JP2006191933A - いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤 - Google Patents

いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤 Download PDF

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Abstract

【課題】いびき又は睡眠時の呼吸障害に有効な予防・治療剤を提供する。いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和に有効な食品及び飼料を提供する。
【解決手段】グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を有効成分とするいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤等に関する。また、生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を有効成分とするいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤等に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤、また、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和に有効な食品及び飼料に関する。
いびきは、睡眠中の咽頭や舌の筋肉の緊張低下により気道が狭窄ないし閉塞されることに伴い、咽頭部などの気道粘膜が振動して発生する。その原因としては、肥満、飲酒、睡眠薬の服用、加齢、アデノイドなどの鼻疾患、咽頭部の障害等が挙げられる。いびきは、同居人の眠りの妨害、つまり他人に迷惑をかけているばかりでなく、熟睡の妨げとなり、日中の眠気、集中力、活力、記憶力低下、精神不安定をもたらすことから、いびきの防止は、同居人及び本人の良質な睡眠をもたらし、日中の活力を増進、良質な健康を維持する上で重要である。
また、いびきをかく人の1〜2割程度には、睡眠時に無呼吸状態が断続的に繰り返される症状を呈するものがあり、このような症状を臨床的に睡眠時無呼吸症候群と称する。日本には推定200万人の潜在患者がいると言われている。
睡眠時無呼吸の原因としては、前記した気道の閉塞のほか、呼吸中枢の異常に起因するものがある。
いびきや睡眠時無呼吸は、日中の活動に支障を来すばかりでなく、傾眠による交通事故を引き起こしたり、一時的呼吸停止による体内の酸素不足によって循環器系や中枢系への影響を与え、様々な障害をもたらすことが知られている。例えば、高血圧、脳梗塞、虚血性心疾患、不整脈、突然死との関連が指摘され、予防や治療を要する疾患と捉えられている。
いびきや睡眠時無呼吸の治療には、肥満、飲酒、睡眠薬・鎮痛薬・精神安定剤常用等が関与すると考えられる場合には、減量や禁酒、睡眠薬・鎮痛薬・精神安定剤服用の中止等、生活習慣の見直しが、第一の治療及び予防となる。より積極的治療としては、口腔内装具の着用や手術による外科的治療が施されるが、無呼吸が改善されない場合もあると言われている。より確実な療法として、鼻マスクを通して空気を送り込み、上気道を常に陽圧に保つ療法、持続陽圧気道(CPAP: Continuous Positive Airway Pressure)療法が近年開発されたが、コンプライアンスは必ずしも良くない。
薬剤を用いた治療法としては、気道の炎症やアレルギーに起因するいびき、睡眠時無呼吸に限れば、ステロイド等の薬物が有効な場合がある。また、降圧利尿剤(アセタゾラミド)が治療に使用される場合があるものの、治療成績は必ずしも満足し得るものではない。
さらに、中枢のグルタミン酸ニューロンの活動を抑制する薬剤、すなわち、グルタミン酸受容体又はグリシン受容体の阻害剤、あるいはグルタミン酸又はグリシンの拮抗剤が、睡眠時無呼吸症の治療に有効である可能性が報告され(特許文献1)、ラットを用いた動物実験により、グルタミン酸の拮抗剤であるリルゾールの有効性の確認がなされている。しかし、かかる薬効を持つグルタミン酸やグリシンの拮抗薬は臨床現場での使用には至っておらず、またヒトでの有効性も確認されていない。
したがって、いびきや睡眠時無呼吸に対する有効な治療薬、食品等が求められている。
国際公開第00/51590号パンフレット
本発明が解決しようとする課題は、いびきを予防、低減し、睡眠時の呼吸障害を予防ないし治療するための薬剤、いびき又は睡眠時の呼吸障害を予防ないし緩和するための食品及び飼料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、グリシンの服用によりいびきの発生が抑制されること、さらには、睡眠時無呼吸を抑制し、睡眠時無呼吸による動脈血酸素飽和度(SpO2)低下を抑制することを発見した。該作用は、体内でグリシンを経て代謝される結果、体内グリシン量を増加させるセリンや、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として高比率で含むペプチドないし蛋白質によっても達成することができる。即ち、生体内でグリシンとして存在しうる化合物であれば、いずれも該作用を発現させることができる。また、該作用は、グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物(以下「グリシン受容体アゴニスト」ともいう。)によっても達成することができる。
該発見に基づき、生体内においてグリシンとして存在しうる化合物(以下「グリシン等」という。)及びグリシン受容体アゴニストが、いびきや睡眠時の呼吸障害に対する予防・治療に使用できること、あるいは、グリシン等及びグリシン受容体アゴニストが、いびきや睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤の製造に使用できることを確認して本発明を完成した。
