JP2006179810A - Iii族窒化物結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウム系III族窒化物基板の表面に形成される表面酸化領域を適切に除去し、アルミニウム系III族窒化物基板上に結晶品質の良好なIII族窒化物を製造する方法を提供する。
【解決手段】窒化アルミニウム単結晶基板やサファイア等の母材基板23表面に窒化アルミニウム結晶層21を表面に有するテンプレート基板の表面を予め塩素ガスなどのハロゲンガスでエッチング処理して表面酸化層23を除去し、次いで該基板上に窒化アルミニウム膜24などのIII族窒化物をエピタキシャル成長させてIII族窒化物並びに積層基板を製造する。
【選択図】図2

Description

本発明は、III族窒化物結晶の気相成長法による製造方法に関する。ここでIII族窒化物とは、III族元素のホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)の窒化物の単体、もしくはこれらIII族元素の窒化物からなる混晶を意味する。特に、アルミニウム系III族窒化物とは、III族元素のアルミニウムを少なくとも含む全てのIII族元素の窒化物を意味する。具体的には窒化アルミニウム単体の他、窒化アルミニウムとアルミニウム以外のIII族元素であるホウ素、ガリウム、インジウムの窒化物との混晶、例えば、窒化アルミニウムボロン、窒化アルミニウムインジウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、窒化アルミニウムガリウムボロン等を含み、B、Al、Ga、InなどのIII族元素の成分比は任意である。
アルミニウム系III族窒化物はバンドギャップエネルギーが大きな値を持つ。例えば窒化アルミニウムのバンドギャップエネルギーは6.2eV程度であり、窒化ガリウムのバンドギャップエネルギーは3.4eV程度である。窒化アルミニウムガリウムは、窒化アルミニウムと窒化ガリウムの混晶であり、両成分比に応じ窒化アルミニウムと窒化ガリウムのバンドギャップエネルギーの間のバンドギャップエネルギーをとる。
従って、アルミニウム系III族窒化物を用いることにより、他の半導体では不可能な紫外領域の短波長発光が可能となり、白色光源用の紫外発光ダイオード、殺菌用の紫外発光ダイオード、高密度光ディスクメモリの読み書きに利用できるレーザー、通信用レーザーなどの発光光源が製造可能になる。
上記のような発光光源の機能を発現する部分は、従来基板上に数ミクロン以下の薄膜を積層して形成することで一般的に試みられている。これは公知の分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属気相エピタキシー(MOVPE:Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法などの結晶成長方法により形成され、発光機能の発現を目的とした最適な積層構造の形成については既に多くの研究がなされている。
また、上記の発光機能を発現する積層構造(以下、「発光層」と呼ぶ)は、積層構造を成長する土台、すなわち「基板」上に成長させるが、紫外光を発光する発光層を成長させる場合においては、基板としてサファイア基板や、アルミニウム系III族窒化物基板を用いることが望ましい。これらの材質は、バンドギャップエネルギーが発光層のバンドギャップエネルギーより大きいので、発光した紫外光が基板を透過できるからである。
しかし、基板とその上に成長する発光層との間の格子定数のミスフィットや熱膨張係数差を考慮すると、前記サファイア基板よりもアルミニウム系III族窒化物基板、特に窒化アルミニウム基板を用いることが好ましい。この理由は次の通りである。
サファイア基板を用いた場合、発光層として主に用いられるAlGaNの格子定数はAlNの格子定数(0.3114nm)とGaNの格子定数(0.3189nm)の間の組成比に応じた値をとるが、サファイア基板の格子定数は0.4763nmと大きく異なるために、基板と発光層との間の格子定数差によりミスフィットが生じ、発光層に欠陥が発生する。さらに、サファイア基板とAlGaNは熱膨張係数も異なっており、成長温度から温度を降下させる過程で、発光層と基板の熱膨張係数差が原因で発光層または基板にクラックや反りが生じる。発光機能の特性値である発光効率は、発光層の欠陥密度、クラックの有無と大きく関係しており、これらの存在により発光効率が低下する。
このような理由から、発光光源として用いられるアルミニウム系III族窒化物の製造を目的とした基板としてはサファイアよりもアルミニウム系III族窒化物基板を用いることが理想的である。
一方、アルミニウム系III族窒化物基板の製造に関して、本発明者らはハイドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法で製造する方法を既に提案した(特開2003−303774号)。この方法によれば、非常に速い結晶成長速度が得られることから、厚膜のアルミニウム系III−V族化合物半導体結晶が実用レベルで量産することが可能となる。したがって、この方法によって得られる厚膜を基板として用い、この上にMOVPE法やMBE法などの結晶成長法を用いて発光層を形成することにより、上記に述べた問題点を解決でき、高効率な発光光源が得られると期待される。なお、特開2003−303774号記載のアルミニウム系III−V族化合物半導体とは、本発明におけるアルミニウム系III族窒化物である。
該提案技術においては、図1に示すような断面形状の石英反応管を用意し、キャリアガスを用いてアンモニアガスと三塩化アルミニウムガスを反応域まで輸送する。三塩化アルミニウムガスはノズルを用いて供給される。両ガスを反応域に保持された基板上で反応させることにより、基板上にアルミニウム系III族窒化物の厚いエピタキシャル成長膜を得る。この厚いエピタキシャル成長膜は、最終工程で基板を除去すればアルミニウム系III族窒化物基板となる。
