JP2006199153A - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両を発進させる際に、重力や車両に作用する外力などの影響により車両が移動させられることを防止もしくは抑制するとともに、その発進時における車両の挙動の安定性を向上させることができる装置を提供する。
【解決手段】 動力源を有する車両の車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置において、車速と前記車輪毎の車輪速との偏差が所定値以上となったことを検出する車輪状態検出手段(ステップS6,S8,S10)と、前記車両の発進時に、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記偏差が前記所定値以上となった過回転車輪の制動力を前記偏差が前記所定値より小さくなるまで増大させつつ、前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう制動力制御手段(ステップS7)とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 動力源を有する車両の車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置において、車速と前記車輪毎の車輪速との偏差が所定値以上となったことを検出する車輪状態検出手段(ステップS6,S8,S10)と、前記車両の発進時に、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記偏差が前記所定値以上となった過回転車輪の制動力を前記偏差が前記所定値より小さくなるまで増大させつつ、前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう制動力制御手段(ステップS7)とを備えている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、車両の車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置に関するものである。
従来、車両の発進時に、車両の駆動力あるいは動力源の出力トルクと関連させて車両の制動力を制御することにより、例えば車両の登坂路での発進時に、車両の後退を防止して、スムーズに発進させることがおこなわれている。その一例として、非駆動輪の回転速度および駆動輪の回転速度を検出し、それらの回転速度に基づいて車輪スリップを検出して、その車輪スリップを抑制するように制御することにより、登坂路での発進時における車両の後退を防止する装置に関する発明が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載されている発明は、登坂路途中で停止した車両の発進時に、非駆動輪の回転速度と駆動輪の回転速度とが検出され、駆動輪の回転速度が非駆動輪の回転速度に対して所定値以上大きいことにより、駆動輪にスリップが発生していると判断されると、非駆動輪の回転方向と駆動輪の回転方向とが検出される。そして、非駆動輪の回転方向と駆動輪の回転方向とが不一致であることが検出されると、車両が制動されるように構成されている。そのため、低μの登坂路における車両の後退を防止できる、とされている。
また、特許文献2には、トラクションコントロール中の駆動輪の制動を、同時かつ同じ力でおこなうことにより、高車速でのトラクションコントロール中における車両の直進安定性の悪化を抑制する装置に関する発明が記載されている。
特開平7−125622号公報
特開平3−74247号公報
上記の特許文献1に記載されている発明では、非駆動輪の回転方向と駆動輪の回転方向とが一致しない場合、すなわち、例えば運転者がアクセルを踏み続けているにもかかわらず車両が後退(登坂路を降下)している状態が検出された場合は、一旦車両を停止させるために、駆動輪および非駆動輪に制動力が付与されて車両が制動される。一方、駆動輪にスリップが発生していると判断された場合であって、非駆動輪の回転方向と駆動輪の回転方向とが一致している場合には、駆動輪のスリップ率あるいはスリップ量が所定の値となるように、スリップが発生している駆動輪に制動力が付与されて(具体的には駆動輪に対するブレーキ液圧が増圧されて)、発進・加速時における駆動輪の加速スリップを抑制させる制御、いわゆるトラクションコントロールが実行される。
したがって、上記の特許文献1に記載されている発明では、登坂路で車両が後退している状態が検出されると車両が制動されるため、登坂路での車両の後退を防止もしくは抑制し、登坂路途中で車両を停止させることができる。これに対して、登坂路途中で停止した車両を発進させる際、すなわち各車輪に付与されていた制動力の保持状態が解除されて駆動輪に駆動力が伝達される際に、駆動輪にスリップが発生した場合、上記のようにスリップした駆動輪のみにトラクションコントロールがおこなわれると、登坂路途中での車両の挙動あるいは姿勢が不安定になる場合がある。特に、低μの登坂路においては、駆動輪にスリップが発生すると、グリップしていた他の車輪、すなわちスリップせずに駆動力を路面に伝えていた他の車輪の挙動も不安定になり、車両が登坂路を降下したり、もしくは駆動輪側が左右に振られたりする可能性がある。
また、上記の特許文献2に記載されている発明は、前述のように、高車速で走行中の車両でトラクションコントロールがおこなわれた場合における車両の直進安定性の悪化を抑制することを目的とした発明であって、例えば登坂路途中や低μ路で停止した車両を発進させる場合における車両の安定性については考慮されていない。
