JP2006174833A - 細胞の成長を促進する方法及びターゲット遺伝子の発現による遺伝子産物の生産量を増加する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】遺伝子組み換え型細胞の成長を促進する方法及び発現させたいターゲット遺伝子産物の生産量を増加させることができる方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、アスパルターゼ(aspartase)をコードする核酸配列を含む組み換えベクターを構築して、アスパルターゼの活性を持つ遺伝子組み換え型細胞株(recombinant cells)が製造される。
【選択図】図3
【解決手段】本発明では、アスパルターゼ(aspartase)をコードする核酸配列を含む組み換えベクターを構築して、アスパルターゼの活性を持つ遺伝子組み換え型細胞株(recombinant cells)が製造される。
【選択図】図3
Description
本発明は、アスパルターゼをコードする核酸配列を含むように構築された組み換えベクターを利用して、宿主細胞の成長を促進する方法及びターゲット遺伝子産物の生産量を増加する方法に関する。
遺伝子工学の技術を利用することで、細胞中で組み換えポリぺプチド/タンパク質(recombinant polypeptide/protein)を大量生産することができる。この技術の原理によれば、まず、ターゲット遺伝子(target gene)を適切なベクターに導入し、クローニング(cloning)によって、その遺伝子組み換えベクターを得る。該ターゲット遺伝子としては、工業用又は農業用酵素、治療用タンパク質(therapeutic proteins)、抗原性のポリぺプチド(antigenic polypeptides)及び抗体(antibodies)などが挙げられる。クローニングの後、得られた組み換えベクターを受容能の良い宿主細胞(competent host cell)に形質転換(transform)する。形質転換の際に、宿主細胞の受容能が不安定であることが原因で、ターゲット遺伝子の一部が失われてしまう可能性があるが、この問題は、ターゲット遺伝子を直接に宿主細胞の染色体ゲノムに組み込む(insertion)操作により解決できる。遺伝子をゲノムに組み込むのは、一般的にはファージ/ウイルス感染(phage/virus infection)、トランスポゾンの転位(transposition by transposon)、または相同的遺伝子組み換え(homologous recombination)などの幾つかの方法で達成できる(非特許文献1)。以上の方法で作られた組み換え型宿主細胞(recombinant host cell)を適切な培養基と培養条件により培養すれば、ターゲット遺伝子の発現が適当に誘導され、必要な遺伝子産物を大量生産することができる。
現在に至っては、組み換えポリペプチド/タンパク質の生産に使える宿主細胞の中で、大腸菌(Escherichia coli)は最も広範に利用されており、最も好結果を生む生産用細胞とされている。そのため、その菌種の細胞に相応しいベクター(或いはプラスミドと呼ばれる)の種類も沢山開発されている。これには、高コピー数プラスミド(例えばColE1)、中コピー数プラスミド(例えばp15A)、低コピー数プラスミド(例えばpSC101)などが含まれる(非特許文献2)。
これらのベクターは一般的に、人工の誘導プロモーターを含んで構築される。よく使用されている人工プロモーターは、lac、lpp、trp、tac、trc、araBAD、γPRPL、T7 A1、T7プロモーターなどがある。これらのプロモーターの誘導には、イソプロピルチオガラクトピラノシド(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside, IPTG)、ラクトース(lactose)、アラビノース(arabinose)などの添加、または温度の変化(非特許文献2)等の幾つかの方法が利用される。つまり、ターゲット遺伝子を該人工プロモーター断片の下流に導入することで、そのプロモーターの調節特性によって、適切に誘導メカニズムをスタートし、ターゲット遺伝子の発現を調節することが可能となる。
一般的には、異種生物に起源する遺伝子のほとんどを大腸菌内で発現できることが分かっている。また、現在に至っては、関連する操作技術の発展も相当に熟練している。しかし、実用上、解決のできていない些細な問題がまだ残っている。例えば、組み換えポリペプチド/タンパク質を誘導によって大量生産するときに、生産細胞は、極大な生理代謝的負荷(metabolic burden)を受ける。つまり、生産細胞内におけるストレス反応(stress responses)が起こることで、細胞の成長が緩和になる(非特許文献3)。その結果、細胞内で熱ショック蛋白(heat shock proteins)が大量に生産され、生産されたばかりの組み換えポリペプチド/タンパク質がその分解酵素に攻撃されて(非特許文献4)、細胞の成長が停滞することになる(非特許文献5)。また、rRNAsの破壊を起こす可能性があるため、リボソームが崩壊されて、最終的に細胞が死に至ることもある(非特許文献6)。さらに重要なのは、形質転換により宿主細胞が大量に生産したポリぺプチド/タンパク質は、宿主細胞の代謝成長に関わっているか否か、また毒性を持っている否かに関わらず、宿主細胞におけるストレス反応を招き、そのためにターゲット遺伝子の産物が大量生産できないことがよく問題視されている。
その上、異種生物に起源する遺伝子が大腸菌で大量に発現することにより、該遺伝子の産物は細胞内で封入体(inclusion body)として生成される。大腸菌内でのチオレドキシン(thioredoxin)の大量生産によって、細胞内の還元状態が促進され、その結果、発現された真核細胞のタンパク質の溶解性が高まる現象が、過去の研究成果から明らかにされている(非特許文献7,8)。正常な細胞の生理的状況から見ると、グルタチオン/グルタ・レドキシン(glutathione/gluta-redoxin)の二成分から構成された生体反応によって、リボヌクレオチド還元酵素(ribonucleotide reductase)、及び酸化的応答転写因子(oxidative response transcription factor)など大腸菌の細胞内における二種類の細胞内酵素(intracellular enzymes)が、該周期的生体反応に関与する際、反応のメカニズムを経由することで、ジスルファイドが生成される(非特許文献9,10)。
工業的バイオ加工工程において、好気性の形質転換用宿主細胞の発酵培養に必須な酸素を提供することで、宿主細胞に対しては、細胞の成長やターゲット遺伝子産物のポリぺプチド/タンパク質の生産に極大な影響がある。発酵液内の酸素溶解量は、機器による物理的方法で改善できる。例えば、攪拌速度の増加、通気量、或いは攪拌器にある葉状ファンのデザインなどである。ただし、これらの方法は、大規模な発酵槽では効果が極めて限られており、なお且つ、エネルギーの浪費で、発酵によるコストが高まる。特に、細胞密度が高くなって、発酵工程が実施されつづけると、酸素の消耗量が倍増するため、発酵液に溶け込む酸素の量が低下し、細胞の成長や、ターゲットのポリぺプチド/タンパク質の生産も制限される。Khoslaらの前の研究によると、酸素溶解度の低い条件において発酵培養を実施する工程で、透明な硝子状カイソウコン菌種(Vitreoscilla sp.)由来の血色素ヘモグロビン(hemoglobin)遺伝子を発現する大腸菌細胞の成長が促進され、細胞の総質量が増加することが明らかにされている(非特許文献11)。
透明な硝子状カイソウコン菌は、細菌に属する菌種であって、酸素の乏しい環境(oxygen-poor environments)で生存できる好気性の糸状細菌群(filamentous aerobic bacteria)に分類されている。酸素溶解度の低い培養条件において、透明なカイソウコン菌内では、可溶性のヘモグロビンが誘導によって生成されることが知られている。分光的(spectral)、構造的(structural)及び動力学的(kinetic)な方法で分析した結果、該透明硝子状カイソウコン菌のヘモグロビンと真核生物におけるヘモグロビン(eucaryotic hemoglobins)が同源性(homology)であることが明らかに証明された(非特許文献12〜14)。
Khoslaらの研究成果は、特許文献1に掲載されている。それによると、透明硝子状カイソウコン菌のヘモグロビンをコードする核酸配列を包含するプラスミドによる形質転換宿主細胞は、細胞成長が増進され、細胞の代謝物及びタンパク質の生産に使用されたという。その他には、酸素溶解度の低い条件における発酵培養工程では、透明硝子状カイソウコン菌のヘモグロビンを生産する組み換え型大腸菌株によって、細胞自身のタンパク質(非特許文献15)及びターゲットタンパク質の組み換えアルファ・アミラーゼの生成量(非特許文献16)が両方とも有効に増加したとの報告がある。また、バシラス属枯草菌(Bacillus subtilis)や、中国ハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell)を宿主細胞とした際、酸素溶解度の低い条件において、透明硝子状カイソウコン菌のヘモグロビン遺伝子を有する組み換え型細胞では、同じようにより大量の組み換えタンパク質が生成される(非特許文献17,18)。
実際に発酵操作する時に、フェッド・バッチ発酵法(fed-batch fermentation)を応用することで、細胞密度を有効に高める培養が上手くできる。しかも、発酵体積単位当たりの細胞質量の増加によっては、タンパク質の総量も高まるはずである。しかしながら、細胞が発酵により代謝する際、廃棄物質が例えば有機酸類を生成する。有機酸類物質の中の酢酸は、細胞電子伝達系(または呼吸系)を破壊する能力があるため、ATPの生合成に影響を与える。過去の研究によると、酢酸は細胞の正常な生理代謝のメカニズムを抑制する役割があることが知られている(非特許文献19,20)。酢酸は、中性pHの環境においては、イオン化(CH3COO-)と陽子化(CH3COOH)の両方が存在すると考えられており、陽子化の酢酸は、弱疎水性を持つので、細胞膜を通って細胞内に入れる。該酢酸がpH 7.5の細胞内で、CH3COO-とH+に解離し、膜内のpHを低下させる働きをする。細胞膜内外のpH差が減少するために、陽子の推動力(proton motive force)が低下し、その結果、細胞内でのエネルギー生成量が結果として減少することが明らかとされている。
好気(aerobic)条件下での細胞の酢酸合成メカニズムは未知であったが、一般的には、細胞におけるグルコースの摂取速度が適切な調節を受けられなくて、且つTCA回路(tricarboxylic acid cycle)の効率が良くないため、摂取した炭素源は、糖分解(glycolysis)経路及びTCA回路における代謝流動(metabolic flux)の配布が不均一であることが認められた。それで、細胞内で酢酸が生成されたという(非特許文献21)。したがって、前の研究については、グルコースの摂取率の低い変異株の利用(非特許文献22)、または発酵方法の応用により細胞の成長率をコントロールして酢酸の生成を抑える(非特許文献23)ことが採られている。これらの方法は、酸素の溶解度(DO stat)、pH値(pH stat)、及び培養基の栄養補給(substrate feeding)を定量的に維持する技術などを含む。
