本発明は、ノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置に関し、特に、HD(High Definition)TVフォーマットとSD(Standard Definition)TVフォーマットを相互に変換できるノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置に関するものである。
近年、テレビジョン放送システムのディジタル化が急速に発展し、従来のVTR(ビデオテープレコーダ)を用いて放送業務を行う放送システム、いわゆるVTR放送システムに代えて、ノンリニア放送システムと呼ばれるシステムが、放送業務用として使用され始めてきている。
このノンリニア放送システムは、複数の番組素材を、ランダムアクセスが可能な記憶装置、例えば、HDD(ハードデスク)、DVD(Digital Versatile Disc)あるいは光ディスク等に予め記録しておく。そして、自動放送システムからの指示により、順次、放送スケジュールに従って、記憶装置から各番組素材を選択して読出すことにより、複数の番組素材が所定の順序で時系列的に並んだ放送プログラムとして組立てられ、これを放送するようにしたシステムである。このようなシステムを、以下、ノンリニア放送システムと呼び、番組素材とは、映像情報や音声情報を含むテレビジョン放送用の情報であり、番組素材の集合が番組となる。なお、この番組素材とは、ドラマ、ニュース、音楽、CM(Commercial)等の素材を含み、また、放送素材と呼ばれる場合もある。
而して、現在のテレビション方式は、NTSC方式、所謂、標準テレビション方式(SDTV)と地上波デジタル放送用のHDTV方式があり、これらが混在して放送されているのが現状である。従って、番組素材をノンリニア放送システムのビデオサーバーに蓄積する(ファイリングする)場合、番組素材のフォーマットには、HD−SDI((High Definition-Serial Digital interface)とSD−SDI(Standard Definition Serial Digital interface)の2種類のフォーマットが混在することとなる。SD−SDIフォーマットは、従来のアナログテレビ(NTSC方式)に対応したフォーマットであり、HD−SDIは、ハイビジョン放送方式とよばれ、地上波デジタル放送向けの高画質、高音質を特徴とするフォーマットである。
そして、ノンリニア放送システムのビデオサーバーに蓄積される。即ち、放送のために放送局に持ち込まれる番組素材は、HDもしくはSDのどちらか一方のフォーマットで作成されたVTR用テープ、DVDディスクあるいは光ディスクで納入されるか、直接通信用伝送路を介して納入される。従って、放送局のノンリニア放送システムでは、アナログ放送向けとデジタル放送向けの両方を同時に送出するためには、HDフォーマットの番組素材をSDフォーマットの番組素材に変換する、あるいは、SDフォーマットの番組素材をHDフォーマットの番組素材に変換してノンリニア放送システムのビデオサーバーに蓄積する必要がある。
しかしながらHD−SDI方式と、SD−SDI方式では、走査線、画素数および音声チャンネル数等が異なるため、方式変換が必要である。例えば、音声について説明するとHD−SDI方式では、8CH(Channel)(最大16CH)で構成されるが、SD−SDI方式では、2CH(最大4CH)で構成されている。特に、HD−SDI方式では、5.1CHサラウンド(これについては後述する。)等、多数のチャネルを用いた番組素材が多く存在する。その結果、番組素材のフォーマットの変換を行う際には、多数のチャネル音声の中から2CH分の選択、所謂、音声マッピングや5.1CHサラウンドの2CHへの変換といった方式変換処理が必要となる。以下、従来のノンリニア放送システムについて図4、図5を用いて説明する。なお、HD−SDI方式のフォーマットについては、AES−3 1992年 2チャンネル直線量子化デジタルオーディオデータのシリアル伝送規格(非特許文献1参照)、ARIB STD BTA S−005B(非特許文献2参照)およびARIB STD BTA S−006B(非特許文献3参照)で定められ、また、SD−SDI方式のフォーマットについては、ARIB STD BTA F−1002(非特許文献4参照)に記載されているので、詳細な説明は省略する。
図4は、従来のノンリニア放送システムの概略構成を示すブロック図である。図4において、401−1、401−2は、例えば、番組素材を記録したVTR(ビデオテープレコーダ)である。なお、この例では、VTRで説明するが、VTRに限らず、DVDディスク、光ディスク等の記録装置あるいは通信用伝送路で送られてくる番組素材であっても良い。そしてVTR401−1、401−2の番組素材は、HD−SDI方式のフォーマットとSD−SDI方式のフォーマットが混在している場合がある。本例では、例えば、VTR401−1は、HD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材であり、VTR401−2は、SD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材であるとして説明する。
