以下では、オーディオ再生装置からワイヤレススピーカに対してオーディオ信号を無線伝送するワイヤレスオーディオシステムに本発明を適用した場合を例に挙げて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第1実施形態について、図1を参照しながら詳細な説明を行う。図1は、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第1実施形態を示すブロック図である。
本図に示すように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムは、オーディオ信号の送信装置として機能するオーディオ再生装置Aと、オーディオ信号の受信装置として機能するワイヤレススピーカBと、から構築されている。このようなワイヤレスオーディオシステムであれば、装置間の配線を考慮する必要がなくなるので、その配置レイアウトの自由度を高めることが可能となる。
オーディオ再生装置Aは、FM[Frequency Modulation]放送受信アンテナA1と、FM放送受信部A2と、オーディオ信号処理部A3と、フロントスピーカ部A4と、アナログ/ディジタル変換部A5(以下、A/D[Analog/Digital]変換部A5と呼ぶ)と、変調信号生成部A6と、ディジタル送信部A7と、ディジタル送信アンテナA8と、周波数制御部A9と、中央演算処理部A10と、埋込信号生成部A11と、操作部A12と、表示部A13と、を有して成る。なお、本図には明示されていないが、ディジタルオーディオ信号を圧縮して無線送信を行う構成とすれば、送信効率を向上することが可能となる。ただし、当該構成を採用する場合には、ワイヤレススピーカB側で復調される被圧縮信号について所定の伸張処理を行う必要が生じる。
FM放送受信アンテナA1は、VHF[Very High Frequency]帯(30〜300[MHz])のFM放送電波を検出する手段である。
FM放送受信部A2は、FM放送受信アンテナA1で検出されたFM放送電波から装置の受信周波数に応じた信号成分を抽出して、所望のアナログオーディオ信号を生成するチューナ手段である。
オーディオ信号処理部A3は、サラウンド信号(5.1CHサラウンド信号など)の入力を受けて複数系統のアナログオーディオ信号に分離し、システム各所のサラウンドスピーカ手段(フロント[L・C・R]、リア[L・R]、サブウーハなど)に分配する手段である。また、オーディオ信号処理部A3は、FM放送受信部A2から入力されるアナログオーディオ信号についても、その分配送出制御を行う。
フロントスピーカ部A4は、オーディオ信号処理部A3から入力されたアナログオーディオ信号を音声出力する手段である。なお、本図には明示されていないが、フロントスピーカ部A4の入力段には、所定の利得でアナログオーディオ信号を電力増幅する増幅部が設けられている。
A/D変換部A5は、オーディオ信号処理部A3で分離されたアナログオーディオ信号の少なくとも一(本実施形態では、ワイヤレススピーカBに無線伝送すべきリア系統のアナログオーディオ信号)をPCM[Pulse Code Modulation]変換することでディジタルオーディオ信号に変換する手段である。
変調信号生成部A6は、前記ディジタルオーディオ信号と後述する埋込信号に基づいて変調信号(図5に示されるシリアルのブロックデータ群)を生成する手段である。
ディジタル送信部A7は、前記変調信号に基づいて搬送波(キャリア)の変調処理を行う発振手段である。
ディジタル送信アンテナA8は、ディジタル送信部A7で得られた被変調信号をISM[Industry Science Medical]帯(2.4[GHz])の無線電波として空間に放出する手段であり、その指向性の有無は問わない。
周波数制御部A9は、オーディオ再生装置Aの送信周波数(ディジタル送信部A7における搬送波の発振周波数)を可変制御する手段である。
中央演算処理部A10は、送信周波数変更信号の生成制御、操作部A12の入力監視制御、及び、表示部A13の表示制御などを統括的に行う機能を具備するほか、後ほど詳述するように、ワイヤレススピーカBに対するディジタル無線送信中にFM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号の監視機能や、埋込信号生成部A11における埋込信号の生成制御機能も備えている。なお、上記の送信周波数変更信号とは、システム毎に割り当てられた特定の周波数帯域を複数のチャネルに分割し、その送受信周波数を適宜変更すべく、周波数制御部A9に送信周波数の変更を命じる制御信号のことである。
