JP2006161364A - 堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 土などの調達材料が不要で、簡単な作業で迅速に、しかも、確実に越水による裏法面の浸食を防止できる堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法を得る。
【解決手段】 堤防1の天端3を越えた越水による裏法面7の浸食を防止する堤防決壊防護構造であって、帯状二重シートの周縁が密閉され内部が相互に連通する複数の小部屋23によって区画形成された堤防決壊防護シート100を、長手方向一端が天端3に固定され長手方向他端側が裏法面7に沿うようにして配置し、この堤防決壊防護シート100の小部屋23に水を充填した。
【選択図】 図1
【解決手段】 堤防1の天端3を越えた越水による裏法面7の浸食を防止する堤防決壊防護構造であって、帯状二重シートの周縁が密閉され内部が相互に連通する複数の小部屋23によって区画形成された堤防決壊防護シート100を、長手方向一端が天端3に固定され長手方向他端側が裏法面7に沿うようにして配置し、この堤防決壊防護シート100の小部屋23に水を充填した。
【選択図】 図1
Description
本発明は、河川構造物である堤防の特に裏法面の防護に用いて好適な堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法に関する。
河川などの堤防は、一般に、図4に示すように、堤防1の平坦な最頂上面である天端3、その天端3からなだらかに下方に傾斜する面からなる表法面5、裏法面7、その法面5,7の途中に設けた比較的狭い平坦面からなる小段9,11、表法面5の麓に設けた比較的広い平坦部からなる高水敷13、さらに、高水敷13の端部から下方に傾斜する低水河岸15から構成される。低水河岸15の高さは、河川が通常の流水量で流れている場合に、流水17が低水河岸15の上端を越えないように設計されている。
ところで、台風や大雨によって不測の流水が河川へ流れ込むと、堤防1の天端3を水が越える越水の発生することがある。河川構造物である堤防1では、一般的に表法面5がコンクリート、コンクリート製ブロック、石材などによって補強され、浸食に対しては保護されている。一方、河川側とは反対側の裏法面7は、施工コストなどによる経済性の観点、また、美観を損なうという景観的な観点から張芝などの植生を敷き詰め、表面を保護する工法が採られている。また、堤防中間の地中に、コンクリート製の壁状の構造物、遮水壁を埋設し、堤防の決壊に対する強度を高めた構造もある。
越水が生じた場合の対策としては、一般的に、シート(所謂ブルーシート)を裏法面に拡げ、このブルーシートの上端に土嚢を載置して固定することで、裏法面7の越水による浸食を防止している。
また、下記特許文献1に開示される堤防の保護工法では、堤防1の土壌上に不織布層を設け、その上に植物、例えば、芝生を植生して、植物の根が不織布層を貫通して堤体土砂内部に張り巡らされるようにしている。これにより、降水時の雨水を堤防内部に侵入し難くし、堤防1を軟弱化させず、堤防1の裏法面7などが洪水時に激しい越水に晒されても流出しないようにし、通常は自然の堤体と同様の美観を有するようになされている。
さらに、下記特許文献2に開示される侵食防止用マットでは、熱可塑性樹脂製のテープを格子状に織った基布ネットの片面に、熱可塑性樹脂製のテープが、レベルループを形成して取り付けられている。この侵食防止用マットによれば、堤防1の裏法面7などを緑化しながら流水による侵食を防止でき、植生の流失に危険がなく、施工費用が嵩まず、良好な美観が得られるようになされている。
特許第2587741号公報
特開2001−254330号公報
しかしながら、ブルーシートを拡げ、天端で土嚢を載置する工法では、土嚢を構成する袋内部に充填する土を調達するのが困難であるとともに、土嚢作りの作業や、杭打ちとの併用、土嚢の目留め作業を短時間内に集中して遂行することは多大な労力を要し、緊急事態での対処が困難であった。そして、ブルーシートは、裏法面への固定が十分に行い難いため、越水によって捲れやすく、十分な遮水性を確保することができなかった。
また、特許文献1に開示される堤防の保護工法では、不織布の繊維密度が大きいために、不織布の層上で植生した植物の根が、堤体土に達し難く、洪水などの場合、越水により不織布の層上で植生した植物の流失、及び堤防の表面に敷設した不織布が剥がされて流失する恐れがあった。
