JP2006159307A - 回転工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 回転工具における噛み合いクラッチの摩耗部品に関する交換時間の短縮化と補修に費やすコストの低減を図る上で有効な技術を提供する。
【解決手段】 回転工具は、モータ111、工具ビット119、モータと工具ビットとの間で回転力を断続する噛み合いクラッチ131を有する。噛み合いクラッチは、モータによって回転駆動される駆動回転部134および当該駆動回転部と一体に回転する駆動クラッチ部133を有する駆動側回転体と、工具ビットを着脱自在に保持するビット保持部117および当該ビット保持部と一体に回転する被動クラッチ部135を有する被動側回転体と、を有する。駆動側回転体は、軸方向において駆動回転部134と駆動クラッチ部133とに分割されるとともに、駆動クラッチ部が駆動回転部に着脱自在に装着され、被動側回転体は、軸方向においてビット保持部117と被動クラッチ部135とに分割されるとともに、被動クラッチ部がビット保持部に着脱自在に装着される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、モータの回転力を工具ビットに伝達し、あるいは当該回転力の伝達を遮断する噛み合いクラッチを有する回転工具に関する。
従来、噛み合いクラッチを有する回転工具として、例えば特開2000−246657号公報(特許文献1)には、ネジの締付け作業に用いられる電動スクリュドライバが開示されている。特許文献1に開示された電動スクリュドライバにおいては、モータによって駆動ギアを介して駆動される駆動側クラッチ部材に対し、スピンドルと一体に回転する被動側クラッチ部材を対向状に配置し、ねじ締め作業時において、ドライバビットを被加工材に押し付けて当該スピンドルとともに被動側クラッチ部材を駆動側クラッチ部材側へと移動(後退)させて両クラッチ部材のクラッチ歯を互いに噛み合い係合させ、これによってスピンドル先端部に保持されたドライバビットを回転駆動する構成である。
上記のような噛み合いクラッチを有する電動スクリュドライバにおいては、モータの回転力をドライバビットに伝達する動力伝達系の構成要素のうち、互いに噛み合い係合動作と噛み合い係合解除動作とを繰り返し行う駆動側および被動側のクラッチ歯は、他の構成要素に比べた場合、摩耗が最も激しく、早期に交換の必要に迫られる。そしてクラッチ歯として本来の機能を果たし得ないほどに摩耗が進行したときは、これを新しいものに交換することで噛み合いクラッチを補修することになる。従来の電動スクリュドライバでは、駆動側のクラッチ部材が駆動ギアと一体部品として設定されており、また従動側のクラッチ部材がスピンドルと一体部品として設定されている。このため、クラッチ歯の摩耗が進行した場合には、摩耗や破損のない部品までをも消耗部品として交換する状況が不可避であり、結果的に補修費が嵩むとともに、交換のための所要時間が長くかかるといったことになり、この点においてなお改良の余地がある。
特開2000−246657号公報
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、回転工具における噛み合いクラッチの摩耗部品に関する交換時間の短縮化と補修に費やすコストの低減を図る上で有効な技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、各請求項に記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、モータと、工具ビットと、モータの回転力を工具ビットに伝達し、あるいは当該回転力の伝達を遮断する噛み合いクラッチと、を有する回転工具が構成される。噛み合いクラッチは、モータによって回転駆動される駆動回転部および当該駆動回転部と一体に回転する駆動クラッチ部を有する駆動側回転体と、工具ビットを着脱自在に保持するビット保持部および当該ビット保持部と一体に回転する被動クラッチ部を有する被動側回転体と、を有する。そして駆動側回転体と被動側回転体は、駆動クラッチ部と被動クラッチ部が互いに対向するように同一軸線上に配置されるとともに、互いに接近する方向に相対移動して駆動クラッチ部と被動クラッチ部とを噛み合い係合することでモータの回転力を工具ビットに伝達し、また互いに離間する方向に相対移動して駆動クラッチ部と被動クラッチ部との噛み合い係合を解除することで当該回転力の伝達を遮断する構成とされている。本発明における「回転工具」としては、典型的には、工具ビットが周方向に回転動作することでネジの締付け作業を行う電動スクリュドライバがこれに該当するが、これに限らず、モータと工具ビットとの間で、回転力を断続する噛み合いクラッチを有する回転工具であれば、広く適用することが可能である。また本発明における「駆動回転部」としては、典型的には、モータの回転速度を減速する手段の1つとして備えられる駆動ギアがこれに該当し、さらに「ビット保持部」としては、典型的には、工具ビットの保持機能を有するとともに、工具本体部に対して軸方向に摺動自在に支持される回転軸がこれに該当する。