埋込信号生成部A11は、中央演算処理部A10からの指示に基づいて埋込信号の生成制御を行う手段である。上記の埋込信号とは、ワイヤレススピーカBに各種命令を伝達すべく、現在送信中の被変調信号に重畳されるデータ信号のことであり、前記ディジタルオーディオ信号とともに変調信号生成部A6へと入力される。なお、本実施形態のオーディオ再生装置Aでは、後ほど詳述するように、装置の送信周波数を変更するに先立って、当該変更後の送信周波数を示した第1データ信号が埋込信号として生成される。
操作部A12は、各種操作を受け付けるユーザインタフェイスであり、一般的な操作に際して押下等されるキーやボタンのほか、システムの送受信周波数を変更する際に押下等される送受信周波数変更ボタンを具備して成る。
表示部A13は、装置の動作状態(例えば、現在設定されている送信周波数)を視覚的に報知する手段であり、液晶ディスプレイやLED[Light Emitting Diode]等を用いることができる。
一方、ワイヤレススピーカBは、ディジタル受信アンテナB1と、ディジタル受信部B2と、復調部B3と、ディジタル/アナログ変換部B4(以下D/A[Digital/Analog]変換部B4と呼ぶ)と、リアスピーカ部B5と、周波数制御部B6と、エラー検出部B7と、エラーカウンタ部B8と、中央演算処理部B9と、受信状況データ信号生成部B10と、FM送信部B11と、FM送信アンテナB12と、表示部B13と、を有して成る。
ディジタル受信アンテナB1は、オーディオ再生装置Aのディジタル送信アンテナA8から放出された無線電波を検出する手段であり、その指向性の有無は問わない。
ディジタル受信部B2は、ディジタル受信アンテナ部B1で検出された無線電波からワイヤレススピーカBの受信周波数に応じた信号成分を抽出する手段である。
復調部B3は、ディジタル受信部B2で抽出された信号成分からディジタルオーディオ信号と埋込信号を復調する。
D/A変換部B4は、復調部B3で復調されたディジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換する手段である。
リアスピーカ部B5は、D/A変換部B4から入力されたアナログオーディオ信号を音声出力する手段である。なお、本図には明示されていないが、リアスピーカ部B5の入力段には、所定の利得でアナログオーディオ信号を電力増幅する増幅部が設けられている。
周波数制御部B6は、後述の受信周波数変更信号に応じて決定されるワイヤレススピーカBの受信周波数に基づいてディジタル受信部B2の同調制御を行う手段である。
エラー検出部B7は、復調部B3で得られたディジタルオーディオ信号が正規の信号であるか否か(すなわちデータ異常が生じていないか否か)を検出する手段であり、データ異常の発生を検出した場合には、その旨を示すエラー信号を生成して、エラーカウンタ部B8に送出する。
なお、図1には明示されていないが、上記エラー信号は、D/A変換部B4にも送出されており、D/A変換部B4は、当該エラー信号の入力有無に基づいて、復調部B3で得られたディジタルオーディオ信号にエラーが生じているか否かを判断する。そして、D/A変換部B4は、ディジタルオーディオ信号にエラーが生じていると判断した場合には、リアスピーカ部B5での異常音発生を抑えるべく、その出力であるアナログオーディオ信号にミュート処理(消音処理)を施す。また、エラー検出部B7は、ワイヤレススピーカBで空電ノイズしか受信されない状態(つまり無信号状態)にもエラー信号を送出するため、D/A変換部B4では、オーディオ再生装置Aからの信号送信が停止された場合や、送信周波数と受信周波数が不一致とされた場合にも、上記のミュート処理が行われる。
エラーカウンタ部B8は、エラー検出部B7から入力されるエラー信号を監視することにより、復調部B3で得られたディジタルオーディオ信号における所定時間当たりのエラー発生回数(エラー量)を数える手段である。
中央演算処理部B9は、ワイヤレススピーカB全体を制御する統括制御手段としての機能を具備するほか、埋込信号(第1データ信号)の検出機能や、当該埋込信号に基づく受信周波数変更信号の生成制御機能を備えている。なお、上記の受信周波数変更信号とは、ワイヤレススピーカBの受信周波数をオーディオ再生装置Aの送信周波数と合致させるべく、周波数制御部B6に受信周波数の変更を命じる制御信号のことである。また、中央演算処理部B9は、上記諸機能のほか、受信状況データ信号生成部B10における受信状況データ信号の生成制御機能も具備して成る。
受信状況データ信号生成部B10は、エラーカウンタ部B8で得られたエラー量に基づいて、前記受信状況データ信号を生成する手段である。なお、受信状況データ信号とは、復調されたディジタルオーディオ信号の受信状況(エラー量)を示す信号のことである。
FM送信部B11は、前記受信状況データ信号に基づいて搬送波(キャリア)のFM変調処理を行う発振手段である。
