JP2006171119A - 反射防止フィルム及びその製造方法、並びに光学部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記条件を満たすことを特徴とする反射防止フィルム。[1]波長400〜800nmにおける分光透過率又は分光反射率スペクトルAと、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去することにより得られる平均化スペクトルBとの差の絶対値を、波長400〜800nmの範囲で1nm毎に算出した値の標準偏差Qが20以下である。[2]前記スペクトルA上に存在する干渉波形の極大点のうち、波長550nmを中心に隣接する2点の位置の波数表現の間隔をPとし、前記2点の位置の波数表現の平均値をXとしたとき、フィルム面内で任意に5点で測定した際のX値の標準偏差Sと、Pの平均値Pavとの間においてS/Pav<0.3の関係を満たす。
【選択図】なし
Description
ハードコート層は、透明基材フィルム上に、熱硬化や電離放射線硬化などにより形成させるものであるが、フィルム表面で干渉縞が発生し、視認性が損なわれるという問題が起こる。
反射防止層は、真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法などのドライ法により、屈折率の異なる材料からなる複数の薄膜を多層積層する;溶液塗工等によるウエットコーティング法により反射防止膜を多層形成させる;ことにより形成されている。前記ドライ法は、真空処理設備の整備や量産性等の問題で処理費用が非常に高価となる問題がある。一方、ウエットコーティング法は、均一な厚みでの多層形成が困難であり、これが干渉縞の問題ともなっている。
一般に、透明基材フィルムは非常に傷つきやすいため、反射防止層はハードコート層を介して設けられているが、これらの組み合わせのフィルムで干渉縞を防止するための検討が種々行われている。
例えば、特許文献1には、ハードコート層の厚みのばらつきを低減することにより干渉縞を防止することが開示されている。しかしながら、屈折率差による界面反射が抑えらず、液晶表示装置などの表示装置に用いたときの視認性が悪くなるという問題がある。
特許文献2には、高屈折率層と低屈折率層との間に中屈折率層を設けて屈折率差を低減することが開示されている。しかしながら、この方法では、屈折率差による反射は抑えられるが、中屈折率層が加わることにより、厚みムラの制御が難しくなったり、工程が増えるので生産コストがかかってしまったりする問題がある。
特許文献3には、基材上にハードコート層を有し、かつ波長730〜780nmにおけるハードコート層の反射スペクトルの山と山あるいは谷と谷の間隔が10nm以下であり、隣り合った山と谷とで反射率の差が0.2%以下であることを特徴とする干渉縞防止ハードコート処理物品が開示されている。しかしながら、この特性を満たすためには、ハードコート層の厚さを厚くしなければならず、ハードコート層の上に反射防止層を積層するときに選択する反射防止層が限られてしまうという問題がある。
(1)透明樹脂からなる基材フィルムの上に、直接又は他の層を介して、高屈折率層及び反射防止層をこの順に少なくとも設けてなる反射防止フィルムであって、下記条件を満たすことを特徴とする反射防止フィルム、
[1]波長400〜800nmにおける分光透過率又は分光反射率スペクトルAと、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去することにより得られる平均化スペクトルBとの差の絶対値を、波長400〜800nmの範囲で1nm毎に算出した値の標準偏差Qが20以下である;
[2]前記スペクトルA上に存在する干渉波形の極大点のうち、波長550nmを中心に隣接する2点の位置の波数表現の間隔をPとし、前記2点の位置の波数表現の平均値をXとしたとき、フィルム面内で任意に5点で測定した際のX値の標準偏差Sと、Pの平均値との間においてS/Pav<0.3の関係を満たす;
(2)前記高屈折率層の厚みが2〜20μmで、かつ屈折率が1.55以上である前記(1)に記載の反射防止フィルム、
(3)前記反射防止層が、厚みが10〜1000nmで、かつ屈折率が1.25〜1.37である低屈折率層である前記(1)又は(2)に記載の反射防止フィルム、
(4)透明樹脂からなる基材フィルムの上に、高屈折率層を形成する塗工液を塗工し、次いで40〜120℃の雰囲気下で、風量5〜40m3/分の風を送ることにより乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法、
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止フィルムを備える光学部材、
及び、
(6)偏光板である前記(5)記載の光学部材、
がそれぞれ提供される。
また、本発明の製造方法によれば、液晶表示装置の偏光板に適用すると、干渉縞の発生が少なく、視認性に優れた表示装置を提供することのできる反射防止フィルムを容易に得ることができる。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物が最も好ましい。
上記の脂環式構造を有する重合体樹脂は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体から選ばれる。
