JP2006193685A - 摩擦材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ブレーキの鳴きを低減させるためにゴムを結合剤に含む摩擦材において、ゴムによって耐熱性が劣化する現象が少ない摩擦材を提供する。
【解決手段】 繊維基材と摩擦調整剤と結合剤を主成分とする摩擦材であって、結合剤として加硫したゴムを含んでいる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維基材と摩擦調整剤と結合剤を主成分とする摩擦材およびその製造方法に関する。
従来、様々な摩擦材が知られており、例えば特許文献1に記載の摩擦材が知られている。
特許文献1に記載の摩擦材は、ブレーキの鳴きを低減させるために、フェノール樹脂にゴムを分散させた変性フェノール樹脂を結合剤として含んでいる。そして分散されているゴムの振動吸収性を利用することによって、摩擦材が発生するブレーキの鳴きを低減させることができる形態になっている。
特開平11−131056号公報
しかしゴムは、経時的にへたって振動吸収性が悪くなる。しかもゴムは、一般的に耐熱性に劣る傾向にある。そのためゴムを含む摩擦材は、高温下において生じるブレーキのフェード性能を悪化させる一因になってしまっていた。
そこで本発明は、ブレーキの鳴きを低減させるためにゴムを結合剤に含む摩擦材において、ゴムによって耐熱性が劣化する現象が少ない摩擦材を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える摩擦材およびその製造方法であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、摩擦材は、結合剤として加硫したゴムを含んでいる。
したがって摩擦材は、加硫したゴムを含んでいるために弾性変形しやすく、ブレーキの鳴きの発生を抑制することができる。そしてゴムは、加硫されているためにゴムそのものよりも耐熱性に優れ得る。そのため本発明に係る摩擦材は、従前の摩擦材に比べて耐熱性に優れており、ゴムによって耐熱性が劣化する現象が少ない摩擦材になっている。
請求項2に記載の発明によると、加硫したゴムは、C−C結合で加硫したゴムである。
ところで加硫系は、様々なものが知られているが、C−C結合による加硫系は、他の加硫系に比べて結合エネルギーが高い。そのためC−C結合で加硫したゴムを結合剤として含む摩擦材は、他の加硫系によって加硫したゴムを含む摩擦材よりも耐熱性に優れ得る。
請求項3に記載の発明によると、加硫したゴムの重量と、結合剤として含まれる樹脂の重量の比が、5/95〜85/15である。
したがってゴムの重量比が少なすぎることによって振動吸収性が不十分となることが防止されるとともに、ゴムの重量比が多すぎることによって耐熱性が落ちてしまうことが防止され得る。かくして本発明に係る摩擦材によると振動吸収性と耐熱性とを適度に得ることができる。
請求項4に記載の発明によると、C−C結合で加硫したゴムは、樹脂加硫、パーオキサイド加硫、カルボン酸アンアンモニウム加硫、アミン類加硫、ポリオール加硫のいずれかによって加硫したゴムである。
請求項5に記載の発明によると、結合剤は、フェノール樹脂と、加硫したゴムとを含んでいる。そして加硫したゴムは、ブロモブチルゴムまたはEPDMを変性フェノールによって樹脂加硫させたものである。
ところでブロモブチルゴムとEPDMは、フェノール樹脂との相溶性が他のゴムに比べて優れていない。しかしながらブロモブチルゴムまたはEPDMは、変性フェノールによって樹脂加硫されているためにフェノール樹脂に対する相溶性が高くなっている。そのため摩擦材の結合力が高くなり、摩擦材の耐熱性または耐磨耗性が高くなっている。
