JP2006152353A - 抗菌薄膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた抗菌作用を有すると共に、耐変色性に優れたAg−Cu合金抗菌薄膜を提供することを目的とする。
【解決手段】 Cuを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が、2原子%超であり、かつ、θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、前記Agのピーク強度合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とするAg−Cu合金抗菌薄膜。

Description

本発明は優れた抗菌作用を有し、かつ、耐変色性に優れたAg−Cu合金抗菌薄膜に関する。
近年、清潔意識の向上に伴い、生活用品や医療用品など様々な製品に、抗菌作用を付与することが求められている。製品に抗菌作用を付与する方法としては、抗菌剤を製品材料に予め混入させてから成形する方法や、抗菌剤を製品表面に被覆する方法等が知られている。これらの方法の中でも、抗菌剤を製品表面に被覆する方法は、既に製品として成形された後でも抗菌作用を付与することができる点で広範な用途を有し、かかる抗菌加工が施された製品は、市場に多く流通している。
現在、抗菌剤として、有機系化合物あるいは無機系化合物が使用されており、有機系化合物としては、アルコール系、フェノール系、イミダゾール系等が使用され、無機系化合物としては、ゼオライト、チタニア、シリカ等の単体に金属イオンを担持させたもの等が使用されている。また、金属を抗菌剤として使用することも知られており、金属を抗菌剤として使用し、製品に被覆した技術としては、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献1には、銀、金、白金、銅、ニッケル、錫、亜鉛、パラジウム、ビズマスおよびクロムの1種または2種以上の金属またはこれらの合金により被膜層を設けた、抗菌機能を有する箔またはフィルムが開示されている。
特許文献2には、Ag:20〜60原子%、Cu:20〜60原子%、Zn:20〜60原子%の組成をもつ抗菌・防カビ性に優れたAg−Cu−Zn合金が開示されている。
特許文献3には、Ag:30〜80重量%を含み残部がCuの組成をもち平均粒径が50μm以下の合金粒子が熱可塑性樹脂成形物中に分散された抗菌・防カビ性樹脂成形物が開示されている。
特開2004−183030号公報 特開平9−111380号公報 特開平11−43612号公報
Agを単独で抗菌剤として使用する場合、Agを薄膜化すると、Ag薄膜表面が白色に変色し易い。一方、Cuを単独で抗菌剤として使用する場合、抗菌作用を十分に発揮するが、表面にCuの酸化物が生成され、Cu表面が茶緑色に変色し易い。そして、AgとCuを混合して合金薄膜化した場合には、抗菌作用は十分に発揮するが、かかるAg−Cu合金薄膜においても、白色化あるいは茶緑色化を生じることがある。Ag−Cu合金薄膜の表面が変色すれば、かかる合金薄膜を被覆した製品の商品性を著しく損ね、さらに変色が進んだ場合には、被膜の剥離という商品にとって決定的な欠陥を生じる場合もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた抗菌作用を有すると共に、耐変色性に優れたAg−Cu合金抗菌薄膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記Ag−Cu合金薄膜の着色変化の原因ついて鋭意研究を行い、本発明に至った。
Ag薄膜の変色について調べたところ、以下に示す事柄が判明した。Agを膜厚が数百nm以下のような薄膜とした場合、Ag全体に対する結晶粒界を含む表面の割合が多くなり、かかる粒界表面を減少すべくAg原子は自己拡散し、凝集する傾向にある。Ag原子の自己拡散は、Agの結晶格子欠陥による空孔が生じることによって促進される傾向にあり、特にスパッタリング法によって薄膜を形成した場合に、かかる空孔は生じ易い。Ag原子の凝集が生じると、ある結晶粒は粗大化し、また、ある結晶粒は細って消失するため、Ag薄膜表面の凹凸が大きくなり、白色化が生じる。また、Ag原子の凝集は、塩水等のハロゲンイオンを含む水溶液との反応によっても促進されるため、生活環境中で生じ易く、かかる凝集がさらに進めば、薄膜の剥離にも至ることがある。