アルミニウム系III族窒化物基板の製造を目的とした基板としては、前記サファイア基板、シリコンカーバイド基板、シリコン基板、アルミニウム系III族窒化物基板等が使用される。ここでもアルミニウム系III族窒化物基板が最も好適である。アルミニウム系III族窒化物基板の基板側とエピタキシャル成長層側の組成が近いか、基板側の格子定数がやや大きくなる組成であることがより好ましい。組成が近いことは格子定数のミスフィットや熱膨張係数差の影響が少ないことを意味し、エピタキシャル成長層の結晶品質に及ぼす悪影響を最小限に留めることができる。また、基板側の格子定数がやや大きいと成長層側に圧縮応力が加えられて欠陥低減に役立つ。なお、上出のアルミニウム系III族窒化物基板は、アルミニウム系III族窒化物の単結晶からなる基板であることが望ましい。具体的には窒化アルミニウム単結晶、窒化アルミニウムガリウム単結晶等である。
アルミニウム系III族窒化物基板は現状では製造歩留が著しく悪く、したがって非常に高価であるため、サファイア基板やシリコンカーバイド基板、シリコン基板等の上に予めアルミニウム系III族窒化物をエピタキシャル成長させ、アルミニウム系III族窒化物基板の代替として用いることが頻繁に行われる。
このようなアルミニウム系III族窒化物代替基板は一般には「テンプレート基板」と呼ばれる。テンプレート基板の概念図を図2に示した。
この方法によると、テンプレート基板上には予めアルミニウム系III族窒化物の予備成長層21が存在するため、その上にIII族窒化物をエピタキシャル成長させる際には、格子定数のミスフィットが既に緩和された状態で成長できる。すなわち、ホモエピタキシャル成長もしくはそれに近い成長となる。この時、エピタキシャル成長層側の結晶品質は、下地であるテンプレート基板に存在する予備成長層の結晶品質に依存する。つまり、予備成長層の結晶品質を引継いだIII族窒化物のエピタキシャル成長層が得られる。したがって、結晶品質の良好な予備成長層が得られれば、結晶品質の良好なIII族窒化物がエピタキシャル成長される
テンプレート基板の役割は、テンプレート基板上にさらにエピタキシャル成長するIII族窒化物の結晶に、良好な結晶品質の情報を伝えるためのものと言える。したがって、テンプレート基板上に形成される予備成長層の膜厚は薄くても十分実用的である。具体的には1μm以下でよい。
結晶品質の良好なテンプレート基板を製造する方法として、HVPE法、MOVPE法、MBE法、昇華再結晶法、パルスレーザー堆積法(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、スパッタリング法等の気相堆積方法が好適に使用できる。さらに、サファイア基板表面を窒化させて表面に窒化アルミニウム層を形成するサファイア窒化法や、液相法や安熱法等の結晶成長方法が適用可能である。
このようなテンプレート基板も、本発明におけるアルミニウム系III族窒化物基板に含まれる。
該アルミニウム系III族窒化物基板上に、III族窒化物をエピタキシャル成長させる。この際、MOVPE法、MBE法、HVPE法等の気相エピタキシャル成長方法により、発光機能を持たせたIII族窒化物や、高速電子移動デバイスなどの電子デバイスとしてのIII族窒化物が形成される。また、HVPE法等の気相エピタキシャル成長法、昇華再結晶法、液相法、安熱法などのバルク結晶成長方法により、厚いIII族エピタキシャル成長させ、新たなIII族窒化物基板を得る。
しかしながら、該提案技術について研究を進める中で、大きな問題があった。すなわち、製造されたアルミニウム系III族窒化物基板は、成長中断して基板上にさらにIII族窒化物からなるエピタキシャル成長層を形成するために、通常異なる結晶装置間を搬送されるが、その間に空気に晒されるとアルミニウム系III族窒化物基板表面が空気中の酸素や水分と反応して表面酸化領域が形成されることがわかった。
図3はMOVPE法により製造したアルミニウム系III族窒化物基板をX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により深さ方向の元素プロファイルを測定した結果である。縦軸にはアルミニウム系III族窒化物基板に含まれる元素の濃度をatmic%で示し、横軸には基板表面からの深さを示した。この結果から、表面近傍には60atmic%を超える酸素が存在し、表面から約50nm程度まで酸素が検出された。つまり、アルミニウム系III族窒化物基板には空気中の水分や酸素により酸化を受ける表面酸化領域が存在することが確かめられた。
この表面酸化領域の存在によってアルミニウム系III族窒化物基板表面の結晶品質が悪化するため、アルミニウム系III族窒化物基板上へのIII族窒化物のエピタキシャル成長が阻害されることが分かった。その結果、アルミニウム系III族窒化物基板本来の結晶品質が成長層に引継がれず、エピタキシャル成長層の結晶品質は下地であるアルミニウム系III族窒化物基板よりも劣るものであった。従って、エピタキシャル成長層を形成する直前に、アルミニウム系III族窒化物基板の表面酸化領域を除去する前処理、すなわちエッチングが必要であることがわかった。
エッチングの方法としては、フッ化水素酸水溶液やアンモニア水溶液等による湿式エッチングが一般的に用いられるが、水を用いたエッチング方法であるため、さらに酸化がさらに進行する可能性もあり好ましくない。また、エッチング液の洗浄不足によりフッ化水素酸やアンモニウムイオンが残留した場合、残留したイオンによってさらにアルミニウム系III族窒化物基板表面のエッチングが進行する恐れがある。また、基本的に空気中での操作となるので、再び空気中の酸素や水分と反応してアルミニウム系III族窒化物基板に再度表面酸化領域が再形成することが考えられ好ましくない。