このように、特許文献1および特許文献2に記載されている各発明では、登坂路途中での車両の発進時に駆動輪のスリップが発生した場合に、トラクションコントロールなどの駆動輪のスリップを抑制するための制御がおこなわれた場合における車両の安定性については考慮されておらず、この点に関して未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、車両を発進させる際に、重力や車両に作用する外力などの影響により車両が移動させられることを防止もしくは抑制するとともに、その発進時における車両の挙動の安定性を向上させることができる制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源を有する車両の車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置において、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記車輪の車輪速を前記車輪毎にそれぞれ検出する車輪速検出手段と、前記車速検出手段により検出された車速と前記車輪速検出手段によりそれぞれ検出された前記車輪毎の車輪速との偏差が所定値以上となったことを検出する車輪状態検出手段と、前記車両の発進時に、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合、前記偏差が前記所定値以上となった過回転車輪の制動力を前記偏差が前記所定値より小さくなるまで増大させつつ、前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう制動力制御手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制動力制御手段が、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪の制動力と同様の制動力で前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする制御装置である。
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記制動力制御手段が、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪と前記車両の幅方向において対向する位置に配置されている車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする制御装置である。
またさらに、請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記制動力制御手段が、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、全車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記制動力制御手段が、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪の制動力よりも小さな制動力で前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、車両の発進時に、少なくともいずれか一つの車輪の車輪速と車速との偏差が所定値以上になった状態である車輪の過回転状態が検出された場合、その過回転状態となった過回転車輪の車輪速が、前記偏差が所定値よりも小さくなる通常状態の車輪速になるまで過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の車輪が制動される。例えば、車輪がスリップしたことにより、そのスリップした車輪の車輪速と車速との偏差が所定値以上になると、そのスリップした車輪(すなわち過回転車輪)が制動されるとともに、スリップしていない車輪(すなわち過回転車輪以外の車輪)も制動される。そのため、車両の制動力が増大されて、車両に作用する重力やその他の外力による車両の移動を防止し、もしくは抑制することができるとともに、例えば車両を発進・加速させる際の直進安定性などの、車両の挙動の安定性を向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、車輪の過回転状態が検出された場合、過回転車輪の車輪速が通常状態の車輪速になるまで過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の車輪に、前記過回転車輪と同様の制動力、すなわちその大きさ、あるいは増大量、あるいは増大速度、あるいは制動時間などが等しい制動力が付与される。そのため、過回転車輪以外の車輪、すなわち過回転状態が検出されていない車輪であっても、過回転車輪と同様に制動されることになり、過回転状態が検出されていない車輪が過回転状態になることを未然に防止し、もしくは抑制することができ、車両の挙動の安定性を向上させることができる。
さらに、請求項3の発明によれば、車輪の過回転状態が検出された場合、過回転車輪の車輪速が通常状態の車輪速になるまで過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪と車両の幅方向において対向する位置に配置されている車輪が制動される。例えば、車両の左側後輪において過回転状態が検出された場合は、その左側後輪が制動されるとともに、右側後輪が併せて制動される。そのため、車輪に過回転状態が生じた場合に、車両がその幅方向(左右方向)において左右に振られるような不安定な状態となることを回避して、車両の幅方向における挙動の安定性を向上させることができる。
またさらに、請求項4の発明によれば、車輪の過回転状態が検出された場合、過回転車輪の車輪速が通常状態の車輪速になるまで過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の全ての車輪、すなわち車両の全車輪が制動される。そのため、車両の制動力が確実に増大されて、車両に作用する重力やその他の外力による車両の移動を防止もしくは抑制することができるとともに、車両の挙動の安定性を向上させることができる。
そして、請求項5の発明によれば、車輪の過回転状態が検出された場合、過回転車輪の車輪速が通常状態の車輪速になるまで過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の車輪に、前記過回転車輪の制動力よりも小さな制動力が付与される。そのため、車輪の過回転状態を通常状態にするために過回転車輪に付与される相対的に大きな制動力に対して、それ程には大きな制動力を必要としない過回転車輪以外の車輪に対しても必要以上に大きな制動力を付与してしまう事態を回避して、適切な制動力で過回転車輪以外の車輪を制動することができ、車両の挙動の安定性を向上させるための制動制御を効率良く実行することができる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用した車両の駆動系を図2に示す。図2は、この発明を適用した車両Veが、例えば四輪駆動車両Veである例を示している。図2に示す車両Veにおいて、動力源1の出力側には、動力源1の回転出力を変速する変速機2が配置され、その変速機2の出力側には、変速機2から伝達される駆動力を前輪側の駆動軸3と後輪側の駆動軸4とに分配するトランスファ(副変速機)5が設けられている。
