JP2006176680A - 耐熱性難燃性樹脂組成物及び絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、電子機器用の絶縁電線に用いる組成物で、より高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性が要求される耐熱性難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 かゝる本発明は、低密度ポリエチレン50〜60質量部と、直鎖状低密度ポリエチレン25〜35質量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜20質量部との範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、ハロゲン系難燃剤60〜100質量部と、無機系難燃剤15〜25質量部と、酸化防止剤6〜15質量部と、架橋助剤3〜8質量部とからなり、電子線照射により架橋させる耐熱性難燃性樹脂組成物にあり、これにより、より高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性を得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】 かゝる本発明は、低密度ポリエチレン50〜60質量部と、直鎖状低密度ポリエチレン25〜35質量部と、スチレン系熱可塑性エラストマー10〜20質量部との範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、ハロゲン系難燃剤60〜100質量部と、無機系難燃剤15〜25質量部と、酸化防止剤6〜15質量部と、架橋助剤3〜8質量部とからなり、電子線照射により架橋させる耐熱性難燃性樹脂組成物にあり、これにより、より高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、例えば電子機器用の電線などに用いる耐熱性難燃性樹脂組成物及びこれを用いた絶縁電線に関するものである。
近年、電子機器用の電線において、より高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性が要求されてきている。特に、ポリ塩化ビニル(PVC)はコスト面のみならず、耐熱性、引っ張り特性、難燃性などに優れているため、よく使用されている。
一方、PVCより特性的に劣るものの、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂にあっても、種々の改良を施して、耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性を高めたものが種々提案されている(特許文献1〜3)。
特開2002−42574号公報
特開平5−54724号公報
特公平6−8655号公報
しかしながら、このような特性に対する要求は、益々厳しくなり、これらの樹脂組成物では、以下のように問題があった。
先ず、特許文献1では、ベース樹脂にエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、これに金属水酸化物の難燃性を添加しているが、金属水酸化物を大量に添加すると、柔軟性が不十分になるという問題あった。つまり、破断点伸び300%以上(引っ張り速度200mm/min)という要求には、対応することができない。
特許文献2では、ベース樹脂にポリエチレン(PE)とEVAの混和物を用い、これに有機ハロゲン系難燃剤、酸化アンチモン、及びハイドロタルサイトを添加しているが、これでは、高い難燃性(VW−1レベル:UL規格)を得ることができない恐れがあった。また、架橋助剤を用いず、高線量の電子線照射を行っているため、ベース樹脂の効率的な架橋が行われず、耐熱性が不十分になるという懸念もある。
特許文献3では、ベース樹脂にPEとEVAの混和物を用い、これに非ハロゲン系難燃剤を添加しているが、これでは、高い難燃性(VW−1レベル:UL規格)を得ることができない恐れがあった。
そこで、本発明者等が、より高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性を求めて、種々の試験を行った。その結果、ベース樹脂を、それぞれ特定の特性を有する、低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とスチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系SEBS)で構成する一方、この混和物に、特定量のハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤と、フエノール系とイオウ系の混合物などからなる酸化防止剤、架橋助剤を添加して、電子線照射により架橋させたところ、所望の特性を有する優れた耐熱性難燃性樹脂組成物が得られることを見い出した。そして、この樹脂組成物を被覆することにより、優れた絶縁電線が得られることを見い出した。
