JP2006174081A - オーディオ信号処理方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小音量の信号のスピーカからの再生特性を改善する。
【解決手段】 接続されたスピーカ装置の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合において、入力したオーディオ信号の、ほぼ所定レベル以下の信号成分に対して、出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、少なくとも低域で、所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを、低下分を補う以上のゲインに設定して、他の周波数帯域よりも高くした。
【選択図】 図2
【解決手段】 接続されたスピーカ装置の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合において、入力したオーディオ信号の、ほぼ所定レベル以下の信号成分に対して、出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、少なくとも低域で、所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを、低下分を補う以上のゲインに設定して、他の周波数帯域よりも高くした。
【選択図】 図2
Description
本発明は、オーディオ信号をスピーカ装置から再生させる場合の特性補正を行うオーディオ信号処理方法及び装置に関し、特に高音質の再生が可能なハイファイ再生用のスピーカ装置を使用する場合に適用して好適な技術に関する。
従来、高音質の再生が可能なハイファイ再生用のスピーカ装置として、各種構成のものが実用化されている。例えば、オーディオ信号の再生帯域を、低域と中域と高域の3つの帯域に分割し、それぞれの帯域ごとに個別のスピーカユニットを用意した3ウェイ構成のスピーカ装置がある。この3ウェイ構成のスピーカ装置は、各帯域用のスピーカユニットとして、それぞれの帯域での再生特性が良好なものを使用することで、低域から高域まで入力オーディオ信号に忠実な再生が可能となり、一般には1つのスピーカユニットで全ての帯域のオーディオを出力させる、いわゆるフルレンジ型のスピーカユニットに比べて、再生特性が良好になる。
また、このような3ウェイ構成や2ウェイ構成のようにして、スピーカ装置の再生音を高音質化する構成の他に、スピーカ装置に供給するオーディオ信号そのもの特性を、オーディオ信号処理装置であるアンプ装置側で補正して、結果的にスピーカ装置から出力されるオーディオの特性を改善することも行われている。例えば、スピーカ装置を駆動するオーディオ信号の増幅などの処理を行うオーディオアンプ装置で、ラウドネスコントロールと称される補正を行う場合がある。このラウドネスコントロールは、低音域部と高音域部を、中音域部に比べて出力レベルを増強させる補正処理を行って、主として小音量時に、低音域と高音域が不足して聞こえるのを補正するものである。
図11は、従来のラウドネス補正を行う場合の特性例を示したものである。図11に示すように、低域fLを持ち上げる補正を行うと共に、高域fHについても持ち上げる補正を行う。
特許文献1には、ラウドネス補正を行う場合の再生構成の一例についての記載がある。
特開2002−171589号公報
ところが、ラウドネスコントロールされた再生音は、単に特定の周波数帯域の信号をレベルに係わらずほぼ一律に増強させてしまうので、厳密な意味で入力オーディオ信号に忠実な再生とはいえず、より入力オーディオ信号に忠実な再生ができるスピーカ装置の開発が望まれていた。即ち、従来のラウドネスコントロールされた再生音は、小音量時に聞き取り難い音を増強して再生させるので、ラウドネスコントロールされていない再生音に比べて低音域部と高音域部が聞こえやすくなり、ある程度音質を改善する効果があるが、図11に示すように、特定の周波数帯域の信号を小レベルであっても大レベルであっても一律に増強させてしまうので、増強させる必要のない信号成分についても増強させてしまうことがあり、結果として不自然な再生音になってしまう場合がある。
ここで、従来のスピーカ装置での再生音の問題について説明すると、再生音が入力オーディオ信号を忠実に再現していない場合の例として、小振幅の信号の問題がある。即ち、例えば図7(a)に示すように、比較的大きな振幅の波形と比較的小さな振幅の波形が連続した波形の入力オーディオ信号S1がスピーカに入力した場合を想定する。このとき、スピーカからの出力オーディオ信号S2の波形としては、比較的大きな振幅の波形については、入力信号S1とほぼ同等になるが、比較的小さな振幅の波形については、入力信号S1よりも振幅が小さくなる傾向にある。これは、比較的大きな音で出力が可能な一般的な振動板を備えた形状のスピーカユニットでは、振幅が小さい小音量の信号の再現特性が悪く、小音量の信号の入出力特性のリニアリティ(直線性)が確保されないためである。