ドライエッチングに関しても反応性ガスを使用する場合は、導入した反応性ガスが不純物として基板表面に残留する。また、ドライエッチングはプラズマを基板表面に照射するものであるので、アルミニウム系III族窒化物基板の表面の結晶構造を破壊する恐れもある。さらには、ドライエッチングを行う装置はもとより本発明に述べる気相成長装置とは別に設置されるものであるため、アルミニウム系III族窒化物基板を搬送する必要があり、搬送時に大気中の酸素や水分に触れて、アルミニウム系III族窒化物基板に再表面酸化領域が再形成する可能性もあり好ましくない。
このような理由から、最も好ましいエッチング方法の形態としては、基板表面における化学反応によるエッチングとその後に続くエピタキシャル成長層の形成が、酸素や水分が存在しない雰囲気下で完結することであると考えられた。このもっとも好ましい形態は、同一系内においてエッチングとエピタキシャル成長が完結することである。
本発明は、気相成長方法によるIII族窒化物の製造を課題とし、アルミニウム系III族窒化物基板上にさらにIII族窒化物をエピタキシャル成長させる際に、アルミニウム系III族窒化物基板の表面に形成される表面酸化領域を適切に除去し、アルミニウム系III族窒化物基板上に結晶品質の良好なIII族窒化物を製造する方法を提供する。
更に、本発明は、アルミニウム系III族窒化物基板上に形成される表面酸化領域の除去工程、すなわちエッチング工程から、アルミニウム系III族窒化物基板上のIII族窒化物の製造工程まで、空気中の酸素や水分と全く触れること無く一貫して同一系内で完結する製造方法を提供する。
更にまた、発光光源等に用いられるIII族窒化物発光層並びに発光光源等に用いられるIII族窒化物発光層を成長するために最適なIII族窒化物基板を提供することを目的とする。
特開2003−303774号 Physica Status Solidi (c) 0, No.7 2498-2501 (2003)
そこで、本発明者らは前記課題を鋭意検討した。その結果、アルミニウム系III族窒化物基板の表面を予めハロゲンガスでエッチングし、次いで該基板上にIII族窒化物をエピタキシャル成長させることにより、前記課題を解決できることを発見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルミニウム系III族窒化物基板の表面をハロゲンガスでエッチング処理し、次いで該基板上にIII族窒化物をエピタキシャル成長させることを特徴とするIII族窒化物の製造方法である。
他の発明は、上記製造方法によって得られることを特徴とするIII族窒化物積層基板である。
本発明によれば、III族ハロゲン化物ガスを用いたHVPE法、有機金属ガスを用いたMOVPE法、MBE法等の気相エピタキシー成長法によるIII族窒化物の製造方法において、アルミニウム系III族窒化物基板上に、さらに気相成長法によりエピタキシー成長法させてIII族窒化物を製造する際、予め基板表面をハロゲンガスでエッチングを行い、続いてガス置換、温度調節、基板上へのIII族原料と窒素原料を供給、反応させてIII族窒化物を製造する。
従って、エッチングからIII族窒化物の製造まで一貫して同一系内で工程が完了することが可能となる。このため、エッチング後に酸素や水分に触れることが無くなり、エッチング後のアルミニウム系III族窒化物基板に表面酸化領域が再形成する恐れがなくなる。
アルミニウム系III族窒化物基板のエッチングが完了した後も、酸化領域の再形成が無いので、エッチングされたアルミニウム系III族窒化物基板の表面は本来形成された結晶そのものが露出された状態になっている。従って、III族窒化物をアルミニウム系III族窒化物基板上に成長させる際に、成長界面での結晶欠陥の発生が抑制される。また、アルミニウム系III族窒化物基板上に成長させるIII族窒化物がアルミニウム系III族窒化物である場合にはホモエピタキシャル成長となり、アルミニウム系III族窒化物基板の結晶品質を引継いだまま成長することが可能となる。このため、前述の通り、結晶品質の良好なアルミニウム系III族窒化物基板上にエピタキシャル成長層を形成することにより、結晶品質の良好なIII族窒化物を得ることが可能となる。
また、本発明のエッチング方法は、ハロゲンガスを供給してアルミニウム系III族窒化物基板の表面酸化領域と化学的に反応させるものである。したがって、エッチングされる量はハロゲンガスの供給量により決まるので、ウェットエッチングのように過剰なエッチングイオンが存在する環境下でのエッチング方法に比較して制御しやすい利点がある。一方、ドライエッチングのようにプラズマを照射するものではないので、アルミニウム系III族窒化物基板の表面結晶構造が破壊されることも少ない利点がある。
更にまた、エッチング過程においては、アルミニウム系III族窒化物基板の最表面がハロゲンガスと反応して移動しやすいアルミニウム系塩化物ガスとなるため、アルミニウム系III族窒化物基板表面において原子再配列が起こる可能性もあり、エッチング後のアルミニウム系III族窒化物基板の表面平坦性が向上するという二次的効果も期待される。表面平坦性は、アルミニウム系III族窒化物基板上に前記発光層を形成する場合には特に重要となる。発光層には数nm以下の膜厚の薄膜を何層にも積層することにより形成した超格子から成ることが多く、この発光層の発光機能を発現させるために基板の表面平坦性が大きく影響するためである。
本発明においては上記効果が得られ、III族窒化物が製造可能になり、白色光源用の紫外発光ダイオード、殺菌用の紫外発光ダイオード、高密度光ディスクメモリの読み書きに利用できるレーザー、通信用レーザーのような発光光源の製造に応用、量産実用化できる。
