JP2006200372A - 食品用クリーム用容積形ポンプおよびこれを備えた食品製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 内部にポンプ室25が形成されたケーシング13と、吸入口11からポンプ室25内に食品用クリームを吸入するとともに該食品用クリームを排出口14から排出するように前記ポンプ室25内に回転可能に設けられたロータ21,22とを備える容積形ポンプ10において、ケーシング13を前記ロータ21,22の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料から構成し、製造運転時の温度において、ポンプ室25の内面26とロータ21,22の外接円Cとの間のクリアランスをd、前記ロータ21,22の外接円Cの直径をD1とするとき、d/D1×100%で表される百分率が0.3〜0.6%の範囲内となる内径D2を有するポンプ室25を設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明において、食品用クリームとは、乳脂肪や植物性脂肪等の脂肪分と水分等の混合物からなるものである。その具体例としては、ホイッピングクリーム等のクリームならびにクリームと同様の物性を有するソフトクリームミックス、アイスクリームミックス等が挙げられる。
本発明における食品は、上記食品用クリームを原料または原料の一部として製造されるものである。その具体例としては、ホイップドクリーム、ソフトクリーム、アイスクリーム等が挙げられる。
装置を分解せずに脂肪分を完全に除去するためには、脂肪分の融点(約35℃)以上、望ましくは40℃以上に洗浄液等の温度を上げるのが効果的である。さらに、洗浄液等の温度を80℃以上にできれば、細菌やカビ、酵母等の微生物を死滅させる殺菌の効果も得られるようになり、装置内の消毒をより簡便に行うことができ、分解洗浄や薬液等の使用を行わずとも、より長い期間にわたって装置内の衛生状態を良好に維持することが可能となる。
しかし、従来のホイップドクリーム製造装置の圧送用ポンプとしては、主に外接型歯車ポンプが用いられている。この種の外接型歯車ポンプは、ケーシング内に形成されたポンプ室の中に、ロータとして、一対の噛み合った歯車(外歯車)が設けられ、固定されたケーシングと回転する歯車の歯との間に流体を密封して吸入口側から排出口側へと移送するものである。ケーシングと歯車との間のクリアランスが大きいと、排出口側から吸入口側への流体の漏れ等によって吐出圧の低下の原因となるので、ケーシングと歯車との間のクリアランスは、製造運転時に目的とする吐出圧が得られることを優先して設計されている。
また、特許文献1には、圧縮性流体(空気などの気体)を排気する真空ポンプ等として用いられる容積形ポンプにおいて、ロータの線膨張係数をハウジングの線膨張係数より小さくした構成が記載されている。
しかしながら、小型のポンプでは側板を設けることが難しく、食品用機械部品の場合、食品が接する箇所に不用意な液だまり箇所を設けることは、衛生上好ましくない。
特許文献1に記載のポンプは、移送される流体が圧縮性流体(すなわち気体)である場合であるが、移送される流体が食品用クリームや洗浄用の熱湯等のように、非圧縮性である液体を多量に含む場合、高温時にクリアランスを所定の範囲内に保つことが難しい。
本発明の食品用クリーム用容積形ポンプにおいて、ロータを構成する材料が金属であり、ケーシングを構成する材料が樹脂である組み合わせが好ましい。ケーシングを構成する樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
また、本発明は、上述の食品用クリーム用容積形ポンプを備えることを特徴とする食品製造装置を提供する。
側板を設けることなく内部構造が簡単なポンプにも適用が可能である上、ロータのかじりがなく、駆動用モータの消費電力が大きくならないため、小型のモータを選定することが可能になり、装置を小型化するとともに、低コスト化が可能となる。
図1は、本発明の食品用クリーム用容積形ポンプ(以下、単に「容積形ポンプ」という場合がある。)の一例を示す図面であり、(a)は部分切欠断面図、(b)は(a)のS−S線に沿う断面図、(c)は(b)のA部の部分拡大図である。
シャフト23の駆動歯車21が取り付けられた側とは反対側である他端部はベアリングブロック16の外側に露出されており、ここにはシャフト23を回転駆動する駆動用モータ(図示略)が設けられる。
ケーシング13はポンプ室25内に突設された支軸部24を有し、被動歯車22は、支軸部24によって回転可能に支持されている。
