JP2006179639A - 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 - Google Patents
磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2006179639A JP2006179639A JP2004370554A JP2004370554A JP2006179639A JP 2006179639 A JP2006179639 A JP 2006179639A JP 2004370554 A JP2004370554 A JP 2004370554A JP 2004370554 A JP2004370554 A JP 2004370554A JP 2006179639 A JP2006179639 A JP 2006179639A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetostrictive element
- raw material
- sintered body
- magnetostrictive
- polyparaxylylene
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
【課題】 磁歪素子の寸法変化の阻害、特性低下を招くことなく、高温、高圧に対する耐性、防錆性を確保することのできるコーティングを、容易かつ確実に施すことのできる、磁歪素子の製造方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 磁歪素子10を構成する磁歪素子本体11の表面に、ポリパラキシリレンからなるコーティング層12を形成するようにした。コーティング層12は、CVD法により、ガス化したポリパラキシリレン樹脂を磁歪素子本体11の表面に吸着・重合させるようにし、磁歪素子本体11に多数形成された空隙にも確実にポリパラキシリレン樹脂を入り込ませ、磁歪素子本体11全体を、ピンホールを生ずることなく確実にコーティングする。
【選択図】図1
【解決手段】 磁歪素子10を構成する磁歪素子本体11の表面に、ポリパラキシリレンからなるコーティング層12を形成するようにした。コーティング層12は、CVD法により、ガス化したポリパラキシリレン樹脂を磁歪素子本体11の表面に吸着・重合させるようにし、磁歪素子本体11に多数形成された空隙にも確実にポリパラキシリレン樹脂を入り込ませ、磁歪素子本体11全体を、ピンホールを生ずることなく確実にコーティングする。
【選択図】図1
Description
本発明は、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に、用いられる磁歪素子、磁歪素子の製造方法等に関する。
従来より、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に磁歪素子が用いられている。
この磁歪素子は、リニアアクチュエータ、振動子等に用いる場合、付与する磁界を変化させることで、磁歪素子の寸法を変化させて駆動力を発生している。また、磁歪素子を圧力センサ、トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いる場合は、外部から加わった圧力によって磁歪素子の寸法が変化し、これに伴って変化する透磁率を検出することで、センシングを行っている(例えば、特許文献1、2参照。)。
この磁歪素子は、リニアアクチュエータ、振動子等に用いる場合、付与する磁界を変化させることで、磁歪素子の寸法を変化させて駆動力を発生している。また、磁歪素子を圧力センサ、トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いる場合は、外部から加わった圧力によって磁歪素子の寸法が変化し、これに伴って変化する透磁率を検出することで、センシングを行っている(例えば、特許文献1、2参照。)。
磁歪素子は、その使用環境に応じ、高温、高圧に対する耐性、防錆性が要求されることがある。このような要求に対し、磁歪素子の表面に、Niめっき、あるいはエポキシ樹脂等によるコーティングを施すことがある。
しかしながら、磁歪素子の表面にNiめっきを施した場合、Niめっきは硬く、磁歪素子の寸法変化が生じたときに、割れたり、磁歪素子の寸法変化を阻害する可能性がある。また、Ni自体、磁性材であるため、磁束の一部がNiめっき膜にも回り、磁歪素子の特性が落ちるという問題がある。
このような問題から、Niめっきは、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として用いられる磁歪素子のコーティングには適さない。
このような問題から、Niめっきは、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として用いられる磁歪素子のコーティングには適さない。
これに対し、エポキシ樹脂によるコーティング(以下、エポキシコーティングと称することがある)は、Niめっきに比較してコーティング膜が柔らかく、しかも非磁性材であるため、上記したような問題は生じない。
ところで、エポキシコーティングには、素子をエポキシ樹脂中に浸漬させるディップ法と、エポキシ樹脂をスプレーして塗布するスプレー法がある。
粉末冶金法によって形成された磁歪素子は、磁歪素子自体が多孔質のため、エポキシコーティングを施す場合、コーティング膜にピンホールが生じやすい。ピンホールの発生を防ぐには、概ね20μm以上の膜厚でコーティングしなければならない。ディップ法は、2〜3μmの膜厚でのコーティングしかできないため、多孔質の磁歪素子のコーティングには、10〜20μm以上の膜が形成できるスプレー法が一般に採用される。
粉末冶金法によって形成された磁歪素子は、磁歪素子自体が多孔質のため、エポキシコーティングを施す場合、コーティング膜にピンホールが生じやすい。ピンホールの発生を防ぐには、概ね20μm以上の膜厚でコーティングしなければならない。ディップ法は、2〜3μmの膜厚でのコーティングしかできないため、多孔質の磁歪素子のコーティングには、10〜20μm以上の膜が形成できるスプレー法が一般に採用される。
しかし、スプレー法の場合、磁歪素子をテーブル上に並べ、その片面にエポキシ樹脂をスプレーした後、塗布したエポキシ樹脂をキュアー処理して硬化させ、さらに、磁歪素子を反転させ、反対面にエポキシ樹脂をスプレーしなければならない。つまり、テーブルに磁歪素子を並べる手間、磁歪素子に片面ずつエポキシ樹脂をスプレーする手間、キュアー処理する手間がかかる。
