JP2006174080A - オーディオ信号処理方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 小音量の信号のスピーカからの再生特性を改善する。
【解決手段】 入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行う場合であって、スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合において、入力したオーディオ信号の、ほぼ所定レベル以下の信号成分に対して、出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、出力レベルの低下分を補う補正処理を、少なくとも複数段階に可変させて行うようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、オーディオ信号をスピーカ装置から再生させる場合の特性補正を行うオーディオ信号処理方法及び装置に関し、特に高音質の再生が可能なハイファイ再生用のスピーカ装置を使用する場合に適用して好適な技術に関する。
従来、高音質の再生が可能なハイファイ再生用のスピーカ装置として、各種構成のものが実用化されている。例えば、オーディオ信号の再生帯域を、低域と中域と高域の3つの帯域に分割し、それぞれの帯域ごとに個別のスピーカユニットを用意した3ウェイ構成のスピーカ装置がある。この3ウェイ構成のスピーカ装置は、各帯域用のスピーカユニットとして、それぞれの帯域での再生特性が良好なものを使用することで、低域から高域まで入力オーディオ信号に忠実な再生が可能となり、一般には1つのスピーカユニットで全ての帯域のオーディオを出力させる、いわゆるフルレンジ型のスピーカユニットに比べて、再生特性が良好になる。
また、このような3ウェイ構成や2ウェイ構成のようにして、スピーカ装置の再生音を高音質化する構成の他に、スピーカ装置に供給するオーディオ信号そのもの特性を、オーディオ信号処理装置であるアンプ装置側で補正して、結果的にスピーカ装置から出力されるオーディオの特性を改善することも行われている。例えば、スピーカ装置を駆動するオーディオ信号の増幅などの処理を行うオーディオアンプ装置で、ラウドネスコントロールと称される補正を行う場合がある。このラウドネスコントロールは、低音域部と高音域部を、中音域部に比べて出力レベルを増強させる補正処理を行って、主として小音量時に、低音域と高音域が不足して聞こえるのを補正するものである。
特許文献1には、ラウドネス補正を行う場合の再生構成の一例についての記載がある。
特開2002−171589号公報
ところが、ラウドネスコントロールされた再生音は、単に特定の周波数帯域の信号をレベルに係わらずほぼ一律に増強させてしまうので、厳密な意味で入力オーディオ信号に忠実な再生とはいえず、より入力オーディオ信号に忠実な再生ができるスピーカ装置の開発が望まれていた。即ち、従来のラウドネスコントロールされた再生音は、小音量時に聞き取り難い音を増強して再生させるので、ラウドネスコントロールされていない再生音に比べて低音域部と高音域部が聞こえやすくなり、ある程度音質を改善する効果があるが、特定の周波数帯域の信号を小レベルであっても大レベルであっても一律に増強させてしまうので、増強させる必要のない信号成分についても増強させてしまうことがあり、結果として不自然な再生音になってしまう場合がある。
ここで、従来のスピーカ装置での再生音の問題について説明すると、再生音が入力オーディオ信号を忠実に再現していない場合の例として、小振幅の信号の問題がある。即ち、例えば図6(a)に示すように、比較的大きな振幅の波形と比較的小さな振幅の波形が連続した波形の入力オーディオ信号S1がスピーカに入力した場合を想定する。このとき、スピーカからの出力オーディオ信号S2の波形としては、比較的大きな振幅の波形については、入力信号S1とほぼ同等になるが、比較的小さな振幅の波形については、入力信号S1よりも振幅が小さくなる傾向にある。これは、比較的大きな音で出力が可能な一般的な振動板を備えた形状のスピーカユニットでは、振幅が小さい小音量の信号の再現特性が悪く、小音量の信号の入出力特性のリニアリティ(直線性)が確保されないためである。
同様に、例えば図6(b)に示すように、比較的大きな振幅の波形の入力オーディオ信号S3と、比較的小さな振幅の波形の入力オーディオ信号S4とが、時間的に重なることで、本来は両信号S3,S4が合成されたオーディオ信号S5が出力されるものが、その合成信号S5の波形よりもレベルが低下した波形の出力オーディオ信号S6がスピーカから出力される状態となっている。例えば、スピーカから再生させるオーディオとして、シンフォニーのように様々の楽器の音が同時に再生されるような場合に、このような出力状態となることがある。