また、基材フィルムの厚みのばらつきが、全幅にわたって前記平均厚みの3%以内で、かつ標準偏差が平均厚みの0.7%以内であることが好ましく、厚みのばらつきが全幅にわたって前記平均厚みの2.4%以内で、かつ標準偏差が平均厚みの0.5%以内であることがさらに好ましい。基材フィルムの厚みのばらつき及び標準偏差が、前記範囲にあることにより、高屈折率層の密着性及びその上に積層する他の層の表面平滑性を向上させることができる。
基材フィルムを成形する方法として、Tダイを用いる方法を採用する場合、Tダイを有する押出機における透明樹脂の溶融温度は、透明樹脂のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機における溶融温度が過度に低いと透明樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
エネルギー線照射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理、プラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。
薬品処理としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、浸漬し、その後充分に水で洗浄する方法が挙げられる。浸漬した状態で振盪すると効果的であるが、長期間処理すると表面が溶解したり、透明性が低下したりするといった問題があり、用いる薬品の反応性、濃度などに応じて、処理時間などを調整する必要がある。
プライマー層は、透明樹脂からなる基材フィルムと高屈折率層との密着性の付与及び向上を目的として形成される。プライマー層を構成する材料としては、例えば、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、主鎖に炭化水素骨格を有する樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、環化ゴム、これらの重合体に極性基を導入した変性物等が挙げられる。これらの中で、主鎖に炭化水素骨格を有する樹脂に極性基を導入した変性物及び環化ゴムに極性基を導入した変性物を好適に用いることができる。
プライマー層の厚みは特に制限されないが、通常0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
高屈折率層を構成する有機樹脂材料としては、高屈折率層におけるバインダーとしての性質を有し、高屈折率層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、さらに透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられるが、皮膜の強度、加工性の点で、熱硬化型樹脂又は活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましい。
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられ、なかでも、表面硬度、耐繰り返し疲労性及び耐擦傷性に優れる観点から、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン樹脂が好ましい。
また、これらの樹脂に必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えて使用することができる。
紫外線および電子線硬化型樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。この紫外線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー、又は光重合性モノマーと光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。また、電子線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー又は光重合性モノマーを含有するものである。
本発明においては、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
前記微粒子としては、平均粒子径が5〜100nm、好ましくは10〜50nmのものを用いる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、又は動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる
前記微粒子は、上記平均粒子径を有する微粒子であればよいが、導電性微粒子が好ましい。導電性微粒子を用いることにより、帯電防止性、機械的強度に優れる高屈折率層を得ることができる。加えて、高屈折率層の屈折率を容易に制御することができる。
エアロゲルは、マトリックス中に微小な気泡が分散した透明性多孔質体である。気泡の大きさは大部分が200nm以下であり、気泡の含有量は通常10体積%以上60体積%以下、好ましくは20体積%以上40体積%以下である。
微小な気泡が分散したエアロゲルの具体例としては、シリカエアロゲル、中空微粒子がマトリックス中に分散された多孔質体が挙げられる。