また、エポキシ樹脂をスプレー法により20μm以上の膜厚にコーティングすると、図8に示すように、その表面張力により、磁歪素子1の外周縁部1aにおいてコーティング膜2が盛り上がってしまう。すると、磁歪素子1の外周縁部1aでは、コーティング膜が30μm等といった膜厚になり、膜厚の均一性が低下し、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として用いるのに支障が生じることがある。
さらに、エポキシコーティングの場合、磁歪素子の表面に油分等が付着していると、磁歪素子表面へのコーティング膜の定着が阻害されてコーティング膜にピンホールが生じる要因となる。このため、エポキシコーティングに先立ち、油分等を念入りに除去する脱脂処理等が必要となり、これには当然のことながら手間がかかる。
また、エポキシ樹脂をスプレー法により20μm以上の膜厚にコーティングすると、図8に示すように、その表面張力により、磁歪素子1の外周縁部1aにおいてコーティング膜2が盛り上がってしまう。すると、磁歪素子1の外周縁部1aでは、コーティング膜が30μm等といった膜厚になり、膜厚の均一性が低下し、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として用いるのに支障が生じることがある。
さらに、エポキシコーティングの場合、磁歪素子の表面に油分等が付着していると、磁歪素子表面へのコーティング膜の定着が阻害されてコーティング膜にピンホールが生じる要因となる。このため、エポキシコーティングに先立ち、油分等を念入りに除去する脱脂処理等が必要となり、これには当然のことながら手間がかかる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、磁歪素子の寸法変化の阻害、特性低下を招くことなく、高温、高圧に対する耐性、防錆性を確保することのできるコーティング層を備えた磁歪素子、センサを提供することを目的とする。
また、他の目的は、そのような磁歪素子のコーティングを、容易かつ確実に施すことのできる磁歪素子の製造方法を提供することにある。
また、他の目的は、そのような磁歪素子のコーティングを、容易かつ確実に施すことのできる磁歪素子の製造方法を提供することにある。
かかる目的のもと、本発明の磁歪素子は、圧力が加わると透磁率が変化する磁歪素子本体と、磁歪素子本体の表面を覆うように形成された、ポリパラキシリレンからなるコーティング層と、を備えることを特徴とする磁歪素子。ポリパラキシリレンからなるコーティング層は、ピンホール等を生じることなく、その膜厚を10μm以下とすることができる。
このような磁歪素子は、濃度3%、30℃の塩水を連続して噴霧したとき、48時間経過後の磁歪値の低下率が10%以内となり、高い防錆性を有する。また、120℃、2026hPa(2気圧)の雰囲気下で、1kOeの駆動磁界を印加したときの、48時間経過後までの伸び率の変化率を5%以内とすることができ、高温・高圧環境下で高い耐性を有することができる。
このような磁歪素子は、濃度3%、30℃の塩水を連続して噴霧したとき、48時間経過後の磁歪値の低下率が10%以内となり、高い防錆性を有する。また、120℃、2026hPa(2気圧)の雰囲気下で、1kOeの駆動磁界を印加したときの、48時間経過後までの伸び率の変化率を5%以内とすることができ、高温・高圧環境下で高い耐性を有することができる。
このような磁歪素子を用い、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等を構成することができる。
例えば、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として機能するセンサの場合、圧力が加わると透磁率が変化する磁歪素子と、磁歪素子の外周側に設けられたコイルと、を備え、磁歪素子は、焼結体からなる磁歪素子本体と、磁歪素子本体の表面を覆うように形成されたポリパラキシリレンからなるコーティング層とを備えるものとする。
この場合、焼結体密度が97%以下である、いわゆる多孔質状の磁歪素子本体にポリパラキシリレンからなるコーティング層を備えることで、前記したように、10μm以下の膜厚であっても、高い防錆性、高温・高圧に対する高い耐性を備えることができる。
例えば、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等として機能するセンサの場合、圧力が加わると透磁率が変化する磁歪素子と、磁歪素子の外周側に設けられたコイルと、を備え、磁歪素子は、焼結体からなる磁歪素子本体と、磁歪素子本体の表面を覆うように形成されたポリパラキシリレンからなるコーティング層とを備えるものとする。
この場合、焼結体密度が97%以下である、いわゆる多孔質状の磁歪素子本体にポリパラキシリレンからなるコーティング層を備えることで、前記したように、10μm以下の膜厚であっても、高い防錆性、高温・高圧に対する高い耐性を備えることができる。
上記したような磁歪素子は、以下のようにして製造することができる。
すなわち、まず、原料粉末を磁場中成形して得た成形体を焼結することで焼結体を形成し、得られた焼結体の表面を、ポリパラキシリレンからなるコーティング剤で覆うのである。
焼結体の表面をコーティング剤で覆う工程では、ポリパラキシリレンの原料を昇華させてガス化し、得られたガスをさらに加熱することで原料をラジカル化して、焼結体が収容されたチャンバ内に導入する、いわゆる化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、以下、CVD法と称する)を用いるのが好ましい。
このような製造方法は、粉末冶金法によって形成された、焼結体密度が97%以下の多孔質状の磁歪素子本体をコーティングする場合に特に適しており、ポリパラキシリレンからなるコーティング層を備えることで、得られた磁歪素子は、高い防錆性、高温・高圧に対する高い耐性を備えることができる。
すなわち、まず、原料粉末を磁場中成形して得た成形体を焼結することで焼結体を形成し、得られた焼結体の表面を、ポリパラキシリレンからなるコーティング剤で覆うのである。
焼結体の表面をコーティング剤で覆う工程では、ポリパラキシリレンの原料を昇華させてガス化し、得られたガスをさらに加熱することで原料をラジカル化して、焼結体が収容されたチャンバ内に導入する、いわゆる化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、以下、CVD法と称する)を用いるのが好ましい。
このような製造方法は、粉末冶金法によって形成された、焼結体密度が97%以下の多孔質状の磁歪素子本体をコーティングする場合に特に適しており、ポリパラキシリレンからなるコーティング層を備えることで、得られた磁歪素子は、高い防錆性、高温・高圧に対する高い耐性を備えることができる。