グリシン等及びグリシン受容体アゴニストは、いびきや睡眠時の呼吸障害の予防・緩和の目的で食品あるいは飼料へ添加して利用することができる。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を有効成分とするいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(2)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を有効成分とするいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(3)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物が、グリシン、セリン、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド、並びに、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質から選ばれる、上記(2)記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(4)睡眠時の呼吸障害が低呼吸又は無呼吸である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(5)睡眠時の低呼吸又は無呼吸が閉塞性低呼吸又は閉塞性無呼吸、あるいは中枢性低呼吸又は中枢性無呼吸である、上記(4)記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(6)睡眠時無呼吸症の予防・治療剤である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(7)睡眠時の呼吸障害が喘息に起因する呼吸障害である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(8)ヒト又は動物用であり、摂取量又は投与量が、グリシンの遊離体換算で0.06〜2500mg/kg/dayであるか、または、セリンの遊離体換算で0.1〜4000mg/kg/dayである、上記(2)または(3)に記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤。
(9)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を含有するいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の食品。
(10)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を含有するいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の食品。
(11)食品が飲料の形態である、上記(9)または(10)に記載の食品。
(12)食品がサプリメントである、上記(9)〜(11)のいずれかに記載の食品。
(13)食品が保健機能食品である、上記(9)〜(11)のいずれかに記載の食品。
(14)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を含有するいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の飼料。
(15)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を含有するいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の飼料。
(16)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤を、該予防・治療剤の使用に関する事項を記載した記載物とともに包装したパッケージ。
(17)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療を必要とするヒトまたは動物に投与することを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(18)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療を必要とするヒトまたは動物に投与することを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(19)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物が、グリシン、セリン、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド、並びに、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質から選ばれる、上記(18)記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(20)睡眠時の呼吸障害が低呼吸又は無呼吸である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(21)睡眠時の低呼吸又は無呼吸が閉塞性低呼吸又は閉塞性無呼吸、あるいは中枢性低呼吸又は中枢性無呼吸である、上記(20)記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(22)睡眠時無呼吸症の予防・治療方法である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(23)睡眠時の呼吸障害が喘息に起因する呼吸障害である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(24)ヒト又は動物に、生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を、グリシンの遊離体換算で0.06〜2500mg/kg/day、または、セリンの遊離体換算で0.1〜4000mg/kg/dayを投与することを含む、上記(18)または(19)に記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療方法。
