JP2006149279A - 細胞処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数の細胞を含む懸濁液が供給された対向する電極間に交流電圧を印加する工程と、該電極間において細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程を含み、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程が、前記交流電圧の印加前もしくは印加中に行われ、該印加前のレーザートラッピングでは細胞を初期状態から所望配列に近づける操作を行う細胞処理方法とする。
【選択図】 図4
Description
かかる電気泳動現象を利用した細胞配列方法は、例えば細胞の融合処理等において好適に用いられている。
しかしながら、下記特許文献1の開示技術において、レーザートラッピングはあくまでも細胞を懸濁液チャンバから電極近傍まで移動させるための手段として、交流電圧の印加とは関係なく利用されているのであって、細胞の配列形態の制御を目的としているものでもないし、基板に着底した細胞の移動について考慮されているものでもない。
そのため、この特許文献1の開示技術を用いたとしても、上記した従来技術の問題点、即ち細胞配列の形態を制御することができないという問題点や、基板に着底した細胞のレーザートラッピングによる移動の困難性という問題点については、何ら解決することができない。
請求項1に係る発明は、複数の細胞を含む懸濁液が供給された対向する電極間に交流電圧を印加する工程と、該電極間において細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程を含み、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程が、前記交流電圧の印加前もしくは印加中に行われ、該印加前のレーザートラッピングでは細胞を初期状態から所望配列に近づける操作を行うことを特徴とする細胞処理方法に関する。
請求項2に係る発明は、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作が、細胞をレーザートラッピングにより移動させて、前記対向する電極間に所望配列の形状に合わせて形成された溝に落とし込むことにより行われることを特徴とする請求項1記載の細胞処理方法に関する。
請求項4に係る発明は、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加中に、所望配列を既に形成している必要な細胞をレーザートラッピングにより捕捉して配列を保持することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞処理方法に関する。
請求項6に係る発明は、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加により所望配列が得られた後に、隣接する細胞間にレーザーを照射して当該細胞同士を融合させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞処理方法に関する。
請求項2に係る発明によれば、交流電圧の印加前に、細胞を対向する電極間に形成された所望配列の形状に合わせた溝に落とし込むことによって、溝の形状に沿った任意形状の細胞配列を簡単に得ることができ、多種多様な形状での細胞融合が可能となり、また一度に多数が融合された細胞を得ることも容易となる。
請求項4に係る発明によれば、交流電圧の印加中に、所望配列を既に形成している必要な細胞をレーザートラッピングにより捕捉して配列を保持することによって、既に所望配列を形成している細胞が移動して所望配列が崩れることが防がれ、より確実に所望の細胞配列を得ることが可能となる。
請求項6に係る発明によれば、前記請求項1乃至4いずれかに記載の方法における交流電圧の印加により所望配列が得られた後に、隣接する細胞間にレーザーを照射して当該細胞同士を融合させることにより、所望の数及び種類の細胞を任意の形状に配列させた形態にて融合させることが可能となる。しかも、細胞を所望の配列に隙間無く隣接させることができるため、従来のように多光軸のトラッピング用レーザーにて細胞を隣接させる操作が不要となり、当該レーザービームを顕微鏡へ導入するための非常に複雑な光学系を省略することが可能となる。
図1は本発明に係る細胞処理方法において用いることができるレーザートラッピング装置の一例を示す概略図である。
レーザートラッピング装置は、図示の如く、顕微鏡にレーザー光源等の各種機器が組み合わされた構成を有している。
ダイクロイックミラー(71)は、レーザー光源から出力されたレーザー光の向きを変えて対物レンズ(3)へと導くとともに、光源ランプ(4)から照射された光を通過させて撮像装置(6)へと導くものである。
吸収フィルター(72)は、光源ランプ(4)から照射されてダイクロイックミラー(71)を通過した光の波長成分のうち可視光成分のみを通過させて撮像装置(6)へと導くものである。
