JP2006182873A - 摺動用樹脂組成物、摺動部材及び摺動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた低摩擦係数と耐摩耗性を併有する樹脂組成物、これを用いた摺動部材及び摺動装置を提供すること。
【解決手段】耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有し、該炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来する摺動用樹脂組成物。
摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備える摺動部材。
摺動部材を備え、該摺動部材が潤滑剤の存在下で摺動する摺動装置。
【選択図】なし
【解決手段】耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有し、該炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来する摺動用樹脂組成物。
摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備える摺動部材。
摺動部材を備え、該摺動部材が潤滑剤の存在下で摺動する摺動装置。
【選択図】なし
Description
本発明は、低摩擦係数と耐摩耗性を併有する摺動用樹脂組成物に係り、更に詳細には、潤滑油や作動油等の潤滑下で好適に使用される摺動用樹脂組成物、これを用いた摺動部材及び摺動装置に関する。
内燃機関においては、高回転、高圧縮比、軽量化及び燃費向上が、従来にも増して強く要求されており、これらを実現するためには、摺動部位においては摩擦を更に低減させること並びに耐摩耗性及び耐焼付き性を更に向上させることが必要となってきている。
また、摺動部位の摩擦低減化、耐摩耗性及び耐焼付き性の向上を実現させるために、例えば、従来より、ポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ等のバインダー及び二硫化モリブデン、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン等の固体潤滑剤を配合してなる潤滑塗料をコーティングする方法が採用されている。
具体的には、ポリアミドイミド及びポリイミドのうち少なくとも一方をバインダーとして50〜73wt%、これに固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを3〜15wt%、二硫化モリブデンを20〜30wt%、及びグラファイトを2〜8wt%の範囲で、合計27〜50wt%の固体潤滑剤を添加することを特徴とした摺動用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ポリアミドイミド樹脂と、エポキシシランおよびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の塗膜改質剤と、窒化珪素およびアルミナから選ばれる少なくとも1種の硬質粒子と、を有する乾性被膜潤滑剤よりなる被膜層が、母材の摺動面となる表面の少なくとも一部に形成されており、母材の摺動面となる表面の少なくとも一部が、表面粗さが十点平均粗さで8〜18μmRzとなるように条痕を有する摺動部材が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
一方で、米糠等の脱脂糠に熱硬化性樹脂を含浸させ、不活性ガス雰囲気下で焼成することによって得られる多孔質炭素材製品が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特許第3017626号明細書
特開2004−149622号公報
特許第3530329号明細書
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術にあっては、グラファイトを添加することによって、耐摩耗性を向上させているが、2〜8wt%の添加量では耐摩耗性の向上にも限度があり、摺動条件が10MPa以上の高面圧下では摺動用樹脂組成物の摩耗量が増大してしまうという問題があった。
一方で、上記範囲を超えて、グラファイトを必要以上に添加すると、摺動用樹脂組成物自体の強度が極端に低下するため、かえって摩耗量が増大してしまう。
一方で、上記範囲を超えて、グラファイトを必要以上に添加すると、摺動用樹脂組成物自体の強度が極端に低下するため、かえって摩耗量が増大してしまう。
また、上記特許文献1に記載の従来技術にあっては、摩擦低減効果は、ポリテトラフルオロエチレンの添加量に依存するが、潤滑油存在下ではポリテトラフルオロエチレンは摺動用樹脂組成物の濡れ性を悪化させてしまい、濡れ性確保の観点から添加可能量が制限されるため、更なる摩擦低減効果を得るのは困難な状況である。
