JP2006199606A - 糖尿病治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非常に優れた血糖降下作用を有すると共に、経口投与可能で安全性に優れた糖尿病治療剤を提供する。
【解決手段】 コッコミクサ藻体を有効成分としてなるものとしている。さらに、コッコミクサ藻体の抽出物を有効成分としてなるものとしている。コッコミクサ藻体の抽出物としては、中性抽出物または酸性抽出物とするのが好ましい。
【選択図面】 なし

Description

この発明は、コッコミクサ藻体、およびその抽出物を有効成分とする糖尿病治療剤に関するものである。
従来、藻類は、食品、飼料等に用いられているが、その有用性は食品の範疇、飼料の範疇でしか見出されておらず、各種疾病の予防、治療剤としての有用性についての開発はほとんど行われていなかった。
このような藻類の有用性については、乾燥させたものや、熱水で抽出したエキス、そのエキスを粉末にしたものなどを用いて、動物実験や臨床試験は行われているが、そのほとんどが、未だ各種疾病の予防、治療剤として利用されるには至っていない。
例えば、寒天製造に使用される原料海藻から抽出により得ることができ、0.5〜2w/w%濃度の水溶液が10〜40°Cの温度範囲においてチキソトロピー拳動を示すことを特徴とする海藻抽出多糖体が存在する。この海藻抽出多糖体の製造に使用される原料海藻としては、オゴノリ、イタニグサ、エゴノリ、フノリおよびこれらの二種以上の混合物からなる群から選択されるものとしている(特許文献1)。
そして、前記海藻抽出多糖体は、寒天が具備している食物繊維としての機能(便秘改善や血糖値上昇抑制効果、血清コレステロ−ル値上昇抑制効果、および血清中性脂肪値低下効果等)を有しているので、これらの機能を期待して健康食品、医薬品等への利用が可能であるとしている。
さらに、正常血圧維持食品として、褐藻類およびシイタケの、それぞれの乾燥粉末、水系溶媒抽出液、水系溶媒抽出液の濃縮物、水系溶媒抽出液の乾燥物のうち少なくともひとつずつの形態の成分を含んでなるものが存在する。前記褐藻類としては、ワカメ、ヒジキ、ホンダワラ、マコンブ、フトモヅク、イワヒゲ、ウミウチワ、サナダグサから選択されるものとしている(特許文献2)。
そして、前記正常血圧維持食品は、血圧上昇の抑制に民間伝承薬である海藻、特に褐藻類等の昆布を多用する弊害を除去するために、その摂取量の一部をシイタケに代用することにより、高ヨード摂取に基づく弊害を除去して確実に血圧正常値維持の目的を達成できるとしている。
特開2002−212201号公報(第2、4頁) 特開昭62−265967号公報(第1、2頁)
しかしながら、上記した海藻抽出多糖体は、医薬品等への利用が可能であるとしているものの具体的な医薬品の提示はなく、便秘・整腸剤、糖尿病治療剤、高脂質血症治療剤等の各種医薬品への利用が待たれている段階である。
また、上記した正常血圧維持食品は、あくまでも食品としての範疇に入るもので、高血圧症等の血圧降下剤として利用できるようなものではない。
そこで、この発明は、藻類の中でも、特にコッコミクサ藻体に注目し、このコッコミクサ藻体、およびその抽出物が、経口投与可能で安全性に優れ、糖尿病の治療剤として有用であることを見出し、本糖尿病治療剤を提供するに至ったものである。
この発明の糖尿病治療剤は、コッコミクサ藻体を有効成分としてなるものとしている。
さらに、この発明の糖尿病治療剤は、コッコミクサ藻体の抽出物を有効成分としてなるものとしている。
この発明の糖尿病治療剤において、コッコミクサ藻体の抽出物としては、中性抽出物または酸性抽出物とするのが好ましい。
この発明の糖尿病治療剤は、以上に述べたように構成されており、非常に優れた血糖降下作用を有すると共に、経口投与可能で安全性に優れたものとなり、糖尿病の治療剤として非常に有用なものとなる。
以下、この発明の糖尿病治療剤を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
この発明の糖尿病治療剤は、コッコミクサ藻体を有効成分としてなるものとしている。すなわち、この発明の糖尿病治療剤は、コッコミクサ藻体の懸濁液、またはその懸濁液を噴霧乾燥、真空乾燥して粉末にしたもの、コッコミクサ藻体培養時の産出成分などを有効成分としてなるものとしている。
さらに、この発明の糖尿病治療剤は、コッコミクサ藻体の抽出物を有効成分としてなるものとしている。このコッコミクサ藻体の抽出物としては、熱水抽出した中性抽出物、またはアルカリ抽出後、酸性析出させた酸性抽出物とするのが好ましい。
そして、この発明の糖尿病治療剤は、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などによる経口投与が可能なものなる。
