JP2006174807A - 遺伝子多型を用いた薬剤の副作用発現予測方法 - Google Patents

遺伝子多型を用いた薬剤の副作用発現予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法およびキットを提供する。
【解決手段】個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析して変異の有無を決定することを含む。また、抗癌剤による副作用予測方法にも関する。最も好ましい態様において本発明の方法は、CYP1A1ゲノムの一塩基多型、m1、m2、および/またはIVS1−728の遺伝子型がマイナーアレルであった場合に、リン酸エストラムスチンナトリウムによる消化器障害の副作用の発症リスクが低いと判断することを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける1以上の一塩基多型の遺伝子型の解析に基づく、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法、および前記副作用の出現を予測する方法に関する。本発明はまた、個体のCYP1A1のゲノムにおける1以上の一塩基多型の遺伝子型を解析するための試薬または装置を含んでなる、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを検出するための診断キットに関する。さらに、本発明は、個体のCYP1A1のアミノ酸配列の変異の解析に基づく、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法、および前記副作用の出現を予測する方法に関する。
抗癌剤は、癌の進行の抑制に有用である反面、重篤な副作用により投薬療法を中断せざるを得ない場合がしばしばある。抗癌剤の一つであるリン酸エストラムスチンナトリウム(EMP)は、エストラジオールに結合したノルナイトロジェンマスタードから構成され、前立腺癌の治療に用いられている。EMPは、1960年代中頃に合成された当初は乳癌の治療に用いられていたが、1970年代に、ラットの腹側前立腺にEMPが特異的に集積するという事実に基づいて、前立腺癌の治療に適用されるようになった。EMPは投与後、体内において迅速な脱リン酸化を受け、エストラムスチン(EaM)を生じ、そしてEaMは酸化されてエストロムスチン(EoM)に変化する。その後、EaMおよびEoMは加水分解により、エストロゲン誘導体であるエストラジオールおよびエストロンをそれぞれ生じる(Gunnarsson,P.O.およびForshell,G.P.、 Urology,1984,23:22−27)。EaMおよびEoMは、主に前立腺癌細胞に対して細胞毒性剤として働く(Kreis,W.ら、Br.J.Urol.,1997,79:196−202)。EaMおよびEoMはエストラムスチン結合タンパク質(EMBP)により前立腺癌細胞中に集積され、そして、それは前立腺癌細胞内において微小管および微小管関連タンパク質(MAPs)へ結合することにより有糸分裂を妨害する(Bergenheim,A.T.およびHenriksson,R.、Clin.Pharmacokinet.,1998,34:163−172)。この作用によりリン酸エストラムスチンナトリウム(EMP)は前立腺癌の化学療法による治療において非常に有用である。しかしながら、一方で患者によってはEMPの服用により重度の副作用が発現し、EMPによる治療を断念せざるを得ない場合がある。本発明者らの以前の研究では、低用量でのEMP単独療法の効果について報告したが、副作用の発生率は低用量でのEMP単独療法によっても低下することはなかった(Kitamura,T.,Int.J.Urol.,2001,8:33−36、およびKitamura,T.,et al.,Expert Rev.Anticancer Ther.,2002,2:59−71)。リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療において、副作用を回避するための適切な投与方法は現在のところ存在しない。このような場合には、その抗癌剤の投与により副作用を生じない個体を適切に選択して治療を行うことが必要となるのであるが、副作用を生じない個体を選択する手法や基準もまた、ほとんどないのが現状である。
個体ごとの薬剤の効き方や薬剤による副作用発現の違いは、ある薬剤やその代謝物に関わるタンパク質の遺伝子の多型によるものと考えられている。シトクロームP450は、薬剤を含む外来物質の代謝に関与する酵素群であり、シトクロームP450遺伝子における遺伝子多型が多くの薬剤についての個体ごとの代謝速度を決定していると考えられている。エストロゲン代謝酵素(CYP1A1)は、シトクロームP450酵素群の一つであり、CYP1A1は、エストロゲンの他ダイオキシンなど多くの物質の代謝に関わっていることが知られている。上述したリン酸エストラムスチンナトリウムの代謝物の一つであるエストラジオールはエストロゲンの一つであり、CYP1A1により代謝されることが示されている(Lackhani,N.J.,et al.,Pharmacotherapy,2003,23:165−172)。しかしながら、リン酸エストラムスチンナトリウムをはじめとする抗癌剤の副作用とCYP1A1遺伝子における遺伝子多型との関係については明らかになっていない。
以下の文献は、参考文献としてその内容が本明細書中に援用される。
Gunnarsson, P. O., and Forshell, G. P.: Clinical pharmacokinetics of estramustine phosphate., Urology, 1984; 23: 22-27. Kreis, W., Budman, D. R., and Calabro, A.: Unique synergism or antagonism of combinations of chemotherapeutic and hormonal agents in human prostate cancer cell lines., Br. J. Urol., 1997; 79: 196-202. Bergenheim, A. T., and Henriksson, R.: Pharmacokinetics and pharmacodynamics of estramustine phosphate., Clin. Pharmacokinet., 1998, 34: 163-172. Kitamura, T., Necessity of re-evaluation of estramustine phosphate sodium (EMP) as a treatment opinion for first-line monotherapy in advanced prostate cancer., Int. J. Urol., 2001, 8: 33-36. Kitamura, T., Nishimatsu, H., and Hamamoto, T., et al.: EMP combination chemotherapy and low-dose monotherapy in advanced prostate cancer., Expert Rev. Anticancer Ther., 2002, 2: 59-71. Lakhani, N. J., Sarkar, M. A., Venitz, J., Figg, W. D.: 2-Methoxyestradiol, a promising anticancer agent., Pharmacotherapy, 2003, 23:165-172.
