JP2006216384A - 燃料電池用ガス拡散電極、および、これを用いた燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発電性能に優れたガス拡散電極を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、電極触媒層110とガス拡散層120とを含む燃料電池用ガス拡散電極100において、
前記電極触媒層110および前記ガス拡散層120は、前記電極触媒層110と前記ガス拡散層120とを連通する導電性繊維111、111’により構成され、
さらに、前記電極触媒層110は、前記導電性繊維111、111’上に形成された導電性ナノ繊維112と、少なくとも前記導電性ナノ繊維112に担持された触媒粒子113と、固体高分子電解質114とを含む燃料電池用ガス拡散電極100により上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池用ガス拡散電極に関し、より詳細には内部抵抗が低減されることにより発電性能が向上された燃料電池用ガス拡散電極に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動し高出力密度が得られる固体高分子型燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。固体高分子型燃料電池は、フィルム状の固体高分子電解質膜からなる電解質層を用いるのが特徴である。
固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、膜−電極接合体(以下、「MEA」とも記載する。)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、固体高分子電解質膜がガス拡散電極により挟持されてなるものである。また、ガス拡散電極は、電極触媒を高分散した電極触媒層とガス拡散層とを含み、MEAにおいて前記電極触媒層は片面が固体高分子電解質膜に接触して配置される。
従来、前記ガス拡散電極を作製するには、導電性担体に触媒粒子が担持されてなる電極触媒および固体高分子電解質などを含む触媒スラリーを、スクリーンプリント法などを用いてカーボンペーパーなどからなるガス拡散層上に塗布・乾燥することにより、ガス拡散層上に電極触媒層を形成する方法が用いられていた。さらに、作製したガス拡散電極により電極触媒層を内側にして固体高分子電解質膜を挟持した後、ホットプレスすることによりMEAを作製する方法などが一般的に用いられている。
前記MEAでは、以下のような電気化学的反応が進行する。まず、燃料極(アノード)側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒粒子により酸化され、プロトンおよび電子となる。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している電解質膜を通り、酸素極(カソード)側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、ガスセパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
前記電気化学的反応は、主に、触媒粒子と、固体高分子電解質と、供給ガスとが接触する三相界面において生じる。従って、ガス拡散電極は、密度の高い三相界面を有するだけでなく、燃料ガスおよび酸化剤ガスを電極触媒層へと均一に供給することが必要とされる。
また、燃料電池の発電性能を向上するためには、燃料電池の構成部材間の内部抵抗を低減することが重要となる。例えば、特許文献1には、電極触媒層とガス拡散層との間に導電性微粒子からなる層が配置されたガス拡散電極が開示されている。該文献1によれば、密着性を向上させることにより、電極触媒層とガス拡散層との間の接触抵抗を低減させ、これによりガス拡散電極の発電性能を向上させることが可能となり得る。
特開2000−123842号公報
しかしながら、該文献1のガス拡散電極によっても、未だ十分に高い発電性能が得られてはおらず、さらなる改善が所望されている。
そこで、本発明が目的とするところは、発電性能に優れたガス拡散電極を提供することである。
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、触媒粒子からガス拡散層への電子伝導経路を連続した同一部材を用いることにより、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、電極触媒層とガス拡散層とを含む燃料電池用ガス拡散電極において、
前記電極触媒層および前記ガス拡散層は、前記電極触媒層と前記ガス拡散層とを連通する導電性繊維により構成され、
さらに、前記電極触媒層は、前記導電性繊維上に形成された導電性ナノ繊維と、少なくとも前記導電性ナノ繊維に担持された触媒粒子と、固体高分子電解質とを含む燃料電池用ガス拡散電極により上記課題を解決する。
本発明によれば、構成部材による電気抵抗が低減されることにより優れた導電性を発揮し、触媒粒子が高分散されることにより電気化学的反応面積が向上され、結果として発電特性に優れたガス拡散電極を得ることが可能となる。
本発明の第一は、電極触媒層とガス拡散層とを含む燃料電池用ガス拡散電極において、前記電極触媒層および前記ガス拡散層は、前記電極触媒層と前記ガス拡散層とを連通する導電性繊維により構成され、さらに、前記電極触媒層は、前記導電性繊維上に形成された導電性ナノ繊維と、少なくとも前記導電性ナノ繊維に担持された触媒粒子と、固体高分子電解質とを含む燃料電池用ガス拡散電極(単に「ガス拡散電極」とも記載する)である。
まず、本発明のガス拡散電極を図1を用いて説明する。なお、図1(A)のガス拡散電極100では、導電性繊維からなる束を交差させて平織りすることにより織り込んでいるため、緯糸111として用いた導電性繊維は波型にうねった形状を模式的に示し、経糸111’として用いた導電性繊維は断面のみを模式的に示している。また、図1(B)では、説明の都合上、固体高分子電解質114を省略した。
図1(A)のガス拡散電極100は、所定数の導電性繊維111および111’からなる束を複数用意して、得られた束を平織りすることによりシート状に成形したものがガス拡散電極100の骨格部を担う。これにより電極触媒層110とガス拡散層120とが導電性繊維により連通した構成となって形成されている。また、導電性繊維111および111’の電極触媒層を構成する部分には、図1(B)に示すように、導電性ナノ繊維112が形成されている。導電性繊維111および111’ならびに導電性ナノ繊維112には、触媒粒子113が担持される。図1(A)において、導電性繊維111および111’に導電性ナノ繊維が形成され、導電性繊維111および111’ならびに導電性ナノ繊維112に触媒粒子113が直接担持され、固体高分子電解質114が含まれる部分が電極触媒層110である。
従来では、触媒粒子は、カーボン粒子などの導電性担体に担持させた電極触媒として電極触媒層中に含まれていた。電極触媒層内の電気化学的反応は触媒粒子表面で進行し、前記反応により生じた電子は導電性担体、ガス拡散層などを介して外部回路へと流れる。導電性担体間、導電性担体およびガス拡散層を構成する部材間の接触面積は小さく、場合によってはこれらの間に固体高分子電解質などが介在する。そのため、ガス拡散電極を構成している構成部材による電気抵抗も、ガス拡散電極の発電特性を低下させる要因となっていた。さらに、電極触媒層およびガス拡散電極の間に配置された導電性微粒子層によっても、構成部材間の接触抵抗などを十分に低下させることができていなかった。
これに対して、本発明のガス拡散電極は、電極触媒層において少なくとも前記導電性繊維上に形成された導電性ナノ繊維に触媒粒子が直接担持された構成となっている。また、電極触媒層を構成する導電性繊維がガス拡散層まで連通しており、電極触媒層からガス拡散層への電子伝導経路が連通した同一部材から構成されている。これにより、本発明のガス拡散電極は、電極触媒層において電極反応により生じた電子がガス拡散層へと移動する際に、従来のガス拡散電極において生じていた担体間を移動する確率を大幅に低減させることが可能となる。
さらに、導電性繊維上に形成された導電性ナノ繊維により、触媒粒子が担持される担体としての表面積を増大させることができる。これにより、電極触媒層において触媒粒子の凝集を抑制して高分散させることが可能となり、電気化学的反応面積を向上させて高い発電性能を発揮することができる。
このように、本発明のガス拡散電極は、構成部材による電気抵抗が低減されることにより優れた導電性を発揮し、触媒粒子が高分散されることにより電気化学的反応面積が向上され、結果として発電特性に優れたガス拡散電極を得ることができるのである。