同様に、例えば図7(b)に示すように、比較的大きな振幅の波形の入力オーディオ信号S3と、比較的小さな振幅の波形の入力オーディオ信号S4とが、時間的に重なることで、本来は両信号S3,S4が合成されたオーディオ信号S5が出力されるものが、その合成信号S5の波形よりもレベルが低下した波形の出力オーディオ信号S6がスピーカから出力される状態となっている。例えば、スピーカから再生させるオーディオとして、シンフォニーのように様々の楽器の音が同時に再生されるような場合に、このような出力状態となることがある。
さらに、例えば図7(c)に示すように、特定の単一周波数の信号の振幅が徐々に低下するインパルス信号が入力オーディオ信号S7としてあった場合に、スピーカからの出力オーディオ信号S8の波形についても、レベルが低くなるに従って追従性が悪くなってしまう。
図7のいずれの例でも、スピーカからの出力としては、振幅が小さい小音量の信号の出力レベルが、入力信号レベルよりも小さくなって、小信号のリニアリティが保たれない状態となってしまう。この図6に示す状態を周波数分析すると、例えば図8に示す状態となる。図8の例は、基本波f1と、その基本波の高調波である倍音f2,f3の感度を解析した例である。レベルが高い基本波f1については、そのままのレベルで出力されるが、基本波よりもレベルが小さい倍音f2,f3については、破線で示した本来のレベルから低下した実線で示した出力感度となっている。
図9は、複数段階の信号レベルでの低域から高域までの出力特性を示した図で、図9(a)は理想的な特性であり、図9(b)は実際のスピーカの出力特性を示した図である。図9(a)に示すように、理想的な状態では、4つのレベルL1,L2,L3,L4が、ほぼ等間隔で、低域から高域までフラットな特性となっているとする。このとき、図9(b)に示す実際のスピーカの出力特性としては、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、理想特性とほぼ同等の出力特性が確保できているが、最も低いレベルL4の特性については、本来必要なレベルから感度αだけ、どの周波数帯域でも低下したレベルとなっている。
このような感度の低下を、特定の周波数の特性として見たのが、図10の入出力特性図である。図10に示すように、本来はスピーカへの入力信号レベルの増大に対して直線的に出力レベルが増大する破線の特性xとなる必要があるのに対して、実際には、ある程度のレベル以上ではほぼ直線的にレベルが変化しているが、特定のレベル以下では、入力に対する振動板の動きが悪く、入力に対する出力感度が非常に悪い曲線の特性yとなっている。
具体的には、例えば一般的なスピーカによるリスニングの最大レベルを70〜100spl(音圧レベル)と想定した場合、その最大レベルより−30dBから−60dB下がった信号は、最大レベルに対して正しく−30dBから−60dB下がった音量が出ていない(比例していない)ということになる。仮に、100splよりアンプ装置の出力を50spl分下げた音量としての再生を想定すると、本来ならば50spl前後での音量が得られるはずであるが、実際には例えばそれより10spl低い40splの出力しか得られないことになる。つまり、正確にリニアリティが取れていないということになり、満足する音質が得られない一つの大きな原因となっていることが、本発明者の解析で判った。
ところで、スピーカ装置からのオーディオ信号の再生特性としては、上述した図10に示した特性yの入出力レベルの違いを補正することが出来れば、特性上は入出力特性のリニアリティを改善することができるが、再生条件によっては、そのような補正だけで十分であるとは言えない場合もあった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、小音量の信号のスピーカからの再生特性を改善することを目的とする。
本発明は、接続されたスピーカ装置の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合において、入力したオーディオ信号の、ほぼ所定レベル以下の信号成分に対して、出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、少なくとも低域で、所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを、低下分を補う以上のゲインに設定して、他の周波数帯域よりも高くしたものである。
