JP2006183586A - エジェクタおよび冷凍システム - Google Patents

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繁則 松本
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Abstract

【課題】 エジェクタ効率を向上するとともに、装置の小型化が可能なエジェクタ、およびこれを用いた冷凍システムを提供する。
【解決手段】 一次流体の噴流によって二次流体の吸引および/または昇圧を行うエジェクタにおいて、エジェクタ本体1内に複数段のエジェクタ部10A、10Bを設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、真空生成、圧縮、昇圧などに利用されるエジェクタ、およびこれを用いた冷凍システムに関する。
従来の一般的なエジェクタは、一つのノズルと一つの混合部と一つのディフューザを備え、そのノズルから一次流体を高速度で噴射させることによって低圧の二次流体を吸引し、混合部で一次流体と二次流体を混合させた後、その混合流体をディフューザによって昇圧し流出させる構造となっている。この場合において、ノズルからの一次流体噴流が超音速状態となる超音速エジェクタでは、ディフューザによる圧力回復時に強い衝撃波(垂直衝撃波に近い衝撃波)が形成される。この強い衝撃波はエントロピ生成量を増大させ、有効エネルギーの損失を招く。その結果、従来の超音速エジェクタは効率が非常に低いものであった。
また、従来より提案されているエジェクタの効率向上手段の大部分は、一次流体と二次流体の混合を促進するものである。例えば、特許文献1では、ノズルより噴出する一次流体を混合部内で拡散させる拡散手段を設けることにより一次流体と二次流体の混合の均一化を促進させている。具体的には、拡散手段としてスワラーやニードル弁をノズルに対向させて配設し、ノズルからの一次流体を例えばニードル弁の先端部の円錐面に衝突させることにより、一次流体の流れに大きな乱れを生じさせて拡散混合を行う技術である。
しかしながら、一次流体流に大きな乱れを生じさせることは、一次流体と二次流体の混合を促進するには効果はあるものの、反面流れの乱れによるエントロピ生成量の増大を伴うため、エジェクタの効率向上の効果は限定的なものとなる。
一方、ノズルを複数設けることにより一次流体と二次流体の接触面積を増大させて一次流体と二次流体の拡散混合を促進させるエジェクタも開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかし、いずれも二次流体の昇圧比(エジェクタ出口の圧力/二次流体の圧力)はノズルを複数設けても一つのノズルの場合と同じであるため、混合部で強い衝撃波(垂直衝撃波に近い衝撃波)が形成されることに変わりはなく、接触面積の増大によるエジェクタの効率向上の効果は限定的なものになる。
これに対し、従来より多段式のエジェクタが知られている。これは、一組のノズルとディフューザで構成されるエジェクタの出口が、次段の一組のノズルとディフューザで構成されるエジェクタの二次流体導入管に接続されて多段のエジェクタを構成するものである。これによって二次流体の昇圧比を大きくできるといった高性能化が図られるが、エジェクタが直列に連なるため、装置が大型化する問題がある。
特開平6−2964号公報 特開平7−167100号公報 特開平11−148733号公報
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エジェクタ効率を向上するとともに、装置の小型化が可能なエジェクタ、およびこれを用いた冷凍システムを提供することを目的としている。
本発明に係るエジェクタは、一次流体の噴流によって二次流体の吸引および/または昇圧を行うエジェクタにおいて、エジェクタ本体内に複数段のエジェクタ部を有することを特徴とする。
本発明のエジェクタは、エジェクタ本体内に複数段のエジェクタ部を有するものとしたので、各段のエジェクタ部における一次流体とその一次流体の噴流によって吸引される二次流体の混合流体とエジェクタ出口の圧力比を小さくすることが可能となり、それによって各段の混合部における衝撃波を弱くすることができるため、エントロピの生成が抑制され、エジェクタの効率を向上させることができる。
また、一つのエジェクタ本体内に複数段のエジェクタ部を設けたものであるので、装置の小型化が可能である。