シリカエアロゲルは、米国特許第4402927号公報、米国特許第4432956号公報、米国特許第4610863号公報等に開示されているように、アルコキシシランの加水分解重合反応によって得られたシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、アルコールあるいは二酸化炭素等の溶媒(分散媒)の存在下で、この溶媒の臨界点以上の超臨界状態で乾燥することによって製造することができる。超臨界乾燥は、例えばゲル状化合物を液化二酸化炭素中に浸漬し、ゲル状化合物が含む溶媒の全部又は一部をこの溶媒よりも臨界点が低い液化二酸化炭素に置換し、この後、二酸化炭素の単独系、あるいは二酸化炭素と溶媒との混合系の超臨界条件下で乾燥することによって、行うことができる。また、シリカエアロゲルは、米国特許第5137279号公報、米国特許5124364号公報等に開示されているように、ケイ酸ナトリウムを原料として、上記と同様にして製造しても良い。シリカエアロゲルの屈折率は、シリカエアロゲルの原料配合比によって自由に変化させることができる。
また、シリカエアロゲルを用いる場合において、上記のようにしてアルコキシシランの加水分解、重合反応によって得られたゲル状化合物を疎水化処理することによって、シリカエアロゲルに疎水性を付与することが好ましい。このように疎水性を付与した疎水性シリカエアロゲルは、湿気や水等が浸入し難くなり、シリカエアロゲルの屈折率や光透過性等の性能が劣化することを防ぐことができるものである。
この疎水化処理は、ゲル状化合物を超臨界乾燥する前、あるいは超臨界乾燥中に行うことができる。疎水化処理は、ゲル状化合物の表面に存在するシラノール基の水酸基を疎水化処理剤の官能基と反応させ、疎水化処理剤の疎水基と置換させることによって疎水化するために行うものである。疎水化処理を行う手法としては、疎水化処理剤を溶媒に溶解させた疎水化処理液中にゲルを浸漬し、混合するなどしてゲル内に疎水化処理剤を浸透させた後、必要に応じて加熱して、疎水化反応を行わせる方法があげられる。
疎水化処理については、特開平5−279011号公報、特開平7−138375号公報に開示されている方法を用いることもできる。
バインダー樹脂としては中空微粒子の分散性、多孔質体の透明性、多孔質体の強度等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、例えば従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの塗料用樹脂、またはアルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物およびその加水分解物等が挙げられる。
これらの中でも微粒子の分散性、多孔質体の強度からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物・およびその加水分解物が好ましい。
低屈折率層として中空微粒子がマトリックス中に分散された多孔質体を用いる場合には、低屈折率層の反射特性や防汚性を向上させることから、上記樹脂にフッ素樹脂を混合してもよい。
無機化合物としては、無機酸化物が一般的である。無機酸化物としては、SiO2、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、Ce2O3、P2O5、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等の1種又は2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO2-Al2O3、TiO2-ZrO2、In2O3-SnO2、Sb2O3-SnO2を例示することができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
防汚層の形成材料としては、低屈折率層の機能が阻害されず、防汚層としての要求性能が満たされる限り特に制限はない。通常、疎水基を有する化合物を好ましく使用できる。
具体的な例としてはパーフルオロアルキルシラン化合物、パーフルオロポリエーテルシラン化合物、フッ素含有シリコーン化合物を使用することができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法;化学的気相成長(CVD)法;湿式コーティング法;等を用いることができる。防汚層の厚みは特に制限はないが、通常20nm以下が好ましく、1〜10nmであるのがより好ましい。
[1]波長400〜800nmにおける分光透過率又は分光反射率スペクトルAと、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去することにより得られる平均化スペクトルBとの差の絶対値を、波長400〜800nmの範囲で1nm毎に算出した値の標準偏差Qが20以下である。
[2]前記スペクトルA上に存在する干渉波形の極大点のうち、波長550nmを中心に隣接する2点の位置の波数表現の間隔をPとし、前記2点の位置の波数表現の平均値をXとしたとき、フィルム面内で任意に5点で測定した際のX値の標準偏差Sと、Pの平均値Pavとの間においてS/Pav<0.3の関係を満たす。
前記標準偏差Qは、以下の(a)〜(e)に示す手順で求めることができる。
(a)反射防止フィルムの分光透過率又は分光反射率を波長400〜800nmにおいて測定し、分光透過率又は分光反射率スペクトルAを得る。
(b)得られた前記スペクトルAについて、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去して、平均化スペクトルBを求める。
(c)波長400〜800nmにおいて1nm毎に、スペクトルAとスペクトルBとの差の絶対値を求める。