以下、本発明のガス拡散電極に関してより詳細に説明する。
(導電性繊維)
本発明のガス拡散電極を構成する導電性繊維は、少なくとも炭素を含むものが好ましく用いられる。導電性繊維は上述した通り導電性ナノ繊維および触媒粒子などを有し、アノード側電極触媒層に含まれる触媒粒子表面で生成した電子を外部回路へ伝導させ、また、外部回路から移動してきた電子をカソード側電極触媒層に含まれる触媒粒子まで伝導させる必要がある。従って、ガス拡散電極を構成する部材には、少なくとも炭素を含むものなど、導電性の高い繊維を用いるのが望ましい。
導電性繊維として、具体的には、アクリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維;石油、ピッチまたはナフタレン系ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維;フェノール樹脂を原料とするフェノール系炭素繊維;レーヨン系炭素繊維などのカーボン繊維などが挙げられる。
導電性繊維は、高い導電性を有していればよいことから、上述した炭素繊維の他に、ステンレスなどの金属繊維を使用することもできる。
導電性繊維は、直径が1〜30μm、好ましくは5〜15μmであるものが好適に用いられる。直径が1μm未満であると得られるガス拡散電極の機械的強度を低下させる恐れがあり、30μmを超えると得られるガス拡散電極の空隙率などを低下させる恐れがある。なお、導電性繊維の直径は、例えば走査型電気化学顕微鏡(SEM)などを用いてガス拡散電極の断面観察像より測定することができる。
導電性繊維の目付量としては、10〜500g/m、好ましくは30〜200g/m程度のものを用いるのとよい。前記目付量が、10g/m未満ではガス拡散電極の強度が低下する恐れがあり、500g/mを超えるとガス拡散電極が厚くなりMEAの発電特性の低下や大型化などを招く恐れがある。
(導電性ナノ繊維)
次に、本発明のガス拡散電極における電極触媒層では、上述した導電性繊維上に導電性ナノ繊維を有する。なお、前記電極触媒層は、導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維を含むことを特徴とするが、この他に導電性ナノ繊維が形成されていない上述した導電性繊維を一部に含んでいてもよい。
本発明において、導電性ナノ繊維とは、直径が200nm以下とナノメーターサイズの直径を有する繊維をいう。
また、前記導電性ナノ繊維は、少なくとも炭素を含むものが好ましく挙げられる。前記導電性ナノ繊維は電極触媒層を構成する部材であるため、導電性繊維の説明において上記したのと同様に、少なくとも炭素を含む導電性ナノ繊維を用いることにより高い電子導電性が得られる。
前記導電性ナノ繊維として、具体的には、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどが好ましく挙げられる。
前記カーボンナノファイバーとは上記した所定の直径を有する繊維状炭素材料からなるものである。前記カーボンナノチューブとは上記した所定の直径を有し、繊維中心に空洞を有するチューブ状炭素材料からなるものである。前記カーボンナノチューブは、特に制限されないが、グラファイトを円筒状に丸めたような構造を有し、前記円筒が一層の単層カーボンナノチューブ(SWNTs)と、前記円筒が同心円状に多層化した多層カーボンナノチューブ(MWNT)と、が挙げられる。また、前記カーボンナノホーンとは、単層グラファイトからなり、上記した所定の直径を有する円錐構造の集合体からなるものである。
このようにナノメーターサイズの直径を有する導電性ナノ繊維を用いることにより、電極触媒層においてガスが拡散するための空隙を閉塞することなく触媒粒子を担持させる担体としての表面積を向上させることが可能となる。
前記導電性ナノ繊維の直径は、200nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下とするのがよい。導電性ナノ繊維の直径が200nmを超えると電極触媒層の空隙率を低下させたり、導電性ナノ繊維の表面積が低下する恐れがある。
前記導電性ナノ繊維の長さは、20〜0.1μm、好ましくは10〜1μm程度とするのがよい。前記長さが、0.1μm未満であると電極触媒層において触媒粒子を担持させる担体としての面積を十分に大きくすることができない恐れがあり、20μmを超えると電極触媒層の空隙率を低下させる恐れがある。
電極触媒層における前記導電性ナノ繊維の含有量は、電極触媒層の単位面積(cm)に対して、0.1〜2.5mg/cm、好ましくは0.5〜1.5mg/cm程度とするのがよい。前記含有量が、0.1mg/cm未満であると導電性ナノ繊維を含有させることによる効果が十分に得られない恐れがあり、2.5mg/cmを超えると電極触媒層中の空隙率を低下させる恐れがある。
本発明のガス拡散電極において、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維は、撥水性および/または親水性に改質されてなるのが好ましい。具体的には、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維に表面処理を行って各繊維表面を改質することにより、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維に撥水性または親水性を付与するのが好ましい。
ガス拡散電極には、電極反応により生成した水を外部へ迅速に排出させて、良好な三相界面を維持することが求められる。そこで、従来のガス拡散電極では、PTFEなどの撥水剤の添加が行われていた。しかしながら、前記撥水剤は電気伝導性を有しないため、前記撥水剤をガス拡散電極に添加するのは、MEAの内部抵抗の増加に繋がる恐れがあった。
これに対して、本発明では、ガス拡散電極に撥水性を付与するために、好ましくは表面が撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維を用いる。これにより各繊維を、撥水性および導電性を兼ね備えた繊維とすることができ、ガス拡散電極に導電性を損ねることなく撥水性を付与することが可能となる。従って、高加湿、高電流密度など、多量の水が生成し易い運転条件下であっても、優れた性能を発揮することが可能なガス拡散電極が得られる。
また、低加湿、低電流運転密度などの運転条件下では、固体高分子電解質膜の乾燥が生じ易い。固体高分子電解質膜の乾燥は、プロトン伝導性を低下させ、結果として、発電性能の低下を招く。そこで本発明では、表面が親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維を用いる。これにより、親水性および導電性を兼ね備えた繊維が得られ、固体高分子電解質膜の高度な加湿の迅速な達成や固体高分子電解質膜の乾燥を防止することが可能なガス拡散電極が得られる。
ガス拡散電極には、運転条件や発電性能などを考慮して、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維表面を親水性および/または撥水性に改質すればよい。例えば、ガス拡散電極は、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、のうちいずれか一方を含んでいればよい。しかしながら、ガス拡散電極には、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、を用いるのが好ましい。これにより、撥水性および親水性を兼ね備えたガス拡散電極とすることができ、広範な運転条件下にも耐えうるガス拡散電極とすることが可能となり、さらに、ガス拡散電極における撥水性および親水性の調整も容易に行える。
例えば、高電流密度、高加湿などの生成水が多く発生し易い運転条件下では、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有量を多くするのがよい。また、低加湿などの固体高分子電解質膜の乾燥を招き易い運転条件下では、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有量を多くするのがよい。