本発明によれば、ポリパラキシリレンからなるコーティング層を備えることで、得られた磁歪素子は、高い防錆性、高温・高圧に対する高い耐性を備えることが可能となり、磁歪素子およびそれを用いて構成されるセンサやアクチュエータ、振動子等を高い耐久性、信頼性を有したものとすることができる。また、本発明の磁歪素子の製造方法によれば、そのような磁歪素子のコーティング層を、容易かつ確実に形成することができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態において、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いられる磁歪素子は、RTy(ここで、Rは1種類以上の希土類金属、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4を表す。)で示す組成の焼結体を用いることが望ましい。
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特に、Nd、Pr、Sm、Tb、Dy、Hoの希土類金属が望ましく、Tb、Dyがより一層望ましく、これらを複合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が望ましく、Fe、Co、Niが一層望ましく、これらを複合して用いることができる。
本実施の形態において、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いられる磁歪素子は、RTy(ここで、Rは1種類以上の希土類金属、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4を表す。)で示す組成の焼結体を用いることが望ましい。
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特に、Nd、Pr、Sm、Tb、Dy、Hoの希土類金属が望ましく、Tb、Dyがより一層望ましく、これらを複合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が望ましく、Fe、Co、Niが一層望ましく、これらを複合して用いることができる。
組成式RTyにおいて、y=2のときにRとTとが形成するRT2ラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、かつ磁歪値が大きいため、磁歪素子として最も適する。ここで、yが1以下では、焼結後の熱処理でRT相が析出して磁歪値が低下する。また、yが4以上では、RT3相又はRT5相が多くなり、磁歪値が低下する。このため、RT2相を多くするために、1<y<4の範囲が望ましい。Rとして複数種の希土類金属を用いてもよく、特に、TbとDyを用いることが望ましい。
本実施の形態において、上記のような磁歪素子は、特開2002−129274号公報に示すような、3種類の異なる組成の原料粉末(以下、原料A、B、Cと適宜称する)を混合して作製するのが好ましい。また、原料粉末となる合金粉の一部には、水素吸蔵処理される原料を含んでいることが好ましい。合金粉に水素を吸蔵させることにより、歪みが生じ、その内部応力によって割れが生ずる。このために、混合される合金粉は、成形体を形成する時に圧力を受け、混合した状態の内部で粉砕されて細かくなり、焼結したときに緻密な高密度焼結体を得ることができるからである。
原料Aは、式(1):(TbxDy1-x)Tyで表されるものを用いる。ここで、原料AのTは、Fe、Co、Niの群から選択される少なくとも1種類の金属で、特に、元素TはFe単独でもよい。Feは、Tb、Dyと磁歪特性の高い(Tb、Dy)Fe2金属間化合物を形成するからである。このときに、Feの一部をCo、Niで置換するものであってもよいが、Coは磁気異方性を大きくするが透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させるために、Feは70wt%以上、一層好ましくは80wt%以上である。
原料Aは、その他に、Tb、Dyの希土類金属と合金を形成する遷移金属を含んでいてもよい。遷移金属としては、具体的にはMn、Cr、Mo、Wを挙げることができる。原料AのTbの一部は、Dyを除く希土類(R')と置換してもよい。R'として、例えば、Nd、Pr、Gd、Y等を挙げることができる。
原料Aは、その他に、Tb、Dyの希土類金属と合金を形成する遷移金属を含んでいてもよい。遷移金属としては、具体的にはMn、Cr、Mo、Wを挙げることができる。原料AのTbの一部は、Dyを除く希土類(R')と置換してもよい。R'として、例えば、Nd、Pr、Gd、Y等を挙げることができる。
式(1)において、x、yは、0.35<x≦0.5、1.7≦y≦2.0の範囲とする。xが0.35以下の小さい値になると、磁歪値が大きくなる[111]軸方向への配向が困難になり、xが、0.5を超えると、磁歪材料全体に対する原料Aの比率が低下するために焼結後の[111]軸方向の配向度が低くなる。yが1.7未満では、磁歪材料全体に占める原料Aの比率が小さくなり、焼結後の[111]軸方向の配向度が低くなってしまう。yが大きいと(Tb、Dy)T3等のFeリッチの相が多くなり、このため、磁場中成形による配向度が低くなり、それにつれて焼結後の磁歪材料の配向度も低くなる。したがって、yは2.0とする。
好ましいxは0.3≦x≦0.45、より好ましいxは0.34≦x≦0.40である。また、好ましいyは1.8≦y≦2.0、より好ましいyは1.87≦x≦1.92である。
好ましいxは0.3≦x≦0.45、より好ましいxは0.34≦x≦0.40である。また、好ましいyは1.8≦y≦2.0、より好ましいyは1.87≦x≦1.92である。
原料Bとして、式(2):DytT1-t(Dyは、TbとHoの双方又はいずれか一方を含むことがあり、tは0.37≦t≦1.0の範囲)で表される組成を有するものを用いる。tがこの範囲内においてDyとTは共晶点を有するので、tがこの範囲を以外の組成では、原料Aと原料Cとの混合において、共晶組成であるR2Tが少なくなり、焼結密度を高くすることが難しくなる。
また、原料Bは、水素吸蔵処理を施すことにより、7000ppm≦水素量≦22000ppmの水素を含むことが好ましい。原料Bは水素を吸蔵することにより脆化し、これを原料Aと原料Cと混合し、成形体を形成する時の圧力により混合した状態の内部で粉砕されて微細化する。したがって、主相形成を担う原料Aの間に入り込みやすくなり、焼結したときに緻密で密度の高い焼結体を形成する。
原料Bに、吸蔵させる水素の量としては、7000ppm≦水素量≦22000ppmの範囲がよい。水素の量が7000ppm未満では、水素の量が少なくて原料Bの内部歪みが小さく、成形時の割れが少なく、密度が低く、さらに開気孔も多くなる。さらに、長期間の使用により磁歪特性が低下する。また、水素量が22000ppmを超えると、原料Bの微細化が飽和し、これ以上吸蔵する効果がない。