さらに、例えば図6(c)に示すように、特定の単一周波数の信号の振幅が徐々に低下するインパルス信号が入力オーディオ信号S7としてあった場合に、スピーカからの出力オーディオ信号S8の波形についても、レベルが低くなるに従って追従性が悪くなってしまう。
図6のいずれの例でも、スピーカからの出力としては、振幅が小さい小音量の信号の出力レベルが、入力信号レベルよりも小さくなって、小信号のリニアリティが保たれない状態となってしまう。この図6に示す状態を周波数分析すると、例えば図7に示す状態となる。図7の例は、基本波f1と、その基本波の高調波である倍音f2,f3の感度を解析した例である。レベルが高い基本波f1については、そのままのレベルで出力されるが、基本波よりもレベルが小さい倍音f2,f3については、破線で示した本来のレベルから低下した実線で示した出力感度となっている。
図8は、複数段階の信号レベルでの低域から高域までの出力特性を示した図で、図8(a)は理想的な特性であり、図8(b)は実際のスピーカの出力特性を示した図である。図8(a)に示すように、理想的な状態では、4つのレベルL1,L2,L3,L4が、ほぼ等間隔で、低域から高域までフラットな特性となっているとする。このとき、図8(b)に示す実際のスピーカの出力特性としては、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、理想特性とほぼ同等の出力特性が確保できているが、最も低いレベルL4の特性については、本来必要なレベルから感度αだけ、どの周波数帯域でも低下したレベルとなっている。
このような感度の低下を、特定の周波数の特性として見たのが、図9の入出力特性図である。図9に示すように、本来はスピーカへの入力信号レベルの増大に対して直線的に出力レベルが増大する破線の特性xとなる必要があるのに対して、実際には、ある程度のレベル以上ではほぼ直線的にレベルが変化しているが、特定のレベル以下では、入力に対する振動板の動きが悪く、入力に対する出力感度が非常に悪い曲線の特性yとなっている。
具体的には、例えば一般的なスピーカによるリスニングの最大レベルを70〜100spl(音圧レベル)と想定した場合、その最大レベルより−30dBから−60dB下がった信号は、最大レベルに対して正しく−30dBから−60dB下がった音量が出ていない(比例していない)ということになる。仮に、100splよりアンプ装置の出力を50spl分下げた音量としての再生を想定すると、本来ならば50spl前後での音量が得られるはずであるが、実際には例えばそれより10spl低い40splの出力しか得られないことになる。つまり、正確にリニアリティが取れていないということになり、満足する音質が得られない一つの大きな原因となっていることが、本発明者の解析で判った。
ところで、上述した図9に示した特性yの曲線のカーブ状態は、一例を示したものであり、実際には、個々のスピーカ装置の特性により、特性yの具体的なカーブ状態は変化してしまう。即ち、スピーカ装置の入出力特性は、そのスピーカ装置が備えるスピーカユニットの振動系のサイズ、重量などの条件で決まるものであり、一義的に特性を決めることは困難であった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、小音量の信号のスピーカからの再生特性を改善することを目的とする。
本発明は、入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行う場合であって、スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合において、入力したオーディオ信号の、ほぼ所定レベル以下の信号成分に対して、出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、出力レベルの低下分を補う補正処理を、少なくとも複数段階に可変させて行うようにしたものである。
このようにしたことで、補正させるゲインを適切に設定することで、スピーカ装置から出力されるオーディオ信号として、そのスピーカ装置の特性に合わせて補正された入出力特性がほぼ直線的なオーディオ信号となり、特に、本来は出力レベルが不足する比較的小レベルの信号が、本来のレベルで良好に出力されるようになる。
本発明によると、補正させるゲインを適切に設定することで、スピーカ装置から出力されるオーディオ信号として、そのとき接続されたスピーカ装置の特性に合わせて補正された入出力特性がほぼ直線的なオーディオ信号となり、特に、本来は出力レベルが不足する比較的小レベルの信号が、本来のレベルで良好に出力されるようになる。従って、種々の特性のスピーカ装置を接続して、その接続されたスピーカ装置の特性に合わせた再生音質の改善が行える。
この場合、補正処理として、スピーカ装置が出力するほぼ全ての周波数帯域内で、ほぼ均一に出力レベルの低下分を補う補正処理を行うようにしたことで、全ての周波数帯域で再生特性を改善でき、ラウドネスコントロールのような従来から行われている特定の帯域だけの増強とは全く異なる、入力オーディオ信号に対する忠実度の高い再生が可能となる。