さらに、特許文献2に開示される侵食防止用マットは、レベルループの間に土砂を充填しやすく、植生する植物の根も基布ネットに設けられた穴部を通って堤体土に達し易いものの、裏法面自体が植物と共に越水に晒されることには変わりなく、越水による浸水が長時間に及べば、植物と共に基布ネットも流失し、浸食することとなった。
以上のような状況により、越水によって裏法面が浸食され、徐々に裏法面が崩壊すると、盛土体積が徐々に減少していき、本来、盛土全体によって支えられている表法面の支持がなくなり、堤防は一気に決壊した。このことから、越水時には、特に裏法面の浸食防止が重要な課題となっていた。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、土などの調達材料が現場にて不要とされ、簡単な作業で迅速に、しかも、確実に越水による裏法面の浸食を防止できる堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法を提供することにある。
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の堤防決壊防護構造は、堤防1の天端3を越えた越水による該堤防1の裏法面7の浸食を防止する堤防決壊防護構造であって、帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋23によって区画形成された堤防決壊防護シート100を、長手方向一端が天端3に固定され長手方向他端側が裏法面7に沿うようにして配置し、該堤防決壊防護シート100の前記小部屋23に水を充填したことを特徴とする。
本発明の請求項1記載の堤防決壊防護構造は、堤防1の天端3を越えた越水による該堤防1の裏法面7の浸食を防止する堤防決壊防護構造であって、帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋23によって区画形成された堤防決壊防護シート100を、長手方向一端が天端3に固定され長手方向他端側が裏法面7に沿うようにして配置し、該堤防決壊防護シート100の前記小部屋23に水を充填したことを特徴とする。
この堤防決壊防護構造では、堤防決壊防護シート100に水が充填されると、二重シートが重量の増したクッション体となり、このクッション性によって裏法面7の起伏が吸収され、また、裏法面7が堤防決壊防護シート100にて覆われ、この堤防決壊防護シート100の荷重によって密着状態で押さえられることになる。なお、複数の小部屋23を、内部が相互に連通する構成としてもよく、その場合、水の充填時には、各小部屋23を連通する連通孔21にて水が順次行き渡るようになる。
請求項2記載の堤防決壊防護構造は、複数の前記堤防決壊防護シート100が隣接して配置され、隣接する該堤防決壊防護シート100の長手方向に延在する隣接縁同士を重ね合わせ、該隣接縁同士が係着解除可能な連結手段によって接続されたことを特徴とする。
この堤防決壊防護構造では、隣接する堤防決壊防護シート100の隣接縁同士が連結手段によって接続されることで、複数の堤防決壊防護シート100が大面積の一つの堤防決壊防護シート100となって、裏法面7が広く覆われることとなり、越水による捲れが阻止され、堤防決壊防護シート間の遮水性能が高まる。
請求項3記載の堤防決壊防護構造は、シート材からなり両端を密閉したチューブ状に形成されて前記天端3の長手方向に沿って延在し、前記天端3に移動不能に固定されかつ内部に水が充填されて前記堤防決壊防護シート100の上端に載置されるウォータチューブ41を備えたことを特徴とする。
この堤防決壊防護構造では、ウォータチューブ41に水が注入されると、このウォータチューブ41が膨張し、天端位置が上昇、すなわち越水までの高さを増加させることができる。また、充填した水の荷重により、堤防決壊防護シート100の上端が天端により確実に密着する。
請求項4記載の堤防決壊防護シート100は、堤防1の天端3を越えた越水による該堤防の裏法面7の浸食を防止する堤防決壊防護シート100であって、帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋23によって区画形成され、前記小部屋23に対する注水及び排水のための水栓25が少なくとも長手方向の両端に設けられたことを特徴とする。
この堤防決壊防護シート100では、二重シートの内部が複数の小部屋23によって区画されることで、小部屋23を形成する隔壁が例えば所定の間隔ごとに二重シートを繋ぎ止める構造となり、充填水の水圧による膨張強度が高められる。また、水の注入によって所定厚のクッション体となり、さらに、面状に拡がって略均等に法面を抑えるので、従来のブルーシートに比べ高い安定性が得られる。