本発明は、このような観点に立ってなされたもので、上記条件とすることにより、所望の特性を有する優れた耐熱性難燃性樹脂組成物を提供し、また、これを用いた絶縁電線(ケーブルも含む)を提供するものである。
請求項1記載の本発明は、破断点伸び400%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR0.3g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン50〜60質量部と、破断点伸び400%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR3.0g/10min(190℃、2.16Kg)以下の直鎖状低密度ポリエチレン25〜35質量部と、破断点伸び500%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR10.0g/10min(230℃、5Kg)以下のスチレン系熱可塑性エラストマー10〜20質量部との範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、ハロゲン系難燃剤60〜100質量部と、無機系難燃剤15〜25質量部と、酸化防止剤6〜15質量部と、架橋助剤3〜8質量部とからなり、電子線照射により架橋させることを特徴とする耐熱性難燃性樹脂組成物にある。
請求項2記載の本発明は、前記無機系難燃剤が三酸化アンチモンであることを特徴とする請求項1記載の耐熱性難燃性樹脂組成物にある。
請求項3記載の本発明は、前記スチレン系熱可塑性エラストマーがスチレン系SEBSであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱性難燃性樹脂組成物にある。
請求項4記載の本発明は、前記請求項1、2又は3記載の組成物を、被覆したことを特徴とする絶縁電線にある。
本発明によると、特定の特性を有する、特に、破断点伸びがいずれも400%以上と大きな特性の低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とスチレン系熱可塑性エラストマー(例えばスチレン系SEBS)とにより、ベース樹脂を構成し、この混和物に、特定量のハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤と、酸化防止剤、架橋助剤を添加して、電子線照射により架橋させるものであるため、優れた耐熱性難燃性樹脂組成物が得られる。つまり、高い耐熱性、柔軟性、難燃性、耐電圧性などの特性が得られる。これを、絶縁電線の絶縁材料として用いた場合、優れた絶縁電線が得られる。
本発明で用いるLDPEは、引っ張り試験(引っ張り速度200mm/min)で、破断点伸び400%以上、MFR0.3g/10min(230℃、2.16Kg)以下の特性のものである。このようなLDPEの市販品としては、例えば、三井化学社製のミラソン3530(商品名)などが挙げられる。
本発明で用いるLLDPEは、引っ張り試験(引っ張り速度200mm/min)で、破断点伸び400%以上、MFR3.0g/10min(230℃、2.16Kg)以下の特性のものである。このようなLLDPEの市販品としては、例えば、三井化学社製のウルトゼックス2021L(商品名)などが挙げられる。
本発明で用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、引っ張り試験(引っ張り速度200mm/min)で、破断点伸び500%以上、MFR10.0g/10min(230℃、5Kg)以下の特性のものである。このものとして、特にスチレン系SEBSの使用が好ましく、その市販品としては、例えば、島貿易社製のクレイトンG1652(商品名)などが挙げられる。