上記課題を解決することのできた本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜とは、Cuを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が、2原子%超であり、かつ、θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、前記Agのピーク強度合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とするAg−Cu合金抗菌薄膜である。
前記IAgは、Ag−Cu合金抗菌薄膜中のAgの結晶体の量を表す。Agは、Ag−Cu合金抗菌薄膜において、結晶として存在し、Agのピーク強度はAgの結晶体の量と相関するからである。前記ICuは、Ag−Cu合金抗菌薄膜中のCuの結晶体の量を表す。Cu原子がAgの結晶格子内に入り込むと、X線回折分析においてCuの結晶体に由来するピークは検出されない。一方、Agの結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込めず、あるいはAg原子と置換しなかったCu原子は結晶体として存在するため、X線回折分析においてCuのピークが検出され、かかるピーク強度はCuの結晶体の量と相関するからである。そして、前記ICu/IAgは、前記Agの結晶体の量に対する前記Cuの結晶体の量の比率であり、Agの結晶体の量に対する相体的な量として、Ag−Cu合金抗菌薄膜中におけるCuの結晶体の量を表すものであり、「ICu/IAgが0.2以下」とは、Cu原子がAg結晶格子内に入り込んでおり、Cuが結晶体として存在しても、その量がわずかであることを表す。
つまり、Ag−Cu合金抗菌薄膜中で、Cu原子がAgの原子位置に置換型で存在するとともに、前記Agの結晶格子欠陥により生じた空孔に入り込むことによって、Ag原子の自己拡散は困難になり、Ag原子の凝集を抑制することができ、その結果、Ag−Cu合金抗菌薄膜の白色化を抑制することができる。また、同時に、酸化し易いCuの結晶体の量を抑えることにより、茶緑色化も抑制できる。
すなわち、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、前記合金抗菌薄膜中のAg原子の凝集を抑制し、かつ、Cuの結晶化を抑制するところに要旨を有するものである。
また、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Cuと、BiまたはSbの少なくとも1つとを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が、0.5原子%以上であり、かつ、BiまたはSbの少なくとも1つの組成比が、0.05原子%以上0.5原子%以下であり、かつ、θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、前記Agのピーク強度合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とするAg−Cu合金抗菌薄膜である。
上記と同様、前記ICu/IAgは、前記Ag量に対する前記Cuの結晶体の量の比率であり、Agの結晶体の量に対する相体的な量として、Ag−Cu合金抗菌薄膜中におけるCuの結晶体の量を表すものであり、「ICu/IAgが0.2以下」とは、Cu原子がAg結晶格子内に入り込んでおり、Cuが結晶体として存在しても、その量がわずかであることを表す。そして、Cu原子がAgの原子位置に置換型で存在するとともに、前記Agの結晶格子欠陥により生じた空孔に入り込むことによって、Ag原子の自己拡散は困難になり、Ag原子の凝集を抑制することができ、その結果、Ag−Cu合金抗菌薄膜の白色化を抑制することができると同時に、酸化し易いCuの結晶体の量を抑えることにより、茶緑色化も抑制できる。特に、BiまたはSbの少なくとも1つを添加することによって、Cuの添加量を減らすことができるところに本発明の要旨を有する。
すなわち、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、前記合金抗菌薄膜中のAg原子の凝集を抑制し、かつ、Cuの結晶化を抑制するものであり、さらにBiまたはSbの少なくとも1つを添加することによって、Cuの添加量を減らすことができ、Cuの結晶化の要因を減少させるところに要旨を有するものである。
また、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、スパッタリング法により成膜されることも好ましい態様である。スパッタリング法によって形成されたAg−Cu合金抗菌薄膜では、Agの結晶格子欠陥により生じた空孔にCu原子が入り込み易く、本発明を好適に適用できるからである。