抗癌剤は、癌の進行の抑制に有用である反面、重篤な副作用により投薬療法を中断せざるを得ない場合がしばしばあるが、治療前の段階で副作用の発現の予測を行い、副作用のリスクの少ない個体を選択することができれば、より効果的な癌治療を行うことができる。本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用の発現と個体の遺伝子多型を関連づけることにより、副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題の解決のために、鋭意研究に努めた結果、抗癌剤の一つであるリン酸エストラムスチンナトリウム内服による副作用の出現リスクがエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)の一塩基多型と関連することを明らかにし、本発明を完成するに至った。
CYP1A1ゲノムの遺伝子多型を用いた抗癌剤治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法
本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析してマイナーアレルの有無を決定することを含む、前記方法を提供する。
本発明はまた、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
(a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を検出し;そして、
(b)前記マイナーアレルが存在した場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
ことを含む前記方法、を提供する。
別の態様において本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用を予測する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析してマイナーアレルの有無を決定することを含む、前記方法を提供する。
また、本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用を予測する方法であって、以下:
(a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を検出し;そして、
(b)前記マイナーアレルが存在した場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
ことを含む前記方法、を提供する。
本発明の方法により、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを調べる個体は、哺乳動物である。好ましい態様において当該個体はヒトであり、より好ましくは癌と診断されたヒトであり、さらに好ましくは前立腺癌と診断されたヒトである。
本発明の方法において、一塩基多型を解析する個体のゲノム試料は、個体の組織または体液の試料から当業者に公知の方法によって抽出してもよい。前記個体のゲノム試料は、体細胞であれば特に限定されないが、好ましくは血液試料、特に好ましくは、末梢血白血球試料から抽出する。
一塩基多型(SNP)とは、ゲノムDNAにおける塩基配列上、核酸の変異により個体間で1塩基が異なる状態をいう。一塩基多型(SNP)は集団内で1%以上の頻度で存在する多型と便宜上定義されている。本明細書において一塩基多型を記載する場合には、コーディング鎖側の塩基で記載する。また、本明細書において一塩基多型という場合には、コーディング鎖の多型および対応する非コーディング鎖の多型のいずれかまたは両方を意図する。ある一塩基多型部位において頻度がもっとも高いアレルをメジャーアレルという。マイナーアレルとは、ある一塩基多型部位においてより低い頻度を持つアレル、すなわち、メジャーアレルではない遺伝子型を意味する。また、本明細書において一塩基多型は、コーディング領域の一塩基多型、非翻訳領域の一塩基多型、イントロン領域の一塩基多型、遺伝子の両側に隣接する領域の一塩基多型を含む。
本発明の方法においてその一塩基多型を解析する、シトクロームP450酵素群の一つであるエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)(EC 1.14.14.1)は、多くの薬剤の代謝に関わる酵素である。CYP1A1のゲノムは15番染色体上に存在し、Ensembl Gene ID:ENSG00000140465に登録されている。CYP1A1ゲノムのコーディング鎖側(15番染色体においてはマイナス鎖側)の配列を配列番号1に示す。
本発明の方法において解析するCYP1A1のゲノムにおける一塩基多型は、CYP1A1遺伝子領域、および当該遺伝子の両側に隣接する5000塩基まで、好ましくは2000塩基まで、より好ましくは1000塩基まで、さらに好ましくは500塩基まで、の領域におけるいずれかの一塩基多型を含む。好ましい態様において、本発明の方法において解析するCYP1A1のゲノムにおける一塩基多型は、
(i)CYP1A1のコーディング領域に存在する、dbSNP ID:rs2278970、dbSNP ID:rs1048943(以下、m2という。配列番号1の塩基5393に対応する。メジャーアレルはアデニン(A)、マイナーアレルはグアニン(G))、dbSNP ID:rs1799814、dbSNP ID:rs2856833、dbSNP ID:rs4987133、dbSNP ID:rs2229150、およびdbSNP ID:rs4646422;