更に、上記特許文献2に記載の従来技術にあっては、所定の効果を得るためには、表面粗さが十点平均粗さで8〜18μmRzとなる条痕加工を行なう必要があるが、条痕は機械加工によって形成しなければならないため、機械加工の追加に伴い高コストになるという問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた低摩擦係数と耐摩耗性を併有する摺動用樹脂組成物、これを用いた摺動部材及び摺動装置を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、耐熱性樹脂に、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料を含有量が3〜70%となるように添加することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の摺動用樹脂組成物は、耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有し、かかる炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来するものである。
また、本発明の摺動部材は、上記本発明の摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備えるものである。
具体的な一態様としては、例えばピストンスカート部に適用して成る自動車用ピストンなどを挙げることができる。
具体的な一態様としては、例えばピストンスカート部に適用して成る自動車用ピストンなどを挙げることができる。
更に、本発明の摺動装置は、上記本発明の摺動部材を備え、上記摺動部材が潤滑剤の存在下で摺動するものである。
本発明によれば、耐熱性樹脂に、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料を含有量が3〜70%となるように添加することなどとしたため、優れた低摩擦係数と耐摩耗性を併有する摺動用樹脂組成物、これを用いた摺動部材及び摺動装置を提供することができる。
以下、本発明の摺動用樹脂組成物について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の摺動用樹脂組成物は、耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有し、かかる炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来するものである。
このような構成とすることにより、従来よりも摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れたものとすることができる。
上述の如く、本発明の摺動用樹脂組成物は、耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有し、かかる炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来するものである。
このような構成とすることにより、従来よりも摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れたものとすることができる。
また、本発明は、耐熱性樹脂に所定の炭素原料(粉体)を添加することのみで、従来の固体潤滑材を3種類程度添加していた摺動用樹脂組成物以上の摩擦特性を得られることから、性能向上とコストダウンを同時に達成できるという利点がある。更に、摺動面に条痕加工を必要としないという利点もある。
なお、本発明の摺動用樹脂組成物は、添加するものとして炭素粉体だけに限定されるものではない。
なお、本発明の摺動用樹脂組成物は、添加するものとして炭素粉体だけに限定されるものではない。
本発明に用いる耐熱性樹脂は、使用環境に応じた耐熱性を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用内燃機関に適用する場合には、自動車用内燃機関の摺動部品は、部品温度が150℃程度に上昇することから、150℃以上の耐熱性を有することが望ましい。
かかる150℃以上の耐熱性を有するか否かを測定するには、例えばISO75で規定される1.8MPa応力作用下での熱変形温度が非強化状態で150℃以上であるか否かを測定すればよい。
また、本発明に用いる耐熱性樹脂は、本発明の摺動用樹脂組成物が、その使用態様の1つとして、基材の摺動部位の少なくとも一部を被覆する場合があり、例えば、エアースプレーやスクリーン印刷、ディピングなどによるコーティングによって被膜化が容易であることが望ましい。
これらの条件を満たす耐熱性樹脂として、例えば熱可塑性樹脂であるポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルスルホン(PESF)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、又は熱硬化性樹脂であるエポキシ(EP)樹脂などを挙げることができ、条件を満たす範囲でこれらを適宜混合させても共重合させてもよい。
ガラス転移温度が250℃以上と耐熱性が高く、分子鎖中に架橋構造を有するため被膜が強固であり、更に基材との密着性に優れたポリアミドイミド(PAI)樹脂を本発明の摺動用樹脂組成物の母材樹脂として用いることが、現時点においては最適である。
本発明に用いる炭素原料は、気孔率が25〜80%であることを要する。
一般的に、炭素粉体は、従来用いられている潤滑油や作動油などの潤滑剤との濡れ性に優れており、多孔質な炭素原料を用いることにより、空孔部に潤滑油等の潤滑剤を保持し、油膜切れが発生し易い起動時や往復摺動の折り返し時に保持していた潤滑油等の潤滑剤を摺動部位に供給することができ、静摩擦係数を低減することが可能となる。
上記効果を得るためには、炭素原料の気孔率が25%以上であることを要し、一方で、気孔率が80%を超える場合には、炭素原料の縦弾性率が著しく低下し、摩耗抑制効果が著しく低下してしまう。