本実施の形態においては、Tを含む原料Cを用いる。Tは、上述したように、Fe、Co、Niの群から選択させる少なくとも1種類の金属であり、この中ではFeが最も好ましい。
以上説明した原料A、原料B及び原料Cを混合、磁場中成形、焼結して、式(3):(TbvDy1-v)Twで表される磁歪材料を製造する。ここで、v、wは、0.27≦v<0.5、1.7≦w≦2.0の範囲にある。vが0.27未満では、常温より低い温度域で十分な磁歪値を示さず、vが0.5以上では常温域で十分な磁歪値を示さない。wが1.7未満では希土類リッチな相が多くなり、wが2.0を超えると、(Tb、Dy)T3相等の異相が生じ磁歪値が低下する。
好ましいvは0.27≦v≦0.40、より好ましいvは0.27≦v≦0.34である。また、好ましいwは1.8≦w≦1.95、より好ましいwは1.87≦w≦1.92である。
好ましいvは0.27≦v≦0.40、より好ましいvは0.27≦v≦0.34である。また、好ましいwは1.8≦w≦1.95、より好ましいwは1.87≦w≦1.92である。
原料A、原料B及び原料Cとの混合の割合は、式(3)で表される磁歪材料になるように適宜決定することができるが、以下に従うことが好ましい。
原料Aの重量百分率をa、原料Bの重量百分率をb、原料Cの重量百分率をcとしたとき、原料Aは、好ましくは50≦a<100、より好ましくは60≦a≦95とする。aが小さすぎる場合、すなわち、磁場中成形において配向する原料Aの比率が低い場合、焼結後の結晶の配向度が低くなる。一方、aが大きすぎる場合、原料Aの組成が最終組成に近いということであり、磁場配向を容易にするために原料Aを用いる意味がなくなる。
原料Bは、好ましくは0<b≦40、より好ましくは5≦b≦30とする。原料Bは焼結の際に融剤として働くため、bが小さすぎると焼結が進みにくくなって緻密な磁歪材が得にくくなる。一方、bが大きすぎると、aが小さくなりすぎて、上記弊害が生ずる。
原料Aの重量百分率をa、原料Bの重量百分率をb、原料Cの重量百分率をcとしたとき、原料Aは、好ましくは50≦a<100、より好ましくは60≦a≦95とする。aが小さすぎる場合、すなわち、磁場中成形において配向する原料Aの比率が低い場合、焼結後の結晶の配向度が低くなる。一方、aが大きすぎる場合、原料Aの組成が最終組成に近いということであり、磁場配向を容易にするために原料Aを用いる意味がなくなる。
原料Bは、好ましくは0<b≦40、より好ましくは5≦b≦30とする。原料Bは焼結の際に融剤として働くため、bが小さすぎると焼結が進みにくくなって緻密な磁歪材が得にくくなる。一方、bが大きすぎると、aが小さくなりすぎて、上記弊害が生ずる。
以上の原料A、B、Cは、以下に示すような工程を経て、焼結体からなる磁歪材料を構成する。
原料Aとして、Tb、Dy、Feを上記式(1)に該当するように秤量して、例えばArガスの不活性雰囲気中で溶融して合金を作製する。この合金を、1150〜1230℃程度の温度でアニール処理を行い、合金作製時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させることができる。次に、この原料Aを、平均粒径で5〜200μm程度まで粉砕処理する。
原料Aとして、Tb、Dy、Feを上記式(1)に該当するように秤量して、例えばArガスの不活性雰囲気中で溶融して合金を作製する。この合金を、1150〜1230℃程度の温度でアニール処理を行い、合金作製時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させることができる。次に、この原料Aを、平均粒径で5〜200μm程度まで粉砕処理する。
原料BとしてDy又はDy及びTからなる合金を用意し、原料Aと同様に粉砕処理する。次いで、粉砕された原料Bを水素雰囲気中又は水素と不活性ガスの混合雰囲気中に保持して、原料Bの結晶格子中に水素原子を侵入させ又は水素化物とする水素吸蔵処理を施す。原料Bに含まれる水素量は前述したように、7000〜22000ppmとするのが好ましい。原料Bは、水素吸蔵処理が施されることで割れが発生する。原料BがDy及びTからなる合金から構成される場合は、割れによって5〜200μm程度まで微粉化される。原料BがDy単体で構成される場合は、水素吸蔵処理後の割れによってDy及びTからなる合金のように微粉化することが困難であるため、水素吸蔵処理後に粉砕処理を行うことが好ましい。この粉砕は、平均粒径で5〜200μm程度とすればよい。なお、水素吸蔵処理を行う温度は、原料BがDy及びTからなる合金から構成される場合は、100〜200℃、原料BがDy単体で構成される場合は、250〜450℃とすることが好ましく、この温度であれば、保持時間を1〜20時間とすれば、原料Bに上記量の水素を含有させることができる。なお、保持時間による水素含有量は、原料B合金の大きさにも依存する。
原料Bに水素吸蔵処理を施すことにより、原料Bの耐酸化性を向上することができる。希土類元素であるDyは酸化されやすいために、わずかな酸素があっても表面に融点の高い酸化膜が形成される。この酸化膜は焼結の進行を抑制する。そのために、得られる焼結体の密度は低く、さらに開気孔も多くなる。この開気孔が多くなると、長期間使用している間に、さらにDyの酸化が進み、それに伴い磁歪特性が低下する。したがって、原料Bに水素吸蔵処理をして焼結体を製造することで高い焼結密度を獲得し、かつ、磁歪特性の経時的な劣化を抑えることができる。
原料Cは、原料A及び原料Bと同様に粉砕した後に、表面に付着している酸素を除去するための還元処理を行うことが好ましい。この還元処理は、例えば、300〜600℃の水素雰囲気中に1〜3時間程度保持すればよい。
以上のようにして得られた原料A、原料B及び原料Cは、最終的に得たい組成となるように秤量、混合してから、粉砕処理される。粉砕処理では、湿式ボールミル、アトライタ、アトマイザー等の粉砕機から適宜選択することができる。特に、アトマイザーが好ましい。衝撃と剪断を同時にかけることができ、粉体の凝集を防ぎ、かつ生産性が高いからである。この粉砕後の平均粒径は、1〜100μm、好ましくは5〜20μmとする。粒径が小さすぎると製造工程中で酸化が進行しやすく、磁歪特性を劣化させる。平均粒径が大きすぎると焼結が進みにくく、焼結密度が高くならず、開気孔が多くなる。
混合された原料A、原料B及び原料Cは、焼結前に所望の形状に成形する。この成形は磁場中で行うことで、主に原料Aを一定方向に揃えて、焼結後の磁歪材料を[111]軸方向に配向させる。印加する磁場は、2.4×104A/m以上、好ましくは4.8×104A/m以上がよい。磁場の方向は、圧力の方向に垂直でも、平行でもよい。成形圧力は、4.9×104Pa以上、好ましくは2.9×105Pa以上がよい。