このようにしたことで、所定レベル以上の比較的振幅の大きな信号については増強されることがなく、スピーカ装置の特性から生じる所定レベル以下の比較的小レベルの信号の入出力レベルの違いを補正することができるとともに、聴感上で不足して聞こえるようなことがある低域の小レベル信号を増強させることができる。
本発明によると、所定レベル以上の比較的振幅の大きな信号については増強されることがなく、スピーカ装置の特性から生じる所定レベル以下の比較的小レベルの信号の入出力レベルの違いを補正することができるとともに、聴感上で不足して聞こえるようなことがある低域の小レベル信号を増強させることができ、全体的な再生バランスを乱すことなく、再生音質の改善が行える。
この場合、補正処理として、さらに高域で、所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを高くし、中域のゲインを、スピーカ装置での低下分を補うゲインに設定したことで、高域の小レベル信号についても良好に増強できるようになる。
また、スピーカ装置が出力するほぼ全ての周波数帯域内でほぼ均一に出力の低下分だけを補う補正状態と、特定の周波数帯域での低下分を補う以上のゲインに設定した補正状態とを選択的に設定できるようにしたことで、スピーカ装置の特性による補正だけを行った状態と、低域などを増強した状態とを選択できるようになる。
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図6を参照して説明する。図1は、本実施の形態によるシステム構成例を示した図である。本例においては、スピーカ装置が接続されたオーディオ再生システムとしてあり、図1はその全体のシステム構成例を示した図である。本例では、オーディオ信号源10がアンプ装置20に接続してあり、オーディオ信号源10でCD(ディスク),メモリなどの媒体に記録(記憶)されたオーディオ信号を再生して、その再生して出力されるオーディオ信号を、アンプ装置20に供給し、アンプ装置20でスピーカ装置を駆動するオーディオ信号とする処理を行う。アンプ装置20は操作部20aを備えて、操作部20aのユーザ操作で、オーディオ信号の処理状態を調整できる構成としてある。
本例の場合には、アンプ装置20でのオーディオ信号処理として、接続されたスピーカ装置の入出力特性に基づいた補正処理(後述するダイナミックレンジコントロール処理)を行うことができると共に、この補正処理に加える形でラウドネスコントロール処理ができるようにしてある。それぞれの補正処理のオンオフは、例えば操作部20aのユーザ操作で設定できる。これらのアンプ装置20での具体的な補正処理の詳細については後述する。
ここでは、オーディオ信号源10から出力されるオーディオ信号は、左チャンネル用オーディオ信号と右チャンネル用オーディオ信号の2チャンネルの信号としてある。アンプ装置20から出力される左チャンネル用オーディオ信号は、左チャンネル用スピーカ装置30Lに供給して出力させ、右チャンネル用オーディオ信号は、右チャンネル用スピーカ装置30Rに供給して出力させる。
各スピーカ装置30L,30Rの構成について説明すると、各スピーカ装置30L,30Rは、それぞれオーディオを出力させる音響出力手段としてのスピーカユニットとして、1個のスピーカユニット31(図2)を備える。それぞれのスピーカユニット31は、出力される周波数帯域から見た特性としては、可聴帯域内でほぼフラットな周波数特性で、低域から高域まで出力される特性をもつ、いわゆるフルフレンジ型のスピーカユニットであり、比較的大きな振動板を備えて、大音量の信号の出力が可能な比較的大型のスピーカユニットとしてある。スピーカユニット31については、振動板が比較的大きいために、所定レベル以上の大信号の入出力特性のリニアリティ(直線性)がほぼ保たれ、所定レベル以下では入出力特性のリニアリティが確保されず、入力信号レベルに対して出力信号レベルが劣るものを使用してある。即ち、背景技術の欄で、図10を参照して説明した特性yとなるスピーカユニットを使用してある。このような特性を持つスピーカユニットは、スピーカとして一般的なものである。
本例においては、このような特性を持つスピーカユニット31を使用したスピーカ装置30L,30Rが接続されたオーディオ再生システムにおいて、スピーカ装置30L,30Rに供給するオーディオ信号を処理するアンプ装置20側で、信号の特性補正を行うようにしたものである。