また、一次流体の噴流を形成する複数のノズルを前記エジェクタ本体の半径方向と軸方向の両方向にずらして配置することにより、前記複数段のエジェクタ部をコンパクトに構成することができる。
この場合において、前段のノズルは後段のノズルの外周上に配置されていることが好ましく、一次流体と二次流体の混合部を多段に構成することができる。
また、前段のノズルにおける膨張比が後段のノズルにおける膨張比よりも大きくなるように各段のノズルの断面形状を形成するとよい。
このように構成することによって、一次流体噴流は完全膨張に近くなるため、後段あるいは最終段のノズルからの一次流体噴流によって吸引される二次流体(前段ノズルからの一次流体との混合流体を含む)との混合の際に発生する衝撃波を弱めることができ、エントロピ生成を抑制することができる。
本発明のエジェクタは、上述した構成により各段の混合部における垂直衝撃波を弱めることが可能であるが、さらに、少なくとも最終段のノズルに対向して斜め衝撃波生成体を設けることにより、最終段の混合部において斜め衝撃波を発生させることで、更なるエントロピ生成を抑制することができ、エジェクタの効率を向上させることができる。
また、最終段のノズルに対向して、自由回転する羽根付きの円錐体からなる回転体を設けることにしてもよい。
この構成によると、最終段ノズルからの一次流体噴流が羽根付き回転体に衝突して該回転体が回転することにより、その一次流体噴流にらせん流を発生させることができる。そのため、一次流体噴流によって吸引される前段エジェクタ部からの混合流体の塊が、この一次流体らせん流の狭間に保持されて流動し、その間に両流体が混合していくため、運動エネルギーから圧力エネルギーへの変換が効率よく行われることになる。よって、エントロピの生成を抑制することができ、エジェクタの効率を向上させることができる。
本発明の冷凍システムは、上述した本発明のエジェクタを用いて冷凍サイクルを構成するものである。
本発明のエジェクタは、上述のようにエントロピの生成が抑制され、エジェクタの効率が向上するため、このエジェクタを用いて冷凍サイクルを構成することにより、一次流体に対する二次流体の流量比(=[二次流体流量]/[一次流体流量])が増大し、冷凍機としての効率(COP)が向上する。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1におけるエジェクタの概要を示す構成図、図2、図3は図1のA−A(第1段ノズルののど部位置における)断面図およびB−B(第1段混合部位置における)断面図である。
図1に示すエジェクタ10は、エジェクタ本体1内に複数段のエジェクタ部10A、10Bを設けたものである。ここでは、エジェクタ部は2段式で構成されているが、構成段数は2段に限定されるものではない。
前段の第1段エジェクタ部10Aは、一次流体の噴流を形成する第1段ノズル2と、一次流体の噴流により吸引される二次流体の第1段導入部3と、一次流体と二次流体を混合する第1段混合部4と、第1段混合流体の圧力を昇圧する第1段ディフューザ部5とから構成されている。
後段の第2段エジェクタ部10Bは、一次流体の噴流を形成する第2段ノズル6と、一次流体の噴流により吸引される第1段混合流体の第2段導入部7と、一次流体と第1段混合流体を混合する第2段混合部8と、第2段混合流体の圧力を昇圧する第2段ディフューザ部9とから構成されている。
なお、上述の一次流体および二次流体はいずれも空気や冷媒ガス等の気体、または蒸気等の気液二相状態の流体である。
このように、エジェクタ本体1内には、一次流体の噴流を形成する複数のノズル2、6が設けられており、前段の第1段ノズル2は、後段の第2段ノズル6の外周上に環状の噴出口をもつ流路形状(ノズル断面形状)により形成されている。
第2段ノズル6は、筒状の流路を有し、エジェクタ本体1内にほぼ同心状に配置され(第1段ノズル2も同心状に配置される)、かつ第1段ノズル2に対して下流側に配置されている。すなわち、第1段ノズル2と第2段ノズル6は、エジェクタ本体1の半径方向と軸方向の両方向にずらして配置されている。これにより、複数段のエジェクタ部をコンパクトに構成することができる。
次に、上記のように構成されたエジェクタの動作について説明する。
第1段エジェクタ部10Aの第1段ノズル2は、第2段ノズル6の外周面との間で形成される環状の流路形状をしており、この環状の第1段ノズル2内で一次流体を超音速にまで減圧膨張させる。二次流体は、第1段ノズル2の外周面との間で形成される環状の流路形状を有する第1段導入部3より第1段ノズル2からの一次流体の噴流によって吸引され、第1段混合部4で一次流体と二次流体を混合し、さらに第1段混合部4と第1段ディフューザ部5で第1段混合流体の圧力を適切な昇圧比にまで昇圧する。