本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Ag原子の凝集を抑制し、かつ、Cuの結晶化が抑制されているため、優れた抗菌作用を有し、かつ薄膜表面に着色変化を生じることはない。斯かる効果により、本発明は、様々な製品表面の抗菌加工に使用することができる。
本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Cuを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が、2原子%超であり、かつ、θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、前記Agのピーク強度合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とする。
前記IAgは、θ−2θ法を用いたX線回折分析において得られる、Agの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の高さ 値を合計した数値を表し、前記ICuは、θ−2θ法を用いたX線回折分析において得られる、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の高さ値を合計した数値を表し、前記ICu/IAgは、前記Agのピーク強度の合計に対する前記Cuのピーク強度の合計の比率の計算値を表す。
また、前記IAgは、Ag−Cu合金抗菌薄膜中のAgの結晶体の量を表す。Agは、Ag−Cu合金抗菌薄膜において、結晶として存在し、Agのピーク強度はAgの結晶体の量と相関するからである。前記ICuは、Ag−Cu合金抗菌薄膜中のCuの結晶体の量を表す。Cu原子がAgの結晶格子内に入り込むと、X線回折分析においてCuの結晶体に由来するピークは検出されない。一方、前記Agの結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込めず、あるいはAg原子と置換しなかったCu原子は結晶体として存在するため、X線回折分析においてCuのピークが検出され、かかるピーク強度はCuの結晶体の量と相関するからである。そして、前記ICu/IAgは、前記Agの結晶体の量に対する前記Cuの結晶体の量の比率であり、Agの結晶体の量に対する相体的な量として、Ag−Cu合金抗菌薄膜中におけるCuの結晶体の量を表すものであり、「ICu/IAgが0.2以下」とは、Cu原子がAg結晶格子内に入り込んでおり、Cuが結晶体として存在しても、その量がわずかであることを表す。
従って、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、前記ICu/IAgが0.2以下であり、好ましくは0.1であり、より好ましくは0である。0.2以下とするのは、Ag−Cu合金抗菌薄膜中に存在するCuのうち、Cuの結晶体の量を抑制することによって、Agの結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込むCu原子の量は相体的に増加し、前記薄膜表面の白色化を抑制できるからであり、かつ、Cuの酸化物の生成を抑制し、前記薄膜表面が茶緑色に変化するのを抑制できるからである。
ここで、ICu/IAg=0とは、添加したCu原子が、固溶体としてAg−Cu合金抗菌薄膜中に存在する場合であり、ICu/IAgが0超0.2以下とは、添加したCu原子が、固溶体および、わずかに結晶体としてAg−Cu合金抗菌薄膜中に存在する場合である。
本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Cuの組成比が、2原子%超であり、好ましくは5原子%以上、より好ましくは7原子%以上である。2%原子超とするのは、Ag結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込むCu原子数が増加して、表面の白色化を抑制できるからである。
前記Cuの組成比の上限は、特に限定されないが、55原子%以下、好ましくは35原子%以下、より好ましくは15原子%以下である。55原子%以下であれば、酸化し易いCuの結晶体の量を減らし、前記薄膜表面が茶緑色化を抑制できるからである。
また、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Cuと、BiまたはSbの少なくとも1つとを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が、0.5原子%以上であり、かつ、BiまたはSbの少なくとも1つの組成比が、0.05原子%以上0.5原子%以下であり、かつ、θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、前記Agのピーク強度の合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度の合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とする。