402は、VTR401−1、401−2のいずれかを選択するためのスイッチャで、制御部403により選択動作する。404は、HD/SD変換処理部であり、制御部403で制御される。なお、HD/SD変換処理部404の詳細は、図5に示されている。なお、図5において、入力端子501は、スイッチャ402からのHD−SDI方式のフォーマットの番組素材が入力され、入力端子520は、スイッチャ402からのSD−SDI方式のフォーマットの番組素材が入力される。また、出力端子510からの出力は、エンコーダ405−1に、そして出力端子518からの出力は、エンコーダ405−2にそれぞれ出力される。制御入力端子511は、制御部403からの制御信号が入力される。
スイッチャ402がVTR401−1の番組素材を選択すると、HD−SDI方式のフォーマットの番組素材がHD/SD変換処理部404に入力され、HD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、スイッチSW516、出力端子510を介して、そのままエンコーダ405−1でエンコードされ、ビデオサーバー407のHD用入力端子408−1から例えば、HD用記録装置409−1に記憶される。なお、スイッチSW516は、制御部403により適宜切替られる。一方、同じVTR401−1の番組素材であるHD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、音声分離および音声変換処理部519に入力され、ここでHD−SDIフォーマットの映像信号と、8CHの音声信号とに分離されると共に、8CHの音声信号は、4CHの音声信号に変換される。HD−SDIフォーマットの映像信号は、SDフォーマット変換部506でSD−SDIフォーマットの映像信号に変換された後、音声多重部(SD−MUX)509で4CHの音声信号が多重され、スイッチSW517、出力端子518を介してエンコーダ405−2に出力される。なお、スイッチSW517は、制御部403からの制御信号で適宜切替えられる。エンコーダ405−2への入力信号は、エンコーダ405−2でエンコードされ、ビデオサーバー407のSD用入力端子408−2から例えば、SD用記録装置409−3に記憶される。
同様に、スイッチャ402がVTR401−2の番組素材を選択すると、SD−SDI方式のフォーマットの番組素材がHD/SD変換処理部404に入力され、SD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、そのままスイッチSW517、出力端子518を介してエンコーダ405−2でエンコードされ、ビデオサーバー407のSD用入力端子408−2から例えば、SD用記録装置409−3に記憶される。一方、同じVTR401−2の番組素材であるSD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、音声分離および音声変換処理部519に入力され、ここでSD−SDIフォーマットの映像信号と、4CHの音声信号とに分離されると共に、4CHの音声信号は、8CHの音声信号に変換される。SD−SDIフォーマットの映像信号は、HDフォーマット変換部514でHD−SDIフォーマットの映像信号に変換された後、音声多重部521で8CHの音声信号が多重され、スイッチSW516、出力端子510を介してエンコーダ405−1に出力される。なお、スイッチSW516は、制御部403からの制御信号で適宜切替えられる。この入力信号は、エンコーダ405−1でエンコードされ、ビデオサーバー407のHD用入力端子408−1から、例えば、HD用記録装置409−1に記憶される。従って、VTR401−1のHD−SDI方式のフォーマットの番組素材およびVTR401−2のSD−SDI方式のフォーマットの番組素材がそれぞれHD−SDI方式のフォーマットの番組素材とSD−SDI方式のフォーマットの番組素材の両方式の番組素材としてビデオサーバー407の記憶部409−1と409−3に記憶される。なお、記憶部409−2は、HD用記録装置409−1と同じ番組素材が記憶され、ノンリニア放送システムの二重系を構成している。
406は、制御部、410は、システムチェンジャーで、例えば、現用のハイビジョン放送がビデオサーバー407のHD用記憶部409−1の番組素材を選択し、システムチェンジャー410を介して出力端子411から一般家庭に放送が行われている。しかし、何らかの原因で、現用の放送にトラブルが発生すると、制御部406は、システムチェンジャー410を制御して予備系に切替、記憶部409−2の番組素材を選択し、一般家庭への放送を継続するようになされている。なお、記憶部409−1、409−2、409−3を示しているが、これに限らず複数台の記憶部を設けることが可能である。また、記憶部は、VTR用テープ、DVDディスク、光ディスク等でもよい。
412は、画像モニター、413は、オーディオモニタであり、ビデオサーバー407に蓄積されている番組素材の画像および音楽等をモニタできるようになされている。また、必要に応じてモニタを見ながら番組素材の編集を行うこともできる。
次に、図5を用いてHD/SD変換処理部404について更に詳細に説明する。図5は、HD/SD変換処理部404の概略構成を示すブロック図である。図5において、入力端子501は、例えば、スイッチャ402でHD−SDI方式のフォーマットの番組素材を選択した場合の信号が入力される。即ち、本実施例では、VTR401−1の番組素材が入力される。この入力されたHD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、そのままスイッチSW516、出力端子510を介してエンコーダ405−1に入力され、ビデオサーバー407のHD入力端子408−1に供給され、HD用記憶部409−1に蓄積される。