動力源1としては、例えば、内燃機関または電動機の少なくとも一方を用いることができる。電動機としては、例えば電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。この実施例では、動力源1として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどのエンジン1が用いられている場合について説明する。また、変速機2としては、手動変速機、あるいは自動変速機、あるいは無段変速機などの各種の変速機を用いることが可能である。
トランスファ5は、変速機2の回転出力を減速することなく駆動軸3,4へ伝達する高速側のハイギヤ列と、変速機2の回転出力をさらに減速して駆動軸3,4へ伝達する低速側のローギヤ列との二つのギヤ列を備えており、トランスファ5用のシフトレバー(図示せず)の操作によって、ハイギヤ列とローギヤ列とを選択的に切り換えて使用することができるように構成されている。また、このトランスファ5は、その内部に差動装置(センターデファレンシャル)(図示せず)を備えており、車両Veの旋回時に生じる前輪と後輪との回転差を吸収することができるように構成されている。
前輪側の駆動軸3は、フロントデファレンシャル6を介して左右の前輪駆動軸7,8に連結されていて、前輪駆動軸7,8には、左右前輪となる車輪9,10が連結されている。また、後輪側の駆動軸4は、リヤデファレンシャル11を介して左右の後輪駆動軸12,13に連結されていて、後輪駆動軸12,13には、左右後輪となる車輪14,15が連結されている。このような各機構により形成される動力伝達系統を介して、エンジン1の出力トルクが各車輪9,10,14,15に伝達される構成となっている。
また、この発明は、上述した四輪駆動車両Veだけではなく、例えば図3に示すようなFR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の二輪駆動車両Ve’にも適用することができる。図3に示す二輪駆動車両Ve’は、変速機2を介して伝達されるエンジン1の出力トルクが、後輪側の駆動軸4およびリヤデファレンシャル11および左右の後輪駆動軸12,13を介して、駆動力として左右の後輪14’,15’に伝達されるように構成されている。したがって、左右の後輪14’,15’が、エンジン1から駆動力が伝達される駆動輪となっていて、左右の前輪9’,10’が、駆動力が伝達されない非駆動輪となっている。
このように、図3に示す二輪駆動車両Ve’は、図2に示す四輪駆動車両Veに対して、トランスファ5、前輪側の駆動軸3、フロントデファレンシャル6,左右の前輪駆動軸7,8が設けられていない他は、ほぼ図2に示す四輪駆動車両Veと同様の構成となっている。そのため図3に示す二輪駆動車両Ve’のその他の構成について、図2に示す構成と同様の部分には、図2に付した符号と同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
そして、各車輪9,10,14,15には、あるいはこの発明を図3に示す二輪駆動車両Ve’に適用した場合は、各車輪9’,10’,14’,15’には、制動装置16がそれぞれに設けられている。また、制動装置16を構成するホイールシリンダ17と、マスタシリンダ18とを接続する作動液の液圧系には、運転者のブレーキ操作とは別に、ホイールシリンダ17内の液圧を増減し、各車輪9,10,14,15に、あるいは各車輪9’,10’,14’,15’に付与する制動力を制御するブレーキアクチュエータ19が設けられている。なお、この発明の実施例の説明において、「車両Ve」を「車両Ve’」に、「各車輪9,10,14,15」を「各車輪9’,10’,14’,15’」にそれぞれ読み替えることにより、この発明を図3に示すような二輪駆動車両Ve’に適用した場合の説明とすることができるため、以下の説明では、二輪駆動車両Ve’に関する詳細な説明を一部省略する。
図4に、ブレーキアクチュエータ19の構成を概略的に示す。なお、ブレーキアクチュエータ19は、各車輪9,10,14,15の各制動装置16毎に、独立して液圧を制御することが可能なように構成されていて、図4には、各車輪9,10,14,15のうちの一つの車輪に関するブレーキアクチュエータ19の構成を代表的に示している。したがって他の車輪についても同様の構成となっている。
ブレーキアクチュエータ19を構成する液圧系統には、モータ20によって回転駆動される液圧ポンプ21が設けられている。この液圧ポンプ21は、制動力を制御する際の液圧源として機能し、液圧ポンプ21の吐出口21aは、管路22を介して、遮断弁23と保持弁24との間の管路25に接続されている。なお、液圧ポンプ21の吐出口21a側には、液圧ポンプ21の吐出方向とは逆方向の作動液の流れを阻止する逆止弁26が設けられている。
一方、液圧ポンプ21の吸入口21bは、管路27を介してリザーバ28に接続されていて、管路27には、液圧ポンプ21の吸入方向とは逆方向の作動液の流れを阻止する逆止弁29,30が設けられている。この逆止弁29,30の間の管路27は、管路31を介してリザーバタンク32に接続されていて、リザーバタンク32内の作動液が、管路27を介して液圧ポンプ21に吸い込まれるように構成されている。また、管路31の途中には、この管路31を開閉させる、ノーマルクローズ形(通電時に開弁する形式)の吸込弁33が設けられている。
前述のマスタシリンダ18とホイールシリンダ17とを接続する管路25には、ノーマルオープン形(通電時に閉弁する形式)の遮断弁23が設けられており、作動液の液圧制御が実行される際に閉弁されてマスタシリンダ18とホイールシリンダ17との間の管路25を遮断するように構成されている。また、遮断弁23よりもホイールシリンダ17側の管路25には、ノーマルオープン形の保持弁24が設けられており、この保持弁24が閉弁されることにより、保持弁24からホイールシリンダ17側の液圧系を閉塞状態にするように、すなわち保持弁24からホイールシリンダ17側の液圧系の液圧を保持するように構成されている。
