JP2006199810A - 複合粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 平均短径が100nm以下、平均長径が500nm以下のリン酸カルシウム系化合物粒子、平均粒子径が5nm以上500nm以下の磁性粒子およびイオン架橋ゲルを含む複合粒子であって、該リン酸カルシウム系化合物粒子が該複合粒子に固定され、かつ、少なくともその一部が表面に露出して存在することを特徴とする複合粒子。
【選択図】 図1(a)
Description
(1)平均短径が100nm以下、平均長径が500nm以下のリン酸カルシウム系化合物粒子、平均粒子径が5nm以上500nm以下の磁性粒子およびイオン架橋ゲルを含む複合粒子であって、該リン酸カルシウム系化合物粒子が該複合粒子に固定され、かつ、少なくともその一部が表面に露出して存在することを特徴とする複合粒子、
(2)リン酸カルシウム系化合物がヒドロキシアパタイトである(1)に記載の複合粒子、
(3)磁性粒子がマグネタイト、マグへマイトおよびマンガンジンクフェライトよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する(1)または(2)に記載の複合粒子、
(4)イオン架橋ゲルがアルギン酸ゲルである(1)乃至(3)いずれか1つに記載の複合粒子、
(5)複合粒子の平均粒子径が10nm以上1000μm以下である(1)乃至(4)いずれか1つに記載の複合粒子、
(6)局所投与を必要とする薬剤を含む(1)乃至(5)いずれか1つに記載の複合粒子、
(7)リン酸カルシウム系化合物粒子および磁性粒子を分散したアルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に加えて撹拌することを特徴とする(1)乃至(6)いずれか1つに記載の複合粒子の製造方法。
さらに、本発明の複合粒子およびその製造方法について詳述する。
本発明に使用するリン酸カルシウム系化合物粒子の平均短径は100nm以下であり、平均長径は500nm以下である。リン酸カルシウム系化合物粒子は微細な程好ましく、短径および長径に下限を設けずに使用することができるが、平均短径は2nm以上が好ましく、平均長径は5nm以上が好ましい。
平均短径が100nmより大きいか、または平均長径が500nmより大きいと、リン酸カルシウム系化合物粒子の比表面積が小さくなり、吸着性能が劣化する。
具体的には、顕微鏡写真に基づき150個以上の粒子をサンプリングし、短径および長径を測定し、その数平均を算出することによって、平均短径および平均長径を得ることができる。
本発明において、磁性粒子とは、磁場の印加により力を受ける材料であれば、特に限定なく使用することができ、例えば強磁性材料が挙げられる。
本発明において、磁性粒子の平均粒子径は5nm以上500nm以下であるが、10nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
平均粒子径が5nmより小さいと複合粒子中への分散が困難であり、また、磁気特性が劣化する傾向がある。平均粒子径が500nmより大きいと、複合粒子の粒子径を所望の粒子径とすることが困難となる。
具体的には、顕微鏡写真に基づき150個以上の粒子をサンプリングし、それぞれの粒子の面積を測定し、面積的に等価の円形の直径を算出し、その数平均を算出することによって、平均粒子径を得ることができる。
これらの中でも、磁性粒子としては残留磁化の少ない軟磁性材料を使用することが好ましい。特に、磁性粒子がマグネタイト、マグヘマイトおよびマンガンジンクフェライトよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
イオン架橋ゲルとは、2価以上の金属イオンによる架橋構造により形成されているゲルをいう。具体的には、多糖類および/または多糖類の塩を水溶媒に溶解し、これに2価以上の金属イオンを添加し、ゲル化したものである。
多糖類および/または多糖類の塩の水溶液にカルシウムイオンなどの金属イオンを加えると、イオン交換により架橋構造(エッグボックス構造)となり、ゲルが形成されることが知られている。
また、2価以上の金属イオンとしては、イオン化傾向の大きい金属のイオンが好ましく、特にカルシウムイオンが好ましい。
複合粒子は上記の各成分の他に種々の添加剤を含有することができる。
添加剤の好ましい例としては、局所投与を必要とする薬剤が挙げられる。薬剤としては、各種抗癌剤、消炎剤、麻酔剤等が挙げられる。