(25)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を含む食品を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和を必要とするヒト又は動物に摂取させることを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(26)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を含む食品を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和を必要とするヒト又は動物に摂取させることを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(27)食品が飲料の形態である、上記(25)または(26)に記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(28)食品がサプリメントである、上記(25)〜(27)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(29)食品が保健機能食品である、上記(25)〜(27)のいずれかに記載のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(30)グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物を含む飼料を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和を必要とする動物に摂取させることを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(31)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物を含む飼料を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和を必要とする動物に摂取させることを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
(32)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤の製造のためのグリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物の使用。
(33)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤の製造のための生体内においてグリシンとして存在しうる化合物の使用。
(34)生体内においてグリシンとして存在しうる化合物が、グリシン、セリン、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド、並びに、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質から選ばれる、上記(33)記載の使用。
(35)睡眠時の呼吸障害が低呼吸又は無呼吸である、上記(32)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(36)睡眠時の低呼吸又は無呼吸が閉塞性低呼吸又は閉塞性無呼吸、あるいは中枢性低呼吸又は中枢性無呼吸である、上記(35)記載の使用。
(37)睡眠時無呼吸症の予防・治療剤の製造のための、上記(32)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(38)睡眠時の呼吸障害が喘息に起因する呼吸障害である、上記(32)〜(34)のいずれかに記載の使用。
(39)ヒト又は動物用であり、摂取量又は投与量が、グリシンの遊離体換算で0.06〜2500mg/kg/dayであるか、または、セリンの遊離体換算で0.1〜4000mg/kg/dayであるいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤の製造のための、上記(33)または(34)に記載の使用。
(40)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の食品の製造のためのグリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物の使用。
(41)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の食品の製造のための生体内においてグリシンとして存在しうる化合物の使用。
(42)食品が飲料の形態である、上記(40)または(41)に記載の使用。
(43)食品がサプリメントである、上記(40)〜(42)のいずれかに記載の使用。
(44)食品が保健機能食品である、上記(40)〜(42)のいずれかに記載の使用。
(45)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の飼料の製造のためのグリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物の使用。
