JP2006205529A - 印刷方法及び機器部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 印刷位置を容易に特定可能にすると共に、印刷ニジミの発生を抑える。
【解決手段】 筐体10の表面10aには、印刷のインク12を付着させる範囲に比べて一回り大きい周形状の凸面11aを有する凸部11を凸設させる。凸部11の凸面11aにシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷によりインク12を付着させて印刷を行う。印刷の際は凸部11が目印となり、印刷位置の特定のためのケガキ作業又は位置決め治具の製作等が不要になる。凸面11aに付着した印刷のインク12が広がる場合は、凸面11aの周囲輪郭のエッジでくい止められ、広範囲に印刷ニジミが広がることが防止される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷での印刷ニジミの発生を防止すると共に、印刷位置を容易に合わせられるようにした印刷方法及び機器部材に関する。
従来、文字及び図柄等を被印刷物に印刷する手法の中にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷がある。シルクスクリーン印刷は、版枠に絹、ナイロン等の繊維で織った布地を張り、印刷する文字及び図柄等に合わせてインクが布地を通過する部分と、通過しない部分とを設け、スキージでの加圧によりインクを被印刷物へ付着させるものである。また、タンポ印刷は、タンポに凹版上のインクを一旦転写し、そのタンポを被印刷物に押し付けてインクを被印刷部へ付着させるものである。
上述したシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷は、機械及び電気機器の筐体及び各種構成部材の表面に示される社名、製品名及び型番等の文字の印刷に適用されたり、各種装置の操作用のボタン及びキー等の操作内容を表す文字、図柄等を印刷する場合に適用されることが多い(特許文献1、2参照)。
図11(a)は、従来のシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷の一例を示し、テレビジョン装置1の筐体2の背面2aに社名(「SHARP」登録商標、以下同様)を表す文字3が印刷されている。図11(b)は印刷された文字3の中の「H」のみを拡大した拡大図であり、印刷により付着されたインク4で「H」と云う文字を形成している。また、図11(c)は図11(b)のA−A線断面図であり、筐体2の背面2aに印刷文字「H」を形成するインク4が所定の厚みで付着された範囲を示す。
なお、各種装置の筐体に立体感を持たせて大きな文字又は図柄等を表示する場合は、印刷ではなく、文字又は図柄等の形状に合わせた銘板(バッチ、エンブレム等)を製作して、筐体表面に貼り付けることもある。
特開平8−45236号公報 特開昭61−225721号公報
製品の筐体及び機器部材等の表面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷を行う場合、印刷される箇所の表面には印刷位置を特定するための目印は一般に施されていない。そのため、ケガキ道具又は位置決め治具等を用いて印刷の位置合わせを行う必要があり、印刷の位置決めに手間を要すると云う問題がある。
また、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷により被印刷物へ付着したインクが必要以上に広がって印刷ニジミが発生する場合や、インク量が不足して印刷のカスレが生じる場合がある。印刷ニジミや印刷のカスレが発生した印刷物は印刷不良となり、このような印刷不良は修正の必要がある。
印刷不良として印刷ニジミを修正する場合は、印刷ニジミの箇所をサンドペーパー等でこすり、印刷されたインク及び印刷箇所の塗装を一旦除去し、再塗装を行った上で再度印刷を行う。この際、印刷ニジミが生じている箇所だけからインクを除去することは通常困難であり、良好な印刷部分のインクまでを除去してしまうことが多いため、印刷ニジミの微修正は非常に難しい作業が要求されると云う問題がある。また、印刷のカスレを修正する場合、カスレが生じている箇所に再印刷を行うことになるが、カスレが生じている箇所だけにインクを付着することは困難であり、カスレ箇所の周囲にもインクが付着して良好な印刷部分を台無しにすることもあり、印刷のカスレの微修正も、印刷ニジミの微修正と同様に困難な作業が要求される。
さらに、被印刷物のシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷を行う箇所は、インクの載りを良好にするために一定の平滑度が要求される。一方、製品の質感向上のために製品表面にシボ等の凹凸を施す場合があるが、シボ等の凹凸が存在する表面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷を行うことは難しいので、印刷される箇所を含む表面にシボ等の凹凸を施すことが制限されると云う問題がある。