(d)400〜800nmにおける差の総和をとる。
(e)上記(a)〜(d)の操作を反射防止フィルムの任意の5点について行い、その総和について標準偏差Qを求める。
分光透過率又は分光反射率は、市販の分光光度計を用いて測定する。前記スペクトルA、スペクトルB、スペクトルAとスペクトルBとの差の絶対値は、分光光度計により得られた分光透過率又は分光反射率からデータを処理することにより、求めることができる。
(f)反射防止フィルムの分光透過率又は分光反射率を波長400〜800nmにおいて測定し、分光透過率又は分光反射率スペクトルAを得る。
(g)得られたスペクトルAからこのスペクトルのピーク位置(極大点、極小点)を検出し、そのピーク位置に基づいて極大点を検出する。ピーク位置の検出方法としては、スペクトルの一次微分値が0(f`(x)=0)となるような点を検出する方法が挙げられる。ここでf(x)は、スペクトルの波形関数、xは波長である)。極大点の検出方法としては、一次微分値が0となる点において、二次微分値が負となる点を検出することにより求める方法が挙げられる。
(h)検出した極大点で、波長550nmを中心に隣接する2点の位置を波長550nmより短波長側の極大値の位置をA[nm]、長波長側の極大値の位置をB[nm]としたとき、A、B2点の位置を波数表現したときの間隔Pと平均値Xを求める。なお、前記P及びXは、下記式より求める。
P=(1/A)−(1/B)
X={(1/A)+(1/B)}/2
ここで、波数表現とは、波長の逆数で表すことを意味する。
(i)上記(f)〜(h)の操作を反射防止フィルムの任意の5点について行い、Pの平均値と、Xの標準偏差Sを求める。そして、求められたPの平均値Pavと標準偏差SからS/Pavを求める。
基材フィルムと高屈折率層との間に他の層を介する場合において、他の層としてはプライマー層が挙げられる。プライマー層を形成する材料は、本発明の防眩性フィルムのところで説明したとおりである。プライマー層の形成方法は特に制限されず、プライマー層形成用塗工液を公知の塗工方法により、基材フィルム上に塗工して形成する方法等が挙げられる。
有機樹脂材料としては、本発明の反射防止フィルムのところで説明したとおりである。
これらの中でも、ASTM.D3539.76に従い測定した酢酸n−ブチルの蒸発速度を1とした場合の相対蒸発速度で0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、トルエン、n−ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
塗工液における有機溶剤の含有量は、20体積%以上であり、40体積%以上であることが好ましい。
前記微粒子としては、本発明の反射防止フィルムのところで説明したとおりである。
微粒子を含む場合、微粒子の含有量は、前記塗工液中に5体積%以上、好ましくは7〜30体積%である。
塗工する雰囲気の温度は、特に制限されないが、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。塗工する雰囲気の相対湿度は, 通常10〜80%、好ましくは40〜70%である。
乾燥する際の風の送り方は、特に制限されないが、通常は、基材フィルムの上方から高屈折率層が設けられている側の面へ送る。また、風を送る装置の配置方法も特に制限されず、吹き出し口及び吸気口を基材フィルムの上方に設ける方法、吹き出し口を基材フィルムの上方へ吸気口を基材フィルムの下方へ設ける方法などが挙げられる。吹き出し口及び吸気口を設ける数も特に制限されない。
高屈折率層の塗膜を得てこれを乾燥した後は、熱硬化型樹脂を含有する場合には加熱することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する場合には活性エネルギー線を照射することにより、それぞれ硬化させて高屈折率層を形成することができる。硬化させる条件は、高屈折率層を構成する有機樹脂材料の種類によって異なる。
有機樹脂材料が、熱硬化型樹脂である場合は、使用する熱硬化型樹脂に適した硬化条件で加熱して、硬化させればよい。
有機樹脂材料が、活性エネルギー線硬化型樹脂である場合は、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。電子線硬化の場合は、コックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1,000KeVのエネルギーを有する電子線が使用される。紫外線硬化の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が挙げられる。電子線又は紫外線は、高屈折率層を設けられている面、高屈折率層が設けられていない面のどちらに照射してもよいし、両方に照射してもよい。
塗工方法としては、ワイヤバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法等の公知の塗工方法が挙げられる。
低屈折率層を構成する材料が、中空微粒子がマトリックス中に分散された多孔質体である場合の形成方法は特に制限されず、例えば、防眩層の上に少なくとも微粒子の内部に空隙を持つ中空微粒子とバインダー樹脂とを含有してなる塗工液を公知の塗工方法により塗工し、必要に応じ乾燥・加熱処理を施す方法が挙げられる。必要に応じて行われる加熱の温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜150℃である。