したがって、保持弁24を閉弁状態に制御することにより、保持弁24からホイールシリンダ17側の液圧系の液圧、すなわちブレーキ液圧を保持することができ、その結果、各車輪9,10,14,15に付与された制動力をそれぞれ保持することができる。
そして、保持弁24とホイールシリンダ17との間の管路25は、管路34によってリザーバ28に接続されている。この管路34には、ノーマルクローズ形の減圧弁35が設けられており、ON/OFFの2値状態の駆動制御信号によって、減圧弁35をduty駆動させることにより、管路34の連通状態を変化させることができる。
したがって、減圧弁35の開閉状態を制御することにより、管路34の連通状態を変化させ、保持弁24からホイールシリンダ17側の液圧系の液圧(ブレーキ液圧)を変化させることができる。例えば上記のように、ブレーキ液圧を保持していた状態、すなわち各車輪9,10,14,15に付与された制動力をそれぞれ保持していた状態から、減圧弁35を開弁状態に制御して管路34を連通状態にし、ブレーキ液圧を減圧させることによって、各車輪9,10,14,15に付与された制動力の保持状態を解除することができる。
このように、液圧ポンプ21および各種の弁装置等によって構成されるブレーキアクチュエータ19は、電子制御装置100によってその動作が制御される。すなわち、電子制御装置100により、ブレーキアクチュエータ19の動作を制御し、制動装置16のホイールシリンダ17内の液圧が増減制御される。したがって、電子制御装置100から出力される信号に基づいて、各車輪9,10,14,15に設けられた制動装置16をそれぞれ制御することができる。
図5に、電子制御装置100の構成を概略的に示す。電子制御装置100には、各車輪9,10,14,15の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ101、シフトレバーのシフトポジションを検知するシフトポジションセンサ102、ブレーキペダル36の踏み込み量を検出するブレーキペダルセンサ103、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ104、トランスファ5用のシフトレバーによって選択されたギヤ列を検知する選択ギヤ列検出スイッチ105、車両Veの前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ106、走行路面の傾斜角を検出する傾斜角センサ107などの各種センサが設けられており、それらの各センサの出力信号が電子制御装置100に入力されるように構成されている。
また、電子制御装置100には、各種のデータが記憶されており、電子制御装置100に入力される信号、および記憶されているデータに基づいて、電子制御装置100から、ブレーキアクチュエータ19を制御する信号が出力されるように構成されている。
ここで、上記の車輪速センサ101により検出される各車輪9,10,14,15の回転速度に基づいて、すなわち各車輪9,10,14,15の回転速度の検出値を基に電子制御装置100で演算処理することによって、車両Veの車速を算出することができる。さらに、上記のように検出された各車輪9,10,14,15の回転速度と車両Veの車速との偏差を基に制御装置100で演算処理することによって、各車輪9,10,14,15の回転状態を判断することができる。例えば、各車輪9,10,14,15のいずれかの車輪の回転速度と車両Veの車速との偏差が所定値以上の場合に、そのいずれかの車輪にスリップが発生していると判断することができる。
したがって、電子制御装置100および車輪速センサ101は、この発明における車輪速検出手段として機能するとともに、車速検出手段として機能する。さらに、この発明における車輪状態検出手段として機能する。
前述したように、この発明は、車両Veを発進させる際に、例えば重力や車両に作用する外力などの影響により車両Veが移動させられることを防止もしくは抑制するとともに、その発進時における車両Veの挙動の安定性を向上させることを目的としていて、そのために、この発明の制御装置は以下の制御を実行するように構成されている。
図1は、その制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図1において、まず、ドライバの制動意志によるブレーキペダル36の踏み込みによって、車両Veが停止した状態であるか否かが判断される(ステップS1)。すなわち、ドライバによりブレーキペダル36が踏み込まれ、その際に、例えばブレーキペダルセンサ103によって検出されるブレーキペダル36の踏み込み力もしくは踏み込み量などに応じて各車輪9,10,14,15に制動力が付与されて、その制動力により車両Veが停止した状態であるか否かが判断される。またこの場合の車両Veの停止状態の判断は、例えば各車輪9,10,14,15の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ101の検出結果が全て零であることにより判断することができる。
車両Veが停止状態でないこと、例えば各車輪速センサ101の検出結果の少なくともいずれか一つが零でないことによって、このステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御は実行されずにこのルーチンを一旦終了する。
一方、車両Veが停止状態にあることによって、ステップS1で肯定的に判断された場合は、ステップS2へ進み、路面勾配および、車両Veに作用する車両Veを移動させる移動力が算出され、それらのデータが保存される。このうち路面勾配の算出処理については、例えば車両Veに搭載された傾斜角センサ107の検出結果により求めることができる。あるいは、前後加速度センサ106によって得られる路面勾配に応じた車両Veの前後方向の加速度の検出結果を基に推定することもできる。また、車輪速センサ101によって得られる各車輪9,10,14,15の回転速度の変化状態から推定することも可能である。またあるいは、ナビゲーションシステム(図示せず)から得られる地理情報などを基に推定することも可能である。
