JP2006191864A - 菌根菌の効果発現促進資材及びそれを用いた植物の栽培方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 菌根菌の有する共生植物の生長促進、耐病性向上等の効果発現を促進することができ、かつ安全な資材を提供する。
【解決手段】 有機酸、キトサン、及び微量要素、さらには糖類を含有する菌根菌の効果発現促進組成物;及びそれを用いた植物の栽培方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、菌根菌の有する、共生する植物の生長促進や耐病性向上効果を高める菌根菌の効果発現促進組成物及びそれを用いた植物の栽培方法に関する。
食の安全・安心に対する消費者ニーズが高まるなか、農業の生産現場でも減農薬・減化学肥料による栽培が進みつつある。減農薬・減化学肥料を補完するための技術として、より安全で持続型農業に寄与する生物農薬や土造りとからめた有用微生物の活性化・活用が進められている。
このような技術の一つに、自然界に広く存在する菌根菌に代表される共生菌根菌を用いた土壌改良及び栽培技術があり、菌根菌を植物に感染させ、共生させることにより、共生する植物の生長促進や耐病性向上が図れることが知られている(例えば、非特許文献1、2を参照)。
しかし、微生物の特性として、各種の条件下で菌根菌の効果を十分に発揮させることができるとは限らず、菌根菌の能力をより一層効果的に発揮させることができ、かつ安全な資材の開発が待たれるところである。
菌根菌を植物と共生させるとき、土壌環境により、植物への感染効率が影響されることが知られており(例えば、非特許文献3を参照)、菌根菌の効果が十分発揮されない場合もある。
このような問題に対し、菌根菌の感染を効果的に促進したり、菌根菌の増殖を促進したりする薬剤又は方法として下記のものが知られている。
非特許文献4には、有機酸(オキザロ酢酸、酢酸、ピルビン酸、クエン酸、酒石酸)を施用することによる菌の増殖促進方法が開示されている。
特許文献1には、サポニン、ケイ酸カルシウム、フェニルプロパノイド、草炭、クエン酸を菌根菌と共に施用する植物の栽培方法が開示されている。
特許文献2には、殺菌剤等の薬剤(キャプタン等の殺菌剤、1,3−ジクロロプロペン等の殺線虫剤)を施用することによる菌根菌の増殖促進方法が開示されている。
特許文献4には、イソフラボノイド化合物を施用することによる菌根菌の増殖促進方法が開示されている。
非特許文献5には、フラボノイド化合物を施用することによる菌根菌の増殖促進方法が開示されている。
特許文献4には、高分子物質(キトサン、カラギーナン、寒天、ポリビニルアセテート(PVA)等)で菌根菌を植物根に固定することによる菌根菌の感染促進方法が開示されている。
上記のように種々の薬剤に菌根菌の増殖や感染を促進することが知られているものの、農業の現場に十分貢献するためには、もっと高い菌根菌の能力を引き出すことができる薬剤が求められている。
(例えば、特許文献2参照。)。
特開平8−23963号公報 特開平5−244933号公報 特開平4−504209号公報 特開平3−83529号公報 「農業及び園芸」、第62巻、第8号、930〜937頁、1987年 「植物防疫」、第42巻、第5号、259〜266頁、1988年 「日本土壌肥料学会誌」、第58巻、第5号、561〜565頁、1987年 Mosse, B Trans Br Mycol Soc., 42(3)、273〜286頁、1959年 Kape, R. J., Plant Phyrol., 141(1)、54〜60頁、1993年
本発明は上述の要請に鑑みなされたものであり、菌根菌の有する共生植物の生長促進、耐病性向上等の効果発現を促進することができ、かつ安全な資材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を行い、有機酸、キトサン、微量要素、さらに必要に応じて糖類を含有する組成物に、菌根菌の能力発現に高い促進効果があることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の菌根菌の効果発現促進組成物及びそれを用いた植物の栽培方法を提供する。
[1]有機酸、キトサン、及び微量要素を有効成分として水に溶解した菌根菌の効果発現促進組成物。
[2]さらに糖類を含有する上記[1]に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[3]前記有機酸が、同一分子内に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸である上記[1]又は[2]に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[4]前記有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、及びマレイン酸からなる群から選択される1種又は2種以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[5]前記有機酸を、総量で5〜50重量%含有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[6]前記キトサンを、0.01〜5重量%含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[7]前記微量要素が、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマグネシウム、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマンガン、及び水溶性若しくはクエン酸溶解性のホウ素からなる群から選択される1種又は2種以上である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[8]前記微量要素を、マンガン、ホウ素及びマグネシウム換算で総量で0.1〜5重量%含有する上記[1]〜[7]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[9]前記糖類が、糖蜜、廃糖蜜、砂糖、及び各種澱粉の加水分解で生成したオリゴ糖からなる群から選択される1種又は2種以上である上記[2]〜[8]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[10]前記糖類を、総量で1〜50重量%含有する上記[2]〜[9]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