第1レーザー光源(8)から出力されるIRレーザーは、細胞を捕捉して操作するためのトラッピング用レーザーとして用いられる。IRレーザーとしては、例えばYAGレーザー(波長1060nm)、Nd:YLFレーザー(波長1047nm)、DPSSレーザー(波長1064nm)等を用いることができるが、細胞にダメージを与えずに移動等の操作を行うことができるものであれば、特にこれらに限定はされない。
第2レーザー光源(9)から出力されるUVレーザーは、細胞をレーザー融合するための細胞融合用レーザーとして用いられる。
これら電動シャッター(10)(11)は、コンピュータ(17)から送られる制御信号に基づいて独立して開閉操作が可能となっており、これによって第1レーザー光源(8)及び第2レーザー光源(9)から出力されたレーザー光を選択的に、電動ミラーユニット(14)等を介してミラーユニット(7)へと導くことができる。
ダイクロイックミラー(12)は、第2レーザー光源(9)から出力されたレーザー光の向きを変えてダイクロイックミラー(13)へと導く。
ダイクロイックミラー(13)は、第1レーザー光源(8)から出力されたレーザー光を通過させて電動ミラーユニット(14)へと導くとともに、ダイクロイックミラー(12)により導かれた第2レーザー光源(9)からのレーザー光を反射させて電動ミラーユニット(14)へと導く。
上記したダイクロイックミラー(12)(13)により、第1レーザー光源(8)と第2レーザ光源(9)から出力されたレーザー光は、同一経路を通って電動ミラーユニット(14)へと導かれる。
電子制御ミラーとしては、ガルバノミラー、ピエゾ駆動によるミラー、アクチュエータ駆動によるミラー等が好適に用いられる。
ダイクロイックミラー(16)は、この導かれたレーザー光の向きを変えて、ミラーユニット(7)のダイクロイックミラー(71)へと導く。
本発明に係る方法では、複数の細胞を含む懸濁液が滴下される基板(1)が、レーザートラッピング装置の電動ステージ(2)上に固定される。
図示例において、基板(1)は、ガラス基板(25)上に左右一対の電極(21)を平行に形成した構成を有しており、電極(21)の間に形成されるスリット(23)が細胞を含む懸濁液(K)が供給される融合プールとなる(図2(b)参照)。尚、図示していないが、スリット(23)に電極(21)と直角方向の仕切り壁を設けて、1枚の基板上に複数の融合プールを設ける構成とすることもできる。
電極(21)は例えば金メッキ電極からなり、夫々コネクター(22)を介して図示しない電源装置と接続されている。電極(21)同士の間隔は特に限定されないが、通常2mm以内程度とされ、例えば250μm程度とすることができる。
図3は、細胞を含む懸濁液を滴下した直後のスリット(23)を模式的に示す平面図である。
この状態では電極間に電圧は印加されておらず、多数の細胞(S)は規則性無くバラバラに液中に存在している。
次いで、この電圧が印加されていない状態において、第1レーザー光源(8)から出力されたIRレーザーを基板(1)内のスリット(23)へと導いて懸濁液中の細胞(S)を捕捉し、電動ミラーユニット(14)の駆動によってレーザー光を走査して個々の細胞(S)を移動させて、細胞の配列を所望配列に近づける(図4破線円内参照)。
このレーザートラッピングによる移動は、細胞(S)を初期状態から所望配列(最終的に得ようとする配列)に近づくように細胞を移動させて大まかに配列させるものであって、完全な所望配列を得るための移動ではない。
交流電圧の印加条件の一例を挙げると、電圧:6〜10V程度、周波数:2MHz程度、印加時間:数秒〜20秒程度である。但し、この条件はあくまでも一例であって、細胞の種類等によって適宜変更することができる。
交流電圧の印加により生じる細胞(S)の動きの軌道は、列をつくるための最短距離をとるが、交流電圧の印加前にレーザートラッピングによって細胞(S)が移動されて所望配列に近い配列となっていることから、細胞(S)は最短距離をとるように移動すると、ほぼ必然的に所望配列へと導かれ、細胞同士が隙間無く隣接した所望配列が得られる(図5破線円内参照)。
更に、交流電圧の印加中に、所望配列に必要な細胞により形成されている配列が崩れるのを防ぐために、所望配列を既に形成している必要な細胞をレーザートラッピングにより捕捉して配列を保持する操作を行うことが好ましい。
このようなレーザートラッピング操作を行うことによって、より確実に短時間で所望の細胞配列を得ることが可能となる。
細胞は時間が経つと基板に貼り付いてレーザートラッピングによる移動が困難となるが、交流電圧の印加によって細胞が基板から引き剥がされるため、これらのレーザートラッピングによる細胞の移動は容易に行うことができる。
この細胞融合処理は、電極(21)間に直流電圧を印加する方法により行うこともできるし(図6参照)、隣接する細胞間にレーザーを照射する方法により行うこともできる。