本発明においては、駆動側回転体は、軸方向において駆動回転部と駆動クラッチ部とに分割されるとともに、駆動クラッチ部が駆動回転部に対し一体回転し得るように着脱自在に装着され、また被動側回転体は、軸方向においてビット保持部と被動クラッチ部とに分割されるとともに、被動クラッチ部がビット保持部に対し一体回転し得るように着脱自在に装着された構成とされる。本発明における「一体回転し得るように着脱自在に装着される」態様としては、駆動回転部と駆動クラッチ部につき、あるいはビット保持部と被動クラッチ部につき、互いに遊嵌状に嵌合する嵌合部間に鋼球を介在することによって一体回転可能に装着する態様、あるいは溝を有する軸部とそれに対応する形状の穴とを嵌め合わせる、いわゆるスプライン嵌合によって一体回転可能に装着する態様、あるいは互いに遊嵌状に嵌合する嵌合部間にキーを介在することによって一体回転可能に装着する態様、さらにはネジやピンによって一体回転可能に装着する態様等を広く包含する。
本発明によれば、噛み合いクラッチの構成要素のうち、駆動クラッチ部および被動クラッチ部につき、これらを駆動回転部あるいはビット保持部に対して着脱自在に装着する構成としている。このため、駆動クラッチ部および被動クラッチ部の摩耗が進行したときは、それらを交換することによって噛み合いクラッチを補修することが可能とされる。これにより、駆動クラッチ部から分割された駆動回転部、および被動クラッチ部から分割されたビット保持部については、これを継続して使用することが可能となり、また補修のための交換すべき消耗部品数が減少することに伴い交換作業時間も減少し、結果として補修費の低減を図ることができる。また駆動クラッチ部および被動クラッチ部をそれぞれ分割構造としたことで、両クラッチ部相互の芯ずれ、あるいは傾き等を、駆動回転部あるいはビット保持部に対する装着部位において吸収することが可能とされる。このため、クラッチ部相互間の噛み合いが均等になり、結果的にクラッチ寿命を延ばすことができる。更には分割構造とすることで、消耗部分であるクラッチ部がコンパクト化される。その結果、金属射出成形焼結法による安価な製造方法での製造を選択することが可能とされ、コストダウンに有効とされる。
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の回転工具において、駆動クラッチ部と被動クラッチ部との間には、当該駆動クラッチ部と被動クラッチ部の噛み合い係合を解除する方向に付勢力を作用する付勢バネが圧縮状態で介在され、当該付勢バネは、駆動クラッチ部を駆動回転部に押圧するとともに被動クラッチ部をビット保持部に押圧し、これにより駆動クラッチ部および被動クラッチ部をそれぞれ装着位置に保持する構成としている。なお「付勢バネ」としては、典型的には、圧縮コイルバネがこれに該当する。本発明によれば、駆動クラッチ部と被動クラッチ部の噛み合い係合を解除するべく作用する付勢バネの付勢力を利用して、駆動クラッチ部および被動クラッチ部をそれぞれ装着位置に保持する構成としている、このため、駆動クラッチ部および被動クラッチ部を装着位置に固定するための部材を別個に設ける必要がなくなり、その結果、部品点数を減少できるとともに、駆動クラッチ部および被動クラッチ部を組付ける際、あるいは交換する際の手間を省くことができ、作業性が向上する。
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の回転工具において、駆動回転部と駆動クラッチ部、およびビット保持部と被動クラッチ部は、それぞれが互いに遊嵌状に嵌り合う軸方向の嵌合部を有するとともに、それら各嵌合部の嵌合面間に介在された鋼球を介して一体に回転するように装着された構成とされる。かかる構成によれば、簡単な構造でありながら、駆動回転部と駆動クラッチ部とにつき、およびビット保持部と被動クラッチ部とにつき、それぞれ周方向のガタツキを伴うことなく円滑に回転させることができる。
本発明によれば、回転工具における噛み合いクラッチの摩耗部品に関する交換時間の短縮化と補修に費やすコストの低減を図る上で有効な技術が提供されることとなった。