しかもブロモブチルゴムとEPDMは、連続使用温度がそれぞれ120〜130℃、130〜140℃であって他の一般的なゴムに比べて高温である。そのため加硫させたブロモブチルゴムまたはEPDMを含む摩擦材は、他のゴムを含む摩擦材に比べて耐熱性に優れ得る。しかもブロモブチルゴムおよびEPDMは、他のゴムに比べて安価でもある。
請求項6に記載の発明に係る摩擦材によると、結合剤は、フェノール樹脂と、加硫したゴムとを含んでいる。そして加硫したゴムは、アクリルゴムをカルボン酸アンモニウムまたはアミン類で加硫させたものである。
ところでアクリルゴムは、フェノール樹脂との相溶性が他のゴムに比べて優れている。そのため摩擦材の結合力が高くなり、摩擦材の耐熱性または耐磨耗性が高くなっている。
しかもアクリルゴムは、連続使用温度が140〜160℃であって他の一般的なゴムに比べて高温である。そのため加硫させたアクリルゴムを含む摩擦材は、他のゴムを含む摩擦材に比べて耐熱性に優れ得る。しかもアクリルゴムは、他のゴムに比べて安価でもある。
請求項7に係る摩擦材の製造方法によると、繊維基材と摩擦調整剤と結合剤とを加熱加圧成形する際の熱を利用して、ゴムを加硫剤によって加硫させる。
したがってゴムを加硫させるためにゴムと加硫剤に熱を加える工程をわざわざ設ける必要がなく、既存の加熱加圧成形を利用してゴムを加硫することができる。
本発明にかかる摩擦材は、繊維基材と摩擦調整剤(充填剤)と結合剤を主成分に含んでいる。そして結合剤として樹脂と加硫させたゴムとを含んでいる。
繊維基材としては、無機繊維および有機繊維を適宜選択して使用することができる。無機繊維としては、例えばスチール繊維,銅繊維,ガラス繊維,セラミックス繊維,チタン酸カリウム繊維などを使用することができ、有機繊維としては、アラミド繊維などを使用することができる。そしてこれら繊維基材は、それぞれ個別に用いることもできるが、数種を混合して用いることもできる。
また繊維基材は、短繊維状、粉末状で用いられており、繊維基材の添加量は、摩擦材全体の10〜50重量%であることが好ましい。
摩擦調整剤(充填剤)は、摩擦係数の調整、異音調整、錆防止などのために含まれるものであって、無機充填材,有機充填材,潤滑剤などが適宜含まれる。
無機充填剤としては、アブレーシブ,硫酸バリウム,炭酸カルシウム,水酸化カルシウム,雲母(マイカ),カオリン,タルクなどを使用できる。有機充填剤としては、カシューダストやラバーダストなどを使用できる。潤滑剤としては、黒鉛(グラファイト),三硫化アンチモン,二硫化モリブデン,二硫化亜鉛などを使用できる。
アブレーシブとしては、珪酸ジルコニウム,酸化ジルコニウム(ジルコニア),炭化珪素,シリカ及びアルミナからなる粉体などを使用できる。
そしてこれら摩擦調整剤は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組合せて使用することもできる。
結合剤は、樹脂と加硫させたゴムとを含んでいる。
樹脂としては、例えばフェノール樹脂,イミド樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂などが使用される。
ゴムとしては、連続使用温度が高い(例えば110℃以上の)ゴムが好ましく使用される。例えばブロモブチルゴム(120〜130℃),アクリルゴム(140〜160℃),水添NBR(110〜120℃),EPDM(130〜140℃),シリコーンゴム(220〜250℃),フッ素ゴム(250〜280℃)などが好ましく使用される。
さらに好ましくは、樹脂との相溶性が高いゴムが使用される。相溶性は、溶解度パラメータ(SP値)が目安となる(表1参照)。そのためSP値の高いアクリルゴム、水添NBRがもっとも好ましく使用され、次いでブロモブチルゴム、EPDMが好ましく使用される。
そしてより好ましくは、比較的安価なアクリルゴムまたはブロモブチルゴムが使用される。