また、入力端子501に供給されたHD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、HD−DMUX(HD-demultiplexer)503に供給される。HD−SDI方式のフォーマットは、例えば、走査線1125本、16:9のHD映像信号に8CH(channel)の音声信号が多重化された信号であり、この多重信号がHD−DMUX503で映像信号504と、音声信号505に分離され、それぞれSDフォーマット変換部506とマッピング処理部507に供給される。マッピング処理部507では、8CH(channel)の音声信号を4CHの音声信号508に変換し、その出力は、音声多重部509に供給される。なお、制御端子511には、制御部403からの制御信号が供給されるので、マッピング処理部507は、8CH(channel)の音声信号505を4CHの音声信号508に変換するように制御される。
SDフォーマット変換部506では、HD−SDIフォーマットの映像信号504を、例えば、走査線525本、4:3のSD−SDIフォーマットの映像信号に変換し、音声多重部509、例えば、SD−MUX(SD-multiplexer)に供給する。そして、音声多重部509では、SDフォーマット変換部506でSD−SDIフォーマットの映像信号に変換された映像信号と4CHの音声信号508を多重化し、出力する。この出力は、スイッチSW517、出力端子518、エンコーダ405−2を介してビデオサーバー407のSD入力端子408−2に供給され、SD用記憶部409−3に蓄積される。
次に、入力端子520は、例えば、スイッチャ402でSD−SDI方式のフォーマットの番組素材を選択した場合の信号が入力される。即ち、本実施例では、VTR401−2の番組素材が入力される。この入力されたSD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、そのままスイッチSW517を介して出力端子518から出力され、エンコーダ405−2でエンコードされ、ビデオサーバー407のSD入力端子408−2に供給され、SD用記憶部409−3に蓄積される。
また、入力端子520に供給されたSD−SDI方式のフォーマットの番組素材は、SD−DMUX(SD-demultiplexer)512に供給される。SD−SDI方式のフォーマットは、例えば、走査線525本、4:3のSD映像信号に4CH(channel)の音声信号が多重化された信号であり、この多重信号がSD−DMUX512で映像信号513と、音声信号514に分離され、それぞれHD−フォーマット変換部514とマッピング処理部507に供給される。マッピング処理部507では、4CH(channel)の音声信号を8CHの音声信号515に変換し、その出力は、音声多重部521に供給される。なお、この場合のマッピング処理部507の制御端子511には、制御部403からの制御信号が供給され、マッピング処理部507は、4CHの音声信号514を8CHの音声信号515に変換するように制御する。なお、マッピング処理部507で、4CH(channel)の音声信号を8CHの音声信号515に変換するとして説明したが、実際は、4CHの音声信号は、8CHの音声信号に変換できる情報はなく、ここでは、単に、音声信号8CHに4CHの音声信号が乗せ替え(マッピング)されるのみである。
HDフォーマット変換部514では、SD−SDIフォーマットの映像信号513を、例えば、走査線1125本、16:9のHD−SDIフォーマットの映像信号に変換し、音声多重部521、例えば、HD−MUX(HD-multiplexer)に供給する。そして、音声多重部521では、HDフォーマット変換部514でHD−SDIフォーマットの映像信号に変換された映像信号と8CHの音声信号515を多重化し、出力する。この出力は、スイッチSW516、出力端子510、エンコーダ405−1を介してビデオサーバー407のHD入力端子408−1に供給され、HD用記憶部409−1に蓄積される。
以上説明した従来のノンリニア放送システムでは、標準テレビション方式(SDTV)と地上波デジタル放送用のHDTV方式があり、これらが混在して放送されているのが現状である。従って、番組素材をノンリニア放送システムのビデオサーバーに蓄積する場合、番組素材のフォーマットとしてHD−SDI方式とSD−SDI方式の2種類のフォーマットを用意する必要がある。そのためには、映像信号から音声信号を分離させるDMUX(demultiplexer)および映像信号と音声信号を多重化する音声多重部がそれぞれHD−SDI用とSD−SDI用を使用する必要がある。このように音声処理を行うためだけに多くの機器を別に用意する必要があり、ノンリニア放送システムのコスト低減を阻害する要因ともなっていた。また、放送という公共性からも部品点数を少なくし、信頼性の高いノンリニア放送システムの実現が望まれている。
AES−3 1992年 2チャンネル直線量子化デジタルオーディオデータのシリアル伝送規格