以下、本発明の実施の形態につき、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、回転工具の一例として電動スクリュドライバを用いて説明する。図1には電動スクリュドライバ101の全体構成が示されている。本実施の形態に係る電動スクリュドライバ101は、概括的に見て、本体部103、当該本体部103の先端領域(図示右側)にスピンドル117を介して着脱自在に取付けられたドライバビット119、本体部103におけるドライバビット119の反対側に連接されたハンドグリップ109を主体として構成される。ドライバビット119は、本発明における「工具ビット」に対応する。なお本実施の形態では、説明の便宜上、ドライバビット119側を前側とし、ハンドグリップ109側を後側とする。
本体部103は、駆動モータ111を収容するモータハウジング105と、駆動モータ111の回転出力をスピンドル117に伝達し、あるいは回転出力の伝達を遮断する噛み合いクラッチ131を収容するクラッチハウジング107を主体にして構成される。駆動モータ111は、ハンドグリップ109に設けたトリガ121を引き操作することで通電駆動され、トリガ121の引き操作を解除することで停止する。この駆動モータ111は、本発明における「モータ」に対応する。
噛み合いクラッチ131の詳細な構成が図2および図3に示される。図2には組付け状態が示され、図3には分解状態が示される。噛み合いクラッチ131は、駆動モータ111によって回転駆動される駆動ギア134、当該駆動ギア134と一体に回転される駆動側クラッチ部材133、ドライバビット119を保持するスピンドル117、当該スピンドル117に設けられたスピンドル側クラッチ部材135を主体にして構成されており、それら全てが同一軸線上に配置されている。駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133により本発明における「駆動側回転体」が構成され、スピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135により本発明における「被動側回転体」が構成される。駆動ギア134は、本発明における「駆動回転部」に対応し、駆動側クラッチ部材133は、本発明における「駆動クラッチ部」に対応する。またスピンドル117は、本発明における「ビット保持部」に対応し、スピンドル側クラッチ部材135は、本発明における「被動クラッチ部」に対応する。駆動側クラッチ体133とスピンドル側クラッチ体135は、互いに対向して同軸上に配置されるとともに、対向面側に互いに噛み合い係合可能なクラッチ歯133a,135aを有する。
噛み合いクラッチ131は、概略的には、被加工材(図示省略)にネジSを締付けるべくスピンドル117に保持されたドライバビット119がネジSを介して被加工材に押し付けられた負荷時には、スピンドル側クラッチ部材135のクラッチ歯135aが駆動側クラッチ部材133のクラッチ歯133aに噛み合い係合し、ドライバビット119が押し付けられていない無負荷時には、弾性部材としての圧縮コイルバネ161の付勢力によって上記の噛み合い係合が解除される構成である。すなわち、スピンドル側クラッチ部材135は、ドライバビット119およびスピンドル117とともに駆動側クラッチ部材133に接近(後退)して噛み合い係合する位置と、駆動側クラッチ部材133から離間(前進)して噛み合い係合が解除される位置との間で移動する構成である。また圧縮コイルバネ161は、本発明における「付勢バネ」に対応する。なお以下の説明では、駆動側クラッチ部材133のクラッチ歯133aを駆動側クラッチ歯133aといい、スピンドル側クラッチ部材135のクラッチ歯135aを被動側クラッチ歯135aという。
以下、噛み合いクラッチ131の各部の詳細な構成につき説明する。スピンドル117は、軸受141を介してクラッチハウジング107に回転可能かつ軸方向に移動可能に支持されている。なおスピンドル117の前方への移動は、当該スピンドル117に設けたフランジ部117aが軸受141の軸方向一端面に当接することで規制されている。スピンドル117は、先端部(前端部)にビット挿入孔117bを有し、当該ビット挿入孔117bに挿入されたドライバビット119の細径部119aに対しリング状のリーフスプリング116で付勢された複数の鋼球(スチールボール)118が係合することによって当該ドライバビット119を着脱自在に保持する構成とされる。スピンドル側クラッチ部材135は、スピンドル117の後端部に形成された筒部143に遊嵌状に嵌合されるとともに、複数(例えば3個)の鋼球(スチールボール)145を介して一体回転するように当該スピンドル117に着脱自在に装着されている。