また、印刷の替わりに製品の筐体及び機器部材等の表面に銘板を貼り付ける場合、銘板自体の材質にはアルミニウム等の金属材料が使用されることが多いので、装置機器のリサイクル時の材料分別の際に銘板のみを取り外す必要性が生じ、リサイクルに係る処理負担を増大させると云う問題がある。
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、印刷する文字及び図柄等を形成するためにインクを付着させる範囲を囲う周形状の凸面を有する凸部を設けることで、印刷の位置合わせを容易に行えると共に印刷ニジミを防止する印刷方法及び機器部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、印刷する文字、図柄等を形成するためにインクを付着させる範囲を囲う周形状に沿って溝部を設けることで、容易に印刷の位置合わせを行えるようにすると共に印刷ニジミを防止する印刷方法及び機器部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明に係る印刷方法は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、インク付着範囲を囲う周形状の凸面を有する凸部を表面に設けた被印刷物を形成し、前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする。
また、本発明に係る印刷方法は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、インク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部を表面に設けた被印刷物を形成し、前記溝部で囲まれた箇所にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする。
さらに、本発明に係る印刷方法は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、インク付着範囲を囲う周形状の凸面を有する凸部を表面に設けると共に該凸部の周囲に沿って溝部を設けた被印刷物を形成し、前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る印刷方法は、前記周形状に係る寸法はインク付着範囲に対して1.001以上1.015以下の倍率で大きくすることを特徴とする。
また、本発明に係る機器部材は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で部材表面にインクが付着してある機器部材において、前記部材表面から凸設した凸面の周形状がインク付着範囲を囲うようにしてある凸部を備え、前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクが付着してあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る機器部材は、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で部材表面にインクが付着してある機器部材において、インク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部が前記部材表面に設けてあり、前記溝部で囲まれた箇所にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクが付着してあることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る機器部材は、前記周形状の内方は、外方に比べて表面粗さが小さくしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、凸部を設けた被印刷物を形成するので、凸部自体が印刷位置に対する目印として用いることができるようになり、凸部により印刷位置が明確となるのでケガキ道具又は位置決め治具等による位置合わせが不要になり、印刷の位置決めの効率化を図れると共に、正確な印刷位置を把握できる。なお、被印刷物を合成樹脂等の材料で成形する場合は、成形用の金型に凸部形成用の凹部を印刷位置に応じて予め設けておくことで、凸部を設けた被印刷物を容易に製作できる。また、凸部の凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着するので、付着されたインクが広がっても凸面周囲のエッジでインクの広がりがくい止められ、印刷ニジミの発生を最小限にして印刷不良を抑制できる。
さらに、インクが付着される箇所は被印刷物の表面から凸設した凸部の凸面なので、凸面と凸部の周囲面とは高さが異なる。そのため、印刷不良により凸面以外にインクが付着しても、不要なインクのみを高さが相異する凸面に付着されたインクと区別してサンドペーパー等で擦って除去できる。また、インク量の不足により印刷のカスレが生じても、凸面のみに再印刷を行ってインク不足を補うことができ、印刷不良を容易に修正できる。