これらの3者は、ベース樹脂として混合され、その総質量部数を100質量部としたとき、LDPEは50〜60質量部、LLDPEは25〜35質量部、スチレン系SEBS10〜20質量部の範囲とする。ここで、LDPEを50〜60質量部としたのは、50質量部未満では所望の耐熱性が得られず、60質量部を超えると所望の柔軟性(伸び)が得られないからである。また、LLDPEを25〜35質量部としたのは、25質量部未満では所望の耐熱性が得られず、25質量部を超えると所望の柔軟性(伸び)が得られないからである。さらに、スチレン系SEBSを10〜20質量部としたのは、10質量部未満では所望の柔軟性(伸び)が得られず、20質量部を超えると所望の耐熱性が得られないからである。つまり、このベース樹脂の場合、柔らかく、伸びのあるLDPEをメイン樹脂とし、これに約半分前後の配合量となる、LDPEより剛性、耐熱性が高いLLDPEを配合して、LDPEの特性を増強する一方、常温下でゴム弾性を呈し高温では熱可塑性を呈する比較的少量のスチレン系SEBSを配合して、低白化性を付与し、総合的な特定の向上を図ったものである。
本発明で用いるハロゲン系難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系難燃剤や塩素系難燃剤が使用できる。これらの市販品としては、臭素系難燃剤であるアルベマール浅野社製のSAYTEX8010(商品名)、塩素系難燃剤であるソマール社製のデクロランプラス25(商品名)が挙げられる。そして、その配合量を60〜100質量部としたのは、60質量部未満では所望の難燃性が得られず、100質量部を超えると所望の柔軟性(伸び)が得られなくなるからである。また、ハロゲン系難燃剤の場合、難燃性能が高く、その添加量を60〜100質量部程度に抑えることができるため、組成物全体の柔軟性が損なわれることがない。これに対して、例えば、水酸化物マグネシウムなどの金属水酸化物の難燃剤を用いる場合、難燃性能が低いため、より大量の添加量(100質量を超える量)とする必要があるため、組成物全体の柔軟性が損なわれることが避けられない。
本発明で用いる無機系難燃剤としては、特に限定されないが、三酸化アンチモンの使用が望ましい。そして、その配合量を15〜25質量部としたのは、15質量部未満では所望の難燃性が得られず、25質量部を超えると所望の柔軟性(伸び)が得られなくなるからである。この無機系難燃剤は、上記ハロゲン系難燃剤の難燃性を補助する機能があり、その分、ハロゲン系難燃剤の添加量が少なくて済むことになる。
本発明で用いる酸化防止剤は、特に限定されないが、フエノール系とイオウ系の併用が望ましく、その混合比は1:1〜1:2が好ましい。フエノール系の市販品としては、旭電化社製のマークAO−18(商品名)、イオウ系の市販品としては、旭電化社製のアデスタブCDA−1M(商品名)が挙げられる。そして、その配合量を6〜15質量部としたのは、6質量部未満では所望の耐熱性が得られず、15質量部を超えるとブルーム(滲み出し)が生じるからである。つまり、この酸化防止剤の配合により、脂組成物の耐熱性の向上が図られるようになる。
本発明で用いる架橋助剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)の使用が望ましい。その市販品としては、新中村化学工業社製のNKエステルTMPT(商品名)が挙げられる。そして、その配合量を3〜8質量部質量部としたのは、3質量部未満では所望の耐熱性が得られず、8質量部を超えるとブルームの恐れがあるからである。
また、本発明では、上記組成物に対して、必要により、適宜その他の添加剤を添加することができる。例えば、銅害防止剤、白化防止用の水素添加したゴム材料、顔料などである。
このような配合からなる本発明の組成物の場合、例えば、絶縁電線の絶縁体などとして被覆する際には、電子線照射により架橋させる。電子線照射は、開放された工場内の大気圧中で行ってもよいが、より好ましくは、適当な密閉手段を講じて窒素雰囲気中で行うのが望ましい。そして、その照射強度は4〜12Mrad程度が好ましい。この電子線照射による架橋により、組成物特性の向上が得られる。また、電子線照射を窒素雰囲気中で行った場合、電子線照射によって生じる酸素ラジカル(大気中酸素及び溶存酸素)による樹脂の劣化を防ぐことが可能となる。
〈実施例、比較例〉
表1〜表5に示した配合からなる、本発明の耐熱性難燃性樹脂組成物(実施例1〜13)と、本発明の条件を欠く樹脂組成物(比較例1〜18)により、サンプルの絶縁電線を製造した。なお、サンプルの絶縁電線は、外径φ0.4mmの導体上に厚さ0.3〜0.4mmの絶縁体として、上記各組成物を押出被覆し(被覆外径φ1.0〜1.2mm)、窒素雰囲気中で電子線照射を行った。電子線照射の強度は4〜16Mradであった。また、表中の配合材料の数値は質量部数を示す。
表1〜表5に示した配合からなる、本発明の耐熱性難燃性樹脂組成物(実施例1〜13)と、本発明の条件を欠く樹脂組成物(比較例1〜18)により、サンプルの絶縁電線を製造した。なお、サンプルの絶縁電線は、外径φ0.4mmの導体上に厚さ0.3〜0.4mmの絶縁体として、上記各組成物を押出被覆し(被覆外径φ1.0〜1.2mm)、窒素雰囲気中で電子線照射を行った。電子線照射の強度は4〜16Mradであった。また、表中の配合材料の数値は質量部数を示す。