すなわち、被動側回転体を構成するスピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135は、軸方向において二分された分割構造とされ、スピンドル117の筒部143に対しスピンドル側クラッチ部材135の軸孔が軸方向から分離可能に嵌合されている。そしてスピンドル117の筒部143とスピンドル側クラッチ部材135の軸孔との嵌合部において、スピンドル117の筒部143には、径方向に貫通する複数(例えば3個)の貫通孔143aが周方向に等間隔(120度間隔)で形成され、スピンドル側クラッチ部材135の軸孔の内周面には、各貫通孔143aに対応する位置にそれぞれ鋼球145と係合する係合凹部135cが形成されている。鋼球145は筒部143の貫通孔143aに嵌合されるとともに、スピンドル側クラッチ部材135の係合凹部135cに係合する。これによりスピンドル側クラッチ部材135とスピンドル117は、当該鋼球145を介して周方向の相対移動が規制された状態で連結されて一体に回転される構成とされる。すなわち、鋼球145は、スピンドル側クラッチ部材135とスピンドル117を一体回転可能に連結する手段を構成する。
支持軸147は、一端がスピンドル117の筒部143の筒孔内に挿入されるとともに軸受151を介して当該スピンドル117に対して回転可能にかつ軸方向に相対移動可能(抜き取り可能)に支持され、他端がファンハウジング106に支持リング155を介して回転可能にかつ抜き取り可能に支持されている。なおファンハウジング106は、モータハウジング105とクラッチハウジング107との間に介在されており、それら各ハウジング105,106,107は、複数の締結ボルト108によって互いに接合されている。駆動ギア134は、支持軸147に圧入固定されている。駆動側クラッチ部材133は、駆動ギア134に形成された中央筒部(ボス部)134aに遊嵌状に嵌合され、複数(例えば3個)の鋼球(スチールボール)149を介して一体回転するように当該駆動ギア134に着脱自在に装着されている。
すなわち、駆動側回転体を構成する駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133は、軸方向において二分された分割構造とされ、駆動ギア134の中央筒部134aに駆動側クラッチ部材133の軸孔が軸方向から分離可能に嵌合されている。そして駆動ギア134の中央筒部134aと駆動側クラッチ部材133の軸孔との嵌合部において、駆動ギア134の中央筒部外周面と、駆動側クラッチ部材133の軸孔内周面とに対向状に形成された係合凹部134b,133cに鋼球149が介在されている。これにより、駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133は、鋼球149を介して周方向の相対移動が規制された状態で連結されて一体に回転される構成とされる。すなわち、鋼球149は、駆動側クラッチ部材133と駆動ギア134とを一体回転可能に連結する手段を構成する。なお駆動ギア134は、組付け状態では、駆動モータ111の出力軸113に設けたピニオンギア115と常時に噛み合い係合している。駆動側クラッチ部材133の後面側(図2の左側)には、スラスト軸受153が配置され、ネジSの締付作業時において、駆動側クラッチ部材133に入力されるスラスト荷重を受ける。
駆動側クラッチ部材133とスピンドル側クラッチ部材135は、互いに対向状に配置され、その対向面間における外周領域、すなわち、駆動側クラッチ歯133aおよび被動側クラッチ歯135aよりも外周側に圧縮コイルバネ161が圧縮状態で弾発状に介在されている。スピンドル側クラッチ部材135は、常時には圧縮コイルバネ161によって駆動側クラッチ部材133から離間する前方向へと付勢されており、駆動側クラッチ歯133aに対する被動側クラッチ歯135aの噛み合い係合が解除されるとともに、クラッチハウジング107側に取付けられたゴム製のストップリング127に押し付けられて回転が規制される。また圧縮コイルバネ161の付勢力によって、駆動側クラッチ部材133は、鋼球149を介して駆動ギア134に押圧され、当該鋼球149が係合凹部133c,134bの軸方向奥側に位置する。このため、駆動側クラッチ部材133は、駆動ギア134に対し軸方向において最も近接する装着位置に保持される。他方、スピンドル側クラッチ部材135は、鋼球145を介してスピンドル117に押圧され、当該鋼球145が係合凹部135cの軸方向奥側に位置する。このため、スピンドル側クラッチ部材135は、スピンドル117に対し軸方向において最も近接する装着位置に保持される。
駆動側クラッチ部材133の外周面には、圧縮コイルバネ161の一端を受けるフランジ状のバネ受部133bが形成され、これに対応してスピンドル側クラッチ部材135の外周面にも、圧縮コイルバネ161の他端を受けるフランジ状のバネ受部135bが形成されている。圧縮コイルバネ161は、一端が駆動側クラッチ部材133のバネ受部133bに対して着脱自在に固定され、他端がスピンドル側クラッチ部材135のバネ受部135bに対して複数(2枚)の座金163を介して相対回転可能に取付けられている。すなわち、圧縮コイルバネ161は、スピンドル側クラッチ部材135側にのみ座金163を介しての摺動部位を有する構成とされる。また圧縮コイルバネ161の巻き方向は、本実施の形態では、左巻き、つまり噛み合いクラッチ131の回転方向と逆向きに設定されている。