酢酸の生成に影響を与える原因は沢山ある。例えば、成長率、培養基、温度、酸素溶解度、及び細胞自身などがある。ただし、細胞内における酢酸は、酵素ホスホトランスアセチラーゼ(phosphotransacetylase,pta)とアセテートキナーゼ(acetate kinase,ack)との転化による代謝経路という可逆的反応を経由して生成される。したがって、先の研究では、遺伝子エンジニアリング技術を利用して、遺伝子ptaまたはackの含まない組み換え菌株を構築すること(非特許文献24,25)や、酢酸及び酢酸の生合成メカニズムに関わっている前駆物質などを、その他の細胞に傷害のないものに転化すること(非特許文献26,27)によって細胞が成長する際の酢酸の蓄積を減少し、それにより、細胞自身の成長及び組み換えタンパク質の生産量を増進できることが知られている。
さらに、先の研究において、炭素源の補給経路(anaplerotic pathway)が変わることによって、細胞での炭素源の利用効率が上昇し、炭素源の浪費が減ることが知られている。大腸菌は、リン酸転移酵素システム(phosphotransferase system)という連続的反応を利用して、細胞外のグルコースを摂取することが分かっている。それによれば、細胞内における代謝中間産物のホスホエノールピルビン酸(phosphoenolpyruvate)が、自身のリン酸をリン酸転移酵素システムの転移反応を通じて、細胞膜を通して細胞内に入り込むグルコースに提供し、該グルコースがリン酸化されて、細胞内でグルコース 6−リン酸(glucose 6-phosphate)が生成される。糖分解経路(glycolysis)に生成したホスホエノールピルビン酸は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(phsophoenolpyruvate carboxylase, ppc)によって、グルコース 6−リン酸をオキサロ酢酸(oxaloacetate)に転化し、そのオキサロ酢酸がTCA回路(tricarboxylic acid cycle)に供与する炭素源となる(図1)。Chaoらの研究によると、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの活性を高めれば、大腸菌内における炭素流動(carbon flux)がTCA循環に向かって入り込むため、酢酸の生成経路に導入することが避けられる。それに、ホスホエノールピルビン酸がリン酸転移酵素システムという反応経路から離れられると、細胞のグルコースの摂取量を下がる。その結果、細胞の成長量(growth yield−ここでは、細胞がグルコース1 gを消耗するにつき増加する細胞質量のことを指す)が倍増できる(非特許文献28)。同様に、大腸菌細胞の中で、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼとTCA回路にある炭素源の補給酵素であるイソクエン酸リアーゼとの活性が同時に増加することにより、細胞内で酢酸の生合成を完全かつ有効にコントロールできる、とFarmerらによる非特許文献29に記載されている。一方、Marchらの研究については、大腸菌中でピルビン酸カルボキシラーゼを発現させることで、形質転換した組み換え宿主細胞は、炭素の利用により効率的であって、その上、酢酸の生成も減った。その結果、組み換えタンパク質の生成量が68 %アップすることが知られている(非特許文献30)。
組み換え型ポリぺプチド/タンパク質の高生産量はバイオ工業の産業的競争力に関わるため、組み換え型ポリぺプチド/タンパク質の生産量を如何にして増加するかは、生物技術産業における極めて重要な研究課題であることは疑問のないところである。ただし、細胞成長の促進、及び組み換えタンパク質の生産増進については、現在に至ってもまだ多くの改善点が残っている。したがって、細胞の成長と組み換え型ポリぺプチド/タンパク質の生産に関する新技術の開発は価値のある研究であると我々は信じる。
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タンパク質を細胞内で合成することは、高エネルギーの必須な工程であることが知られている。なお、細胞内でのエネルギーの生成は細胞代謝による分解経路などで炭素源の摂取に頼っている。それゆえに、細胞の組み換えタンパク質の生産量を如何に上昇させるかという課題に対しては、細胞により多くの炭素源を獲得させることに加えて、得た炭素源をより効率的に利用させて、細胞内での転化作用により、エネルギーをより多く生成させることが、その解決の方法であると出願人は考える。
細胞は炭素源の分解という代謝経路によって、エネルギーを生成することができる。しかし、炭素源の一単位当たりのエネルギーや前駆的代謝物質(precursor metabolites)等の生成量が細胞の成長に供給されると考えた場合、グルコースは良い炭素源ではない。だが、細胞がグルコースを利用するときには、他の炭素源を摂取するのを抑制するメカニズムが生じてくる(Postma et al.(1993) Microbiol. Rev. 57:534-594)。例えば、大腸菌はリン酸転移酵素システムを通じて細胞外のグルコースを摂取すると同時に、該システムの作用により、他の炭素源を運搬(transport)する働きをする透過酵素(permease, パーミアーゼ)の活性が抑制される。そのため、細胞はグルコースを摂取している限り、他の炭素源(ここには、乳糖(lactose,ラクトース)、メリビオース(melibiose)、麦芽糖(maltose,マルトース)、及びグリセロール(glycerol)などが含まれる)を利用することができない。この現象は、「誘導物質の排除」(inducer exclusion)と呼ばれる。その上、このシステムは大腸菌内におけるアデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)の活性を抑制するため、細胞内のサイクリックAMP(cyclic AMP, cAMP)の濃度が低下することになって、その結果、遺伝子の発現が多く抑えられることが知られている。こうした影響を受けるのは、炭素源(例えば、TCA回路における中間代謝物質のキシロース(xylose)、ラムノース(rhamnose)、及びガラクトース(galactose)など)の運搬に使われる透過酵素の遺伝子である。したがって、細胞はグルコースを摂取すると同時に、これらの炭素源を利用することはできない。この現象は、「異化代謝産物の抑制」(catabolite repression)と呼ばれる。出願人の分析結果(図1)によれば、グルコースが炭素源として利用される場合に、若しも細胞がアスパラギン酸分解酵素(aspartase, アスパルターゼ)の活性を持つならば、細胞外にあるアスパラギン酸を細胞内へ運搬して酵素により分解し、最終的にはTCA回路における中間代謝物質のフマル酸を生成することができる。ゆえに、細胞はより多くの炭素源を同時に獲得するという予想がつく。ここで利用できる炭素源としては、グルコース、及びフマル酸であって、その転化作用で獲得したフマル酸はTCA回路を経由し、代謝作用を通じてオキサロ酢酸(oxaloacetate)を生成する。なお、NADHも同時に生成するため、細胞がより多くのエネルギーを獲得することもできる。
本発明の目的は、細胞の成長を促進する一つの方法を提供することにある。該方法は以下の工程(a)〜(c)を含む。工程(a):あるベクターに、アスパルターゼをコードする核酸配列を導入して、組み換えベクターを得る工程。工程(b):前記工程(a)の組み換えベクターを宿主細胞(host cell)に形質転換し、組み換え型宿主細胞を得る工程。工程(c):前記工程(b)の組み換え型宿主細胞を培養基で培養する工程。その結果、細胞中でのアスパルターゼ遺伝子の発現により、前記組み換え型宿主細胞の成長が促進される。
前記組み換えベクターは、プロモーター、アスパルターゼをコードする核酸配列、及び複製開始点を包含し、中でも、前記核酸配列がライゲーションにより前記プロモーターの下流に導入されていることを特徴する。前記組み換えベクターの複製開始点の種類(例えば、pMB1、pBR322、p15A、pSC101、R1、RK2、R6K、F、或いはpSF1010等の複製開始点の様態)によって、所持できるアスパルターゼの核酸配列のコピー数は、高コピー数または低コピー数がある。一方、前記ベクターは、遺伝子エンジニアリングテクノロジーにおいて一般的に利用されるものであって、例えば、バクテリオファージ(bacteriophages)、プラスミド(plasmids)、コスミド(cosmids)、ウイルス(viruses)、或いはレトロウイルス(retroviruses)などである。さらに、本発明において利用されるアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトなどに由来するものであり、中でもより好ましい宿主細胞は大腸菌である。
本発明において提供される組み換えベクターにあるプロモーターは、アスパルターゼ遺伝子の発現を調節するためのものであって、該プロモーターは、イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)によって遺伝子の発現を調節できる誘導的プロモーターであり、或いは、恒常的(constitutive)プロモーターや他の調節プロモーターである。例えば、tac、T7、T7 A1、lac、trp、trc、araBAD、またはλPRPLプロモーターなどがある。
前記方法の宿主細胞には、原核細胞(prokaryotic cells)または真核細胞(eukaryotic cells)が含まれる。本発明に適用される原核細胞には、例えば、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis)、乳酸菌属(Lactobacillus sp.)、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)、及びサルモネラ属(Salmonella typhi.)、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)、放線菌類(Actinomycetes)等が含まれるが、それらに限られない。本発明に適用される真核細胞には、例えば、パン酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)、メタノール資化性酵母(Pichia pastoris)、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等が含まれるが、それらに限られない。前記植物細胞は、裸子植物(gymnosperms)或いは被子植物(angiosperms)、中でも単子葉植物(monocots)及び双子葉植物(dicots)が好ましいが、最も好ましいのは作物類(crops)である。より詳しくは、これら植物の根、茎、葉、または分裂組織(meristem)等の部位から取った細胞をプロトプラスト(protoplasts)や癒合組織(callus)の形態として培養したものである。前記昆虫細胞は、果実蝿S2細胞、及び鍬形虫(Spodoptera frugiperda)のSf21細胞とSf9細胞由来のものである。前記動物細胞は、培養細胞や、生体内の細胞を指し、例えばCHO、BHK、Hela等の細胞をいう。