磁場中成形で得られた成形体は焼結される。焼結条件は、1100℃以上で、好ましくは1150〜1250℃で、1〜10時間行うことがよい。焼結の雰囲気は、非酸化性雰囲気が良く、Arガス等の不活性ガス又は真空中がよい。
このようにして製造された焼結体は、式(3):(TbvDy(1-v))Tw(ここで、v、wは、0.27≦v<0.5、1.7≦w≦2.0の範囲にある。)で表される多結晶体からなる磁歪材料であり、磁歪が最も大きくなる[111]軸方向に配向している。この磁歪材料の結晶粒の平均粒径は10μm以上である。結晶粒の平均粒径が小さいと結晶粒界が多くなり外部磁場による磁化率が低くなる。結晶粒の平均粒径の上限は特にないが、200μm以上になると磁歪値はほとんど飽和するためにこれ以上大きくする必要がなく、また、焼結等の時間がかかりすぎ実用的ではない。
このようにして製造された焼結体は、式(3):(TbvDy(1-v))Tw(ここで、v、wは、0.27≦v<0.5、1.7≦w≦2.0の範囲にある。)で表される多結晶体からなる磁歪材料であり、磁歪が最も大きくなる[111]軸方向に配向している。この磁歪材料の結晶粒の平均粒径は10μm以上である。結晶粒の平均粒径が小さいと結晶粒界が多くなり外部磁場による磁化率が低くなる。結晶粒の平均粒径の上限は特にないが、200μm以上になると磁歪値はほとんど飽和するためにこれ以上大きくする必要がなく、また、焼結等の時間がかかりすぎ実用的ではない。
上記のようにして製造された焼結体は、高温・高圧に対する耐性、防錆性を高めるため、コーティングを施すのが好ましい。
すなわち、図1に示すように、コーティングが施された本発明における磁歪素子10は、上記のようにして形成された、例えば、所定の厚さを有した円板状(円柱状)の磁歪素子本体(焼結体)11と、磁歪素子本体11の表面全体を覆うコーティング層12とから形成されている。
すなわち、図1に示すように、コーティングが施された本発明における磁歪素子10は、上記のようにして形成された、例えば、所定の厚さを有した円板状(円柱状)の磁歪素子本体(焼結体)11と、磁歪素子本体11の表面全体を覆うコーティング層12とから形成されている。
コーティング層12は、ポリパラキシリレン樹脂によって形成され、その膜厚は、概ね10μm以下で、好ましくは2〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。
ポリパラキシリレン樹脂でコーティング層12を形成するには、CVD法を用いるのが好ましい。
CVD法では、原料物質を含むガスに、熱や光によってエネルギーを与えたり、高周波でプラズマ化したりすることにより、原料物質がラジカル化して反応性に富むようになり、基材(磁歪素子本体11)上に吸着されて堆積する。
CVD法では、原料物質を含むガスに、熱や光によってエネルギーを与えたり、高周波でプラズマ化したりすることにより、原料物質がラジカル化して反応性に富むようになり、基材(磁歪素子本体11)上に吸着されて堆積する。
本実施の形態においては、図2に示すように、原料となるジパラキシリレン(粉状)を、バキュームポンプで略真空状態とした気化室20内で加熱して昇華させてガス化し、さらにこのガスを熱分解室21で約600℃に加熱することで熱分解し、ラジカルパラキシリレンを発生させる。この、ラジカルパラキシリレンは、安定で反応性に富んだガスである。このガスを、磁歪素子本体11が収容されたチャンバ22内に導入する。このチャンバ22内には回転ドラム23が備えられて、この回転ドラム23に複数の磁歪素子本体11が収容されるようになっている。そして、回転ドラム23を回転させることで、複数の磁歪素子本体11はチャンバ22内で撹拌されるがごとく回転している。このような磁歪素子本体11に対し、ラジカルパラキシリレンは、磁歪素子本体11の表面に吸着すると同時に重合し、これによって磁歪素子本体11の表面に、高分子量のポリパラキシリレン膜、すなわちコーティング層12が形成されるのである。
なお、上記のようなポリパラキシレン樹脂によるコーティング層12を形成するに先立ち、磁歪素子本体11に、例えばシランカップリング剤等による下地処理をするのが好ましい。これにより、コーティング層12の密着性を一層高めることができる。
このようにしてポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが完了した磁歪素子10は、例えば、図3に示したような圧力センサ(センサ)100に組み込まれる。この圧力センサ100は、ヨークを兼ねるハウジング101内に、磁歪素子10と、この磁歪素子10の外周側に配設されたコイル102とを備えている。ハウジング101は、磁歪素子10を挟み込むように設けられた接触部101a、101bを一体に備えている。そして、一方の接触部101aには、外部から圧力(トルク)の入力を受ける入力部103が一体に形成されている。
この圧力センサ100は、外力によって入力部103を押圧すると、ハウジング101が弾性変形し、磁歪素子10を押圧する。これによって磁歪素子10が縮小変形し、透磁率が変化するので、これをコイル102で検出し、電気信号として出力することによって圧力を検出できる。
この圧力センサ100は、外力によって入力部103を押圧すると、ハウジング101が弾性変形し、磁歪素子10を押圧する。これによって磁歪素子10が縮小変形し、透磁率が変化するので、これをコイル102で検出し、電気信号として出力することによって圧力を検出できる。
上述したように、磁歪素子本体11のコーティング層12を、CVD法によりガス化したポリパラキシリレン樹脂を磁歪素子本体11の表面に吸着・重合させるようにしたので、磁歪素子本体11に多数形成された空隙にも確実にポリパラキシリレン樹脂が入り込み、コーティング層12は分子レベルのコーティングとなり、磁歪素子本体11全体を、ピンホールを生ずることなく確実にコーティングすることが可能となる。また、吸着・重合時には、ガス化したポリパラキシリレン樹脂による圧力が磁歪素子本体11に対して一定に作用するので、均一で安定した薄膜状のコーティング層12を形成することができ、磁歪素子本体11の外周縁部においても均一な膜厚とすることができる。さらに、磁歪素子本体11の表面に多少の油分等が残存していても、コーティング層12は良好に形成される。
また、コーティング層12は、非常に柔らかいため、磁歪素子本体11に寸法変化が生じたときに、その寸法変化を阻害することもなく、コーティング層12に亀裂等が生じることもない。さらに、ポリパラキシリレン樹脂は非磁性材料であるから、磁歪素子10の特性を低下させることもない。
また、コーティング層12は、非常に柔らかいため、磁歪素子本体11に寸法変化が生じたときに、その寸法変化を阻害することもなく、コーティング層12に亀裂等が生じることもない。さらに、ポリパラキシリレン樹脂は非磁性材料であるから、磁歪素子10の特性を低下させることもない。