導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の表面を撥水性に改質する方法は、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維を、2000℃以上、特に2500℃以上で熱処理する方法などにより得られる。かような熱処理により、各繊維表面に存在するカルボキシル基、ラクトン基、ハイドロキノン基、およびキノン基等の親水性の表面官能基が減少し、繊維表面を撥水性に改質することができる。熱処理雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、水素、水素と不活性ガスとの混合ガスなどの還元性ガス雰囲気のいずれでもよい。繊維表面を撥水性に改質する方法は上記方法に限定されず、各繊維の導電性を損なわずに表面を撥水性に改質できるのであれば、従来公知の方法を適宜参照して用いてもよい。
次に、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の表面を親水性に改質する方法は、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維を、酸素ガス、水蒸気などによる気相法、プラズマ照射などの公知の技術を用いて、表面を酸化処理する方法などにより得られる。酸化処理することで各繊維表面のC−C結合の末端にカルボキシル基、フェノール基、ケトン基などの親水性表面官能基量が増大し、前記親水性表面官能基は水分子の蒸気からの吸着を促進する活性サイトとして作用するとともに、吸着させた水分子間の水素結合を媒介として水の凝縮を促進することができる。これにより各繊維表面を親水性に改質して、濡れ性を向上させることができる。
気相法により各繊維を親水性に改質するには、350〜400℃の酸素ガス雰囲気下、または700〜1000℃の水蒸気中、などで導電性繊維および/または導電性ナノ繊維表面を酸化処理すればよい。
また、プラズマ照射により各繊維表面を親水性に改質するには、従来一般的な装置を用いて行えばよく、簡便には常温常圧の空気中で放電するコロナ放電処理装置などを用いて行えばよい。
各繊維表面を親水性に改質する方法としては、上述した方法に限定されず、例えば、水素と酸素を反応させて発生した水蒸気を利用するパイロジェニック法(水素燃焼);過マンガン酸カリウム、硝酸、塩素酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩、過炭酸塩、過酸化水素などを含む強酸化性水溶液による液相法;オゾン、窒素酸化物、空気などによる気相法など、繊維表面を酸化処理する公知の各種技術を適宜用いることができる。
また、導電性繊維として金属繊維を用いた場合、導電性繊維表面を親水性に改質するには、上記と同様にして、酸素雰囲気でのプラズマ照射などにより金属繊維表面を酸化処理することにより得られる。また、導電性繊維表面を撥水性に改質するには、フッ素系ガス雰囲気でのプラズマ照射などにより金属繊維表面を処理することにより得られる。
ガス拡散電極内では、外部から供給されたガスが均一に拡散されるのが望ましい。従って、ガス拡散電極内では水が局在化せずに、かつ、速やかに排出させる機能を備えているのが好ましい。しかしながら、酸化剤ガスなど外部から供給されるガスの流れに沿ってガス拡散電極内では水が局在化し易く、ガスを均一に拡散させることが困難となり、発電性能の低下を招く恐れがある。
従って、本発明のガス拡散電極において、ガス導入部からガス排出部へ向かって撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有率を増加させてもよい。これにより、より効率的に生成水などを排除することが可能となる。かような場合には、触媒粒子を担持させる各繊維表面の性質は、特に制限されず、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維、ならびに、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の双方またはどちらか一方に担持されていればよく、所望の発電性能が得られるように適宜決定すればよい。
(触媒粒子)
本発明の電極触媒層において、上述した導電性繊維または導電性ナノ繊維の少なくとも一方に触媒粒子が担持されればよいが、少なくとも導電性ナノ繊維に触媒粒子が担持されるのが好ましい。これにより、電極触媒層において触媒粒子を高分散担持させることができる。より好ましくは、導電性ナノ繊維および導電性繊維の双方に触媒粒子が担持されるのが望ましい。
前記触媒粒子は、水素の酸化および/または酸素の還元に対して触媒作用を有するものであれば、特に限定されない。例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、及びこれらの合金などからなる群から選択される1種以上が挙げられる。また、前記触媒粒子は、白金単独で用いてもよいが、前記触媒粒子の触媒活性、熱や一酸化炭素などに対する安定性などを高めるために、白金を主成分とする合金としてもよい。
触媒粒子の平均粒径は、1〜30nmであることが好ましい。触媒粒子は、平均粒径が小さいほど比表面積が大きくなるため触媒活性も向上すると推測されるが、実際は、触媒粒子径を極めて小さくしても、比表面積の増加分に見合った触媒活性は得られない恐れがあるため、上記範囲とするのが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒金属の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒粒子径の平均値により測定することができる。
電極触媒層における触媒粒子の担持量は、0.001〜10mg/cm、好ましくは0.005〜1mg/cm程度とするのがよい。担持量が少なすぎると所望する発電量が得られない恐れがあり、担持量が多すぎても製造コストを増加させる恐れがある。なお、前記担持量は、例えば誘導結合プラズマ発光分析により測定した電極触媒層に含まれる触媒粒子量(g)を、電極触媒層の固体高分子電解質膜と接触する面の面積(cm)で除した値とする。
電極触媒層に含まれる触媒粒子は、少なくとも撥水性に改質された前記導電性ナノ繊維に担持されるのが好ましい。これにより、電極触媒層において触媒粒子を高分散担持させつつ、触媒粒子近傍の水を迅速に排除して触媒粒子に水素などのガスを効率的に接触させることができ、発電性能をより向上させることができる。さらに、炭素を含む繊維は水分が接触する部分で腐食を生じ易い。従って、撥水性に改質された繊維に触媒粒子を担持させることにより繊維の腐食を防止することもでき、長期に亘り安定した発電性能を示すことが可能となる。より好ましくは、前記触媒粒子は、撥水性に改質された前記導電性繊維および前記導電性ナノ繊維に担持される。
(固体高分子電解質)
電極触媒層に含まれる固体高分子電解質としては、従来の電極触媒層において一般的に用いられているのであれば特に限定されない。具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた固体高分子電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた固体高分子電解質、などが挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH (R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などを表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた固体高分子電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体などが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた固体高分子電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸などが好適な一例として挙げられる。
電極触媒層では、固体高分子電解質が導電性繊維、導電性ナノ繊維、および触媒粒子の表面を被覆しているのが好ましい。これにより、高密度な三相界面を得ることが可能となる。固体高分子電解質が被覆する厚さは、得られるMEAの発電性能を考慮して適宜決定すればよいが、厚すぎると電極触媒層が有する空隙を閉塞する恐れがある。また、固体高分子電解質は、電極触媒層に含まれる導電性繊維、導電性ナノ繊維、および触媒粒子の表面の全てを被覆する必要はなく、少なくとも一部を被覆していればよい。
前記ガス拡散電極の厚さは、得られるガス拡散電極が所望する特性を有するように適宜決定すればよいが、30〜500μm、好ましくは50〜300μm程度とするのがよい。
前記ガス拡散電極において、導電性繊維、導電性ナノ繊維、触媒粒子、および固体高分子電解質を含む部分が電極触媒層である。前記電極触媒層の厚さは、薄すぎると所望する発電量が得られず、厚すぎると高出力とすることができないため、これらを考慮して適宜決定すればよい。