上記のようにして作られた組み換え型宿主細胞を適切な培養基で培養し、ターゲット遺伝子の発現をさせる。DNA組み換え技術を実施して作った宿主細胞に相応しい培養基及び培養条件は、生物技術の領域では十分に知られている。例えば、通常に使われるのは発酵用バイオリアクター、振動フラスコ、チューブ、微滴プレート(micro-drop plate)、平浅培養皿、などの容器である。それに、該組み換え宿主細胞に良い培養条件としては、適切な温度、pH値、酸素含量である。例えば、宿主細胞を培養する培養基の成分には、炭素源(グルコース、乳糖、シュークロース、糖蜜(molasses)、澱粉(starch)、穀粒(cereal grains)など)、窒素源(アンモニウム塩(ammonium salts)、尿素(urea)、硝酸塩(nitrate)、玉蜀黍エキス(corn steep liquor)、大豆の粉(soybean meal)、及び酵母エキス(yeast extract)など)、リン酸塩(phosphate)、硫酸塩(sulfate)、成長元素(ビタミン、アミノ酸、核酸など)、及び微量金属元素(カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、ナトリウム、コバルト、マンガン、銅など)が包含される。前記方法の工程では、振動フラスコが使用され、培養基として使われているのは、アスパラギン酸を含む何れかの培養基である。例えば、LB培養基、LBにグルコースを添加したもの、M9にグルコース及びアスパラギン酸を添加したもの、M9にグルコースと酵母エキスとアスパラギン酸を添加したものなどがある。前記LBの組成は、酵母エキス(5 g/L)、トリプトン(trypton, 10 g/L)およびNaCl(5 g/L)を含む。従って、LBにはアスパラギン酸を添加することが考えられる。また、前記M9の組成は、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4 (3 g/L)、NaCl (0.5 g/L)、NH4Cl (1 g/L)、MgSO4・7H2O (1 mM)、CaCl2 (0.1 mM)を含むことが知られている。
本発明のもう一つの目的は、細胞中でのターゲット遺伝子産物の生産量を増加する方法を提供することである。前記方法は以下の工程(a)〜(d)を含む。工程(a):アスパルターゼをコードする核酸配列を含有する組み換えベクターを構築する工程。工程(b):発現させたいターゲット遺伝子を含有する組み換えベクターを構築する工程。工程(c):前記工程(a)の組み換えベクターと前記工程(b)の組み換えベクターを宿主細胞に共形質転換して、組み換え型宿主細胞を形成する工程。工程(d):前記工程(c)の組み換え型宿主細胞を培養基で培養して、誘導によりアスパルターゼ及び発現させたいターゲット遺伝子の産物を生成する工程。アスパルターゼは組み換え型宿主細胞の発現させたいターゲット遺伝子産物を増産させる働きをする。
前記ベクターは前記方法の組み換え型ベクターと同様の構造を有し、具体的にはアスパルターゼ遺伝子を調節するプロモーターを持つ。該プロモーターはIPTGによって誘導を調節できるものであり、またアスパルターゼの核酸配列は大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒト細胞に由来するものである。
前記ターゲット遺伝子産物は、組み換えタンパク質またはポリペプチドを包含する。該組み換えタンパク質は、細胞質(cytoplasm)または細胞間質(periplasm)内におけるタンパク質、細胞膜(membrane)或いは細胞外(extracellular)にあるタンパク質、及び工業、農業、食品、環境、水産業及び畜産業に利用される酵素、特に医療用タンパク質とペプチドである。例えば、インターフェロン(interferon)、インターロイキン(interleukin)、動物またはヒトのホルモン(animal or human hormone)、免疫性抗原と抗体などがある。さらに、本発明の実施例では、発現させたい組み換えタンパク質は、異種または同種タンパク質を包含する。中でも、異種タンパク質はクラゲGFP(Aequorea green fluorescent protein)、同種タンパク質はβ−ガラクトシダーゼなどが例として挙げられる。
前記プラスミドを一つの宿主細胞に共形質転換する目的を達成するためには、燐酸カルシウム或いは塩化カルシウムなどを媒介としたトランスフェクション(transfection)、電気穿孔法(electroporation)、微量注射法(microinjection)、粒子衝撃法(particle bombardment)、リポソームを用いたトランスフェクション(liposome-mediated transfection)、バクテリオファージによるトランスフェクション、レトロウイルス(retrovirus)或いは他のウイルスによる形質導入作用、プロトプラストの融合(protoplast fusion)、Agrobacteriumを用いた形質転換、または他の方式など、幾つかの方法がある。該宿主細胞は、前述したように、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫、哺乳類動物細胞などを包含する。なお、前記アスパルターゼは、該組み換え型宿主細胞の発現させたいターゲット遺伝子産物の生産量を増加させる働きをする。さらに、前記方法では振動フラスコが用いられ、アスパラギン酸を含む何れかの培養基が使用される。例えば、LB、LBにグルコースを添加したもの、M9にグルコースとアスパラギン酸を添加したもの、またはM9にグルコースと酵母エキスとアスパラギン酸などの成分を添加したものである。LB及びM9の意味は前記のとおりである。
転換型の宿主細胞へ形質転換されたベクターは様々な原因で不安定になりやすく、形質転換体から失われることが発生しうる。この問題は、アスパルターゼの核酸配列断片(例えば、大腸菌のアスパルターゼ遺伝子(配列番号7(SEQ ID NO:7))を直接に細胞の染色体へ組み込む(insertion)ことで解決できる。該断片を染色体に組み込むという目的を達成するためには、ファージ/ウイルス感染(phage/virus infection)、トランスポゾンの転位(transposition by transposons)、または相同的遺伝子組み換え(homologous recombination)等の幾つかの方法がある。したがって、本発明のもう一つの目的は、細胞の成長を促進するために、以下の工程(a),(b)を包含する方法を提供することにある。工程(a):アスパルターゼの核酸配列を宿主細胞の染色体に導入して、組み換え型宿主細胞を得る工程。工程(b):前記工程(a)の組み換え宿主細胞を培養基で培養する工程。その結果、細胞中でのアスパルターゼ遺伝子の発現により、前記宿主細胞の成長が促進される。前記工程(a)のアスパルターゼ遺伝子は大腸菌、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳類動物細胞などに由来するものであり、より好ましくは大腸菌由来のものである。前記工程(b)の培養基はアスパラギン酸を含む培養基を用いたもので、例えば、LB、LBにグルコースを添加したもの、M9にグルコースとアスパラギン酸を添加したもの、或いはM9にグルコースと酵母エキス及びアスパラギン酸などの成分を添加したものである。LB及びM9の意味は前記のとおりである。
本発明は更に細胞中でのターゲット遺伝子産物の生産量を増加させる方法を提供するという目的があり、その方法は以下の工程(a)〜(c)を包含する。工程(a):アスパルターゼの核酸配列及び発現させたいターゲット遺伝子を含有する組み換えベクターを構築する工程。工程(b):前記工程(a)の組み換えベクターをアスパルターゼの核酸配列と共に宿主細胞に形質転換させて、組み換え型宿主細胞を得る工程。工程(c):前記工程(b)の組み換え型宿主細胞を培養基で培養し、誘導によりアスパルターゼ及びターゲット遺伝子産物を発現させる工程。アスパルターゼは、前記組み換え型宿主細胞の発現させたいターゲット遺伝子産物の生産量を増加させる働きをする。なお、前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト細胞などに由来するものであり、中でもより好ましくは大腸菌由来のものである。前記工程(a)のターゲット遺伝子の発現による産物は、組み換えタンパク質またはポリぺプチドを包含し、該組み換えタンパク質は異種タンパク質或は同種タンパク質を含む。中でも、異種タンパク質はクラゲGFP(Aequorea green fluorescent protein)、同種タンパク質はβ−ガラクトシダーゼなどが例として挙げられる。前記工程(b)のアスパルターゼの核酸配列は大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト細胞などに由来するものであり、中でもより好ましくは大腸菌由来のものである。前記工程(c)の培養基はアスパラギン酸を含む培養基を用いたもので、例えば、LB、LBにグルコースを添加したもの、M9にグルコースとアスパラギン酸を添加したもの、或いはM9にグルコースと酵母エキス及びアスパラギン酸などの成分を添加したものである。LB及びM9の意味は前記のとおりである。
本発明は細胞中でのターゲット遺伝子産物の生産量を増加させるさらに別の方法を提供する。その方法は以下の工程(a)〜(d)を包含する。工程(a):アスパルターゼをコードする核酸配列を宿主細胞の染色体に導入して、組み換え型宿主細胞を得る工程。工程(b):発現させたいターゲット遺伝子を有する組み換えベクターを構築する工程。工程(c):前記工程(b)の組み換えベクターを前記工程(a)の組み換え型宿主細胞に形質転換して、新たな組み換え型宿主細胞を得る工程。工程(d):前記工程(c)の組み換え型宿主細胞を培養基で培養し、誘導によりアスパルターゼ及びターゲット遺伝子産物を発現させる工程。アスパルターゼは、前記組み換え型宿主細胞の発現させたいターゲット遺伝子産物の生産量を増加させる働きをする。なお、前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト細胞などに由来するものであり、中でもより好ましくは大腸菌由来のものである。前記工程(b)のターゲット遺伝子の発現による産物は、組み換えタンパク質またはポリぺプチドを包含し、該組み換えタンパク質は異種タンパク質或は同種タンパク質を含む。中でも、異種タンパク質はクラゲGFP(Aequorea green fluorescent protein)、同種タンパク質はβ−ガラクトシダーゼなどが例として挙げられる。前記工程(b)のアスパルターゼの核酸配列は大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト細胞などに由来するものであり、中でもより好ましくは大腸菌由来のものである。なお、前記工程(d)の培養基はアスパラギン酸を含む培養基を用いたもので、例えば、LB、LBにグルコースを添加したもの、M9にグルコースとアスパラギン酸を添加したもの、或いはM9にグルコースと酵母エキス及びアスパラギン酸などの成分を添加したものである。LB及びM9の意味は前記のとおりである。