この第1段ディフューザ部5と第2段導入部7は接続されており、第1段エジェクタ部10Aからの第1段混合流体は第2段エジェクタ部10Bの二次流体として、第2段ノズル6からの一次流体の噴流により吸引される。ついで、平行な流路形状からなる第2段混合部8でこれらの流体が混合し、第2段混合部8と第2段ディフューザ部9でこの第2段混合流体の圧力を適切な昇圧比にまで昇圧する。そして、エジェクタ本体1から排出される第2段混合昇圧流体は、他のプロセスや凝縮器、あるいは大気などへ接続されている。
このように、本実施形態のエジェクタ10は、一つのエジェクタ本体1内に流体の流れ方向に複数段のエジェクタ部10A、10Bを備える構成としたので、複数段の混合部4、8により流体の昇圧比(圧力比)を分配することが可能となり、そのため各段の混合部4、8において衝撃波を弱めることが可能となる。したがって、エントロピの生成が抑制されるためエジェクタの効率が向上する。
さらに、エジェクタ本体1は複数段のノズル2、6を内包するため、従来の直列式の多段式エジェクタと比べて装置の小型化が可能である。
また、各段における一次流体噴流がノズル出口で衝撃波を形成しないために、各段のノズル2、6は完全膨張に近くなるよう断面形状が形成されている。したがって、第1段ノズル2における膨張比は第2段ノズル6における膨張比よりも大きくなるように各段のノズル2、6の断面形状が形成されている。
図4は、本実施形態のエジェクタの性能と従来のエジェクタの性能を数値解析で求めた結果を示すものである。ここで、従来のエジェクタとは、先に述べたように一つのノズルと一つの混合部と一つのディフューザを備えたものである。つまり、エジェクタ本体内に一つのノズルを設けたもので、図1の第2段エジェクタ部のみを有するものである。以下、図4のエジェクタの性能曲線を求めるにあたっての各種の条件について述べる。
本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタに使用する一次流体と二次流体の流体の種類は同一で、それらの温度、圧力の条件も同一である。設計点はいずれのエジェクタもエジェクタ出口と二次流体の圧力比(Pout/Ps)をある値で同一とした。また、本実施形態のエジェクタのノズルのど部の総断面積(第1段ノズルのど部断面積+第2段ノズルのど部断面積)は従来のエジェクタのノズルのど部断面積と同一である。したがって、本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタの一次流体の質量流量(蒸気消費量)は同一となる。さらに、本実施形態のエジェクタの第1段ノズルと第2段ノズルののど部断面積比を1:2に設定した。ただし、この断面積比はこの比率に限定されるものではない。また、本実施形態のエジェクタの第1段混合部および第2段混合部はいずれも平行な等断面積の流路形状とし、また従来のエジェクタの一次流体と二次流体の混合部も同様に平行な等断面積の流路形状とした。
上述した条件で本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタの最適設計を行った。図4は上述の条件で最適設計した本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタの性能を、エジェクタ出口と二次流体の圧力比でプロットしたものである。なお、同一運転条件においては、二次流体と一次流体の質量流量比(ms/mp)が大きいほどエジェクタの性能は高いことが知られている。
図4より、本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタのいずれも、エジェクタ出口圧力と二次流体の圧力の比Pout/Psが設計点よりも小さいときは、二次流体と一次流体の質量流量比が一定すなわち性能が一定となっており、逆に設計点よりPout/Psが大きくなると、質量流量比は急激に低下する(臨界点)。この特徴は一般的なエジェクタの性能特性として良く知られているものであり、エジェクタは性能を最大にするためにこの臨界点を設計点として設計されることが多い。この意味において、本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタの設計形状は概ね最適化されているといえる。