得られた各サンプルの絶縁電線に対して、次のような物性評価を行った。
先ず、「耐熱性1」、これは180℃×168時間の加熱後、引っ張り試験(UL−1581規格に準拠)を行い、その伸び残率を求めた。そして、伸び残率が80%以上の場合を合格とし、80%未満は不合格とした。また、「耐熱性2」、これは2.45Nの荷重下で、180℃×1時間の加熱変形試験(UL−758規格に準拠)を行い、その変形率を求めた。そして、加熱変形量が50%以下の場合を合格とし、50%を超える場合は不合格とした。
先ず、「耐熱性1」、これは180℃×168時間の加熱後、引っ張り試験(UL−1581規格に準拠)を行い、その伸び残率を求めた。そして、伸び残率が80%以上の場合を合格とし、80%未満は不合格とした。また、「耐熱性2」、これは2.45Nの荷重下で、180℃×1時間の加熱変形試験(UL−758規格に準拠)を行い、その変形率を求めた。そして、加熱変形量が50%以下の場合を合格とし、50%を超える場合は不合格とした。
「柔軟性」、これは引っ張り試験を行い、その引張伸びを求めた。そして、引張伸びが300%以上の場合を合格とし、300%未満は不合格とした。
「難燃性」、これはVW−1:UL−94規格に準じて行った。試験は全てのサンプルについて5回行い、5本中5本全て自己消化したとき合格(5/5)とし、それ以外のとき不合格(1/5〜4/5)とした。
「耐電圧性」、これは各サンプルを水道水に浸漬し、7KV ×1分間印加して破壊のないときを合格とし、「○」で表示し、破壊したときを不合格とし、「×」で表示した。
「ブルームの有無」、これは各サンプルを目視により観察した。そして、5本中5本全て染み出し異常なしのときを合格とし、「○」で表示し、それ以外のときを不合格とし、「×」で表示した。
上記表1〜表5から、本発明に係る耐熱性難燃性樹脂組成物を用いた絶縁電線(実施例1〜13)にあっては、すべての特性、即ち耐熱性1〜2、柔軟性、難燃性、耐電圧性、ブルームの有無について、良好な結果が得られていることが判る。
これに対して、本発明の要件を欠く絶縁電線(比較例1〜18)では、いずれかの特性において問題があることが判る。なお、比較例1は電子線照射のない場合、比較例2は電子線照射の強度が16Mradと大き過ぎる場合、比較例3〜4はLDPEが少な過ぎる場合、比較例5〜6はLDPEが多過ぎる場合、比較例7はLLDPEが少な過ぎる場合、比較例8はスチレン系SEBSが多過ぎる場合、比較例9はLLDPEが多過ぎる場合、比較例10はスチレン系SEBSが少な過ぎる場合、比較例11はハロゲン系難燃剤が少な過ぎる場合、比較例12は無機系難燃剤が少な過ぎる場合、比較例13はハロゲン系難燃剤が多過ぎる場合、比較例14は無機系難燃剤が多過ぎる場合、比較例15は酸化防止剤が少な過ぎる場合、比較例16は酸化防止剤が多過ぎる場合、比較例17は架橋助剤が無添加(無し)の場合、比較例18は架橋助剤が多過ぎる場合である。
Claims (4)
- 破断点伸び400%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR0.3g/10min(190℃、2.16Kg)以下の低密度ポリエチレン50〜60質量部と、破断点伸び400%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR3.0g/10min(190℃、2.16Kg)以下の直鎖状低密度ポリエチレン25〜35質量部と、破断点伸び500%以上(引っ張り速度200mm/min)、MFR10.0g/10min(230℃、5Kg)以下のスチレン系熱可塑性エラストマー10〜20質量部との範囲で混合されるベース樹脂100質量部と、ハロゲン系難燃剤60〜100質量部と、無機系難燃剤15〜25質量部と、酸化防止剤6〜15質量部と、架橋助剤3〜8質量部とからなり、電子線照射により架橋させることを特徴とする耐熱性難燃性樹脂組成物。
- 前記無機系難燃剤が三酸化アンチモンであることを特徴とする請求項1記載の耐熱性難燃性樹脂組成物。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマーがスチレン系SEBSであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱性難燃性樹脂組成物。
- 前記請求項1、2又は3記載の組成物を、被覆したことを特徴とする絶縁電線。
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2004
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