一般的に、炭素粉体は、従来用いられている潤滑油や作動油などの潤滑剤との濡れ性に優れており、多孔質な炭素原料を用いることにより、空孔部に潤滑油等の潤滑剤を保持し、油膜切れが発生し易い起動時や往復摺動の折り返し時に保持していた潤滑油等の潤滑剤を摺動部位に供給することができ、静摩擦係数を低減することが可能となる。
上記効果を得るためには、炭素原料の気孔率が25%以上であることを要し、一方で、気孔率が80%を超える場合には、炭素原料の縦弾性率が著しく低下し、摩耗抑制効果が著しく低下してしまう。
なお、空孔部は成形(成膜)時に耐熱性樹脂材料が空孔部に流れ込むことにより、耐熱性樹脂と炭素原料との密着性を向上させ、耐摩耗性を向上させることができるという副次的な効果も奏する。
これらの観点から、炭素原料の気孔率は、30〜60%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。
これらの観点から、炭素原料の気孔率は、30〜60%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。
また、本発明に用いる炭素原料は、ビッカース硬度が2GPa以上であることを要する。炭素原料のビッカース硬度が2GPa未満である場合には、耐摩耗性向上効果が発揮されない場合がある。
炭素原料のビッカース硬度は、2.1GPa以上であることが好ましく、2.3GPa以上であることがより好ましい。
炭素原料のビッカース硬度は、2.1GPa以上であることが好ましく、2.3GPa以上であることがより好ましい。
更に、本発明に用いる炭素原料は、縦弾性率が10GPa以下であることを要する。
一般的に、ビッカーズ硬度が2GPa以上である硬質の炭素原料は、耐熱性樹脂に添加した場合には、相手材攻撃性が増大し、相手材の摩耗量が増大するが、このような硬質である炭素原料の縦弾性率を耐熱性樹脂の縦弾性率と同等レベルの10GPa以下とすることにより、相手材とのなじみが促進され、相手材攻撃性を抑制することができる。
また、炭素原料の縦弾性率は、8GPa以下であることが好ましく、4〜8GPa以下であることがより好ましい。
一般的に、ビッカーズ硬度が2GPa以上である硬質の炭素原料は、耐熱性樹脂に添加した場合には、相手材攻撃性が増大し、相手材の摩耗量が増大するが、このような硬質である炭素原料の縦弾性率を耐熱性樹脂の縦弾性率と同等レベルの10GPa以下とすることにより、相手材とのなじみが促進され、相手材攻撃性を抑制することができる。
また、炭素原料の縦弾性率は、8GPa以下であることが好ましく、4〜8GPa以下であることがより好ましい。
ここで、上述したような多孔質且つ高硬度且つ低弾性率である炭素原料としては、例えば多孔質な無定形炭素の表面を部分的にガラス状硬質炭素が被覆しているといった粒子構造を有するものが挙げられる。
このような、粒子構造を有する炭素原料は、例えば米糠等の脱脂糠に熱硬化性樹脂を含浸させ、不活性ガス雰囲気中、温度600℃以上で60分間以上焼成することによって作製することができるが、より具体的には後述する。
このような、粒子構造を有する炭素原料は、例えば米糠等の脱脂糠に熱硬化性樹脂を含浸させ、不活性ガス雰囲気中、温度600℃以上で60分間以上焼成することによって作製することができるが、より具体的には後述する。
本発明の摺動用樹脂組成物においては、上述したような多孔質且つ高硬度且つ低弾性率である炭素原料の含有量が3〜70%であることを要する。
含有量が3%未満の場合には、耐摩耗性向上効果が発揮されない場合があり、含有量が70%を超える場合には、耐熱性樹脂の強度が著しく低下し、摩耗量が増大する。
低摩擦係数及び耐摩耗性をより良好なものにするという観点から、かかる炭素原料の含有量は5〜40%とすることが好ましく、10〜30%とすることがより好ましい。
含有量が3%未満の場合には、耐摩耗性向上効果が発揮されない場合があり、含有量が70%を超える場合には、耐熱性樹脂の強度が著しく低下し、摩耗量が増大する。
低摩擦係数及び耐摩耗性をより良好なものにするという観点から、かかる炭素原料の含有量は5〜40%とすることが好ましく、10〜30%とすることがより好ましい。
また、本発明の摺動用樹脂組成物においては、用いる炭素原料の平均粒径が1〜50μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
炭素原料(粉体)の平均粒径が1μm未満の場合には、母材樹脂中に均一に分散させることが困難であり、一方で、平均粒径が50μmを超える場合には、粗大粒子となるため母材樹脂との密着性が低下し、摺動中に母材樹脂から脱落する頻度が高まり、また異物効果が増大し、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度を著しく低下させることがある。
炭素原料(粉体)の平均粒径が1μm未満の場合には、母材樹脂中に均一に分散させることが困難であり、一方で、平均粒径が50μmを超える場合には、粗大粒子となるため母材樹脂との密着性が低下し、摺動中に母材樹脂から脱落する頻度が高まり、また異物効果が増大し、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度を著しく低下させることがある。
上述したような、多孔質且つ高硬度且つ低弾性率である炭素原料(粉体)を含有させることにより、耐摩耗性向上効果及び摩擦係数のうち静摩擦係数低減効果は著しいものであるが、動摩擦係数低減効果は小さいものである。