この発明で用いるコッコミクサ藻体は、極寒の地の土壌から採取、分離されたマイクロアルジェで、緑色植物門(Chlorophyta) 、緑藻綱(Chlorophyceae) 、クロロコッカム目(Chlorococcales)、クロロコッカム科(Chlorococcaceae) に属するコッコミクサ・ミノール(Coccomyxa minor) 、コッコミクサ・グロエオボトリディフォルミス(Coccomyxa gloeobotrydiformis)であり、大きさ約10μmの円形の単細胞性植物である。このコッコミクサ藻体は、藻体中の多糖類の同定はまだされていないが、粗多糖として含有率が30%以上ある。
ところで、コッコミクサ藻体より中性抽出物を得るには、藻体粉末もしくは含水藻体を熱水に懸濁して抽出処理し、遠心分離によりエキス分とウエットスラッジに分離する。詳細には、藻体粉末もしくは含水藻体10〜50kgを、85〜95°Cの熱水500〜1,000リットルに懸濁し、30〜60分間抽出処理し、遠心分離によりエキス分とウエットスラッジに分離する。このエキス分が中性抽出物である。
また、コッコミクサ藻体より酸性抽出物を得るには、前記ウエットスラッジに水を加えて攪拌しながら、アルカリ性基材によりpHを10以上に調製してエキス分を抽出する。そして、この抽出したエキス分を遠心分離し、分離したエキス分を攪拌しながらpH3〜4に調製し、酸性抽出物の沈殿物を析出させる。詳細には、前記ウエットスラッジ1に対して5〜20倍量の水を60〜80°Cにして攪拌し、攪拌しながら水酸化ナトリウム、もしくは水酸化カリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ性基材によりpHを10以上に調製して、エキス分を30〜60分間抽出処理し、抽出したエキス分を遠心力が10,000G以上の遠心分離機により分離する。分離したエキス分を攪拌しながら塩酸によりpHを3〜4に調製し、酸性抽出物の沈殿物を析出させる。
そこで、この発明の糖尿病治療剤を調製し、その糖尿病治療剤を用いて、血糖降下作用を確認するための試験を、以下のようにして行った。
(コッコミクサ中性抽出物の調製)
コッコミクサ乾燥粉末50kgを、90°Cの熱水750リットルで、60分間抽出処理し、遠心力が12,000Gの遠心分離機により中性可溶画分とコッコミクサウエットスラッジに分離する。そして、中性可溶画分の熱水抽出液約700リットルを約50リットルまで濃縮し、そのまま凍結乾燥機で乾燥し、粉砕機により粉砕して、コッコミクサ中性抽出物粉末約10kgを得た。
(コッコミクサ酸性抽出物の調製)
前記コッコミクサ中性抽出物の調製において分離したコッコミクサウエットスラッジ約100kgを70°Cの熱水600リットルで攪拌する。コッコミクサウエットスラッジが均一に攪拌された状態で、20%水酸化ナトリウム溶液でpH12に調製し、エキス分を60分間抽出し、遠心力が12,000Gの遠心分離機により分離する。分離したエキス分を1トン−ステンレスタンクに500リットル移し、攪拌しながら1N塩酸でpH4に調製し、酸性抽出物を析出させる。そして、6時間放置後、析出した酸性抽出物を遠心力が12,000Gの遠心分離機により分離回収する。回収した酸性抽出物のスラッジを凍結乾燥機で乾燥し、粉砕機により粉砕して、コッコミクサ酸性抽出物粉末約1.2kgを得た。
(血糖降下作用)
試験例1.ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおける血糖降下作用
(1)コッコミクサ藻体および対照物質の調製
コッコミクサ藻体は、水に懸濁させて10wt%、2wt%および0.5wt%となるように調製した。
対照物質は、代表的な経口糖尿病治療剤であるトルブタミド(Tolbutamide)をネガテイブコントロール剤として使用し、蒸留水に溶解して20mg/mlとなるように調製した。
(2)糖尿病誘発物質の調製
糖尿病誘発物質のストレプトゾトシン(以下、STZと略す)は、0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解し、72mg/mlとなるように用事調製した。調製後は2時間以内に60mg/kgの投与液量をラット尾静脈内に投与した。
(3)試験動物の調製
6週齢のWistarラットを購入して、約1週間の検疫馴化のため予備飼育期間を設け、この間に順調な体重増加を示し、一般状態に異常の認められなかった動物を群分けに用いた。動物は室温20〜26°C、湿度40〜70%、明暗各12時間、換気回数12回/時間に設定した飼育室で飼育し、予備飼育期間中はステンレス製懸垂式ケージに5匹までの飼育とした。飼料は固形飼料を、飲料水は水道水を自由に摂取させた。群分けは検体投与初日(STZ投与5週間前)に各群の体重の平均値および分散がほぼ等しくなるように行った。
(4)投与量、群構成および投与期間
コッコミクサ毒性試験の結果により最大投与量は6g/kgとし、他に1.2g/kg、0.24g/kgおよび0.06g/kgとし、全部で4つの投与量とした。投与経路は臨床予想適用経路と同じく強制経口投与とした。
投与液量は投与日に最も近い測定日の体重値から求めた12ml/kgおよび30ml/kgとした。
群構成としては、以下の8群とした。1群あたりの動物は5〜7匹とした。