Figure 2006193685
ゴムを加硫するための加硫剤は、分子間の結合エネルギーが高く、耐熱性に優れるC−C結合を発現する加硫剤が選択される。加硫剤は、ゴムの種類よって決定され、アクリルゴムに対してベンゾエート誘導体などが選択される。
またゴムは、材質により結合剤として含まれる樹脂との相溶性、例えばフェノール樹脂との相溶性が良くないものもある。そのようなゴムに対しては、樹脂との相溶性に優れる加硫剤が選択される。例えばブロモブチルゴムに対して変性フェノールが加硫剤として選択される。すなわち樹脂と同じ材料を変性させた変性樹脂材料が加硫剤として選択される。これにより加硫ゴムは、結合剤として含まれる樹脂との相溶性が高くなっている。
ゴムは、その種類によって加硫系を選定する必要がある(表2)。
表2中のPO加硫(パーオキサイド加硫)とは、POが触媒となってゴム分子同士を結合させる加硫であって、POそのものは、加硫後にゴム分子中にほとんど残らない。
フッ素ゴムは、ポリオール加硫が可能であって、ポリオールは、フェノール樹脂との相溶性に優れている。
アクリルゴムは、カルボン酸アンモニウム加硫、アミン類加硫および金属セッケン加硫が可能である。ただし金属セッケン加硫は、耐熱性に優れていない。
以上の結果から、耐熱性が高く、かつ樹脂との相溶性が高いものを表2において◎で示した。
Figure 2006193685
すなわち樹脂(フェノールなど)に対する相溶性の高いアクリルゴムとブロモブチルゴムが好ましく、これらゴムを加硫させたものを結合剤に含んでいる摩擦材が好ましい。
あるいは樹脂(フェノールなど)に対する相溶性が低いブロモブチルゴムまたはEPDMであって、これらゴムを樹脂加硫して樹脂(フェノールなど)に対する相溶性を高くした加硫ゴムを結合剤に含んでいる摩擦材が好ましい。
またはフェノール樹脂に対する相溶性が低いフッ素ゴムであって、該フッ素ゴムをポリオールによって加硫してフェノール樹脂に対する相溶性を高くした加硫ゴムを結合剤に含んでいる摩擦材が好ましい。
なお結合剤として含まれる樹脂とゴムは、種々なものを組合せたものであっても構わない。
また結合剤の総添加量は、耐熱性等の観点から摩擦材全体の5〜30重量%であることが好ましい。
またゴムと樹脂との比は、鳴き発生率と耐熱性との観点から5/95〜85/15が好ましく、50/50〜70/30であることがより好ましい。
次に、摩擦材の製造方法を図1にしたがって説明する。
先ず、ゴムと加硫剤を除く結合剤(結合剤用の樹脂)と、繊維基材と、摩擦調整剤とを混合して原料混合物を得る(原料混合工程:ステップS1)。混合機としては、アイリッヒミキサー、ユニバーサルミキサー、レーディゲミキサーなどを利用することができる。
前記原料混合工程とは別に、ゴムと加硫剤とを混練してゴム混練物を得る(ゴム混練工程:ステップS2)。混練は、例えば二本ロールによって行う。
次に、原料混合物とゴム混練物とを混練してゴム含有混合粉を得る(混合粉混練工程:ステップS3)。なお混練は、加圧式ニーダなどによって行うことができる。
次に、ゴム含有混合粉を成形用金型にて予備成形する。そして予備成形物を成形用金型にて加圧加熱成形し、摩擦材成形体を得る(加圧加熱成形工程:ステップS4)。加圧加熱成形における成形温度は、例えば130〜200℃、成形圧力は、10〜100MPa、成形時間は、2〜15分である。そしてこの加圧加熱成形工程において加えた熱を利用してゴムを加硫剤によって加硫させる。
その後、摩擦材成形体を140〜400℃で2〜48時間熱処理(後硬化)する(熱処理工程:ステップS5)。そしてこの熱処理工程において加えた熱を利用してゴムを十分に加硫させる。
(他の製造方法)