以下、本発明を発明の実施の形態に即して詳細に説明する。なお、本発明の詳細は厚膜成長を目的としたHVPE法を主な例として説明するが、同じく厚膜成長を目的とした昇華再結晶法や液相法等のエピタキシャル成長法によりIII族窒化物を製造する場合においても、装置構造にハロゲンガスラインを設置して同様にエッチングすることにより、本発明の効果を得ることができる。
もちろん、発光ダイオード・レーザーダイオードや電界効果トランジスタ等の半導体デバイスの製造を目的としたMOVPE法やMBE法等のあらゆる気相成長エピタキシー法によりアルミニウム系III族窒化物基板上にIII族窒化物を製造する場合においても、リアクターにハロゲンガスラインを設置して同様にエッチングすることにより、本発明の効果を得ることができる。
本発明において使用されるアルミニウム系III族窒化物基板としては、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム等からなる基板、或いはサファイア、シリコンカーバイド、シリコン等の基板上に、窒化アルミニウム膜、窒化アルミニウムガリウム等のアルミニウム系III族窒化物の膜(予備成長層)を積層させた、所謂テンプレート基板が採用される。
図2は本発明のアルミニウム系III族窒化物基板の模式図であるが、アルミニウム系III族窒化物基板25、もしくは基板23上にアルミニウム系III族窒化物の予備成長層21を有するテンプレート基板上には、空気中の酸素や水分と反応して形成された表面酸化領域22が存在する。
本発明のエッチング処理により、表面酸化領域22の除去を行った後、III族窒化物24をエピタキシャル成長させる。該III族窒化物としては、主には窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムインジウム、窒化アルミニウムガリウムインジウム等のアルミニウム系III族窒化物であるが、必ずしもこれらに限定されることなく、他のアルミニウムを含まないIII族窒化物、たとえば窒化インジウムガリウム等も含まれる。
非アルミニウム系III族窒化物としては窒化ガリウムが代表的であるが、窒化ガリウムは窒化アルミニウムに比較して、空気中の酸素や水分と反応しにくい。しかし、窒化ガリウムに混晶の成分として窒化アルミニウムが加えられて窒化アルミニウムの組成が多くなるにしたがって、表面酸化領域が形成され易くなる。従って、本発明はアルミニウム系III族窒化物基板において窒化アルミニウムの組成比が高まるほど効果が顕著になり、有用な発明となる。
上記アルミニウム系III族窒化物基板上には、主にIII族窒化物がエピタキシャル成長されるが、基板と成長層との成分組成は必ずしも一致させる必要はない。例えば、窒化アルミニウムからなる基板上に窒化アルミニウムガリウムからなる膜を気相成長させることもできる。また、予備成長層として窒化アルミニウムガリウムを備えたテンプレート基板上に、III族窒化物として、テンプレート基板上のものとは異なる組成の窒化アルミニウムガリウムを成長することもでき、或いは窒化インジウムガリウムを成長することもできる。もちろん、窒化アルミニウム基板上に窒化アルミニウム膜を成長させ両者の成分組成を一致させることは好適な態様である。
図1は本発明の気相成長装置のハロゲン化アルミニウムを含むIII族ハロゲン化物のガスと窒素源ガスの合流部分を概念的に示す平面図である。11は反応管の管壁である。ここで用いる反応管の材質は石英ガラスが好適に用いられる。反応管内にはガスを一方向に流すためにキャリアガスが常時流れている。キャリアガスの種類としては水素、窒素、ヘリウム、またはアルゴンの単体ガス、もしくはそれらの混合ガスが使用可能であり、あらかじめ精製器を用いて酸素、水蒸気、一酸化炭素或いは二酸化炭素等の不純ガス成分を除去しておくことが好ましい。
反応管11には加熱装置12が配置される。本発明の方法は、コールドウォールタイプの加熱方法(高周波誘導加熱方式、光による基板加熱方式等)にも有効であるが、いわゆるホットウォールタイプの加熱方法においては効果が特に大きい。図1はホットウォールの加熱装置を用いた場合であり、反応管11を取り巻くように加熱装置12が配置されている。ホットウォールの加熱装置には公知の抵抗加熱装置や輻射加熱装置を用いればよい。さらに、反応管の所定の位置に基板保持のためにサセプタ13を設置し、III族窒化物を気相成長させるべくアルミニウム系III族窒化物基板14をサセプタ上に設置する。
本発明は大気圧以下あるいは大気圧以上においても実施可能であるが、通常は大気圧において行われる。アルミニウム系III族窒化物基板をサセプタに設置した後、上記の加熱装置により加熱する。基板は通常200℃以上に加熱される。基板位置はノズル先端から一般的な装置条件においては5mm〜200mmの範囲に設置されるが、加熱装置によって最も高く加熱される位置が好ましい。昇温中は反応管内には不活性キャリアガスを流通する。
不活性キャリアガスの種類としては窒素、ヘリウム、またはアルゴンの単体ガス、もしくはそれらの混合ガスが使用可能である。ここではエピタキシャル成長層の形成時にキャリアガスとして使用される水素ガスは好ましくない。なぜなら、エッチング時に流通するハロゲンガスとの反応性が非常に高く、製造操作上非常に危険であるためである。
目的温度に達した後、ここでキャリアガスに希釈して該ハロゲンガスを流通する。図1においてはバリアガスフローに該ハロゲンガスを希釈して流通し、アルミニウム系III族窒化物基板のエッチングを行う態様を示している。当該ハロゲンガスとしては、フッ素ガス、塩素ガス、ヨウ素ガス、臭素ガスが挙げられる。本発明で掲げるハロゲンガスを使用する理由は熱力学解析法によって導かれ実証されたものである。塩素ガスを例にハロゲンガスが好適に用いられる理由を以下に説明する。
本発明のエッチング工程においては反応管内にキャリアガスである窒素ガスと塩素ガスを導入する。反応管の加熱中、アルミニウム系III族窒化物基板近傍に存在するガス種としては、AlCl3、AlCl、Cl2、N2の4種類が考えられる。