動摩擦係数を更に低減するためには、固体潤滑材であるフッ素樹脂分を含有させることが有効である。
動摩擦係数を更に低減するためには、固体潤滑材であるフッ素樹脂分を含有させることが有効である。
更に、本発明の摺動用樹脂組成物においては、フッ素樹脂分を5〜40%含有させることが好ましく、15〜30%含有させることがより好ましい。
フッ素樹脂分の含有量が5%未満の場合には、動摩擦係数低減効果が発現せず、一方で、含有量が40%を超える場合には、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度が著しく低下するとともに、フッ素樹脂分の発油効果により油膜生成、及び油中添加剤の吸着等が阻害され、結果的に動摩擦係数低減効果が発現し難くなる。
このようなフッ素樹脂分の好適例として、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。
フッ素樹脂分の含有量が5%未満の場合には、動摩擦係数低減効果が発現せず、一方で、含有量が40%を超える場合には、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度が著しく低下するとともに、フッ素樹脂分の発油効果により油膜生成、及び油中添加剤の吸着等が阻害され、結果的に動摩擦係数低減効果が発現し難くなる。
このようなフッ素樹脂分の好適例として、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。
また、本発明の摺動用樹脂組成物において、用いるフッ素樹脂分の原料粉体は、摩擦低減効果を更に発揮させるためには、表面エネルギーが200〜400μN/cmであることが望ましく、波長600nmにおける可視光透過率が10%以上であることが望ましく、双方の条件を満たすことがより望ましい。
一般的に、潤滑油や作動油などの潤滑剤の表面エネルギーは250〜350μN/cm程度であることから、フッ素樹脂の原料粉体の表面エネルギーを上記範囲へと改質することによって、油膜生成、及び油中添加剤の吸着等が阻害されることがなくなり、油膜と固体潤滑材の相乗効果を発揮することができ、更なる摩擦低減が可能となる。
また、一般的に、フッ素樹脂は摩耗量が多く、通常のフッ素樹脂を含有させた場合には、フッ素樹脂が存在する部位周辺が選択的に摩耗し、結果として摺動用樹脂組成物全体の摩耗量が若干増加する傾向がみられる。
フッ素樹脂の耐摩耗性を改善するためには、結晶サイズを縮小することが有効である。即ち、結晶サイズを縮小させることにより、結晶の流動性が増大して相手材への移着が容易となり、移着膜生成が促進され、耐摩耗性を改善することができる。また、摩耗粉サイズが縮小することによっても耐摩耗性を改善することが可能となる。
結晶サイズの大小に関しては、可視光透過率で判別することが可能であり、例えば、上述したように、フッ素樹脂の波長600nmにおける可視光透過率を10%以上とすることによって、結晶サイズが縮小し、耐摩耗性をより向上させることができる。
上述の如き、表面エネルギーが200〜400μN/cm、且つ、波長600nmにおける可視光透過率が10%以上であるフッ素樹脂の改質原料粉体は、例えば酸素分圧が1333Pa以下の不活性ガス雰囲気下、フッ素樹脂の原料粉体の融点以上に加熱し、フッ素樹脂の原料粉体に電離性放射線を1〜10kGyの範囲で照射し、その後、酸素存在下で熱エネルギーを付与することによって得ることができる。
なお、上記の改質したフッ素樹脂の改質原料粉体は、従来のフッ素樹脂の原料粉体と比較して不飽和結合量が増加しており、樹脂組成物に添加して用いた場合に、フッ素樹脂の改質原料粉体の分子鎖中の不飽和結合が耐熱性樹脂の例えば官能基と反応することで、耐熱性樹脂とフッ素樹脂の改質原料粉体の密着性が向上するという副次的な効果も発現する。
また、本発明の摺動用樹脂組成物においては、用いるフッ素樹脂の原料ないし改質原料粉体の平均粒径が1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
フッ素樹脂の原料ないし改質原料粉体の平均粒径が1μm未満の場合には、耐熱性樹脂中に均一に分散させることが困難となり、一方で、平均粒径が50μmを超える場合には、粗大粒子となるために、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度を低下させる可能性がある。
フッ素樹脂の原料ないし改質原料粉体の平均粒径が1μm未満の場合には、耐熱性樹脂中に均一に分散させることが困難となり、一方で、平均粒径が50μmを超える場合には、粗大粒子となるために、母材樹脂の強度、特に衝撃強度及び疲労強度を低下させる可能性がある。
次に、本発明の摺動部材及び摺動装置について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の摺動部材は、上記本発明の摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備えるものである。
このような被膜を形成することにより、摺動させる際の摩擦係数を低減し、耐摩耗性を向上させることができる。また、摺動部位の全面に被膜を形成してもよい。
ここで、「基材」としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄基合金やアルミニウム合金などの金属やポリエーテルエーテルケトンやポリフェニレンスルフィドなどの樹脂、CFRPなどの炭素材等を用いることができる。