本発明は、図1に示す製造方法に限らず、例えば図2に示す製造方法であっても良い。すなわち図1に示す原料混合工程(ステップS1)とゴム混練工程(ステップS2)と混合粉混練工程(ステップS3)とに代えて、すべての原料を一度に混練する混合粉混練工程(ステップS6)を有し、その後に加圧加熱成形工程(ステップS4)、熱処理工程(ステップS5)を有する製造方法であっても良い(図2参照)。
あるいは図1に示すゴム混練工程(ステップS2)において、ゴムを加硫剤によって加硫させるための熱を加える。すなわち他の材料と混練する前に予めゴムを加硫剤によって加硫させておく。そしてその加硫させたゴムを混合粉混練工程(ステップS3)において原料混合工程(ステップS1)によって得られた原料混合物と混練し、その後に加圧加熱成形工程(ステップS4)、熱処理工程(ステップS5)を行う製造方法であっても良い(図1参照)。
(他の加硫系)
本発明は、C−C結合で加硫したゴムを含む摩擦材に限らず、広くは他の加硫系(加硫システム)において加硫したゴムを含む摩擦材であっても良い。例えば硫黄加硫、キノイド加硫などによって加硫したゴムを含む摩擦材であっても良い。ただし上記したように耐熱性に優れるC−C結合で加硫したゴムを含む摩擦材であることが好ましい。
以下に、本発明に係る実施例1〜6の摩擦材と、比較例1,2の摩擦材の製造方法を具体的な数字を用いて説明する。
実施例1〜6の摩擦材および比較例1,2の摩擦材は、表1に示す原料成分および配合量にて配合する。
Figure 2006193685
実施例1〜4に係る摩擦材は、結合剤の樹脂として無変性フェノール樹脂を含んでいる。そして結合剤のゴムとしてブロモブチルゴムを含み、加硫剤として変性フェノールを含んでいる。
実施例1〜4に係る摩擦材は、加硫剤を含むブロモブチルゴムと樹脂との配合比(重量比)が異なっており、実施例1が最もゴムの配合量が多く、実施例2〜4の順番にゴムの配合量が少なくなっている。
実施例5に係る摩擦材は、結合剤の樹脂として無変性フェノール樹脂を含み、結合剤のゴムとしてアクリルゴム、加硫剤としてベンゾエート誘導体を含んでいる。
実施例6に係る摩擦材は、実施例2と同じ原料成分および配合量であるが、後述するように製造方法が実施例2と異なっている。
実施例1〜4に係る摩擦材の製造方法は、先ず混合機にてゴムと加硫剤を除く原料とを混合して原料混合物を得た(図1のステップS1)。
次にブロモブチルゴム(バイエル製「ブロモブチルX2」)100重量部に対して、変性フェノール(田岡化学工業製「タッキロール250−S」)20重量部、亜鉛華30重量部、ステアリン酸10重量部を二本ロールによって混練してゴム混練物を得た(ステップS2)。
次いで原料混合物とゴム混練物とを表1の配合量にて混練してゴム含有混合粉を得た(ステップS3)。
続いてゴム含有混合粉を成形用金型にて予備成形し、予備成形物を成形用金型にて、成形温度160℃、成形圧力20MPaにて10分間、加圧加熱成形して摩擦材成形体を得た(ステップS4)。
その後、摩擦材成形体を炉に入れて、210℃で3時間硬化させ、摩擦材(ブレーキパッド)の完成品を得た(ステップS5)。
実施例5に係る摩擦材の製造方法は、ゴム混練工程(ステップS2)においてアクリルゴム(日本ゼオン製「ニッポールAR54」)100重量部に対して、アンモニウムベンゾエート(大内新興化学工業製「パルノックAB−S」)20重量部、ステアリン酸10重量部を二本ロールによって混練してゴム混練物を得た。そして実施例1〜4と同じように加圧加熱成形工程と熱処理工程とを経て摩擦材(ブレーキパッド)の完成品を得た。
実施例6に係る摩擦材の製造方法は、図2に示すようにすべての原料を混合粉混練工程(ステップS6)において一度に混練した。そしてその後、加圧加熱成形工程(ステップS4)と熱処理工程(ステップS5)とを経て摩擦材(ブレーキパッド)の完成品を得た。