ARIB STD BTA S−005B 1125/60方式HDTVビット直列インタフェースにおける補助データの共通規格
ARIB STD BTA S−006B 1125/60方式HDTVビット直列インタフェースにおけるデジタル音声規格
ARIB STD BTA F−1002 ディジタル映像信号の直列インターフェースにおける補助信号領域へのAES/EBUオーディオの多重方法技術資料
従来のノンリニア放送システムでは、HD−SDI方式とSD−SDI方式があり、これらが混在して放送されているので、番組素材をノンリニア放送システムのビデオサーバーに蓄積する場合、番組素材のフォーマットとしてHD−SDI方式とSD−SDI方式の2種類のフォーマットを用意する必要がある。そのためには、映像信号から音声信号を分離させるDMUX(demultiplexer)および映像信号と音声信号を多重化する音声多重部がそれぞれHD−SDI用とSD−SDI用に準備する必要がある。このように音声処理を行うためだけに多くの機器を別に用意する必要があり、ノンリニア放送システムのコスト低減を阻害する要因ともなっている。また、放送という公共性からも部品点数を少なくし、信頼性の高いノンリニア放送システムの実現が望まれている。
本発明の目的は、信頼性の高いノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置を提供することである。
本発明の他の目的は、入力される番組素材のフォーマットを自動的に判断し、フォーマット変換ができるノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置を提供することである。
本発明の更に他の目的は、部品点数を少なくしたノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置を提供することである。
本発明のノンリニア放送システムに用いる変換装置は、少なくとも2種類の異なる第1と第2のフォーマットからなる映像素材のいずれかが入力される入力部と、上記入力された映像素材から映像信号と音声信号とを分離するデマルチプレクサ部と、上記第1と第2のフォーマットからなる映像素材のいずれのフォーマットの映像素材かを検出する検出部と、上記検出部の出力が供給され、上記デマルチプレクサ部を上記検出部で検出されたフォーマットに基いて制御する制御部と、上記デマルチプレクサ部で分離された音声信号に所定の音声信号処理をするマッピング処理部と、上記デマルチプレクサ部で分離された映像信号と上記マッピング処理部から出力される音声信号を多重化するために、上記制御部で制御される多重化部と、上記多重化部から出力される映像素材のフォーマットに従い所定の変換を行うように構成される。
また、本発明のノンリニア放送システムに用いる変換装置において、上記第1のフォーマットの映像素材は、HD−SDIフォーマットの映像素材であり、上記第2のフォーマットの映像素材は、SD−SDIフォーマットの映像素材である。
また、本発明のノンリニア放送システムに用いる変換装置において、上記第1と第2のフォーマットの映像素材は、映像信号と、上記映像信号の水平ブランキング期間に音声チャネルを重畳した信号から構成され、上記第1のフォーマットの映像素材の音声信号は、8チャネルであり、上記第2のフォーマットの映像素材の音声信号は、4チャネルである。
更に、本発明のノンリニア放送システムは、少なくとも2種類の異なる第1と第2のフォーマットからなる映像素材が供給される入力部と、上記第1と第2のフォーマットのいずれか一方の映像素材を選択する選択部と、上記選択部で選択された上記映像素材が入力され、上記入力された映像素材から映像信号と音声信号とを分離するデマルチプレクサ部と、上記選択部で選択された映像素材がいずれのフォーマットの映像素材かを検出する検出部と、上記検出部の出力が供給され、上記デマルチプレクサ部を上記検出部で検出されたフォーマットに基いて制御する制御部と、上記デマルチプレクサ部で分離された音声信号に所定の音声信号処理をするマッピング処理部と、上記デマルチプレクサ部で分離された映像信号と上記マッピング処理部から出力される音声信号を多重化するために、上記制御部で制御される多重化部と、上記多重化部から出力される映像素材のフォーマットに従い所定の変換を行う変換部と、上記第1または第2のフォーマットの映像素材および上記変換部から出力される上記第1または第2のフォーマットの映像素材をそれぞれ蓄積するビデオサーバーと、上記ビデオサーバーに蓄積されている上記第1および第2のフォーマットの映像素材を選択して出力する出力部とを有するように構成される。
以上説明したように、本発明によれば、部品点数が少なく、信頼性の高いノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置を実現できる。また、入力される番組素材のフォーマットを自動的に判断し、フォーマット変換ができ、番組素材の編集を容易に行うことができる。更に、チャンネル単位での音声マッピングが行えるので、放送局や放送を受信する視聴者の様々なニーズに対応する番組素材を作成することができるようになる。