(緩衝層)
本発明のガス拡散電極は、電極触媒層側表面に緩衝層を有するのが好ましい。前記緩衝層130を有するガス拡散電極200の模式図を図2に示す。なお、図2のガス拡散電極200は、図1に示すガス拡散電極100と同様にして電極触媒層110およびガス拡散層120を作製し、さらに、電極触媒層110上に緩衝層130が形成された構成である。このように緩衝層を有することにより、MEAなどを組立てた際に電極触媒層と固体高分子電解質膜との接触性を向上させることができ、MEAの内部抵抗の低減が図れる。また、セルアッセンブリ時や燃料電池の運転中に加わる衝撃等により、電極触媒層を構成する導電性繊維などによる固体高分子電解質膜の破損を防止することができる。
前記緩衝層は、プロトン伝導性電解質を含むものが挙げられる。プロトン伝導性を有する材料で緩衝層を構成することにより、固体高分子電解質膜と触媒粒子とのプロトン伝導性を好適に確保することができる。
前記プロトン伝導性電解質としては、有機系化合物および/または無機系化合物が好ましく挙げられる。
前記有機系化合物としては、従来から電極触媒層などにおいて固体高分子電解質などとして一般的に用いられているものであれば特に限定されず、具体的には上述した電極触媒層に含まれる固体高分子電解質の説明において列挙したものと同様のものが挙げられる。なかでも、高いプロトン伝導性を有することから、スルホン酸基、またはカルボキシル基などの陽イオン交換基を少なくとも含むものが好ましく、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが特に好ましく挙げられる。
前記無機系化合物としては、P、SiO、B、GeO、またはAsのうちいずれか1つを含むのが好ましい。なかでも、P、SiOが好ましく挙げられる。また、得られる緩衝層の安定性などを確保するためにアルカリ金属、アルカリ土類金属などの第二成分等が含まれてもよい。例えば、P−ZrO−SiO含水ガラスは多量の水を吸収することによって高いプロトン伝導性を示し、水にも溶解する恐れがないという特徴があり、無機系化合物特有の高温安定性が高いというメリットがある。
また、プロトン伝導性だけでなく、耐久性、柔軟性なども向上させるために、緩衝層は、前記有機系化合物および前記無機系化合物の混合物からなってもよい。
前記混合物の形態としては、特に限定されないが、有機系化合物から構成される膜に無機系化合物が分散されている形態などが挙げられる。かような場合において、無機系化合物の形状は粉末状、板状、針状、球状、繊維状などが挙げられ、無機系化合物の分散状態は緩衝層中に偏在してもよく均一に分散されていてもよい。無機系化合物の表面に有機系化合物が結合した形態など、有機系化合物と無機系化合物が共有結合などにより複合化されているのが好ましい。
緩衝層を構成する有機系化合物および/または無機系化合物などのプロトン伝導性電解質は、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質と、接触しているのが好ましい。これにより、緩衝層と電極触媒層とで連通したプロトン伝導経路を確保でき、MEAのプロトン伝導性を向上させることができる。
緩衝層の厚さは、0.1〜20μm、好ましくは1〜10μm程度とするのがよい。厚さが、0.1μm未満であると緩衝層によって期待するほどの効果が得られない恐れがあり、20μmを超えると却ってプロトン伝導性を低下させる恐れがあるため、上記範囲内とするのが好ましい。
緩衝層の大きさは、ガス拡散電極よりも大きくするのが好ましい。これにより、緩衝層を電極触媒層の外淵部より外側まで配置させることができ、ガス拡散電極に含まれる親水性導電性繊維、撥水性導電性繊維などによる固体高分子電解質膜の破損をより効果的に防止することができる。
緩衝層は空隙を有していてもよい。これにより、応力の吸収性に優れた緩衝層が得られ、固体高分子電解質膜の破損をより効果的に防止することが可能となる。また、前記空隙内に水などを吸収できるため、緩衝層に保水性を付与することができ、ガス拡散電極の水分を制御することも可能となる。
以下に、本発明のガス拡散電極の製造方法について説明する。しかしながら、下記に記載する方法は、本発明の好適な一実施形態を示すものであり、本発明のガス拡散電極の製造方法が下記方法に限定されるわけではなく、従来公知の方法を適宜適用してもよい。
(ガス拡散電極の製造方法)
本発明のガス拡散電極の製造方法としては、まず、導電性繊維上に一定間隔で導電性ナノ繊維を形成した後、少なくとも前記導電性ナノ繊維に触媒粒子を担持する。次に、前記導電性ナノ繊維および前記触媒粒子を有する前記導電性繊維を、所定の数で一まとめに撚って束とし、この束を複数用いて平織りなどによりシート状に成形してガス拡散電極前駆体を作製し、この際、導電性ナノ繊維および触媒粒子を含む部位が、ガス拡散電極前駆体の表面近傍に配置されるようにする。そして、前記ガス拡散電極前駆体に、固体高分子電解質を所望する深さまで含浸させる方法などが挙げられる。
(1)導電性ナノ繊維の形成
導電性繊維上に導電性ナノ繊維を形成するには、導電性ナノ繊維としてカーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記載する)を用いた場合には、例えば、CNT形成用触媒からCNTを熱化学的気相成長させる熱化学蒸着法(熱CVD法)などが用いられる。
具体的には、まず、導電性繊維にCNT形成用触媒を一定間隔に担持させる。CNT形成用触媒の担持方法は、物理的または化学的蒸着法など特に制限されることはなく、例えば、CNT形成用触媒を構成する元素を含む化合物を含有する溶液に導電性繊維の所望する部位のみを浸漬させ、前記化合物を導電性繊維に吸着させる方法、などを用いればよい。
CNT形成用触媒は、一般的に用いられているものであれば特に制限されず、Ni、Co、Fe、Y、Rh、Pd、Pt、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、およびLuからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられ、これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
CNT形成用触媒を構成する元素を含む化合物としては、例えば、前記CNT形成用触媒を構成する元素のアセチルアセトナート、酢酸塩、硝酸塩などが挙げられる。また、前記化合物を含む溶液は、前記化合物を、水、および/または、エチルアルコールなどアルコール類の溶媒に溶解させることにより調製できる。
前記化合物を含む溶液に、導電性繊維の所望する部位のみを浸漬させ、一定時間放置することにより前記導電性繊維に前記化合物を吸着させることができる。この時、攪拌、超音波照射などの手段を用いてもよい。
また、導電性繊維にCNT形成用触媒を「一定間隔に担持させる」とは、CNTが形成された導電性繊維をシート状に成形した際に、前記導電性繊維の電極触媒層を構成し得る部位のみに所望量のCNTが含まれ、ガス拡散層を構成し得る部位にはCNTが含まれないように、導電性繊維上のCNT形成用触媒を担持させる部位を調整することである。そのため、CNT形成用触媒を構成する元素を含む化合物を含有する溶液に導電性繊維の所望する部位のみを調整して浸漬させ、一定間隔でCNTなどの導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維を得るのが望ましい。
前記化合物が吸着された導電性繊維は、水素などの還元性雰囲気、または、窒素、アルゴン、ヘリウム、またはその混合ガスなどの不活性雰囲気で熱処理するのが好ましい。これにより、CNT形成用触媒が担持された導電性繊維が得られる。熱処理条件は、特に制限されないが、300〜1000℃程度で、10〜100分程度である。
導電性繊維におけるCNT形成用触媒の担持量および平均粒子径などは、形成量、長さ、直径、中空径など所望する特性を有するCNTが得られるように適宜決定するとよい。
導電性繊維上にCNT形成用触媒を担持させる方法は、上述した方法の他、マグネトロンスパッタリング法、抵抗加熱による蒸着方法などを用いることもできる。
次に、前記CNT形成用触媒が担持された導電性繊維を、熱CVD装置の容器内にセットし、CNT形成用触媒にキャリヤガスとともに炭化水素ガスを送り、炭化水素ガスを熱分解することによりカーボンナノチューブを形成する。