この容積形ポンプ10は、シャフト23を回転駆動してポンプ室25内で両ロータ21,22を回転させることにより、吸入口11からポンプ室25内に流体(食品用クリーム)を吸入するとともに、該流体を各ロータ21,22とポンプ室25の内面26との間に密封し、吸入口11側から排出口14側へと流体を移送する。
なお、ここではロータとして一対の歯車21,22を用いた例を示したが、本発明は、ねじ(スクリュ)や回転ピストン、ローブ回転子等をロータとした容積形ポンプ(ねじポンプやピストンポンプ、ローブポンプ等など)に適用することも可能である。
食品用機械に使用される樹脂材料のなかで、機械的強度および耐熱性が比較的高く、食品衛生法上使用可能であって、なおかつ線膨張係数が大きい材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
例えばSUS304の線膨張係数が約1.73×10−5(1/℃)であるのに対して、PTFEの線膨張係数は約9.9×10−5(1/℃)、PEEKの線膨張係数は約5.0×10−5(1/℃)である。
ケーシング13の線膨張係数をロータ21,22の線膨張係数で除した比(以下、「線膨張係数比」という場合がある。)は、2.5〜6.0の範囲内が望ましい。「線膨張係数比」が2.5より小さいと、高温時にポンプ室25の内面26とロータ21,22のクリアランスを十分に保つことができず、ロータ21,22とケーシング13の擦動抵抗の増大やロータ21,22のかじり等の原因となるおそれがある。また、「線膨張係数比」が6.0より大きいと、高温時にポンプ室25の内面26とロータ21,22のクリアランスが大きくなりすぎて、十分な吐出圧が得られなくなるおそれがある。
ポンプ室25の内面26は、製造運転時の温度において、ポンプ室25の内面26とロータ21,22の外接円Cとのクリアランス(以下、単に「クリアランス」という場合がある。)をd、ロータ21,22の外接円Cの直径をD1とするとき、d/D1×100%で表される百分率(以下、「クリアランス比」という場合がある。)が0.3〜0.6%の範囲内となるような内径D2を有する。「クリアランス比」のより好ましい範囲は、0.4%〜0.5%である。
なお、図1(c)から明らかなように、クリアランスdは、ロータ21,22の外径D1およびポンプ室25の内径D2に対して、d=(D2−D1)/2の関係を有する。
ロータの外径D1は、ポンプの小型化のため、20〜60mm程度が好ましい。この場合、製造運転時のクリアランスdとして好適な寸法は、例えば0.10〜0.20mm程度である。
「クリアランス比」が0.3%未満だと、高温時にポンプ室25の内面26とロータ21,22のクリアランスを十分に保つことができず、ロータ21,22とケーシング13の擦動抵抗の増大やロータ21,22のかじり等の原因となるおそれがある。また、「クリアランス比」が0.6%を超えると、高温時にポンプ室25の内面26とロータ21,22のクリアランスが大きくなりすぎて、十分な吐出圧が得られなくなるおそれがある。
、ポンプ室25の内面26からのみ流体の熱を受けるケーシング13よりも、ロータ21,22のほうが温度上昇の程度が大きいと考えられる。これに対して、ケーシング13の線膨張係数をロータ21,22の線膨張係数よりも大きくすることにより、ケーシング13の熱膨張の度合いが、ロータ21,22の熱膨張の度合いと同程度またはそれ以上となり、高温時(洗浄運転時)のクリアランスが、低温時(製造運転時)のクリアランスと同程度またはそれ以上に保たれるようになる。
このため、製造運転時(低温の流体を流す。)に高い吐出圧が得られるのはもちろん、洗浄運転時(高温の流体を流す。)にも、十分な吐出圧を得ることができる。
ホイップドクリーム製造装置の場合、クリームに十分なせん断力を加えるためには製造運転時の吐出圧は0.5MPa以上が望ましい。また、洗浄液等の流量を確保するためには洗浄運転時の吐出圧は0.2MPa以上が望ましい。
図2は、ホイップドクリーム製造装置30の外観図であり、図3は、ホイップドクリーム製造装置30の構成を示す概略図である。図2に示すように、この製造装置30は、直方体状の装置本体31の上面に設けられた原料注入口32と、装置本体31の側面に突出した突出部33より下方に垂設された製品出口34とを備える。
ポンプ10の排出口14は、配管45を介してレジスター46に接続されている。レジスター46の周囲には、内部の温度を低温に維持するため冷却装置47が設けられている。レジスター46の内部には狭い間隙を有する流路が形成されている。
