JP2006172822A - 高分子固体電解質用組成物、高分子固体電解質、開環能をもつ共重合体及び架橋高分子 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の高分子固体電解質用組成物においては、開環能をもつ環状官能基が、シクロアルケンアリール構造又はシクロアルカジエンアリール構造を有する基であるのが好ましく、シクロブテンアリール構造又はシクロブタジエンアリール構造を有する基であるのがより好ましい。
Zは単結合又は二価以上の連結基を表し、Aは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Xは単結合又は二重結合を表し、Yは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は原子上に置換基を有していてもよい窒素原子を表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、カルボニル基、チオカルボニル基又は置換基を有していてもよいイミノ基を表す。
bは、0、1又は2を表し、bが2の場合、R4は、同一であっても相異なっていてもよい。
dは、1以上で、かつA環上に置換可能な数以下の整数を表し、dが2以上の場合、Y同士、X同士、R4同士及びb同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
aは、(Zの価数−1)の整数を表し、aが2以上の場合、A同士、Y同士、X同士、R4同士、b同士及びd同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
但し、Z上のA環を含む官能基上への結合手の置換位置は、A環上に限定されるものではない。)
で表される繰り返し単位であるのが好ましく、式(II)
で表される繰り返し単位であるのがより好ましい。
で表される繰り返し単位を有するのがより好ましい。
本発明の高分子固体電解質用組成物においては、前記イオン導電性部位を有する繰り返し単位が、式(IV)
Z1は単結合又は二価以上の連結基を表す。
R11、R12は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。fは2〜100のいずれかの整数を表し、式:CH(R12)CH(R11)Oで表される基は、同一であっても相異なっていてもよい。
R13は水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表す。)
で表される繰り返し単位であるのが好ましく、式(IV)中、Z1がエステル結合であるのがより好ましい。
本発明の高分子固体電解質においては、開環能をもつ環状官能基が、シクロアルケンアリール構造又はシクロアルカジエンアリール構造を有する基であるのが好ましく、シクロブテンアリール構造又はシクロブタジエンアリール構造を有するのがより好ましい。
本発明の高分子固体電解質は、本発明の高分子固体電解質用組成物を、開環反応して得られたものであるのが好ましい。
で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする共重合体が提供される。
本発明の共重合体においては、前記式(I)で表される繰り返し単位が、前記式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
本発明の共重合体においては、前記式(IV)中、Z1が、エステル結合であることが好ましい。
本発明の共重合体は、数平均分子量が、5,000〜1,000,000の範囲であるのが好ましい。
本発明の共重合体及び架橋高分子を用いることにより、熱的特性、機械的強度及びイオン導電性に優れた高分子固体電解質用組成物、並びに高分子固体電解質を得ることができる。
1)高分子固体電解質用組成物
本発明の高分子固体電解質用組成物は、開環能をもつ環状官能基を有する繰り返し単位及びイオン導電性部位を有する繰り返し単位を含む共重合体、並びに電解質塩を含むことを特徴とする。
本発明に用いる共重合体は、開環能をもつ環状官能基を有する繰り返し単位及びイオン導電性部位を有する繰り返し単位を有する。開環能をもつ環状官能基とは、開環・架橋することができる基である。
前記開環能をもつ環状官能基を有する繰り返し単位としては、式(I)
式中、R1〜R3は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R1とR3は、互いに結合して環を形成していてもよい。
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。芳香族複素環基の具体例としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。また、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基等の有機基等が挙げられる。
Yは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は原子上に置換基を有していてもよい窒素原子を表す。原子上に置換基を有していてもよい窒素原子の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基等が挙げられる。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
また、置換基を有していてもよいイミノ基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基等が挙げられる。
dは、1以上、A環上に置換可能な数以下の整数を表し、dが2以上の場合、Y同士、X同士、R4同士及びb同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
aは、(Zの価数−1)の整数を表し、aが2以上の場合、A同士、Y同士、X同士、R4同士、b同士及びd同士は、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、Z上のA環を含む官能基上への結合手の置換位置は、A環上に限定されるものではない。