光学部材としては、プラズマディスプレイパネルにおけるプラズマディスプレイパネル前面板、液晶表示装置における偏光板などが挙げられる。なかでも、液晶表示装置における偏光板が好ましい。
透明基板は、透明であれば特に制限されず、ガラス、透明樹脂基板が挙げられる。本発明の反射防止フィルムと透明基板との積層は、接着剤や粘着剤等の適宜の接着手段を用いて貼り合せることができる。接着剤、又は粘着剤としては、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性に優れる点で、アクリル系の接着剤、又は粘着剤が好ましい。
偏光子としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の従来に準じた適宜なビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施したもので、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いることができる。特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚みは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
本発明の反射防止フィルムを偏光子の少なくとも片方の面に備えればよく、通常は片方のみに備える。本発明の反射防止フィルムを偏光子の片方の面のみに備える場合には、本発明の反射防止フィルムが表示装置における視認側になるように備える、すなわち、出射側偏光子の視認側に備えることが好ましい。
本発明の反射防止フィルムを偏光子の片方のみに備える場合には、偏光子のもう一方の面には保護フィルムを備えることが好ましい。この場合において、保護フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂や脂環式構造を有する重合体樹脂からなるフィルムが挙げられるが、透明性、低複屈折性、寸法安定性などに優れる点から脂環式構造を有する重合体樹脂からなるフィルムが好ましい。脂環式構造を有する重合体樹脂としては、本発明の反射防止フィルムに用いる基材フィルムの部分で記載したものと同様のものが挙げられる。
本発明の反射防止フィルムと偏光子との間、偏光子と保護フィルムとの間に、接着剤層又は粘着剤層を介してもよい。接着剤層に用いる接着剤又は粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性等の観点から、アクリル系のものが好ましい。
偏光板の厚みは、特に制限されないが、通常60μm〜2mmの範囲である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)基材フィルムの平均厚み、厚みのばらつき、平均厚みの標準偏差
フィルムを幅50mmの短冊状(長さ5m以上)に切り出し、これをROTARY CALIPER・接触式厚さ計(明産社製、RC−1−200/1000)を用いて0.48mm毎に測定し、その測定値の算術平均値を平均厚みT(μm)とする。厚みのばらつきは、前記測定した厚みの内最大値をTMAX(μm)、最小値をTMIN(μm)とすると以下の式から算出する。
厚みのばらつき(%)=(TMAX−TMIN)/T×100
平均厚みの標準偏差(%)は、0.48mm毎に測定した全厚み測定値より算出する。
(2)屈折率(基材フィルム、高屈折率層、反射防止層)
高速分光エリプソメトリ(J.A.Woollam社製、M−2000U)を用い、測定波長400〜1000nm,入射角度55、60、65度それぞれにおいて測定し、これらの測定値から算出した。
反射率は、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570)を用い、入射角5度で、波長400〜800nmにおける反射率を1nm間隔で測定した。
標準偏差Qは、以下の(a)〜(e)に示す手順で求めた。
(a)反射防止フィルムの分光透過率又は分光反射率を波長400〜800nmにおいて測定し、分光透過率又は分光反射率スペクトルAを得る。
(b)得られた前記スペクトルAについて、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去して、平均化スペクトルBを求める。
(c)波長400〜800nmにおいて1nm毎に、スペクトルAとスペクトルBとの差の絶対値を求める。
(d)400〜800nmにおける差の総和を求める。
(e)上記(a)〜(d)の操作を反射防止フィルムの任意の5点について行い、その総和について標準偏差Qを求める。
標準偏差S、S/Pavの値は、以下の(f)〜(i)に示す手順で求めた。
(f)反射防止フィルムの分光透過率又は分光反射率を波長400〜800nmにおいて測定し、分光透過率又は分光反射率スペクトルAを得る。
(g)得られたスペクトルAからこのスペクトルのピーク位置(極大点、極小点)を検出し、そのピーク位置に基づいて極大点を検出する。ピーク位置は、スペクトルの一次微分値が0(f`(x)=0)となるような点を検出することにより求める。ここでf(x)は、スペクトルの波形関数、xは波長である)。極大点は、一次微分値が0となる点において、二次微分値が負となる点を検出することにより求める。