ポンプ10を運転すると、タンク41内の食品用クリーム1が配管42を通して吸引され、エア取入管44を通して供給される清浄な空気とともに排出口14から圧送される。空気を導入されたクリームがレジスター46の内部の流路を通過すると、クリームはせん断力を受けて連続的にホイップされ、ホイップドクリームとなる。レジスター46内で調製されたホイップドクリーム2は、製品出口34から排出される。
図4に示すタイムチャートによれば、製造に先立って殺菌のため80℃の熱湯を3分間程度流す。製造運転時には温度5℃のクリームを2〜7時間程度にわたって圧送する。製造後の洗浄時には、リンスのため60℃の温湯を3分間程度流したのち、60℃に加温した洗浄液を5分間程度流し、さらにリンスのため60℃の温湯を3分間程度流す。
図1に示す構成の容積形ポンプ10において、ケーシング13をPTFE、PEEK、ポリアセタール、高密度ポリエチレンの4種類の材料により製造し、それぞれのケーシング13を、ステンレス鋼(SUS304)からなる歯車(ロータ)21,22と組み合わせた。
ここで、SUS304の線膨張係数は1.73×10−5(1/℃)、PTFEの線膨張係数は9.9×10−5(1/℃)、PEEKの線膨張係数は5.0×10−5(1/℃)、ポリアセタールの線膨張係数は9.0×10−5(1/℃)、高密度ポリエチレンの線膨張係数は12.0×10−5(1/℃)である。
これに対して、ポリアセタールの場合、樹脂自体の耐熱温度が80〜85℃であるため、温度5℃のクリームの圧送には支障がないが、温度80℃の熱湯を流した場合、ポンプ室25の内面26とロータ21,22との摺動部はこれより高温となり、ケーシング13が変形してしまい、使用に適していないことがわかった(表1中、これを「△」で示す)。
高密度ポリエチレンの場合、樹脂の耐熱温度が60〜80℃であるため、ポリアセタールにも増して耐熱性に劣り、温度80℃の熱湯を流すときには使用に適さない(表1中、これを「×」で示す)。
また、ロータとケーシングの間の最適なクリアランスを調べるため、表2に示すようにクリアランスdの大きさを3通りに変えてテストした。
このテストにおいて、歯車(ロータ)21,22の材料はステンレス鋼(SUS304)であり、ケーシング13の材料は、PTFEとPEEKの2通りでテストした。
なお、表2における「クリアランス比」とは、上述したように、ポンプ室25の内面26とロータ21,22の外接円Cとのクリアランスをd、ロータ21,22の外接円Cの直径をD1とするとき、d/D1×100%で表される百分率によって定義される。表2のクリアランスおよび「クリアランス比」の値は、4〜6℃(製造運転時の温度)における値を示す。
本実施例の容積形ポンプを図3に示すホイップドクリーム製造装置30のポンプ10として用いることにより、オーバーランや硬さが適切であり、造花の保形性も良好なホイップドクリームを30kg/時以上の高い生産能力にて連続的に製造することができた。
また、「クリアランス比」が0.76%である場合、クリアランスが大きすぎるため吐出圧不足となり、5℃のクリームに必要な吐出圧(0.5MPa以上)および80℃の熱湯に必要な吐出圧(0.2MPa以上)のいずれも得ることができなかった。
Claims (4)
- 食品用クリームを圧送するために用いられる容積形ポンプであって、
内部にポンプ室が形成されたケーシングと、吸入口からポンプ室内に食品用クリームを吸入するとともに該食品用クリームを排出口から排出するように前記ポンプ室内に回転可能に設けられたロータとを備え、
前記ケーシングは、前記ロータの線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料から構成されており、
製造運転時の温度において、ポンプ室の内面とロータの外接円との間のクリアランスをd、ロータの外接円の直径をD1とするとき、d/D1×100%で表される百分率が0.3〜0.6%の範囲内となる内径を有するポンプ室が設けられていることを特徴とする食品用クリーム用容積形ポンプ。 - 前記ロータを構成する材料が金属であり、前記ケーシングを構成する材料が樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の食品用クリーム用容積形ポンプ。
- 前記ケーシングを構成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする請求項2に記載の食品用クリーム用容積形ポンプ。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の食品用クリーム用容積形ポンプを備えることを特徴とする食品製造装置。
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