(46)いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和用の飼料の製造のための生体内においてグリシンとして存在しうる化合物の使用。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・治療剤(以下、単に「本発明の予防・治療剤」という。)が適用対象とするいびき又は睡眠時の呼吸障害としては、いびき、いわゆる睡眠時無呼吸症候群にみられる閉塞性あるいは中枢性の低呼吸、無呼吸のほか、喘息など、他の原因疾患に起因する低呼吸や無呼吸が例示される。
グリシン受容体アゴニストとは、グリシン受容体に結合し、グリシンのもつ作用と同じ、あるいは類似の作用を現わす物質である。
グリシン受容体アゴニストとしては、例えば、アミノメタンスルホン酸、D−アラニン、L−アラニン、β−アラニン、タウリン、ハイポタウリン、ドデシルベンゼンスルホネート、ペニシリンG、クロロメチアゾール(Chlormethiazole)、イベルメクチン(Ivermectin)等が挙げられる。
生体内においてグリシンとして存在しうる化合物とは、グリシンは勿論のこと、例えば投与後、蛋白質のようにペプチド結合の切断によりグリシンを生成する化合物、また例えばセリンのように代謝によって、グリシンを生成する化合物(代謝の途中でグリシンを生成する化合物であってもよい)などのように生体内でグリシンを生成する化合物をも包含する概念である。
生体内においてグリシンとして存在しうる化合物としては、例えば、グリシン、セリン、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として高比率で含むペプチド、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として高比率で含む蛋白質等が挙げられる。
セリンは、体内でグリシンを経て代謝される結果、体内グリシン量を増加させる。
グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド、グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質は、消化等によりグリシン、セリンに分解され、体内グリシン量を増加させる。
グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチドは、グリシン、セリンを構成アミノ酸として多く含む程よく、例えばグリシン、セリンの含有量が、グリシン及びセリンの総量として0.1〜1g/gペプチド、好ましくは0.3〜1g/gペプチドであるペプチドが挙げられる。
グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質は、グリシン、セリンを構成アミノ酸として多く含む程よく、例えばグリシン、セリンの含有量が グリシン及びセリンの総量として0.1〜1g/g蛋白、好ましくは0.3〜1g/g蛋白である蛋白質が挙げられる。
グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド又は蛋白質としては、具体的には、例えばシルク、コラーゲン、ゼラチン、化学合成して得られたペプチド等が挙げられる。
グリシン等及びグリシン受容体アゴニストは塩の態様であってもよく、本明細書における「グリシン」、「セリン」、「グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含むペプチド」、「グリシン及び/又はセリンを構成アミノ酸として含む蛋白質」及び「グリシン受容体に対してアゴニスト作用を有する化合物(グリシン受容体アゴニスト)」なる用語は塩をも包含する概念である。
かかる塩としては、薬理学的に許容されるものであれば、特に制限はなく、例えば、無機酸または有機酸との塩が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられ、有機酸との塩としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、メタンスルホン酸等との塩が挙げられる。また、塩基との塩とすることもできる。塩基との塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
本発明の予防・治療剤は、既知医薬製剤又は将来開発される医薬製剤の形態、例えば、経口投与又は非経口投与の形態で投与されるが、経口投与が簡便で好ましい。経口投与剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、(マイクロ)カプセル剤等の固形剤や、シロップ・ジュースなどの溶液剤や乳・懸濁剤等が例示される。また、非経口投与剤としては、注射、経腸、経皮、吸入用の製剤が例示される。これらの製剤は、即効性あるいは遅効性(徐放性)の製剤とすることができる。
これらの製剤の製造には、自体公知の方法又は将来開発される方法を適宜に採用することができる。製剤の製造に際しては、各製剤の剤型に応じて、適宜の医薬上許容される担体、例えば通常の製剤用物質を補助剤として使用することができる。製剤用物質としては、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を挙げることが出来る。更に、製剤用物質を具体的に例示すると、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、デキストリン及びその他の糖類、タルク、牛乳蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース(結晶セルロース)及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、微粒二酸化ケイ素、溶剤、例えば滅菌水及び一価アルコール(例えばエタノール等)又は多価アルコール(例えばグリセロール等)、ワニラ香料等が例示される。
以上に例示した製剤形態にある本発明の予防・治療剤中のグリシン等、グリシン受容体アゴニストの有効成分の含有量は、特に限定されず、薬効を奏するに必要な量を含有するように適宜調製すればよい。