[11]菌根菌と、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物とを用いた植物の栽培方法。
[12]上記[1]〜[10]のいずれかに記載の菌根菌の効果発現促進組成物を、水で100〜2000倍に希釈して植物に施用する上記[11]に記載の植物の栽培方法。
本発明の菌根菌の効果発現促進組成物によれば、菌根菌の有する共生植物の生長促進及び耐病性向上効果を十分に発揮させることができる。
本発明の菌根菌の効果発現促進組成物によれば、菌根菌の共生植物への感染効率を高めることができる。
本発明の菌根菌の効果発現促進組成物によれば、目的植物(菌根菌が共生する植物)の生長が促進され、かつ耐病性が向上するため、目的植物の生産効率を高めることができる。
本発明の菌根菌の効果発現促進組成物は人畜への安全性が高く、目的作物(菌根菌が共生する植物)も人畜にとって安全なものとなる。
以下、本発明の菌根菌の効果発現促進組成物を具体的に説明する。
本発明の菌根菌の効果発現促進組成物(以下、「本発明の組成物」という)は、有機酸、キトサン、及び微量要素、並びに必要に応じて糖類を含有することを特徴とする。
以下、各成分について詳述する。
(1)有機酸
本発明の組成物に用いる有機酸には、菌根菌の増殖を促進したり、キレート作用を有して土壌中のミネラルや養分を菌根菌が吸収し目的植物へ供給し易くするものが好ましく、例えば、同一分子内に2個以上のカルボキシル基を有する、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、ケトグルタール酸、酒石酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。
本発明の組成物に用いる有機酸は、1種のみでもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物において、有機酸は、総量で5〜50重量%の範囲内で含有され、好ましくは総量で10〜40重量%、より好ましくは総量で15〜30重量%の範囲内である。
(2)キトサン
本発明の組成物に用いるキトサンは、如何なる起源、種類のものであってもよいが、低分子量の水溶性又はクエン酸溶解性であることが好ましい。
本発明の組成物に用いるキトサンは、単一の特性を有するものを用いてもよいし、異なる特性を有する2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物において、キトサンは、総量で0.01〜5重量%の範囲内で含有され、好ましくは総量で0.05〜3重量%の範囲内である。
(3)微量要素
本発明の組成物に用いる微量要素としては、菌根菌の生育促進、耐病性向上及び共生植物への感染効率向上に役立つ成分又は菌根菌により共生植物へ供給される成分であれば、如何なる種類の成分でも含まれ得るが、好ましくは、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマグネシウム、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマンガン、水溶性若しくはクエン酸溶解性のホウ素が挙げられる。
水溶性マグネシウム若しくはクエン酸溶解性マグネシウムとしては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、なかでも硫酸マグネシウムが好ましい。
水溶性若しくはクエン酸溶解性マンガンとしては、硫酸マンガン、鉱さいマンガン等が挙げられ、なかでも硫酸マンガンが好ましい。
水溶性若しくはクエン酸溶解性ホウ素としては、ホウ砂、ホウ酸カルシウム等が挙げられ、なかでもホウ砂が好ましい。
本発明の組成物に用いる微量要素は、1種のみでもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物において、微量要素は、好ましくは、マンガン(Mn)、ホウ素(B)及びマグネシウム(Mg)換算での総量で0.1〜5重量%の範囲内で含有され、好ましくは同上換算総量で0.15〜3重量%の範囲内である。
(4)糖類
本発明の組成物で用いる糖類としては、菌根菌はじめ土壌微生物の活性化に役立つ糖類であれば、如何なる種類の糖類でも含まれ得るが、例えば、糖蜜、廃糖蜜、砂糖、各種澱粉の加水分解で生成したオリゴ糖等が挙げられる。
(5)その他の任意添加成分
本発明の組成物には、本発明の組成物の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を必要に応じて添加することができる。このような任意添加成分としては、農薬や肥料製剤に通常用いられる添加剤、例えば、植物の肥料成分や保存安定剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤を用いて、本発明の組成物を液剤として使用することができる。
肥料成分としては、水溶性の有機又は無機の窒素、リン酸、カリ等が挙げられる。
保存安定剤としては、特に食品添加物、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
界面活性剤としては、同様に食品添加物、例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセライド、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。保存安定剤や界面活性剤に食品添加物を用いることで、安全性を担保することができる。
本発明の組成物は、菌根菌の生長や目的植物への菌根菌の感染効率を向上させたり、さらには菌根菌が目的植物へ供給する養分やミネラル等を吸収し易くさせるため、より高い効率で菌根菌の有する効果を引き出すことができる。
本発明の組成物を目的植物に施用する際には、本発明の組成物を、水で100〜2000倍に希釈して用いることが好ましく、300〜1000倍に希釈して用いることがより好ましい。