さらにまた、インク付着箇所となる凸面は周囲より凸設するため、銘板等と同様に視覚的に立体感が生じ、平面だけの面に印刷された場合に比べて印刷された文字及び図柄等に対する品位を向上できる。なお、インク付着範囲とは、印刷する文字及び図柄等を形成するためにインクを付着する範囲を意味し、例えば、印刷する文字が「H」である場合、文字「H」を形成するためにインクを付着する領域が相当する(以下、同様)。
本発明にあっては、印刷する文字及び図柄等に対応するインク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部を設けた被印刷物を形成するので、溝部を印刷位置に対する目印にでき、従来のケガキ道具又は位置決め治具等による位置合わせが不要になり、印刷の位置決めに要する手間を低減できると共に、正確な印刷位置を把握できる。また、溝部で囲まれた箇所にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着するので、付着されたインクが周囲に広がっても溝部によりインクの広がりが遮断され、印刷ニジミを防止できる。
さらに、インク付着範囲は被印刷物の溝部で囲まれた箇所なので、溝部で囲まれた内方と外方とは溝部で分断されて明確に区別できる。そのため、印刷不良により溝部で囲まれた箇所の外方にインクが付着しても、不要なインクのみを溝部で囲まれた内方のインクと区別してサンドペーパー等で擦って除去でき、また、インク量の不足により印刷のカスレが生じても、溝部で囲まれた内方のみに再印刷を行ってインク不足を補うことができ、容易に印刷不良を修正できる。さらにまた、インク付着箇所となる溝部で囲まれた内方は、外方に対して溝部で分断されるため視覚的に周囲から浮上した感じが生じ、印刷された文字及び図柄等に対する品位を向上できる。
また、本発明にあっては、凸部及び溝部の両方を設けた被印刷物を形成するので、凸部及び溝部を印刷位置に対する目印に利用でき、正確な印刷位置を効率的に特定できる。また、凸部の凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着するので、付着されたインクが広がっても凸面の周囲輪郭のエッジ及び溝部でインクの広がりを確実にくい止めることができ、印刷ニジミの程度を最小限に抑えることができる。
さらに、インク付着範囲は凸部の凸面なので、凸面と凸部周りの表面とは高さが異なる上、凸部周囲に沿った溝部で凸面は周りの表面と分断されているため、インク付着範囲は、周りの箇所と明確に区別できる。そのため、凸面以外にインクが付着しても、不要なインクのみを容易に除去でき、また、印刷のカスレが生じても、凸面のみに再印刷を容易に行える。さらにまた、インク付着箇所となる凸面は、凸部により視覚的に立体感が生じると共に溝部により周囲から浮上した感じが生じ、印刷された文字及び図柄等の品位を大幅に向上できる。
本発明にあっては、周形状に係る寸法をインク付着範囲に対して1.001以上1.015以下の倍率で大きくするので、インクの付着対象となる箇所の寸法を印刷精度に対応させて形成でき、必要以上に凸面又は溝部で囲まれた箇所を大きくすることを防止して、印刷された文字、図柄等に対して良好な印刷品位を確保できる。また、印刷位置が印刷精度の範囲内でズレが生じても、ズレ分を凸面内又は溝部で囲まれた箇所内に収めることができ、印刷不良を抑えて確実に印刷を行える。なお、電気機器の筐体及び部品等に対する印刷に常用される印刷精度に合致させる場合は、上記数値範囲は1.005以上1.01以下の範囲にすることが好適であり、このような範囲に含まれる倍率を適用することで、電気機器に対する品質を満たす印刷品位を確保できる。
本発明にあっては、周形状の内方は、外方に比べて表面粗さが小さくしてあるので、周形状の内方と外方とを区別して外方のみにシボ等の凹凸を施すことが可能になり、また、シボ等を施しても印刷箇所となる周形状の内方は、表面粗さが小さいので通常通りに印刷を行うことができ、シボ等による質感の向上と良好な印刷性とを両立できる。
本発明にあっては、凸部を設けた被印刷物を形成し、凸部の凸面にインクを付着させるので、正確な印刷位置を容易に特定でき、印刷ニジミのインクの広がりを凸面周囲のエッジでくい止めることができ、凸面と凸部の周囲面とを物理的に区別して印刷不良を容易に修正でき、さらに、視覚的に立体感を生じさせる印刷を実現できる。
本発明にあっては、インク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部を設けた被印刷物を形成し、溝部で囲まれた箇所にインクを付着させるので、精度良く且つ容易に印刷位置を特定でき、印刷ニジミのインクの広がりを溝部でくい止めることができ、溝部で囲まれた内方と外方とを物理的に区別して印刷不良の微修正を容易に行うことができ、印刷された文字、図柄等を周囲から浮き上がった印象を生じさせることができる。
また、本発明にあっては、凸部及び溝部の両方を設けた被印刷物を形成し、凸部の凸面にインクを付着させるので、凸部及び溝部により正確な印刷位置を容易に特定でき、印刷ニジミのインクの広がりを凸面周囲のエッジ及び溝部でくい止めることができ、凸面と凸部の周囲面とを凸部及び溝部により区別して印刷不良を容易に修正でき、さらに、視覚的に立体感及び浮上感を生じさせる印刷を実現できる。
