JP2006205105A - 高分子固定化遷移金属触媒の製法 - Google Patents

高分子固定化遷移金属触媒の製法 Download PDF

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Abstract

【課題】 遷移金属触媒を両親媒性の架橋性高分子中に固定することにより調整された高分子固定化遷移金属触媒の製法であって、従来のマイクロカプセル化法−架橋法では十分に固定できない原料を用いた場合でも、金属を微小クラスターとして高分子に固定することのでき、汎用性の高い製法を提供する。
【解決手段】 架橋性高分子と遷移金属化合物とを4級アンモニウム塩を含有する溶媒に均一に溶解又は分散させ、その結果遷移金属化合物が担持された高分子が生じるので、この析出物中の架橋性高分子の架橋基を架橋反応させて、高分子固定化遷移金属触媒を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、微小遷移金属クラスターを両親媒性の架橋性高分子中に固定することにより調整される高分子固定化クラスター組成物及びその製法に関する。
高分子固定化触媒を用いる反応は、触媒と生成物との分離が容易であり、触媒の回収・再使用が可能になるため、経済性、資源の有効利用、環境保全の観点から近年注目を集めている。従って、より有効な高分子固定化触媒を開発するためには、触媒の新しい固定化法の開発が望まれる。
金属をナノサイズにまで微粒子化するとバルクの性質とは異なる様々な性質が発現する。このような金属クラスターと呼ばれる微粒子は通常数十個の金属で構成され、数ナノメーターのサイズを持ち特異な物性を示す。このような金属クラスターを有機合成用触媒として用いると、触媒活性が飛躍的に向上するが、金属クラスターは不安定できわめて凝集し易いため、汎用的な触媒としての利用は困難とされている。金属クラスターを安定に得るための手法の一つとして、安定剤の存在下で金属イオンを還元し、金属クラスターを得ようとする試みがある。この場合の安定化方法としては、シクロデキストリンなど空洞を持つ分子に取り込む、テトラアルキルアンモニウムハライドなどの4級アンモニウム塩で取り囲む、ポリマーミセルに担持させるなどが報告されている(非特許文献5)。しかしながら、このような手法で得られた金属クラスターの安定性は低く、化学反応における様々な条件下でその構造を保つことは困難であり、回収再使用などはほとんど不可能である。
一方、化学工業の分野に於いては、環境問題の深刻化やコスト削減の必性により、触媒使用量の低減化や、使用後の回収再使用が求められている。金属触媒を担体上に固定化する試みは古くから行われているが、通常、触媒を触媒活性や反応の選択性が低下、反応中の触媒金属の漏出による生成物の汚染、回収後の触媒活性の低下などを伴うため、より有効な金属触媒の固定化方法が求められている。
近年、マイクロカプセル化を利用して金属触媒をポリマーに担持させた高分子固定化触媒が開発されている(非特許文献1〜4)。しかしながら、これらの高分子固定化触媒においても、耐溶剤性が不十分であったり、反応の種類によっては担持された金属が漏れ出すという問題があった(特許文献1)。
このような中、本出願の発明者らはパラジウム触媒を、マイクロカプセル化法により架橋性官能基を有するポリスチレン系のコポリマーにナノサイズクラスターとして担持し、その後熱架橋させることで、安定に固定化する技術を開発した。この架橋高分子中のパラジウムは0価で、リン原子などのリガンドも配位していない状態でいながら極めて安定に存在している(特許文献2,3、非特許文献6,7)。しかしながら、本手法には、金属、あるいは塩や配位子の種類によっては固定化が困難な場合が残されていた。
特開2002-66330 特開2002-253972 WO2004/024323 S.Kobayashi et al. J.Am.Chem.Soc. 120, 2985(1998). S.Kobayashi et al. Org.Lett. 3, 2649(2001). T.Ishida et al. Adv.Synth.Catal. 345, 576(2003). S.Kobayashi et al. Chem.Commun. 2003, 449. J.Am.Chem.Soc. 119, 10116(1997). K.Okamoto et al. J.Org.Chem. 69, 2871(2004). K.Okamoto et al. Org.Lett. 6, 1987(2004).