請求項5記載の堤防決壊防護シート100は、前記シートの材質が、繊維補強樹脂シートであることを特徴とする。
この堤防決壊防護シート100では、シート自身の引っ張り強度が高まり、注水時における水圧によるシート素材の伸びが小さくなる。
請求項6記載の堤防決壊防護シート100は、前記シートの材質が、ネットを編み込んだ補強樹脂シートであることを特徴とする。
この堤防決壊防護シート100では、シート自身の引っ張り強度が高まり、注水時における水圧によるシート素材の伸びが小さくなる。
請求項7記載の堤防決壊防護シート100の敷設方法は、請求項4記載の堤防決壊防護シート100の敷設方法であって、巻回した堤防決壊防護シート100の外周一端側を堤防1の天端3に固定し、該巻回体を天端3から回転させながら裏法面7へ展開させ、前記堤防1の堤外地35の水をくみ上げて前記堤防決壊防護シート100の前記小部屋23へ注水することを特徴とする。
この堤防決壊防護シート100の敷設方法では、一端が天端3に固定された巻回体が裏法面7の勾配に沿って転がされることで、巻回体が回転しながら自ら展開することになり、展開作業の省力化が可能となる。また、充填材が水なので、河川から容易に汲み上げることができ、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。
請求項8記載の堤防決壊防護シート100の敷設方法は、請求項4記載の堤防決壊防護シート100の敷設方法であって、巻回した堤防決壊防護シート100の外周一端側を堤防1の天端3に固定し、前記堤防1の堤外地35の水をくみ上げて前記堤防決壊防護シート100の前記小部屋23へ注水することにより、該巻回体を天端3から回転させながら裏法面7へ展開させることを特徴とする。
この堤防決壊防護シート100の敷設方法では、くみ上げられ注水される水によって、一端が天端3に固定された巻回体が、裏法面7の勾配に沿って水の重さが加わりながら展開し転がされることで、巻回体が回転しながら自ら展開することになり、展開作業の省力化が可能となる。また、充填材が水なので、河川から容易に汲み上げることができ、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。
本発明に係る請求項1記載の堤防決壊防護構造によれば、帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋によって区画形成された堤防決壊防護シートを、長手方向一端が天端に固定され長手方向他端側が裏法面に沿うようにして配置し、堤防決壊防護シートの小部屋に水を充填したので、重量の増したクッション体で、起伏を吸収しながら密着状態で裏法面を覆い押さえることができ、越水を堤防決壊防護シートの上面へと流し、越水による裏法面の浸食を防止することができる。
請求項2記載の堤防決壊防護構造によれば、複数の堤防決壊防護シートを隣接配置し、隣接する堤防決壊防護シートの長手方向に延在する隣接縁同士を重ね合わせ、隣接縁同士を係着解除可能な連結手段によって接続したので、堤防決壊防護シート間の遮水性能が高まり、裏法面を広く覆うこととなり、堤防決壊防護シートと裏法面との間への越水の進入を低減させることができる。
請求項3記載の堤防決壊防護構造によれば、シート材からなり両端を密閉したチューブ状に形成されて天端の長手方向に沿って延在し、天端に移動不能に固定されかつ内部に水が充填されて堤防決壊防護シートの上端に載置されるウォータチューブを備えたので、ウォータチューブが膨張することにより、天端位置が上昇し、越水の発生を遅延させることができるとともに、充填した水の荷重により、堤防決壊防護シートの上端を天端に密着させて、堤防決壊防護シートと裏法面との間への水の進入をより確実に阻止することができる。
請求項4記載の堤防決壊防護シートによれば、帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋によって区画形成され、小部屋に対する注水及び排水のための水栓が少なくとも長手方向の両端に設けらているので、区画を形成する隔壁状部分が二重シートを繋ぎ止め、充填水の水圧による膨張強度を高めることができ、注水可能な大面積の二重シート構造を形成することができる。
請求項5記載の堤防決壊防護シートによれば、シートの材質が、繊維補強樹脂シートからなるので、複数の小部屋による区画構造に加え、シート自身の強度も高まり、注水時における水圧による破裂を防止することができる。