クラッチハウジング107には、圧縮コイルバネ161の周り(外周面)を囲うべくスピンドル側クラッチ部材135の外周面と駆動側クラッチ部材133の外周面との間に亘って当該圧縮コイルバネ161と平行に延在する円筒状の囲い165が形成されている。囲い165は、スピンドル側クラッチ部材135の外周面を覆うように形成された囲い部165aと、当該囲い部165aから後方へと延長して駆動側クラッチ部材133を覆う延出部165bとによって構成されている。なお囲い165は、その内壁面が圧縮コイルバネ161の外周面に対して干渉を回避し得る間隙を保有するように設定されている。クラッチハウジング107内には、噛み合いクラッチ131の噛み合い係合部位あるいは駆動ギア134とピニオンギア115との噛み合い係合部位、更には相対回転部材相互間の摺動部位等を潤滑するべく潤滑油(グリース)が封入されている。
またクラッチハウジング107の先端部には、アジャスタスリーブ123が軸方向の位置調整可能に装着され、このアジャスタスリーブ123の先端にストッパスリーブ125が着脱自在に装着されている。アジャスタスリーブ123の軸方向の位置を調整することによってストッパスリーブ125先端からのドライバビット119の突出量を調整し、これによってネジSのねじ込み深さを調整することができる。
次に、上記のように構成された電動スクリュドライバ101の作用を説明する。図2はねじ締め作業を行っていない無負荷状態を示している。この無負荷状態では、スピンドル側クラッチ部材135が圧縮コイルバネ161の付勢力によって駆動側クラッチ部材133から離間されてストップリング127に押し付けられている。このため、被動側クラッチ歯135aが駆動側クラッチ歯133aに噛み合っておらず、噛み合いクラッチ131は、遮断された状態にある。この状態において、トリガ121を引き操作して駆動モータ111を通電駆動すると、駆動側クラッチ部材133およびこれに固定された圧縮コイルバネ161が回転されるが、スピンドル側クラッチ部材135は、ストップリング127との係合面(当接面)の摩擦力が、圧縮コイルバネ161との摺動部位における摩擦力よりも大きく、ストップリング127による回転規制状態が維持される。したがって、圧縮コイルバネ161とスピンドル側クラッチ部材135とは座金163を介して相対回転し、スピンドル117の停止状態が維持される。
かかる状態において、ねじ締め作業を行うべく電動スクリュドライバ101を前方(被加工材側)へ移動させてドライバビット119に装着したネジSを被加工材に押し付けると、本体部103は移動するが、ドライバビット119およびスピンドル117は移動しない。したがって、ドライバビット119およびスピンドル117は、圧縮コイルバネ161を圧縮しつつ本体部103に対して相対的に後退動作(図示左側へ移動)し、それに伴いスピンドル側クラッチ部材135が駆動側クラッチ部材133に向って後退移動してストップリング127から離間する。このため、ストップリング127による回転規制を解除されたスピンドル側クラッチ部材135は、圧縮コイルバネ161の回転に追従して回転し、駆動側クラッチ部材133の回転と同期する。その後、被動側クラッチ歯135aが駆動側クラッチ歯133aに噛み合い係合する。このため、当該噛み合い係合が円滑に行われる。上記のように、圧縮コイルバネ161は、駆動側クラッチ部材133とスピンドル側クラッチ部材135との噛み合い係合に際し、両クラッチ部材133,135の回転数を同期させるべく機能するものであり、いわゆる同期手段を構成するものであり、スピンドル117が高速回転(例えば、6000rpm)する形式の電動スクリュドライバ101の噛み合いクラッチ131に特に有効とされる。
駆動側クラッチ部材133および圧縮コイルバネ161の回転動作、あるいは駆動側クラッチ部材133との噛み合い係合に基づくスピンドル側クラッチ部材135の回転動作によって潤滑油が径方向へと飛散し、囲い165の内壁面に付着する。内壁面に付着された潤滑油は、圧縮コイルバネ161の回転動作に基づくポンプ作用によって前方の座金163側へと積極的に移送される。これにより、当該座金163に関する相対滑りを伴う摺動部位としての、2枚の座金163相互間、座金163と圧縮コイルバネ161との間、あるいは座金163とスピンドル側クラッチ部材135との間を潤滑することができる。