本発明にあっては、周形状に係る寸法をインク付着範囲に対して1.001以上1.015以下の倍率で大きくするので、必要以上に凸面又は溝部で囲まれた箇所を大きくすることを防止して良好な印刷品位を確保でき、また、印刷位置が印刷精度の範囲内でずれても、ズレ分を凸面内又は溝部で囲まれた箇所内に収めて印刷不良を抑制できる。
本発明にあっては、周形状の内方は、外方に比べて表面粗さが小さくしてあるので、シボ等による質感の向上と良好な印刷性とを両立できる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷方法により得られた印刷物を示し、具体的には、図11(a)のテレビジョン装置1の筐体2と全体的な形状が略同等である筐体10にタンポ印刷でインク12が付着された箇所の部分的な断面を示すものである。第1実施形態で印刷する内容は、図11(a)と同様に社名「SHARP」の文字にしており、社名「SHARP」の文字自体がインク付着範囲に相当する。なお、印刷されてインク12が付着した筐体10は機器部材(印刷物)に相当し、印刷前の筐体10は被印刷物に相当する(以下、同様)。
図2は、印刷前の筐体10の一部として、印刷する社名「SHARP」の中の文字「H」に対応した部分を示している。筐体10は表面10aに、従来の図11(b)に示す文字「H」を形成するためにインク4を付着させる範囲を囲う周形状の凸部11を凸設している。筐体10自体は合成樹脂で形成されており、筐体10を射出成形するための金型(図示せず)に上述した凸部11に対応した凹部を印刷位置に対応して設けることで、凸部11を設けた筐体11を形成している。
このように金型自体に凸部11形成用の凹部を設けておくことで、成形された筐体10には印刷位置に合致した箇所に凸部11が存在することになり、凸部11を目印に印刷位置を合わすことができる。なお、図示していないが、筐体10の表面10aには、「H」以外の文字(S、A、R、P)に対応する凸部11も勿論設けられている。
凸部11は、文字「H」を表すためにインクを付着させるインク付着範囲13(図2中、一点鎖線で示すH字状の範囲)を囲う周形状の凸面11aを有し、凸面11aの周形状もH字状になっている。凸面の周形状の寸法はインク付着範囲13に比べて一回り大きくしており、図2中のB−B線断面における箇所でインク付着範囲13に係る幅寸法L1に対し凸面11aの幅寸法Wが1.001以上1.015以下の範囲内の倍率の数値になるように設定している(図1、3参照。図1、3は図2中のB−B線における断面図)。
第1実施形態では、図1、3に示すように、W=L1+2×L2の関係が成立しており、L2の寸法を0.2mmにしている。なお、凸部11の幅寸法Wのインク付着範囲13に係る幅寸法L1に対する倍率の数値は、上述した数値範囲の中で印刷精度に対応して特定することが好適であり、例えば、60mmの幅寸法L1に対する印刷精度が60mm±0.2mmの場合では、幅寸法Wを60.4mmに設定し、このときの倍率の数値は約1.007になる。このように印刷精度に基づき倍率の数値を特定することで、印刷精度の範囲内では確実に凸部11の凸面11aに印刷できるようになる。なお、第1実施形態に係る凸部11の筐体10の表面10aからの突出高さHは、0.1mmにしている。
上述した形態の筐体10に印刷を行うには、図3に示すように、社名「SHARP」に対応した凹版からインク12を転写したタンポTを、筐体10に設けられた凸部11を目印にして印刷位置を特定し、タンポTを筐体10の表面10aに押し付けて凸部11の凸面11aにインク12を転写させる。それから、タンポTを筐体10から離反し、インク12を凸面11aに付着させて印刷を完了する。
印刷が完了した筐体10は、図1、4に示すように、凸部11の凸面11aにのみインク12が付着し、インク12が付着した箇所の周囲に寸法L2の幅で凸面11aが露出した状態になっている。インク12は筐体10の表面10aより凸設した凸部11の凸面11aに付着しているため、印刷された文字に視覚的に立体感が生じ、印刷品位が向上している。
また、図5は、付着したインク12が広がった場合及び印刷箇所以外の筐体10の表面10aにインク12aが付着した場合を示している。先ず、所定の印刷位置(図5中、二点鎖線で示す)から印刷されたインク12が周囲へ広がった場合、凸面11aの周囲輪郭のエッジ11bの存在及びインク12自体の表面張力により、インク12の広がりがエッジ11bでくい止められ、凸面11aの外方の表面10aまでインク12が広がるような印刷不良の発生を防止している。
さらに、インク12の飛び散り等により筐体10の表面10aにインク12aが付着した場合、表面10aと凸面11aとは高さが相異するため、凸面11aと区別して表面10aに付着したインク12aのみを除去でき、微修正も容易になっている。さらにまた、図示していないが、凸面11aに付着させるインク量が不足して印刷のカスレが生じた場合も、凸面11aのみを再印刷してインク量を補充し、印刷のカスレの微修正も容易に行える。