請求項6記載の堤防決壊防護シートによれば、シートの材質が、ネットを編み込んだ補強樹脂シートからなるので、複数の小部屋による区画構造に加え、シート自身の強度も高まり、注水時における水圧による破裂を防止することができる。
請求項7記載の堤防決壊防護シートの敷設方法によれば、巻回した堤防決壊防護シートの外周一端側を堤防の天端に固定し、巻回体を天端から回転させながら裏法面へ展開させ、堤防の堤外地の水をくみ上げて堤防決壊防護シートの小部屋へ注水するので、巻回体を裏法面の勾配に沿って転がすことで、容易な展開が可能となり、かつ河川の水を注入することにより、最終形状への展開も可能となる。また、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。この結果、越水の生じる虞のある緊急時に、簡単な作業でかつ確実にしかも迅速に堤防決壊防護作業を行うことができる。
請求項8記載の堤防決壊防護シートの敷設方法によれば、くみ上げられ注水される水によって、一端が天端に固定された巻回体が、裏法面の勾配に沿って水の重さが加わりながら展開し転がされることで、巻回体が回転しながら自ら展開することになり、展開作業の省力化が可能となる。また、充填材が水なので、河川から容易に汲み上げることができ、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。
以下、本発明に係る堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る堤防決壊防護構造の縦断面図、図2は図1に用いられる堤防決壊防護シートの斜視図である。なお、図4に示した部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
本実施の携帯による堤防決壊防護構造では、堤防1の裏法面5に、堤防決壊防護シート100が敷設される。この堤防決壊防護シート100は、内部に水が充填され、堤防1の天端3を越えた越水による裏法面7の浸食を防止するように働く。また、堤防決壊防護シート100は、常設ではなく、緊急時、非常時のみ敷設される。使用後は撤去され、再利用される。
図1は本発明に係る堤防決壊防護構造の縦断面図、図2は図1に用いられる堤防決壊防護シートの斜視図である。なお、図4に示した部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
本実施の携帯による堤防決壊防護構造では、堤防1の裏法面5に、堤防決壊防護シート100が敷設される。この堤防決壊防護シート100は、内部に水が充填され、堤防1の天端3を越えた越水による裏法面7の浸食を防止するように働く。また、堤防決壊防護シート100は、常設ではなく、緊急時、非常時のみ敷設される。使用後は撤去され、再利用される。
堤防決壊防護シート100は、巻き取って、或いは、蛇腹状の折り畳んで収納される。したがって、人力によって容易に巻き取りや折り畳みの可能な大きさであることが望ましい。具体的には、長手方向の長さ(法面に沿う長さ)が約20m程度で、幅が2〜2.5m程度の帯状が好適となる。なお、後述するように、堤防決壊防護シート100は、複数枚が幅方向に連結されて法面を覆うことになる。
堤防決壊防護シート100は、図2に示すように、帯状二重シートの周縁が密閉されて、内部に中空を有する袋体となる。堤防決壊防護シート100の内部は、複数の小部屋(セル)23によって区画形成されている。
本実施の形態では、複数の小部屋(セル)23は、連通孔21にて相互に連通して構成され区画形成されている。なお、図2には堤防決壊防護シート100の一部分を表しているため、長手方向に沿う両端面に連通孔21が設けられているが、単体の堤防決壊防護シート100では、両端面が密閉される。図例では小部屋23が縦横にマトリクス状に配列されるが所定間隔で小部屋23が間引かれる例えば千鳥状の配列としてもよい。また、図例では四角形の小部屋23を示したが、小部屋23は、この他、五角形、六角形、八角形などの多角形であってもよく、この場合、四角形に比べてより多彩な間引き構造が可能となる。さらに、各小部屋23を連通しない独立した空間として構成としてもよい。
堤防決壊防護シート100の材質は、可搬性を容易とするために軽いことが好ましい。但し、軽すぎると越水時に浮いてしまい、遮水性の低下する虞があるため、比重が1以上で、水よりも比重が大きく、可搬性の低下しない程度の重量を有する材質が好適となる。