図2は、本例のアンプ装置20内での特性補正のための構成を示した図で、スピーカ装置30L,30Rを構成するスピーカユニット31までの接続構成を示してある。図2に示すように、アンプ装置のオーディオ信号入力端子21に得られるオーディオ信号を、アナログ/デジタル変換器41に供給してデジタルオーディオ信号に変換し、変換されたデジタルオーディオ信号を、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)42に供給する。本例においては、このDSP42をオーディオ信号特性の補正手段として使用する。DSP42での補正状態については、制御部44により制御される。制御部44での制御状態は、操作部20aでの操作状況により設定される。また、制御部44には、制御に必要なデータを記憶するメモリ45が接続してあり、DSP42での補正状態についてのデータについても記憶するようにしてある。
DSP42での補正処理としては、例えばデジタル演算処理で全ての周波数帯域の信号成分について、所定レベル以上の信号成分と所定レベル未満の信号成分とに分け、所定レベル以上の信号成分については、何も補正処理を行わない。そして、所定レベル未満の信号成分については、入力レベルに対して出力レベルが、レベルが低い程、増加率が高くなるような補正処理を行う。この補正処理の詳細については後述する。
そして、補正処理をしていない所定レベル以上の信号成分と、補正処理を行った所定レベル未満の信号成分とを合成し、その合成信号をデジタル/アナログ変換器43に供給し、アナログオーディオ信号に変換する。
変換されたアナログオーディオ信号は、アンプ24に供給して、スピーカ駆動用に増幅し、増幅されたオーディオ信号を、スピーカ装置30L,30R内のスピーカユニット31に供給して、オーディオ信号を出力(放音)させる。
ここで、本例のアンプ装置20でのオーディオ信号補正処理について説明すると、スピーカユニット31が持つ入出力特性の悪さを補正する、いわゆるダイナミックレンジコントロール処理を行うことができると共に、このダイナミックレンジコントロール処理に加える形でラウドネスコントロール処理を行うことができるようにしてある。
即ち、本例のアンプ装置20の操作部20aでの操作に基づいたオーディオ信号補正処理状態の設定例を、図3のフローチャートを参照して説明すると、まず、制御部44は、現在の操作設定状態として、ダイナミックレンジコントロールがオンに設定されているか否か判断する(ステップST11)。この判断で、ダイナミックレンジコントロールがオフに設定されている場合には、制御部44はDSP42でのダイナミックレンジコントロールに関する補正処理を実行させない(ステップST15)。
そして、ステップST11でダイナミックレンジコントロールがオンであると判断した場合には、さらにラウドネスコントロールがオンに設定されているか否か判断する(ステップST12)。この判断で、ラウドネスコントロールがオフに設定されている場合には、制御部44はDSP42での補正処理として、ダイナミックレンジコントロール処理だけを実行させる(ステップST13)。また、ラウドネスコントロールがオンに設定されている場合には、制御部44はDSP42での補正処理として、ラウドネス補正が行われた状態でのダイナミックレンジコントロール処理を実行させる(ステップST14)。
次に、このようにして選択的に実行されるダイナミックレンジコントロール処理と、ラウドネス補正が行われた状態でのダイナミックレンジコントロール処理の具体的な処理状態について説明する。まず、ラウドネス補正が行われていない状態でのダイナミックレンジコントロール処理について説明する。このダイナミックレンジコントロール処理は、本例のシステムに接続されたスピーカ装置が備えるスピーカユニットとして、所定レベル以上の大信号の入出力特性のリニアリティ(直線性)がほぼ保たれ、所定レベル以下では入出力特性のリニアリティが確保されず、入力信号レベルに対して出力信号レベルが劣る特性を補正するためのものである。
図4は、DSP42でのダイナミックレンジコントロール処理で補正される特性例を示した図である。図4において、破線で示した特性aは、入力レベルの増減と出力レベルの増減とが直線的に比例するリニアリティがとれた特性であり、参考までに示してある。実線で示した特性bは、それぞれ本例のDSP42で補正される特性の一例である。
この特性bとして示すように、本例のDSP42での補正特性は、所定レベル以上の範囲では、入力レベルの増減と出力レベルの増減とが直線的に比例するリニアリティがとれた特性(即ち特性aとほぼ一致する特性)としてある(即ち入力レベルと出力レベルとを等しくしてある)。そして、所定レベル以下の範囲では、入力レベルに対して出力レベルが、レベルが低い程、直線的な入出力特性aに比べて増加率が高くなるようなリニアリティがとれていない曲線で示される特性となるようにしてある。