FM送信アンテナB12は、FM送信部B11で得られた被変調波をVHF帯のFM電波として空間に放出する手段である。
表示部B13は、装置の動作状態(例えば、現在設定されている送信周波数)を視覚的に報知する手段であり、液晶ディスプレイやLED等を用いることができる。
上記構成から成るワイヤレスオーディオシステムのディジタル送受信周波数変更動作について、詳細に説明する。
オーディオ再生装置Aにて、操作部A12の送信周波数変更ボタンが押下された場合、中央演算処理部A10は、送信周波数の変更指示、すなわち、周波数制御部A9に対する送信周波数変更信号の送出に先立ち、変更後の送信周波数を示した埋込信号(第1データ信号)を生成するよう、埋込信号生成部A11に指示を送る。当該指示を受けた埋込信号生成部A11は、変更後の送信周波数を示す埋込信号を生成し、当該埋込信号を変調信号生成部A6に送出する。すなわち、本実施形態のオーディオ再生装置Aでは、送信周波数の変更に先立ち、その変更内容を示した埋込信号がワイヤレススピーカBに無線送信される。なお、中央演算処理部A10は、前記埋込信号の生成を指示してから所定の待機時間(ワイヤレススピーカBの受信周波数が変更されるのに要する時間)が経過した時点で、送信周波数の変更を指示すべく、周波数制御部A9に送信周波数変更信号を送出する。
一方、ワイヤレススピーカBにおいて、中央演算処理部B9は、復調部B3で得られる復調結果に埋込信号(第1データ信号)が含まれているか否かを常時監視しており、復調結果に埋込信号が含まれていれば、ワイヤレススピーカBの受信周波数を当該埋込信号が示すオーディオ再生装置Aの変更後の送信周波数に合致させるべく、受信周波数変更信号を生成して周波数制御部B6に送出する。
すなわち、本実施形態のワイヤレススピーカBでは、オーディオ再生装置A側で送信周波数の変更操作が為された場合、自動的にその受信周波数がオーディオ再生装置Aの変更後の送信周波数に合致される。従って、両装置A、B間における無線通信は、オーディオ再生装置Aの送信周波数が変更された後も、何ら断絶されることなく正常に継続される。
なお、操作部A12の送受信周波数変更ボタンが再度押下された場合、オーディオ再生装置Aの送信周波数は、さらに別の送信周波数、或いは、元の送信周波数に変更されることになるが、その際にも、オーディオ再生装置A及びワイヤレススピーカBでは、上記と同様の信号処理が行われる。
上記動作によってシステムの送受信周波数が変更された後、ワイアレススピーカBの中央演算処理部B9は、エラーカウンタ部B8の出力に基づいて、当該変更後の周波数条件で復調されたディジタルオーディオ信号の受信状況(エラー量)を検出し、受信状況データ信号生成部B10に対して、その検出結果を示す受信状況データ信号を生成するよう、指示を送る。その結果、FM送信アンテナB12からは、前記受信状況データ信号がFM電波として空間に放出され、オーディオ再生装置AのFM受信アンテナA1にて、当該FM電波が検出されることになる。
一方、オーディオ再生装置Aの中央演算処理部A10は、先述した通り、FM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号の監視機能を具備しており、ワイヤレススピーカBに対するディジタル無線送信中に得られる受信状況データ信号に基づいて、オーディオ再生装置Aの送信周波数を可変制御する。
具体的に述べると、FM放送受信部A2で得られた受信状況データ信号に基づいて、ワイヤレススピーカBでは受信エラーが生じていないと判断された場合、中央演算処理部A10は、オーディオ再生装置Aの送信周波数を現在値に固定する。これにより、システムは安定モードに移行される。それに対して、ワイヤレススピーカBで受信エラーが生じていると判断された場合、中央演算処理部A10は、再度システムの送受信周波数を変更すべく、上記と同様、再変更後の送信周波数を示した埋込信号をワイヤレススピーカBに送るとともに、自らの送信周波数を再変更する。ワイヤレススピーカB側でも上記と同様、受信状況(エラー量)の再検出が行われ、その検出結果を示す受信状況データ信号が再送出される。このような双方向通信の繰返しにより、受信エラーの生じない送受信信号の最適化処理が進められ、最終的には安定した通信網が完成される。
上記したように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、ワイヤレススピーカBは、復調されたディジタルオーディオ信号の受信状況を示す受信状況データ信号をFM電波として空間に放出する手段(B7〜B12)を有して成り、オーディオ再生装置Aは、ワイヤレススピーカBに対するディジタル無線送信中にFM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号に基づいて装置の送信周波数を変更する手段(A9、A10)を有して成る構成とされている。