図1は、本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。図1において、101は、番組素材を記録した記録装置、例えば、VTR401−1、401−2を選択するスイッチャのような選択部、102は、HD/SD変換処理部である。103は、制御部であり、選択部101およびHD/SD変換処理部102を制御する。なお、HD/SD変換処理部102の詳細は、図2に示されており、これについては後述する。なお、図4と同じものには同じ符号が付されている。そして、記録装置401−1、401−2は、VTRに限らず、DVDディスク、光ディスク等の記録装置あるいは直接通信用伝送路で送られてくる番組素材であっても良い。そしてVTR401−1、401−2の番組素材は、HD−SDI方式のフォーマットとSD−SDI方式のフォーマットが混在している場合がある。本実施例では、図4の場合と同様に、例えば、VTR401−1は、HD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材であり、VTR401−2は、SD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材であるとして説明する。
図2は、HD/SD変換処理部102の構成を示すブロック図である。図2において、入力端子201は、例えば、選択部101でVTR401−1あるいは401−2のいずれかを選択した場合に、選択した方のVTR401−1あるいは401−2のいずれかの番組素材が供給される。入力端子201に供給される番組素材は、そのまま選択部215に出力されると共に、DMUX(demultiplexer)203とHD/SD検出部204に供給される。なお、選択部215は、制御部205の制御により、入力端子201に供給される番組素材がHD−SDI方式のフォーマットの番組素材の場合、出力端子202に出力され、また、入力端子201に供給される番組素材がSD−SDI方式のフォーマットの番組素材の場合、出力端子212に出力されるように制御される。なお、制御信号入力端子208は、制御部103からの制御信号が入力される。また、本実施例では、制御部103と制御部205を分離して記載してあるが、一体に構成し、例えば、CPUで構成することができることは言うまでもない。
ここで、HD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号とSD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号とを変換する必要性について図6、図7、図8を用いて説明する。まず、HD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号は、ARIB STD BTA S−005B(非特許文献2参照)およびARIB STD BTA S−006B(非特許文献3参照)で定められている図6に示すような構成となっている。即ち、縦方向に映像のライン番号のように1〜1125ライン、横方向に映像のサンプル番号0〜2199と定められている。そして、映像ラインは、EAV(End of Active Video:映像サンプル番号1920で示される。)で始まり、デジタル有効ライン(有効映像領域)の最後のワード(映像サンプル番号1919)で終了する。映像サンプル番号は、ビット並列インターフェースの各データ系列におけるデジタル有効ラインの第1ワードを映像サンプル番号0と規定されている。そして、この規格は、補助データパケットを伝送する機器に適用される。補助データとは、映像信号の水平ブランキング期間を利用して伝送されるデータ、例えば、音声データやタイムコードデータである。また、図6において、網掛け部分は、補助データ伝送領域を示す。この補助データ伝送領域は、HD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号に重畳された音声信号が伝送される領域である。
また、SD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号は、ARIB STD BTA F−1002(非特許文献4参照)で定められる図8に示すような構成となっている。図6に示すHD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号と同様に、縦方向に映像のライン番号として示されるように1〜525ライン、横方向に映像のサンプル番号0〜1715と定められている。映像ラインは、EAV(映像サンプル番号1440で始まり、デジタル有効ライン(有効映像領域)の最後のワード(映像サンプル番号1439)で終了する。そして網掛け部分は、例えば、音声データやタイムコードデータを伝送する補助データ伝送領域である。この補助データ伝送領域は、SD−SDI方式のフォーマットの番組素材の信号に重畳された音声信号が伝送される領域である。
而して、上述した音声チャネルで伝送される音声信号には、ステレオ放送の右と左の音声、日本語と英語の放送、あるいは、主音声と副音声と言った種々の信号があるが、ここでは、ステレオの音楽や音声の放送の伝送について説明する。
地上波デジタル放送で使用されている高品質映像の放送にふさわしい臨場感の優れた音声サービスに、マルチチャネル音声再生方式がある。このマルチチャネル音声再生方式のスピーカ配置を図7を用いて説明する。図7において、801は、視聴者の位置を示す。802は、前方センタースピーカ、803は、前方右スピーカ、804は、前方左スピーカ、805は、後方センタースピーカ(サラウンドセンタースピーカとも言う。)、806は、後方右スピーカ、807は、後方左スピーカ、808は、低域補強用スピーカ(サブウーファとも言う。)を示す。