本実施形態のエジェクタと従来のエジェクタの性能を比較すると、本実施形態のエジェクタの性能は従来のエジェクタに比べて約15%高くなった。
本実施形態のエジェクタが高性能になったのは、以下の理由による。
一次流体と二次流体が混合する混合部で発生する強い衝撃波に基づくエントロピ生成を抑制するためには、それらの混合流体とエジェクタ出口の圧力比(昇圧比)を小さくして衝撃波を弱くすることが必要である。一次流体と二次流体の圧力、およびエジェクタ出口の圧力は通常運転(設計)条件で定められるので、上記圧力比を小さくするには、衝撃波上流での混合流体の圧力を高く(マッハ数を小さく)すればよい。その手段として、本実施形態のエジェクタはエジェクタ本体1内に複数段のエジェクタ部10A、10Bを備える構成としたものであり、この構成によるエジェクタ効率向上のメカニズムは、
(1)第1段ノズルからの一次流体の噴流で二次流体を吸引混合し、第2段ノズルで吸引する流体の圧力を高くする。この際、第1段エジェクタ部での圧力比(昇圧比)は、最終段エジェクタ部の出口と第1段エジェクタ部で吸引される二次流体の圧力比(昇圧比)より小さいため、第1段エジェクタ部の混合部の衝撃波も弱くなる、
(2)上記(1)により第2段ノズルでの一次流体の膨張を抑制でき、一次流体の第2段ノズル出口での圧力を高くする(マッハ数を小さくする)、
(3)上記(1)と(2)により第2段混合部と第2段ディフューザ部で混合される混合流体の衝撃波上流の圧力がさらに高くなる(マッハ数が小さくなる)、ということになる。
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2におけるエジェクタの概略構成図で、図6は図5のC−C断面図である。
上述の実施形態1では、第1段ノズル2を第2段ノズル6の外周上に環状の流路を有する構成としたが、本実施形態では個々に筒状の流路を有する構成としたものである。本実施形態の第1段ノズル2は、第2段ノズル6の周りにほぼ同心状に配置され、エジェクタ本体1の二次流体の導入壁11に第2段ノズル6とともに取り付けられている。二次流体は、エジェクタ本体1の外周部に設けられた導入口12より第1段ノズル2からの一次流体の噴流によって吸引導入される。なお、図5では導入口12はエジェクタ本体1の外周部の一側に設けられているが、両側に設けてもよい。その他の構成は実施形態1と同様であり、同様の作用効果が得られる。
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3におけるエジェクタの概略構成図である。
本実施形態では、第1段ノズル2および第2段ノズル6のそれぞれに対向して斜め衝撃波生成体13、14を設けたものである。すなわち、実施形態1のエジェクタに斜め衝撃波生成体13、14を付加したものである。ここで、斜め衝撃波生成体とは、ノズルから噴出する一次流体流に斜め衝撃波を発生させる機構である。また、流体の流れ方向に垂直な衝撃波を垂直衝撃波といい、それよりも傾いたものを斜め衝撃波という。また、衝撃波とは、密度がステップ的に変化する波面をいう。衝撃波の厚さはごく薄なので、一般的には不連続面として取り扱われる。衝撃波の傾き(衝撃波角)は小さければ小さいほど、エントロピ生成量も少なくてすむ。ただし、衝撃波角が小さければ、斜め衝撃波による圧力回復の効果も小さくなるため、衝撃波角は10゜〜60゜、より好ましくは30゜〜40゜の範囲とするのがよい。
第1段ノズル2に対向する斜め衝撃波生成体13は、第2段ノズル6の外周部に環状の隆起部を設けることにより形成されている。第2段ノズル6に対向する斜め衝撃波生成体14は、上流側の先端部が円錐形状をなし、下流側の後方部が円錐形状もしくは紡錘形状をしており、放射状に設けられたアーム部材(図示せず)を介してエジェクタ本体1内に固定されている。また、斜め衝撃波生成体14の第2段ノズル6に対する設置位置は特に限定されない。例えば、円錐部14aの先端位置が、図7に示すように第2段ノズル6の噴出口端面位置に一致していてもよいし、下流側へ離れていてもよく、また噴出口内部へ入り込んでいてもよい。
この斜め衝撃波生成体14により、第2段混合部8はエジェクタ本体1の内周面と斜め衝撃波生成体14の円錐面とこれに続く円柱面との間に漸次流路が縮小し、ついで平行な環状流路に続く流路形状に形成されている。そして、斜め衝撃波生成体14の後部の円錐部または紡錘部14bが第2段ディフューザ部9内に配置されて、漸次流路が拡大するラッパ形状の第2段ディフューザ部9に連続している。