本発明の予防・治療剤は、該予防・治療剤の使用に関する事項を記載した記載物とともに包装した商業パッケージとすることができる。
摂取又は投与対象はヒト及び動物(実験動物を含む)である。グリシン等の摂取量又は投与量は、グリシンの遊離体換算で0.06〜2500mg/kg/day程度、より好ましくは0.25〜625mg/kg/day程度、さらに好ましくは1.25〜125mg/kg/day程度である。または、セリンの遊離体換算で0.1〜4000mg/kg/day程度、より好ましくは0.4〜2400mg/kg/day程度、さらに好ましくは1.6〜600mg/kg/day程度である。
グリシン受容体アゴニストの摂取量又は投与量は、薬剤の種類によっても異なるが、好ましくは0.001〜600mg/kg/dayである。
本発明においては、これらの1日量を、1回、又は2〜4回に分割して適宜の間隔をあけて経口的または非経口的に投与する。1回投与の場合は、就寝前に服用することが好ましい。
本発明の予防・治療剤によれば、いびきあるいは睡眠時の低呼吸や無呼吸による睡眠障害を防止し、不眠の苦痛を和らげることができる。
また、本発明の予防・治療剤によれば、いびきあるいは睡眠時の低呼吸や無呼吸による睡眠障害を防止し、睡眠障害に起因する日中傾眠、注意力散漫、記憶力低下、仕事の能率低下、事故、イライラ、短気、起床時の頭痛、気分の変調、性欲減退、幻覚及び難聴等、また睡眠障害に起因する夜間の異常行動を防止し、さらにはこれらの睡眠障害に起因する各種症状による社会的不適応や不安・鬱状態を防止することができる。
さらに、本発明の予防・治療剤によれば、睡眠時無呼吸の合併症である脳血管障害、高血圧、多血症、肺高血圧、肺性心、鬱血性心不全、虚血性心疾患、不整脈、呼吸不全、突然死、糖尿病、肥満、認識障害、精神障害及び痴呆の発症を予防することができる。
本発明の予防・治療剤は、睡眠開始から覚醒までの全睡眠期間のいびき、呼吸障害(特に、低呼吸無呼吸)の改善に効果があり、特に睡眠初期に効果が大きい特徴を有する。また、本発明の予防・治療剤は、40歳以上、なかでも40歳以上でかつ肥満(例えばBMIが28を超える肥満)の者に対して、いびき、睡眠時の呼吸障害(特に、低呼吸無呼吸)を顕著に改善する効果がある。
本発明の「食品」は、食品全般(飲料を含む)を意味するが、いわゆる健康食品を含む一般食品の他、厚生労働省の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品をも含むものであり、さらにサプリメントも包含される。
本発明において、グリシン等、グリシン受容体アゴニストは、いびきや睡眠時の呼吸障害の予防・緩和の目的で各種の加工食品や飲料のような一般食品や、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品、あるいは飼料へ添加し、あるいはサプリメントとして利用することができる。
本発明における食品は、適宜の食品として許容される担体、例えば、各種加工用食材、調味料、香料、甘味料等を使用して自体公知の方法で製造し、また、散剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等の製剤とすることができる。食品として許容される担体には、前記の医薬上許容される担体が含まれる。
本発明の食品の製造に際しては、さらに、ビタミン類等、他の栄養補給用添加剤を配合することができる。
本発明における飼料は、適宜の飼料として許容される担体、例えば、通常の飼料材等を使用して自体公知の方法で製造できる。飼料として許容される担体には、前記の医薬上許容される担体が含まれる。動物への投与は、前記したヒトへの投与と同様か、あるいは通常の飼料に添加することによって行うことができる。
本発明の食品に含まれるグリシン等、グリシン受容体アゴニストの量は、特に限定されないが、1日あたりの摂取量が本発明の予防・治療剤における上記の投与量と同様の範囲となるようにするのが好ましい。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
グリシン錠剤及びグリシン以外の他のアミノ酸としてL−シスチンを含有する錠剤(以下対照錠剤と略す)を、就寝前に服用し、就寝中の被験者のいびきを家人が評価した。また、睡眠時無呼吸及び動脈血酸素飽和度(SpO2)をフクダ電子(株)製スリープテスタLT-200を用いて評価した。被験者は、38歳健常男性(体重82 kg、身長170 cm、体格指数(BMI) 28.3)であり、就寝中に無呼吸が頻発することが家人により観察されている。被験者は、恒常的な医薬品の投薬は一切受けておらず、また栄養剤や栄養補助剤を服用する習慣も無い。また、試験期間中には、グリシン錠剤と対照錠剤以外の医薬品、栄養剤、栄養補助剤は一切服用していない。被験者はグリシン錠剤又は対照錠剤を適当数(2〜4個)服用し、それら錠剤の種類及び服用の有無に関して家人には知らせることなく、翌朝いびきの有無及び程度を聞き取り調査した。
(グリシン錠剤の調製)
グリシン3,675 g、デキストリン1,725 g、グリセリン脂肪酸エステル375 gを混合し、結晶セルロース1,500 gおよび重量比で22%の70%エタノールを加え練合し、押し出し造粒した。得られた造粒品は含水率2.28%まで乾燥後整粒し、16メッシュPASSの粒子を得た後、微粒二酸化ケイ素150 gとワニラ香料75 gを加え混合した。得られた混合物は、11 mmΦ、500 mg、打錠圧力2.2 ton、回転数20 rpm、硬度平均10 kgの条件で打錠した。以上の操作で、1錠あたり245 mgのグリシンを含有する直径11 mmΦの錠剤を製造した。
(対照錠剤の調製)