本発明の作用方式では、細胞がアスパルターゼ(アスパラギン酸分解酵素、アスパルテートアンモニアリアーゼ(aspartate ammonia lyase)とも呼ぶ)の活性を持ち、細胞外におけるアスパラギン酸を細胞内へ運搬し、該アスパラギン酸が酵素により分解されて、TCA回路にあるフマル酸(fumarate)に転化する(図1)。好気条件下においては、大腸菌が生成するアスパルターゼの濃度は非常に低くて、アスパルターゼ遺伝子の発現もグルコースによる「代謝物的制御」に支配されることが知られている(Halpern and Umbarger, (1960) J. Bacteriol. 80:285-288; Woods and Guest, (1987) FEMS Microbiol. Lett. 48:219-224)。そこで、本発明ではアスパルターゼ遺伝子発現ベクターを構築し、そのベクターを宿主細胞の中でのアスパルターゼ遺伝子発現の調節及び発現によるアスパルターゼの生産に利用している。ベクターは宿主細胞に形質転換で入り込むために、その細胞にはアスパルターゼ活性が与えられる。出願人が研究により見出したことは、細胞がアスパルターゼの活性を持つことによって、組み換えタンパク質を生産する組み換え型宿主細胞のその特性が改善できることである。例えば、前記組み換え型宿主細胞の代謝経路が改善されることにより、細胞密度が高まり、タンパク質の産量が上昇することになる。或いは、形質転換体の宿主細胞の細胞質量が好気条件下で増加し、それによって組み換えタンパク質の産量も高められる。また、宿主細胞の高細胞密度での培養には操作上の利点があることも知られている。実験の結果から検討すれば、この発明によれば、前記組み換えタンパク質の生産に関する問題を有効に解決できることは明らかであり、生物技術産業に対しても極めて重要な寄与があると期待される。
本発明は、アスパルターゼ遺伝子を含む発現ベクター、またはアスパルターゼ遺伝子断片を利用し、宿主細胞内でのアスパルターゼの調節機能や生産について寄与するものである。本発明の宿主細胞は、アスパルターゼの活性を持つため、細胞の成長を促進させるし、組み換えタンパク質の生産が増加するなどの特性を有する。
以下に、幾つかの実施例を本発明の実施様態として説明する。
以下に、幾つかの実施例を本発明の実施様態として説明する。
一般的な実験の方法と材料:
本発明における実験の方法及びDNAクローニングに利用される関連技術は、Sambrook J, Russell DW (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参考としている。本発明で使用した技術は、制限酵素(restriction enzymes)でのDNAの切断(DNA cleavage)、T4 DNAリガーゼでのDNAライゲーションの連結反応、PCR重合酵素の連鎖反応(polymerase chain reaction)、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)、ウエスタンブロッテイング(Western blotting)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis, SDS-PAGE)、プラスミド形質転換(plasmid transformation)などがある。これらの技術に熟練する人であれば過度な実験をすることなく、自身の専門的素養によっても十分実施可能である。
本発明における実験の方法及びDNAクローニングに利用される関連技術は、Sambrook J, Russell DW (2001) Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参考としている。本発明で使用した技術は、制限酵素(restriction enzymes)でのDNAの切断(DNA cleavage)、T4 DNAリガーゼでのDNAライゲーションの連結反応、PCR重合酵素の連鎖反応(polymerase chain reaction)、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)、ウエスタンブロッテイング(Western blotting)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis, SDS-PAGE)、プラスミド形質転換(plasmid transformation)などがある。これらの技術に熟練する人であれば過度な実験をすることなく、自身の専門的素養によっても十分実施可能である。
本発明で利用されるプラスミド形質転換法は、塩化カルシウム(CaCl2)で処理して得たコンピテントセル(competent cell)を用いて実施する。細胞密度の測定には分光光度計(V530, Jasco)を用い、測定波長を550 nmと定めるため、得られる分析値はOD550として記録する。タンパク質の濃度は、タンパク質分析試薬(Protein Assay Reagent, BioRad Co.)を利用して分析する。そして、SDS-PAGEで分離したタンパク質を分析及び定量するために、画像解析装置(GAS9000, UVItec)を使う。
細菌の染色体(chromosome)、プラスミド及びDNA断片の精製は、ゲノムDNA精製キット「Wizard(登録商標)」(Genomic DNA Purification Kit, Promega Co.)、「QIAprep(登録商標) Spin Miniprep kit」(Qiagen Co.)及び「NucleoSpin(登録商標)核酸精製キット」(Nucleic Acid Purification Kit, Clontech Co.)などの製品キットを用いて実施する。
すべての制限酵素、T4 DNAリガーゼ及びPfu DNAポリメラーゼ(polymerase)は、New England Biolabsから購入し、PCR操作に使うプライマーは明欣生物科技会社(台北)に委託して合成したものである。クラゲGFPを測定するための一次抗体(primary antibody)はBD Biosciences Clontech.から購入したもので、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)ペルオキシダーゼ(HRP)と共役接合性を持つヤギの抗ウサギIgG(horseradish peroxidase-conjugated goat anti-rabbit IgG)に分類された二次抗体(secondary antibody)及び他の化学試薬は皆Sigma Chemical Co.から購入したものである。
実施例1、アスパルターゼ構造遺伝子(aspA)を有する発現ベクターを構築する
この実施例において、DNAクローニングの過程に利用された仲介細胞(intermediate cells)は大腸菌のXLI-Blue (Stratagene Co.)である。この菌株は37℃でLuria-Bertani (LB)培養基(酵母エキス(5 g/L)、トリプトン(10 g/L)、NaCl(5 g/L)を含有する)で培養(Miller, J.H. (1972),Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)するが、形質転換した菌の培養には抗生物質の添加してあるLB培養基を利用する。前記抗生物質は、アンピシリン(ampicillin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)及びカナマイシン(kanamycin)があり、添加する量はそれぞれ50、20及び25 μg/mLである。
この実施例において、DNAクローニングの過程に利用された仲介細胞(intermediate cells)は大腸菌のXLI-Blue (Stratagene Co.)である。この菌株は37℃でLuria-Bertani (LB)培養基(酵母エキス(5 g/L)、トリプトン(10 g/L)、NaCl(5 g/L)を含有する)で培養(Miller, J.H. (1972),Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)するが、形質転換した菌の培養には抗生物質の添加してあるLB培養基を利用する。前記抗生物質は、アンピシリン(ampicillin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)及びカナマイシン(kanamycin)があり、添加する量はそれぞれ50、20及び25 μg/mLである。
A. アスパルターゼ遺伝子(aspA)を含む組み換えプラスミドpA1-AspAを構築する
図3に示すように、本実施例における高コピー数プラスミドpA1-AspAは、T7 A1プロモーター、lacI抑制遺伝子及びpMB1複製開始点を含有する。lacI抑制遺伝子の産物はT7 A1プロモーターをコントロールするため、アスパルターゼ(EC 4.3.1.1)の発現を調節する特徴がある。構築の方法として、以下に工程を示す。
図3に示すように、本実施例における高コピー数プラスミドpA1-AspAは、T7 A1プロモーター、lacI抑制遺伝子及びpMB1複製開始点を含有する。lacI抑制遺伝子の産物はT7 A1プロモーターをコントロールするため、アスパルターゼ(EC 4.3.1.1)の発現を調節する特徴がある。構築の方法として、以下に工程を示す。
先ずは、アスパルターゼの構造遺伝子の核酸配列(配列番号7(SEQ ID NO:7))(Woods et al. (1986), Biochem. J. 237:547-557)によって、二本のプライマーが合成される。
フォワードプライマー(forward primer):
5’-cacaggatccacaacattcgtatcgaag-3’ (配列番号1(SEQ ID NO:1))
リバースプライマー(reverse primer):
5’-gctaagcttactgttcgctttcatcattatagc-3’ (配列番号2(SEQ ID NO:2))
フォワードプライマー(forward primer):
5’-cacaggatccacaacattcgtatcgaag-3’ (配列番号1(SEQ ID NO:1))
リバースプライマー(reverse primer):
5’-gctaagcttactgttcgctttcatcattatagc-3’ (配列番号2(SEQ ID NO:2))
前記プライマー(配列番号1(SEQ ID NO:1)及び配列番号2(SEQ ID NO:2))には、それぞれ制限酵素のBamHI及びHindIIIの切断サイトを含む(プライマーの表示に下線で示す)配列をデザインした。その後、Wizard(登録商標)のDNA精製キットを用いて、大腸菌菌株VJS676((argF-lac)U169)(Dr.Stewart, University of California, Davis, CA, USAからの寄贈)染色体をテンプレートとして精製してから、二本のプライマーとPCR反応にかけて、アスパルターゼ遺伝子の有するDNA断片(1.5 Kb)を増幅した。次に、NucleoSpin(登録商標)核酸精製キットで増幅したDNA断片を精製し、制限酵素のBamHI及びHindIIIを用いて、そのDNAを切断する。こうして得た産物を、同じBamHI及びHindIIIで処理したプラスミドpA199A-2(図2に示す)(Chao et al. (2003), Biotechnol Prog. 19: 1076-1080)に入れ込んで、プラスミドpA1-AspA(図3に示す)を得た。
B. アスパルターゼ遺伝子(aspA)を有する組み換えプラスミドpACYC-AspAを構築する