また、車両Veを移動させる移動力とは、例えば車両Veが坂路の途中で停止した場合に、重力の作用により車両Veを坂路の降坂方向へ降下させる力(下降力)であり、上記のようにして算出された路面勾配および車両Veの車重などから算出することができる。また、路面勾配が零の場合であっても、例えば、強風の影響などにより、車両Veに、車両Veを移動させようとする力が作用するような場合は、例えば上記の前後加速度センサ106によって得られる車両Veの前後加速度の検出結果、あるいは車輪速センサ101によって得られる各車輪9,10,14,15の回転速度の変化状態などから、その場合に車両Veに作用する移動力として推定して算出することができる。
そして、上記のステップS2で算出された車両Veに作用する移動力(下降力)に基づいて、車両Veに作用させる制動力が求められ、その制動力が保持される(ステップS3)。具体的には、車両Veに作用する移動力に対抗して車両Veの停止状態を維持するために必要な制動力が求められ、その制動力が各車輪9,10,14,15に付与された状態で保持される。すなわち、前述したように、ブレーキアクチュエータ19の保持弁24が閉弁状態となるように制御されることにより、ブレーキ液圧が保持され、各車輪9,10,14,15に付与された制動力がそれぞれ保持される。
車両Veの制動力、すなわち各車輪9,10,14,15に付与された制動力が保持されると、ドライバの発進意志があったか否かが判断される(ステップS4)。このドライバの発進意志の判断については、例えば、ドライバにによるブレーキペダル36の踏み込み状態、およびシフトレバー(図示せず)などの操作により選択される変速機2のシフトポジション位置もしくはギヤ位置、およびアクセルペダル(図示せず)の踏み込み状態などに基づいて、ドライバ発進意志の有無について判断される。
この場合のブレーキペダル36の踏み込み状態の判断は、例えばブレーキペダルセンサ103によって検出されるブレーキペダル36の踏み込み力もしくは踏み込み量などの検出結果を基に判断することができる。
また、例えば車両Veに搭載されている変速機2が自動変速機である場合は、シフトレバーなどの操作により選択される変速機2のシフトポジション位置が、D(ドライブ)レンジあるいはR(リバース)レンジである状態を、発進のためのシフトポジション位置とすることができ、特に変速機が有段式の自動変速機である場合には、これらのDレンジおよびRレンジに加えて、L(1速)レンジあるいは2nd(2速)レンジなども発進のためのシフトポジション位置とすることができる。また、例えば車両Veに搭載されている変速機2が手動変速機である場合には、例えばクラッチペダルセンサ(図示せず)により所定量以上のクラッチペダル(図示せず)の踏み込みが検出され、シフトレバーなどの操作により選択される変速機2のギヤ位置が、ローギヤあるいはリバースギヤなどのギヤ位置にシフトされた状態を、発進のためのギヤ位置とすることができる。
さらに、アクセルペダルの踏み込み状態の判断は、例えばアクセルペダルセンサ104によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量が所定量以上ある場合にドライバの発進意志が有ると判断することができる。なお、アクセルペダルの踏み込み量以外に、例えばアクセルレバーの操作量など、その操作量に応じてエンジン1のスロットル開度を増減させる所定の装置における操作量に基づいて、ドライバの発進意志の有無を判断することができる。
したがって、ブレーキペダル36が所定量以上踏み込まれていること、すなわちブレーキペダル36が開放されていないこと、あるいは、変速機2のシフトポジション位置もしくはギヤ位置が発進のためのシフトポジション位置もしくはギヤ位置でないこと、あるいは、アクセルペダルが所定量以上踏み込まれていないことなどによって、このステップS4で否定的に判断された場合は、未だドライバに発進の意志がないものと判断して、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。なお、変速機2のシフトポジション位置もしくはギヤ位置が発進のためのシフトポジション位置もしくはギヤ位置でない状態とは、例えば変速機2が自動変速機である場合に、そのシフトポジション位置が、N(ニュートラル)レンジあるいはP(パーキング)レンジなどである状態、もしくは変速機2が手動変速機である場合に、そのギヤ位置が、ニュートラルである状態あるいはクラッチペダルが所定量以上踏み込まれたままの状態のことである。
一方、ブレーキペダル36が所定量以上踏み込まれていないこと、すなわちブレーキペダル36が開放されたこと、かつ、変速機2のシフトポジション位置もしくはギヤ位置が発進のためのシフトポジション位置もしくはギヤ位置に設定されたこと、かつ、アクセルペダルが所定量以上踏み込まれたことによって、ステップS4で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進み、全車輪すなわち各車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減少が開始される。すなわち全車輪9,10,14,15に付与されていた制動力の保持状態を解除するための制御と、車両Veを発進させるための制御とが開始される。
具体的には、ドライバの発進意志によるアクセルペダルの踏み込みによって駆動トルクが上昇し、その駆動トルクの上昇に合わせて、ブレーキ液圧が減圧されて各車輪9,10,14,15に付与されていた制動力の保持状態が解除される。より具体的には、アクセルペダルの踏み込みに応じてエンジン1の出力トルクが増大され、その出力トルクが前述の動力伝達系統を介して、駆動輪すなわち各車輪9,10,14,15(二輪駆動車両Ve’の場合は駆動輪14’,15’)に車両Veを発進させるための駆動トルクとして伝達される。また、それと同時に、ブレーキアクチュエータ19の保持弁24を閉弁状態に制御することによりブレーキ液圧が保持されていた状態から、減圧弁35が開弁状態に制御されて管路34が連通状態にされることによって、ブレーキ液圧が徐々に減圧されて、各車輪9,10,14,15に付与されていた制動力の保持状態が解除される。