炭化水素ガスとしては、アセチレンガス、アルコール類、一酸化炭素、メタンガスなど、炭素を含むガスであれば用いることができる。また、ガスの流量は、炉によって好ましい流量を選択すればよい。また、キャリヤガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができ、アンモニア、水素などのエッチングガスを加えることもできる。また、ガスの流量は、炉によって好ましい流量を選択すればよい。熱CVD装置の温度は、400〜1200℃とすることが好ましい。熱CVD装置の温度がこの範囲をはずれると、カーボンナノチューブが成長しない傾向がある。
上記の通りにしてCNTが形成された導電性繊維は、残存するCNT形成用触媒などの不純物を除去するために酸性水溶液や空気酸化処理など公知の方法を用いて精製処理を行ってもよい。
CNTの形成方法として、上記では、熱CVD法を用いて説明したが、かような方法に限定されず、他にアーク放電法、レーザ蒸発法などCNTの形成方法として一般的に用いられている方法であれば特に制限なく用いられる。
(2)触媒粒子の担持
次に、導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維に、電極反応を促進させる触媒粒子を担持させる。この時、触媒粒子は、表面積が大きくて高分散担持が可能なことから導電性ナノ繊維に少なくとも担持されているのが好ましく、より好ましくは導電性ナノ繊維および導電性繊維の双方に担持される。
導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維に触媒粒子を担持させるには、例えば、触媒化合物溶液に、導電性繊維の所望する部位のみを浸漬させた後、還元剤などを添加する方法が挙げられる。かような方法によれば、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の所望する部位のみに触媒粒子を高分散担持することができ、触媒粒子の凝集を抑制することができる。
この時にも、導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維をシート状に成形した際に、前記導電性繊維の電極触媒層を構成する部位のみに所望量の導電性ナノ繊維が形成されるように調整したのと同様に、導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維に一定間隔で触媒粒子を担持させるのが望ましい。従って、導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維は所定の間隔で触媒化合物溶液に浸漬させる。より好ましくは、導電性繊維の導電性ナノ繊維が形成された部位を触媒化合物溶液に浸漬させる。これにより少なくとも導電性ナノ繊維に触媒粒子を担持させることができる。
前記触媒化合物溶液とは、触媒粒子を構成する元素を含む化合物(単に「触媒化合物」ともいう)を含む溶液のことである。具体的には、触媒粒子としてPtを用いる場合には、例えば、塩化白金酸、塩化アンミン白金、ジニトロジアンミン白金などの触媒化合物を含有する溶液を用いることができる。白金合金とするには、前記溶液に白金の他に所望する触媒粒子の硝酸塩、塩化物、硫酸塩などの化合物を分散させればよい。また、触媒化合物を添加する溶媒としては、水、および/または、エタノール、メタノールなどのアルコール類などを用いることができる。また、触媒化合物溶液における触媒粒子濃度などは、所望する触媒粒子担持量が得られるように適宜決定すればよい。
還元剤としては、触媒化合物を還元できるものであれば特に限定されず、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、水素、エチレン、一酸化炭素などを用いることができる。前記還元剤を添加することにより、導電性繊維上に触媒化合物を触媒粒子として担持させることができる。上述の触媒化合物溶液に導電性繊維を浸漬させた後、前記還元剤を適量加え、還流反応装置などを用いて60〜100℃に加熱し、その後、室温まで放冷することにより触媒粒子の還元担持を行う。
上述の通りにして、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維に担持された触媒粒子を合金化させる場合には、さらに焼成を行うのが好ましい。また、焼成前に必要に応じて乾燥を行ってもよい。
触媒粒子の還元担持後の導電性繊維の乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、ロータリーエバポレーター、沿送風乾燥機による乾燥など、公知の方法を用いればよく特に限定されない。乾燥時間などは、使用する方法に応じて適宜決定すればよい。
また、合金化させる場合などの焼成方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気中、または、水素などの還元雰囲気中で、焼成温度300〜1000℃、好ましくは300〜700℃の範囲で、1〜6時間程度、行えばよい。
導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維に触媒粒子を担持させる方法として、還元剤を用いる上述した方法の他、含浸法、共沈法、競争吸着法、マイクロエマルジョン(逆ミセル法)などの方法を適用することができる。触媒粒子を高分散させて、導電性繊維および/または導電性ナノ繊維に強固に担持させることができる観点からは、還元剤を用いる方法、マイクロエマルジョン(逆ミセル法)などが好ましく用いられる。また、スパッタ、蒸着などのPVD法を用いて触媒粒子を担持させてもよい。
(3)ガス拡散電極前駆体の作製
次に、上述の通りにして作製した、導電性ナノ繊維および触媒粒子を有する導電性繊維をシート状に成形し、ガス拡散電極前駆体を作製する。具体的には、導電性ナノ繊維および触媒粒子を有する導電性繊維を、所定の数で一まとめ撚って束とし、この導電性繊維束を複数用意し、これらを経糸および緯糸として互いに交差させて織り込む平織りなどの方法を用いて行えばよい。
前記導電性繊維を一まとめに撚る本数としては、得られるガス拡散電極の厚さ、空隙率などを考慮して適宜決定すればよい。一まとめに撚った2本以上の前記導電性繊維束をさらに束ねたものを用いて織り込んでもよい。また、これらの束には、導電性ナノ繊維が形成されていない導電性繊維を含んでいてもよい。
前記導電性繊維を一まとめに撚る本数として、具体的には、好ましくは20〜100本、より好ましくは40〜60本程度を用いて一まとめに撚って導電性繊維の束とするのがよい。導電性繊維束が20本未満であると、ガス拡散電極の強度が低下する可能性があり、導電性繊維束が100本を越えるとガス拡散電極の空隙率が減少してガス透過性、生成水の排出性などを低下させる恐れがある。
前記ガス拡散電極前駆体の厚さは、得られるガス拡散電極が所望する特性を有するように適宜決定すればよいが、30〜500μm、好ましくは50〜300μm程度とするのがよい。
また、導電性繊維をシート状に成形する際に、所望するガス拡散電極前駆体が得られるのであれば特に限定されず、上述した平織りの他、綾織り、繻子織りなど、公知の方法を用いてシート状に成形してもよい。得られたガス拡散電極前駆体は、ローラー、プレス装置などを用いて表面を平滑にしてもよい。
(4)固体高分子電解質の含浸
次に、上述の通りにして作製したガス拡散電極前駆体に、固体高分子電解質を含むスラリーを、フローコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法などを用いて塗布した後、所望する深さまで含浸させ、乾燥させる。これにより、ガス拡散層前駆体に含まれる導電性繊維、導電性ナノ繊維、および触媒粒子を固体高分子電解質で被覆することができ、本発明のガス拡散電極が得られる。
前記スラリーとしては、固体高分子電解質を、水および/またはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類などの溶媒に溶解させたもの等が用いられる。
固体高分子電解質がガス拡散電極前駆体の内部や表面を被覆する厚さなどが所望の値となるようにするには、前記スラリーを塗布・乾燥させる作業を繰り返したり、前記スラリーの濃度を調整したり、することにより行えばよい。また、前記スラリーを塗布した後に、アスピレータ等を用いてガス拡散電極前駆体の背面から前記スラリーを吸引してもよい。
塗布した前記スラリーを乾燥させるには、特に限定されないが、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で、20〜120℃、好ましくは60〜100℃で行えばよい。これにより、固体高分子電解質の酸化劣化などを防止して、電極触媒層を形成する事が出来る。
また、固体高分子電解質を含浸させる方法としては、固体高分子電解質を含む前記スラリーに、ガス拡散電極前駆体の所望する部位を浸漬させた後に所定の速度で引き上げ、これを乾燥させる方法、前記スラリーをガス拡散電極前駆体に塗布した後、ローラーなどで含浸させる方法、などを用いることもできる。