さて、本実施の形態では、噛み合いクラッチ131に関し、駆動側あっては、軸方向において駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133とに分割するとともに、駆動ギア134に駆動側クラッチ部材133を着脱自在に装着する構成とし、また被動側にあっては、軸方向においてスピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135とに分割するとともに、スピンドル117にスピンドル側クラッチ部材135を着脱自在に装着する構成としている。このため、図3に示すように、クラッチハウジング107とファンハウジング106とを互いに取り外すとともに、支持軸147をスピンドル117内の軸受151およびファンハウジング106側の支持リング155から抜き取ると、駆動側クラッチ部材133とスピンドル側クラッチ部材135との対向間隔が広がり、その結果、両クラッチ部材133,135間に介在されている圧縮コイルバネ161の付勢力が無くなる。
したがって、その後は、圧縮コイルバネ161および座金163を取り外すとともに、駆動側クラッチ部材133を駆動ギア134から、スピンドル側クラッチ部材135をスピンドル117から、それぞれ容易に取り外して新しいものと交換することができる。なお新しい駆動側クラッチ部材133とスピンドル側クラッチ部材135を組付けについては、上記とは逆の手順で行うことができる。
このように、本実施の形態によれば、噛み合いクラッチ131を構成する構成部材のうち、最も摩耗し易い部品である、駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135のみを交換でき、駆動側クラッチ部材133から分割された駆動ギア134およびスピンドル側クラッチ部材135から分割されたスピンドル117については、これらを継続して使用することが可能となる。このため、補修のための交換すべき消耗部品数が減少するとともに、消耗部品数が減少することに伴い交換作業時間も減少することになり、結果として補修費の低減を図ることができる。
また駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135をそれぞれ分割構造としたことで、両クラッチ部材133,135相互間に芯ずれ、あるいは傾き等が生じたとしても当該芯ずれあるいは傾き等を、鋼球149を介しての駆動ギア134との嵌合部、あるいは鋼球145を介してのスピンドル117との嵌合部において吸収することが可能となる。このため、駆動側クラッチ歯133aと被動側クラッチ歯135aの噛み合いが均等になり、結果的にクラッチ寿命を延ばすことができる。また駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133とを鋼球149を介して連結し、スピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135とを鋼球145を介して連結する構成としたことで、簡単な構造でありながら、駆動ギア134と駆動側クラッチ部材133につき、およびスピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135につき、それぞれ周方向のガタツキを伴うことなく円滑に回転させることができる。更には分割構造としたことで、消耗部分である駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135をコンパクト化できる。その結果、駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135を金属射出成形焼結法による安価な製造方法での製造を選択することが可能とされ、コストダウンに有効とされる。
また本実施の形態によれば、駆動側クラッチ部材133とスピンドル側クラッチ部材135との間に圧縮コイルバネ161を圧縮状態で介在する構成としている。このため、駆動側クラッチ部材133が鋼球149を介して駆動ギア134に押圧され、またスピンドル側クラッチ部材135が鋼球145を介してスピンドル117に押圧される。このため、図2に示す組付け状態であれば、ねじ締め作業を行っていない無負荷回転時、あるいはねじ締め作業を行っている負荷回転時のいずれの状態にあっても、駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135を、それぞれ鋼球149,145を介して駆動ギア134あるいはスピンドル117に対する初期の装着位置に保持することができる。このため、止輪のような抜け止用の部材が不要となる結果、部品点数を減少できるとともに、駆動側クラッチ部材133およびスピンドル側クラッチ部材135を組付ける際、あるいは交換する際の手間を省くことができ、作業性が向上する。