本発明の複合粒子は、リン酸カルシウム系化合物粒子の少なくとも一部が表面に露出して存在するため、薬剤の担持性能に優れている。本発明の複合粒子に薬剤を添加し、これを局所投与すれば、患部のみを薬剤を曝すことができ、治療方法として有効である。
また、本発明の複合粒子は磁性粒子を含有しており、体外および/または体内から磁石や磁場を作用させることにより、所望の場所に薬剤を添加した磁性粒子をとどめておいたり、電磁誘導により加温して薬剤をリリースすることができるので、本発明の複合粒子に薬剤を添加して使用することも好ましい実施態様である。
具体的には、薬剤を含む溶液に作製した複合粒子を含浸させて、薬剤を吸着させることができる。また、あらかじめリン酸カルシウム系化合物に薬剤を吸着させたのち、複合粒子を作製したり、あるいは、ゲル化前の多糖類および/または多糖類の塩の溶液に薬剤を添加しておき、これをゲル化させることで複合粒子に薬剤を含有させることもできる。
薬剤の添加量は特に限定されず、所望の薬効を示す濃度で含有させることが好ましい。
充填剤としては、酸化チタン(チタンホワイト)、酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化セレン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、アルミン酸ストロンチウム、シリカ粒子等の充填剤が挙げられる。
本発明の複合粒子の平均粒子径は、特に限定されずに用いることができるが、使用の目的に応じて所望の粒子径とすることが好ましい。具体的には、薬剤を含有させて使用する場合、例えばDDS用途に使用する場合は、平均粒子径は10nm〜1μmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましく、10〜50nmであることが更に好ましい。また、複合粒子を各種生体分子の抽出に用いる場合には、平均粒子径は1〜1000μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましく、10〜200μmであることが更に好ましい。
平均粒子径が10nm以上であると、良好な磁場応答性が得られ、また1000μm以下であると良好な吸着能力が得られるので好ましい。
本発明の複合粒子は以下の方法で製造することができる。
リン酸カルシウム系化合物粒子および磁性粒子を、イオン架橋性多糖類および/または多糖類の塩の溶液中に分散し(以下、この溶液を「溶液X」ともいう。)、これを2価以上の金属塩溶液(以下、この溶液を「溶液Y」ともいう。)中に加えて撹拌することで所望の複合粒子を得ることができる。溶液Xは、溶液Yを撹拌した状態(溶液Yの撹拌下)で加え、さらに混合液の撹拌を継続することが好ましい。この場合、撹拌の強さを制御することにより複合粒子の粒子径を制御することができ、撹拌強度が強いほど粒子径を小さくすることができる。
また、溶液Xの粘度は80〜120cpであることが好ましい。上記範囲内であると、滴下あるいは噴霧する液滴を小さくすることができ、また、取り扱いが容易であるので好ましい。
また、乾燥方法としては、風乾などが挙げられる。加熱乾燥することも可能であるが、加熱温度は110℃以下が好ましく、50℃がより好ましい。
純水500mLにリン酸カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O、Wako社製)を5g添加し、NH4OHでpHを10に調整した後、2時間超音波撹拌を行った。撹拌後の溶液に、塩化カルシウム二水和物(CaCl2・2H2O、Wako社製)を5g添加し、NH4OHでpH11に調整し、4時間超音波撹拌を行った。ろ過後、蒸留水で洗浄し、乾燥することで微細なアパタイト粒子を得た。アパタイトの生成はX線回折装置(XRD)測定によって確認した。
得られたアパタイト粒子の平均短径は5nmであり、平均長径は100nmであった。
(マンガン亜鉛フェライト粒子、アパタイトを担持したアルギン酸ゲルの作製)
得られたアパタイト(Ca5(PO4)3OH)1gと、0.4gのアルギン酸ナトリウム、0.2gのマンガン亜鉛フェライト(平均粒子径:200nm)を40mlの水に添加し、溶液中の粒子が完全に分散するまでホモジナイザーによって撹拌し、溶液Aを作製した。続いて1gの塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)を100mlの水に添加し、ホモジナイザー撹拌を行うことで、溶液Bを得た。