本実施例における低コピー数プラスミドpACYC-AspAは、図5に示すように、T7 A1プロモーター、lacI抑制遺伝子及びp15A複製開始点を含有する。構築の方法を以下に示す。先ず、制限酵素のNruI及びHindIIIを用いて、図3に示すpA1-AspAプラスミドからlacI抑制遺伝子、T7 A1プロモーター及びアスパルターゼ構造遺伝子を含むDNA配列を切り出して、同じ制限酵素のNruI及びHindIIIで処理したプラスミドpCYC184(図4に示す)に入れ込んで、プラスミドpACYC-AspA(図5に示す)を得た。
本実施例における低コピー数プラスミドpACYC-AspAは、図5に示すように、T7 A1プロモーター、lacI抑制遺伝子及びp15A複製開始点を含有する。構築の方法を以下に示す。先ず、制限酵素のNruI及びHindIIIを用いて、図3に示すpA1-AspAプラスミドからlacI抑制遺伝子、T7 A1プロモーター及びアスパルターゼ構造遺伝子を含むDNA配列を切り出して、同じ制限酵素のNruI及びHindIIIで処理したプラスミドpCYC184(図4に示す)に入れ込んで、プラスミドpACYC-AspA(図5に示す)を得た。
実施例2、アスパルターゼ構造遺伝子(aspA)の有する発現ベクターを構築する
本実施例では、前記プラスミドの形質転換法によって、実施例1におけるプラスミドpA199A-2、pA1-AspA、pACYC184及びpACYC-AspAがそれぞれ大腸菌菌株VJS676に導入されて、組み換え菌株VJS676/pA199A-2、VJS676/pA1-AspA、VJS676/pACYC184及びVJS676/pACYC-AspAが得られた。
本実施例では、前記プラスミドの形質転換法によって、実施例1におけるプラスミドpA199A-2、pA1-AspA、pACYC184及びpACYC-AspAがそれぞれ大腸菌菌株VJS676に導入されて、組み換え菌株VJS676/pA199A-2、VJS676/pA1-AspA、VJS676/pACYC184及びVJS676/pACYC-AspAが得られた。
固体培養皿から各形質転換株をそれぞれ選んで、5 mLのLB培養基(50 μg/mLのアンピシリン、或いは20 μg/mLクロラムフェニコールを含有する)に接種して、温度37℃でオーバーナイト培養する。翌日に、25 ml液体LB(抗生物質アンピシリンを50 μg/mL、或はクロラムフェニコールを20 μg/mL添加する)の入った250 mL容量の三角フラスコに細胞密度が0.05(OD550)に達するように菌液を注入して、37℃、250 rpmに設定した恒温振動培養機で拡大培養をさせた。細胞密度が0.3(OD550)までに達したら、濃度の違うIPTGを培養液に添加することにより、組み換え型菌株では組み換えタンパク質の生産、そして細胞の成長が観察された。
IPTGを入れてから6時間後、遠心分離によって細胞を収集し、French Press (Thermo Spectronic)で細胞を崩壊し、冷凍遠心機を用いて細胞を分離して上澄み液(Supernatant)を回収した。そして、上澄み液にあるタンパク質の濃度をProtein Assay Reagent (BioRad Co.)で測定した後、サンプル(20 μgのタンパク質が含む)として12 %のポリアクリルアミドのゲルに電気泳動を行い、組み換えタンパク質の生産量を分析した。
図6にはタンパク質のSDS-PAGEの結果を示しており、具体的には、10時間発酵培養を経て誘導されたアスパルターゼ生産株としての組み換え型菌株のタンパク質生産様態がそれぞれ示されている。図6において、Lane 1はタンパク質の標準物質(MBI Fermentas)、Lane 2はアスパルターゼの生産がない組み換え菌株VJS676/pA1-AspA、Lane 3は50 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pA1-AspA、Lane 4は100 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pA1-AspA、Lane 5は300 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pA1-AspA、Lane 6はアスパルターゼの生産がない野生型組み換え菌株VJS676/pACYC-AspA、Lane 7は50 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pACYC-AspA、Lane 8は100 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pACYC-AspA、Lane 9は300 μMのIPTGでアスパルターゼを誘導した組み換え菌株VJS676/pACYC-AspA、Lane 10は2 μgのBSA(Bovine Serum Albumin)と順番に並んでいる。その結果、IPTGの誘導がない菌株では、高コピー数プラスミドpA1-AspA(即ち、組み換え菌株VJS676/pA1-AspAである)と低コピー数プラスミドpACYC-AspA(即ち、組み換え菌株VJS676/pACYC-AspAである)のどれも微量のアスパルターゼしか生産できない。それに対して、IPTGの誘導がある菌株では、アスパルターゼの生産についてIPTGの添加濃度が高ければ高いほど量が多くなることが明らかに分かった。
大腸菌におけるアスパルターゼの活性測定については、先に刊行された我々の文献(Chao et al. (2000) Enzyme Microb. Technol., 27:19-25)に従って実施した。前記収集したタンパク質サンプル(0.05 mg)を1 mlの反応溶液(100 mM アスパラギン酸、100 mM Tris緩衝溶液(pH 8.4)及び5 mM MgSO4を含む)に加えて、室温で10分間反応してから、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)でその反応産物を分析した。分析条件について、移動相は0.05 N硫酸溶液で、流量は0.5 mL/min、検出波長は210 nmと設定する。ところで、酵素の比活性にはU/mgという単位が与えられており、その中の活性単位Uは1分間に1 μmoleの酵素を生産できることを意味する。濃度の違うIPTGを培養液に加えるため、組み換え型菌株はIPTGの誘導によってアスパルターゼを生産できる。それに、誘導剤の添加量が増加すれば、組み換え菌株VJS676/pA1-AspA及びVJS676/pACYC-AspAの生産したアスパルターゼの量も高まることが分かった。また、前記二種類の組み換え菌株から生産されたアスパルターゼの活性に関し、誘導剤で生成したものは誘導剤なしで生成したものと比べて、それぞれ50倍と100倍に高まることが推定される。表1に示した酵素の活性測定の結果からこの結論は得られた。
本発明によれば、野生型大腸菌が形質転換工程を経て、アスパルターゼの生産能力を有する組み換え菌株となり、生産するタンパク質の量もIPTGの濃度によってコントロールできる、ということが図6及び表1に示した結果から分かった。
実施例3、誘導によるアスパルターゼの生成が細胞の成長を促進する。
本実施例の対照組としては、組み換え菌株VJS676/pA199A-2及びVJS676/pA1-AspAが実施例2の培養法にしたがって実施されるが、培養に利用する培養基のM9(Miller, J.H. (1972) Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)に1 %のグルコース及び15 μg/mL濃度のアンピシリン(ampicillin)を添加してある。前記M9の成分には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4 (3 gL)、NaCl (0.5 g/L)、NH4Cl (1 g/L)、MgSO4・7H2O (1 mM)、CaCl2 (0.1 mM)が包含されている。新たに接種した菌液における細胞密度のOD550の値が0.3に達したときに、300 μMのIPTGを培養液に加えてから、誘導により組み換え菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養時間の経過とともに菌液サンプルを採集し続けて細胞密度を計測した。図7は菌株の成長曲線を示している。これによると、IPTGが誘導剤として加えられた後、アスパルターゼを生産する組み換え菌株VJS676/pA1-AspA(◇)の成長が緩和する傾向があり、発酵して10時間が経過しても細胞密度が0.9(OD550)にしか届かないことが分かった。それに対し、アスパルターゼを生産しない組み換え菌株VJS676/pA199A-2(■)の細胞密度は、同じ発酵時間が経過したときに1.5にまで達することが分かった。生体におけるアスパルターゼの機能によって、アスパルターゼはアスパラギン酸(aspartate)を分解してフマル酸塩及びアンモニウムイオン(NH4 +)を生合成する(図1)。しかし、この培養基の条件下で、大腸菌が誘導によって生成したアスパルターゼは、明らかな生理的機能を持たないため、この実施例における組み換えタンパク質、すなわちアスパルターゼの生産が逆に細胞の生理的負担となり、細胞の成長を抑制することが図7の結果から明らかとされた。
本実施例の対照組としては、組み換え菌株VJS676/pA199A-2及びVJS676/pA1-AspAが実施例2の培養法にしたがって実施されるが、培養に利用する培養基のM9(Miller, J.H. (1972) Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)に1 %のグルコース及び15 μg/mL濃度のアンピシリン(ampicillin)を添加してある。前記M9の成分には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4 (3 gL)、NaCl (0.5 g/L)、NH4Cl (1 g/L)、MgSO4・7H2O (1 mM)、CaCl2 (0.1 mM)が包含されている。新たに接種した菌液における細胞密度のOD550の値が0.3に達したときに、300 μMのIPTGを培養液に加えてから、誘導により組み換え菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養時間の経過とともに菌液サンプルを採集し続けて細胞密度を計測した。図7は菌株の成長曲線を示している。これによると、IPTGが誘導剤として加えられた後、アスパルターゼを生産する組み換え菌株VJS676/pA1-AspA(◇)の成長が緩和する傾向があり、発酵して10時間が経過しても細胞密度が0.9(OD550)にしか届かないことが分かった。それに対し、アスパルターゼを生産しない組み換え菌株VJS676/pA199A-2(■)の細胞密度は、同じ発酵時間が経過したときに1.5にまで達することが分かった。生体におけるアスパルターゼの機能によって、アスパルターゼはアスパラギン酸(aspartate)を分解してフマル酸塩及びアンモニウムイオン(NH4 +)を生合成する(図1)。しかし、この培養基の条件下で、大腸菌が誘導によって生成したアスパルターゼは、明らかな生理的機能を持たないため、この実施例における組み換えタンパク質、すなわちアスパルターゼの生産が逆に細胞の生理的負担となり、細胞の成長を抑制することが図7の結果から明らかとされた。
