JP2006145299A - 再生不良性貧血患者血清に存在する自己抗体の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】再生不良性貧血の検査方法および検査用試薬を提供する。
【解決手段】モエシンを特異的に認識する自己抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法を提供する。また、モエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬を提供する。 自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血とを判別できるため、免疫病態の存在を検出する極めて有用な検査方法であり、利用価値が高い。
【選択図】なし
【解決手段】モエシンを特異的に認識する自己抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法を提供する。また、モエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬を提供する。 自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血とを判別できるため、免疫病態の存在を検出する極めて有用な検査方法であり、利用価値が高い。
【選択図】なし
Description
本発明は再生不良性貧血の免疫病態の診断方法および自己抗体の検出試薬に関するものである。具体的には、再生不良性貧血患者血清中に存在するモエシンを特異的に認識する抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法と、そのための試薬に関するものである。
再生不良性貧血とは、骨髄低形成(骨髄の細胞密度が低下)と、汎血球減少(血中の赤血球、白血球、血小板のすべてが減少)を主徴とする疾患である。再生不良性貧血は、かつては難病であったが、現在では適切な治療により治癒する可能性の高い疾患である。したがって、早期の正確な診断と、適切な治療が必要である。再生不良性貧血の診断は厚生労働省の診断基準(厚生省特定疾患特発性造血障害調査研究班 1989年)に基づいて行われている。再生不良性貧血は、骨髄低形成と汎血球減少を来す他の疾患を除外して初めて診断が確定される症候群であり、病態を反映する特異的なマーカーは知られていない。再生不良性貧血には、自己免疫性のものと造血幹細胞異常性のものとがあることが知られているが、両者を判別する方法は知られていない。また、再生不良性貧血の約7割は免疫抑制療法によって改善することから、免疫病態の存在を証明することが重要である。しかし、免疫病態のマーカーについても確立されたものは存在しない。一般に自己免疫疾患では自己細胞成分に対する多種類の抗体(自己抗体)が検出され、その抗体が臨床症状と密接な関係を持つことが知られている。近年、多くの自己抗体の対応抗原(自己抗原)は細胞内の巨大分子であり、しかも種を越えて保存されているタンパク質であることが明らかになっている。しかしながら、自己免疫性の再生不良性貧血患者における自己抗体や、その対応抗原についての解析はほとんどなされていない。
モエシン(moesin)はmembrane−organizing extension spike proteinとしてウシの子宮より分離され、ヘパリン硫酸の受容体タンパク質の可能性が示唆されてきた(非特許文献1)。また、cDNAクローニングにより、ヒトでは通常577アミノ酸から成ることが示されている(非特許文献2)。最近、モエシンは内皮細胞やある種の上皮細胞の尖端絨毛にアクチンとともに局在することが分かったが、その機能は解明されていない。1996年に、モエシンに対する自己抗体が慢性関節リウマチ患者の約30%の血清中に存在することが示された(特許文献1)。しかし、このような抗モエシン抗体が再生不良性貧血のように骨髄の働きが低下する血液疾患の患者に見られることは全く知られていなかった。
特願平8−509375
ランケスら(Lankes,W.T.et al.)、ザ・バイオケミカル・ジャーナル(Biochem.J.)、(英国)、第251巻、p.831−842、1988年
ランケスら(Lankes,W.T.et al.)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.)、(米国)、第88巻、p.8297−8301、1991年
本発明は、再生不良性貧血を自己免疫疾患という観点からとらえ、再生不良性貧血患者血清中に存在する自己抗体に着目し、特異的自己抗原と反応する抗体の検出を目指したものである。
本発明は、再生不良性貧血患者血清中の自己抗体と反応する造血幹細胞由来の抗原がモエシンであることを見出したことにより完成された。したがって本発明は、以下に関する、
(1)生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法、
(2)該再生不良性貧血は自己免疫性である、(1)記載の方法、