このような構成とすることにより、煩雑な操作を要することなく、ディジタル無線通信に用いる送受信周波数を最適化することができ、混信の少ない状態で良好なディジタル無線通信を行うこと、すなわち、歪やノイズの少ない高品質な音声再生を行うことが可能となる。また、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムは、オーディオ再生装置Aに受信部を新設することなく、既設のFM放送受信部A2を利用して双方向通信を図る構成であるため、大掛かりなシステム改変(ディジタル通信系統の増設)が不要であり、部品点数の増加やコストの上昇を最小限に留めることが可能となる。
また、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、オーディオ再生装置Aは装置の送信周波数を変更するに先立って現在送信中の被変調信号に変更後の送信周波数を示した第1データ信号を重畳させる手段(A10、A11)を有して成り、ワイヤレススピーカBは、復調部B3での復調結果に第1データ信号が含まれていれば装置の受信周波数を第1データ信号が示す変更後の送信周波数に合致させる手段(B6、B9)を有して成る構成とされている。このような構成とすることにより、ディジタル無線通信に用いる送受信周波数を自動で最適化することができるので、その最適化処理に要する時間を短縮し、かつ、ユーザの操作負担を軽減することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、オーディオ再生装置Aの送信周波数を変更するに先立ち、埋込信号を用いて変更後の送信周波数をワイヤレススピーカB側に教示する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、オーディオ再生装置Aについては、変更後の送信周波数に加えてその変更タイミングを教示する埋込信号を生成する構成とし、ワイヤレススピーカBについては、埋込信号に示される送信周波数の変更タイミングに応じて、自身の受信周波数を変更する構成としてもよい。このような構成とすることにより、送受信周波数の変更タイミングをより高精度に制御することができるので、両装置A、B間における無線通信の断絶や、それに伴うワイヤレススピーカBの異音発生等を極力防止することが可能となる。
次に、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第2実施形態について、図2を参照しながら詳細な説明を行う。図2は、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第2実施形態を示すブロック図である。なお、本図からも分かるように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムは、先出の第1実施形態とほぼ同様の構成から成る。そこで、第1実施形態と同様の構成部分については、図1と同一符号を付すことで詳細な説明を省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点を置いた説明を行うことにする。
まず、オーディオ再生装置A側の特徴部分として、中央演算処理部A10は、先述の諸機能を具備するほか、ワイヤレススピーカBに対するディジタル無線送信中、FM放送受信部A2で正常な受信状況データ信号が得られない場合にオーディオ再生装置AのFM受信周波数を変更する手段としての機能や、オーディオ再生装置AのFM受信周波数を変更するに先立って現在送信中の被変調信号に変更後のFM受信周波数を示した第2データ信号を重畳させる手段としての機能を新たに備えている。また、埋込信号生成部A11は、中央演算処理部A10からの指示に基づいて、先の実施形態で説明した第1データ信号のほか、上記第2データ信号を埋込信号として生成する機能を備えている。
一方、ワイヤレススピーカB側の特徴部分として、中央演算処理部B9は、先述の諸機能を具備するほか、復調部B3での復調結果に第2データ信号が含まれていればワイヤレススピーカBのFM送信周波数を第2データ信号が示すオーディオ再生装置Aの変更後のFM受信周波数に合致させる手段としての機能を新たに備えている。
上記構成から成るワイヤレスオーディオシステムのFM送受信周波数変更動作について詳細に説明する。
ワイヤレススピーカBに対するディジタル無線送信中、オーディオ再生装置Aの中央演算処理部A10は、先述した通り、FM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号の監視を行い、当該受信状況データ信号に基づいて、オーディオ再生装置Aの送信周波数を可変制御する。このとき、FM放送受信部A2で正常な受信状況データ信号が得られなかった場合、中央演算処理部A10は、外部のFM放送電波等の影響を受けてワイヤレススピーカBとのFM通信に支障が生じていると判断し、FM放送受信部A2に対するFM受信周波数の変更指示を行う。