なお、上述した第1実施形態ではタンポ印刷に基づいて説明したが、シルクスクリーン印刷を適用した場合でも、筐体10に凸部11を設け、凸部11の凸面11aにインク12を付着させることにより、上記と同様に印刷できる。また、第1実施形態は、上述した形態に限定されるものではなく、種々の変形例が存在し、例えば、印刷する内容として文字以外にも図柄、模様等を適用した場合も図柄、模様等を囲うように凸部11を設けることで上記と同様に印刷を行える。さらに、被印刷物は、テレビジョン装置の筐体10以外に、各種機械及び電気機器の筐体及び各種機器及び電気機器の部品と云った機器部材に加えて、シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷を行える全ての物を該当し、印刷後の機器部材及び印刷物は、図1に示す形態と同様に凸部11の凸面11aにインク12が付着されたものになる。
図6は、変形例の筐体10′(機器部材)を示しており、筐体10′は、表面10a′より凸部11′を凸設し、凸面11a′にインク12′を付着させているが、凸部11′の周囲の表面10a′にはシボを形成する凹部10b′を設けている。凹部10b′は筐体10′を形成するための金型(図示せず)に設けられた多数の突部により形成されており、凸部11′により凸面11a′と表面10a′とは区分けされるので、表面10a′のみに凹部10b′を形成しやすくなる。
また、凸部11′の凸面11a′はインク12′が載りやすいように平滑に仕上げられており、凸面11a′は凹部10b′が設けられた表面10a′に比べて表面粗さが小さくなっている。よって、変形例の筐体10′は、シボにより質感の向上を図った上で、良好な印刷性を維持できている。
図7は、本発明の第2実施形態に係る印刷方法により得られた印刷物を示し、第1実施形態と略同等の形状を有する筐体20にシルクスクリーン印刷によりインク22が付着された箇所の部分的な断面を示したものである。第2実施形態で印刷する内容は、第1実施形態と同様に社名「SHARP」の文字であり、社名「SHARP」の文字自体がインク付着範囲に相当し、図7に示す箇所は、第1実施形態の図1に示す文字「H」中の同じ部分である。
筐体20は、文字「H」を形成するためにインク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部21を設けていることが特徴であり、溝部21により囲われた周形状もH字状になっており、筐体20の表面20aには溝部21で囲まれた箇所として閉鎖表面20bが形成される。なお、筐体20は第1実施形態と同様に合成樹脂で形成されており、筐体20用の金型(図示せず)に上述した溝部21に対応した突起を印刷位置に応じて設けることで、筐体21の表面20aに溝部21を形成している。なお、図示していないが、筐体20の表面20aには、「H」以外の文字に対応する溝部21も勿論設けられている。
溝部21で囲まれた閉鎖表面20bの幅寸法Wと、インク22の付着に係る幅寸法L1との関係は第1実施形態と同様にW=L1+2×L2が成立し、1.001以上1.015以下の範囲内の数値の倍率で幅寸法L1を大きくして幅寸法Wを設定し、具体的な倍率の数値は第1実施形態と同様に印刷精度に基づき上記範囲から特定している。なお、第2実施形態において、溝部21自体に係る溝幅寸法L3及び溝深さD(図8参照)は、それぞれ0.5mmにしている。
上述した形態の筐体20に印刷を行うには、図8に示すように、版枠Kに張ったメッシュSに印刷文字の社名「SHARP」に対応してインク22が通過する部分と、通過しない部分とを形成し、筐体21に形成した溝部21を目印にして版枠Kの位置決めを行い、インク22を閉鎖表面20bへ押し出して付着させ、印刷を完了する。
印刷が完了した筐体20は、図7、9(a)に示すように、閉鎖表面20bにのみインク22が付着し、インク22が付着した範囲の周囲に寸法L2の幅で閉鎖表面20bが露出した状態になっている。また、第2実施形態では閉鎖表面20bと、その周囲の表面20aとが溝部21で分断されると共に、インク22が付着された箇所の周囲に沿って溝部21が存在するため、インク22により印刷された文字は視覚的に浮き上がった感じとなり、印刷品位が向上している(図9(a)参照)。
また、図9(b)は、印刷されたインク22が広がった場合を示し、所定の印刷位置(図中、二点鎖線で示す)からインク22が周囲へ広がった際、溝部21の内周縁側のエッジ21aの存在及びインク22の表面張力により、インク22の広がりがエッジ21aでくい止められ、溝部21より外方の表面20aまでインク22が広がることを防止している。
なお、溝部21より外方の表面20aにインク22が付着した場合、表面20aは閉鎖表面20bに対し溝部21で分断されているので、表面20aに付着したインク22だけを容易に除去して微修正でき、また、印刷のカスレが生じた場合でも、閉鎖表面20bだけにインク22を再印刷して印刷のカスレを微修正できる。
上述した第2実施形態ではシルクスクリーン印刷に基づいて説明したが、タンポ印刷を適用した場合でも、上記と同様に印刷できる。また、第2実施形態は、第1実施形態と同様の各種変形例の適用が可能である。