アルミニウムのハロゲン化物は下記の平衡の式、即ち反応式(1)および反応式(2)の反応により生成される。そして、それらの反応式における平衡定数は数式(1)、数式(2)のようになる。
Figure 2006179810
Figure 2006179810
Figure 2006179810
Figure 2006179810
ここで数式(1)中のaAlNとはAlNの活量であり、ここでは1と近似できる。また、系の圧力による束縛条件は数式(3)のようになる。数式(3)の右辺は、系の全圧すなわち1atmである。
Figure 2006179810
さらに、塩素の束縛条件は数式(4)のようになる。数式(4)におけるPo Cl2は供給した塩素の分圧であり、数式(4)は反応の前後で塩素元素に関する質量保存を意味する。
Figure 2006179810
以上の4つの式を連立させ、これら方程式から4つのガス種の平衡分圧を温度の関数で求める。その結果を縦軸を平衡分圧、横軸を温度としてプロットすると、図4が得られる。なお、反応管内の全圧は1.0atmでCl2ガスの供給分圧は1.0×10−3atmとした。図4のN2の矢印は、N2分圧が1.0atmに近いことを示す。また、図の縦軸のガスぶん分圧は対数スケールである。
図4に示したCl2の平衡分圧は300℃から1200℃の温度領域において10−10atmを下回っている。つまり、この温度領域においては供給したCl2ガスのほとんどはAlNと反応してAlCl3もしくはAlClを生成することがわかる。
ただし、本発明におけるエッチング工程において、実用上に好ましい温度は熱力学解析の結果とともに、反応速度論も考慮に入れて決定される。すなわち、熱力学解析によってハロゲンガスと窒化アルミニウムが反応することが示された温度であっても、その反応の進行する速度は温度によって大きく影響される。温度が高い場合は当然反応が進行し易くなり、温度が低ければ反応速度が緩やかとなり、エッチングの進行も緩やかになる。つまり、温度が低い場合はエッチング時間が長くなり、生産効率上のロスにつながる。一方で高温にすると反応速度が速くなり、ハロゲンガスの導入によりエッチングが速やかに進行するが、高温にした場合はAlClの生成が増える方向にある。AlClは気相成長装置の反応管として頻繁に用いられる石英ガラスと反応し、反応管を腐食する。このような理由により、実用的に好ましいエッチング温度は200℃〜1200℃の温度範囲である。
以上の解析の結果から、本発明者らはアルミニウム系III族窒化物基板のエッチングにCl2ガスが使用可能であることを見出し、且つ実験的に確認した。
投入した塩素ガスはアルミニウム系III族窒化物基板と接触すると全てが反応し、そのほとんどが三塩化アルミニウムに化学反応する。このことは図4において発生するAlCl3の平衡蒸気圧がCl2の供給分圧のほぼ2/3に等しいことと、化学式(1)におけるCl2とAlCl3の係数比を考えれば明らかである。したがって、アルミニウム系III族窒化物基板表面のエッチング量はハロゲンガスの供給量により制御することも可能である。つまり、エッチングしたい膜厚、アルミニウム系III族窒化物基板の面積、窒化アルミニウムの密度、窒化アルミニウムの分子量を元にエッチングすべき窒化アルミニウムの物質量を算出し、反応式(1)に従ってエッチングに必要なハロゲンガス量を計算して、実際にエッチング時に供給することが可能である。ただし、現実にはアルミニウム系III族窒化物基板の表面は酸化を受けているために、上記化学反応のように化学量論的に決まらないため、エッチングに必要なハロゲンガス量が若干異なることに注意しなければならない。しかし、この方法によりエッチング条件を予め絞り込むことができる。
本発明の課題に挙げるようなエッチングに用いるガス種としては、一般に塩化水素ガスが頻繁に用いられている。しかし、窒化アルミニウムなどのアルミニウム系III族窒化物の場合は、塩化水素ガスとは全く反応が起こらずこれらのエッチングに用いることができない。
本発明において、ハロゲンガスとしては、塩素ガスの他に、フッ素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガスを用いることによりエッチングが可能である。反応性を調節するためにこれらのガスを混合して使用しても良い。フッ素ガスについては非常に反応性が高く、反応管の材質に石英ガラスを用いる場合は、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガスが好ましい。しかし、臭素ガスやヨウ素ガスは、塩素ガスに比べて窒化アルミニウムとの反応性が弱いため、より長いエッチング時間が必要となり、また、反応を早めるために温度を高める必要が生じる。したがって、本発明のエッチングガスとしては塩素ガスを使用することが産業上に最も有効である。
アルミニウム系III族窒化物基板のエッチングを完了した後、好適には続けて、アルミニウム系III族窒化物基板の上にIII族窒化物をエピタキシャル成長する。このように、本発明の特徴は、III族窒化物の製造装置にハロゲンガスの供給ラインがあれば、エッチングからIII族窒化物のエピタキシャル成長まで同一系内において完結することができることに大きな利点があるが、実施態様としては必ずしもこれに限定されるものではなく、エッチング後にサンプルを系外に取り出して真空容器等に一次保管することも可能である。
ハロゲンガス流通によりアルミニウム系III族窒化物基板をエッチングした後、III族窒化物基板上にエピタキシャル成長層を形成する。反応管内に残留したハロゲンガスを完全に追い出すためキャリアガスを流通する。この場合も水素ガス以外のキャリアガスが好ましい。反応管の容積の50倍を目安として反応管内部をキャリアガスで置換してハロゲンガスを完全に追い出す。ハロゲンガスの追い出しが完了した後、必要に応じてIII族窒化物をエピタキシャル成長する際のキャリアガスに切換えてもよい。或いは反応管が減圧に耐える構造である場合には、真空排気によってハロゲンガスを吸い出してから、必要に応じて装置内にキャリアガスを導入する方法も好適に用いうる。