比較例1に係る摩擦材は、表1に示すように結合剤としてゴムを含んでいない点が実施例1〜6と異なっている。すなわち比較例1に係る摩擦材は、結合剤として無変性フェノール樹脂のみを含んでいる。
比較例2に係る摩擦材は、結合剤としてゴムを含んでいるが、そのゴムが加硫されていない点が実施例1〜6と異なっている。すなわち比較例2に係る摩擦材は、アクリルゴムが20重量%分散されたフェノール樹脂のみを結合剤として含んでいる。
比較例1,2の製造方法は、すべての原料を混練した後に、加圧加熱成形工程と熱処理工程とを経て得たものである。
上記のように成形した実施例1〜6に係る摩擦材の特性と、比較例1,2に係る摩擦材の特性とを測定して、その測定結果を表3にまとめた。
各特性は、以下のように測定した。
<第2効力の平均摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおける平均摩擦係数を測定した。
<第1フェードの最低摩擦係数> JASO C―406−87に従って制動前速度50km/hにおけるフェード時の最低摩擦係数を測定した。
<鳴き発生率> ブレーキダイナモ試験において油圧0.1〜2MPa、ロータ温度40〜200℃において制動試験を行い、その試験中に発生した所定のレベル以上の音の回数を全制動数にて除した値を計算した。
<判定> 第2効力の平均摩擦係数が0.35以上、第1フェードの最低摩擦係数が0.2以上、鳴き発生率が10%以下の三つの要件を全て満たしているものを○とした。そして鳴き発生率のみが10%より大きく20%未満のものを△、20%以下のものを×とした。
表3の測定結果から以下のことがわかった。
すなわち実施例1〜6と比較例1とを比較することで、加硫したゴムを含むことによって摩擦材の鳴き発生率が低くなることがわかった。そして鳴き発生率は、加硫したゴムの配合量が多いほど低くなることがわかった。
また実施例1〜6は、加硫したゴムを含むことによって第1フェードの最低摩擦係数が比較例1よりも小さくなることがわかった。そして第1フェードの最低摩擦係数は、加硫したゴムの配合比が多いほど小さくなることがわかった。
実施例1〜6と比較例2とを比較することで、ゴムを加硫させることによって第1フェードの最低摩擦係数が向上することがわかった(表2参照)。
実施例2と実施例6とを比較することで、製造方法に関わらず、鳴き発生率と摩擦係数との特性がほとんど変わらないことがわかった(表2参照)。
以上より摩擦材は、加硫したゴムを含んでいることによって、鳴き発生率が小さくなると同時に、摩擦係数の低下現象が小さくなることがわかった。
また加硫したゴムと結合剤の樹脂との比は、鳴き発生率の観点から5/95以上が好ましく、50/50以上であることがさらに好ましい。そして摩擦係数の観点から85/15以下が好ましく、70/30以下であることがさらに好ましいことがわかる。
以上のようにして、摩擦材が製造されている。
すなわち摩擦材は、結合剤として加硫したゴムを含んでいる。
したがって摩擦材は、加硫したゴムを含んでいるために弾性変形しやすく、ブレーキの鳴きの発生を抑制することができる(表3参照)。そしてゴムは、加硫されているためにゴムそのものよりも耐熱性に優れ得る。そのため本形態に係る摩擦材は、従前の摩擦材に比べて耐熱性に優れており、ゴムによって耐熱性が劣化する現象が少ない摩擦材になっている。
また加硫したゴムは、C−C結合システムによる加硫ゴムである。
ところで加硫系は、様々なものが知られているが、C−C結合システムによる加硫系は、他の加硫系に比べて結合エネルギーが高い。そのためC−C結合システムで加硫したゴムを結合剤として含む摩擦材は、他の加硫系によって加硫したゴムを含む摩擦材よりも耐熱性に優れ得る。
また加硫したゴムの重量と、結合剤として含まれる樹脂の重量の比は、5/95〜85/15であることが好ましい。