堤防決壊防護シート100には、小部屋23に対する注水及び排水のための水栓25が少なくとも長手方向の両端に設けられている。図2には下端の水栓25のみを示している。堤防決壊防護シート100のシート厚は、軽量化するために薄いことが好ましいが、強度との兼ね合いで、例えば0.5〜1mm程度が適当となる。
堤防決壊防護シート100のシート素材としては、繊維補強樹脂シートを好適に用いることができる。繊維補強樹脂シートとしては、例えばガラス繊維や、ポリエステル繊維を混入した樹脂シート素材とすることができる。また、シート素材は、ネットを編み込んだ補強樹脂シート、例えばクロスやネットをベースとした樹脂シート材であってもよい。さらに、シート素材は、織布に樹脂シートをラミネート加工したものであってもよい。
シート素材が、このような繊維補強樹脂シート、ネットを編み込んだ補強樹脂シート、或いはラミネートシートからなることで、シート自身の引っ張り強度が高まる。堤防決壊防護シート100は、裏法面7に敷設されるため、裏法面7の高低差によって、注水時、最下部に大きな水圧(全水頭;total head)が作用する。シート素材に繊維補強樹脂シートを用いることで、注水時における水圧によるシート素材の伸びが小さくなる。これにより、複数の小部屋21による区画構造に加え、シート自身の強度も高まり、注水時における水圧による破裂が防止されている。
また、堤防決壊防護シート100は、長手方向を複数(例えば、上中下段の3つ程度)の注水遮断区画で仕切り、それぞれの区画ごとに注水を行う構造としてもよい。この場合、注水は、裏法面7の勾配方向の上段、中段、下段の3カ所で行われることとなる。このような注水遮断区画を設けることで、天端3から堤内地27までの全水圧が、最下段の小部屋23に集中することをなくし、過剰水圧による小部屋23の破裂を効果的に防止することができる。また、各小部屋23をそれぞれ独立した空間構造とした場合には、それぞれに注水を行う構成とする。
堤防決壊防護シート100は、複数のものが幅方向に隣接して配置され、隣接する堤防決壊防護シート100の長手方向に延在する隣接縁同士を重ね合わせて敷設される。この隣接縁同士には、係着解除可能な図示しない連結手段が設けられている。隣接縁同士は、この連結手段によって、互いが離れないように連結される。係着解除可能な連結手段としては、例えば面ファスナー、ファスナー、はとめリングとロープの締結構造、マグネットなどを挙げることができる。なお、この場合の連結手段は、目的が流水による浸食防止であるため、水密性はさほど重要とならず、シート100同士が連結状態を保てればよい。
このようにして、隣接する堤防決壊防護シート100の隣接縁同士が連結手段によって接続されることで、複数の堤防決壊防護シート100が大面積の一つの堤防決壊防護シートとなって、越水による捲れが阻止される。これにより、堤防決壊防護シート100同士間の遮水性能が高まり、高堤防決壊防護シート100と裏法面7との間への越水の進入を低減させることができる。
したがって、このように構成される堤防決壊防護シート100によれば、二重シートの内部が複数の小部屋23によって区画されることで、小部屋23を形成する隔壁が所定間隔ごとに二重シートを繋ぎ止める構造となり、充填水の水圧による膨張強度が高められる。また、水の注入によって所定厚のクッション体となるので、従来のブルーシートに比べ敷設時に高い安定性が得られる。この結果、注水可能な大面積の二重シート構造を形成することができる。
そして、堤防決壊防護構造では、このように構成される堤防決壊防護シート100の長手方向一端を、天端3に固定し、長手方向他端側を裏法面7に沿うようにして配置して、小部屋23に水を充填するので、二重シートが重量の増したクッション体となり、このクッション性によって裏法面7の起伏が吸収され、裏法面7が堤防決壊防護シート100の荷重によって密着状態で押さえられることになる。したがって、越水を堤防決壊防護シート100の上面へと流し、越水による裏法面7の浸食を確実に防止することができる。
次に、堤防決壊防護シート100の敷設方法を説明する。
堤防決壊防護シート100は、不使用時、巻回状態で複数個が保管場所に収納される。一方、越水の可能性が生じた場合、堤防決壊防護シート100は巻回状態のまま運搬され、堤防1の天端3に搬入される。天端3に搬入された堤防決壊防護シート100は、外周一端側が、アンカー29によって固定される。
堤防決壊防護シート100は、不使用時、巻回状態で複数個が保管場所に収納される。一方、越水の可能性が生じた場合、堤防決壊防護シート100は巻回状態のまま運搬され、堤防1の天端3に搬入される。天端3に搬入された堤防決壊防護シート100は、外周一端側が、アンカー29によって固定される。