続いて、駆動輪9,10,14,15(二輪駆動車両Ve’の場合は駆動輪14’,15’)にスリップが発生しているか否かが判断される(ステップS6)。この駆動輪のスリップの有無の判断、すなわち駆動輪のスリップの検出は、各車輪9,10.14,15に設けられた車輪速センサ101の検出結果と車両Veの車速とに基づいておこなわれる。例えば、車輪速センサ101により検出された回転速度と車速との偏差が、車輪のスリップを検出するための閾値として定められた所定値以上大きい場合に、スリップが発生していると判断することができる。
駆動輪のうち少なくとも一輪においてスリップが検出されたことによって、このステップS6で肯定的に判断された場合は、ステップS7へ進み、全車輪すなわち各車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧が中止されるとともに、いわゆるトラクションコントロールによるブレーキ液圧の増圧制御が、全車輪9,10,14,15に対して実行される。なお、車両Veがトラクションコントロールシステムを搭載していない場合であっても、電子制御装置100で所定の演算処理をおこないブレーキアクチュエータ19を制御することによって、上記の場合に全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧が中止され、そのブレーキ液圧が増圧される。
ここで、上記のステップS7における、全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧中止およびブレーキ液圧の増圧制御は、具体的には、以下に示す各種の制御内容により実行することができる。
(第1制御例)
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、スリップが検出された駆動輪、すなわちこの発明における過回転車輪に対して、そのスリップを抑制するためのブレーキ液圧の増圧制御が実行される。その過回転車輪に対するブレーキ液圧の増圧制御は、例えば、検出されたスリップのスリップ量、すなわち過回転車輪の回転速度と車速との偏差に基づいて求められる過回転車輪のスリップ状態を示す量に応じて設定される液圧値まで、その過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。言い換えると、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が、各車輪9,10,14,15におけるスリップの発生を検出するための閾値として設定された前記所定値よりも小さくなるまで、すなわちスリップが検出されなくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、スリップが検出された駆動輪、すなわちこの発明における過回転車輪に対して、そのスリップを抑制するためのブレーキ液圧の増圧制御が実行される。その過回転車輪に対するブレーキ液圧の増圧制御は、例えば、検出されたスリップのスリップ量、すなわち過回転車輪の回転速度と車速との偏差に基づいて求められる過回転車輪のスリップ状態を示す量に応じて設定される液圧値まで、その過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。言い換えると、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が、各車輪9,10,14,15におけるスリップの発生を検出するための閾値として設定された前記所定値よりも小さくなるまで、すなわちスリップが検出されなくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
またこのとき、上記の過回転車輪以外の他の全ての車輪に対しても、上記に示す過回転車輪に対するブレーキ液圧の増圧制御と同様の制御内容により、その過回転車輪以外の他の全ての車輪に対するブレーキ液圧の増圧制御が実行される。言い換えると、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大されるとともに、その過回転車輪以外の車輪すなわち全車輪9,10,14,15が、過回転車輪に対するブレーキ液圧の増圧制御と同様の制御内容で制動される。すなわち、過回転車輪の制動力が、過回転車輪の回転速度と車両Veの車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで増大されるとともに、その過回転車輪以外の車輪、すなわち全車輪9,10,14,15が、過回転車輪の制動力と同様の制動力で制動される。
そのため、スリップが検出されていない過回転車輪以外の車輪に対しても、過回転車輪と同様の制動がおこなわれることによって、過回転車輪以外の車輪にスリップが発生することが未然に防止され、もしくは抑制されるとともに、全車輪9,10,14,15に対して制動がおこなわれることによって、車両Veの制動力を増大させ、車両Veの安定性が高められる。
(第2制御例)
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
またこのとき、上記の過回転車輪以外の他の全ての車輪に対しては、上記に示す過回転車輪に対するブレーキ液圧の増圧分よりも少ない増圧分で増圧される。すなわち、過回転車輪の制動力が、過回転車輪の回転速度と車両Veの車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで増大されるとともに、その過回転車輪の制動力よりも小さい制動力で過回転車輪以外の車輪についての制動がおこなわれる。
そのため、スリップを抑制するために相対的に大きな制動力が必要とされる過回転車輪に対して、それ程の大きな制動力は必要とされない過回転車輪以外の車輪が、例えば必要最小限の相対的に小さな制動力、もしくは可及的に小さな制動力で制動されることによって、効率良く制動制御が実行される。
(第3制御例)
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
ステップS7において、前述のステップS5で開始されていた全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧制御が中止されるとともに、過回転車輪の回転速度と車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで、過回転車輪に対するブレーキ液圧が増大される。