本発明においては、前記繰り返し単位(I)が、式(II)
式(II)中、R1〜R4、X、Y、Z、a、b及びdは、前記と同じ意味を表す。
R5は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;又は有機基を表す。有機基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等を例示することができる。
eは、0〜3のいずれかの整数を表し、eが2以上の場合、R5は同一であっても相異なっていてもよい。
式(III)中、R6、R7は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
なかでも、イオン導電性部位を有する繰り返し単位としては、式(IV)
式(IV)中、R8〜R10は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、R8とR10は結合して環を形成していてもよい。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、前記R1〜R3として例示したものと同様のものが挙げられる。
Z1は単結合又は二価以上の連結基を表す。二価以上の連結基としては、前記Zとして例示したものと同様のものが挙げられる。なかでも、Z1はエステル結合であるのが好ましい。
fは2〜100の整数を表し、2〜50の整数が好ましい。各繰り返し単位におけるfの値は、同一であっても相異なっていてもよい。また、式:CH(R12)CH(R11)Oで表される基は、同一であっても相異なっていてもよい。
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
また、シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等のシリル基等が挙げられる。
4−メトキシエトキシ−1−ブテン、4−メトキシエトキシ−2−メチル−1−ブテン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート[エチレングリコールの単位数は2〜100、以下同じ]、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート[プロピレングリコールの単位数は2〜100、以下同じ]、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、「ブレンマーPMEシリーズ」〔式(IV)においてR8=R9=R11=R12=水素原子、R10=R13=メチル基、Z1:−C(=O)O−基、f=2〜90に相当する単量体〕(日本油脂社製)、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールシクロヘキセン−1−カルボキシレート、メトキシポリエチレングリコール−シンナメート。
これらの単量体のなかでも、本発明においては、入手が容易で、優れたイオン導電性を有する高分子固体電解質が得られる観点から、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの単量体の多くは公知物質であり、公知の方法に従って合成することができる。
R22は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ原子を含む有機基を表す。
R20〜R22のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のC1〜C12アルキル基等が挙げられる。R20〜R22のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のC4〜C12シクロアルキル基、好ましくはC4〜C8シクロアルキル基等が挙げられる。
R20〜R22のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のC6−C12アリール基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等のC7〜C14アラルキル基等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む有機基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の脂肪族C1〜C10アルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のC6〜C12アリールオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の脂肪族C2〜C10アシルオキシ基等のアシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基等のC6〜C12アリールカルボニルオキシ基;ホルミル基、アセチル基等の脂肪族C1〜C10アシル基;ベンゾイル基等のC6〜C12アリールカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の脂肪族C1〜C10アルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等のC6〜C12アリールオキシ基;カルボキシル基;ヒドロキシル基;アミノ基;アミド基;イミノ基;シアノ基;ニトロ基;チオエステル基;チオケトン基;硫化アルキル基、硫化アリール基等のチオエーテル基;等が挙げられる。
R20〜R22のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ原子を含む有機基は置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、なかでも塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