その後、III族窒化物をエピタキシャル成長する温度に昇温する。その温度は一般的には800℃以上で行われる。エピタキシャル成長層の成長温度に到達後、必要に応じて基板を加熱してサーマルクリーニングを行ってもよい。サーマルクリーニングは10分間程度で十分である。
次いで、III族ハロゲン化物ガス、窒素源ガス、および必要に応じて両反応ガスのノズル先端部における反応を抑制する目的でバリアガスを反応管内に供給する。両反応ガスは各供給ノズル先端部においては空間的に分離されているが、ノズルから反応域を流れて基板に至る間に拡散混合される。そして、反応域に設置されているアルミニウム系III族窒化物基板上でIII族ハロゲン化物ガスと窒素源ガスは接触して反応し、該基板上にアルミニウム系III族窒化物が成長する。
III族ハロゲン化物ガスはIII族ハロゲン化物ガス供給ノズル15から供給される。III族ハロゲン化物ガスとしては、目的とするIII族窒化物の組成に応じて、三塩化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、三塩化ガリウム等のハロゲン化ガリウム、三塩化インジウム等のハロゲン化インジウムなどのハロゲン化物ガスなどのハロゲン化物ガスを適宜混合しIII族ハロゲン化物ガス供給ノズル15に供給する。
III族ハロゲン化物ガスの発生方法としては特許公報2003−303774号記載の通り、III族ハロゲン化物ガス供給ノズル15より上流側に別途反応管と加熱装置を設けてアルミニウム、ガリウム、インジウムなどのIII族金属とハロゲン化水素を反応させてIII族ハロゲン化物ガスを得ればよい。
或いは、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ガリウム、ハロゲン化インジウム等のIII族ハロゲン化物そのものを加熱、気化し、キャリアガスを用いてIII族ハロゲン化物供給ノズル15に導入してもよい。この場合、III族ハロゲン化物には無水結晶であり、かつ不純物の少ないものが好ましい。不純物が、目的としたIII族窒化物に混入すると、結晶構造の欠陥、不測の電気伝導等、不確定な物理的化学的特性をもたらすため好ましくない。
HVPE法によるエピタキシャル成長においては、窒素源ガスを必要とする。窒素源ガスはIII族ハロゲン化物ガスを窒化してIII族窒化物を得るための反応性ガスであり、通常キャリアガスに希釈して供給する。当該窒素源ガスとしては、窒素を含有する反応性ガスが採用されるが、コストと取扱易さの点で、アンモニアガスが好ましい。このキャリアガスとアンモニアガスについては、反応管全体を押し流す程度の線速度が得られる程度のガスを供給すればよい。
また、先に塩化物ガスを供給したノズル16からはバリアガスを噴出させて、少なくともIII族ハロゲン化物ガス供給ノズル先端部において窒素源ガスとの間にバリアガスを介在させる。バリアガスとしては、窒素ガスまたはアルゴンガスが好適である。窒素ガスまたはアルゴンガスに、水素ガス、ヘリウムガス、或いはネオンガスを混合してもよい。図1に例示したような反応管構造の場合、ハロゲン化物ガス供給ノズル先端における線速度は100〜600cm/sの範囲が選択されるが、この速度を1とした場合、バリアノズル先端における線速度は0.2以上、好ましくは0.3以上に相当するガス流量が概ねの目安とされるが、この限りでない。
III族ハロゲン化物ガスの供給量は、一般的に基板上へのIII族窒化物の成長速度を勘案して決める。基板上に供給される全ガス(キャリアガスIII族ハロゲン化物ガス、窒素源ガス、バリアガス)の標準状態における体積の合計に対するIII族ハロゲン化物ガスの標準状態における体積の割合をIII族ハロゲン化物ガスの供給分圧として定義すると、1×10−4atm〜5×10−2atmの範囲が通常選択される。窒素源ガスの供給量は、一般的に供給する上記III族ハロゲン化物ガスの1〜200倍の供給量が好適に選択されるがこの限りでない。
一定時間成長した後、III族ハロゲン化物ガスの供給を停止して、成長を終了し、加熱装置を降温する。キャリアガスに水素を使う場合、基板上に成長したIII族窒化物の再分解を防ぐため窒素源ガスは基板の温度が下がるまで反応管に流通することが望ましい。
以上の手順により、III族窒化物を得ることができる。得られるIII族窒化物の結晶性は温度や窒素源ガス供給量などのパラメータを変化させることによって、アモルファスに近い低結晶性のものから、結晶性の良い単結晶体もしくは多結晶体まで作ることが可能である。また、III族窒化物混晶を作ることも可能であり、その場合は、目的とする混晶組成に応じて、アルミニウム、ガリウム、インジウム等のハロゲン化物ガスをハロゲン化物ガス供給ノズルから供給して窒素源ガスと反応させればよい。ただし、III族元素に依存してIII族窒化物として基板上へ取り込まれる割合が異なるので、III族ハロゲン化物ガスの供給比率がそのまま混晶組成に対応しないことに注意しなければならない。
成長層の膜厚は成長前後の基板の重量変化と、基板の表面積、成長層の密度から計算可能である。膜厚の制御は成長時間はもちろんのこと、供給するIII族ハロゲン化物ガスの供給量、窒素源ガス供給量などによって変化させることができる。
得られたIII族窒化物の結晶品質の評価はX線回折のロッキングカーブを測定し、得られた回折の半値幅を計測することにより行う。ロッキングカーブ測定はアルミニウム系III族窒化物のTiltと呼ばれる(002)方向、ならびにTwistと呼ばれる(100)方向に関して行った。ロッキングカーブとは、試料がブラッグの回折条件を満たす角度の2倍の位置にディテクターを固定して、X線の入射角を変化させて得られる回折のことである。半値幅の値が小さいほど、試料の結晶品質が良好であることを示す。