さらにCVD法により、回転ドラム23内で磁歪素子本体11を回転させながらコーティング処理を行うことで、エポキシ樹脂を用いた場合のように、多大な手間はかからず、コーティング層12を容易に形成することができる。
このように、本実施の形態の手法によれば、粉末冶金法により形成され、焼結体密度が95%程度である磁歪素子本体11の寸法変化の阻害、特性低下を招くことなく、高温、高圧に対する耐性、防錆性を確保することのできるコーティング層12を、容易かつ確実に形成することが可能となる。
このように、本実施の形態の手法によれば、粉末冶金法により形成され、焼結体密度が95%程度である磁歪素子本体11の寸法変化の阻害、特性低下を招くことなく、高温、高圧に対する耐性、防錆性を確保することのできるコーティング層12を、容易かつ確実に形成することが可能となる。
ここで、ポリパラキシリレン樹脂を用いたコーティング層による効果を確認したのでその結果を以下に示す。
まず、磁歪素子本体となる焼結体を、以下のようにして製造した。
まず、原料Aとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、Tb0.4Dy0.6Fe1.95の組成を有する合金を製造した。そして、この原料Aを、1170℃(安定時間20hr)でアニールする熱処理を行い、合金製造時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させてから、例えばブラウンミルで粉砕し、粗粉を得た。得られた粗粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Bとして、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融し、Dy2.0Feの組成を有する合金を製造した。そしてこの合金に、水素雰囲気(濃度80%)中、150℃(安定時間1hr)で熱処理し、約18000ppmの水素を吸蔵させることで、合金を粉砕し、粉砕粉を得た。この粉砕粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Cとして、Feの粉末を用い、このFe粉末に対し、水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理(300℃、安定時間1hr)を行った。
まず、磁歪素子本体となる焼結体を、以下のようにして製造した。
まず、原料Aとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、Tb0.4Dy0.6Fe1.95の組成を有する合金を製造した。そして、この原料Aを、1170℃(安定時間20hr)でアニールする熱処理を行い、合金製造時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させてから、例えばブラウンミルで粉砕し、粗粉を得た。得られた粗粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Bとして、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融し、Dy2.0Feの組成を有する合金を製造した。そしてこの合金に、水素雰囲気(濃度80%)中、150℃(安定時間1hr)で熱処理し、約18000ppmの水素を吸蔵させることで、合金を粉砕し、粉砕粉を得た。この粉砕粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Cとして、Feの粉末を用い、このFe粉末に対し、水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理(300℃、安定時間1hr)を行った。
次いで、得られた原料A、B、Cを秤量した後、混合処理し、さらにArガス中でアトマイザーにより微粉砕し、組成をTb0.34Dy0.66Fe1.88にした合金粉を得た。
得られた合金粉を型に入れ、12kOeの磁場中で、5ton/cm2の成形圧で成形し、成形体を得た。このとき、合金粉を型に充填するに際しては、合金粉を、N2ガスを充填した配管内を通して移動させた。また、磁場は、圧力方向に対して垂直方向(いわゆる横磁場)に印加した。成形体の形状および寸法は、φ3×16mmとした。
得られた合金粉を型に入れ、12kOeの磁場中で、5ton/cm2の成形圧で成形し、成形体を得た。このとき、合金粉を型に充填するに際しては、合金粉を、N2ガスを充填した配管内を通して移動させた。また、磁場は、圧力方向に対して垂直方向(いわゆる横磁場)に印加した。成形体の形状および寸法は、φ3×16mmとした。
得られた成形体を、焼結用容器に収めて炉中で昇温し、1150〜1230℃の安定温度区間で35vol%水素ガスと65vol%Arガスの混合雰囲気で焼成を行い、焼結体(磁歪素子本体)を得た。
このようにして製造した焼結体の表面に、以下のようにしてコーティング層を形成した。
コーティング剤の原料となるジパラキシリレン(粉状)には、スリーボンド社製のパリレンNを用い、これをバキュームポンプで10〜30hPaとした気化室内で190℃まで加熱して昇華させてガス化した。続いて、このガスを熱分解室に導入し、210℃に加熱することで熱分解し、ラジカルパラキシリレンを発生させた。
一方、前記の焼結体は、直径約10cm、厚さ約110cmの内寸を有した回転ドラムを備えたチャンバに300個投入した。そして、回転ドラムを20rpmで回転させながら、前記のラジカルパラキシリレンをチャンバ内に、100g/hrの流量で導入した。この状態を20分間継続させた後、ラジカルパラキシリレンのチャンバへの導入を停止し、さらに回転ドラムの回転を停止させ、チャンバから焼結体を取り出した。
コーティング剤の原料となるジパラキシリレン(粉状)には、スリーボンド社製のパリレンNを用い、これをバキュームポンプで10〜30hPaとした気化室内で190℃まで加熱して昇華させてガス化した。続いて、このガスを熱分解室に導入し、210℃に加熱することで熱分解し、ラジカルパラキシリレンを発生させた。
一方、前記の焼結体は、直径約10cm、厚さ約110cmの内寸を有した回転ドラムを備えたチャンバに300個投入した。そして、回転ドラムを20rpmで回転させながら、前記のラジカルパラキシリレンをチャンバ内に、100g/hrの流量で導入した。この状態を20分間継続させた後、ラジカルパラキシリレンのチャンバへの導入を停止し、さらに回転ドラムの回転を停止させ、チャンバから焼結体を取り出した。
また、比較のため、上記と同様にして製造した焼結体の表面に、以下のようにしてエポキシ樹脂によるコーティングを施した。
すなわち、焼結体に対し、前処理としてバレル・エッチング処理を施した後、この焼結体に、熱硬化性のエポキシ樹脂をスプレー法により吹き付けてコーティング層を形成した。用いたエポキシ樹脂は、長島特殊塗料株式会社製、S−No.6 超防錆プライマー C−7261 グレー 主剤とした。また、エポキシ樹脂は、その膜厚が25±10μmとなるように、テーブル上に並べた焼結体の片面に吹き付けた。