またこのとき、上記の過回転車輪と車両Veの幅方向(図2,図3において矢印Wで示す方向)において対向する位置に配置されている車輪、例えば過回転車輪が駆動輪(左側後輪)14であった場合には駆動輪(右側後輪)15が、駆動輪14(過回転車輪)に対するブレーキ液圧の増圧制御と同様の制御内容で制動される。すなわち、駆動輪14(過回転車輪)の制動力が、駆動輪14(過回転車輪)の回転速度と車両Veの車速との偏差が前記所定値よりも小さくなるまで増大されるとともに、駆動輪15(過回転車輪以外の車輪)が、駆動輪14(過回転車輪)の制動力と同様の制動力で制動される。
そのため、スリップが検出されていない駆動輪15(過回転車輪以外の車輪)に対しても、駆動輪14(過回転車輪)と同様の制動がおこなわれることによって、駆動輪15(過回転車輪以外の車輪)にスリップが発生することが未然に防止され、もしくは抑制されるとともに、左右の駆動輪14,15が併せて同様に制動されることによって、特に車両Veの幅方向(左右方向)における安定性が高められる。
上記のようにステップS7において、全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減圧が中止され、そのブレーキ液圧が増圧されると、再び、それらの駆動輪にスリップが発生しているか否かが判断される(ステップS8)。駆動輪のうち少なくとも一輪においてスリップが検出されたことによって、このステップS8で肯定的に判断された場合は、前述のステップS7へ戻り、それ以降の制御が繰り返し実行される。したがって、ブレーキ液圧の増圧制御によって駆動輪のスリップが抑制され、そのスリップが検出されなくなるまで、上記のステップS7およびステップS8の制御が繰り返し実行される。
一方、駆動輪におけるスリップが検出されないことによって、ステップS8で否定的に判断された場合には、ステップS9へ進み、全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の減少が再開され、車両Veの発進のための制御が継続して実行される。
続いて、再度、駆動輪にスリップが発生しているか否かが判断される(ステップS10)。この時点において、駆動輪のうち少なくとも一輪においてスリップが検出されたことによって、このステップS10で肯定的に判断された場合は、前述のステップS7へ戻り、それ以降の制御が繰り返し実行される。
これに対して、駆動輪におけるスリップが検出されないことによって、ステップS10で否定的に判断された場合には、ステップS11へ進み、全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧が減少され、すなわち全車輪9,10,14,15に付与されていた制動力の保持状態が解除されて、車両Veを発進させるための制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
以上のように制御が実行されることによって、車両Veを発進させる際に、各車輪9,10,14,15のうち、少なくともいずれか一つの車輪の回転速度と車両Veの車速との偏差が、各車輪9,10,14,15におけるスリップの発生を検出するための閾値として定められた所定値以上になった状態、すなわち車輪の過回転状態、言い換えると車輪にスリップが発生した状態が検出された場合、そのスリップが検出された過回転車輪の回転速度が、前記偏差が前記所定値よりも小さくなる通常状態、すなわちスリップが検出されない状態における回転速度になるまで、過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の車輪が制動される。
そのため、車両Veの制動力が増大されて、車両Veに作用する重力やその他の外力による車両Veの移動を防止し、もしくは抑制することができるとともに、例えば車両Veを発進・加速させる際の直進安定性などの、車両Veの挙動の安定性を向上させることができる。
また、特に、ステップS7の制御において前述した第1制御例のように制御が実行されることによって、過回転車輪の回転速度が、スリップが検出されない状態の回転速度になるまで、過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪と同様の制動力で、過回転車輪以外の他の全ての車輪すなわち全車輪9,10,14,15が制動される。すなわち、過回転車輪に対して実行されるブレーキ液圧の増圧制御と同様の制御内容で、全車輪9,10,14,15に対するブレーキ液圧の増圧制御が実行される。
そのため、過回転車輪以外の車輪、すなわちスリップが検出されていない車輪であっても、過回転車輪と同様に制動されることになり、スリップが検出されていない車輪に新たにスリップが発生することを未然に防止し、もしくは抑制することができ、車両の挙動の安定性を向上させることができる。また、車両Veの全車輪9,10,14,15が制動されることによって、車両Veの制動力が確実に増大されて、車両Veに作用する重力やその他の外力による車両Veの移動を防止し、もしくは抑制することができる。
さらに、特に、ステップS7の制御において前述した第2制御例のように制御が実行されることによって、過回転車輪の回転速度が、スリップが検出されない状態の回転速度になるまで、過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪以外の車輪に、過回転車輪の制動力よりも小さな制動力が付与される。
そのため、スリップを抑制するために過回転車輪に付与される相対的に大きな制動力に対して、それ程には大きな制動力を必要としない過回転車輪以外の車輪に対しても必要以上に大きな制動力を付与してしまう事態を回避して、適切な制動力で過回転車輪以外の車輪を制動することができ、車両Veの挙動の安定性を向上させるための制動制御を効率良く実行することができる。