以上、エッチング処理後した基板上へのIII族窒化物の気相成長をHVPE法で説明したが、これに限られるものではなく、その他MOVPE法やMBE法等の気相成長エピタキシー法により成長させることも可能である。
次に、MOVPE法によりアルミニウム系III族窒化物基板上にIII族窒化物を成長する場合について説明する。
MOVPE装置内のサセプタ上にアルミニウム系III族窒化物基板を設置する。サセプタに関してはIII族窒化物成長時の膜の均質性を高めるために回転機構を有するものが好ましい。その後、エッチング時に使用する不活性キャリアガスを反応管内に流通する。ここでのキャリアガスは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが望ましい。流量は5slm程度で良いが、当然、反応管の大きさにもよるので適宜選択する。次にサセプタを加熱し、エッチング温度に設定する。このときの温度は前出HVPE例で説明したとおり、200〜1200℃で良い。サセプタの加熱機構は抵抗加熱や高周波加熱など公知の方式が好適に使用できる。エッチング温度に到達した後、エッチング用のハロゲンガスを流通する。その供給量は反応管に供給する流量のうち、分圧にして1×10−5〜1×10−1atm程度が好適に用いられるが、この範囲以外でも使用可能である。
エッチングが完了した後、残留した塩素ガスを追い出すため反応管内を置換する。MOVPE装置においては真空排気ポンプが備わっていることが多いため、置換の際には真空排気を行うと効率的である。HVPE法と同様に不活性なキャリアガスを流通し続けて置換しても良い。置換が完了した後、III族窒化物をエピタキシャル成長する雰囲気に切換え、成長温度に昇温する。また、反応管内の圧力を減圧することも行われる。キャリアガスとしては水素ガスもしくは窒素ガス等が好適に用いられる。減圧時の圧力は0.1Torr以上で行われ、常圧も好適である。III族窒化物の成長温度はIII族元素の種類にもよるが、500℃から1500℃の範囲であるが、いずれもこの限りでない。
成長温度に達した後、マスフローコントローラー等で供給量を制御された、III族原料ガスならびに窒素源ガスを供給する。供給されたIII族原料ガスならびに窒素源ガスはアルミニウム系III族窒化物基板付近において反応し、基板上にIII族窒化物が成長する。III族原料としては、トリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム等の公知のIII族有機金属原料が使用され、窒素源ガアスとしてはアンモニア等が使用される。供給量、供給時間は、アルミニウム系III族窒化物にエピタキシャル成長するIII族窒化物の組成や膜厚、III族窒化物の層構造に応じて適宜変更する。混晶の形成には2種類以上のIII族原料を混合して供給する。発光層を目的としたIII族窒化物を形成する場合、緩衝層や超格子、キャリアブロック層等の薄い膜の形成には、比較的低い濃度で原料ガスが供給される。クラッド層やキャップ層等のやや厚い膜の形成には、比較的高い濃度で原料ガスが供給される。
III族窒化物の形成後、常温まで降温して反応管から基板を取り出す。先のHVPEに関する説明と同様に、結晶品質等を評価する。
比較例1
図1に示される横断面の反応管を用い、アルミニウム系III族窒化物基板上にハロゲンガスによるエッチングを行わずに、HVPE法により窒化アルミニウムのエピタキシャル成長層を形成する実験である。
III族ハロゲン化物の供給方法は、特開2003−303774号に従い、金属アルミニウムと塩化水素ガスを反応させることにより三塩化アルミニウムガスを発生させた。したがって、加熱装置にはホットウォールタイプの抵抗加熱装置を用いており、先の三塩化アルミニウムガスを発生させる温度領域と、発生した三塩化アルミニウムガスと窒素源ガスを反応させて窒化アルミニウムを反応させる温度領域の2ゾーンの温度制御が可能な加熱装置を用いた。
アルミナ製サセプタに1×1cmのアルミニウム系III族窒化物基板を設置した。この基板はMOVPE法によりサファイア(0001)面基板上に窒化アルミニウムの予備成長層を形成したテンプレート基板である。窒化アルミニウム予備成長層の厚さは約0.8μmであった。アルミニウム系III族窒化物基板の表面には図2で示したXPSの通り、表面酸化領域が存在した。
昇温開始から反応管内にはエピタキシャル成長層の形成時のキャリアガスを流通した。即ち、ハロゲン化物ガス供給ノズルからは水素ガスを供給し、このときの先端のガスの線速度を290cm/sとした。また、三塩化アルミニウムガス及び窒素源のアンモニアガスのキャリアガスとして水素ガスを合計750SCCM(Standard Cubic Centimeter per Minute)供給した。バリアノズルには三塩化アルミニウムガスの線速度に対して0.6倍になるように窒素ガスを供給した。反応管内は総流量2250SCCMのガスを供給した状態であり、この状態で反応管温度を1100℃に昇温した。1100℃に到達後、10分間保持して基板のサーマルクリーニングを行った。
続いて、前記の線速度を保つように、III族ハロゲン化物ガスとして三塩化アルミニウムガスをハロゲン化物ガス供給ノズルから供給し、また、窒素源ガスとしてアンモニアガスをキャリアガスに混合して供給し、III族窒化物の成長を開始した。このときの三塩化アルミニウムの供給分圧は1×10−3atm、アンモニアガスの供給分圧は3×10−3atmとした。この状態で、60分間保持して、テンプレート基板上に窒化アルミニウムを成長させた。