その際、中央演算処理部A10は、上記FM受信周波数の変更指示に先立ち、変更後のFM受信周波数を示した埋込信号(第2データ信号)を生成するよう、埋込信号生成部A11に指示を送る。当該指示を受けた埋込信号生成部A11は、変更後のFM受信周波数を示す埋込信号を生成し、当該埋込信号を変調信号生成部A6に送出する。すなわち、本実施形態のオーディオ再生装置Aでは、FM受信周波数の変更に先立って、その変更内容を示した埋込信号がワイヤレススピーカBに無線送信される。なお、中央演算処理部A10は、前記埋込信号の生成を指示してから所定の待機時間(ワイヤレススピーカBのFM送信周波数が変更されるのに要する時間)が経過した時点で、FM受放送受信A2にFM受信周波数の変更を指示する。
一方、ワイヤレススピーカBにおいて、中央演算処理部B9は、復調部B3で得られる復調結果に埋込信号(第2データ信号)が含まれているか否かを常時監視しており、復調結果に埋込信号が含まれていれば、ワイヤレススピーカBのFM送信周波数を当該埋込信号が示すオーディオ再生装置Aの変更後のFM受信周波数に合致させるべく、FM送信部B11に対して指示を送る。
すなわち、本実施形態のワイヤレススピーカBでは、オーディオ再生装置A側におけるFM受信周波数の変更処理に合わせて、自動的にそのFM送信周波数がオーディオ再生装置Aの変更後のFM受信周波数に合致される。従って、両装置A、B間におけるFM通信は、オーディオ再生装置AのFM受信周波数が変更された後も、何ら断絶されることなく正常に継続される。
上記動作によってシステムのFM送受信周波数が変更された後、オーディオ再生装置Aの中央演算処理部A10は、FM放送受信部A2で正常な受信状況データ信号が得られているか否かの判定を行う。ここで、受信状況データ信号が正常であると判定された場合、中央演算処理部A10は、オーディオ再生装置AのFM受信周波数を現在値に固定する。これにより、システムは安定モードに移行される。それに対して、未だに受信状況データ信号が正常でないと判定された場合、中央演算処理部A10は、再度システムのFM送受信周波数を変更すべく、上記と同様、再変更後のFM受信周波数を示した埋込信号をワイヤレススピーカBに送るとともに、自らのFM受信周波数を再変更する。ワイヤレススピーカB側でも、上記と同様、FM送信周波数の再変更が行われる。このような双方向通信の繰返しにより、受信エラーの生じないFM送受信信号の最適化処理が進められ、最終的には安定した通信網が完成される。
上記したように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、オーディオ再生装置Aは、FM放送受信部A2で正常な受信状況データ信号が得られない場合にオーディオ再生装置AのFM受信周波数を変更する手段(A9、A10)を有して成る構成とされている。このような構成とすることにより、煩雑な操作を要することなく、受信状況データ信号の通信に用いるFM送受信周波数を最適化することができ、混信の少ない状態で良好な受信状況データ信号の通信を行うこと、延いては、当該受信状況データ信号に基づくディジタル送受信周波数の最適化処理を適切に実施することが可能となる。
また、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、オーディオ再生装置AはそのFM受信周波数を変更するに先立って現在送信中の被変調信号に変更後のFM受信周波数を示した第2データ信号を重畳させる手段(A10、A11)を有して成り、ワイヤレススピーカBは、復調部B3での復調結果に第2データ信号が含まれていれば装置のFM送信周波数を第2データ信号が示すオーディオ再生装置Aの変更後のFM受信周波数に合致させる手段(B9、B11)を有して成る構成とされている。このような構成とすることにより、受信状況データ信号の通信に用いるFM送受信周波数を自動で最適化することができるので、その所要時間を短縮するとともに、ユーザの操作負担を軽減することが可能となる。
次に、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第3実施形態について、図3を参照しながら詳細な説明を行う。図3は、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第3実施形態を示すブロック図である。なお、本図からも分かるように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムは、先出の第1実施形態とほぼ同様の構成から成る。そこで、第1実施形態と同様の構成部分については、図1と同一符号を付すことで詳細な説明を省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点を置いた説明を行うことにする。