本発明者らが開発した、有機高分子の被膜により触媒を包み込み(マイクロカプセル化)、更に高分子を架橋させることにより触媒を固定化することにより得られた金属触媒(特許文献3、特願2004-064520等)においては、金属は微小金属クラスターとして高分子に固定化されており、種々の反応に高い活性を示し、また触媒を回収・再使用が可能である。しかし、この方法に利用できない金属や金属と配位子の組み合わせなどがあり、この方法を広範な金属や金属と配位子の組み合わせなどに応用できる手段が求められていた。
そこで本発明は、従来マイクロカプセル化法−架橋法では十分に固定できない原料を用いた場合でも、金属を微小クラスターとして高分子に固定することのでき、汎用性の高い手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶液中の金属触媒の分散が良好にすることが知られていた4級アンモニウム(M. T. Reetz et al. Chme. Commun.1996, 1921.; M. T. Reetz et al. Chme. Commun, 11, 773 (1996))を用いることを考え、金属触媒をコアセルベート化する段階でこの4級アンモニウムをその溶液又は分散液に添加したところ、金属触媒の高分子への取りこみが容易になり、上記課題を解決できることを見出した。
その理由は、4級アンモニウムは金属をナノスケールの微粒子として分散させる効果を持ち、このように分散することにより次段の架橋反応が容易に進行するようになったためと考えられる。
得られた触媒中の金属は電子顕微鏡でも凝集したクラスターは観察されないことから、その径は数ナノメートル以下と推定される。また、この触媒を用いて接触水素化反応を行ったところ、触媒からの金属の漏出は認められず、反応は速やかに進行し目的物が定量的に得られた。
本発明の高分子固定化遷移金属触媒は、従来の固定化金属触媒に比べて、金属の漏出が少なく、回収再使用が容易で、回収後の活性低下も起こらない。更に、架橋基を利用して樹脂、ガラス、ビーズ、等の担体への固定も容易である。
即ち、本発明は、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子と、遷移金属化合物とを、当該架橋性高分子を溶解する溶媒中で均一化させ、生じた組成物を析出させ、当該析出物中の架橋基を架橋反応させることから成る高分子固定化金属触媒の製法であって、前記溶媒が4級アンモニウム塩を含むことを特徴とする高分子固定化金属触媒の製法である。この方法において、この架橋性高分子と前記遷移金属化合物とが均一化された溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることにより相分離を生じさせ、生じた組成物を析出させることが好ましい。
更に本発明は、遷移金属(白金、パラジウム及びルテニウムを除く。)を架橋高分子に担持させてなる高分子固定化遷移金属触媒であって、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有することを特徴とする高分子固定化遷移金属触媒である。
4級アンモニウム塩の存在下で、上述の高分子カルセランド化法による触媒の固定化を行ったところ、これまで固定化が困難であったパラジウム(II)塩やパラジウム(0)若しくは白金(0)のオレフィン錯体などの触媒前駆体を用いて微少金属クラスターを高分子に固定化することができた。また、この新手法で得られた固定化触媒は、種々の反応において高い活性を示すばかりでなく、金属の漏出を伴うことなく回収・再使用できる。
本発明の高分子固定化遷移金属触媒の製法においては、架橋性高分子と遷移金属化合物とを4級アンモニウム塩を含有する溶媒に均一に溶解又は分散させ、その結果遷移金属化合物が担持された高分子が生じるので、この析出物中の架橋性高分子の架橋基を架橋反応させて、高分子固定化遷移金属触媒を得る。
本発明の架橋性高分子は、芳香族側鎖と親水性側鎖を有することを要し(両親媒性高分子)、更に架橋基を有することを要する。この高分子は更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有してもよい。これらの側鎖は高分子の主鎖に直接結合する。これら側鎖を複数種有していてもよい。また架橋基はこれらの側鎖のいずれに結合していてもよく、また高分子主鎖に直接結合してもよいが、好ましくは芳香族側鎖を含む疎水性側鎖若しくは親水性側鎖又は両者に、より好ましくは芳香族側鎖に結合する。
芳香族側鎖として、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6〜10、好ましくは6のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アラルキル基としては、通常炭素数7〜12、好ましくは7〜9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環はアルキル基、アリール基、アラルキル基などの疎水性置換基を有していてもよい。
芳香環が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜12のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香環が有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、上記した如き芳香族基としてのアリール基及びアラルキル基と同様なものが挙げられる。
これら芳香環が有していてもよい置換基は、アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環に通常1〜5個、好ましくは1〜2個置換していてもよい。
疎水性側鎖としてのアルキル基としては、上記した如き芳香環が有していてもよいアルキル基と同様のものが挙げられる。
芳香族側鎖以外の疎水性側鎖としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