本実施例の実験組としては、M9にグルコース(0.1 %)、アンピシリン(15 μg/mL)及びアスパラギン酸(0.5 %)を添加した培養基で、組み換え菌株VJS676/pA199A-2及びVJS676/pA1-AspAが前記述べた培養法に従って培養された。新たに接種した菌液における細胞密度が約0.3(OD550)に達したときに、300 μMのIPTGを培養液に加えてから、誘導により組み換え菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養時間の経過とともに菌液サンプルを採集し続けて細胞密度を計測した。図7の結果を検討すると、10時間発酵をした後、アスパルターゼを生産しない組み換え菌株VJS676/pA199A-2(●)では、細胞密度は2.1(OD550)に至り、比成長率(specific growth rate)は0.23 h-1であった。それに対し、アスパルターゼを生産する組み換え菌株VJS676/pA1-AspA(▽)では、細胞の成長はより速くて(比成長率は0.32 h-1である)、細胞の密度は最後には3.2(OD550)にまで届いた。対照組に対して実施例の実験組には、培養基にアスパラギン酸を添加したため、誘導によって大腸菌が生成したアスパルターゼはアスパラギン酸を分解してフマル酸に転化する作用を起こすことで、グルコースの他にフマル酸も炭素源としてTCA回路に提供され、好気性のTCA回路でオキサロ酢酸に転化される。このとき同時にNADH(nicotinamide-adenine dinucleotide)が生合成される。オキサロ酢酸は最終的にはグルコースの糖分解経路を経て形成されるアセチルCoA(acetyl-CoA)と反応してクエン酸を生合成する(図1)。したがって、アスパルターゼを生産しない組み換え菌株と比べて、アスパルターゼを生産する組み換え菌株では、培養基に添加のアスパラギン酸の分解により、有効な炭素源及びエネルギーの生成が増加する。その結果、組み換えアスパルターゼの生産による生産細胞の生理的負担という問題(図7)が解決できるうえ、細胞の比成長率は40 %、細胞密度は60 %促進することが明らかとなった。
本実施例では、LBにアンピシリン(50 μg/mL)を添加したものをもう一つの培養基として利用し、組み換え菌株VJS676/pA199A-2及びVJS676/pA1-AspAを前記の培養方法に従って培養した。新たに接種した菌液における細胞密度が約0.3(OD550)に達したときに、300 μMのIPTGを培養液に加えてから、誘導により組み換え菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養時間の経過とともに菌液サンプルを採集し続けて細胞密度を計測した。図8に示したとおり、発酵10時間後、アスパルターゼを生産する組み換え菌株VJS676/pA1-AspA(▽)の細胞密度は8.4(OD550)に届いたのに対し、アスパルターゼを生産にしない組み換え菌株VJS676/pA199A-2(●)の細胞密度は6.0(OD550)にしか達しなかった。これは、LB培養基にはトリプトファン及び酵母のエキスなどが含まれており、培養基にはアスパラギン酸(図7の実験組にアスパラギン酸を添加したものに似た条件である)が含まれるため、アスパルターゼの生産する組み換え菌株では、培養基にあるアスパラギン酸の分解により、有効な炭素源及びエネルギーの生成が増加し、細胞密度が55 %にまで高まることが分かった。
以上に述べたとおり、アスパルターゼの生産は、形質転換された宿主細胞に細胞成長の促進または細胞密度の上昇などの能力を与える役割があった。
以上に述べたとおり、アスパルターゼの生産は、形質転換された宿主細胞に細胞成長の促進または細胞密度の上昇などの能力を与える役割があった。
実施例4、アスパルターゼの活性をもつ大腸菌を利用し、同種タンパク質のβガラクトシダーゼ(β-galactosidase)を生産する。
図12に示すように、本実施例に使われたプラスミドpTac-Zはtacプロモーター及びlacIq抑制遺伝子を含んでおり、その構築方法は以下に示すとおりである。先ず、プラスミドpAH55の核酸配列(図9)(Haldimann and Wanner, (2001), J. Bacteriol., 183:6384-6393.)によって、二本のプライマーが合成される。
フォワードプライマー(forward primer):
5-taactcgcgataattgcgttgcgctcac-3’ (配列番号3(SEQ ID NO:3))
リバースプライマー(reverse primer):
5-cgcccatggtatatctccttcttacaagc-3’ (配列番号4(SEQ ID NO:4))
図12に示すように、本実施例に使われたプラスミドpTac-Zはtacプロモーター及びlacIq抑制遺伝子を含んでおり、その構築方法は以下に示すとおりである。先ず、プラスミドpAH55の核酸配列(図9)(Haldimann and Wanner, (2001), J. Bacteriol., 183:6384-6393.)によって、二本のプライマーが合成される。
フォワードプライマー(forward primer):
5-taactcgcgataattgcgttgcgctcac-3’ (配列番号3(SEQ ID NO:3))
リバースプライマー(reverse primer):
5-cgcccatggtatatctccttcttacaagc-3’ (配列番号4(SEQ ID NO:4))
前記リバースプライマーは制限酵素NcoIの切断サイト(プライマーの表示に下線で示す)を含むようにデザインされており、QIAprep(登録商標) Spin Miniprepキットを用いて精製したプラスミドpAH55をテンプレートとして前記二本のプライマーとPCR反応にかけてから、lacIq抑制遺伝子及びtacプロモーター核酸配列を持つDNA断片(1.8 kb)を増幅した。それから、NucleoSpin(登録商標)という核酸の精製キットを利用して増幅されたDNA断片を精製した後、NcoI/EcoRVによるDNA切断を行い、得られた切断物をNcoI/EcoRV切断処理のされたプラスミドpTrc99A(図10)にライゲーションして挿し込んで(Amann et al., (1988), Gene, 69:301-315)、プラスミドpTac99A(図11)を得た。
次に、βガラクトシダーゼ遺伝子の核酸配列(Kalnins et al. (1983), EMBO J. 2:593-597)によって、以下の二本のプライマーが合成される。
フォワードプライマー(forward primer):
5-acagccatggccatgattacggattcac -3’ (配列番号5(SEQ ID NO:5))
リバースプライマー(reverse primer):
5-cggaagcttttatttttgacaccagacc -3’ (配列番号6(SEQ ID NO:6))
フォワードプライマー(forward primer):
5-acagccatggccatgattacggattcac -3’ (配列番号5(SEQ ID NO:5))
リバースプライマー(reverse primer):
5-cggaagcttttatttttgacaccagacc -3’ (配列番号6(SEQ ID NO:6))
前記二本のプライマーはそれぞれ制限酵素NcoI、HindIIIの切断サイト(プライマーの表示に下線で示す)を含むようにデザインした。そして、野生型大腸菌W3110の染色体を、Wizard(登録商標)遺伝子DNA精製キットを用いて、テンプレートとして精製した。配列番号5(SEQ ID NO:5)及び配列番号6(SEQ ID NO:6)と精製したW3110染色体をPCR反応にかけて、βガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)を含むDNA断片(3 kb)を増幅した。それから、NucleoSpin(登録商標)核酸精製キットを利用して増幅されたDNA断片を精製した後、NcoI及びHindIIIによるDNA切断を行い、得られた切断物をNcoI及びHindIII切断処理のされたプラスミドpTac99Aにライゲーションして挿し込んで、プラスミドpTac-Z(図12)を得た。
前記プラスミドの形質転換法によって、プラスミドpACYC184及びpACYC-AspAをそれぞれプラスミドpTac-Zと共に、宿主細胞としての大腸菌菌株VJS676へ転換して、VJS676/pACYC184/pTac-Z及びVJS676/pACYC-AspA/ pTac-Zを得た。
組み換え型菌株の培養は実施例2に述べた方法で行った。培養基には、LB、LBにグルコース(0.2 %)を添加したもの、M9にグルコース(0.1 %)と酵母エキス(0.5 %)を添加したもの、及びM9にグルコース(0.1 %)と酵母エキス(0.5 %)とアスパラギン酸(0.5 %)を添加したものなどが使用され、培養基に添加する抗生物質の量はアンピシリンの場合は15 μg/mL、クロラムフェニコールの場合は10 μg/mLである。新たに接種した菌液の細胞密度が約0.3(OD550)に達した際に100 μMまたは300 μMのIPTGを培養液に添加し、誘導により組み換え型菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養を行いながら、菌液サンプルを所定時間おきに採集し続けて、細胞密度を計測した。10時間培養後、遠心によって細胞を収集し、生産したβガラクトシダーゼの活性を測定した。
前記大腸菌が生産したβガラクトシダーゼの活性測定は、Miller, J. H. (1972) Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratoryに記載の方法で実施した。具体的には、採集した菌液サンプル0.1 mLを、0.9 mL緩衝溶液Z(2.7 mLのβ-メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)に16.1 g/L Na2HPO4・7H2O、5.5 g/L NaH2PO4・H2O、0.75 g/L KCl、0.246 g/L MgSO4・7H2Oという構成からなる)と混合し、最終体積は1 mLを維持することにした。そして、細胞サンプルにトルエン(Toluene)を10 μL入れて、回転器の振動によって細胞を破砕させた後、冷凍遠心機にかけて分離した上澄み液を回収した。
回収した上澄み液に濃度4 mg/mLのo-ニトロフェニル-β-D-チオガラクトシド(o-nitrophenyl-β-D-thiogalactoside)を0.2 mL入れて、室温下において5分間反応させてから、0.5 mLのNa2CO3(1 M)を添加して反応を停止させたうえ、検出波長を420 nmに設定して測定を行った。ところで、βガラクトシダーゼの比活性はMiller単位により計算し、酵素の比活性に細胞密度(OD550)を乗じて得られる値を酵素総的活性とした。