上述したように、本発明の摺動部材は、その一態様として、例えばピストンスカート部に適用して成る自動車用ピストンを挙げることができ、他の態様として、例えば軸受や人工関節の摺動部分などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
上述の如く、本発明の摺動部材は、上記本発明の摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備えるものである。
このような被膜を形成することにより、摺動させる際の摩擦係数を低減し、耐摩耗性を向上させることができる。また、摺動部位の全面に被膜を形成してもよい。
ここで、「基材」としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄基合金やアルミニウム合金などの金属やポリエーテルエーテルケトンやポリフェニレンスルフィドなどの樹脂、CFRPなどの炭素材等を用いることができる。
上述したように、本発明の摺動部材は、その一態様として、例えばピストンスカート部に適用して成る自動車用ピストンを挙げることができ、他の態様として、例えば軸受や人工関節の摺動部分などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
更に、本発明の摺動部材において、摺動部位の表面粗さが、最大表面粗さRzで15μm以下であることが、本発明の摺動用樹脂組成物の耐摩耗性をより効果的に発揮することができるという観点から好ましく、12μmRz以下であることがより好ましく、10μmRz以下であることが特に好ましい。
摺動部位の表面粗さが、最大表面粗さRzで15μmを超える場合には、凸部頂点での接触面圧が高くなり、摺動用樹脂組成物の摩耗量が増大してしまうからである。
摺動部位の表面粗さが、最大表面粗さRzで15μmを超える場合には、凸部頂点での接触面圧が高くなり、摺動用樹脂組成物の摩耗量が増大してしまうからである。
更にまた、本発明の摺動部材において、被膜の膜厚は3〜30μmとすることが好ましく、5〜25μmとすることがより好ましい。
膜厚が3μm未満の場合には、十分な耐久性を保持することが困難である一方、膜厚が30μmを超える場合には、均質な被膜を作製することが困難となるからである。
膜厚が3μm未満の場合には、十分な耐久性を保持することが困難である一方、膜厚が30μmを超える場合には、均質な被膜を作製することが困難となるからである。
また、本発明の摺動装置は、上記本発明の摺動部材を備える装置で、この摺動部材を潤滑剤の存在下で摺動させるものである。
ここで、「潤滑剤」としては、例えば、従来公知の潤滑油や作動油、グリース、水、アルコールなどを用いることができるが、特に摩擦調整剤を添加した潤滑油を用いることが好ましい。
ここで、「潤滑剤」としては、例えば、従来公知の潤滑油や作動油、グリース、水、アルコールなどを用いることができるが、特に摩擦調整剤を添加した潤滑油を用いることが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[炭素原料(粉体)の作製]
米糠から得られる脱脂糠(株式会社東リョー製)に、液体状フェノール樹脂((株)ホーネンコーポレーション製、豊年レジンクルーPX−1600)を、重量比率で脱脂糠:フェノール樹脂=3:1となるように添加し、50℃で加熱しながら混練した。
次いで、得られた混合物を窒素雰囲気中、900℃で100分間焼成し、得られた炭化焼成物を粉砕機で粉砕して、平均粒径10μmの炭素粉末を得た。これを炭素粉末1とした。
得られた炭素粉末1は、バルク(粉砕前)状態で、気孔率が33%、ビッカース硬度が2.4GPa、縦弾性率が4.3GPaであった。
なお、気孔率はJIS R1634により計測、算出し、ビッカース硬度はJIS Z2244により計測、算出し、縦弾性率はJIS R1602の静的弾性率試験方法により計測、算出した。
[炭素原料(粉体)の作製]
米糠から得られる脱脂糠(株式会社東リョー製)に、液体状フェノール樹脂((株)ホーネンコーポレーション製、豊年レジンクルーPX−1600)を、重量比率で脱脂糠:フェノール樹脂=3:1となるように添加し、50℃で加熱しながら混練した。
次いで、得られた混合物を窒素雰囲気中、900℃で100分間焼成し、得られた炭化焼成物を粉砕機で粉砕して、平均粒径10μmの炭素粉末を得た。これを炭素粉末1とした。
得られた炭素粉末1は、バルク(粉砕前)状態で、気孔率が33%、ビッカース硬度が2.4GPa、縦弾性率が4.3GPaであった。
なお、気孔率はJIS R1634により計測、算出し、ビッカース硬度はJIS Z2244により計測、算出し、縦弾性率はJIS R1602の静的弾性率試験方法により計測、算出した。
[摺動部材の作製]
市販のポリアミドイミド塗料(東洋紡績製、HR−16NX)に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒をとして添加し、溶融粘度が500dPa・s/25℃となるように調製した。これをポリアミドイミド塗料1とした。
次に、ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)80質量部に対して、上記炭素粉末1を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た。