(h)検出した極大点で、波長550nmを中心に隣接する2点の位置を波長550nmより短波長側の極大値の位置をA[nm]、長波長側の極大値の位置をB[nm]としたとき、A、B2点の位置を波数表現したときの間隔Pと平均値Xを求める。なお、前記P及びXは、下記式より求める。
P=(1/A)−(1/B)
X={(1/A)+(1/B)}/2
ここで、波数表現とは、波長の逆数で表すことを意味する。
(i)上記(f)〜(h)の操作を反射防止フィルムの任意の5点について行い、Pの平均値Pavと、Xの標準偏差Sを求める。そして、求められたPの平均値Pavと標準偏差SからS/Pavを求める。
(4)反射防止フィルムの干渉縞観察
三波長蛍光灯下で暗幕を下に敷いた状態で反射防止フィルムを配置して、目視観察により、以下の基準で判断した。
◎:干渉縞が見えない。
○:干渉縞がうっすらと見える。
△:干渉縞が目立つ。
×:干渉縞が目立ち、かつギラツキが生じる。
(5)視認性
市販の液晶テレビ(シャープ社製、LC−13C5−S)の液晶セルを挟んでいる偏光板の内、出射側の偏光板をはがし、かわりに本実施例又は比較例で得られた偏光板を反射防止フィルムが視認側になるように貼り合わせて評価用モニターとし、以下の基準で表示品位を評価した。
○:長時間(例えば1〜2時間くらい)使用しても作業者が不快に感じない。
×:長時間の使用で作業者が不快に感じる。
五酸化アンチモンの変性アルコールゾル(固形分濃度30%、触媒化成社製)100部に、紫外線硬化型ウレタンアクリレート(日本合成化学社製、紫光UV7000B)10部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア−184)0.4部を混合し、紫外線硬化型の高屈折率層用塗工液1を得た。
アクリル系紫外線硬化型組成物(日本化薬社製、商品名「KAYANOVAFOP-5000」)30部をホモジナイザーで混合して紫外線硬化性樹脂組成物からなる高屈折率層用塗工液2を得た。
テトラメトキシシランのオリゴマー(コルコート社製、「メチルシリケート51」)と、メタノール、水、0.01Nの塩酸水溶液とを重量比で21:36:2:2となるように混合し、これを25℃の高温槽中で2時間撹拌して、重量平均分子量を850になるように調製し、シリコーンレジンを得た。
次に中空シリカ微粒子として中空シリカイソプロパノール分散ゾル(触媒化成工業製、固形分20重量%、平均一次粒子径約35nm、外殻厚み約8nm)を前記シリコーンレジンに加え,中空シリカ微粒子とシリコーンレジン(縮合化合物換算)とが固形分基準で重量比が8:2となるように混合し、その後、全固形分が1%になるようにメタノールで希釈して、反射防止層用塗工液1を調製した。
厚さ75μmのPVAフィルム(クラレビニロン#7500)をチャックに装着しヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム60g/Lよりなる水溶液中に30℃で4分間浸漬し、次いでホウ酸70g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液に浸漬しながら、6.0倍に一軸延伸しつつ5分間ホウ酸処理を行った。これを室温で24時間乾燥することにより偏光子を得た。
基材フィルムとしてノルボルネン系樹脂フィルム(平均厚み:40μm、厚みのばらつき:平均厚みの1.8%、厚みの標準偏差:0.4μm、屈折率1.53、以下、「基材フィルムa」と記すことがある。)を用い、この両面に、高周波発信機(コロナジェネレータHV05−2,Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面張力が0.072N/mになった基材フィルムaを得た。
表面改質した基材フィルムaに、製造例1で得た高屈折率層用塗工液1を硬化後の高屈折率層の厚みが5μmになるように、マイクログラビアを用いて温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下で塗工して塗膜を得た。次いで、この塗膜に80℃の雰囲気下で風量9m3/分の風を5分間送ることにより乾燥した後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm2)を行って硬化させることにより高屈折率層を形成させた。
高屈折率層の上に、製造例3で得られた反射防止層用塗工液1を調製後1時間放置したものを、塗工後の平均厚みが100nmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗工し、次いでこれを室温で1時間乾燥した後、120℃で10分間熱処理を行うことにより、反射防止フィルム1を得た。この反射防止フィルム1について、上述の屈折率及び反射率の測定、並びに干渉縞観察を行った。その結果を表1に示す。
この反射防止フィルム1の基材フィルムaの高屈折率層及び反射防止層が積層されていない方の面にアクリル系接着剤(住友スリーエム社製、「DP−8005クリア」)を介して、製造例4で得られた偏光子を貼り合わせ、偏光子のもう一方の面にアクリル系接着剤(住友スリーエム社製、「DP−8005クリア」)を介して、表面張力が0.072N/mになった基材フィルムaを貼り合わせることにより偏光板1を得た。この偏光板1について、上述の視認性の評価を行った。その結果を表1に示す。