そして、チャネル再生の標準的な3−2ステレオ構成は、視聴者801の前方に3チャネル(前方センタースピーカ802、前方右スピーカ803、前方左スピーカ804とから構成)と、後方に2チャネル(後方右スピーカ806と後方左スピーカ807で構成)で構成されるものである。この場合は、5CHでマルチチャネル音声が再生される。
さて、地上波デジタル放送は、このマルチチャネルに対応していることから、5.1サラウンドの再生が可能である。即ち、5.1サラウンドの配置は、上述の標準的な3−2ステレオ構成(5CH)に、更に、低域補強用スピーカ808を追加した構成であり、6CH構成となる。なお、後方センタースピーカ805を再生する場合には、更に、1CHが追加され、7CHのマルチチャネル音声再生が必要となる。
このようにHD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材の音声信号の再生には、臨場感の優れた音声サービスのために、5CH以上のマルチチャネル音声再生ができるように8CHの音声伝送方式が採用されている。一方、SD−SDI方式のフォーマットで収録された番組素材の音声信号は、4CH、即ち、例えば、前方右スピーカ803、前方左スピーカ804、後方右スピーカ806、後方左スピーカ807の4CHサービスとなっている。
ここで、図2の説明に戻る。まず、入力端子201にHD−SDIフォーマットの番組素材の信号が入力されると、HD/SD検出および音声処理部213にも供給される。HD/SD検出および音声処理部213のHD/SD検出部204は、入力された番組素材の信号がHDか、SDかのいずれのフォーマットかを検出する。HD−SDIフォーマットの番組素材あるいはSD−SDIフォーマットの番組素材の場合、それぞれ図6および図8で説明したような構成となっており、例えば、各映像ラインのEAV(サンプル番号1920で始まる。)あるいはSAV(Start of Action Video)の位置がHD−SDIフォーマットの番組素材とSD−SDIフォーマットの番組素材とで異なっている。従って、これらを検出すれば、入力端子201に入力される番組素材がいずれのフォーマットの番組素材かを検出することができる。なお、ここでは、EAVあるいはSAVの位置検出で説明したが、他の異なる情報として走査線情報、映像のサンプル番号等でも検出可能であるので、これらに限定されないことは言うまでもない。
例えば、説明の都合上、HD−SDIフォーマットの番組素材が検出されたとすると、その情報が制御部205に入力される。制御部205は、HD/SD検出部204からの情報に基いて、入力端子201に供給されている番組素材がHD−SDIフォーマットの番組素材と判断し、DMUX203、MUX(多重化部)206、マッピング処理部207、スイッチ211および選択部215を制御する。DMUX203は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されており、HD−SDIフォーマットの番組素材が入力されると、即ち、図6に示される構成の信号が入力されると、この信号を、HD−SDIフォーマットの映像信号と、8CHの音声信号とに分離する。なお、FPGAは、制御部205からの制御信号によってHD−SDIフォーマットの番組素材を適宜処理するようにプログラムされている。
FPGAで構成されるDMUX203では、HD−SDIフォーマットの映像信号と8CHの音声信号とに分離され、それぞれMUX206とマッピング処理部207に供給される。マッピング処理部207では、制御部205からの制御信号が供給され、ここで音声8CHの音声信号を音声4CHの音声信号に変換され、即ち、マッピングされ、MUX206に供給される。このマッピング処理部207での音声信号変換は、例えば、5.1サラウンドの6CHのマルチチャネル音声(HD−SDIフォーマットの8CH音声多重)の内、図7に示す前方右スピーカ803、前方左スピーカ804、後方右スピーカ806および後方左スピーカ807の4CHを選択し、SD−SDIフォーマットの4CHにマッピングする。所謂、チャネル乗せ替えを行う。
MUX206は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されており、制御部205からの制御によりHD−SDIフォーマットの番組素材を処理するようにプログラムされ、そのように動作する。即ち、DMUX203で分離されたHD−SDIフォーマットの映像信号と、マッピング処理部207で4CHの音声信号に変換された音声信号とをMUX(多重化部)206で多重化し、その出力がHD/SDフォーマット変換部214に供給される。HD/SDフォーマット変換部214では、MUX206の出力がダウンコンバータ209に供給され、ここでSD−SDIフォーマットの番組素材にフォーマット変換される。そして、制御部205による番組素材のフォーマットに応じて制御されるスイッチ211によって選択、例えば、上記の場合、端子aが選択され、更に、選択部215で選択され、出力端子212から出力される。