ここで、特性bの曲線と直線が変化するレベル位置については、接続されたスピーカユニット31の特性としての、入出力特性のリニアリティ(直線性)がほぼ保たれるレベルの範囲と、入出力特性のリニアリティが確保されないレベルの範囲との変化点(即ち上述した所定レベル)のレベルとほぼ一致させるようにしてある。具体的には、オーディオ信号のピークレベルを0dBとした場合に、例えばスピーカユニット31の入出力特性のリニアリティが確保される範囲が、0dBから−25dBまである場合に、−25dBを所定レベルに設定して、その0dBからほぼ−25dBまでについては信号特性を変化させず、ほぼ−25dB以下で特性bの曲線となるように設定する。また、特性bの曲線のカーブの形状を決める特性についても、図10に示したようなスピーカユニットの入出力特性の入力と出力をほぼ逆にした特性に設定してある。
なお、図4に示した特性bは、特定の周波数での特性を示したものであるが、本例の場合には、スピーカユニット31が再生可能な可聴帯域内全てで、ほぼ同様な特性を持つようにしてある。
従って、図1に示した本例のオーディオ再生システムを設置した場合には、そのシステムに接続されたスピーカ装置31L,31Rの入出力特性の悪さを、ほぼ直線的に補正することができる入出力特性(図4の特性b)を、操作部20aの操作で設定する。設定した特性の情報は、例えばアンプ装置20内のメモリ45に記憶させ、以後は再設定が行われない限り、その設定した特性で補正を行うようにする。
図5は、このような特性での補正によりオーディオ信号がスピーカ装置30L,30Rから出力される状態を、複数段階の信号レベルでの低域から高域までの出力特性として示した図である。図5(a)は本例のスピーカ装置30L,30Rそのものが持つ出力特性(即ち補正していない出力特性)を示した図である。この図5(a)は、背景技術として図9(b)に示したスピーカ特性と同じである。即ち、図5(a)に示すように、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、理想特性とほぼ同等の出力特性が確保できているが、最も低いレベルL4の出力特性については、本来必要なレベルから感度αだけ、どの周波数帯域でも低下したレベルとなっている。
ここで、アンプ装置20内での補正により、例えば図4に示した特性bとなる補正を全ての周波数帯域で行うことで、アンプ装置20に入力した信号の出力特性としては、図5(b)に示すように、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、入力レベルと変化がないが、最も低いレベルL4の出力特性については、本来のレベルから感度βだけ、どの周波数帯域でも上昇したレベルとなっている。ここで、この高くなった感度βは、スピーカ装置30L,30Rで低下する感度αをほぼ補うレベルとなるように設定しておく。
このような特性とした上で、アンプ装置20で処理したオーディオ信号をスピーカ装置30L,30Rから出力させることで、スピーカ装置30L,30Rから出力されるオーディオの特性としては、図5(c)に示したように、4つのレベルL1,L2,L3,L4が、ほぼ等間隔で、低域から高域までフラットな特性となり、図9(a)に示した理想特性とほぼ等しい、入力と出力が全ての周波数帯域でレベルの大小に関係なく一致する良好な特性となる。
ここまで図4,図5を参照して説明した補正特性は、ダイナミックレンジコントロール処理だけを行う場合について説明したが、既に説明したように、本例のDSP42での補正処理としては、ラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロール処理も行えるようにしてある。図6は、本例でのラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロール処理状態を示した図である。
本例でのラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロール処理を説明する前に、まず従来から知られている一般的なラウドネスコントロールについて、図11を参照して再度説明すると、今まで知られているラウドネスコントロールは、低域fLをレベルの大小に係わらず持ち上げる補正を行うと共に、高域fHについてもレベルの大小に係わらず持ち上げる補正を行うようにしていた。
これに対して本例のラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロール処理状態を示した図が、図6である。図6(a)は、アンプ装置20に入力した信号の出力特性を示した図で、出力レベルが高いレベルL1,L2については、入力レベルと変化がないが、最も低いレベルL4の出力特性については、本来のレベルから最低でも感度βだけ、上昇したレベルとなっている。ここで、この高くなった最低の感度βは、スピーカ装置30L,30Rで低下する感度αをほぼ補うレベルとする点は、ラウドネスコントロール機能なしのダイナミックレンジコントロール処理と同じである。