2−ブロモ−プロピオン酸ヒドロキシエチル、2−ブロモ−プロピオン酸グリシジルメチル、2−ブロモ−プロピオン酸−p−カルボキシルフェノルエチル等のハロゲン含有C2〜C12モノカルボン酸の置換アルキルエステル;2−ブロモ−プロピオン酸プロペニル、クロロ酢酸ビニル等のハロゲン含有C2〜C12モノカルボン酸のアルケニルエステル(好ましくはハロゲン含有C4〜C8モノカルボン酸のC1〜C4アルキルエステル等);2−クロロ−2−メチルマロン酸ジメチル、2−クロロ−2−メチルマロン酸ジエチル、2−ブロモ−2−メチルマロン酸ジメチル、2−ブロモ−2−メチルマロン酸ジエチル、2−ヨード−2−メチルマロン酸ジメチル、2−ヨード−2−メチルマロン酸ジエチル、2−ブロモ−2,4,4,トリメチル−グルタル酸ジメチル等のハロゲン含有C1〜C14多価カルボン酸のC1〜C10アルキルエステル(好ましくはハロゲン含有C2〜C8ジカルボン酸のジC1〜C4アルキルエステル等);ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸等のハロゲン含有C2〜C12カルボン酸;等が挙げられる。
これらの有機ハロゲン化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
置換基を有する炭化水素配位子の具体例としては、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニル等が挙げられる。
ジカルボニルシクロペンタジエニルコバルト(I)等のコバルト錯体;
トリカルボニルシクロペンタジエニルマンガン(I)、トリカルボニル(メチルシクロペンタジエニル)マンガン(I)等のマンガン錯体;
トリカルボニルシクロペンタジエニルレニウム(I)、ジオキソビス(トリフェニルホスフィン)ヨウ化レニウム等のレニウム錯体;
トリ(トリフェニルホスフィン)塩化ロジウム等のロジウム錯体;
トリフェニルホスフィンジアセチルパラジウム等のパラジウム錯体;
これらの遷移金属錯体は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
用いるルイス酸としては特に制限されないが、例えば、下記式(3)又は(4)で表される化合物等が挙げられる。
M2は、Ti、Zr、Hf等の周期表4族元素、又はSi、Sn、Pb等の周期表14族元素を示す。なかでも、M2としては、Ti、Zr、Sn等が好ましい。
R30〜R33の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記R20〜R22の具体例として例示したものと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、R30〜R33としては、ハロゲン原子又はアルコキシ基が好ましい。
スカンジウムトリイソプロポキシド等のスカンジウムアルコキシド、三塩化スカンジウム、三臭化スカンジウム、三ヨウ化スカンジウム等のスカンジウムハライド等のスカンジウム系ルイス酸;等が挙げられる。
スズテトライソプロポキシド等のスズアルコキシド、四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のスズハライド等のスズ系ルイス酸;等が挙げられる。
これらのルイス酸は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
2級アミンとしては、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられる。
これらのアミン類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
i)第一の単量体の転化率が100%に達した後、第二の単量体を添加して重合を完結させ、また新たに単量体を添加する。これを繰り返すことによりブロック共重合体を得る方法、
ii)第一の単量体の転化率が100%に達しなくとも目標の重合度又は分子量に達した段階で第二の単量体を加えて重合を継続し、各ブロック鎖間にランダム部分が存在するグラジエント共重合体を得る方法、
iii)第一の単量体の転化率が100%に達しなくとも目標の重合度又は分子量に達した段階で一旦反応を停止し、系外に重合体を取りだし、得られた重合体をマクロ開始剤としてそこへ他の単量体を加えて共重合を断続的に進め、ブロック共重合体を得る方法、等が挙げられる。
これらの中でも、高い導電性と優れた機械的強度を有する高分子固体電解質が得られる観点から、iii)の方法が好ましい。
これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、断続的にブロック重合を行う場合、各重合反応ごとに異なる溶媒を用いても構わない。
重合反応の停止は、反応系の温度を下げることにより行うことができる。
反応終了後は、カラム精製、減圧精製、濾過等の通常の分離精製方法により、目的とする共重合体を単離することができる。
なお、重合反応過程の追跡及び反応終了の確認は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、膜浸透圧法、NMR等により行うことができる。
本発明に用いる電解質塩としては、特に限定されず、キャリアーとしたいイオンを含んだ電解質であればよい。なかでも、硬化して得られる高分子固体電解質中での解離定数が大きいものが好ましい。
具体的には、アルカリ金属塩;Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等のアルカリ土類金属塩;(CH3)4NBF6等の4級アンモニウム塩;(CH3)4PBF6等の4級ホスホニウム塩;AgClO4等の遷移金属塩;塩酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸;等が挙げられる。
これらの電解質塩は1種単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
本発明の架橋高分子は、上述した本発明の共重合体を加熱して、該共重合体中の開環能をもつ環状官能基を開環・架橋反応(「カップリング架橋」ともいう。)させることにより得ることができる。
本発明の架橋高分子は優れた機械的強度とイオン導電性を有するので、後述する本発明の高分子固体電解質を構成する高分子として有用である。
本発明の高分子固体電解質は、本発明の高分子固体電解質用組成物を加熱し、組成物中の開環能をもつ環状官能基を開環・架橋反応させることにより得ることができる。すなわち、高分子固体電解質用組成物をシート状、膜状、フイルム状等の形状に成形した後に加熱して開環反応させることにより、シート状、膜状、フイルム状等の形状の高分子固体電解質を得ることができる。