(ii)CYP1A1遺伝子のイントロン領域に存在する、dbSNP ID:rs2856844、dbSNP ID:rs2606345、dbSNP ID:rs8031941、dbSNP ID:rs4646419、dbSNP ID:rs4646420、dbSNP ID:rs4646421(以下、IVS1−728という。配列番号1の塩基2186に対応する。メジャーアレルはシトシン(C)、マイナーアレルはチミン(T))、dbSNP ID:rs4986885、dbSNP ID:rs2606344、およびdbSNP ID:rs4986879;
(iii)CYP1A1遺伝子の非コーディング(UTR)領域に存在する、dbSNP ID:rs2606346、dbSNP ID:rs4986880、dbSNP ID:rs4986881、dbSNP ID:rs4986882、dbSNP ID:rs1800031、dbSNP ID:rs4986883、およびdbSNP ID:rs4986884;ならびに、
(iv)CYP1A1遺伝子の両側に隣接する領域に存在する、dbSNP ID:rs7495708、dbSNP ID:rs2470893、dbSNP ID:rs3809585、dbSNP ID:rs2445619、dbSNP ID:rs2472296、dbSNP ID:rs4646417、dbSNP ID:rs2856831、dbSNP ID:rs2856832、dbSNP ID:rs3826042、dbSNP ID:rs11334544、dbSNP ID:rs3826041、dbSNP ID:rs4646418、dbSNP ID:rs2472307、dbSNP ID:rs4646903(以下、m1という。配列番号1の塩基6737に対応する。メジャーアレルはチミン(T)、マイナーアレルはシトシン(C))、dbSNP ID:rs2472309、dbSNP ID:rs2472308、dbSNP ID:rs5813767、およびdbSNP ID:rs5813766;
からなる群から選択される1以上の一塩基多型である。最も好ましい態様において、本発明の方法において解析するCYP1A1のゲノムにおける一塩基多型は、m1(dbSNP:rs4646903)、m2(dbSNP:rs1048943)およびIVS1−728(dbSNP:rs4646421)からなる群から選択される1以上の一塩基多型である。
本発明の方法は、個体のCYP1A1のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析することを含む。本発明の方法において、個体の試料において解析した一塩基多型のうち、少なくとも1つがマイナーアレルであった場合には、該個体は、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが、当該一塩基多型がメジャーアレルであった場合と比較して低いと判断する。好ましくは、個体の試料において解析した一塩基多型のうち1より多くがマイナーアレルであった場合には、該個体はさらに抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが、当該一塩基多型がメジャーアレルであった場合と比較して低いと判断することができる。最も好ましくは、個体の試料において解析した一塩基多型のアレルのうち、m1、m2およびIVS1−728の少なくとも1つ、好ましくはいずれか2つ以上、さらに好ましくは3つすべてがマイナーアレルであった場合には、該個体は抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが、当該一塩基多型がメジャーアレルであった場合と比較して低いと判断することができる。
本発明の方法における一塩基多型の解析には、当業者に公知の一塩基多型の解析方法のいずれかを用いて行うことができる。一塩基多型の解析方法には、限定されるわけではないが、直接シークエンシング法;SSCP(一本鎖DNA高次構造多型)法;RFLP(制限断片長多型)法;MALDI−TOF/MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析)法;アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法;アレル特異的増幅(ASA)法;TaqMan PCR法;インベーダー法;ピロシークエンシング法;などが含まれる。
直接シークエンシング法は、一塩基多型部位を含む領域をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅して得られたPCR産物のDNA配列を、ダイターミネーター化学を用いて配列解析を行う方法であり、ゲノムの塩基配列を直接解析することにより一塩基多型の解析を行う手法である。
SSCP法は、1本鎖DNAがDNA配列に依存して特異的な立体構造を持っていることを利用し、DNA配列中の塩基の違いを電気泳動での移動度の違いとして一塩基多型を検出する方法である。この方法では、一塩基多型部位を含む領域を、標識プライマーを用いてPCRにより増幅し、増幅したDNA断片を熱処理などにより変性させてそれぞれ1本鎖DNAにした上で電気泳動を行う。
RFLP法は、遺伝子多型の存在により、制限酵素で処理して得られるDNA断片の長さに違いが生じることを利用し、一塩基多型を検出する方法である。この方法では、DNAを特定の制限酵素、たとえばm1の多型を検出するには制限酵素Msp I、を用いて処理し、サザンブロットでの電気泳動パターンからその一塩基多型を解析する。