図1で100〜250nmの黒く観察されるものが磁性粒子(マンガン亜鉛フェライト)であり、針状に観察されるものがリン酸カルシウム系化合物である。また、その他の灰色の部分がアルギン酸ゲルである。この写真から、得られた複合粒子では磁性粒子とリン酸カルシウム系化合物粒子がアルギン酸ゲルで固定され、粒子表面にリン酸カルシウム系化合物の結晶が露出した状態となっていることが判る。
ヒドロキシアパタイトは一般的にタンパク質などの吸着性に優れていることが知られている。そこで、タンパク質の吸着能を測定することにより、得られた複合粒子の性能を評価した。
得られた微粒ゲルの性能評価は以下に示すようにBCA Assayによって行った。
得られた超微粒ゲル40mgを、バイアル瓶中の200ppmのプロテイン溶液(Cytochrome c、Wako社製)6mlに添加し、37℃の恒温槽中で四時間浸透させた。充分に浸透させた後、バイアル瓶底部に磁石を当て、超微粒ゲルを回収した。その後、上澄み液0.15mlを取り、以下の手順に従いBCA Assayを行った。
BCA Reagent AとB(Pierce社製)を50:1の割合で混合したWR溶液を作製した。作製したWR溶液3mlを試験管に入れ、前述の上澄み液0.15mlを添加した。試験管は37℃の恒温槽中で、30分間静置し、その後5分間室温中に置くことで温度を室温程度まで下げた。波長562nmでUV測定を行い、初期濃度との差から、微粒ゲルに吸着されたプロテインの測定を行った。初期濃度200ppmのプロテイン溶液に浸した場合、ヒドロキシアパタイト、マンガン亜鉛フェライトを担持した微粒ゲルはその約35%を吸着していた。
一方で、マンガン亜鉛フェライトのみを担持したゲルは初期濃度200ppmのプロテイン溶液に対し、その約10%程度を吸着していた。
溶液Aに抗癌剤を0.1g添加した以外は、実施例1と全く同様にして複合粒子を得ることができる。
この複合粒子が抗癌活性を有することを、以下の方法で確認することができる。
進行癌症例の手術時摘出腫瘍組織、癌性胸水や癌性腹水を酵素処理した単離浮遊細胞、または樹立腫瘍細胞株を使用して抗癌活性を評価することができる。これらの腫瘍細胞を上記の複合粒子と共に2日間混合培養し、培養終了後の生細胞数を測定する。
培養終了後の生細胞数は、MTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide)法にて試験することができる。MTT法は、ミトコンドリアのSuccinate Dehydrogenese(SD)活性を判定することにより生細胞数を測定するものである。MTT試薬を細胞に添加し4時間後に析出するフォルマザン結晶をDMSO(ジメチルスルフォキシド)で溶解し、吸光度を測定することにより測定できる。
また、コントロールとして、複合粒子を添加しないで2日間培養した細胞を用いる。参考例として、抗癌剤を含有しない複合粒子を添加して2日間培養した細胞についても、培養終了後の細胞数を測定する。
これに対し、抗癌剤を含有しない複合粒子では、このような細胞数の減少は認められない。従って、抗癌剤を含有する複合粒子は、抗腫瘍活性を有することが判る。
Claims (7)
- 平均短径が100nm以下、平均長径が500nm以下のリン酸カルシウム系化合物粒子、
平均粒子径が5nm以上500nm以下の磁性粒子および
イオン架橋ゲルを含む複合粒子であって、
該リン酸カルシウム系化合物粒子が該複合粒子に固定され、かつ、少なくともその一部が表面に露出して存在することを特徴とする
複合粒子。 - リン酸カルシウム系化合物がヒドロキシアパタイトである請求項1に記載の複合粒子。
- 磁性粒子がマグネタイト、マグへマイトおよびマンガンジンクフェライトよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の複合粒子。
- イオン架橋ゲルがアルギン酸ゲルである請求項1乃至3いずれか1つに記載の複合粒子。
- 複合粒子の平均粒子径が10nm以上1000μm以下である請求項1乃至4いずれか1つに記載の複合粒子。
- 局所投与を必要とする薬剤を含む請求項1乃至5いずれか1つに記載の複合粒子。
- リン酸カルシウム系化合物粒子および磁性粒子を分散したアルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に加えて攪拌することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1つに記載の複合粒子の製造方法。
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