(3)自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血との判別方法である、(1)記載の方法、
(4)再生不良性貧血に対する免疫抑制療法の適否の判別方法である、(1)記載の方法、
(5)生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬、
(6)該物質がモエシン又はその部分ペプチドである、(5)記載の試薬。
(1)生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法、
(2)該再生不良性貧血は自己免疫性である、(1)記載の方法、
(3)自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血との判別方法である、(1)記載の方法、
(4)再生不良性貧血に対する免疫抑制療法の適否の判別方法である、(1)記載の方法、
(5)生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬、
(6)該物質がモエシン又はその部分ペプチドである、(5)記載の試薬。
本発明の方法を用いれば、従来の再生不良性貧血の診断が除外診断に基づいていたのに対し、血清の分離、抗体価の測定等という簡便な方法により、再生不良性貧血、特に自己免疫性の再生不良性貧血を客観的に診断できる。したがって、本発明は再生不良性貧血の免疫病態の診断を可能とするものであり、特異的な抗原抗体反応に基づく血清診断法として簡便かつ信頼性が高い。
本発明の検査方法を適用することができる対象としては、動物であれば特に限定されないが、例えば、哺乳動物等が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、対象動物はヒトである。
本発明の方法に用いられ得る生体試料としては、特に限定されないが、例えば、検査対象である動物由来の組織、細胞、細胞抽出成分、体液等が挙げられる。組織としては、脾臓、リンパ節等が、細胞としては、脾細胞、リンパ細胞、抗体産生細胞等が、体液としては、血液、血清、血漿、尿、汗等が挙げられる。検出の容易性などを考慮すると、生体試料としては体液、特に血清・血漿が好ましい。
本発明の検査方法において検出される抗体(以下、「抗モエシン抗体」という場合もある)により認識されるモエシンとは、一般に細胞骨格に結合したタンパク質ファミリー(Ezrin Radixin Moesin:ERMファミリー)に属するタンパク質であり、ヒトでは通常577アミノ酸から成る。モエシンとしては、上述の哺乳動物由来のものであれば特に限定されないが、好ましくはヒト由来のモエシンである。ヒトモエシンとしては、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列(GenBank登録番号NM002444)からなるタンパク質、あるいはその天然のアレル変異体等が挙げられる。
抗体としては、特にそのクラスは限定されず、IgG、IgD、IgE、IgA、sIgA、IgM等のいずれのものであってもよい。また、抗体の結合性断片(Fab、Fab’、F(ab’)2等)等も、モエシンに対して特異的に結合する限り「抗体」に含まれる。
本発明で検出される抗体としては、自己のモエシンを特異的に認識する自己抗体である。例えば、生体試料がヒト由来ならば、ヒトのモエシンを特異的に認識するヒト抗体が、好ましくは検出される。
生体試料中のモエシンを特異的に認識する抗体を検出する方法としては、自体公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、液相又は固相で起こる反応(例えば抗原抗体反応)を直接測定する方法や、阻害物質を加えることにより免疫反応の阻害を測定する方法などを利用することができる。
上記方法としては、例えば、モエシン又はその部分ペプチドを生体試料と接触させ、生体試料中の抗体のモエシン又はその部分ペプチドに対する特異的結合を、直接的又は間接的に検出する方法が挙げられる。
上記方法に用いられるモエシンは、上述のモエシンタンパク質のうち、検査対象動物の自己抗体である抗モエシン抗体により特異的に認識され得るものであれば特に限定されないが、好ましくは検査対象動物由来のモエシンである。例えば、検査対象がヒトであれば、ヒトモエシン(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、あるいはその天然のアレル変異体等)を用いることが好ましい。
また、本発明においてモエシンの部分ペプチドとしては、本発明で検出される抗モエシン抗体が認識する抗原決定基を含む部分ペプチドであれば特にその長さは限定されない。一般的にタンパク質抗原の抗原決定基は、少なくとも5〜6個のアミノ酸残基により構成されるため、少なくとも5個以上、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上のアミノ酸残基を含むモエシンの部分ペプチドを、本発明において用いることができる。