吹き付けの終了後、焼結体を、160℃で60分加熱してキュアー処理し、エポキシ樹脂を仮硬化させた。
すなわち、焼結体に対し、前処理としてバレル・エッチング処理を施した後、この焼結体に、熱硬化性のエポキシ樹脂をスプレー法により吹き付けてコーティング層を形成した。用いたエポキシ樹脂は、長島特殊塗料株式会社製、S−No.6 超防錆プライマー C−7261 グレー 主剤とした。また、エポキシ樹脂は、その膜厚が25±10μmとなるように、テーブル上に並べた焼結体の片面に吹き付けた。
吹き付けの終了後、焼結体を、160℃で60分加熱してキュアー処理し、エポキシ樹脂を仮硬化させた。
続いて、焼結体を反転させて前記のテーブル上に並べ、前記と同様にして、エポキシ樹脂をスプレー法により吹き付けた。
この後、焼結体を、160℃で60分加熱し、エポキシ樹脂を硬化させた。
この後、焼結体を、160℃で60分加熱し、エポキシ樹脂を硬化させた。
上記のようにして得られた、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体と、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体、さらに、何らのコーティングを施さない焼結体について、塩水噴霧試験を行った。
塩水噴霧試験は、濃度3%、30℃の塩水を流量10L(リットル)/minで噴霧し続け、そのときの焼結体の磁歪値の変化(インダクタンスの変化量△L)を計測した。
その結果を図4に示す。
塩水噴霧試験は、濃度3%、30℃の塩水を流量10L(リットル)/minで噴霧し続け、そのときの焼結体の磁歪値の変化(インダクタンスの変化量△L)を計測した。
その結果を図4に示す。
この図4(a)に示すように、何らのコーティングを施さない焼結体、およびエポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体については、時間の経過とともに磁歪値が大幅に低下しているのに対し、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体は磁歪値の低下が見受けられず、図4(b)に示すように、48時間経過後、72時間経過後であっても磁歪値の変化率(測定開始時点の磁歪値を基準としたときの変化率)が10%以内である。これにより、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングによって高い防錆性を備えることができることがわかる。
また、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体と、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体、さらに、何らのコーティングを施さない焼結体について、高温・高圧下での耐性試験(いわゆるPCT試験)を行った。
試験は、120℃、2026hPa(2気圧)の環境下において、焼結体に1kOeの磁界を印加したときの伸び率の経時的な変化を、磁歪値を測定することで計測した。
その結果を図5に示す。
試験は、120℃、2026hPa(2気圧)の環境下において、焼結体に1kOeの磁界を印加したときの伸び率の経時的な変化を、磁歪値を測定することで計測した。
その結果を図5に示す。
この図5(a)に示すように、何らのコーティングを施さない焼結体については、時間の経過とともに、磁歪値が大幅に低下しているのに対し、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体、およびポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体は磁歪値の低下が見受けられない。図5(b)に示すように、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体では、48時間経過後までの伸び率の変化率は5%以内、72時間経過後までの伸び率の変化率は8%以内となっている。これにより、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体、およびポリパラキシリレン樹脂によるコーティングによって、高温・高圧環境下において、高い耐性を備えることができることがわかる。
さらに、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体と、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体の顕微鏡写真、SEM写真をそれぞれ図6、図7に示す。
図6(a)に示すように、エポキシ樹脂によるコーティングが施された焼結体では、エポキシ樹脂が、焼結体の孔部に完全に入り込んでおらず、コーティング層として見れば、多数のピンホールが形成されていることになるのが分かる。これに対し、図6(b)および図7に示すように、ポリパラキシリレン樹脂によるコーティングが施された焼結体では、ポリパラキシリレン樹脂が焼結体の孔部に入り込み、焼結体を確実に被覆できているのが分かる。
10…磁歪素子、11…磁歪素子本体(焼結体)、12…コーティング層、100…圧力センサ(センサ)、102…コイル
Claims (10)
- 圧力が加わると透磁率が変化する磁歪素子本体と、
前記磁歪素子本体の表面を覆うように形成された、ポリパラキシリレンからなるコーティング層と、
を備えることを特徴とする磁歪素子。 - 前記コーティング層の膜厚が10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁歪素子。
- 濃度3%、30℃の塩水を連続して噴霧したとき、48時間経過後の磁歪値の低下率が10%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁歪素子。
- 120℃、2026hPaの雰囲気下で、1kOeの駆動磁界を印加したときの、48時間経過後までの伸び率の変化率が5%以内であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁歪素子。
- 圧力が加わると透磁率が変化する磁歪素子と、
前記磁歪素子の外周側に設けられたコイルと、を備え、
前記磁歪素子は、焼結体からなる磁歪素子本体と、前記磁歪素子本体の表面を覆うように形成されたポリパラキシリレンからなるコーティング層とを備えることを特徴とするセンサ。 - 前記磁歪素子本体の焼結体密度が97%以下であることを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