上記と同様、前記ICu/IAgは、Agの結晶体の量に対する相体的な量として、Ag−Cu合金抗菌薄膜中におけるCuの結晶体の量を表すものである。また、前記ICu/IAgの好ましい範囲も上記と同様である。Ag−Cu合金抗菌薄膜中に存在するCuのうち、Cuの結晶体の量を抑制することによって、Agの結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込むCu原子の量は相体的に増加し、前記薄膜表面の白色化を抑制できるからであり、かつ、Cuの酸化物の生成を抑制し、前記薄膜表面が茶緑色に変化するのを抑制できるからである。
そして、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、BiまたはSbの少なくとも1つを添加することにより、Ag−Cu合金抗菌薄膜中におけるCuの組成比を減らすことができる。前記Cuの組成比は、0.5原子%以上、好ましくは5原子%以上、より好ましくは7原子%以上である。0.5%原子以上とするのは、Ag結晶格子欠陥により生じた空孔へ入り込むCu原子数が増加して、表面の白色化を抑制できるからである。
また、Cuの組成比の上限は、特に限定されないが、50原子%以下、好ましくは35原子%以下、より好ましくは15原子%以下である。50原子%以下とするのは、酸化し易いCuの結晶体の量を減らし、前記薄膜表面の茶緑色化を抑制するためである。
前記BiまたはSbの少なくとも1つの組成比は、0.05原子%以上、好ましくは0.07原子%以上、より好ましくは0.1原子%以上であり、0.5原子%以下、好ましくは0.4原子%以下、より好ましくは0.3原子%以下である。0.05原子%以上とすることにより、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜の白色化を十分に抑制することができるからである。一方、0.5原子%以下とするのは、抗菌作用の低下を抑制するためである。
本発明において、Cu必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が2原子%を超える態様については、残部がAgと不可避的不純物であることが好ましく、Cuと、BiまたはSbの少なくとも1つとを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、Cuの組成比が0.5原子%以上であり、かつ、BiまたはSbの少なくとも1つの組成比が、0.05原子%以上0.5原子%以下である態様については、残部がAgと不可避的不純物であることが好ましい。
本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜の厚みは、本発明における抗菌作用と耐変色性を満足するものであれば、特に限定されない。例えば、前記厚みが10nm以上、好ましくは20nm以上より好ましくは50nm以上であり、800nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下であることが望ましい。10nm未満では、被膜の強度が弱くなるからである。また、800nm超では、膜の強度が高くなり過ぎて、例えば、繊維やフィルム等のフレキシブルな素材にコーティングした場合、膜が割れたり、あるいは剥がれたりするからであり、さらに膜の厚みが大きくなると、そもそも変色等の問題は生じないからである。
次に、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜の製造方法について説明する。本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法で製造することによって、Ag結晶格子中にCuを置換型で固溶させることができ、この固溶と同時に、Cu原子はAg結晶格子欠陥により生じた空孔に入り込むことができると考えられるからである。
本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜のスパッタリング法による製造は、例えば、ターゲットとしてAg−Cu合金を用いて行うことができ、スパッタリング装置のチャンバー内に被覆される製品をセットし、真空状態でArガスを前記チャンバー内に導入後、前記ターゲットにRF(高周波)を印加して成膜する方法が挙げられる。また、例えば、前記Ag−Cu合金のターゲット上に、BiまたはSbの少なくとも1つのチップをセットして、前記のスパッタリングを行うことにより本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜を製造する方法も挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