また、入力オーディオ信号をデジタル演算処理で補正することで、デジタル演算条件の設定で簡単に補正特性を可変させることができるようになる。
また、フィルタを使用して補正処理を行うことで、フィルタを構成する素子の常数の可変で、簡単に補正特性を可変させることができるようになる。
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本実施の形態によるシステム構成例を示した図である。本例においては、スピーカ装置が接続されたオーディオ再生システムとしてあり、図1はその全体のシステム構成例を示した図である。本例では、オーディオ信号源10がアンプ装置20に接続してあり、オーディオ信号源10でCD(ディスク),メモリなどの媒体に記録(記憶)されたオーディオ信号を再生して、その再生して出力されるオーディオ信号を、アンプ装置20に供給し、アンプ装置20でスピーカ装置を駆動するオーディオ信号とする処理を行う。アンプ装置20は操作部20aを備えて、操作部20aのユーザ操作で、オーディオ信号の処理状態を調整できる構成としてある。アンプ装置20での具体的な処理状態の詳細については後述する。
ここでは、オーディオ信号源10から出力されるオーディオ信号は、左チャンネル用オーディオ信号と右チャンネル用オーディオ信号の2チャンネルの信号としてある。アンプ装置20から出力される左チャンネル用オーディオ信号は、左チャンネル用スピーカ装置30Lに供給して出力させ、右チャンネル用オーディオ信号は、右チャンネル用スピーカ装置30Rに供給して出力させる。
各スピーカ装置30L,30Rの構成について説明すると、各スピーカ装置30L,30Rは、それぞれオーディオを出力させる音響出力手段としてのスピーカユニットとして、1個のスピーカユニット31(図2)を備える。それぞれのスピーカユニット31は、出力される周波数帯域から見た特性としては、可聴帯域内でほぼフラットな周波数特性で、低域から高域まで出力される特性をもつ、いわゆるフルフレンジ型のスピーカユニットであり、比較的大きな振動板を備えて、大音量の信号の出力が可能な比較的大型のスピーカユニットとしてある。スピーカユニット31については、振動板が比較的大きいために、所定レベル以上の大信号の入出力特性のリニアリティ(直線性)がほぼ保たれ、所定レベル以下では入出力特性のリニアリティが確保されず、入力信号レベルに対して出力信号レベルが劣るものを使用してある。即ち、背景技術の欄で図9を参照して説明した特性yとなるスピーカユニットを使用してある。このような特性を持つスピーカユニットは、スピーカとして一般的なものである。
本例においては、このような特性を持つスピーカユニット31を使用したスピーカ装置30が接続されたオーディオ再生システムにおいて、スピーカ装置30に供給するオーディオ信号を処理するアンプ装置20側で、信号の特性補正を行うようにしたものである。
図2は、本例のアンプ装置20内での特性補正のための構成を示した図で、スピーカ装置30を構成するスピーカユニット31までの接続構成を示してある。図2に示すように、アンプ装置のオーディオ信号入力端子21に得られるオーディオ信号を、アナログ/デジタル変換器41に供給してデジタルオーディオ信号に変換し、変換されたデジタルオーディオ信号を、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)42に供給する。本例においては、このDSP42をオーディオ信号特性の補正手段として使用する。DSP42での補正状態については、制御部44により制御される。制御部44での制御状態は、操作部20aでの操作状況により設定される。また、制御部44には、制御に必要なデータを記憶するメモリ45が接続してあり、DSP42での補正状態についてのデータについても、複数段階の補正状態のデータを記憶するようにしてある。
DSP42での補正処理としては、例えばデジタル演算処理で全ての周波数帯域の信号成分について、所定レベル以上の信号成分と所定レベル未満の信号成分とに分け、所定レベル以上の信号成分については、何も補正処理を行わない。そして、所定レベル未満の信号成分については、入力レベルに対して出力レベルが、レベルが低い程、増加率が高くなるような補正処理を行う。ここで本例においては、この補正処理状態を複数段階に可変設定できるようにしてある。この補正処理の詳細については後述する。
そして、補正処理をしていない所定レベル以上の信号成分と、補正処理を行った所定レベル未満の信号成分とを合成し、その合成信号をデジタル/アナログ変換器43に供給し、アナログオーディオ信号に変換する。
変換されたアナログオーディオ信号は、アンプ24に供給して、スピーカ駆動用に増幅し、増幅されたオーディオ信号を、スピーカ装置30内のスピーカユニット31に供給して、オーディオ信号を出力(放音)させる。