そして、この感度βだけ上昇させるのは、スピーカ装置30L,30Rが再生させることができる周波数帯域の内のほぼ中域だけであり、低域及び高域については、感度βよりも高いゲインを設定して、聴感上不足する低域と高域を増強させるようにしてある。但し、ここでのゲインの増強は、主としてダイナミックレンジコントロール処理で増強させる所定レベル以下の小振幅(小音量)の信号に対してだけ行うようにしてある点が、従来のラウドネスコントロールとは異なる。
即ち、図6(a)の各レベルL1,L2,L3,L4を細かく見れば判るように、出力レベルが高いレベルL1,L2については、入力レベルと変化がなく、最も低いレベルL4の出力特性については、感度βの補正とラウドネス補正とを同時に行う特性としてあり、
低域と高域との感度が高くなったカーブを描く特性となっている。本例の場合には低域側のカーブ状態と高域側のカーブ状態は個々に設定してあり、同じではない。また、レベルL2とレベルL4の間のレベルL3については、ラウドネス補正で増強させた低域と高域だけが若干高くなって、レベルが高くなるに従って、ラウドネス補正のかかり具合も弱くなっていることが判る。例えば、この図6(a)に示すレベルL3を、上述したダイナミックレンジコントロール処理が行われる範囲と、入出力が直線的に変化する範囲との変化点である上述した所定レベルの近傍のレベルとする。
低域と高域との感度が高くなったカーブを描く特性となっている。本例の場合には低域側のカーブ状態と高域側のカーブ状態は個々に設定してあり、同じではない。また、レベルL2とレベルL4の間のレベルL3については、ラウドネス補正で増強させた低域と高域だけが若干高くなって、レベルが高くなるに従って、ラウドネス補正のかかり具合も弱くなっていることが判る。例えば、この図6(a)に示すレベルL3を、上述したダイナミックレンジコントロール処理が行われる範囲と、入出力が直線的に変化する範囲との変化点である上述した所定レベルの近傍のレベルとする。
このようにして補正を行うことで、スピーカ装置30L,30Rから出力されるオーディオ信号の入出力特性としては、例えば図6(b)に示すように、出力レベルが高いレベルL1,L2については、入力レベルと変化がなく、低いレベルL4の出力特性については、ラウドネス補正で増強させた低域と高域だけが高くなっていて、図6(a)と比べると、スピーカ特性を補正するために高くした感度βの分だけ低くなっている。レベルL3については、ラウドネス補正で増強させた低域と高域だけがわずかに高くなっている。
このようなラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロールが行われることで、再生させるオーディオ信号の大レベルの信号成分については、その再生レベルをどの周波数帯域でもほとんど変えることなく、全体的な再生バランスについては良好な状態が保たれた状態で、小レベルの信号についてだけ、聴感上不足する低域と高域の信号成分だけを増強させることができ、聴感上の特性補正を良好に行うことができる。しかも、スピーカ装置が持つ小レベル信号に対する入出力の悪さについて、ダイナミックレンジコントロール補正で補正するようにしてあるので、ラウドネスコントロールで持ち上げられた部分を除いた全体的な再生オーディオ信号の入出力特性としては、リニアリティがとれた特性であり、非常に良好なオーディオ信号再生を行うことができる。
そして、このようなラウドネス補正を付加させないダイナミックレンジコントロールについても設定できるので、ユーザは所望の補正状態を選択することができ、例えば再生させる音楽に適した補正状態を選択することが可能になる。なお、ラウドネス補正で小レベルの信号を高くするゲインについては、可変設定できるようにしてもよい。
なお、本例の再生システムは、種々のオーディオ再生システムに適用可能であり、図1に示した例では、オーディオ信号源10とアンプ装置20とスピーカ装置30L,30Rとを別体で構成したが、一体化されたシステム(装置)でもよい。或いは、単体のスピーカ装置の内部に、そのスピーカ装置の特性を補正する補正手段を組み込むようにして、補正処理機能のないアンプ装置に接続できる構成としてもよい。或いはまた、オーディオ信号源10から出力されるオーディオ信号そのものに、同様の補正を施すようにしてもよい。
また、例えば、本例のオーディオ再生システムを、自動車などの車両に搭載した、いわゆるカーステレオ用の再生システムに適用してもよい。このようなカーステレオ用の再生システムに適用することで、例えば車外ノイズの影響が大きい再生環境において、一般にノイズにかき消されやすい小レベルの音が聞き取り易くなり、音質が向上する。特に、上述したようにラウドネス補正を組み合わせることで、特に聞き取り難い低域や高域の小レベルの信号が明確に聞き取れるようになり、再生音の明瞭度を効果的に向上させることができる。