後者の方法では、第2レーザー光源(9)から出力されるUVレーザーを使用することができる。このとき、本発明の方法では細胞を所望の配列に隙間無く隣接させることができるため、従来のように多光軸のトラッピング用レーザーにて細胞を隣接させる操作が不要となり、当該レーザービームを顕微鏡へ導入するための非常に複雑な光学系を省略することが可能となる。
図7(a)乃至(c)は、図2に示した基板(1)のスリット(23)部分に変更を加えた例を示す平面図である。尚、これらの図ではスリット部分のみを抽出して示しており、電極については図2に示したものと同様の構成を採用することができる。
これらの基板(1)上に形成された溝(24)は、細胞の所望配列(最終的に得ようとする細胞配列)に合わせた形状とされており、溝(24)の長さ、深さ、幅は、所望配列の長さ、深さ、幅とほぼ同じで僅かに大きい程度に設定されている。
溝(24)の平面視形状は、(a)図では2つの大円を直線で繋いだ形状、(b)図ではY字形状、(c)図では楕円環形状とされている。但し、本発明において溝(24)の形状はこれらに限定されず、細胞の所望配列に合わせて適宜変更することができる。
図11はこの方法で得られる細胞配列の例を示しており、(a)は図7(a)の基板を用いた場合、(b)は図7(b)の基板を用いた場合、(c)は図7(c)の基板を用いた場合を夫々示している。
この方法によれば、溝の形状に沿った任意形状の細胞配列を簡単に得ることができ、多種多様な形状での細胞融合が可能となり、また一度に多数が融合された細胞を得ることも容易に可能となる。
交流電圧の印加中にレーザートラッピングにより細胞の移動操作を行うことの利点については、既に段落(0030)において説明した通りであり、本発明の他の実施形態はこの利点を最大限利用するものである。
以下にこの他の実施形態について図面を参照しながらより詳細に説明する。尚、前述の実施形態と共通する構成については同じ符号を付している。
そこで、本発明では、電極(21)間に交流電圧を印加することにより、着底した若しくは着底しようとしている細胞に対して、数秒程度(パールチェーンを形成しない時間で細胞が僅かに泳動する程度の時間)、交流電圧を印加する。
従って、この他の実施形態の方法によれば、細胞融合処理等におけるレーザーマニピュレーションの作業効率が大幅に向上し、ターゲットが生細胞の場合でも細胞の鮮度を損なうことなく処理を行うことが可能となる。また、この方法は、多種の細胞の混合液から特定の細胞だけをレーザーマニピュレーションにより取り出す方法としても非常に有効である。
2 電動ステージ
8 第1レーザー光源
9 第2レーザー光源
14 電動ミラーユニット
21 電極
24 溝
23 スリット
K 懸濁液
S 細胞
Claims (6)
- 複数の細胞を含む懸濁液が供給された対向する電極間に交流電圧を印加する工程と、該電極間において細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程を含み、前記細胞をレーザートラッピングにより移動させる工程が、前記交流電圧の印加前もしくは印加中に行われ、該印加前のレーザートラッピングでは細胞を初期状態から所望配列に近づける操作を行うことを特徴とする細胞処理方法。
- 前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作が、細胞をレーザートラッピングにより移動させて、前記対向する電極間に所望配列の形状に合わせて形成された溝に落とし込むことにより行われることを特徴とする請求項1記載の細胞処理方法。
- 前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加中に、所望配列に加わろうとする不要な細胞をレーザートラッピングにより捕捉して排除することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞処理方法。
- 前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加中に、所望配列を既に形成している必要な細胞をレーザートラッピングにより捕捉して配列を保持することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞処理方法。
- 前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加により所望配列が得られた後に、前記電極間に直流電圧を印加して隣接する細胞同士を融合させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞処理方法。
- 前記細胞をレーザートラッピングにより移動させて所望配列に近づける操作の後、交流電圧の印加により所望配列が得られた後に、隣接する細胞間にレーザーを照射して当該細胞同士を融合させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞処理方法。
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