本発明の高分子固体電解質は、熱的特性、機械的強度及びイオン導電性に優れた固体電解質として、電池等の電気化学素子に重用される。
<ダイマー開始剤の合成>
ブレンマーPME−1000(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート;日本油脂社製)150g(135mmol)、トルエン350gをフラスコに採取し脱気した。この混合溶液にジクロロトリス(トリフェニルホスフイン)ルテニウム0.24g(0.25mmol)を加え、均一に混合した。さらにジ−n−ブチルアミン0.13g(1mmol)を加え、最後に2,2−ジクロロアセトフェノン0.10g(0.5mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始した。
得られた重合体の、用いた単量体総量に対する重合収率は54%、収量は81g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量(Mw)は285,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.92であった。
得られた重合体(P−PME−1000)5.0g(0.018mmol)、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.02g(0.025mmol)、スチレン0.4g(4mmol)、4−ビニルベンゾシクロブテン(VBCB)0.4g(3mmol)、トルエン24gをフラスコに採取し、均一に混合して脱気した。この混合溶液にジ−n−ブチルアミン0.01g(0.1mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始した。
重合反応を開始して54時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止した。スチレンの重合率は29%、4−ビニルベンゾシクロブテンの重合率は31%であった。カラムクロマトグラフィーにより、反応液から金属錯体を除去した後、溶媒を減圧濃縮し、得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
得られた重合体の収量は4.3g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量は300,000であった。組成比(wt%)は、PME−1000:スチレン(St):4−ビニルベンゾシクロブテン(VBCB)=95:3:2であった。
<ダイマー開始剤の合成>
実施例1と同様にしてダイマー開始剤を合成した。
<ブロック共重合体の合成>
得られたダイマー開始剤(P−PME−1000)5.0g(0.018mmol)、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.02g(0.025mmol)、スチレン1.2g(11.5mmol)、4−ビニルベンゾシクロブテン(VBCB)1.3g(10mmol)、トルエン30gをフラスコに採取し、均一に混合して脱気した。この混合溶液にジ−n−ブチルアミン0.01g(0.1mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始した。
重合反応を開始して60時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止した。スチレンの重合率は35%、4−ビニルベンゾシクロブテンの重合率は33%であった。カラムクロマトグラフィーにより、反応液から金属錯体を除去した後、溶媒を減圧濃縮し、得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
得られた重合体の収量は4.9g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量(Mw)は330,000であった。組成比(wt%)は、PME−1000:St:VBCB=86:7:7であった。
<ダイマー開始剤の合成>
実施例1と同様にしてダイマー開始剤を合成した。
<ブロック共重合体の合成>
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.02g(0.025mmol)、P−PME1000 5.0g(0.018mmol)、4−ビニルベンゾシクロブテン(VBCB)0.9g(6.9mmol)、トルエン30gをフラスコに採取し、均一に混合して脱気した。この混合溶液にジ−n−ブチルアミン0.01g(0.1mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始した。
重合反応を開始して50時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止した。4−ビニルベンゾシクロブテンの重合率は30%であった。カラムクロマトグラフィーにより、反応液から金属錯体を除去した後、溶媒を減圧濃縮し、得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
得られた重合体収量は4.6g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量(Mw)は300,000であった。組成比(wt%)は、PME−1000:VBCB=95:5であった。
<ダイマー開始剤の合成>
実施例1と同様にしてダイマー開始剤を合成した。
<ブロック共重合体の合成>
得られたダイマー開始剤(P−PME−1000)5.0g(0.018mmol)、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.02g(0.025mmol)、4−ビニルベンゾシクロブテン(VBCB)1.5g(12mmol)、トルエン30gをフラスコに採取し、均一に混合して脱気した。この混合溶液にジ−n−ブチルアミン0.01g(0.1mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始した。