このように、少なくとも前記導電性ナノ繊維に触媒粒子を担持させた後、固体高分子電解質を含浸させることにより、前記導電性繊維および前記導電性ナノ繊維と触媒粒子との間に固体高分子電解質が介在しない好適な接触状態を維持することができる。
(5)その他
上述した方法では、まず導電性ナノ繊維および触媒粒子を導電性繊維の所望する部位に担持させた後、シート状に成形する方法であったが、かような方法に限定されない。導電性繊維を上記したのと同様にしてシート状に成形した後に、得られた成形体の所望する部位に導電性ナノ繊維および触媒粒子を担持させる方法であってもよい。前記方法として、例えば、所定数の導電性繊維を束ねてシート状に成形し、得られた成形体の所望する部分のみに導電性ナノ繊維を形成した後、さらに、前記成形体を所望する部分のみ触媒化合物溶液に浸漬させて還元剤などを添加することにより前記導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の所望する部位に触媒粒子を担持させる方法などがある。その後、上記したのと同様にして固体高分子電解質を含浸させればよい。
また、本発明の導電性繊維および/または導電性ナノ繊維は、表面が親水性および/または撥水性に改質された繊維であってもよい。各繊維表面を親水性および/または撥水性に改質する方法としては上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
各繊維表面を親水性および/または撥水性に改質する時期は、特に制限されない。例えば、上述したガス拡散電極の製造において、予め親水性および/または撥水性に改質した導電性繊維を用いてもよい。
導電性繊維に導電性ナノ繊維としてCNTを形成する際に、導電性繊維表面が親水性であるとCNT形成用触媒を高分散担持させることができる。従って、CNTを形成する際に用いる導電性繊維は、先に表面が親水性に改質されたものを用いるのが好ましい。
また、電極反応を促進させる触媒粒子が担持される導電性繊維および/または導電性ナノ繊維は、撥水性であるのが望ましい。従って、前記触媒粒子を担持させる際に用いる導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維は、予め撥水性に改質されたものを用いるのがよい。また、先に親水性に改質された導電性繊維を用いて導電性ナノ繊維を形成した後、この導電性ナノ繊維が形成された導電性繊維を熱処理するなどして、導電性ナノ繊維および導電性繊維をさらに撥水性に改質したもの触媒粒子を担持する際に用いることもできる。
また、導電性ナノ繊維に触媒粒子を担持した後に改質する事により触媒粒子が担持されていない部分を撥水性導電性繊維とすることもできる。
導電性繊維の束を用いてシート状に成形する際に、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維とを、(i)混合して束にしたものをシート状に成形してもよく、(ii)別々にして束としたものを混合してシート状に成形してもよい。
ガス拡散電極において、ガス導入部からガス排出部の方向に向かって撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有量を増加させるには、前記(i)の方法において撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有量が異なる束を複数容易し、これらの束をシート状に成形する際に適宜選択して用いるとよい。また、前記(ii)の方法において、シート状に成形する際に、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維と、親水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維とのそれぞれの束の編み込む密度を適宜調整することによっても、撥水性に改質された導電性繊維および/または導電性ナノ繊維の含有量が異なるガス拡散電極が得られる。
(6)緩衝層の作製
電極触媒層上に緩衝層を作製する方法として、有機系化合物のみからなる緩衝層を製造する場合には、有機系化合物を水やアルコールなどの溶媒に溶解させた溶液を、電極触媒層上などに、塗布および乾燥させることにより得られる。
前記有機系化合物を溶解させた溶液において、前記有機系化合物の含有量は1〜20質量%程度とするのが望ましい。
前記塗布方法としては、特に限定されず、前記溶液の濃度を適宜調整することにより、フローコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など公知の方法を用いて行えばよい。また、得られる緩衝層が所望の厚さを有するように、前記溶液の濃度、塗布回数、塗布スピードなどを調整するとよい。
前記乾燥方法としては、特に限定されないが、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気下で、20〜120℃、好ましくは60〜100℃程度で行えばよい。
また、無機系化合物からなる緩衝層を製造する場合には、P、SiO、B、GeO、またはAs等の無機系化合物を構成する金属を少なくとも1つ含む金属アルコキシドを含有するゾル溶液を、十分に乾燥させて乾燥ゲルを得る方法などが挙げられる。
前記金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS、Si(OCH)、テトラエトキシシラン(TEOS、Si(OC)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS、(OCHSiO(CHOCHCHO)、リン酸トリエチル(PO(OC)やリン酸トリメチル(PO(OCH)などが挙げられる。
前記ゾル溶液は、金属アルコキシドを水およびアルコールなどの溶媒に添加することにより得られる。また、前記ゾル溶液には、ゲル化速度を調整するために、塩酸、アンモニアなどの、酸や塩基を触媒として添加してもよい。
前記ゾル溶液を、電極触媒層上などに、上記したのと同様の塗布方法で塗布した後、常温で数週間程度放置したり、あるいは150℃程度で1〜24時間ほど放置したり、することにより乾燥ゲルとしたものを緩衝層として用いることができる。
これに限定されず、前記ゾル溶液を30〜80℃程度に保持して加水分解によるゲル化反応を進行させることによって得られる湿潤ゲルを、電極触媒層上などに塗布した後、これを30〜50℃程度で乾燥させ乾燥ゲルとしたものを緩衝層として用いることなどもできる。
得られる緩衝層が所望する厚さとなるように、前記ゾルまたは前記湿潤ゲルを塗布および乾燥させる工程を繰り返し行うとよい。
また、前記ゾルまたは前記湿潤ゲルを用いて、PTFE製シート上に別途作製した乾燥ゲル膜を、電極触媒層上にホットプレスなどで接合することにより、電極触媒層上に緩衝層を転写してもよい。前記乾燥ゲル膜は、安定した高いプロトン伝導性を得るために、500〜1000℃程度の温度でさらに熱処理してもよい。
無機系化合物と有機系化合物との混合物からなる緩衝層を製造する場合には、例えば、上述した有機系化合物のみからなる緩衝層の製造において用いる、水やアルコールなどの溶媒に有機系化合物を溶解させた溶液に、無機系化合物を添加して、これを塗布および乾燥させる方法などが挙げられる。
この時、前記無機系化合物の形状としては、粉末状、板状、針状、球状、繊維状などが挙げられ、特に限定されない。前記無機系化合物の添加量などは、得られる緩衝層の耐久性、柔軟性などを考慮して適宜決定すればよい。
塗布および乾燥方法としては、有機系化合物のみからなる緩衝層の製造においてした説明と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、かような方法の他に、無機系化合物からなる緩衝層の製造において用いるゾル溶液に、有機系化合物溶液を添加し、これを乾燥させる方法により、無機系化合物と有機系化合物との混合物からなる緩衝層を製造してもよい。
前記有機系化合物溶液としては、水やアルコールなどの溶媒に有機系化合物を溶解させた溶液などが挙げられる。これは、上述した有機系化合物のみからなる緩衝層の製造においてした説明と同様であるため、ここではその説明を省略する。
前記ゾル溶液に、前記有機系化合物溶液を添加する以外は、上述の無機系化合物からなる緩衝層の製造と同様にして行えばよい。