- 原料粉末を磁場中成形して得た成形体を焼結し、焼結体を形成する工程と、
前記焼結体の表面を、ポリパラキシリレンからなるコーティング剤で覆う工程と、
を含むことを特徴とする磁歪素子の製造方法。 - 前記焼結体の密度が97%以下であることを特徴とする請求項7に記載の磁歪素子の製造方法。
- 前記コーティング剤によって前記焼結体の表面に形成されるコーティング層の膜厚が10μm以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の磁歪素子の製造方法。
- 前記焼結体の表面を前記コーティング剤で覆う工程では、前記ポリパラキシリレンの原料を昇華させてガス化し、得られたガスをさらに加熱することで前記原料をラジカル化して、前記焼結体が収容されたチャンバ内に導入することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の磁歪素子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004370554A JP2006179639A (ja) | 2004-12-22 | 2004-12-22 | 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004370554A JP2006179639A (ja) | 2004-12-22 | 2004-12-22 | 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006179639A true JP2006179639A (ja) | 2006-07-06 |
Family
ID=36733462
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004370554A Withdrawn JP2006179639A (ja) | 2004-12-22 | 2004-12-22 | 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006179639A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5342081B1 (ja) * | 2013-05-18 | 2013-11-13 | 丸山 徹 | 歪振動発生システム |
-
2004
- 2004-12-22 JP JP2004370554A patent/JP2006179639A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5342081B1 (ja) * | 2013-05-18 | 2013-11-13 | 丸山 徹 | 歪振動発生システム |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2508279B1 (en) | Powder for magnet | |
JP2024038123A (ja) | 焼結磁性合金及びそれから誘導される組成物の粒界工学 | |
JP4650593B2 (ja) | 希土類元素を含む鉄系磁石合金粉、およびその製造方法、得られるボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石、並びに圧密磁石 | |
CN110168674B (zh) | 含有Sm-Fe-N系晶粒的磁体粉末和由该磁体粉末制造的烧结磁体以及它们的制造方法 | |
US20110234346A1 (en) | Bonded rare earth magnet | |
JP2001358377A (ja) | 超磁歪材料とその製造方法、およびそれを用いた磁歪アクチュエータと磁歪センサ | |
TW200831686A (en) | Co-Fe-Zr based alloy sputtering target material and process for production thereof | |
JP2008189996A (ja) | Co−Fe系合金スパッタリングターゲット材およびその製造方法 | |
WO1998035364A1 (fr) | Procede de fabrication d'un aimant a plaque mince possedant une structure microcristalline | |
JP2013161829A (ja) | 希土類磁石成形体およびその製造方法、並びに希土類磁石を含む磁石モータ | |
JP2006169618A (ja) | 希土類元素を含む鉄系磁石合金粉、およびその製造方法、得られるボンド磁石用樹脂組成物、ボンド磁石、並びに圧密磁石 | |
JP2005336513A (ja) | 軟磁性材料の製造方法、軟磁性材料、圧粉磁心の製造方法、および圧粉磁心 | |
JP2019075493A (ja) | 磁石接合体 | |
WO2001020620A1 (fr) | AIMANT LIE DE R-Fe-B RESISTANT A LA CORROSION, POUDRE DE FORMATION D'AIMANT LIE DE R-Fe-B ET LEUR PROCEDE DE PREPARATION | |
JP2007294535A (ja) | 磁歪素子 | |
JP2009164470A (ja) | 磁性粉及び圧粉磁心 | |
JP2006019721A (ja) | 希土類磁石及びその製造方法 | |
JP2006179639A (ja) | 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 | |
JP5403418B2 (ja) | Co−Fe−Ni系合金スパッタリングターゲット材の製造方法 | |
JP2005209669A (ja) | 希土類磁石及びそれを用いた磁気回路 | |
US7335317B2 (en) | Method of preparing polymer composite using unidirectionally solidified giant magnetostrictive material | |
JP2012199462A (ja) | 希土類ボンド磁石、希土類磁石粉末とその製造方法および希土類ボンド磁石用コンパウンド | |
JP4560619B2 (ja) | 永久磁石膜 | |
JP2018081970A (ja) | 希土類元素を含む鉄系磁石合金粉末とその製造方法、希土類ボンド磁石用組成物、および、希土類磁石 | |
JP4318309B2 (ja) | 磁歪素子、センサ、磁歪素子の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20090414 |