重合反応を開始して60時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止した。4−ビニルベンゾシクロブテンの重合率は36%であった。カラムクロマトグラフィーより、反応液から金属錯体を除去した後、溶媒を減圧濃縮し、得られた粘稠な残渣を0℃で5時間減圧乾燥した。
得られた重合体収量は4.7g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量(Mw)は320,000であった。組成比(wt%)は、PME−1000:VBCB=90:10であった。
<ダイマー開始剤の合成>
実施例1と同様にしてダイマー開始剤を合成した。
<ブロック共重合体の合成>
得られたダイマー開始剤(P−PME−1000)40g(0.14mmol)、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.11g(0.12mmol)、スチレン10g(96mmol)、トルエン150gをフラスコに採取し、均一に混合して脱気した。この混合溶液にジ−n−ブチルアミン0.1g(0.8mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始した。
重合反応を開始して100時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止した。スチレンの重合率は32%であった。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。溶媒を減圧濃縮し得られた粘稠な残渣を、60℃で5時間減圧乾燥した。
得られた重合体の収量は38g、多角度光散乱法(MALS法)にて測定した重量平均分子量(Mw)は310,000であった。組成比(wt%)は、PME−1000:St=92:8であった。
上記実施例1〜4で得たブロック共重合体をアセトンに溶解し、得られた溶液に電解質としてLi(CF3SO2)2N(「LiTFSI」)を加えた後([Li]/[EO]=5mmol%)、アルミカップに移し、アセトンを揮発させて均一な高分子固体電解質膜(膜厚:約100μm)を得た。さらに成膜温度を200℃まで加熱して、4−ビニルベンゾシクロブテンを開環・架橋反応させたところ、膜強度が向上し自立膜が得られた。
架橋の前後の高分子固体電解質膜をそれぞれ白金板に挟み、アルゴン雰囲気下に、周波数5〜10MHzのインピーダンスアナライザー(Solarfron−1260型)を用いてイオン伝導度σを測定した。測定結果を下記第1表に示す。
引張り強度試験は、引張り試験機(オリエンテック社製、STA−1150)を使用し、25℃、湿度60%の恒温室で行った。
先ず、上記実施例1〜4及び比較例1で得た高分子固体電解質の一部を5mm×30mmの大きさに切り取り、試験片を作製した。試験片は、上記実施例1〜4及び比較例1で得た高分子固体電解質あたり、3個ずつ作製した。次に、各試験片の上下5mmに紙を挟み、引張り試験機の治具にセットした(チャック間隔は20mm)。試験速度20mm/minで測定を行い、応力−伸度曲線を得た。全ての試験片について測定を行い、上記実施例1〜4及び比較例1で得た高分子固体電解質あたり3個の試験片のうち、最も点応力の大きい値(最大点応力)を膜強度(MPa)とした。測定結果を第1表に示す。
Claims (27)
- 開環能をもつ環状官能基を有する繰り返し単位及びイオン導電性部位を有する繰り返し単位を含む共重合体、並びに電解質塩を含むことを特徴とする高分子固体電解質用組成物。
- 前記開環能をもつ環状官能基が、シクロアルケンアリール構造又はシクロアルカジエンアリール構造を有する基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質用組成物。
- 前記開環能をもつ環状官能基が、シクロブテンアリール構造又はシクロブタジエンアリール構造を有する基であることを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質用組成物。
- 前記開環能をもつ環状官能基を有する繰り返し単位が、式(I)
Zは、単結合又は二価以上の連結基を表し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Xは、単結合又は二重結合を表し、Yは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は原子上に置換基を有していてもよい窒素原子を表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、カルボニル基、チオカルボニル基又は置換基を有していてもよいイミノ基を表す。
bは、0、1又は2を表し、bが2の場合、R4は、同一であっても相異なっていてもよい。
dは、1以上で、かつA環上に置換可能な数以下の整数を表し、dが2以上の場合、Y同士、X同士、R4同士及びb同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
aは、(Zの価数−1)の整数を表し、aが2以上の場合、A同士、Y同士、X同士、R4同士、b同士及びd同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。但し、Z上のA環を含む官能基上への結合手の置換位置は、A環上に限定されるものではない。)
で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質用組成物。 - 前記イオン導電性部位が、酸素原子を介して電解質塩と相互作用できる構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子固体電解質用組成物。
- 式(IV)中、Z1がエステル結合であることを特徴とする請求項8に記載の高分子固体電解質用組成物。
- 開環能をもつ環状官能基を開環反応させた構造を有する繰り返し単位及びイオン導電性部位を有する繰り返し単位を含む共重合体、並びに電解質塩を含むことを特徴とする高分子固体電解質。