まず、オーディオ再生装置A側の特徴部分として、中央演算処理部A10は、先述の諸機能を具備するほか、後述するディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎にFM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号に基づいて、現在送信中の被変調信号に選択すべきディジタル受信アンテナを示す第3データ信号を重畳させる手段としての機能を新たに備えている。また、埋込信号生成部A11は、中央演算処理部A10からの指示に基づいて、先の実施形態で説明した第1データ信号のほか、上記第3データ信号を埋込信号として生成する機能を備えている。
一方、ワイヤレススピーカB側の特徴部分として、ワイヤレススピーカBは、ダイバシティアンテナ方式を採用した構成、すなわち、無線電波の検出手段として複数のディジタル受信アンテナB1a、B1bを有して成る構成とされている。また、ワイヤレススピーカBには、ディジタル受信アンテナB1a、B1bのいずれか一を選択してディジタル受信部B2に接続するアンテナ切換部B14と、中央演算処理部B9からの指示に基づいてアンテナ切換信号を生成する切換制御部B15と、が追設されている。なお、アンテナ切換信号とは、アンテナ切換部B14に信号系統の切換えを命じる制御信号のことである。
さらに、ワイヤレススピーカBの中央演算処理部B9は、先述した諸機能のほか、オーディオ再生装置Aからのディジタル無線受信に際してディジタル受信アンテナB1a、B1bを順次択一する手段としての機能や、復調部B3での復調結果に第3データ信号が含まれていれば該第3データ信号が示すディジタル受信アンテナを選択する手段としての機能を新たに備えている。
上記構成から成るワイヤレスオーディオシステムのダイバシティアンテナ切換動作について、詳細に説明する。
ワイヤレススピーカBにおいて、中央演算処理部B9は、オーディオ再生装置Aからのディジタル無線受信に際し、ディジタル受信アンテナB1a、B1bを順次択一するよう切換制御部B15に指示を送る。切換制御部B15は、中央演算処理部B9からの指示に基づいてアンテナ切換信号の生成を行い、アンテナ切換部B14は、当該アンテナ切換信号に基づいて信号系統の順次切換えを行う。
また、中央演算処理部B9は、ディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎、エラーカウンタ部B8の出力に基づいて、復調されたディジタルオーディオ信号の受信状況(エラー量)を検出し、受信状況データ信号生成部B10に対して、その検出結果を示す受信状況データ信号を生成するよう指示を送る。その結果、FM送信アンテナB12からは、ディジタル受信アンテナB1a、B1b毎の受信状況データ信号がFM電波として空間に放出され、オーディオ再生装置AのFM受信アンテナA1にて、当該FM電波が検出されることになる。
一方、オーディオ再生装置Aの中央演算処理部A10は、先述した通り、FM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号の監視機能を具備しており、ディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎にFM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号に基づいて、選択すべきディジタル受信アンテナ(すなわち、最も良好な受信状態を得られるディジタル受信アンテナ)を判定する。そして、中央演算処理部A10は、その判定結果を示した埋込信号(第3データ信号)を生成するよう、埋込信号生成部A11に指示を送る。埋込信号生成部A11は、指示された埋込信号を生成して変調信号生成部A6に送出する。これにより、現在送信中の被変調波に前記埋込信号が重畳されてワイヤレススピーカBに無線送信される。
ワイヤレススピーカBにおいて、中央演算処理部B9は、復調部B3で得られる復調結果に埋込信号(第3データ信号)が含まれているか否かを常時監視しており、復調結果に第3データ信号が含まれていれば、該第3データ信号が示すディジタル受信アンテナを選択するよう、切換制御部B15に対して指示を送る。切換制御部B15は、中央演算処理部B9からの指示に基づいてアンテナ切換信号の生成を行い、アンテナ切換部B14は、当該アンテナ切換信号に基づいて信号系統の切換えを行う。これにより、ワイヤレススピーカBは安定モードに移行される。