MALDI−TOF/MS法では、個体に由来する核酸試料(ゲノム試料、または一塩基多型部位を含む領域をPCRにより増幅したDNA断片などを含む)に、多型部位の5’側に隣接する配列に対して相補的なプライマーをハイブリダイズさせ、DNAポリメラーゼによりダイデオキシヌクレオチド(ddNTP)を用いて、1塩基だけ伸長させる。この1塩基伸長させた産物を質量分析法により検出し、分子量の違いとして一塩基多型を解析する。シリコンチップ上に固定されたDNA試料を用いるマスアレイ(Mass Array)法もこの方法に含まれる。質量分析には、MALDI−TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化 飛行時間型質量分析)が好適に用いられるが、DNAの質量分析が可能である限りにおいて、これに限定するわけではない。
アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法は、アレル特異的オリゴヌクレオチドプローブを用いて、一塩基多型の解析を行う方法である。プローブ配列と完全に相補的ではない配列にはプローブが弱くしか結合できない性質を利用したものである。一塩基多型検出用のDNAチップを用いた方法も、アレル特異的オリゴヌクレオチド法の一つである。
アレル特異的増幅(ASA)法は、例えば、一塩基多型部位のある遺伝子型とはハイブリダイズするがその他の遺伝子型とはハイブリダイズしないプライマーを設計してPCRを行うことを含む。プライマーがハイブリダイズする一塩基多型を有する試料においてのみ、PCRによりその試料のDNA断片が増幅される。
TaqMan PCR法は、多型部位を含む領域を増幅する1対のプライマー(すなわち、該プライマーは多型部位に隣接する領域にハイブリダイズする)の他に、多型部位において遺伝子型特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用する。該プローブは、5’末端を蛍光色素、3’末端を消光色素で標識されている。該プローブは、遊離のときおよび核酸試料の多型部位にハイブリダイズしているときは蛍光色素の近傍に消光色素が存在するため発光が抑えられている。このオリゴヌクレオチドプローブの存在下で上記プライマーを用いてTaq DNAポリメラーゼによる伸長反応を行うと、プライマーの伸長に伴って、多型部位にハイブリダイズしている該プローブの5’末端の蛍光色素を有するヌクレオチドが、Taq DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により除去される。除去されたヌクレオチドが有する蛍光色素は、消光色素からの距離が離れるため、該蛍光色素の蛍光が観察される。したがって、該プローブがハイブリダイズした試料からは蛍光が観察されることになるため、試料の一塩基多型を解析することができる。
インベーダー法は、解析する試料とはハイブリダイズしないフラップ(flap)部分を有するシグナルプローブとインベーダーオリゴヌクレオチドプローブを用いる方法である。この方法では、インベーダーオリゴヌクレオチドプローブが核酸試料の一塩基多型と一致した場合には、当該核酸試料、シグナルプローブおよびインベーダーオリゴヌクレオチドプローブの三者がクリベースの認識部位を形成し、シグナルプローブのフラップ部分が切断される。この切断されたフラップ部分を検出することで一塩基多型を解析することができる。
ピロシークエンシング法は、シークエンス反応を化学発光で検出する方法である。この方法では、核酸試料をビオチンで標識したプライマーでPCR増幅した後、アビジンコートされたビーズなどにより選別してDNAの1本鎖化を行う。一塩基多型の数塩基上流または直前に設計されたプライマーにdNTPの一つを一つずつ添加すると相補的な塩基については伸長反応が起こり、その時にのみピロリン酸が発生する。このピロリン酸によるカスケード反応が生じATPが生成され、ルシフェラーゼ発光が生じることで一塩基多型を解析する仕組みになっている。
CYP1A1タンパク質のアミノ酸変異に基づく、抗癌剤治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法
本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のアミノ酸配列を解析して、CYP1A1遺伝子におけるマイナーアレルにコードされるアミノ酸の有無を決定することを含む、前記方法を提供する。
本発明はまた、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
(a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のアミノ酸配列を解析し、;そして、
(b)当該個体のCYP1A1を構成するアミノ酸の1以上がCYP1A1遺伝子におけるマイナーアレルにコードされる場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
ことを含む前記方法、を提供する。
別の態様において本発明は、抗癌剤による治療に対する副作用を予測する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のアミノ酸配列を解析して、CYP1A1遺伝子におけるマイナーアレルにコードされるアミノ酸の有無を決定することを含む、前記方法を提供する。
本発明はまた、抗癌剤による治療に対する副作用を予測する方法であって、以下:
(a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のアミノ酸配列を解析し、;そして、
(b)当該個体のCYP1A1を構成するアミノ酸の1以上がCYP1A1遺伝子におけるマイナーアレルにコードされる場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
ことを含む前記方法、を提供する。