表2に示した結果によると、培養基の違う培養条件下で対照組の菌株(VJS676/ pACYC184/pTac-Z)とアスパルターゼの活性を持つ菌株(VJS676/pACYC-AspA/pTac-Z)の両方ともIPTGの誘導濃度が高ければ高いほど、βガラクトシダーゼの生成量が増加することが明らかに分かった。培養基がLB培養基(LB)の条件下では、対照組の菌株が誘導により生成するβガラクトシダーゼの総生成量(酵素総的活性)に比較して、アスパルターゼの活性を持つ菌株によるβガラクトシダーゼの生成量は30 %高い。もしも、LB培養基にグルコースを添加した条件(LBG)では、アスパルターゼの活性を持つ菌株によるβガラクトシダーゼの生成量はさらに高く、70-80 %上昇することが観察された。これは実施例3の説明に述べたとおり、LB培養基はアスパラギン酸を含んでおり、アスパルターゼ活性を持つ組み換え型菌株がアスパラギン酸の分解により、有効な炭素源とエネルギーを得るため、βガラクトシダーゼのような組み換えタンパク質の生成を促進できるからである。同様に、M9培養基にグルコース及び酵母エキスを添加した条件(M9Y)では、同じ誘導条件下での対照組よりも、アスパルターゼ活性を持つ菌株によるβガラクトシダーゼの生成量は30-50 %高かった。それに対して、M9培養基にグルコース、酵母エキス及びアスパラギン酸を添加した条件(M9YA)では、アスパルターゼ活性を持つ菌株によるβガラクトシダーゼの生成量は、対照組と比べて130-140 %も促進されることが明らかとなった。これらの結果によると、使用した培養基の条件下で、アスパルターゼ活性を持つ菌株では細胞の炭素源とエネルギーを利用する機能が上昇する。また、培養基にアスパラギン酸を特別に添加することで、細胞内における炭素源やエネルギーの効率も促進できるため、組み換えタンパク質の生産量が大幅に増加することができる。
実施例5、アスパルターゼ活性を持つ大腸菌を用いて、異種タンパク質(hererologous protein)のクラゲGFP(Aequorea green fluorescent protein)を生産する。
図13に示すように、本実施例で利用したプラスミドpACYC-A1はプラスミドpACYC-AspA(図5)に似ているが、プラスミドpACYC-A1はaspAという構造遺伝子を含まない。プラスミドpACYC-A1の構築については、プラスミドpACYC-AspAを用いて、制限酵素BamHI及びHindIIIでaspA構造遺伝子を切断して除いた。残ったプラスミドDNAの末端をT4 DNA ポリメラーゼ(T4 DNA polymerase)で平滑処理し、T4 DNAリガーゼ(T4 DNA ligase)で連結反応(ligation)させることにより、プラスミドpACYC-A1を得た(図13)。
図13に示すように、本実施例で利用したプラスミドpACYC-A1はプラスミドpACYC-AspA(図5)に似ているが、プラスミドpACYC-A1はaspAという構造遺伝子を含まない。プラスミドpACYC-A1の構築については、プラスミドpACYC-AspAを用いて、制限酵素BamHI及びHindIIIでaspA構造遺伝子を切断して除いた。残ったプラスミドDNAの末端をT4 DNA ポリメラーゼ(T4 DNA polymerase)で平滑処理し、T4 DNAリガーゼ(T4 DNA ligase)で連結反応(ligation)させることにより、プラスミドpACYC-A1を得た(図13)。
図14におけるpGFPuv(BD Biosciences Clontechからである)は、pUC複製開始点及びアンピシリン耐性遺伝子(ampicillin-resistance gene)、及びlacプロモーターで遺伝子の発現が調節できる突然変異型のクラゲ(Aequorea victoria)GFPの構造遺伝子などを有するプラスミドであった。前記プラスミドの形質転換法に従って、pACYC-A1及びpACYC-AspAをそれぞれプラスミドpGFPuvと大腸菌菌株BL21(Novagen Co.)へ形質転換し、組み換え菌株BL21/pGFPuv/pACYC-A1及びBL21/pGFPuv/pACYC- AspAを得た。
組み換え型菌株の培養については、実施例2に述べた方法で行われ、培養基にはそれぞれLBにグルコース(0.2 %)を添加したもの、M9にグルコース(0.1 %)、酵母エキス(0.2 %)及びアスパラギン酸(0.5 %)を添加したものが使用され、培養基に添加する抗生物質の使用量はアンピシリンの場合は15 μg/mL、クロラムフェニコールの場合は10 μg/mLである。新たに接種した菌液の細胞密度が約0.3(OD550)に達した際に100 μMのIPTGを培養液に注入することで、IPTGの誘導により組み換え型菌株に組み換えタンパク質を生産させた。培養を行いながら、菌液サンプルを所定時間おきに採集し続けて、細胞密度を計測した。10時間の培養の後、遠心分離によって細胞を収集し、French Press (Thermo Spectronic)で細胞を崩壊した。そして、冷凍遠心機を用いて破砕された細胞を除いて上澄み液(Supernatant)を回収し、Protein Assay Reagent (BioRad Co.)を利用して、上澄み液にあるタンパク質の濃度を測定した。また、組み換え型タンパク質はウェスタンブロット分析による免疫検出法で定量した。
図15にはウェスタンブロット分析の結果を示す。培養基には、M9培養基に0.1 %のグルコース、0.2 %の酵母エキス及び0.5 %のアスパラギン酸を添加したもの(Lane 2-5、M9YA)、LB培養基に0.1 %のグルコースを添加したもの(Lane 6-9、LBG)などを使用した。クラゲGFPの一次抗体を用いて、組み換え型菌株BL21/pGFPuv/pACYC-AspA及び対照組のBL21/pGFPuv/pACYC-A1がそれぞれIPTGの誘導で生成したクラゲGFPの免疫測定に供された。その結果は図15に示すとおりであり、Lane 1はタンパク質の標準物質(MBI Fermentas)、Lane 2は誘導のない対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)、Lane 3は100 μM IPTG誘導のある対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)、Lane 4は誘導のない組み換え型菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)、Lane 5は100 μM IPTG誘導のある組み換え型菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)、Lane 6は誘導のない対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)、Lane 7は100 μM IPTG誘導のある対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)、Lane 8は誘導のない組み換え型菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)、Lane 9は100 μM IPTG誘導のある組み換え型菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)と順番に並んでいる。
M9培養基にグルコース、酵母エキス及びアスパラギン酸を添加した培養基を用いた場合には、10時間の発酵の後、IPTG誘導のない対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)及び組み換え型菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)では細胞密度が約4.0(OD550)であり、IPTG誘導のある対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)では3.6(OD550)であったのに対し、アスパルターゼ活性を持つ菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)では4.6(OD550)にまで達することが分かった。図15に示すウェスタンブロット分析の結果によると、IPTG誘導のある菌株ではクラゲGFPの生産がより多くなることが示された。画像解析装置(GAS9000, UVItec)を用いて、電気泳動で分離されたタンパク質の定量を行ったところ、その結果でも、IPTG誘導を受けたアスパルターゼの活性を持つ菌株(Lane 5)では対照組の菌株(Lane 3)よりも、クラゲGFPの生産が100 %増加することが明らかにされた。
また、LBにグルコースを添加した培養基を用いた場合には10時間の発酵の後、対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)では、IPTGの誘導の有無に関わらず、細胞密度が5.1(OD550)であり、IPTGの誘導がない組み換え菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)でも5.1(OD550)であったのに対し、IPTG誘導を受けたアスパルターゼの活性を持つ菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)の細胞では6.4(OD550)にまで達することが分かった。同様に、図15のウェスタンブロット分析の結果から、対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)と組み換え菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)におけるクラゲGFPの生産については、どれもIPTGの誘導によって促進されることが分かった。また、画像解析装置(GAS9000, UVItec)を利用し、電気泳動で分離されたタンパク質の定量を行った結果からは、IPTG誘導を受けたアスパルターゼの活性を持つ菌株(Lane 9)では対照組の菌株(Lane 7)よりも、クラゲGFPの生産が5倍多くなることが明らかにされた。
以上述べたことをまとめると、M9にグルコース、酵母エキス及びアスパラギン酸を添加した培養基やLBにグルコースを添加した培養基を含むいずれの培養基を用いた場合であっても、アスパルターゼ活性を持つ菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-AspA)ではIPTGの誘導によるクラゲGFPの生産量が対照組の菌株(BL21/pGFPuv/pACYC-A1)よりも1-5倍高くなっていた。また、細胞の成長が良好だったことで、最終的には、細胞密度が20 %上昇した。したがって、この実施例は、本発明におけるアスパルターゼの発現によって、形質転換をした宿主細胞に組み換え型タンパク質の生産を促進する能力が与えられることを示した。
本明細書に開示された全ての特徴は、他の方法との結合が可能であるうえ、何れの特徴についても、同一の、同様の、或いは目的の類似した特徴を含む幾つかの選択肢の中から置き換えることが可能である。したがって、特別に明らかとした特徴だけでなく、本明細書に開示された全ての特徴は、多くの同様又は目的の類似したの特徴の中の一例に過ぎない。
Claims (63)
- 細胞の成長を促進する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法。
工程(a):ある種のベクターに、アスパルターゼ(aspartase)をコードする核酸配列を導入して、組み換えベクターを得る工程。前記組み換えベクターは、プロモーターを含有し、そのプロモーターの下流に、ライゲーションによって、前記核酸配列が導入されている。
工程(b):前記工程(a)の組み換えベクターを宿主細胞(host cell)に形質転換し、組み換え細胞株を得る工程。