親水性側鎖としては、比較的短いアルキル基、例えば、炭素数が1〜6程度のアルキレン基に−R(Rは−OH又はアルコキシ基、好ましくは−OHを表す。)が結合したものであってもよいが、−R(OR、−R(COOR又は−R(COOR(OR(式中、Rは上記と同様であり、Rは共有結合又は炭素数1〜6、好ましくは共有結合又は1〜2のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数2〜4、好ましくは2のアルキレン基を表し、m、n及びpは1〜10の整数、oは1又は2を表す。)で表されるものが好ましい。より好ましい親水性側鎖として、−CH(OCOHや−CO(OCOH等が挙げられる。
架橋基としては、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、及びチオール基、好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びチオイソシアネート基が挙げられ、これらの架橋基は必要に応じて単独又は組み合わせて用いてもよい。
高分子に含まれる架橋基の好ましい組み合わせとしては、エポキシ基のみ、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基のみ、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基、イソシアネート基とカルボキシル基等が挙げられる。このなかで、エポキシ基のみ、及びエポキシ基と水酸基の組み合わせが好ましい。
高分子が架橋基を複数種有する場合、架橋基の結合位置に制限はないが、異なる位置の側鎖に含まれていることが好ましい。
一方、架橋性高分子はこれら側鎖を有するものであればいかなるものであってもよいが、これら側鎖を有するモノマーを重合させたものが好ましい。またこのようなモノマーとして、付加重合のための二重結合や三重結合,例えば、ビニル基、アセチレン基など、好ましくはビニル基を持つものが好ましい。
本発明の架橋性高分子の例として、下記の架橋性高分子が挙げられる。
(A)1)芳香族側鎖、親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子、
(B)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖又は疎水性側鎖及び重合性二重結合を有する少なくとも1種のモノマーを重合又は共重合することにより得られる架橋性高分子、又は
(C)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する親水性側鎖又は疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーから成る群から選択される少なくとも2種のモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子であり、好ましくは(A)の架橋性高分子である。
ここで、同種のモノマーは2以上の異なるモノマーを含むものであってもよい。
本発明の遷移金属化合物は、遷移金属を含む適当な化合物(例えば、酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、水酸化物、酢酸塩などのカルボン酸塩、アセチルアセトナト塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、配位子との錯体等)のことをいうが、遷移金属を適当な配位子と錯体を形成させたものが好ましい。このような配位子との錯体を使用する場合、前駆体中の遷移金属は上記したごとき構造を有する高分子が有する芳香環との配位子交換により高分子に担持される。尚、遷移金属前駆体中の遷移金属が0価以外のものである場合にはミセル形成時に還元処理を行うことにより担持された遷移金属を0価とすることが出来る。担持させる遷移金属は好ましくは0価である。
ここで用いる遷移金属としては、鉄、ルテニウム、オスミウム等の第8属遷移金属、コバルト、ロジウム、イリジウム等の第9属遷移金属、ニッケル、パラジウム、白金等の第10属遷移金属、銅、銀、金等の第11属遷移金属、亜鉛、カドミウム、水銀等の第12属遷移金属などが挙げられ、このうちパラジウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金等が好ましい。尚、これら遷移金属は2種以上組み合わせて用いてもよい。
錯体を形成させるための配位子として、例えば、ジメチルフェニルホスフィン(P(CH3)2Ph)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dPPf)、トリメチルホスフィン(P(CH3)3)、トリエチルホスフィン(P(Et)3)、トリtert-ブチルホスフィン(P(tBu)3)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリメトキシホスフィン(P(OCH3)3)、トリエトキシホスフィン(P(OEt)3)、トリtert-ブトキシホスフィン(P(OtBu)3)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、トリフェノキシホスフィン(P(OPh)3)、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン等の有機ホスフィン配位子、1,5−シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、トリエチルアルシン(As(Et)3)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アセチルアセトナト、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、エチレン、カルボニル、アセテート、トリフルオロアセテート、ビフェニルホスフィン、エチレンジアミン、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、アセトニトリル、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、スルホネート、カーボネート、ハイドロオキサイド、ナイトレート、パークロレート、サルフェート等が挙げられる。これらの中で、有機ホスフィン配位子、1,5−シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、及びトリエチルアルシン(As(Et)3)が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリtert−ブチルホスフィン、及びトリ−o−トリルホスフィンがより好ましく、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。