L−シスチン2,625 g、L−テアニン1,050 g、デキストリン1,710 g、アスパルテーム15 gを混合し、結晶セルロース1,500 gおよび重量比で30%の70%エタノールを加え練合し、押し出し造粒した。得られた造粒品は含水率1.6%以下まで乾燥後整粒し、16メッシュPASSの粒子を得た後、微粒二酸化ケイ素37.5 g、グリセリン脂肪酸エステル487.5 gとワニラ香料75 gを加え混合した。得られた混合物は、11 mmΦ、500 mg、打錠圧力2.0 ton、回転数20 rpm、硬度平均10 kgの条件で打錠した。以上の操作で、1錠あたり175 mgのL−シスチンおよび70 mgのL−テアニンを含有する直径11 mmΦの対照錠剤(シスチン・テアニン錠剤)を製造した。
(いびきの評価)
就寝中のいびきの有無を、翌朝、家人が、マイナス(−:いびきが聞かれないもしくは寝息程度)、プラス(+:中程度のいびきが聞かれる)、ツープラス(++:極めて耳障りで重度のいびきが聞かれる)の3段階に評価した。就寝前にグリシン錠や対照錠を服用した場合、何も服用しなかった場合のいびきの有無を集計した。いびき評価結果及び飲酒頻度の各処理間での比較にはχ二乗検定を用い、危険率p<0.05を統計的有意とした。
(無呼吸の評価)
睡眠中の動脈血酸素飽和度(SpO2)及び口鼻部のエアーフローをフクダ電子(株)製スリープテスタLT-200を用いて測定した。動脈血酸素飽和度(SpO2)は左第二指先端部にセンサーを装着して測定し93%以下への動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下が10秒以上持続した場合をSpO2降下として、1日あたり及び1時間あたりのSpO2降下回数、及び、1日の最低SpO2を求めた。口鼻部のエアーフローはサーモカプル方式で測定し、50%以下に口鼻部フローが低下した状態が10秒以上持続した場合を低呼吸と定義した。低呼吸に付随してSpO2降下があった場合を無呼吸としてカウントし、1日あたり及び1時間あたりの無呼吸回数を求めた。同時に睡眠中の気管音を喉頭隆起近傍に装着したマイクより収集した。
(実験1)
グリシン錠服用によりいびきが軽減されるか否かを評価するため、就寝中のいびきの有無を、27日間に渡り観察した。非服用の観察期間(3日間)の後、グリシン錠2錠(グリシン490 mg含有)を9日間、グリシン錠4錠(グリシン980 mg含有)を8日間、毎就寝前に服用していびきの有無を観察し、再びグリシン錠を服用せず7日間観察した(表1)。
(実験1結果)
グリシン錠を服用しない場合、極めて耳障りないびき(評価ツープラス)は10日間中5日(頻度50%)観察された(表1)。評価ツープラスのいびきが観察された日数は、グリシン錠2錠を就寝前に服用した場合には、9日間中2日(頻度22%)に減少し、グリシン錠4錠を服用した8日間では観察されず、この減少はグリシン錠を服用しない場合に比較して有意であった(p<0.05)。一方、いびきが聞かれない、もしくは寝息程度(評価マイナス)であった日数は、グリシン錠を服用しない場合10日間中3日(頻度30%)であったのに対し、グリシン錠2錠服用で9日間中4日(頻度44%)、4錠服用で8日間中6日(頻度75%)にまで用量に依存して増加した。飲酒がいびき発生を助長することが知られているので、グリシン非服用時、2錠服用時、4錠服用時各々の場合の飲酒日数を示した(表1)。グリシン2錠ないし4錠服用時にはより高頻度に飲酒していることから、飲酒を控えたためにいびき発生が抑制されたのでは無く、グリシン錠の服用がいびき発生を抑制したことが明らかである。
Figure 2006191933
(実験2)
対照錠剤にグリシン錠剤と同様ないびき抑制効果が見られるか否かを検討した。いずれの錠剤も服用しない観察期間(5日間)の後、対照錠4錠を10日間毎就寝前に服用、再び錠剤を服用せず5日間、いびきの有無を観察した。その後、グリシン錠4錠(グリシン980mg含有)を毎就寝前に服用し9日間いびきの有無を観察した。
(実験2結果)
表2に示すように、対照錠を服用した10日間の内4日間(頻度40%)重度のいびき(評価ツープラス)がされ、その頻度には錠剤を服用しない場合と差がなかった。一方、グリシン錠を服用した9日間では重度のいびきが観察されなかった。逆に、いびき評価結果がマイナスであった日数は、何も服用しなかった10日間、対照錠を服用した10日間の内各々3日(頻度30%)、2日(頻度20%)であったのに対し、グリシン錠を服用した場合は9日間中6日(頻度67%)にまで増加した。以上の結果より、グリシン服用がいびきを抑制したことは明らかである。
Figure 2006191933
実験1及び実験2の飲酒頻度を、グリシン錠服用、非服用で比較すると、服用した場合が高かった。一般に、飲酒はいびきを増強すると言われているので、グリシン錠服用時に飲酒頻度が高かったことは、「グリシンがいびき発生を抑制する」との結論に影響しないと推測される。このことをさらに確認するために、実験1及び実験2でグリシン錠を服用しなかった全ケースについて、飲酒の有無といびき評価結果の関係を解析した(表3)。重度のいびき(評価ツープラス)が観察された日数は、飲酒をしていない13日間では3日(頻度23%)、であったのに対し、飲酒した17日間では9日(頻度53%)に達した。逆に、いびきが聞かれない、もしくは寝息程度(評価マイナス)であった日数は、飲酒していない13日間で6日(頻度46%)であったのに対し、飲酒した17日間では2日(頻度12%)へと有意に減少した。以上の如く、飲酒がいびきを増強するというこれまでの知見が再確認された。従って、グリシン錠服用効果に関する本試験結果が、飲酒頻度の差によりもたらされたものでは無く「グリシン服用がいびきを抑制した」ことによることは明白である。
Figure 2006191933
(実験3)
グリシンの睡眠時無呼吸抑制効果を評価した。就寝前にグリシン錠4錠を服用した場合、何も服用しなかった各場合について、睡眠中の口鼻部エアーフロー及び動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定し、グリシンのSpO2降下及び無呼吸発生頻度に及ぼす影響を評価した。いびき音を反映すると考えられる睡眠中の気管音を同時に収集した。
(実験3の結果)