評価方法
(1)Cu組成比:SEM−EDX(日本電子製JSM−5300)により分析を行った。
(2)BiまたはSb組成比:100mg以上の試料を硝酸:純水=1:1の溶液に溶解した。この溶解液を200℃のホットプレート上で加熱し、試料が完全に溶解したことを確認後、冷却し、ICP−質量分析装置(セイコーインスツルメンツ社製SPQ−8000)を用いて分析を行った。
(3)ピーク強度の合計比(ICu/IAg):X線回折装置(理学電機製RINT1500)を使用して、CuのX線源を用いたX線回折のθ−2θ法により、2θの範囲を20°〜100°として測定し、検出された(111)面、(200)面、(220)面および(311)面における、Agのピーク強度の高さ値の合計(IAg)およびCuのピークの強度の高さ値の合計(Cu)から、ピーク強度の合計比(ICu/IAg)を計算した。
(4)抗菌試験:試料表面をアルコール殺菌した後、かかる表面に大腸菌(IFO13500)懸濁液100μLを滴下後、20mm角のカバーガラスで試料表面を覆い、滅菌水で濡らした濾紙をひいたシャーレ内に静置し、蓋をした。これを温度35℃に設定したクリーンベンチ内に2時間放置する。放置後、試料を滅菌生理食塩水に懸濁し、デソシキコレード寒天培地を用いて37℃24時間培養を行い、コロニー形成能(CFU:Colony Forming Units)から生菌数を求めた。ガラス基板上で同様の試験を行って得られた生菌数をブランクとして、試料上の菌の死滅率を次式で求め、抗菌作用を評価した。
菌死滅率(%)=(ブランクの生菌数−試料の生菌数)/ブランクの生菌数×100
(5)塩水噴霧試験:試料表面に、5重量%のNaCl水溶液を1時間噴霧した後、試料の変色を肉眼で観察した。
実施例1〜5
スパッタリング装置(日本真空株式会社製BB1011)のチャンバー内に、Cuの組成比が5原子%〜53原子%のAg−Cu合金ターゲットと、ガラス基板とをセットした。前記チャンバー内を真空状態とした後、Arガスを導入し、前記ガス圧力を2×10-3Torrに設定し、前記ターゲットにRF(高周波)を印加してスパッタリングを2.5〜10分間行い、膜厚50nm〜200nmのAg−Cu合金薄膜をガラス基板上に成膜した。
比較例1〜4
スパッタリング装置(日本真空株式会社製BB1011)のチャンバー内に、Cuの組成比が0原子%〜2原子%のAg−Cu合金ターゲットと、ガラス基板とをセットした。前記チャンバー内を真空状態とした後、Arガスを導入し、前記ガス圧力を2×10-3Torrに設定し、前記ターゲットにRF(高周波)を印加してスパッタリングを1〜10分間行い、膜厚20nm〜200nmのAg−Cu合金薄膜をガラス基板上に成膜した。
実施例6〜12
Cuの組成比が2原子%のAg−Cu合金ターゲット上に0.05原子%〜0.5原子%のBiまたはSbのチップをセットした。スパッタリング装置(日本真空株式会社製BB1011)のチャンバー内に、前記Ag−Cu合金ターゲットと、ガラス基板とをセットした。前記チャンバー内を真空状態とした後、Arガスを導入し、前記ガス圧力を2×10-3Torrに設定し、前記ターゲットにRF(高周波)を印加してスパッタリングを5分間行い、膜厚100nmのAg−Cu合金薄膜をガラス基板上に成膜した。
比較例5
Cuの組成比が2原子%のAg−Cu合金ターゲット上に0.03原子%のBiチップをセットした。スパッタリング装置(日本真空株式会社製BB1011)のチャンバー内に、前記Ag−Cu合金ターゲットと、ガラス基板とをセットした。前記チャンバー内を真空状態とした後、Arガスを導入し、前記ガス圧力を2×10-3Torrに設定し、前記ターゲットにRF(高周波)を印加してスパッタリングを5分間行い、膜厚100nmのAg−Cu合金薄膜をガラス基板上に成膜した。
比較例6
Cuの組成比が2原子%のAg−Cu合金ターゲット上に0.6原子%のSbのチップをセットした。スパッタリング装置(日本真空株式会社製BB1011)のチャンバー内に、前記Ag−Cu合金ターゲットと、ガラス基板とをセットした。前記チャンバー内を真空状態とした後、Arガスを導入し、前記ガス圧力を2×10-3Torrに設定し、前記ターゲットにRF(高周波)を印加してスパッタリングを5分間行い、膜厚100nmのAg−Cu合金薄膜をガラス基板上に成膜した。
試験結果