配位子の数は、調製の際に使用する高分子の種類や架橋反応条件等にもよるが、通常1〜4個である。
このような架橋性高分子と遷移金属化合物とを、4級アンモニウム塩を含有する溶媒に均一に溶解又は分散させる。
この4級アンモニウム塩は一般式 R で表される。式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、炭素数が1〜16の炭化水素基、好ましくはメチル、エチル、ベンジル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−ドデシル又はn−ヘキサデシルを表す。Xはハロゲン原子を表す。
この4級アンモニウム塩は一般式 R=N(式中、Rは炭素数が1〜16の2価の炭化水素基、RはRと同様を表す。)で表される塩を含む。このような4級アンモニウム塩として次式で表されるN−アルキルピリジニウム塩が挙げられる。
Figure 2006205105
式中、Rは、アルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
この架橋性高分子と遷移金属化合物とを、良溶媒に溶解した後、適当な貧溶媒を加えて相分離を起こすことにより、遷移金属をポリマー凝集物又はミセル様集合体に取り込むことができる。
その方法は、例えば、a)適当な極性の良溶媒に溶解させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、b)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えて遷移金属担持ミセル様集合体を形成させ、更に極性の貧溶媒で凝集させる、c)適当な非極性の良溶媒に溶解させた後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、d)非極性の良溶媒に溶解した後適当な極性溶媒を加えて遷移金属担持ミセル様凝集体を形成させ、更に非極性の貧溶媒で凝集させる、ことにより行われる。この場合、a)及びb)の方法では、形成されたミセル様凝集体の内方向に疎水性側鎖が、外方向に親水性側鎖が位置することになり、c)及びd)の方法では、形成されたミセル様凝集体の外方向に疎水性側鎖が内方向に親水性側鎖が位置することになる。
極性の良溶媒としてはTHF、ジオキサン、アセトン、DMF、NMPなどがあり、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。
この際、遷移金属化合物の配位子の一部若しくは全てが脱離する現象が認められる。遷移金属超微粒子は夫々のミセル様凝集体に於いて芳香族側鎖との相互作用により担持される。また、遷移金属は通常0価で固定されるが、遷移金属化合物がイオンの場合は相分離の際に還元処理することにより0価の遷移金属として固定できる。ここで、良溶媒中のポリマーの濃度は約1〜100 mg/ml、遷移金属化合物の量はポリマーに対して0.01〜0.5(w/w)、貧溶媒の量は良溶媒に対して0.2〜10(v/v)用いられ、貧溶媒の添加時間は通常10分〜2時間かけて行われる。相分離の際の温度は特に制限はないが、通常室温で行われる。
次に、架橋性高分子の架橋基を架橋反応させる。
架橋反応は、架橋性官能基の種類により、加熱や紫外線照射により反応させることができる。架橋反応は、これらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、縮合剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。
架橋基を加熱により架橋させる際の温度は、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜10時間である。
このようにして得られた高分子固定化遷移金属触媒は、遷移金属がポリマー中の芳香環との相互作用により超微粒子として担持された形態を有していると考えられ、各種の反応、例えば、オレフィンやケトンの水素化反応やオレフィンへのヒドロシリル化反応などに対して高い触媒活性を示す。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
スチレン(13.42 g, 128.9 mmol)、4-ビニルベンジルグリシジルエーテル(3.06 g, 16.1 mmol)、テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニルエーテル(5.0 g, 16.1 mmol)、AIBN(189.6 mg, 1.15 mmol)をクロロホルム(20 mL)に溶解しアルゴン雰囲気下で48時間、還流条件下で加熱攪拌した。冷却後反応混合物をメタノール(600 mL)中に注いでポリマーを固化させた。デカントして上澄みを取り除いた後、少量のテトラヒドロフランに溶解し再びメタノールに注いだ。沈殿したポリマーを濾過し室温減圧下で乾燥した。16.2 gのポリマーを得た(収率76%)。
1H-NMRの測定により、得られたポリマーの比は(スチレン/4-ビニルベンジルグリシジルエーテル/テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニルエーテル)の各モノマー単位の比(x/y/z)=83/11/6であった。また、重量平均分子量(Mw) は68434であった。得られたポリマーの構造は下式で表される。
Figure 2006205105
製造例1で得たコポリマー(200 mg)及び臭化テトラブチルアンモニウム(21.3 mg, 0.066 mmol)、Pt(dba)2(44 mg, 0.066 mmol)をTHF(3 mL)中、室温にて24時間撹拌した。ここでdbaは下式で表されるジベンジリデンアセトンである。
Figure 2006205105