本実施形態のエジェクタでは、第1段エジェクタ部10Aの第1段ノズル2より一次流体を超音速で噴出させると、その一次流体噴流は斜め衝撃波生成体13の傾斜面に衝突して斜め衝撃波を発生する。それと同時に第1段ノズル2からの一次流体噴流により二次流体を第1段導入部3から吸引する。斜め衝撃波は、第1段混合部のエジェクタ本体内周面もしくは亜音速である二次流体と斜め衝撃波生成体13の傾斜面との間で反射を繰り返す。すなわち、吸引された二次流体の流れが壁のように働き、その二次流体との接触面では斜め衝撃波は膨張波を生成し、さらに下流でこれらを繰り返しながら除々に減速していく。一方、一次流体はこのような斜め衝撃波を伴いながら第1段混合部4で二次流体と混合し、第1段混合流体の圧力を第1段混合部4と第1段ディフューザ部5で徐々に高めていく。なお、膨張波の部分は加速されるが、圧力は低くなり、かつエントロピの生成はない。
また、第2段エジェクタ部10Bにおいても、第2段ノズル6からの一次流体噴流が斜め衝撃波生成体14の傾斜面(円錐面)に衝突して斜め衝撃波を発生するとともに、上述のように昇圧された第1段混合流体を吸引する。そして同様に、この斜め衝撃波は、第2段混合部内周面もしくは亜音速である第1段混合流体と斜め衝撃波生成体14の円錐面との間で反射を繰り返す。すなわち、吸引された第1段混合流体の流れが壁のように働き、その第1段混合流体との接触面では斜め衝撃波は膨張波を生成し、さらに下流でこれらを繰り返しながら除々に減速していく。一方、一次流体はこのような斜め衝撃波を伴いながら第2段混合部8で第1段混合流体と混合し、第2段混合流体の圧力を第2段混合部8と第2段ディフューザ部9で徐々に高めていく。なお、第2段混合部8においても膨張波の部分は加速されるが、圧力は低くなり、かつエントロピの生成はない。
斜め衝撃波は弱い衝撃波で一次流体の有効エネルギーの低下は僅かであるが、一方で斜め衝撃波通過後の一次流体の静圧は大きく上昇する。したがって、エジェクタ本体1と各斜め衝撃波生成体13、14間に形成される各段の混合部4、8において、流路の断面積が漸次縮小するように形成されているため、強い衝撃波(垂直衝撃波に近い衝撃波)の発生を抑制しつつ、一次流体と二次流体の混合流体は、斜め衝撃波によって効率よく圧力が上昇し、マッハ数1以下まで減速する。また、第2段ディフューザ部9では流路の断面積が漸次拡大するように形成されているため、圧力を徐々に回復し、その結果、有効エネルギーの損失は低減されエジェクタの効率が向上する。
さらに、本発明のエジェクタは、一次流体が斜め衝撃波生成体14の先端円錐部14aにより円錐状に分岐するために一次流体と二次流体間の接触面積が大きくなり、一次流体と第1段混合流体との混合が十分に行われる効果もある。また、斜め衝撃波生成体14は先端部が円錐形状でその下流側も円錐形あるいは紡錘形状となっており、一次流体の乱れを極力抑制している。そのため、一次流体と第1段混合流体の混合過程においても流れの乱れによるエントロピ生成量を抑制でき、よってエジェクタの効率が向上する。
斜め衝撃波生成体は、必ずしも各段のノズル2、ノズル6の全部に対向して設ける必要はないが、少なくとも最終段のノズル6には斜め衝撃波生成体14を設けることが好ましい。
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4におけるエジェクタの概略構成図で、図9は図8のD−D断面図である。
本実施形態では、第2段ノズル6に対向して、自由回転する羽根15付きの円錐体からなる回転体16を設けたものである。羽根15付きの回転体16は、エジェクタ本体1内に放射状のアーム部材(図示せず)を介して固定された紡錘状部材17の先端部に回転軸18により回転自在に支持されている。その他の構成は実施形態1と同様である。
本実施形態のエジェクタでは、第2段ノズル6からの一次流体噴流によって羽根15付き回転体16を自由回転させ、これにより一次流体のらせん流を発生させることができる。これにより、第2段ノズル6からの一次流体噴流によって吸引される第1段混合流体の塊が、一次流体のらせん流の狭間に保持されて流動し、その間にらせん流の一次流体と第1段混合流体とを第2段混合部8で混合させながら第2段ディフューザ部9で第2段混合流体の圧力を昇圧回復させる。
したがって、運動エネルギーから圧力エネルギーへの変換が効率よく行われるため、エントロピの生成が抑制され、エジェクタ効率が向上する効果がある。
実施の形態5.