図3は、DSP42で補正される特性例を示した図である。図3において、破線で示した特性aは、入力レベルの増減と出力レベルの増減とが直線的に比例するリニアリティがとれた特性であり、参考までに示してある。実線で示した特性b,c,dは、それぞれ本例のDSP42で補正される特性である。
この特性b,c,dとして示すように、本例のDSP42での補正特性は、所定レベル以上の範囲では、入力レベルの増減と出力レベルの増減とが直線的に比例するリニアリティがとれた特性(即ち特性aとほぼ一致する特性)としてある(即ち入力レベルと出力レベルとを等しくしてある)。そして、所定レベル以下の範囲では、入力レベルに対して出力レベルが、レベルが低い程、直線的な入出力特性aに比べて増加率が高くなるようなリニアリティがとれていない曲線で示される特性となるようにしてある。
ここで、各特性b,c,dの曲線と直線が変化するレベル位置については、接続されたスピーカユニット31の特性としての、入出力特性のリニアリティ(直線性)がほぼ保たれるレベルの範囲と、入出力特性のリニアリティが確保されないレベルの範囲との変化点(即ち上述した所定レベル)のレベルとほぼ一致させるようにしてある。具体的には、オーディオ信号のピークレベルを0dBとした場合に、例えばスピーカユニット31の入出力特性のリニアリティが確保される範囲が、0dBから−25dBまである場合に、−25dBを所定レベルに設定して、その0dBからほぼ−25dBまでについては信号特性を変化させず、ほぼ−25dB以下で特性b,c,dの曲線となるように設定する。また、特性b,c,dの曲線のカーブの形状を決める特性についても、図9に示したようなスピーカユニットの入出力特性の入力と出力をほぼ逆にした特性に設定してある。
なお、図3に示した特性b,c,dは、特定の周波数での特性を示したものであるが、本例の場合には、スピーカユニット31が再生可能な可聴帯域内全てで、ほぼ同様な特性を持つようにしてある。
そして本例の場合には、図3に示したように、曲線で示される特性b,c,dのように、DSP42での演算で補正できる特性を複数用意してあり、それぞれの特性として、例えば実在するスピーカ装置の代表的な入出力特性に基づいたものに設定してある。即ち、既に説明した図9では、ある特定のスピーカ装置の入出力特性を1つ示してあるが、実際には、スピーカ装置が備えるスピーカユニットの振動系の重量、サイズなどにより、入出力特性は若干変化するものであり、また、直線と曲線との変化点(所定レベル)についても、図3に示す特性b,c,dのように若干変化する。
従って、図1に示した本例のオーディオ再生システムを設置した場合には、そのシステムに接続されたスピーカ装置31L,31Rの入出力特性の悪さを、ほぼ直線的に補正することができる入出力特性(特性b,c,dのいずれか)を、操作部20aの操作で設定する。いずれの特性を設定したかの情報は、例えばアンプ装置20内のメモリ45に記憶させ、以後は再設定が行われない限り、その設定した特性で補正を行うようにする。
図4は、このような特性での補正によりオーディオ信号がスピーカ装置30L,30Rから出力される状態を、複数段階の信号レベルでの低域から高域までの出力特性として示した図である。図4(a)は本例のスピーカ装置30L,30Rそのものが持つ出力特性(即ち補正していない出力特性)を示した図である。この図4(a)は、背景技術として図8(b)に示したスピーカ特性と同じである。即ち、図4(a)に示すように、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、理想特性とほぼ同等の出力特性が確保できているが、最も低いレベルL4の出力特性については、本来必要なレベルから感度αだけ、どの周波数帯域でも低下したレベルとなっている。
ここで、アンプ装置20内での補正により、図3に示した特性b,c,dのいずれかとなる補正を全ての周波数帯域で行うことで、アンプ装置20に入力した信号の出力特性としては、図4(b)に示すように、出力レベルが高いレベルL1,L2,L3については、入力レベルと変化がないが、最も低いレベルL4の出力特性については、本来のレベルから感度βだけ、どの周波数帯域でも上昇したレベルとなっている。ここで、この高くなった感度βは、スピーカ装置30で低下する感度αをほぼ補うレベルとなるように、特性b,c,dの中から最適なものを選択しておく。
このような特性とした上で、アンプ装置20で処理したオーディオ信号をスピーカ装置30L,30Rから出力させることで、スピーカ装置30L,30Rから出力されるオーディオの特性としては、図4(c)に示したように、4つのレベルL1,L2,L3,L4が、ほぼ等間隔で、低域から高域までフラットな特性となり、図8(a)に示した理想特性とほぼ等しい、入力と出力が全ての周波数帯域でレベルの大小に関係なく一致する良好な特性となる。