本発明の方法により、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを調べる個体は、哺乳動物である。好ましい態様において当該個体はヒトであり、より好ましくは癌と診断されたヒトであり、さらに好ましくは前立腺癌と診断されたヒトである。
本発明の方法における、個体のCYP1A1のアミノ酸配列解析においては、個体の試料からCYP1A1タンパク質を単離してアミノ酸解析を行ってもよい。別の態様において個体のCYP1A1のアミノ酸配列解析は個体の試料から得られるゲノムまたはmRNAの配列に基づくアミノ酸配列の推定により行ってもよい。個体の試料は個体の組織または体液の試料であり、タンパク質、ゲノム試料またはmRNAは当業者に公知の方法によって前記個体の試料から抽出してよい。
エストロゲン代謝酵素CYP1A1(EC 1.14.14.1)の配列は、配列番号2に示した。配列番号2に示されるアミノ酸配列はCYP1A1遺伝子がすべてメジャーアレルからなる場合のアミノ酸配列である。CYP1A1を構成するアミノ酸がマイナーアレルにコードされるとは、CYP1A1タンパク質において配列番号2の配列におけるアミノ酸から変異していることをいう。
本発明の方法において解析するCYP1A1タンパク質のアミノ酸は、CYP1A1を構成するアミノ酸のいずれかでよいが、好ましくは、配列番号2のアミノ酸45、アミノ酸93、アミノ酸286、アミノ酸381、アミノ酸461、アミノ酸462、アミノ酸463である。これらのアミノ酸の1以上が配列番号2に示されるアミノ酸から変異している場合には、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが、変異していない場合と比較して低いと判断することができる。好ましい態様において、本発明の方法において解析するCYP1A1タンパク質のアミノ酸は、配列番号2のアミノ酸462であり、このアミノ酸がイソロイシンからバリンに変異している場合には、そのタンパク質を有する個体は抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが、当該アミノ酸がイソロイシンの場合と比較して低いと判断することができる。
本発明の方法におけるCYP1A1のアミノ酸配列解析には、当業者に公知のアミノ酸配列解析法のいずれかを用いて行うことができる。アミノ酸配列解析方法には、限定されるわけはないが、Edman分解によるN末端アミノ酸配列分析、タンデム質量分析法(MS/MS)を用いたアミノ酸配列分析などが含まれる。Edman分解によるN末端アミノ酸配列分析は、手動で行ってもよく、またはペプチドシークエンサーなどの装置を用いて行ってもよい。アミノ酸配列解析はまた、ゲノム配列、mRNAの配列解析により、それらにコードされるアミノ酸配列の推定を行ってもよい。ゲノム配列、mRNA配列などの核酸配列の解析は、当業者に公知の直接シークエンシング法による配列解析によって行ってもよい。
本発明において副作用リスクの予測が可能な抗癌剤
本発明の方法において抗癌剤とは、癌の治療のために用いられる薬剤のいずれかを意図する。好ましくは、本発明の方法で副作用のリスクの予測を行う抗癌剤は、それが代謝されてエストラジオールを生じるような抗癌剤である。また、好ましくは、本発明の方法で副作用のリスクの予測を行う抗癌剤は、エストラジオール部分を含む構造を有する抗癌剤である。好ましくは、本発明の方法で副作用のリスクの予測を行う抗癌剤は、リン酸エストラムスチンナトリウム、リン酸エストラムスチン、プロセキソール(帝国臓器製薬)、からなる群から選択される。さらに好ましくは、本発明の方法における抗癌剤はリン酸エストラムスチンナトリウムまたはリン酸エストラムスチンである。
また、別の態様において、本発明の方法により副作用のリスクの予測を行うことができる薬剤は抗癌剤に限らず、CYP1A1により代謝される薬剤のいずれかであってもよい。そのような薬剤には、エストロゲン製剤、たとえば、エストラダームTTS(ノバルティス)、エストラダームM(ノバルティス)、オバホルモン(帝国臓器製薬−武田薬品工業)、オバホルモンデポー(帝国臓器製薬−武田薬品工業)、プロギノンデポー(日本シェーリング)、ペラニンデポー(持田製薬)、プレマリン(ワイスレダリー、旭化成)、E・Pホルモン(帝国臓器製薬)、ルテス(持田製薬)、E・Pホルモンデポー(帝国臓器製薬)、ルテスデポー(持田製薬)、新EP(帝国臓器製薬)、エデュレン(モンサント)、ドオルトン(日本シェーリング)、プラバノール(ワイスレダリー)、オーソM21(ヤンセン協和−持田製薬)、エリオット21(明治製薬)、オーソ777−28(ヤンセン協和−持田製薬)、シンフェーズT28(モンサント−ツムラ)、ノリニールT28(第一製薬−科研製薬)、トライディオール21(ワイスレダリー−武田薬品工業)、トリキュラ21(日本シェーリング)、アンジュ28(帝国臓器)、リビアン28(山之内製薬)、マーベロン28(オルガノン)、などが含まれるがこれらに限定されない。
本発明において発現リスクが予測される抗癌剤による治療に対する副作用
本発明の方法により発現リスクが予測される抗癌剤の副作用には、限定されるわけではないが、胃痛、腹痛、下痢、悪心・嘔吐、食欲不振、消化不良、および口渇などの消化器障害;貧血、白血球減少、白血球増多、血小板減少および凝固異常などの血液・凝固系障害;心不全、心筋梗塞、狭心症、不整脈、高血圧、血栓塞栓症(血栓性静脈炎、脳血栓、肺血栓、脳梗塞など)、心悸亢進、浮腫、低蛋白血症、BUNの上昇および血清トリグリセライドの上昇などの循環器系障害;全身倦怠感、胸痛、頭痛、発熱、疲労などの全身状態;女性化乳房などの内分泌障害;トランスアミナーゼ上昇、肝機能異常(AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇など)、および黄疸などの肝臓・胆管系障害;不眠などの神経系障害;性欲低下などの泌尿生殖器障害;発疹および掻痒などの皮膚障害;ならびに、胸水、息切れなどの呼吸器障害;を含む。好ましい態様において、本発明の方法における抗癌剤による治療に対する副作用は、胃痛、腹痛、下痢、悪心・嘔吐、食欲不振、消化不良、および口渇などを含む消化器障害である。