本発明の組成物の施用量としては、上記希釈液を、100〜2000L/10aの範囲内で散布するのが好ましく、300〜1000L/10aの範囲内とするのがより好ましい。
本発明の組成物の施用方法は、目的植物の種類、栽培方法等によって適宜選択すべきであるが、例えば、植物が生育する土壌に直接又は葉面上から散布したり、植物を栽培するための土壌に混合したりすることができるが、植物が生育する土壌に直接散布するのが好ましい。
本発明の組成物の施用タイミング及び施用頻度(散布等の場合)は、目的植物の種類、栽培方法、気候等に基づいて適宜決定すべきであるが、例えば、目的植物を定植する前に土壌へ混和したり、植物の定植後作付け期間中1週間から3週間間隔で散布することができる。
以下、本発明を、実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
クエン酸20g、キトサン1g、硫酸マグネシウム5g、硫酸マンガン1g、ホウ砂0.3gを、72.7gの水に溶解し、組成物1を得た。
実施例2〜4及び比較例1
各成分の濃度を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様にして組成物2〜4及び比較組成物1を得た。
得られた組成物1〜4及び比較組成物1の各成分の組成(重量%)を下記表1に示す。
Figure 2006191864
試験例
上記実施例1〜4及び比較例1で得られた組成物1〜4及び比較組成物1を用いて、植物の栽培実験を実施した。
スチーム殺菌及び石灰にてpH6.5に調整した黒墨土壌に化学肥料(窒素:リン:カリウム=10:10:10)を、50mg/100g土壌になるよう混合し、20×60cmのプランターに充填した。プランター当たり5カ所に植え穴を開け、菌根菌胞子含有資材(商品名:Drキンコン;出光興産(株)製)を、各植え穴に2g入れ、ネギのプラグ苗を移植した。
移植後、温室内で栽培し、組成物1〜4及び比較組成物1を、水で500倍に希釈した液を、500L/10a相当量で、移植後1週間目から1週間間隔に4回散布した。
移植後2ヶ月目に、ネギの茎葉部重(g)、根部重(g)及び茎数を測定した。無処理(菌根菌、組成物とも施用せず)のネギ個体の茎葉部重(g)、根部重(g)及び茎数のそれぞれを100%として評価した。尚、評価は、各区3連、計15個体の平均値で表示した。結果を下記表2に示す。
Figure 2006191864
表2の結果から、組成物1〜4及び比較組成物1のみの施用では、無処理に比べ植物の生長促進効果はわずかであり、菌根菌のみを施用した場合よりも植物の生長促進効果は低いが、組成物1〜4と菌根菌とを組み合わせて施用した場合には、植物の生長促進効果は大きく、組成物又は菌根菌単独の効果の和より高い相乗的効果が得られることがわかる。
なお、比較組成物1と菌根菌とを組み合わせて施用した場合では、菌根菌のみを施用した場合と同等程度の植物の生長促進効果しか得られないことがわかる。
従って、本発明の組成物を、菌根菌が自生(存在)する土壌に用いることにより、菌根菌の有する共生植物の生長促進効果を十分に引き出すことができることがわかる。
本発明の組成物を用いれば、菌根菌の有する、共生植物の生長促進効果及び耐病性向上効果を十分に引き出すことができ、農業の現場に十分貢献することができる。
本発明の組成物は安全性が高く、持続型農業に寄与でき、減農薬・減化学肥料栽培に活用できる(貢献できる)資材として有用である。

Claims (12)

  1. 有機酸、キトサン、及び微量要素を有効成分として水に溶解した菌根菌の効果発現促進組成物。
  2. さらに糖類を含有する請求項1に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  3. 前記有機酸が、同一分子内に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸である請求項1又は2に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  4. 前記有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、及びマレイン酸からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  5. 前記有機酸を、総量で5〜50重量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  6. 前記キトサンを、0.01〜5重量%含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  7. 前記微量要素が、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマグネシウム、水溶性若しくはクエン酸溶解性のマンガン、及び水溶性若しくはクエン酸溶解性のホウ素からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  8. 前記微量要素を、マンガン、ホウ素及びマグネシウム換算で総量で0.1〜5重量%含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  9. 前記糖類が、糖蜜、廃糖蜜、砂糖、及び各種澱粉の加水分解で生成したオリゴ糖からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項2〜8のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  10. 前記糖類を、総量で1〜50重量%含有する請求項2〜9のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物。
  11. 菌根菌と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物とを用いた植物の栽培方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の菌根菌の効果発現促進組成物を、水で100〜2000倍に希釈して植物に施用する請求項11に記載の植物の栽培方法。
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