従って、本例のオーディオ再生システムによると、オーディオ信号源10から再生されたオーディオ信号を、スピーカ装置30L,30Rから高音質で出力させることができる。このような再生特性は、従来から知られているラウドネスコントロールのような、特定の周波数帯域の信号について、レベルに関係なく増強してしまう処理とは全く異なる、入力オーディオ信号に忠実な再生を行う特性である。
しかも本例の場合には、予め用意された複数段階の補正特性の中から、そのとき接続されたスピーカ装置の入出力特性に合わせたものに選定できることで、様々な特性のスピーカ装置と組み合わせて、最適な再生特性を得ることができる。
なお、ここまで説明した例では、図3に示した3段階の補正特性b,c,dを予め用意するようにしたが、より多くの補正特性を予め用意して、その中から選択できるようにしてもよい。或いはまた、連続的に補正量を調整できるようにしてもよい。また、レベルを増強する補正量を決める曲線のカーブの形状の調整と、曲線が始まるレベルの調整とを、個別に行えるようにして、より様々な再生特性のスピーカ装置に対応できるようにしてもよい。
また、本例の再生システムは、種々のオーディオ再生システムに適用可能であり、図1に示した例では、オーディオ信号源10とアンプ装置20とスピーカ装置30L,30Rとを別体で構成したが、一体化されたシステム(装置)でもよい。或いは、単体のスピーカ装置の内部に、そのスピーカ装置の特性を補正する補正手段を組み込むようにして、補正処理機能のないアンプ装置に接続できる構成としてもよい。或いはまた、オーディオ信号源10から出力されるオーディオ信号そのものに、同様の補正を施すようにしてもよい。
また、例えば、本例のオーディオ再生システムを、自動車などの車両に搭載した、いわゆるカーステレオ用の再生システムに適用することで、車外ノイズの影響が大きい再生環境において、一般にノイズにかき消されやすい小レベルの音が聞き取り易くなり、音質が向上する。
次に、本発明の第2の実施の形態を、図5を参照して説明する。この図5において、第1の実施の形態で説明した図1〜図4に対応する部分には同一符号を付す。
本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様に、スピーカ装置が接続されたオーディオ再生システムとしてあり、例えば図1に示したシステム構成で使用される。接続されるスピーカ装置としては、所定レベル以上の大信号の入出力特性のリニアリティがほぼ保たれ、所定レベル以下では入出力特性のリニアリティが確保されず、入力信号レベルに対して出力信号レベルが劣るものを使用してある。
そしてアンプ装置20内で、スピーカ装置の特性補正を行う点についても、第1の実施の形態と同様である。ここで本実施の形態においては、その特性補正手段を、第1の実施の形態と異なる構成としたものである、
図5は、本例のアンプ装置20内での特性補正のための構成を示した図で、スピーカ装置30L,30Rが備えるスピーカユニット31までの接続構成を示してある。図5に示すように、アンプ装置のオーディオ信号入力端子21に得られるオーディオ信号を、バッファアンプ22を介して、アンプ24に供給して、スピーカ駆動用に増幅し、増幅されたオーディオ信号を、増幅されたオーディオ信号をスピーカ装置30L,30R内のスピーカユニット31に供給して、出力(放音)させる。
ここで、バッファアンプ22とアンプ24との間には、補正手段として、受動素子で構成されたフィルタ23が接続してある。このフィルタ23は、バッファアンプ22とアンプ24との接続点を、コンデンサ23a及び抵抗器23bを介して接地させてあると共に、コンデンサ23aと抵抗器23bとの接続中点を、コンデンサ23cを介して接地させてある。この場合、抵抗器23b及びコンデンサ23cについては、抵抗値及び容量値が可変設定できる可変抵抗器及び可変コンデンサを使用してある。
この図6に示す構成のフィルタ23が、バッファアンプ22とアンプ24との間に接続してあることで、入力オーディオ信号のほぼ全ての周波数帯域で、このフィルタの特性で決まる所定レベル以下の信号レベルを増強する補正処理が行われるようになる。補正特性については、フィルタ23を構成する各素子の特性や常数などによる決まる。
ここで、図6の構成では、フィルタ23内の抵抗器23b及びコンデンサ23cとして可変素子を使用してあり、その抵抗値又は容量値を可変させることで、既に説明した図3の特性b,c,dのように、補正特性を可変設定できるようになる。可変設定される抵抗値や容量値については、ユーザの操作などに基づいて、図示しないアンプ装置の制御手段により設定(調整)される。
従って、接続されたスピーカ装置30L,30Rの入出力特性に合わせて、フィルタ23内の抵抗器23b及びコンデンサ23cを調整することで、上述した第1の実施の形態の場合と同様に、スピーカ装置30L,30Rから出力されるオーディオ信号特性としては、そのスピーカ装置30L,30Rが持つ小レベルの信号に対する感度の悪さが補正された、小レベルから大レベルまでリニアリティのある入出力特性に設定され、良好なオーディオ再生ができるようになる。