本発明のガス拡散電極において、緩衝層または電極触媒層の少なくとも一方に含まれるプロトン伝導性電解質または固体高分子電解質が濡れている状態で緩衝層および電極触媒層を接触させる方法を用いるとよい。これにより、緩衝層および電極触媒層に含まれるプロトン伝導性電解質および固体高分子電解質が連通した構成とすることができ、プロトン伝導性を向上させることができる。また、緩衝層と電極触媒層とを接触させる際に、電極触媒層は内部だけでなく表面まで固体高分子電解質が塗布されているとよい。
本発明の第二は、上述した本発明の第一のガス拡散電極を用いた燃料電池用MEAである。すなわち、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟持する一対のガス拡散電極とを有する燃料電池用MEAにおいて、一対の前記ガス拡散電極のうち少なくとも一方が本発明の第一の燃料電池用ガス拡散電極である燃料電池用MEA(単に「MEA」とも記載する)である。本発明の第一のガス拡散電極によれば、内部抵抗が低減され、触媒粒子が高分散担持されることにより高い発電性能を有するMEAとすることができる。
本発明のMEAにおいて、上述したガス拡散電極は、アノード側ガス拡散電極およびカソード側ガス拡散電極の少なくとも一方に用いられればよい。例えば、カソードに上述したガス拡散電極を用いた場合、アノードには上述した電極の他、MEAに用いられる従来公知のアノード用ガス拡散電極を適用すればよい。しかし、発電性能に優れることからアノードおよびカソードの双方に、上述した本発明のガス拡散電極が用いられるのが好ましい。
本発明のMEAに用いられる固体高分子電解質膜としては、特に限定されず、電極触媒層に用いたものと同様の固体高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、この他にも、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜、多孔質テフロンなどで補強した膜などを用いてもよい。前記固体高分子電解質膜に用いられる固体高分子電解質と、電極触媒層に用いられる固体高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、電極触媒層と固体高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
前記固体高分子電解質膜の厚さとしては、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。製膜時の強度やMEA作動時の耐久性の観点から、厚さは5μm以上であることが好ましく、MEA作動時の出力特性の観点から100μm以下であることが好ましい。
本発明の第三は、上述したMEAを用いた燃料電池である。本発明の第二のMEAを用いることにより優れた発電性能を有する燃料電池が得られる。前記燃料電池によれば、燃料電池システムの高効率化、小型化、軽量化を図ることができ、定置用電源の他、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源などとして有用である。
前記燃料電池の種類としては、小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子型燃料電池が好ましく挙げられる。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。MEAを挟持するセパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。なお、本発明が下記実施例に限定されることはない。
(実施例1)
(1)カーボンナノチューブの形成
カーボン繊維(直径7〜8μm)を約0.8mmの間隔でマスクした後、スパッタリング法を用いて繊維表面に鉄薄膜を作製した。その後、マスクを除去することにより所望の部分に鉄薄膜を作製した。続いて、石英ガラス製熱CVD炉に入れ、アルゴンガス雰囲気下700℃で焼成後、アルゴンガス400SCCM、アセチレンガス40SCCMを流して、700℃の温度でカーボンナノチューブを成長させた。
(2)白金粒子の担持
次に、カーボンナノチューブが形成されたカーボン繊維を約0.8mmの間隔で、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度1.0質量%)に浸漬させ、前記溶液に還元剤としてエタノール50mlを混合して1時間攪拌した。その後、30分で85℃まで加温し、さらに、85℃で6時間撹拌・混合した後、1時間で室温まで降温した。次いで、前記カーボン繊維を引き上げた後、減圧下85℃において12時間乾燥することにより、白金粒子をカーボン繊維およびカーボンナノチューブ上に担持させた。
(3)ガス拡散電極の作製
次に、前記白金粒子およびカーボンナノチューブが形成されたカーボン繊維25本を一まとめに撚り、さらに、この撚り糸2本をひとまとめに撚り込んだ繊維束を用いて平織りすることにより、片側側面に偏ってカーボンナノチューブおよび触媒粒子を含有するカーボンクロスを作製した。このカーボンクロスを50mm角に打ち抜き、ガス拡散電極前駆体とした。
さらに、Nafion(登録商標)溶液(DuPont社製 DE520、Nafion5wt%含有)をイソプロピルアルコールにより濃度3wt%に調製した固体高分子電解質溶液を、前記ガス拡散電極前駆体のカーボンナノチューブおよび白金粒子を含む部位に窒素雰囲気下でフローコーティング法により塗布および含浸させ、さらに、窒素雰囲気中で60℃、60分間乾燥させることにより、ガス拡散電極を作製した。
(4)中間緩衝層の作製
前記電極触媒層の片面に、上記と同様の固体高分子電解質溶液を、窒素雰囲気下でフローコーティング法により塗布させた後、窒素雰囲気中で60℃、60分間乾燥させる工程を3回繰り返すことにより、電極触媒層の片面に中間緩衝層を作製した。
(5)MEAおよび固体高分子型燃料電池の作製
作製したガス拡散電極2枚を用いて電極触媒層が内側になるようにして、固体高分子電解質膜としてNafion112(100mm角、厚さ約50μm)の両側に配置した後、ホットプレス法により150℃、2MPaで300秒間プレスすることによりMEAを作製した。
その後、作製したMEAの両面にガス流路付きガスセパレータ、シール材を配置し所定の面圧になるように締め付け、固体高分子型燃料電池とした。
(実施例2)
カーボン繊維(直径7〜8μm)を、水蒸気を含むアルゴンガスの不活性ガス雰囲気中で約900℃で、5時間熱処理することにより、前記カーボン繊維表面を親水性に改質した。得られた親水性カーボン繊維に、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブを形成した。カーボンナノチューブが形成された親水性カーボン繊維を、さらに、水素雰囲気中、2800℃で、3時間熱処理することにより、カーボンナノチューブおよび親水性カーボン繊維表面を、撥水性に改質した。次に、実施例1と同様にして、白金粒子を撥水性に改質したカーボン繊維およびカーボンナノチューブ上に担持させた。
次に、カーボン繊維(直径7〜8μm)を用い、上記と同様にして、前記カーボン繊維表面を親水性に改質した親水性カーボン繊維を別途用意した。
上記の通りにして、白金粒子が担持された撥水性カーボン繊維と、親水性カーボン繊維と、をそれぞれ25本をそれぞれ一まとめに撚り、さらに、この撚り糸2本をひとまとめに撚り込んだ繊維束を用いて平織りする事により、片側側面に偏って撥水性に改質したカーボンナノチューブおよび触媒粒子を含有するカーボンクロスを作製した。このカーボンクロスを50mm角に打ち抜き、ガス拡散電極前駆体とした。
前記ガス拡散電極前駆体のカーボンナノチューブおよび白金粒子を含む部位に、実施例1と同様にして固体高分子電解質溶液を含浸および乾燥させることにより、ガス拡散電極を作製した。
上記の通りにして得られたガス拡散電極を用いた以外は、実施例1と同様にしてMEAおよび燃料電池を作製した。
(実施例3)
カーボン繊維(直径7〜8μm)を、水蒸気を含むアルゴンガスの不活性ガス雰囲気中で約900℃で、5時間熱処理することにより、前記カーボン繊維表面を親水性に改質した。得られた親水性カーボン繊維に、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブを形成した。
上記と同様にしてカーボンナノチューブが形成された親水性カーボン繊維を別途作製し、この親水性カーボン繊維を、水素雰囲気中、2800℃で、3時間熱処理することにより、カーボンナノチューブおよび親水性カーボン繊維表面を、撥水性に改質した。
次に、カーボンナノチューブが形成された親水性カーボン繊維および撥水性カーボン繊維に、それぞれ、実施例1と同様にして、白金粒子を担持させた。