市販のポリアミドイミド塗料(東洋紡績製、HR−16NX)に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒をとして添加し、溶融粘度が500dPa・s/25℃となるように調製した。これをポリアミドイミド塗料1とした。
次に、ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)80質量部に対して、上記炭素粉末1を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た。
次に、得られた摺動用樹脂組成物を、基材であるアルカリ脱脂済みのアルミニウム合金AC8A製プレート(40×40×80mm、長手方向の最大表面粗さ10μmRz)に膜厚が20±5μmとなるようにエアースプレーで塗布し、空気中、200℃で90分間焼成し、摺動用樹脂組成物の被膜を形成して、本例の摺動部材(試験片)を得た。
(実施例2)
[摺動部材の作製]
上記ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)70質量部に対して、上記炭素粉末1を10質量部、平均粒径10μmのテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子製、L150J)を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末とテトラフルオロエチレン粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
[摺動部材の作製]
上記ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)70質量部に対して、上記炭素粉末1を10質量部、平均粒径10μmのテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子製、L150J)を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末とテトラフルオロエチレン粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
(実施例3)
[テトラフルオロエチレンの改質]
テトラフルオロエチレンのモールディングパウダー(旭硝子製、G163)に、酸素分圧133Pa、窒素分圧106657Paの雰囲気、350℃加熱条件のもとで電子線(加圧電圧2MeV)を照射線量100kGyで照射して、フッ素樹脂中に不飽和結合を導入し、その後、平均粒径が10μmとなるまでジェットミルで粉砕して、テトラフルオロエチレン改質粉末を得た。
[テトラフルオロエチレンの改質]
テトラフルオロエチレンのモールディングパウダー(旭硝子製、G163)に、酸素分圧133Pa、窒素分圧106657Paの雰囲気、350℃加熱条件のもとで電子線(加圧電圧2MeV)を照射線量100kGyで照射して、フッ素樹脂中に不飽和結合を導入し、その後、平均粒径が10μmとなるまでジェットミルで粉砕して、テトラフルオロエチレン改質粉末を得た。
[摺動部材の作製]
上記ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)70質量部に対して、上記炭素粉末を10質量部、上記テトラフルオロエチレン改質粉末を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末とテトラフルオロエチレン改質粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
上記ポリアミドイミド塗料1に、このポリアミドイミド塗料1の固形分(ポリアミドイミド樹脂)70質量部に対して、上記炭素粉末を10質量部、上記テトラフルオロエチレン改質粉末を20質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料1中に炭素粉末とテトラフルオロエチレン改質粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
(比較例1)
[摺動部材の作製]
市販のポリアミドイミド塗料(日立化成工業製、HPC−4250−30)に、NMPを溶媒をとして添加し、溶融粘度が80dPa・s/25℃となるように調製した。これをポリアミドイミド塗料2とした。
上記ポリアミドイミド塗料2に、このポリアミドイミド塗料2の固形分(ポリアミドイミド樹脂)65質量部に対して、平均粒径10μmのPTFE粉末(旭硝子製、L150J)を10質量部、平均粒径4μmの二硫化モリブデン粉末(大阪造船所製、Tパウダー)を20質量部、平均粒径10μmのグラファイト粉末((株)エスイーシー製、SGP)を5質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料2中にPTFE粉末と二硫化モリブデン粉末とグラファイト粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
[摺動部材の作製]
市販のポリアミドイミド塗料(日立化成工業製、HPC−4250−30)に、NMPを溶媒をとして添加し、溶融粘度が80dPa・s/25℃となるように調製した。これをポリアミドイミド塗料2とした。