表4に示すように、グリシン錠を服用することにより、一晩の無呼吸数は服用しない場合に比較して4割に減少した。一時間あたりの無呼吸数もグリシン錠服用により4.5回から1.9回へと大幅に減少した。図1に示すように、無呼吸に付随して動脈血酸素飽和度(SpO2)の降下が観察される。グリシン錠の服用によりSpO2降下は服用しない場合に比較して約3割まで抑制された(表4)。図2に睡眠中の動脈血酸素飽和度の推移を示した。グリシン錠服用により、SpO2降下が顕著に抑制され、その結果、動脈血酸素飽和度の最低値も表4に示すように上昇した。グリシン服用、非服用時のいびきの発生を比較するため、同時に気管音をモニターし、典型例を図3に示した。グリシン錠服用時の気管音は、非服用時の対照群に比較して、抑制される傾向にあった。グリシン錠服用によるSpO2降下の緩和は、グリシンが睡眠時無呼吸を抑制した結果と考えられ、また、この効果はグリシンのいびき発生の抑制とも関連する効果と考えられる。
Figure 2006191933
いびきは、本人だけでなく周囲の睡眠を妨げ、日中の倦怠感や集中力の欠如、時には重大事故の原因ともなり得る。睡眠時無呼吸による動脈血酸素飽和度の低下も覚醒刺激となり病的な睡眠障害をもたらす。さらには、この動脈血酸素飽和度の低下が循環器系疾患等の一因にもなると言われている。本実施例は、グリシンがいびきの発生を抑え、睡眠時無呼吸を緩和すること、さらには睡眠中の動脈血酸素飽和度の降下を顕著に抑制することを明らかにした。グリシンのこれらの効果は、良質な睡眠をもたらし、結果として日中倦怠感の予防と活力増進、集中力の欠如や居眠りによる重大事故発生リスクの低減、さらには睡眠時無呼吸による様々な疾病発生の予防に有効である。また、グリシンの作用は、睡眠中の気道狭窄の抑制と考えられることから、喘息などの疾患に起因する睡眠中の動脈血酸素飽和度の低下の抑制にも有効に使用できる。
実施例2
グリシンの睡眠時の呼吸障害に対する効果を確認するために二重盲検法クロスオーバーテストを、下記のAHI(1時間あたりの無呼吸低呼吸指数)が5を超える睡眠時無呼吸症を有する男性成人10例を対象として実施した。グリシンは就寝1時間前に3 gを服用し、プラセボには味の区別がつかない程度に調整した還元麦芽糖を用いた。
(低呼吸無呼吸の評価)
睡眠中の脳波、筋電図、動脈血酸素飽和度などの睡眠ポリグラフデータを米国レスピロニクス社製のAliceシステムを用いて測定した。口鼻部のエアーフローを測定し、50%以下に低下した状態が60%以上に回復するまでに10秒以上持続した場合を低呼吸と定義した。また低呼吸に付随して動脈血酸素飽和度が3%以上低下した場合を無呼吸とした。1時間あたりの無呼吸数と低呼吸数を合計したものを無呼吸低呼吸指数(AHI)と称し、睡眠時呼吸障害の重症度の指標として用いた。
グリシンあるいはプラセボ服用後の睡眠中における呼吸状態を上記の睡眠ポリグラフ検査により測定したところ、グリシン服用後のAHIの平均値は、レム睡眠期とノンレム睡眠期との全期間(Total)、レム睡眠期(REM)、ノンレム睡眠期(NREM)のいずれの場合も、プラセボ服用後のAHIの平均値に対して低値を示した。即ち、図4左グラフに示すように、グリシン服用後のAHIの平均値vs.プラセボ服用後のAHIの平均値は、それぞれ、レム睡眠期とノンレム睡眠期との全期間(Total) ; 13.4 vs. 15.0, レム睡眠期(REM); 26.8 vs. 33.5, ノンレム睡眠期(NREM); 10.8 vs. 11.3であった。以上の結果より、グリシン服用が睡眠時の呼吸障害を改善したことは明らかである。
また、図4右グラフに示すように、プラセボ服用後では睡眠初期(3時間)に低呼吸無呼吸がとくに多く観察されたが、グリシン服用により睡眠初期の呼吸障害が改善された。
特に40歳以上の被験者(6例)においては、全睡眠期間においても、グリシン服用により顕著な呼吸障害の改善効果が認められた。即ち、図5左グラフに示すように、グリシン服用後のAHI の平均値vs.プラセボ服用後のAHIの平均値は、11.5 vs. 17.2 (p=0.062)であった。なかでも、40歳以上でかつ肥満指数BMIが28を超える被験者(4例)においては、グリシン服用により有意な呼吸障害の改善効果が認められた。即ち、図5右グラフに示すように、グリシン服用後のAHIの平均値 vs.プラセボ服用後のAHIの平均値は、10.6 vs. 18.9 (p=0.046)であった。検定方法は、t検定(対応有)であり、p値が0.05未満を有意とした。
以上の結果から、グリシンは、全睡眠期間における呼吸障害の改善に効果があり、特に睡眠初期において効果が大きいという特徴を有することが示された。また、グリシンは40歳以上、なかでも40歳以上でかつ肥満(BMI>28)の者に対して、睡眠時の呼吸障害を顕著に改善する効果があることが示された。
一般に睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に分けられ、低呼吸・無呼吸状態の出現は、睡眠の状態、すなわち、レム睡眠とノンレム睡眠でその頻度が変化する場合があると言われている。レム睡眠とは、睡眠中に激しく眼球が動いている状態である。レム睡眠、ノンレム睡眠には、各々健康維持のために重要な役割があることが知られている。
本実施例2の結果(図4)から明らかなように、全睡眠期間、睡眠初期(3時間)のいずれにおいても、グリシン服用によりレム睡眠期、ノンレム睡眠期の両方の期間において呼吸障害の改善が認められた。
本発明の予防・治療剤は、いびきを有効に防止し、睡眠時無呼吸を顕著に抑制するため、いわゆる睡眠時無呼吸症候群の予防及び/又は治療に、また、喘息等の他の疾患に起因する呼吸障害の予防・治療に有用である。
本発明の予防・治療剤による低呼吸・無呼吸の改善によって良質な睡眠が得られ、睡眠障害に起因する睡眠時の日中傾眠、注意力散漫、記憶力低下、仕事の能率低下、事故、イライラ、短気、起床時の頭痛、気分の変調、性欲減退、幻覚及び難聴等、また睡眠障害に起因する夜間の異常行動を防止し、さらにはこれらの睡眠障害に起因する各種症状による社会的不適応や不安・鬱状態を防止することができる。