カーボンナノチューブと白金粒子とが担持された親水性カーボン繊維および撥水性カーボン繊維を所定数でそれぞれ一まとめに撚り、さらに、この撚り糸2本をひとまとめに撚り込んだ繊維束を複数用意した。この時、繊維束における撥水性カーボン繊維と親水性カーボン繊維との合計本数を50本とし、撥水性カーボン繊維と親水性カーボン繊維との割合が異なる繊維束を複数用意した。
得られた繊維束を平織りすることにより、片側側面に偏ってカーボンナノチューブおよび触媒粒子を含有する部位を有するカーボンクロスを作製し、この際に得られるカーボンクロスのガス排出部における撥水性カーボン繊維の密度が高くなるようにして、カーボンクロスを作製した。このカーボンクロスを50mm角に打ち抜き、ガス拡散電極前駆体とした。ガス拡散電極前駆体における撥水性カーボン繊維および親水性カーボン繊維の密度は、ガス導入部側(50mm×25mm)では撥水性カーボン繊維と親水性カーボン繊維の割合を繊維本数比で1:2とし、また、ガス排出部側(50mm×25mm)では撥水性カーボン繊維と親水性カーボン繊維の割合を繊維本数比で2:1とした。
前記ガス拡散電極前駆体のカーボンナノチューブおよび白金粒子を含む部位に、実施例1と同様にして固体高分子電解質溶液を含浸および乾燥させることにより、ガス拡散電極を作製した。
上記の通りにして得られたガス拡散電極を用いた以外は、実施例1と同様にしてMEAおよび燃料電池を作製した。
(比較例1)
(1)ガス拡散層の作製
カーボンペーパ(東レ株式会社製カーボンペーパTGP−H−060、厚さ190μm)を50mm角に打ち抜いたガス拡散基材を準備した。このガス拡散基材を、PTFEの水性ディスパージョン溶液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)を純水で所定の濃度に調整した溶液中に5分浸漬させた後、オーブン内にて60℃、30分間乾燥させることにより、カーボンペーパ中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は25wt%であった。これにより、撥水処理されたガス拡散基材を得た。
続いて、カーボンブラック(CABOT社製 VULCAN(登録商標) XC−72R)5.4gと、上記で用いたのと同じPTFEの水性ディスパージョン溶液1.0gと、水29.6gとを、ホモジナイザーにて3時間混合分散し、スラリーを調製した。このスラリーを、先に作製した撥水処理されたガス拡散基材の一方の面にバーコーターにより均一に塗布し、オーブン内にて60℃、1時間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。これにより、ガス拡散基材上に導電性微粒子層が形成されたガス拡散層を得た。
(2)電極触媒層の作製
白金担持カーボン(田中貴金属工業社製 TEC10E50E、白金含量46.5wt%)10g、Nafion(登録商標)溶液(デュポン社製 DE520、Nafion5wt%含有)90g、純水25g、イソプロピルアルコール(和光純薬工業社製 特級試薬)10gを、20℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にて、ホモジナイザーを用いて3時間混合分散することで、電極触媒インクとした。
この電極触媒インクを、先に作製したガス拡散層の導電性微粒子層が形成された面上に、スクリーンプリンターを用いて塗布し、オーブン中で100℃、30分間乾燥させた後、一辺50mmの正方形に切り出すことにより、ガス拡散層上に電極触媒層が形成されたガス拡散電極を得た。
(3)MEAおよび固体高分子型燃料電池の作製
作製したガス拡散電極を2枚を用いて電極触媒層が内側になるようにして、固体高分子電解質膜としてNafion112(100mm角、厚さ約50μm)の両側に配置した後、ホットプレス法により150℃、2MPaで300秒間プレスすることによりMEAを作製した。
その後、作製したMEAの両面にガス流路付きガスセパレータ、シール材を配置し所定の面圧になるように締め付け、固体高分子型燃料電池とした。
内部抵抗などが低減された本発明のMEAは、長期に亘って高い発電性能が所望される燃料電池に有用である。
本発明の好ましい一実施形態であるガス拡散電極の模式図である(図1(A)は前記ガス拡散電極の模式図を示し、図1(B)は電極触媒層を構成する導電性繊維の拡大模式図を示す)。 本発明の好ましい一実施形態であるガス拡散電極の模式図である。
符号の説明
100、200…ガス拡散電極、110…電極触媒層、120…ガス拡散層、130…緩衝層、111…導電性繊維(緯糸)、111’…導電性繊維(経糸)、112…導電性ナノ繊維、113…触媒粒子、114…固体高分子電解質。

Claims (13)

  1. 電極触媒層とガス拡散層とを含む燃料電池用ガス拡散電極において、
    前記電極触媒層および前記ガス拡散層は、前記電極触媒層と前記ガス拡散層とを連通する導電性繊維により構成され、
    さらに、前記電極触媒層は、前記導電性繊維上に形成された導電性ナノ繊維と、少なくとも前記導電性ナノ繊維に担持された触媒粒子と、固体高分子電解質とを含む燃料電池用ガス拡散電極。
  2. 前記導電性繊維は、少なくとも炭素を含む請求項1記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  3. 前記導電性ナノ繊維は、少なくとも炭素を含む請求項1または2記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  4. 前記導電性繊維および/または前記導電性ナノ繊維は、撥水性および/または親水性に改質されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  5. 撥水性に改質された前記導電性繊維および/または前記導電性ナノ繊維の含有量が、ガス導入部からガス排出部に向かって増加する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  6. 前記触媒粒子は、水素の酸化および/または酸素の還元に触媒作用を示す請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  7. 前記触媒粒子は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、銅、銀、およびこれらを含む合金からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  8. 前記触媒粒子は、少なくとも撥水性に改質された前記導電性ナノ繊維に担持されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  9. 前記ガス拡散電極は、前記電極触媒層側表面にプロトン伝導性電解質を含む緩衝層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  10. 前記プロトン伝導性電解質は、有機系化合物および/または無機系化合物である請求項9記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  11. 前記有機系化合物がスルホン酸基またはカルボキシル基を少なくとも含み、前記無機系化合物がP、SiO、B、GeO、およびAsからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項9または10記載の燃料電池用ガス拡散電極。
  12. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜を挟持する一対のガス拡散電極とを有する燃料電池用MEAにおいて、一対の前記ガス拡散電極のうち少なくとも一方が請求項1〜11のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極である燃料電池用MEA。
  13. 請求項12記載の前記燃料電池用MEAを用いた燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009211953A (ja) * 2008-03-04 2009-09-17 Sanyo Electric Co Ltd 電極基材、電極、膜電極接合体、燃料電池および電極基材の製造方法
CN101969129A (zh) * 2010-10-11 2011-02-09 无锡国赢科技有限公司 一种膜电极的批量生产方法及其制作模具
JP2017130433A (ja) * 2016-01-14 2017-07-27 ニッタ株式会社 電池用電極及びバイオ燃料電池

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