なお、図6の例では、フィルタ23内の素子として、可変素子を使用するようにしたが、例えば抵抗値又は容量値が異なる複数の素子を用意して、その複数の素子を選択的に接続する構成として、複数段階に特性を調整できるようにしてもよい。このようにしたことで、例えば図3に示した例のように、予め決められた3段階などの特性の中から、ユーザ操作などで選択できるようになる。
なお、上述した各実施の形態では、図1に示した2チャンネルオーディオ再生用のシステムへの適用を想定したが、5.1チャンネルなどのマルチチャンネルオーディオ再生用のシステムとして構成してもよい。
スピーカ装置の設置環境についても、種々の設置環境に適用可能である。例えば、自動車などの車両内に設置される、いわゆるカーステレオ用のスピーカ装置から出力させる場合の補正を、アンプ装置側で行うようにしてもよい。
本発明の第1の実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態による構成例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態による補正特性例を示した特性図である。 本発明の第1の実施の形態による補正状態の例を示した周波数ごとの出力感度を示した特性図である。 本発明の第2の実施の形態による構成例を示す構成図である。 従来のスピーカの出力波形例を示した説明図である。 従来のスピーカの信号レベルの例を示した説明図である。 理想的なスピーカの出力特性例(a)と従来のスピーカの出力特性例(b)を示した説明図である。 従来のスピーカの入出力特性の例を示した説明図である。
符号の説明
10…オーディオ信号源、20…アンプ装置、20a…操作部、21…オーディオ信号入力端子、22…バッファアンプ、23…フィルタ、23b…可変抵抗器、23c…可変コンデンサ、24…アンプ、30L,30R…スピーカ装置、31…スピーカユニット、41…アナログ/デジタル変換器、42…DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、43…デジタル/アナログ変換器、44…制御部、45…メモリ

Claims (5)

  1. 入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行うオーディオ信号処理方法であって、
    前記スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、前記所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合のオーディオ信号処理方法において、
    入力したオーディオ信号の、ほぼ前記所定レベル以下の信号成分に対して、前記出力レベルの低下分を補う補正処理を行うと共に、
    前記出力レベルの低下分を補う補正処理を、少なくとも複数段階に可変させて行うようにしたことを特徴とする
    オーディオ信号処理方法。
  2. 入力したオーディオ信号を、所定の入出力特性のスピーカ装置から出力させるための補正処理を行うオーディオ信号処理装置であって、
    前記スピーカ装置の所定の入出力特性として、所定レベル以上で入力信号に対する出力レベルの直線性がほぼ確保され、前記所定レベル以下で入力信号に対する出力レベルが低下する特性である場合のオーディオ信号処理装置において、
    入力したオーディオ信号の、ほぼ前記所定レベル以下の信号成分に対して、前記出力レベルの低下分を補う補正処理を行う補正手段と、
    前記補正手段での出力レベルの低下分を補う補正用の特性を、少なくとも複数段階に可変させる制御手段とを備えたことを特徴とする
    オーディオ信号処理装置。
  3. 請求項2記載のオーディオ信号処理装置において、
    前記補正手段は、前記スピーカ装置が出力するほぼ全ての周波数帯域内で、ほぼ均一に出力レベルの低下分を補う補正処理を行うことを特徴とする
    オーディオ信号処理装置。
  4. 請求項3記載のオーディオ信号処理装置において、
    前記補正手段は、入力オーディオ信号をデジタル演算処理で補正し、
    前記デジタル演算処理状態を変化させて、前記補正用の特性を変化させることを特徴とする
    オーディオ信号処理装置。
  5. 請求項3記載のオーディオ信号処理装置において、
    前記補正手段は、フィルタを使用して補正し、
    前記フィルタを構成する素子の常数を変化させて、前記補正用の特性を変化させることを特徴とする
    オーディオ信号処理装置。
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