従って、出力端子202からはHD−SDIフォーマットの番組素材が出力され、この出力は、エンコーダ405−1を介してビデオサーバー407のHD入力端子408−1に供給され、HD用記憶部409−1に蓄積される。一方、出力端子212からの出力は、SD−SDIフォーマットに変換された番組素材であり、エンコーダ405−2でエンコードされ、ビデオサーバー407のSD用入力端子408−2から例えば、SD用記録装置409−3に記憶される。従って、記録装置VTR−1のHD−SDIフォーマットの番組素材は、ビデオサーバ407には、HD−SDIフォーマットの番組素材と、SD−SDIフォーマットの番組素材とが記憶されることとなる。
次に、DMUX203、MUX206およびマッピング処理部207の具体的な構成の一実施例を図3を用いて説明する。図3において、入力端子301には、図2で説明した入力端子201からの信号が印加される。本実施例では、記録装置VTR−1からのHD−SDIフォーマットの番組素材が供給され、DMUX203で映像信号と音声信号に分離される。分離された映像信号は、遅延回路302、位相調節回路303を介してMUX206に供給される。
DMUX203で分離された音声信号は、2つのチャネルがチャネルペアCPを構成した信号、例えば、1CP(チャネル1とチャネル2)、2CP(チャネル3とチャネル4)、3CP(チャネル5とチャネル6)、4CP(チャネル7とチャネル8)の信号であるため、チャネル分割部304で8CH(チャネル)にそれぞれ分離し、チャンネル単位のデジタル音声に変換する。
選択回路(Digital Audio Matrix)305は、チャンネル単位のデジタル音声を適宜チャネルを選択し、ダウンミクス回路306に供給する。例えば、前述した5.1CHサラウンドのダウンミックス処理は、ダウンミクス回路306で行う。この場合、ダウンミックスを行うべき6CH分のオーディオがどのチャネルに位置しても対応できるようにするため、選択回路(Digital Audio Matrix)305は、8×6のマトリックス構成とし、適宜オーディオチャネルの選択ができるように構成されている。
ダウンミクス回路306は、5.1CHサラウンドを2CH音声にダウンミクスする。例えば、5.1CHサラウンドの6CHある音声を2チャネル信号に変換する。マトリックス回路部(Digital Audio Matrix)307は、5.1CHサラウンドをダウンミックスした2CH音声信号およびチャネル分割部304からの元素材の音声を10×8のマトリクス回路307にてチャンネル単位でマッピングし、例えば、4CHの音声信号にする。このように所望のチャネルに音声処理(マッピング)されたデジタル音声信号は、遅延回路308、位相調節回路303を介してチャネル結合部309に供給され、ここで2チャネルづつチャネル結合され、MUX206に供給される。MUX206では、前述と同様に映像信号に音声信号が埋め込まれた多重化された信号として出力端子310から出力され、ダウンコンバータ209に供給される。なお、上記のように各種デジタル処理が行われる音声信号は、遅れが生じたり、また、DMUX203にて分離された映像信号と音声信号との間には、位相差が生じる。そのため遅延回路302、308および位相調節回路303を挿入し、映像信号および音声信号の遅延差や位相差を合わせるようにしている。
次に、図1において、選択部101が記録装置VTR401−2、即ち、SD−SDIフォーマットの番組素材を選択した場合について説明する。この場合、図2の入力端子201には、SD−SDIフォーマットの番組素材が入力され、その信号は、直接選択部215に供給されるが、この場合、制御部205により選択部215が制御され、出力端子212からSD−SDIフォーマットの番組素材が出力される。また、同じ信号がDMUX203およびHD/SD検出部204にも供給される。HD/SD検出部204は、入力された番組素材の信号がいずれのフォーマットかを検出する。SD−SDIフォーマットの番組素材の信号の場合、図8で説明したような構成となっており、例えば、各映像ラインのEAV(映像サンプル番号1440で始まる。)、SAV(Start of Action Video)の位置等を検出し、その情報を制御部205に入力する。制御部205は、HD/SD検出部204からの情報に基いて、入力端子201に供給されている番組素材がSD−SDIフォーマットの番組素材と判断し、DMUX203を制御する。DMUX203は、前述したように、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されており、SD−SDIフォーマットの番組素材が入力され、処理される。即ち、図8に示される構成の信号が入力されると、この信号がSD−SDIフォーマットの映像信号と音声信号とに分離される。
