭帯域化ユニット12から出射するユニット波面34の波面特性WU(X,Y)を算出し、これを所定の許容範囲に収めるようにしている。これにより、狭帯域化ユニット12の波面を最適化できるので、良質な光品位のエキシマレーザ4を得ることができる。また、各光学部品の波面特性W(X,Y) を把握しているので、光学部品の組み合わせを適切に行なうことができ、前述したように適切な部品を不適切であると判断して放棄することがなく、部品が無駄にならないのでエキシマレーザ4を製作するためのコストを低減することができる。
さらに本発明によれば、狭帯域化ユニット12から出射するユニット波面34の波面形状KU(X,Y)を計測し、このユニット波面34の平面度FU を所定の許容範囲に収め、かつなるべく最適平面度Fopに近くなるようにグレーティング10やミラー37の曲率を調整することができる。これにより、エキシマレーザ4を発振させることなく狭帯域化ユニット12を調整可能であるので、実際に発振させる場合に比べて調整時間が短縮できると共に、前記調整の程度を平面度FU という数値で把握できるので、作業者による調整のばらつきが少なくなり、繰り返し精度を向上させることができる。
また本発明によれば、エキシマレーザ4の光学部品すべてについて前記波面特性W(X,Y) を計測するとともに、エキシマレーザ4から出射するレーザ波面39の波面形状K(X,Y) を測定し、これを調整しているので、すべての光学部品における前記歪みの影響を抑えることができる。
以上の実施形態の説明においては、波面特性測定装置20としてフィゾー干渉計を使用しているが、本発明はこれに限定されず、前記波面特性を測定できるものであればよく、例えばマイケルソン干渉計等を使用してもよい。
また、前記波面特性測定装置20から入射させる波面は平面波40として説明したが、これは波面の形状が既知の波面であればよい。
1…チャンバ、2…放電電極、3…レーザ光、4…エキシマレーザ、5…リアウィンドウ、6…アパーチャ、7…プリズム、8…測定対象、9…ビームエキスパンダ、10…グレーティング、12…狭帯域化ユニット、13…フロントウィンドウ、14…フロントミラー、15…グレーティング波面、16…ウィンドウ、17…ウィンドウ、18…光軸、19…平面波、20…波面特性測定装置、21…凹面波、22…全反射ミラー、23…凸面波、24…ミラー、25…アルゴン倍波レーザ、26…拡散レンズ、27…コリメータレンズ、28…ビームスプリッタ、29…レーザ光、30…ピエゾアクチュエータ、31…参照ミラー、32…入射波面、33…干渉縞、34…ユニット波面、35…結像レンズ、36…CCDカメラ、37…ミラー、38…干渉計コントローラ、39…レーザ波面、40…平面波、41…出射波面、42…波面、43…測定点、44…近似曲線。