基材フィルムaのかわりに、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン4300、厚み100μm、屈折率1.65、以下「基材フィルムb」と記す)を用いた他は実施例1と同様の操作を行うことにより、反射防止フィルム2を得た。次いでこの反射防止フィルム2を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板2を得た。
反射防止フィルム2及び偏光板2について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
高屈折率層用塗工液1を塗工した後の乾燥の際に送る風量を30m3/分とした他は、実施例1と同様の操作を行うことにより、反射防止フィルム3を得た。次いでこの反射防止フィルム3を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板4を得た。
反射防止フィルム3及び偏光板3について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
基材フィルムとして、平均厚みが40μm、厚みのばらつきが平均厚みの6%、厚みの標準偏差が0.4μmであるノルボルネン系樹脂フィルム(以下、「基材フィルムc」と記すことがある。)を用いた他は、実施例1と同様に操作を行うことにより、反射防止フィルム4を得た。次いでこの反射防止フィルム4を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板4を得た。
反射防止フィルム4及び偏光板4について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
基材フィルムaのかわりに基材フィルムbを用い、高屈折率層用塗工液1のかわりに、製造例2で得られた高屈折率層用塗工液2を用いた他は、実施例1と同様の操作を行うことにより、反射防止フィルム5を得た。次いでこの反射防止フィルム5を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板5を得た。
反射防止フィルム5及び偏光板5について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
基材フィルムaのかわりに基材フィルムbを用い、反射防止層用塗工液1を塗工するかわりにMgF2を厚みが100nmとなるようにスパッタリング法により形成した他は、実施例1と同様の操作を行うことにより、反射防止フィルム6を得た。次いでこの反射防止フィルム6を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板6を得た。
反射防止フィルム6及び偏光板6について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
高屈折率層用塗工液1を塗工した後の乾燥の際に送る風量を50m3/分とした他は、実施例1と同様の操作を行うことにより、反射防止フィルム7を得た。次いでこの反射防止フィルム7を用いて実施例1と同様の操作を行うことにより偏光板7を得た。
反射防止フィルム7及び偏光板7について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例のフィルムは、標準偏差Qが20以下であり、S/Pav値が0.3よりも小さい。その結果、干渉縞観察において干渉縞がうっすら見える又は全く見えない。加えて、視認性評価においても作業者が不快に感じない。実施例の反射防止フィルムの中でも、標準偏差Qが10で、S/Pav値が0.2である実施例1の反射防止フィルム1は、干渉縞観察においても干渉縞がまったく見られず、かつ視認性も良好である。
一方、比較例のフィルムは、標準偏差Qが20を超える又はS/Pav値が0.3以上である。その結果、干渉縞観察において干渉縞が目立ってギラツキが生じ、視認性評価において作業者が不快に感じてしまう。
Claims (6)
- 透明樹脂からなる基材フィルムの上に、直接又は他の層を介して、高屈折率層及び反射防止層をこの順に少なくとも設けてなる反射防止フィルムであって、下記条件を満たすことを特徴とする反射防止フィルム。
[1]波長400〜800nmにおける分光透過率又は分光反射率スペクトルAと、このスペクトルAから1000cm−1以下の周期を持つ信号を除去することにより得られる平均化スペクトルBとの差の絶対値を、波長400〜800nmの範囲で1nm毎に算出した値の標準偏差Qが20以下である。
[2]前記スペクトルA上に存在する干渉波形の極大点のうち、波長550nmを中心に隣接する2点の位置の波数表現の間隔をPとし、前記2点の位置の波数表現の平均値をXとしたとき、フィルム面内で任意に5点で測定した際のX値の標準偏差Sと、Pの平均値Pavとの間においてS/Pav<0.3の関係を満たす。 - 前記高屈折率層の厚みが0.5〜20μmで、かつ屈折率が1.55以上である請求項1記載の反射防止フィルム。
- 前記反射防止層が、厚み10〜1000nmで、かつ屈折率が1.25〜1.37の低屈折率層である請求項1又は2記載の反射防止フィルム。
- 透明樹脂からなる基材フィルムの上に、高屈折率層を形成する塗工液を塗工し、次いで40〜120℃の雰囲気下で、風量5〜40m3/分の風を送ることにより乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムを備える光学部材。
- 偏光板である請求項5記載の光学部材。
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