図10は、一例として前述の実施形態1によるエジェクタを用いて冷凍サイクルを構成した実施形態を示す概念図である。
エジェクタ10は、前述のように、エジェクタ本体1内に複数段のエジェクタ部10A、10Bを有するものとして構成されている。第1段、第2段ノズル2、6は、一次流体供給配管21を介して一次流体加熱装置20に接続されている。一次流体加熱装置20には一次流体を加熱するための、例えば熱交換器22を備えている。また、蒸発器24が二次流体供給配管23を介してエジェクタ10の第1段導入部3に接続されている。エジェクタ10の流出側には流出配管25を介して凝縮器26が接続されている。凝縮器26に流入する一次流体と二次流体の混合気は凝縮器26に接続されている冷却水配管27により冷却され、凝縮する。凝縮した液は、配管28を流れ、ポンプ等の一次流体供給装置29により一次流体加熱装置20に戻されると同時に、二次流体戻り配管30、減圧弁31を介して蒸発器24に戻る。
蒸発器24内の二次流体がエジェクタ10により吸引される際に発生する二次流体の気化熱(蒸発潜熱)により温度低下、すなわち冷凍が発生し、蒸発器24に接続されている冷熱負荷32を冷却する。
このエジェクタ10を用いることにより、上述したようにエジェクタの効率が向上するため、一次流体に対する二次流体の流量比(=[二次流体流量]/[一次流体流量])が増大し、冷凍機としての効率(COP)が向上する。
なお、一次流体加熱装置20に接続されている熱交換器22の熱源としては、電力や燃料の燃焼によるもののほか、工場排熱や排ガス熱なども利用される。また、一次、二次流体の冷媒としては、水、フロン、アルコール、アンモニア、あるいはこれらの混合物などが利用される。
本発明の実施の形態1におけるエジェクタの概略構成図。 図1のA−A断面図。 図1のB−B断面図。 実施の形態1のエジェクタと従来のエジェクタの性能曲線図。 本発明の実施形態2におけるエジェクタの概略構成図。 図5のC−C断面図。 本発明の実施の形態3におけるエジェクタの概略構成図。 本発明の実施の形態4におけるエジェクタの概略構成図。 図8のD−D断面図。 本発明の冷凍システムの一例を示す概要図。
符号の説明
1 エジェクタ本体
2 第1段ノズル
3 第1段導入部
4 第1段混合部
5 第1段ディフューザ部
6 第2段ノズル
7 第2段導入部
8 第2段混合部
9 第2段ディフューザ部
10 エジェクタ
10A 第1段エジェクタ部
10B 第2段エジェクタ部
11 導入壁
12 導入口
13、14 斜め衝撃波生成体
15 羽根、
16 回転体
17 紡錘状部材
18 回転軸
20 一次流体加熱装置
21 一次流体供給配管
23 二次流体供給配管
24 蒸発器
26 流出配管
27 凝縮器

Claims (7)

  1. 一次流体の噴流によって二次流体の吸引および/または昇圧を行うエジェクタにおいて、エジェクタ本体内に複数段のエジェクタ部を有することを特徴とするエジェクタ。
  2. 一次流体の噴流を形成する複数のノズルが前記エジェクタ本体の半径方向と軸方向の両方向にずらして配置されていることを特徴とする請求項1記載のエジェクタ。
  3. 前段のノズルが後段のノズルの外周上に配置されていることを特徴とする請求項2記載のエジェクタ。
  4. 前段のノズルにおける膨張比が後段のノズルにおける膨張比よりも大きくなるように各段のノズルの断面形状が形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のエジェクタ。
  5. 少なくとも最終段のノズルに対向して斜め衝撃波生成体が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のエジェクタ。
  6. 最終段のノズルに対向して、自由回転する羽根付きの円錐体からなる回転体が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のエジェクタ。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のエジェクタを用いて冷凍サイクルを構成したことを特徴とする冷凍システム。
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