- 前記開環能をもつ環状官能基が、シクロアルケンアリール構造又はシクロアルカジエンアリール構造を有する基であることを特徴とする請求項10に記載の高分子固体電解質。
- 前記開環能をもつ環状官能基が、シクロブテンアリール構造又はシクロブタジエンアリール構造を有する基であることを特徴とする請求項10に記載の高分子固体電解質。
- 前記開環能をもつ環状官能基を開環反応させた構造を有する繰り返し単位が、式(I)
Zは、単結合又は二価以上の連結基を表し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Xは、単結合又は二重結合を表し、Yは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は原子上に置換基を有していてもよい窒素原子を表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、カルボニル基、チオカルボニル基又は置換基を有していてもよいイミノ基を表す。
bは、0、1又は2を表し、bが2の場合、R4は、同一であっても相異なっていてもよい。
dは、1以上で、かつA環上に置換可能な数以下の整数を表し、dが2以上の場合、Y同士、X同士、R4同士及びb同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
aは、(Zの価数−1)の整数を表し、aが2以上の場合、A同士、Y同士、X同士、R4同士、b同士及びd同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。但し、Z上のA環を含む官能基上への結合手の置換位置は、A環上に限定されるものではない。)
で表される繰り返し単位を開環反応させた構造を有する繰り返し単位であることを特徴とする請求項10に記載の高分子固体電解質。 - 前記イオン導電性部位が、酸素原子を介して電解質塩と相互作用できる構造を有することを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の高分子固体電解質。
- 前記式(IV)中、Z1がエステル結合であることを特徴とする請求項17に記載の高分子固体電解質。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の高分子固体電解質用組成物を、開環反応して得られたものであることを特徴とする高分子固体電解質。
- 式(I)
Zは、単結合又は二価以上の連結基を表し、Aは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Xは、単結合又は二重結合を表し、Yは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は原子上に置換基を有していてもよい窒素原子を表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、カルボニル基、チオカルボニル基又は置換基を有していてもよいイミノ基を表す。
bは、0、1又は2を表し、bが2の場合、R4は同一であっても相異なっていてもよい。
dは、1以上で、かつA環上に置換可能な数以下の整数を表し、dが2以上の場合、Y同士、X同士、R4同士及びb同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
aは、(Zの価数−1)の整数を表し、aが2以上の場合、A同士、Y同士、X同士、R4同士、b同士及びd同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。但し、Z上のA環を含む官能基上への結合手の置換位置は、A環上に限定されるものではない。)
で表される繰り返し単位、及び式(IV)
Z1は単結合又は二価以上の連結基を表す。
R11、R12は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。fは2〜100のいずれかの整数を表し、式:CH(R12)CH(R11)Oで表される基は、同一であっても相異なっていてもよい。
R13は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表す。)
で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする共重合体。 - 式(IV)中、Z1がエステル結合であることを特徴とする請求項20又は21に記載の共重合体。
- 前記式(I)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(A)、及び前記式(IV)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(B)を含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の共重合体。
- 前記式(I)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(A)、及び前記式(IV)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(B)が、(B)、(A)、(B)の順で配置されてなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項23に記載の共重合体。
- 前記式(I)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(A)、及び前記式(IV)で表される繰り返し単位を有するブロック鎖(B)が、(B)−(A)−(B)の順に結合して配列されてなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項23又は24に記載の共重合体。
- 数平均分子量が、5,000〜1,000,000の範囲であることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の共重合体。
- 請求項20〜26のいずれかに記載の共重合体をカップリング架橋させて得られることを特徴とする架橋高分子。
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