上記したように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、ワイヤレススピーカBは、複数のディジタル受信アンテナB1a、B1bを有するとともに、それらを順次択一する手段(B9、B14、B15)と、復調部B3での復調結果に第3データ信号が含まれていれば該第3データ信号が示すディジタル受信アンテナを選択する手段(B9、B14、B15)と、を有して成り、オーディオ再生装置Aは、ディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎にFM放送受信部A2で得られる受信状況データ信号に基づいて現在送信中の被変調信号に選択すべきディジタル受信アンテナを示す第3データ信号を重畳させる手段(A10、A11)を有して成る構成としている。このような構成とすることにより、ディジタル無線通信に用いる送受信周波数の最適化と合わせてディジタル受信アンテナB1a、B1bの最適選択を自動で行うことができるので、より一層高品質な音声再生を行うことが可能となる。
なお、本実施形態の説明では、先述したディジタル送受信周波数やFM送受信周波数の最適化制御について特段言及しなかったが、本実施形態のダイバシティアンテナ選択制御に合わせて、上記送受信周波数の最適化制御を行うべきであることは言うまでもない。
次に、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第4実施形態について、図4を参照しながら詳細な説明を行う。図4は、本発明に係るワイヤレスオーディオシステムの第4実施形態を示すブロック図である。なお、本図からも分かるように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムは、先出の第3実施形態とほぼ同様の構成から成る。そこで、第3実施形態と同様の構成部分については、図3と同一符号を付すことで詳細な説明を省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点を置いた説明を行うことにする。
まず、オーディオ再生装置A側の特徴部分として、中央演算処理部A10は、先述の諸機能を具備するほか、オーディオ再生装置Aの送信周波数を順次変更する手段としての機能や、当該順次変更処理の完了後にFM放送受信部A2で得られる後述の最適周波数データ信号に基づいて装置の送信周波数を変更する手段としての機能を新たに備えている。
一方、ワイヤレススピーカB側の特徴部分として、ワイヤレススピーカBは、ディジタルオーディオ信号の受信状況を情報として格納するメモリ部B16を有して成るほか、先述の受信状況データ信号生成部B10に代えて、最適周波数データ信号生成部B17を有する構成とされている。また、中央演算処理部B9は、先述の諸機能を具備するほか、ディジタル受信アンテナB1a、B1bを装置の受信周波数毎に順次択一する手段としての機能、ディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎にディジタルオーディオ信号の受信状況を情報としてメモリ部B16に逐次格納する手段としての機能、格納された情報を比較して最も受信状況が良好であった装置の受信周波数とディジタル受信アンテナとの組合わせを判断する手段としての機能、最良の組合わせであると判断された装置の受信周波数及びディジタル受信アンテナを選択する手段としての機能、並びに、最良の組合わせであると判断された装置の受信周波数を示した最適周波数データ信号をFM電波として空間に放出する手段としての機能を新たに備えている。
上記構成から成るワイヤレスオーディオシステムのディジタル送受信周波数変更動作について、詳細に説明する。
オーディオ再生装置Aにて、操作部A12の送信周波数変更ボタンが押下された場合、システムは、最良の送受信周波数を自動探索する動作モードに移行され、中央演算処理部A10は、オーディオ再生装置Aの送信周波数を所定の時間間隔で順次変更し始める。このとき、送信周波数の変更に先立って、その変更内容を示す埋込信号(第1データ信号)がワイヤレススピーカB側に無線送信される点については、先の第1実施形態と同様である。このような送信周波数の順次変更処理は、選択候補となる複数の送信周波数が少なくとも一巡されるまで継続される。
一方、ワイヤレススピーカBでは、オーディオ再生装置A側で送信周波数の順次変更が為される間、先の第1実施形態と同様の信号処理により、自動的にその受信周波数が変更後の送信周波数に逐次合致される。このとき、中央演算処理部B9は、ワイヤレススピーカBの受信周波数毎にディジタル受信アンテナB1a、B1bを順次択一すべく、切換制御部B15に対して指示を送る。