なお本実施の形態では、駆動側クラッチ部材133と駆動ギア134につき、またスピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135とにつき、それぞれ鋼球149,145を介して一体回転する構成としたが、これに代え、例えばスプライン嵌合あるいはキー結合に変更することが可能である。また駆動側クラッチ部材133と駆動ギア134との嵌合部、およびスピンドル117とスピンドル側クラッチ部材135との嵌合部における抜け止めとして、圧縮コイルバネ161の付勢力に代え、止輪等を採用してもよい。
また本実施の形態は、回転工具の一例としてネジSの締付作業に用いられる電動スクリュドライバ101で説明したが、これに限られるものではなく、噛み合いクラッチ131を介して駆動モータ111の回転力を工具ビットに伝達する構成の回転工具であれば、広く適用可能である。
本実施の形態に係る電動スクリュドライバの全体構成を示す一部切断側面図である。 ドライバビットの噛み合いクラッチの組付け状態を示す断面図である。 噛み合いクラッチの分解状態を示す断面図である。
符号の説明
101 電動スクリュドライバ(回転工具)
103 本体部
105 モータハウジング
106 ファンハウジング
107 クラッチハウジング
108 締結ボルト
109 ハンドグリップ
111 駆動モータ(モータ)
113 出力軸
115 ピニオンギア
116 リーフスプリング
117 スピンドル(ビット保持部)
117a フランジ部
117b ビット挿入孔
118 鋼球
119 ドライバビット(工具ビット)
119a 細径部
121 トリガ
123 アジャスタスリーブ
125 ストッパスリーブ
127 ストップリング
131 噛み合いクラッチ
133 駆動側クラッチ部材(駆動クラッチ部)
133a 駆動側クラッチ歯
133b バネ受部
133c 係合凹部
134 駆動ギア(駆動回転部)
134a 中央筒部
134b 係合凹部
135 スピンドル側クラッチ部材(被動クラッチ部)
135a 被動側クラッチ歯
135b バネ受部
135c 係合凹部
141 軸受
143 筒部
143a 貫通孔
145 鋼球
147 支持軸
149 鋼球
151 軸受
153 スラスト軸受
155 支持リング
161 圧縮コイルバネ(付勢バネ)
163 座金
165 囲い
165a 囲い部
165b 延出部

Claims (3)

  1. モータと、
    工具ビットと、
    前記モータの回転力を前記工具ビットに伝達し、あるいは当該回転力の伝達を遮断する噛み合いクラッチと、を有し、
    前記噛み合いクラッチは、
    前記モータによって回転駆動される駆動回転部および当該駆動回転部と一体に回転する駆動クラッチ部を有する駆動側回転体と、
    前記工具ビットを着脱自在に保持するビット保持部および当該ビット保持部と一体に回転する被動クラッチ部を有する被動側回転体と、を有し、
    前記駆動側回転体と前記被動側回転体は、前記駆動クラッチ部と前記被動クラッチ部が互いに対向するように同一軸線上に配置されるとともに、互いに接近する方向に相対移動して前記駆動クラッチ部と前記被動クラッチ部とを噛み合い係合することで前記モータの回転力を前記工具ビットに伝達し、互いに離間する方向に相対移動して前記駆動クラッチ部と前記被動クラッチ部との噛み合い係合を解除することで当該回転力の伝達を遮断する構成とされた回転工具であって、
    前記駆動側回転体は、軸方向において前記駆動回転部と前記駆動クラッチ部とに分割されるとともに、前記駆動クラッチ部が前記駆動回転部に着脱自在に装着され、
    前記被動側回転体は、軸方向において前記ビット保持部と前記被動クラッチ部とに分割されるとともに、前記被動クラッチ部が前記ビット保持部に着脱自在に装着されていることを特徴とする回転工具。
  2. 請求項1に記載の回転工具であって、
    前記駆動クラッチ部と前記被動クラッチ部との間には、当該駆動クラッチ部と被動クラッチ部との噛み合い係合を解除する方向に付勢力を作用する付勢バネが圧縮状態で介在され、当該付勢バネは、前記駆動クラッチ部を前記駆動回転部に押圧するとともに前記被動クラッチ部を前記ビット保持部に押圧し、これにより前記駆動クラッチ部、および前記被動クラッチ部をそれぞれ装着位置に保持する構成としたことを特徴とする回転工具。
  3. 請求項1または2に記載の回転工具であって、
    前記駆動回転部と前記駆動クラッチ部、および前記ビット保持部と前記被動クラッチ部は、それぞれが遊嵌状に嵌合する軸方向の嵌合部を有するとともに、それら嵌合部の嵌合面間に介在された鋼球を介して一体に回転するように装着されていることを特徴とする回転工具。
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