診断キット
本発明は、エストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける1以上の一塩基多型を解析するための試薬または装置を含んでなる、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを検出するための診断キットを提供する。
本発明のキットにおける、CYP1A1のゲノムにおける1以上の一塩基多型を解析するための試薬または装置とは、一塩基多型を解析するための上述の方法に用いるプライマー、一塩基多型を解析するための上述の方法に用いるプローブ、一塩基多型を解析するためのDNAチップ、等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
本発明のキットにはさらに、個体から組織や体液などの試料を得るための装置、該試料からゲノム試料を抽出するための試薬および装置、個体の試料から一塩基多型を解析するための方法に用いるバッファー類、酵素、およびプレートなどの反応容器、などのその他の試薬および装置を含んでいてよい。
本発明のキットには、説明書が添付されていてもよい。説明書には、キットの使用法のほか、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを判断する基準について記載されていてもよい。その基準とは、当該キットを用いて試験した被験者のCYP1A1のゲノムにおいて1以上のマイナーアレルが存在した場合には、該被験者は抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが低いと判断することである。好ましくは、その基準は、当該被験者のCYP1A1のゲノムにおいてm1、m2およびIVS−728の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは3つすべてがマイナーアレルであった場合には、該被験者は抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクが低いと判断することである。
本発明のキットにより、抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクを判断することができる。好ましい態様において、本発明のキットにより、リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクを判断することができ、さらに好ましくは、リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用である消化器障害の出現リスクを判断することができる。
本発明の方法により、抗癌剤による治療を行う前の段階で副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出できることから、治療前に副作用の発現を予測することが可能である。特に、本発明の方法により、リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療の副作用、特に消化器障害、の出現リスクを検出できる。抗癌剤による治療の副作用の出現リスクの少ない個体を選択することができるため、患者が重篤な副作用に苦しむことなく、より効果的な癌治療を行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例: 前立腺癌患者の遺伝子型同定と統計学的解析
(1)治療計画
新たに前立腺癌と診断された、85人の日本人の未治療前立腺癌患者(54〜89歳;平均73歳)を実験の対象とした。前立腺癌の診断は組織学的に行った。前立腺癌の家族履歴を持つ患者はいなかった。この85人の患者にリン酸エストラムスチンナトリウムを140mg/日(44人の患者について)、または280mg/日(41人の患者について)で投与して治療した。29人の患者にリン酸エストラムスチンナトリウムの治療による副作用である消化器障害(食欲不振、吐気、下痢など)を認めた。患者の健康状態および副作用の発生率はthe National Cancer Institute - Common Toxicity Criteriaのガイドライン(バージョン2)に従って毎日測定した。東京大学倫理委員会がこの研究を承認し、実験に入る前にすべての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
(2)遺伝子型の同定
遺伝子型を同定するゲノムDNAは、株式会社SRLに委託して、上記の85人の日本人患者の末梢血白血球からGENOMIX(Talent社)血液DNA抽出キットを用いて製品のプロトコルに従って抽出した。抽出したDNAは蒸留水または超純水(MilliQ水など)に溶解し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用する前に100ng/μlの濃度に調整した。