また、上述した実施の形態では、ラウドネスコントロール機能付のダイナミックレンジコントロール補正として、全再生帯域の内の低域と高域に対して行うようにしたが、例えば、低域に対してだけラウドネス補正分の増強を行い、中域と高域は例えば図6(a)に示した感度βの分だけ高くする補正を行うようにして、低域についてだけラウドネス補正を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、図1に示した2チャンネルオーディオ再生用のシステムへの適用を想定したが、5.1チャンネルなどのマルチチャンネルオーディオ再生用のシステムとして構成してもよい。
10…オーディオ信号源、20…アンプ装置、20a…操作部、21…オーディオ信号入力端子、24…アンプ、30L,30R…スピーカ装置、31…スピーカユニット、41…アナログ/デジタル変換器、42…DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、43…デジタル/アナログ変換器、44…制御部、45…メモリ
Claims (5)
- 入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行うオーディオ信号処理方法であって、
前記スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、前記所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合のオーディオ信号処理方法において、
入力したオーディオ信号の、ほぼ前記所定レベル以下の信号成分に対して、前記出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、
少なくとも低域で、前記所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを、前記低下分を補う以上のゲインに設定して、他の周波数帯域よりも高くしたことを特徴とする
オーディオ信号処理方法。 - 請求項1記載のオーディオ信号処理方法において、
さらに高域で、前記所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを高くし、中域のゲインを、前記低下分を補うゲインに設定したことを特徴とする
オーディオ信号処理方法。 - 入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行うオーディオ信号処理装置であって、
前記スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、前記所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合のオーディオ信号処理装置において、
入力したオーディオ信号の、ほぼ前記所定レベル以下の信号成分に対して、前記出力レベルの低下分を補うと共に、少なくとも低域を含む特定の周波数帯域で、前記所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを、前記低下分を補う以上のゲインに設定して、他の周波数帯域よりも高くした補正処理を行う補正手段を備えたことを特徴とする
オーディオ信号処理装置。 - 請求項3記載のオーディオ信号処理装置において、
前記補正手段は、さらに高域で、前記所定レベル以下の信号成分を増強させるゲインを高くし、中域のゲインを、前記低下分を補うゲインに設定したことを特徴とする
オーディオ信号処理装置。 - 請求項3記載のオーディオ信号処理装置において、
前記補正手段は、前記スピーカ装置が出力するほぼ全ての周波数帯域内でほぼ均一に出力の低下分だけを補う補正状態と、前記特定の周波数帯域での低下分を補う以上のゲインに設定した補正状態とを選択的に設定できるようにしたことを特徴とする
オーディオ信号処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004363576A JP2006174081A (ja) | 2004-12-15 | 2004-12-15 | オーディオ信号処理方法及び装置 |
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-
2004
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