これによりゴムの重量比が少なすぎることによって振動吸収性が不十分となることが防止されるとともに、ゴムの重量比が多すぎることによって耐熱性が落ちてしまうことが防止され得る。かくして本構成に係る摩擦材によると振動吸収性と耐熱性とを適度に得ることができる。
ところでゴムは、ゴムの種類によって結合剤として含まれる樹脂との相溶性が良くないものもある(表1参照)。これに対して本形態によると、結合剤として含まれる樹脂との相溶性に優れる加硫ゴムが選定されている。
例えば、ブロモブチルゴムとEPDMは、フェノール樹脂との相溶性が他のゴムに比べて優れていない。しかしながらブロモブチルゴムまたはEPDMは、変性フェノールによって樹脂加硫されているためにフェノール樹脂に対する相溶性が高くなっている。そのため摩擦材の結合力が高くなり、摩擦材の耐熱性または耐磨耗性が高くなっている。
しかもブロモブチルゴムとEPDMは、連続使用温度がそれぞれ120〜130℃、130〜140℃であって他の一般的なゴムに比べて高温である。そのため加硫させたブロモブチルゴムまたはEPDMを含む摩擦材は、他のゴムを含む摩擦材に比べて耐熱性に優れ得る。しかもブロモブチルゴムおよびEPDMは、他のゴムに比べて安価でもある。
アクリルゴムは、フェノール樹脂との相溶性が他のゴムに比べて優れている。そのため摩擦材の結合力が高くなり、摩擦材の耐熱性または耐磨耗性が高くなっている。
しかもアクリルゴムは、連続使用温度が140〜160℃であって他の一般的なゴムに比べて高温である。そのため加硫させたアクリルゴムを含む摩擦材は、他のゴムを含む摩擦材に比べて耐熱性に優れ得る。しかもアクリルゴムは、他のゴムに比べて安価でもある。
また図1,2に示す実施の形態に係る摩擦材の製造方法は、繊維基材と摩擦調整剤と結合剤とを加熱加圧成形する際の熱を利用して、ゴムを加硫剤によって加硫させることもできる。
したがってゴムを加硫させるためにゴムと加硫剤に熱を加える工程をわざわざ設ける必要がなく、既存の加熱加圧成形を利用してゴムを加硫させることができる。
実施例1〜5に係る摩擦材の製造工程図である。 実施例6、比較例1,2に係る摩擦材の製造工程図である。

Claims (7)

  1. 繊維基材と摩擦調整剤と結合剤を主成分とする摩擦材であって、
    前記結合剤として加硫したゴムを含んでいることを特徴とする摩擦材。
  2. 請求項1に記載の摩擦材であって、
    加硫したゴムは、C−C結合で加硫したゴムであることを特徴とする摩擦材。
  3. 請求項1または2に記載の摩擦材であって、
    加硫したゴムの重量と、結合剤として含まれる樹脂の重量の比が、5/95〜85/15であることを特徴とする摩擦材。
  4. 請求項2に記載の摩擦材であって、
    C−C結合で加硫したゴムは、樹脂加硫、パーオキサイド加硫、カルボン酸アンアンモニウム加硫、アミン類加硫、ポリオール加硫のいずれかによって加硫したゴムであることを特徴とする摩擦材。
  5. 請求項2から4のいずれかに記載の摩擦材であって、
    結合剤は、フェノール樹脂と、加硫したゴムとを含んでおり、
    前記加硫したゴムは、ブロモブチルゴムまたはEPDMを変性フェノールによって樹脂加硫させたものであることを特徴とする摩擦材。
  6. 請求項2から4のいずれかに記載の摩擦材であって、
    結合剤は、フェノール樹脂と、加硫したゴムとを含んでおり、
    前記加硫したゴムは、アクリルゴムをカルボン酸アンモニウムまたはアミン類で加硫させたものであることを特徴とする摩擦材。
  7. 請求項1から6に記載のいずれかの摩擦材の製造方法であって、
    繊維基材と摩擦調整剤と結合剤とを加熱加圧成形する際の熱を利用して、ゴムを加硫剤によって加硫させることを特徴とする摩擦材の製造方法。

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