次いで、巻回体を天端3から裏法面7の勾配方向に回転させながら展開させ、裏法面7の下端までを覆う。同様にして、複数の堤防決壊防護シート100を、順次隣接させながら、連結手段によって連結して展開させる。このようにして、裏法面7の所定範囲を複数の連結された堤防決壊防護シート100で覆った後、ポンプ31を堤外地35の河川に投入し、ポンプ31により汲み上げた水を、堤防決壊防護シート100の上端水栓25に注水する。
これにより、水は、シート内の上部小部屋23から順次下方の小部屋23へと流入していく。堤防決壊防護シート100は、注入水による圧力で、さらに拡がり、人手によらず、最終形状まで展開して裏法面7を覆うことになる。膨張して所定厚となった堤防決壊防護シート100は、クッション体となり、従来のブルーシートに比べ高い安定性を有して裏法面7を覆って敷設される。
そして、水位の上昇によって天端3を越えた越水は、その殆どが堤防決壊防護シート100の上面を流れ落ち、堤内地27側に設けられた排水溝37等の排水処理設備によって排水されることとなる。その結果、越水によって裏法面7、特に法肩の浸食されることがなくなり、堤防1は盛土が確実に保護され、盛土消失による決壊を防止することができる。
この堤防決壊防護構造では、河川の水位が下がったなら、堤防決壊防護シート100の下端側の水栓25を開放し、小部屋23に充填した水を堤内地27側の排水溝37等へと排水する。充填水の排水された堤防決壊防護シート100は、天端3との固定を解除した後、天端3側より裏法面7の勾配方向へ転がしながら巻き取る。堤防決壊防護シート100は、この巻回体のまま保管場所へと運搬され、次の使用時に備えて保管されることとなる。
この堤防決壊防護シートの敷設方法では、一端が天端3に固定された巻回体が裏法面7の勾配に沿って転がされることで、巻回体が回転しながら自ら展開することになり、展開作業の省力化が可能となる。また、充填材が水なので、河川から容易に汲み上げることができ、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。特に災害の発生中に土の調達を行うことは困難であるが、本発明の敷設方法ではポンプ31による水の汲み上げで構成可能となり、容易に決壊防護の構造を構築可能となる。
したがって、この堤防決壊防護シートの敷設方法によれば、巻回した堤防決壊防護シート100の外周一端側を堤防1の天端3に固定し、巻回体を天端から回転させながら裏法面7へ展開させ、堤防1の堤外地の水をくみ上げて堤防決壊防護シート100の小部屋23へ注水するので、巻回体を裏法面7の勾配に沿って転がすことで、容易な展開が可能となり、かつ河川の水を注入することにより、最終形状への展開も可能となる。また、土嚢を積む場合のような土の調達も不要となる。この結果、越水の生じる虞のある緊急時に、簡単な作業でかつ確実にしかも迅速に堤防決壊防護作業を行うことができる。
また、上記敷設方法に他に、巻回した堤防決壊防護シート100の外周一端側を堤防1の天端3に固定して、堤防1の堤外地35の水をくみ上げ、堤防決壊防護シート100の小部屋23へ注水することにより、巻回体を天端3から回転させながら裏法面7へ展開させることとしてもよく、この方法では、くみ上げられて小部屋23に注水される水によって、巻回体が、裏法面7の勾配に沿って、水の重さが加わりながら、すなわち水の重みと小部屋23に水が充填されることで展開し転がされることとなり、勾配を回転しながら自ら展開するようになる。このことから、展開作業の省力化が可能となる。
次に、上記した堤防決壊防護構造の変形例を説明する。
図3は図1に示した堤防決壊防護構造の変形例を表す断面図である。
この変形例では、シート材からなり両端を密閉したチューブ状に形成されたウォータチューブ41が用いられる。ウォータチューブ41は、天端3の長手方向に沿って延在するように配置される。すなわち、ウォータチューブ41は、天端3に移動不能に固定され、かつ内部に水が充填されて堤防決壊防護シート100の上端に載置される。
図3は図1に示した堤防決壊防護構造の変形例を表す断面図である。
この変形例では、シート材からなり両端を密閉したチューブ状に形成されたウォータチューブ41が用いられる。ウォータチューブ41は、天端3の長手方向に沿って延在するように配置される。すなわち、ウォータチューブ41は、天端3に移動不能に固定され、かつ内部に水が充填されて堤防決壊防護シート100の上端に載置される。