工程(c):前記工程(b)の組み換え細胞株を培養基で培養する工程。その結果、細胞中でのアスパルターゼ遺伝子の発現により、前記組み換え細胞株の成長が促進される。 - 前記工程(a)のプロモーターは、イソプロピルチオガラクトシド(isopropylthiogalactoside, IPTG)によって、アスパルターゼ遺伝子の発現を調節するものである、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(a)のプロモーターは、恒常的(constitutive)プロモーター、或いは他の調節プロモーターである、請求項2に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒトの細胞に由来するものである、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌由来である、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(b)の宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、或いは哺乳類細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(c)の培養基は、アスパラギン酸を含有する、請求項1に記載の方法。
- 前記培養基は、LBを含む、請求項7に記載の方法。
- 前記培養基は、LB及びグルコースを含有する、請求項7に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項7に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、酵母の抽出物、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項7に記載の方法。
- 細胞中でのターゲット遺伝子の発現による遺伝子産物の生産量を増加する方法であって、以下の工程を包含することを特徴とする方法。
工程(a):アスパルターゼをコードする核酸配列を含む組み換えベクターを構築する工程。前記組み換えベクターは、プロモーター、アスパルターゼをコードする核酸配列を含有し、該核酸配列はライゲーションにより、該プロモーターの下流に導入されている。
工程(b):発現させたいターゲット遺伝子を導入した組み換えベクターを構築する工程。
工程(c):前記工程(a)の組み換えベクターと前記工程(b)の組み換えベクターを宿主細胞に共形質転換し、遺伝子組み換え細胞株を得る工程。
工程(d):前記工程(c)の遺伝子組み換え細胞株を培養基で培養し、アスパルターゼ及び発現させたいターゲット遺伝子の産物を誘導生産する工程。該アスパルターゼは、前記組み換え細胞株のターゲット遺伝子の発現による産物の生産量を増加させる働きをする。 - 前記工程(a)のプロモーターは、イソプロピルチオガラクトピラノシド(isopropylthiogalactopyranoside, IPTG)によって、アスパルターゼ遺伝子の発現を調節するものである、請求項12に記載の方法。
- 前記工程(b)のプロモーターは、イソプロピルチオガラクトピラノシド(isopropylthiogalactopyranoside, IPTG)によって、発現させたい組み換えタンパク質遺伝子の発現を調節するものである、請求項12に記載の方法。
- 前記組み換えベクターのプロモーターは、恒常的(constitutive)プロモーター、または他の調節プロモーターである、請求項13に記載の方法。
- 前記組み換えベクターのプロモーターは、恒常的(constitutive)プロモーター、または他の調節プロモーターである、請求項14に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒトの細胞に由来するものである、請求項12に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌由来である、請求項12に記載の方法。
- 前記工程(d)のターゲット遺伝子産物は、組み換えタンパク質またはポリペプチドを含む、請求項12に記載の方法。
- 前記組み換えタンパク質は、異種タンパク質または同種タンパク質である、請求項19に記載の方法。
- 前記異種タンパク質は、クラゲGFP(Green Fluorescence Protein)である、請求項20に記載の方法。
- 前記同種タンパク質は、β−ガラクトシダーゼである、請求項20に記載の方法。
- 前記工程(c)の宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞である、請求項12に記載の方法。
- 前記工程(d)の培養基は、アスパラギン酸を含有する、請求項12に記載の方法。
- 前記培養基は、LBを含む、請求項24に記載の方法。
- 前記培養基は、LB及びグルコースを含有する、請求項24に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項24に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、酵母の抽出物、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項24に記載の方法。
- 細胞の成長を促進する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法。
工程(a):宿主細胞の染色体に、アスパルターゼ(aspartase)をコードする核酸配列を導入して、遺伝子組み換え細胞株を得る工程。
工程(b):前記工程(a)の組み換え細胞株を培養基で培養する工程。その結果、細胞中でのアスパルターゼ遺伝子の発現により、前記組み換え細胞株の成長が促進される。 - 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒトの細胞に由来するものである、請求項29に記載の方法。
- 前記アスパルターゼの核酸配列は、大腸菌由来である、請求項30に記載の方法。
- 前記工程(a)の宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞である、請求項29に記載の方法。
- 前記工程(b)の培養基は、アスパラギン酸を含有する、請求項29に記載の方法。
- 前記培養基は、LBを含む、請求項33に記載の方法。
- 前記培養基は、LB及びグルコースを含有する、請求項33に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項33に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、酵母の抽出物、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項33に記載の方法。
- 細胞中でのターゲット遺伝子の発現による遺伝子産物の生産量を増加する方法であって、以下の工程を包含することを特徴とする方法。
工程(a):アスパルターゼをコードする核酸配列、及び発現させたいターゲット遺伝子を導入し、組み換えベクターを構築する工程。
工程(b):前記工程(a)の組み換えベクターを宿主細胞に形質転換し、遺伝子組み換え細胞株を得る工程。
工程(c):前記工程(b)の遺伝子組み換え細胞株を培養基で培養し、アスパルターゼ及び発現させたいターゲット遺伝子産物を誘導生産する工程。該アスパルターゼは、前記組み換え細胞株のターゲット遺伝子の発現による産物の生産量を増加させる働きをする。 - 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒトの細胞に由来するものである、請求項38に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌由来である、請求項38に記載の方法。
- 前記工程(a)のターゲット遺伝子の発現による産物は、組み換えタンパク質またはポリペプチドを含む、請求項38に記載の方法。
- 前記組み換えタンパク質は、異種タンパク質または同種タンパク質である、請求項41に記載の方法。
- 前記異種タンパク質は、クラゲGFP(Green Fluorescence Protein)である、請求項42に記載の方法。
- 前記同種タンパク質は、β−ガラクトシダーゼである、請求項42に記載の方法。
- 前記工程(b)の宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞である、請求項38に記載の方法。
- 前記工程(c)の培養基は、アスパラギン酸を含有する、請求項38に記載の方法。
- 前記培養基は、LBを含む、請求項46に記載の方法。
- 前記培養基は、LB及びグルコースを含有する、請求項46に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項46に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、酵母の抽出物、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項46に記載の方法。
- 細胞中でのターゲット遺伝子の発現による遺伝子産物の生産量を増加する方法であって、以下の工程を包含することを特徴とする方法。
工程(a):アスパルターゼをコードする核酸配列を宿主細胞の染色体に導入して、組み換え細胞株を得る工程。
工程(b):発現させたいターゲット遺伝子を導入した組み換えベクターを構築する工程。
工程(c):前記工程(b)の組み換えベクターを前記工程(a)の宿主細胞に形質転換して、組み換え細胞株を得る工程。
工程(d):前記工程(c)の組み換え細胞株を培養基で培養し、アスパルターゼ及び発現させたいターゲット遺伝子産物を誘導生産する工程。該アスパルターゼは、前記組み換え細胞株のターゲット遺伝子の発現による産物の生産量を増加させる働きをする。 - 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、動物、またはヒトの細胞に由来するものである、請求項51に記載の方法。
- 前記工程(a)のアスパルターゼの核酸配列は、大腸菌由来である、請求項52に記載の方法。
- 前記工程(a)の宿主細胞は、細菌、酵母、真菌、植物細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞である、請求項51に記載の方法。
- 前記工程(b)のターゲット遺伝子の発現による産物は、組み換えタンパク質またはポリペプチドを含む、請求項51に記載の方法。
- 前記組み換えタンパク質は、異種タンパク質または同種タンパク質である、請求項55に記載の方法。
- 前記異種タンパク質は、クラゲGFP(Green Fluorescence Protein)である、請求項56に記載の方法。
- 前記同種タンパク質は、β−ガラクトシダーゼである、請求項56に記載の方法。
- 前記工程(d)の培養基は、アスパラギン酸を含有する、請求項51に記載の方法。
- 前記培養基は、LBを含む、請求項59に記載の方法。
- 前記培養基は、LB及びグルコースを含有する、請求項59に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項59に記載の方法。
- 前記培養基は、M9、グルコース、酵母の抽出物、及びアスパラギン酸を含有し、そのM9には、Na2HPO4(6 g/L)、KH2PO4(3 g/L)、NaCl(0.5 g/L)、NH4Cl(1 g/L)、MgSO4・7H2O(1 mM)、CaCl2(0.1 mM)が含まれる、請求項59に記載の方法。
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