患者のCYP1A1ゲノム上の3つの一塩基多型、m1(dbSNP ID:rs4646903;配列番号1の塩基6737の位置、メジャーアレルはチミン(T)、マイナーアレルはシトシン(C))、m2(dbSNP ID:rs1048943;配列番号1の塩基5393の位置、メジャーアレルはアデニン(A)、マイナーアレルはグアニン(G))、およびIVS1−728(dbSNP ID:rs4646421;配列番号1の塩基2186の位置、メジャーアレルはシトシン(C)、マイナーアレルはチミン(T))について、遺伝子型の同定を行った。具体的には、m1、m2、またはIVS1−728のそれぞれの一塩基多型部位を含有する遺伝子断片を、5μlの10X PCR Gold Buffer、1.5mM MgCl、0.2mM dNTP(ABI、米国カリフォルニア州フォスターシティ)、それぞれ0.5μMのプライマー(Fasmac、日本国神奈川県厚木市、により合成)、1.25UのAmpliTaq Gold(登録商標) DNAポリメラーゼ(ABI、米国ニュージャージー州ブランチバーグ)、および100ngのゲノムDNAを含む50μlの溶液中で増幅した。それぞれの一塩基多型部位を含有する遺伝子断片を増幅するプライマーとしては、以下:
i)m1を含有する遺伝子断片の増幅用プライマーとして、
m1 forward primer: 5’−CAG TGA AGA GGT GTA GCC GCT−3’(配列番号3)
m1 reverse primer: 5’−TAG GAG TCT TGT CTC ATG CCT−3’(配列番号4);
ii)m2を含有する遺伝子断片の増幅用プライマーとして、
m2 forward primer: 5’−CCC CTG ATG GTG CTA TCG AC−3’(配列番号5)
m2 reverse primer: 5’−AGT GGC ACG CTG AAT TCC−3’(配列番号6);
iii)IVS1−728を含有する遺伝子断片の増幅用プライマーとして、
IVS1−728 forward primer: 5’−AAG CAA TGT GGT TTG GGA AG−3’(配列番号7)
IVS1−728 reverse primer: 5’−TGT TCT CAG GGG AAT TAG GG−3’(配列番号8);
のプライマーを用いた。PCRはGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)中で、以下の条件で行った:94℃で10分加熱した後、94℃,45秒間−Tm(m1およびIVS1−728の領域の増幅について60℃、m2の領域の増幅について58℃),1分−72℃,2分を30サイクル、その後、72℃で10分加熱し、4℃に冷却。すべてのPCR産物はMontage PCR96 Cleanup Kit(ミリポア、米国マサチューセッツ州ビルリカ)を用いて製品のプロトコルに従って、デオキシヌクレオチドトリフォスフェートおよび過剰のプライマーを除き、精製した。
一塩基多型部位を含有する遺伝子断片を用いて、シークエンシング反応をシークエンシングプライマーとともにBigDye(登録商標)(ABI、米国カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて、ダイターミネーター化学によりシークエンシング反応を行った。反応産物は、Montage SEQ96 Sequencing Reaction Cleanup Kit(ミリポア、米国マサチューセッツ州ビルリカ)で製品のプロトコルに従って、混入している塩および取り込まれなかったダイターミネーターを除去して精製した。精製したサンプルはABI 3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステムズ)に適用し、そしてSequencer software(バージョン4.1.2;Gene Codes Corporation)で配列解析をして、一塩基多型部位の遺伝子型を同定した。
(3)統計学的解析
χテストを行って、リン酸エストラムスチンナトリウムにより副作用を生じた患者と副作用を生じなかった患者の遺伝子型の分布を比較した。それぞれの一塩基多型のアレル頻度は直接計数により算出し、χテストを用いてHardy−Weinberg(H−W)平衡から偏差を評価し、タイピングエラーの有無を確認した。ハプロタイプ頻度は、それぞれのCYP1A1遺伝子についてEHプログラム(バージョン1.20:ftp://linkage.rockefeller.edu/software/ehからダウンロードして入手)を用いて計算した。95%信頼区間(CI)のオッズ比(OR)は標準的Woolf−Haldane解析により得た。
(4)結果
CYP1A1における一塩基多型と消化器障害の相関
エストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノム遺伝子上の3つの一塩基多型(m1、m2、IVS1−728)を上記85人について解析した。遺伝子型解析の結果を表1ないし表3に示す。χテストにより、本実験のデータはH−W平衡に従っていることを確認した。
Figure 2006174807
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m1、m2およびIVS−728のそれぞれの一塩基多型について消化器障害の相対的な発症リスクを計算した。その結果、m1、m2およびIVS1−728の一塩基多型のいずれをとってみても、メジャーアレルを有する患者で有意に消化器障害の発症リスクが高いことが明らかになった。結果を表4に示す。
Figure 2006174807
ハプロタイプ解析