実施例1〜5および比較例1〜4で製造した薄膜を用いて、Cu組成比、ピーク強度の合計比(ICu/IAg)、抗菌試験および塩水噴霧試験に関する評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2006152353
表1から明らかなように、実施例1〜5では、ICu/IAgが0.2以下でありCuの結晶化は十分に抑制されていた。特に、実施例1〜3ではICu/IAgは0であり、Cuの結晶体は認められなかった。
実施例1では、薄膜の周囲において白色化が認められる程度であり、茶緑色化は全く認められなかった。また、実施例2〜5では、薄膜表面の白色化および茶緑色化は、全く認められなかった。すなわち、実施例1〜5では、薄膜表面の白色化および茶緑色化が、十分に抑制されていた。一方、Cuを含有しない比較例1、および、Cuの組成比が本発明の範囲より低い比較例2および3では、薄膜表面全体に白色化が認められ、ICu/IAgの値が本発明の範囲を超える比較例4では、薄膜表面全体に茶緑色化が認められた。
また、実施例1〜5では、菌死滅率がいずれも99.9999%と優れた抗菌作用を示した。一方、Cuを含有しない比較例1では、菌死滅率が99.9437%と低かった。Cuの組成比が本発明の範囲より低い比較例2および3、および、ICu/IAgの値が本発明の範囲を超える比較例4では、菌死滅率は99.9999%であった。
実施例6〜12および比較例5および6で製造した薄膜を用いて、Cu組成比、Bi組成比またはSb組成比、ピーク強度の合計比(ICu/IAg)、抗菌試験および塩水噴霧試験に関する評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2006152353
表2から明らかなように、実施例6〜12ではいずれもICu/IAgは0であった。
実施例6では、薄膜の周囲において白色化が認められる程度であり、茶緑色化は全く認められなかった。また、実施例7〜12では、薄膜表面の白色化および茶緑色化は、全く認められなかった。すなわち、実施例6〜12では、薄膜表面の白色化および茶緑色化が、十分に抑制されていた。一方、Biの組成比が本発明の範囲より低い比較例5では、薄膜表面全体に白色化が認められた。また、Sbの組成比が本発明の範囲を超える比較例6では、薄膜表面に白色化は認められなかった。
実施例6〜12では、菌死滅率がいずれも99.9999%と高い抗菌作用を示した。一方、Biの組成比が本発明の範囲より低い比較例5では、菌死滅率は99.9999%と高い抗菌作用を示したものの、Sbの組成比が本発明の範囲を超える比較例6では、菌死滅率が99.8487と低かった。
以上の結果、本発明のAg−Cu合金抗菌薄膜は、Ag−Cu合金薄膜中でCuが固溶体、または固溶体および結晶体として存在することによりAg原子の凝集を抑制し、かつCuの結晶化を抑制することにより、優れた抗菌作用と耐変色性を有することがわかった。また、Cuに加え、BiまたはSbの少なくとも1つを添加することにより、Cuのみを添加した場合と比較し、Cuの添加量が少なくても、優れた抗菌作用と耐変色性を有することがわかった。

Claims (3)

  1. Cuを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、
    Cuの組成比が、2原子%超であり、かつ、
    θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、
    前記Agのピーク強度の合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度の合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とするAg−Cu合金抗菌薄膜。
  2. Cuと、BiまたはSbの少なくとも1つとを必須成分として含有するAg−Cu合金薄膜であって、
    Cuの組成比が、0.5原子%以上であり、かつ、
    BiまたはSbの少なくとも1つの組成比が、0.05原子%以上0.5原子%以下であり、かつ、
    θ−2θ法を用いたX線回折分析におけるAgの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をIAg、Cuの(111)面、(200)面、(220)面および(311)面のピーク強度の合計をICuと表すとき、
    前記Agのピーク強度の合計(IAg)に対する前記Cuのピーク強度の合計(ICu)の比率(ICu/IAg)が0.2以下であることを特徴とするAg−Cu合金抗菌薄膜である。
  3. スパッタリング法により成膜されることを特徴とする請求項1または2に記載のAg−Cu合金抗菌薄膜。
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