DMUX203で分離された映像信号は、MUX(多重化部)206に供給される。一方、DMUX203で分離された音声信号は、マッピング処理部207に入力され、4CHの音声信号を8CHの音声信号に変換する。但し、SD−SDIフォーマットの番組素材に重畳されている音声信号は、最大4CH分の音声信号が存在するのみであるので、形式的に8CHの音声信号に変換されるが、例えば、最大4CH分の音声信号が存在するのみの場合や、各音声信号を2CH分ずつ出力することで8CHの音声信号とする場合がある。このように変換された音声信号は、MUX206に供給され、ここで映像信号と多重化される。なお、MUX206は、前述したように、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されており、制御部205からの制御によりSD−SDIフォーマットの番組素材の処理回路として動作する。即ち、DMUX203で分離されたSD−SDIフォーマットの映像信号と、マッピング処理部207で8CHの音声信号に変換された音声信号とを多重化し、その出力がアップコンバータ210に供給され、ここでHD−SDIフォーマットの番組素材にフォーマット変換される。そして、制御部205により番組素材のフォーマットに応じて制御されるスイッチ211(端子d選択)、更に、選択部215で選択され、出力端子202から出力される。
従って、出力端子212からはSD−SDIフォーマットの番組素材が出力され、この出力は、エンコーダ405−2を介してビデオサーバー407のSD入力端子408−2に供給され、SD用記憶部409−3に蓄積される。一方、出力端子202からの出力は、HD−SDIフォーマットに変換された番組素材であり、エンコーダ405−1でエンコードされ、ビデオサーバー407のHD用入力端子408−1から例えば、HD用記録装置409−1に記憶される。従って、記録装置VTR−2のSD−SDIフォーマットの番組素材は、ビデオサーバ407には、SD−SDIフォーマットの番組素材と、HD−SDIフォーマットの番組素材とが記憶されることとなる。
なお、DMUX203、MUX206およびマッピング処理部207の具体的な構成の一実施例は、前述と同様に図3に示す回路である。この回路は、前述の場合、8CHの音声信号を4CHの音声信号にチャネル変更(載せ替え)について説明したが、これと同様に4CHの音声信号を8CHの音声信号にチャネル変更(載せ替え)し、MUX206で多重化される。なお、詳細な説明は、省略する。
以上説明した実施例では、HD―SDIフォーマットの番組素材とSD―SDIフォーマットの番組素材の2種類についてのフーマット変換処理について説明したが、2種類のフーマット変換処理に限られるものではなく、HD―SDIフォーマット、SD―SDIフォーマット以外のフォーマットの番組素材についても同様にして、入力される信号構成からいかなるフォーマットの番組素材かを検出し、HD―SDIフォーマット、SD―SDIフォーマット等にフォーマット変換可能である。
以上のように本発明のノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置は、DMUXおよびMUXは、それぞれHD−SDIか、SD−SDIかを検出してそれぞれのフォーマットに対応できるように構成したために入力SDIのフォーマットを選ぶ必要がなく、HD―SDIフォーマットの番組素材とSD―SDIフォーマットの番組素材との混在した番組素材を利用できるので、編集や放送システムにおいて極めて取扱の容易なシステムが実現できる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載されたノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置の実施例に限定されるものではなく、上記以外のノンリニア放送システムおよびそれに用いる変換装置に広く適応することが出来ることは、言うまでも無い。
本発明の一実施例の概略構成のブロック図を示す。
図1に示す一実施例のHD/SD音声変換処理部の一例を示すブロック図である。
図2に示す一実施例のDMUX、MUX,マッピング処理部の一例を示す概略構成図である。
従来のノンリニア放送システムの一例の概略構成のブロック図を示す。
図4に示す一例のHD/SD変換処理部の一例を示すブロック図である。
本発明の一実施例の動作を説明するためのHD−SDIフォーマットの信号構成を示す図である。
本発明の一実施例を説明するためのスピーカ配置を示す図である
本発明の一実施例の動作を説明するためのSD−SDIフォーマットの信号構成を示す図である。
符号の説明
101、402:スイッチャ、102、404:HD/SDフォーマット変換処理部、103、205、403、406:制御部、201、301、501、520:入力端子、202、212、310、411、510、518:出力端子、203:DMUX、204:HD/SD検出部、206:MUX、207、507:マッピング処理部、208、511:制御信号入力端子、209:ダウンコンバータ、210:アップコンバータ、211、516、517:スイッチ、214:フォーマット変換部、215:選択部、302、308:遅延回路、303:位相調整回路、304:CH分割部、305:選択回路、306:ダウンミクス回路、307:マトリックス回路部、309:CH結合部、401:記録装置、405:エンコーダ、407:ビデオサーバー、408:入力部、409:記憶部、410:システムチェンジャー、412:モニタ、413:オーヂオモニタ、503:HD−DMUX、504、513:映像信号、505、508、514、515:音声信号、503:HD−MUX、506:SDフォーマット変換部、509、521:音声多重部、512:SD−DMUX、514:HDフォーマット変換部、801:視聴者、802:前方センタスピーカ、803:前方右スピーカ、804:前方左スピーカ、805:後方センタースピーカ、806:後方右スピーカ、807:後方左スピーカ、808:低域補強用スピーカ。