図10は、第2実施形態の変形例に係る筐体20′(機器部材)を示しており、筐体20′は、表面20a′より凸部31′を高さHの寸法で凸設し、凸部31′の凸面31a′にインク22′を付着させると共に、凸部31′の周囲に沿って溝部21′を設けている。このような筐体20′は、凸部31′及び溝部21′に対応する凹凸を筐体20′の成形金型(図示せず)に設けることで、射出成形され、第1実施形態と同様にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷を行うことで凸面31a′にインク22′を付着させている。
変形例の筐体20′は、図1等に示す第1実施形態及び図7等に示す第2実施形態の特性及び効果を併せ持ったものとなり、凸部31′及び溝部21′により印刷に対する位置決めの目印が一段と明確になり、また、インク22′の広がりを凸面31a′の周囲輪郭のエッジ及び溝部21′でくい止めることができ、さらに、インク22′を付着させる箇所を他の箇所と区別でき微修正も容易になる。さらにまた、凸部31′及び溝部21′により視覚的な立体感及び浮上感を一段と向上させて印刷品位の向上を図れる。
本発明の第1実施形態に係る印刷物の筐体を示す要部断面図である。 印刷前の筐体を示す要部斜視図である。 第1実施形態の印刷方法を示し、図2のB−B線における概略断面図である。 筐体の印刷された一部を表面側から見た要部平面図である。 筐体の印刷された部分を含む拡大断面図である。 第1実施形態の変形例に係る筐体の印刷された部分を含む拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係る印刷物の筐体を示す要部断面図である。 第2実施形態の印刷方法を示す概略断面図である。 (a)は第2実施形態の筐体の印刷された一部を表面側から見た要部平面図、(b)は筐体の印刷された部分を含む拡大断面図である。 第2実施形態の変形例に係る筐体の印刷された部分を含む拡大断面図である。 (a)は従来の印刷された筐体を示す概略図、(b)は印刷された文字の拡大図、(c)は(b)のA−A線における断面図である。
符号の説明
10、20 筐体
10a、20a 表面
11 凸部
11a 凸面
12、22 インク
13 インク付着範囲
21 溝部
20b 閉鎖表面

Claims (7)

  1. シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、
    インク付着範囲を囲う周形状の凸面を有する凸部を表面に設けた被印刷物を形成し、
    前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする印刷方法。
  2. シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、
    インク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部を表面に設けた被印刷物を形成し、
    前記溝部で囲まれた箇所にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする印刷方法。
  3. シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で被印刷物へインクを付着させて印刷物を得る印刷方法において、
    インク付着範囲を囲う周形状の凸面を有する凸部を表面に設けると共に該凸部の周囲に沿って溝部を設けた被印刷物を形成し、
    前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクを付着させることを特徴とする印刷方法。
  4. 前記周形状に係る寸法はインク付着範囲に対して1.001以上1.015以下の倍率で大きくすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の印刷方法。
  5. シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で部材表面にインクが付着してある機器部材において、
    前記部材表面から凸設した凸面の周形状がインク付着範囲を囲うようにしてある凸部を備え、
    前記凸面にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクが付着してあることを特徴とする機器部材。
  6. シルクスクリーン印刷又はタンポ印刷で部材表面にインクが付着してある機器部材において、
    インク付着範囲を囲う周形状に沿って溝部が前記部材表面に設けてあり、
    前記溝部で囲まれた箇所にシルクスクリーン印刷又はタンポ印刷でインクが付着してあることを特徴とする機器部材。
  7. 前記周形状の内方は、外方に比べて表面粗さが小さくしてある請求項5又は請求項6に記載の機器部材。
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JP2021122995A (ja) * 2020-02-03 2021-08-30 株式会社富士通ゼネラル 樹脂成形品

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