・コッコミクサ藻体を含まない水を経口投与し、STZを含まない水を静脈内投与した群(以下、 Control群と略す)。
・トルブタミドを100mg/kg経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、 Tolbutamide投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を含まない水を経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、STZのみ投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を1.2g/kg経口投与し、STZを含まない水を静脈内投与した群(以下、1.2g/kgのみ投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を0.06g/kg経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、0.06g/kg投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を0.24g/kg経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、0.24g/kg投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を1.2g/kg経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、1.2g/kg投与群と略す)。
・コッコミクサ藻体を6g/kg経口投与し、STZを静脈内投与した群(以下、6g/kg投与群と略す)の8群とした。1群あたりの動物は5〜7匹とした。
なお、STZの投与は各群とも群分け後5週間に行い、トルブタミドの投与はSTZ投与日から開始した。投与期間としては、各群は群分け後10週間(なお、トルブタミドはSTZ投与後5週間)とした。
(5)試験結果
投与開始から2日後、5日後、10日後、17日後、24日後および31日後に、血糖値を測定し、血糖値の経時的変化を観察した。試験結果は平均値±標準誤差値で表示した。
その結果、この発明の糖尿病治療剤は、有意な血糖降下作用を示した(表1、図1参照)。
Figure 2006199606
試験例2.正常ddy−マウスにおける血糖降下作用
(1)試験動物
ddy−マウス(雄性、体重23〜27g)を用いた。
(2)投与量、群構成および投与期間
以下の8群(各群7〜11匹)にて、非絶食状態で各投与量を1回、腹腔内投与した。
・生理食塩水を腹腔内投与した群(以下、 Control群と略す)
・トルブタミドを50mg/kg腹腔内投与した群(以下、 Tolbutamide群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を20mg/kg腹腔内投与した群(以下、中性20mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を50mg/kg腹腔内投与した群(以下、中性50mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を100mg/kg腹腔内投与した群(以下、中性100mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を20mg/kg腹腔内投与した群(以下、酸性20mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を50mg/kg腹腔内投与した群(以下、酸性50mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を100mg/kg腹腔内投与した群(以下、酸性100mg/kg群と略す)。
(3)試験結果
投与する前および投与してから3時間後、6時間後、24時間後の血糖値を測定し、血糖値の経時的変化を観察した。試験結果は平均値±標準誤差値で表示した。
その結果、この発明の糖尿病治療剤は、有意な血糖降下作用を示した(表2、図2参照)。
Figure 2006199606
試験例3.STZ誘発1型糖尿病モデル−マウスにおける血糖降下作用
(1)試験動物
ddy−マウス(雄性、体重23〜27g)を用いた。
(2)STZ誘発1型糖尿病モデルの調製
(1)の試験動物にSTZを200mg/kg腹腔内投与し、1週間後、血糖値が300mg/dl以上のものを選んで、STZ誘発1型糖尿病モデルとして使用した。
(3)投与量、群構成および投与期間
以下の6群(各群6〜10匹)にて、非絶食状態で各投与量を1回、腹腔内投与した。・生理食塩水を腹腔内投与した群(以下、 Control群と略す)