そして、特に、ステップS7の制御において前述した第3制御例のように制御が実行されることによって、過回転車輪の回転速度が、スリップが検出されない状態の回転速度になるまで、過回転車輪に制動力が付与され、併せて、その過回転車輪と車両Veの幅方向において対向する位置に配置されている車輪、例えば過回転車輪が駆動輪(左側後輪)14であった場合には駆動輪(右側後輪)15が制動される。すなわち、駆動輪14(過回転車輪)が制動されるとともに、駆動輪15(過回転車輪以外の車輪)が併せて制動される。そのため、車輪にスリップが発生した場合に、車両Veがその幅方向(左右方向)において左右に振られるような不安定な状態となることを回避して、車両Veの幅方向における挙動の安定性を向上させることができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS6,S8,S10の機能的手段が、この発明の車輪状態検出手段に相当し、ステップS7の機能的手段が、この発明の制動力制御手段に相当する。
なお、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、車輪に付与する制動力を制御するためのブレーキアクチュエータは、図4に示すように、作動液の液圧によりホイールシリンダを動作させるアクチュエータとして例示しているが、例えば電動式のサーボモータにより車輪に制動力を付与するように動作するアクチュエータであってもよく、要は、運転者のブレーキ操作とは別に、車輪に付与する制動力を制御する機構であればよい。
また、図5に示すように、路面勾配を検出するためのセンサとして傾斜角センサが設けられている例を示しているが、傾斜角センサを設けずに、前後加速度センサあるいは車輪速センサなどの検出値を基に路面勾配を推定することも可能である。
1…動力源(エンジン)、 2…変速機、 9,10,14,15(9’,10’,14’,15’)…車輪、 16…制動装置、 17…ホイールシリンダ、 19…ブレーキアクチュエータ、 36…ブレーキペダル、 100…電子制御装置、 Ve(Ve’)…車両。
Claims (5)
- 動力源を有する車両の車輪に付与する制動力を制御する車両の制動制御装置において、 前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車輪の車輪速を前記車輪毎にそれぞれ検出する車輪速検出手段と、
前記車速検出手段により検出された車速と前記車輪速検出手段によりそれぞれ検出された前記車輪毎の車輪速との偏差が所定値以上となったことを検出する車輪状態検出手段と、
前記車両の発進時に、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合、前記偏差が前記所定値以上となった過回転車輪の制動力を前記偏差が前記所定値より小さくなるまで増大させつつ、前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう制動力制御手段と
を備えていることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 前記制動力制御手段は、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪の制動力と同様の制動力で前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
- 前記制動力制御手段は、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪と前記車両の幅方向において対向する位置に配置されている車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制動制御装置。
- 前記制動力制御手段は、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、全車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制動制御装置。
- 前記制動力制御手段は、前記偏差が前記所定値以上となったことが前記車輪状態検出手段で検出された場合に、前記過回転車輪の制動力よりも小さな制動力で前記過回転車輪以外の車輪についての制動をおこなう手段を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の制動制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005013140A JP2006199153A (ja) | 2005-01-20 | 2005-01-20 | 車両の制動制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005013140A JP2006199153A (ja) | 2005-01-20 | 2005-01-20 | 車両の制動制御装置 |
Publications (1)
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JP2006199153A true JP2006199153A (ja) | 2006-08-03 |
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Family Applications (1)
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JP2005013140A Pending JP2006199153A (ja) | 2005-01-20 | 2005-01-20 | 車両の制動制御装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2006199153A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024116544A1 (ja) * | 2022-11-30 | 2024-06-06 | 株式会社小松製作所 | 作業機械、及び、作業機械を制御するための方法 |
-
2005
- 2005-01-20 JP JP2005013140A patent/JP2006199153A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2024116544A1 (ja) * | 2022-11-30 | 2024-06-06 | 株式会社小松製作所 | 作業機械、及び、作業機械を制御するための方法 |
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