具体的に述べると、中央演算処理部B9は、まず、ディジタル受信アンテナB1aを選択するよう、切換制御部B15に指示を送出する。ディジタル受信アンテナB1aが選択されて無線電波が検出されると、エラー検出部B7及びエラーカウンタB8は、復調部B3で得られるディジタルオーディオ信号のエラー量を検出する。中央演算処理部B9は、当該エラー量に基づいてワイヤレススピーカBの受信状態を検出するとともに、その受信状態を電子情報としてメモリ部B16に格納する。次に、中央演算処理部B9は、ディジタル受信アンテナB1bを選択するよう、切換制御部B15に指示を送り、上記と同様、そのときの受信状態を電子情報としてメモリ部B16に格納する。このようなディジタル受信アンテナの択一動作及び受信状態の検出動作は、その後もワイヤレススピーカBの受信周波数が順次変更される毎に繰り返される。
すなわち、本実施形態のワイヤレススピーカBは、上記した受信周波数の順次変更制御並びにディジタル受信アンテナ部B1a、B1bの順次択一制御により、その受信周波数とディジタル受信アンテナB1a、B1bとの組合わせ毎に、各々の受信状態を逐次電子情報として蓄積していく構成であると言える。
このようにして、選択候補となる受信周波数とディジタル受信アンテナB1a、B1bとの組合わせにつき、全ての受信状態情報が蓄えられると、中央演算処理部B9は、格納された電子情報を比較して最良の組合わせ(すなわち、エラー量が最も少なかった組合わせ)を判断する。そして、中央演算処理部B9は、最良の組合わせであると判断された受信周波数及びディジタル受信アンテナを選択するよう、周波数制御部B6及び切換制御部B15に指示を送る。さらに、中央演算処理部B9は、最良の組合わせであると判断された装置の受信周波数を示した最適周波数データ信号を生成するよう、最適周波数データ信号生成部B17に指示を送る。その結果、FM送信アンテナB12からは、前記最適周波数データ信号がFM電波として空間に放出され、オーディオ再生装置AのFM受信アンテナA1にて、当該FM電波が検出されることになる。
一方、オーディオ再生装置Aの中央演算処理部A10は、先述した通り、FM放送受信部A2で得られる最適周波数データ信号の監視機能を具備しており、送信周波数の順次変更処理完了後にFM放送受信部A2で得られる最適周波数データ信号に基づいて、オーディオ再生装置Aの送信周波数を当該最適周波数データ信号が示すワイヤレススピーカBの変更後の受信周波数に合致させるべく、周波数制御部A9に指示を送る。
上記したように、本実施形態のワイヤレスオーディオシステムにおいて、オーディオ再生装置Aは、装置の送信周波数を順次変更する手段(A9、A10)と、当該順次変更処理の完了後にFM放送受信部A2で得られる最適周波数データ信号に基づいて装置の送信周波数を変更する手段(A9、A10)と、を有して成り、ワイヤレススピーカBは、ディジタル受信アンテナB1a、B1bを装置の受信周波数毎に順次択一する手段(B9、B14、B15)と、ディジタル受信アンテナB1a、B1bが順次択一される毎にディジタルオーディオ信号の受信状況を情報として逐次格納する手段(B9、B16)と、格納された情報を比較して最も受信状況が良好であった装置の受信周波数とディジタル受信アンテナとの組合わせを判断する手段(B9)と、最良の組合わせであると判断された装置の受信周波数及びディジタル受信アンテナを選択する手段(B6、B9、B14、B15)と、最良の組合わせであると判断された装置の受信周波数を示した最適周波数データ信号をFM電波として空間に放出する手段(B9、B11、B12、B17)と、を有して成る構成とされている。
このような構成とすることにより、煩雑な操作を要することなく、最良の受信状態が得られる送受信周波数及びダイバシティアンテナの組合わせを容易に設定することができ、歪やノイズの少ない高品質な音声再生を行うことが可能となる。また、ユーザが送受信周波数の順次変更操作を中途半端に完了してしまうおそれがない上、ユーザの主観に依存することなく受信状態の微妙な優劣が正確に判断されるので、最良の送受信周波数を適切に探索することが可能となる。
なお、本実施形態の説明では、先述したFM送受信周波数の最適化制御について特段言及しなかったが、本実施形態のダイバシティアンテナ選択制御に合わせて、上記FM送受信周波数の最適化制御を行うべきであることは言うまでもない。
また、上記の第1〜第4実施形態では、ISM帯やVHF帯の無線電波を用いて双方向通信を行う構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、他の周波数帯域の無線電波を用いて双方向通信を行う構成としても構わない。
また、本発明の構成は、上記の実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。