60分間成長を行った後、三塩化アルミニウムの供給を停止し、加熱装置の降温を開始した。基板上に成長した窒化アルミニウムの再分解を防ぐため、加熱装置が550℃に温度が下がるまでアンモニアガスを反応管に流通した。その後、加熱装置が室温付近まで下がったことを確認して、反応管から基板を取り出した。次に基板重量を秤量し、成長前後の重量変化と、基板面積、ならびに窒化アルミニウムの密度から、基板上に成長した窒化アルミニウムの平均膜厚を計算した。窒化アルミニウムの密度は2.99g/cmとした。基板上に成長した窒化アルミニウムの平均膜厚は2.5μmであった。
またX線回折装置のロッキングカーブを測定したところ、AlNの(002)面の半値幅、すなわちTilt成分は21min、AlNの(100)面の半値幅、すなわちTwist成分は33minであった。
実施例1
図1に示される横断面の反応管を用い、III族窒化物基板上にハロゲンガスによるエッチングを行った後、HVPE法によりエピタキシャル成長層を形成する実験である。III族ハロゲン化物の供給方法、使用したアルミニウム系III族窒化物基板は比較例1に示すものと全く同様である。ハロゲンガスによるエッチングは次の通り行った。
キャリアガスとして窒素ガスを反応管に総流量700SCCMになるように流通した。続いて加熱装置により950℃に昇温した。目的温度に到達した後、バリアノズルを流れるキャリアガスに希釈して塩素ガスを供給した。塩素ガスは総流量に対して分圧5×10−4atmとなるように5秒供給してアルミニウム系III族窒化物基板をエッチングした。
塩素ガスの供給を停止した後、反応管内部に残留する塩素ガスを追い出すため、窒素ガスキャリアのまま総流量を2250SCCMとして15分間、反応管内部を置換した。置換完了後、エピタキシャル成長層の形成時の雰囲気に切換え、比較例1と同様のガス流量比なるように各ノズルからキャリアガスならびにバリアガスを供給した。総流量、供給した三塩化アルミニウムガスならびにアンモニアガスの供給分圧、成長温度、成長時間、さらにその後の実施手順は比較例1と全て同じである。
その結果、基板上に成長した窒化アルミニウムの平均膜厚は2.1μmであった。X線回折装置のロッキングカーブ測定より、AlNの(002)面の半値幅、すなわちTilt成分は7.8min、AlNの(100)面の半値幅、すなわちTwist成分は27minであり、結晶品質が良好であり、ハロゲンガスによるエッチングの効果が確認できた。この理由は、これまで述べてきたアルミニウム系III族窒化物基板に形成された表面酸化領域を除去できたことにより、アルミニウム系III族窒化物基板の結晶品質が良好な内部領域上にエピタキシャル成長層が形成できたためと考えられる。以上の事実を表1にまとめる。
Figure 2006179810
実施例2
結晶成長基板にはHVPE法によって作製し、表面を鏡面研磨した厚さ100ミクロンのC面窒化アルミニウム基板を用いた。これをMOVPE装置内のサセプター上に設置し、200℃に基板を加熱した後に塩素ガスを装置内に導入した。塩素ガス雰囲気で5min保持して窒化アルミニウム基板をエッチングした後、塩素ガスの供給を止めて真空排気を行ない、しかる後に装置内を水素ガスで置換した。水素を13slmの流量で流しながら、窒化アルミニウム基板を1200℃まで加熱し、次いで、トリメチルアルミニウム流量が15μmol、アンモニア流量が1slm、全流量が10slm、圧力が5Torrの条件で窒化アルミニウム薄膜を厚さ0.45μm形成した。
次いで、トリメチルアルミニウム流量が15μmol、トリメチルガリウム流量が20μmol、アンモニア流量が1slm、全流量が10slm、圧力が5Torrの条件でAl0.45Ga0.55N膜を厚さ0.5μm形成した。
このようにして得られたAlGaN膜の結晶品質を調べた結果を表2に示す。
比較例2
塩素ガスによるエッチングを行わなかった以外は実施例2と全く同一条件で、HVPE基板上に窒化アルミニウム膜とAl0.45Ga0.55N膜を形成した。このようにして得られたAlGaN膜の結晶性を調べた結果を表2に示す。
Figure 2006179810
表1、2の実施例及び比較例の結果から明らかなように、本発明におけるエッチング処理を施した窒化アルミニウム基板上に成長させたAlGaN膜の結晶性は、エッチング処理を施さない基板上へ成長したAlGaN膜に比べて、極めて結晶品質が良いことが分かる。
本発明で使用したハライド気相エピタキシャル成長装置のガス合流部および反応域の模式図 テンプレート基板およびアルミニウム系III族窒化物基板の模式図 窒化アルミニウムテンプレート基板の深さ方向元素濃度プロファイルの測定結果図(X線光電子分光法) 窒化アルミニウムとハロゲンガスの熱力学解析による平衡状態図
符号の説明
11 反応管
12 加熱装置
13 サセプタ
14 基板
15 ハロゲン化物ガス供給ノズル
16 バリアノズル
21 アルミニウム系III族窒化物膜(予備成長層)
22 表面酸化領域
23 基板
24 III族窒化物(エピタキシャル成長層)
25 アルミニウム系III族窒化物基板

Claims (5)

  1. アルミニウム系III族窒化物基板の表面をハロゲンガスでエッチング処理し、次いで該基板上にIII族窒化物をエピタキシャル成長させることを特徴とするIII族窒化物の製造方法。
  2. ハロゲンガスが、塩素ガスである請求項1記載のIII族窒化物の製造方法。
  3. アルミニウム系III族窒化物基板が、窒化アルミニウム基板である請求項1又は2記載のIII族窒化物の製造方法。
  4. エピタキシャル成長が、ハライド気相成長法、有機金属気相成長法または分子線エピタキシー成長法による成長である請求項1〜3記載のIII族窒化物の製造方法。
  5. 請求項1〜4記載の製造方法によって得られることを特徴とするIII族窒化物積層基板。
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