・トルブタミドを50mg/kg腹腔内投与した群(以下、 Tolbutamide群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を20mg/kg腹腔内投与した群(以下、中性20mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を100mg/kg腹腔内投与した群(以下、中性100mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を20mg/kg腹腔内投与した群(以下、酸性20mg/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を100mg/kg腹腔内投与した群(以下、酸性100mg/kg群と略す)。
(4)試験結果
投与する前および投与してから3時間後、6時間後、24時間後の血糖値を測定し、血糖値の経時的変化を観察した。試験結果は平均値±標準誤差値で表示した。
その結果、この発明の糖尿病治療剤は、有意な血糖降下作用を示した(表3、図3参照)。
Figure 2006199606
試験例4.自然発症糖尿病KK−Ayマウスにおける血糖降下作用
(1)試験動物
自然発症糖尿病KK−Ayマウス(雄性、10週齢)を用いた。
(2)群構成、投与量および投与方法
以下の9群にて、各投与量を市販のMF−粉末飼料に添加し、糖尿病治療剤混餌飼料を作製して毎日投与した。コントロール群は糖尿病治療剤を含まないMF−粉末飼料だけを投与した。
・生理食塩水を腹腔内投与した群(以下、 Control群と略す)
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を0.1g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、酸0.1g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を0.5g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、酸0.5g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を1g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、酸1g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の酸性抽出物を2g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、酸2g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を0.1g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、中0.1g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を0.5g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、中0.5g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を1g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、中1g/kg群と略す)。
・コッコミクサ藻体の中性抽出物を2g/kg添加した混餌飼料を投与した群(以下、中2g/kg群と略す)。
(3)試験結果
投与する前および投与してから1週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後および7週間後の血糖値を測定し、血糖値の経時的変化を観察した。試験結果は平均値±標準誤差値で表示した。
その結果、この発明の糖尿病治療剤は、有意な血糖降下作用を示した(表4、図4、5参照)。
Figure 2006199606
試験例1におけるストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの血糖値の経時的変化を示す図である。 試験例2における正常ddy−マウスの血糖値の経時的変化を示す図である。 試験例3におけるストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデル−マウスの血糖値の経時的変化を示す図である。 試験例4における自然発症糖尿病KK−Ayマウスの血糖値の経時的変化を示す図である。 試験例4における自然発症糖尿病KK−Ayマウスの血糖値の経時的変化を示す図である。

Claims (4)

  1. コッコミクサ藻体を有効成分としてなることを特徴とする糖尿病治療剤。
  2. コッコミクサ藻体の抽出物を有効成分としてなることを特徴とする糖尿病治療剤。
  3. 前記抽出物が、中性抽出物であることを特徴とする請求項2記載の糖尿病治療剤。
  4. 前記抽出物が、酸性抽出物であることを特徴とする請求項2記載の糖尿病治療剤。
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