すなわち、結果として日中倦怠感の予防と活力増進、集中力の欠如や居眠りによる重大事故発生リスクを低減し、さらには睡眠時無呼吸によって誘発される、脳血管障害、高血圧、虚血性心疾患、不整脈、突然死等の様々な疾病の誘発を防止することができる。
本発明の予防・治療剤における有効成分であるグリシン等及びグリシン受容体アゴニストは安全性の確立した物質であることから、本発明の予防・治療剤は安全性が高く、したがって、医薬用途に限らず、食品、飼料への利用が可能である。
図1は、典型的無呼吸の観察された6分間の口鼻呼吸パターン(上段)及び同時に測定した動脈血酸素飽和度(SpO2、%飽和)の推移(下段)を示す図である。口鼻部に装着した温度センサーの呼気による温度上昇と吸気による温度低下を口鼻呼吸パターンとして示す。シャドーは、無呼吸(上段)及びSpO2降下(下段)を表す。無呼吸の発生後にSpO2降下が観察される。 図2は、グリシン錠を服用した場合の入眠から起床までの動脈血酸素飽和度(SpO2、%飽和)の推移(下段)及び服用しない対照におけるSpO2推移(上段)を示す図である。バーは80分間を表す。 図3は、グリシン錠を服用した場合の気管音(いびき音)の典型例(下段)及び服用しない対照における気管音(上段)を示す図である。振幅は気管音の大小を表す。バーは5分間を表す。 図4は、実施例2においてグリシン服用後およびプラセボ服用後の睡眠中のAHIを測定した結果を示すグラフである。図4左グラフは、全睡眠期間の、レム睡眠期とノンレム睡眠期との全期間(Total)、レム睡眠期(REM)、ノンレム睡眠期(NREM)における、グリシン服用後のAHIの平均値(黒棒グラフ)およびプラセボ服用後のAHIの平均値(白抜き棒グラフ)を示す。図4右グラフは、睡眠初期(3時間)の、Total、REM、NREMにおける、グリシン服用後のAHIの平均値(黒棒グラフ)およびプラセボ服用後のAHIの平均値(白抜き棒グラフ)を示す。 図5は、実施例2におけるグリシン服用後およびプラセボ服用後の睡眠中のAHIを測定した結果を示すグラフであって、図5左グラフは、40歳以上の被験者における、グリシン服用後のAHIの平均値(黒棒グラフ)およびプラセボ服用後のAHIの平均値(白抜き棒グラフ)を示し、図5右グラフは、40歳以上でかつ肥満指数BMIが28を超える被験者における、グリシン服用後のAHIの平均値(黒棒グラフ)およびプラセボ服用後のAHIの平均値(白抜き棒グラフ)を示す。図中、*は有意を示す。

Claims (18)

  1. グリシンを含有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和作用を有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のために用いるものである旨の表示を付した食品。
  2. 摂取量が、グリシンの遊離体換算で6〜625mg/kg/dayである請求項1に記載の食品。
  3. 食品が飲料の形態である、請求項1又は2に記載の食品。
  4. 食品がサプリメントである、請求項1又は2に記載の食品。
  5. 食品が保健機能食品である、請求項1又は2に記載の食品。
  6. グリシンを含有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和作用を有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のために用いるものである旨の表示を付した飼料。
  7. 摂取量が、グリシンの遊離体換算で6〜625mg/kg/dayである請求項6に記載の飼料。
  8. グリシンを含有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和作用を有し、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のために用いるものである旨の表示を付した飼料を摂取させることを含むいびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和方法。
  9. 摂取量が、グリシンの遊離体換算で6〜625mg/kg/dayである請求項8に記載の方法。
  10. いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のために用いるものである旨の表示を付した食品の製造のためのグリシンの使用。
  11. 摂取量が、グリシンの遊離体換算で6〜625mg/kg/dayである請求項10に記載の使用。
  12. 食品が飲料の形態である、請求項10又は11に記載の使用。
  13. 食品がサプリメントである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
  14. 食品が保健機能食品である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
  15. いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のために用いるものである旨の表示を付した飼料の製造のためのグリシンの使用。
  16. 摂取量が、グリシンの遊離体換算で6〜625mg/kg/dayである請求項15に記載の使用。
  17. グリシンを含有する食品を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のための使用に関する事項を記載した記載物とともに包装したパッケージ。
  18. グリシンを含有する飼料を、いびき又は睡眠時の呼吸障害の予防・緩和のための使用に関する事項を記載した記載物とともに包装したパッケージ。
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