この混合液に、空気雰囲気下、ヘキサンを加えコアセルベート化を行い、析出したマイクロカプセル化白金をろ別、ヘキサン洗浄、減圧乾燥を行った。その後、無溶媒条件下120℃で2時間加熱して高分子を架橋させた。得られた固体を、THF、水、THFで洗浄し、減圧乾燥することで、高分子固定化白金触媒(以下「PI Pt」という。)(0.15 mmol/g)を146 mg得た。白金クラスターの粒子サイズを透過型電子顕微鏡(TEM)にて観測したところ、大きなクラスターの形成は認められず、<1 nmと推定された。また、PI Ptの元素分析から、窒素原子は含まれていない(誤差0.3%以内である)ことが分った(すなわちアンモニウム塩は取り込まれていない)。更に、全てのろ液と洗浄液を集め、dbaの回収を行ったところ、dbaは定量的に回収された。
製造例1で得たコポリマー(200 mg)、臭化テトラブチルアンモニウム(43 mg, 0.13 mmol)及びパラジウム(II)アセテートPd(OAc)2(29 mg, 0.13 mmol)をTHF(3 mL)中、66℃にて5時間撹拌を行った。この混合液を室温に冷却後、空気雰囲気下、ヘキサンを加えコアセルベート化を行い、析出したマイクロカプセル化パラジウムをろ別、ヘキサン洗浄、減圧乾燥を行った。その後、無溶媒条件下120℃で2時間加熱して高分子を架橋させた。得られた固体を、THF、水、THF、塩化メチレンで洗浄し、減圧乾燥することで、高分子固定化パラジウム触媒(以下「PI Pd」という。)(0.45 mmol/g)を206 mg得た。パラジウムクラスターの粒子サイズを透過型電子顕微鏡(TEM)にて観測したところ、大きなクラスターの形成は認められなかった。
アルゴン雰囲気下、PI Pt(0.15 mmol/g, 1 mol%)に、4-フェニル-1-ブテン(0.5 mmol)、HSiMe2OSiMe3(1.0 mmol)、水(1.66 mL)、ヘキサン(0.83 mL)をこの順序で加え、40℃にて1時間撹拌を行った。室温に冷却後、反応混合物をヘキサンで希釈し、触媒をろ別した。ろ液は、水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、内部標準物質として1,2,4,5-テトラメチルベンゼンを加え、1H NMR分析により生成物を定量した。その結果、ヒドロシリル化生成物を95%の収率で得た。なお、蛍光X線分析により白金の漏出量を測定した結果、漏出は認められなかった。
Figure 2006205105
PI Pd(0.45 mmol/g, 5 mol%)と2,4-ジフェニル-2-メチル-4-ペンテン(0.25 mmol)に、THF(3 mL)を加え、水素雰囲気下(風船を使用)、室温にて1時間撹拌した。その後、反応混合物をヘキサンで希釈し、触媒をろ別した。ろ液を減圧濃縮し、内部標準物質として1,2,4,5-テトラメチルベンゼンを加え、1H NMR分析により生成物を定量した。その結果、水素化生成物を定量的な収率で得た。なお、蛍光X線分析によりパラジウムの漏出量を測定した結果、漏出は認められなかった。
Figure 2006205105
比較例1
実施例2における臭化テトラブチルアンモニウムを用いずに実施例2と同様の実験を行った。しかし目的物(高分子にパラジウムが固定化された触媒)は全く得られなかった。
その理由は、金属がナノスケールの微粒子となって分散しないため、架橋反応が進行しないためと考えられる。この例のような酢酸塩のような疎水性の小さな配位子を持つ金属種は分散しにくいため、4級アンモニウム塩を添加することにより金属が分散して架橋が可能になるものと考えられる。

Claims (9)

  1. 芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有する架橋性高分子と、遷移金属化合物とを、当該架橋性高分子を溶解する溶媒中で均一化させ、生じた組成物を析出させ、当該析出物中の架橋基を架橋反応させることから成る高分子固定化金属触媒の製法であって、前記溶媒が4級アンモニウム塩を含むことを特徴とする高分子固定化金属触媒の製法。
  2. 前記架橋性高分子と前記遷移金属化合物とが均一化された溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることにより相分離を生じさせ、生じた組成物を析出させることから成る請求項1に記載の製法。
  3. 前記遷移金属化合物が、遷移金属と配位子との錯体、又は遷移金属の酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、水酸化物、カルボン酸塩、アセチルアセトナト塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩若しくは亜硝酸塩である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製法。
  4. 前記4級アンモニウム塩がR (式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、炭素数が1〜16の炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表す。)で表される請求項1〜3のいずれか一項に記載の製法。
  5. 遷移金属(白金、パラジウム及びルテニウムを除く。)を架橋高分子に担持させてなる高分子固定化遷移金属触媒であって、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有することを特徴とする高分子固定化遷移金属触媒。
  6. 前記架橋性高分子が更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有する請求項5に記載の触媒。
  7. 前記架橋性高分子が、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基を有する側鎖を含む請求項5又は6に記載の触媒。
  8. 前記架橋性高分子が、更に、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基又はチオール基を含む側鎖を少なくとも一種有する請求項7に記載の触媒。
  9. 前記架橋性高分子が、スチレンを含む重合性モノマーの共重合体である請求項5〜8に記載の触媒。
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