上記ポリアミドイミド塗料2に、このポリアミドイミド塗料2の固形分(ポリアミドイミド樹脂)65質量部に対して、平均粒径10μmのPTFE粉末(旭硝子製、L150J)を10質量部、平均粒径4μmの二硫化モリブデン粉末(大阪造船所製、Tパウダー)を20質量部、平均粒径10μmのグラファイト粉末((株)エスイーシー製、SGP)を5質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料2中にPTFE粉末と二硫化モリブデン粉末とグラファイト粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
(比較例2)
上記ポリアミドイミド塗料2に、このポリアミドイミド塗料2の固形分(ポリアミドイミド樹脂)80質量部に対して、平均粒径10μmのPTFE粉末(旭硝子製、L150J)を10質量部、平均粒径3μmのアルミナ粉末(アドマテックス製、AO−800)を10質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料2中にPTFE粉末とアルミナ粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
上記ポリアミドイミド塗料2に、このポリアミドイミド塗料2の固形分(ポリアミドイミド樹脂)80質量部に対して、平均粒径10μmのPTFE粉末(旭硝子製、L150J)を10質量部、平均粒径3μmのアルミナ粉末(アドマテックス製、AO−800)を10質量部となる割合で添加し、ボールミルで5時間撹拌を行い、ポリアミドイミド塗料2中にPTFE粉末とアルミナ粉末を均一に分散させて、摺動用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の摺動部材(試験片)を得た。
[評価試験]
(摩擦試験)
本発明の摺動用樹脂組成物の摩擦特性を把握するため、実施例1〜3並びに比較例1及び2の試験片の摩擦試験をエンジンオイル滴下条件下で実施した。
(摩擦試験)
本発明の摺動用樹脂組成物の摩擦特性を把握するため、実施例1〜3並びに比較例1及び2の試験片の摩擦試験をエンジンオイル滴下条件下で実施した。
摩擦特性の測定には、往復動するプレート上にかまぼこ状の圧子を押し当てる方式の往復動摩擦試験機(新東科学 ロボットアーム003−K072)を使用した。摺接する相手材には、硬度がロックウェル硬さで95〜103HRB、表面粗さが中心線平均粗さで0.2μmRa程度のFCA材を用い、相手材形状は直径10mm、幅15mmのかまぼこ状とした。
一方、摺動面に滴下するエンジンオイルには日産純正エンジンオイル、SJストロングセーブXMスペシャル 5W−30を用いた。
一方、摺動面に滴下するエンジンオイルには日産純正エンジンオイル、SJストロングセーブXMスペシャル 5W−30を用いた。
摩擦試験を実施するに当たり、摺動用樹脂組成物で被覆したアルミニウム合金AC8A製プレートを往復動するスライド台にプレートの長手方向がスライド台移動方向と平行となるように取り付け、FCA製かまぼこ状圧子を圧子の長手方向がスライド台移動方向に直交するように取り付けた。
次に、上部から196N(ピーク圧力換算で10MPa程度)の垂直荷重をFCA製かまぼこ状圧子に付与し、FCA製かまぼこ状圧子と摺動用樹脂組成物の圧接部にエンジンオイルを10ml滴下した。
摺動用樹脂組成物で被覆したアルミニウム合金AC8A製プレートを設置したスライド台の移動量は20mmとし、移動速度は0.2m/secとした。摩擦試験は、合計8000サイクル実施し、試験開始から1000サイクル毎に1往復した際の摩擦係数の波形を測定器に取り込み、静摩擦係数及び動摩擦係数を求めた。静摩擦係数の経時変化を図1に示す。
摺動用樹脂組成物で被覆したアルミニウム合金AC8A製プレートを設置したスライド台の移動量は20mmとし、移動速度は0.2m/secとした。摩擦試験は、合計8000サイクル実施し、試験開始から1000サイクル毎に1往復した際の摩擦係数の波形を測定器に取り込み、静摩擦係数及び動摩擦係数を求めた。静摩擦係数の経時変化を図1に示す。
図1より、本発明の範囲に属する実施例1〜3については、本発明外の比較例1及び2よりも静摩擦係数が低下する。これは、多孔質且つ高硬度且つ低弾性率の炭素粉体を含有させたことにより、油膜切れを起こし易い折り返し時に、空孔に保持されたエンジン油が摺動部に供給されること、及び摺動用樹脂組成物中に含有させたポリテトラフルオロエチレンが固体潤滑材として機能しているためと考えられる。
特に実施例3については、エンジン油との濡れ性に優れ、且つ相手材への移着能力に優れた改質フッ素樹脂を含有させたため、顕著な静摩擦係数低減効果が認められる。
次に、動摩擦係数の経時変化を図2に示す。図2より、本発明の範囲に属する実施例1〜3の動摩擦係数は、本発明外の比較例1及び2よりも低下する傾向が認められる。実施例1の動摩擦係数が低下しているのは、多孔質且つ高硬度且つ低弾性率の炭素粉体を含有させたことにより、摺動用樹脂組成物が高硬度化するとともに、自己潤滑性が付与されたことによると考えられる。
実施例2及び3については、摺動用樹脂組成物中に含有させたポリテトラフルオロエチレンが相手材に移着膜を生成したため、実施例1よりも更に動摩擦係数が低下したと推定される。
(摩耗試験)
また、8000サイクル終了後に摺動用樹脂組成物で被覆したアルミニウム合金AC8A製プレートの移動方向と直角方向の表面プロフィール(凹凸形状)を測定し、摺動用樹脂組成物の摩耗深さを求めた。摩擦試験後の摩耗深さの測定結果を表1に示す。