ウォータチューブ41を設置する場合、天端3には表法面5を覆う短尺の堤防決壊防護シート100aを設けてもよい。この場合、堤防決壊防護シート100と、短尺の堤防決壊防護シート100aとは、上記と同様の連結手段によって上辺部同士を連結する。ウォータチューブ41は、この天端3におけるシート100,100a同士の連結部に載置することが好ましい。これにより、短尺の堤防決壊防護シート100aによって表法面5における法肩の浸食が防止できるとともに、シート100,100aと法面5、7との間の越水の侵入をより効果的に防止することができるようになる。
さらに、ウォータチューブ41に水が注入されると、このウォータチューブ41が膨張し、天端位置が上昇する。また、充填した水の荷重により、堤防決壊防護シート100、短尺の堤防決壊防護シート100aの上端が天端3に確実に密着する。
したがって、このようなウォータチューブ41を設けた堤防決壊防護構造によれば、ウォータチューブ41が膨張することにより、天端位置が上昇し、越水の発生を遅延させることができるとともに、充填した水の荷重により、堤防決壊防護シート100,100aの上端を天端3に密着させて、堤防決壊防護シート100,100aと裏法面5,7との間への水の進入をより確実に阻止することができる。
なお、上記の実施の形態では、堤防決壊防護構造及び堤防決壊防護シート並びにその敷設方法が河川構造物である堤防に適用された例を説明したが、本発明は、この他、同様の機能の要求される場所、例えば海での護岸堤防などにも適用可能なものである。
1…堤防
3…天端
7…裏法面
23…小部屋
25…水栓
35…堤外地
41…ウォータチューブ
100…堤防決壊防護シート
3…天端
7…裏法面
23…小部屋
25…水栓
35…堤外地
41…ウォータチューブ
100…堤防決壊防護シート
Claims (8)
- 堤防の天端を越えた越水による該堤防の裏法面の浸食を防止する堤防決壊防護構造であって、
帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋によって区画形成された堤防決壊防護シートを、長手方向一端が天端に固定され長手方向他端側が裏法面に沿うようにして配置し、
該堤防決壊防護シートの前記小部屋に水を充填したことを特徴とする堤防決壊防護構造。 - 複数の前記堤防決壊防護シートが隣接して配置され、
隣接する該堤防決壊防護シートの長手方向に延在する隣接縁同士を重ね合わせ、
該隣接縁同士が係着解除可能な連結手段によって接続されたことを特徴とする請求項1記載の堤防決壊防護構造。 - シート材からなり両端を密閉したチューブ状に形成されて前記天端の長手方向に沿って延在し、前記天端に移動不能に固定されかつ内部に水が充填されて前記堤防決壊防護シートの上端に載置されるウォータチューブを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の堤防決壊防護構造。
- 堤防の天端を越えた越水による該堤防の裏法面の浸食を防止する堤防決壊防護シートであって、
帯状二重シートの周縁が密閉された複数の小部屋によって区画形成され、
前記小部屋に対する注水及び排水のための水栓が少なくとも長手方向の両端に設けられたことを特徴とする堤防決壊防護シート。 - 前記シートの材質が、繊維補強樹脂シートであることを特徴とする請求項4記載の堤防決壊防護シート。
- 前記シートの材質が、ネットを編み込んだ補強樹脂シートであることを特徴とする請求項4記載の堤防決壊防護シート。
- 請求項4記載の堤防決壊防護シートの敷設方法であって、
巻回した堤防決壊防護シートの外周一端側を堤防の天端に固定し、
該巻回体を天端から回転させながら裏法面へ展開させ、
前記堤防の堤外地の水をくみ上げて前記堤防決壊防護シートの前記小部屋へ注水することを特徴とする堤防決壊防護シートの敷設方法。 - 請求項4記載の堤防決壊防護シートの敷設方法であって、
巻回した堤防決壊防護シートの外周一端側を堤防の天端に固定し、
前記堤防の堤外地の水をくみ上げて前記堤防決壊防護シートの前記小部屋へ注水することにより、該巻回体を天端から回転させながら裏法面へ展開させることを特徴とする堤防決壊防護シートの敷設方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2004
- 2004-12-06 JP JP2004352996A patent/JP2006161364A/ja active Pending
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