m1、m2およびIVS1−728の一塩基多型部位における遺伝子型の解析結果を基に、ハプロタイプ解析を行った。結果を表5に示す。その結果、m1、m2およびIVS1−728のいずれか2つの一塩基多型部位がメジャーアレルである遺伝子型を有する患者は、それ以外の遺伝子型を有する患者と比較して、消化器障害を発症するリスクが約3.5倍高いことが明らかになった。また、m1、m2およびIVS1−728の3つの一塩基多型部位すべてがメジャーアレルである遺伝子型を有する患者は、それ以外の遺伝子型を有する患者と比較して、消化器障害を発症するリスクが約9.6倍高いことが明らかになった。
Figure 2006174807
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従って、リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療において、消化器障害を発症するリスクは、m1、m2およびIVS1−728の一塩基多型部位のいずれかにおいてメジャーアレルを有する患者において高いことが明らかになった。また、より多くのメジャーアレルの組み合わせを有する患者ほど、消化器障害の発症リスクが有意に高いことが明らかになった。このことは逆に、m1、m2およびIVS1−728の一塩基多型部位のいずれかにおいてマイナーアレルを有する患者は、消化器障害を発症するリスクが低いことを意味するものである。

Claims (10)

  1. 抗癌剤による治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を決定することを含む、前記方法。
  2. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおいて1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を決定することを含む、前記方法。
  3. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
    (a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を検出し;そして、
    (b)前記マイナーアレルが存在した場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
    ことを含む、前記方法。
  4. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
    (a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおけるm1、m2および/またはIVS1−728の一塩基多型を解析して、1以上のマイナーアレルの有無を検出し;そして、
    (b)前記一以上のマイナーアレルが存在した場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
    ことを含む、前記方法。
  5. エストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける一塩基多型の解析を、直接シークエンシング法、SSCP(一本鎖DNA高次構造多型)法、RFLP(制限断片長多型)法、MALDI−TOF/MS法、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法、アレル特異的増幅(ASA)法、TaqMan PCR法、インベーダー法、およびピロシークエンシング法、からなる群より選択される方法により行う、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用が、消化器障害である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用予測方法であって、以下:
    (a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける1以上の一塩基多型を解析して、マイナーアレルの有無を検出し;
    (b)前記マイナーアレルが存在した場合には、リン酸エストラムスチンナトリウムによる副作用が出現する可能性が低いと予測する;
    ことを含む、前記方法。
  8. エストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のゲノムにおける1以上の一塩基多型を解析するための試薬または装置を含んでなる、リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクを検出するための診断キット。
  9. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
    (a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)のアミノ酸配列を解析し;そして、
    (b)当該個体のCYP1A1を構成するアミノ酸の1以上がCYP1A1遺伝子におけるマイナーアレルにコードされる場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
    ことを含む、前記方法。
  10. リン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクの遺伝的素因を検出する方法であって、以下:
    (a)個体のエストロゲン代謝酵素(CYP1A1)の462番目のアミノ酸を解析し;そして、
    (b)当該CYP1A1の462番目のアミノ酸がバリンである場合には、該個体はリン酸エストラムスチンナトリウムによる治療に対する副作用の出現リスクが低い遺伝的素因を有すると決定する;
    ことを含む、前記方法。
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