また、8000サイクル終了後に摺動用樹脂組成物で被覆したアルミニウム合金AC8A製プレートの移動方向と直角方向の表面プロフィール(凹凸形状)を測定し、摺動用樹脂組成物の摩耗深さを求めた。摩擦試験後の摩耗深さの測定結果を表1に示す。
表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜3については、多孔質且つ高硬度且つ低弾性率の炭素粉体を含有させたため、本発明外の比較例1よりも摺動用樹脂組成物の摩耗が抑制されている。
但し、実施例2については、一般的なポリテトラフルオロエチレンを含有させたため、テトラフルオロエチレン含有部が選択的に摩耗し、結果的に摺動用樹脂組成物全体の摩耗が促進され、実施例1に比較して摩耗深さが増大したと考えられる。
実施例3については、結晶サイズの小さなポリテトラフルオロエチレンを含有させたため、ポリテトラフルオロエチレン自体の摩耗が抑制され、結果的に実施例1と同等レベルの耐摩耗性が確保できたと推定される。
なお、本発明外の比較例2については、摺動用樹脂組成物自体の摩耗量は抑制されているが、FCA製かまぼこ状圧子の頂点部分に縦傷が発生した。
Claims (15)
- 耐熱性樹脂と3〜70%の炭素分を含有する摺動用樹脂組成物であって、
上記炭素分が、気孔率が25〜80%であり、且つ、ビッカース硬度が2GPa以上であり、且つ、縦弾性率が10GPa以下である炭素原料に由来することを特徴とする摺動用樹脂組成物。 - 上記耐熱性樹脂がポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びエポキシ樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記耐熱性樹脂がポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記炭素分の含有量が5〜40%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記炭素原料の平均粒径が1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記炭素原料の平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- フッ素樹脂分を更に含有し、該フッ素樹脂分の含有量が5〜40%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記フッ素樹脂分の原料粉体の表面エネルギーが200〜400μN/cmであることを特徴とする請求項7に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記フッ素樹脂分の原料粉体の波長600nmにおける可視光透過率が10%以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記フッ素樹脂分の原料粉体の平均粒径が1〜50μmであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- 上記フッ素樹脂分の原料粉体の平均粒径が1〜30μmであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれか1つの項に記載の摺動用樹脂組成物を含有して成る被膜を基材の摺動部位の少なくとも一部に備えることを特徴とする摺動部材。
- 上記摺動部位の表面粗さが、最大表面粗さRzで15μm以下であることを特徴とする請求項12に記載の摺動部材。
- 請求項12又は13に記載の摺動部材を備える摺動装置であって、
上記摺動部材が潤滑剤の存在下で摺動することを特徴とする摺動装置。 - 請求項12又は13に記載の摺動部材をピストンスカート部に適用して成ることを特徴とする自動車用ピストン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004376480A JP2006182873A (ja) | 2004-12-27 | 2004-12-27 | 摺動用樹脂組成物、摺動部材及び摺動装置 |
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Cited By (1)
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JP2016534911A (ja) * | 2013-09-30 | 2016-11-10 | サン−ゴバン パフォーマンス プラスチックス パンプス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | フルオロポリマー布地を備えた積層体 |
-
2004
- 2004-12-27 JP JP2004376480A patent/JP2006182873A/ja active Pending
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US10307991B2 (en) | 2013-09-30 | 2019-06-04 | Saint-Gobain Performance Plastics Pampus Gmbh | Laminates with fluoropolymer cloth |
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