モエシン又はその部分ペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、例えば、リン酸、糖又は糖鎖、リン脂質、脂質、ヌクレオチド等による修飾などが挙げられる。
本発明で用いられるモエシン又はその部分ペプチドは、前述したヒトやその他の動物から公知の方法によって得ることができる。例えば、脾臓、子宮、腎臓等のようなモエシン発現組織又はその培養細胞、あるいはUT−7等のモエシン発現細胞株などを用いて、モエシンを精製することができる。具体的には、該動物の組織又は細胞をホモジナイズした後、酸等で抽出を行い、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明のモエシン又はその部分ペプチドは、モエシン又はその部分ペプチドをコードする核酸を含有する発現ベクターを導入した形質転換体を培養してモエシン又はその部分ペプチドを生成し、得られる培養物からモエシン又はその部分ペプチドを分離・精製することによっても製造できる。
本発明で用いられるモエシン又はその部分ペプチドは、公知のペプチド合成法により製造することもできる。該ペプチド合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。モエシンを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより、モエシン又はその部分ペプチドを製造することができる。
本発明で用いられるモエシンの部分ペプチドは、上述もしくは後述のいずれかの方法により得られるモエシンを、適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。
モエシン又はその部分ペプチドは、精製作業等を容易にすることを目的に、適当なタグが連結されたものであってもよい。該タグとしては、イムノグロブリンFc領域、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、c−Mycタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ等が挙げられる。
該検出方法としては、特に限定されないが、より具体的には以下の方法が挙げられる。
(1)血球やゼラチン粒子の表面に、モエシン又はその部分ペプチド(抗原)を被覆し、生体試料を加えることにより抗原抗体反応を起こさせ、凝集塊を作らせる凝集反応、
(2)モエシン又はその部分ペプチドを含む抽出液と生体試料を寒天ゲル内で拡散させて沈降反応を起こさせる二重免疫拡散法(DID:double immuno diffusion:オクタロニー法)、
(3)精製したモエシン又はその部分ペプチドをプレートに固相化し、生体試料を加えて反応させた後、
i)酵素と結合した二次抗体をさらに反応させて、基質の発色を分光光度計で検出するELISA法、
ii)蛍光色素と結合した二次抗体をさらに反応させて、蛍光発色を測定する蛍光免疫測定法(FIA)あるいは
iii)化学発光物質と結合した二次抗体をさらに反応させて、化学蛍光(ケミルミネッセンス)を測定する化学発光免疫測定法(CLIA)、
(4)ラテックス粒子やガラスビーズなどの表面をモエシン又はその部分ペプチドで被覆し、該粒子が抗体と遭遇したときに起こる凝集反応液に光をあて、その透過光を測定する免疫比濁法あるいはその散乱光を測定する免疫比朧法(ネフロメトリー法)、
(5)モエシン又はその部分ペプチドを放射性同位元素で標識し、生体試料と反応させ抗原抗体反応を検出するラジオイムノアッセイ、
(6)モエシン又はその部分ペプチドを含む組織の凍結薄切片あるいは細胞をスライドガラス上に貼り付け、生体試料を切片上に滴下することにより反応させ、蛍光色素と結合した二次抗体とさらに反応させて、蛍光を顕微鏡下で検出する蛍光抗体法、
(7)モエシン又はその部分ペプチドをチップ上に固定して生体試料を流すことにより親和性をみる表面プラズモン共鳴解析法。
(8)電気泳動により分離展開したゲル内のモエシン又はその部分ペプチドを、ニトロセルロース膜等に転写し、生体試料と反応させ抗原抗体反応を検出するウエスタンブロッティング法。
(1)血球やゼラチン粒子の表面に、モエシン又はその部分ペプチド(抗原)を被覆し、生体試料を加えることにより抗原抗体反応を起こさせ、凝集塊を作らせる凝集反応、
(2)モエシン又はその部分ペプチドを含む抽出液と生体試料を寒天ゲル内で拡散させて沈降反応を起こさせる二重免疫拡散法(DID:double immuno diffusion:オクタロニー法)、
(3)精製したモエシン又はその部分ペプチドをプレートに固相化し、生体試料を加えて反応させた後、
i)酵素と結合した二次抗体をさらに反応させて、基質の発色を分光光度計で検出するELISA法、
ii)蛍光色素と結合した二次抗体をさらに反応させて、蛍光発色を測定する蛍光免疫測定法(FIA)あるいは
iii)化学発光物質と結合した二次抗体をさらに反応させて、化学蛍光(ケミルミネッセンス)を測定する化学発光免疫測定法(CLIA)、
(4)ラテックス粒子やガラスビーズなどの表面をモエシン又はその部分ペプチドで被覆し、該粒子が抗体と遭遇したときに起こる凝集反応液に光をあて、その透過光を測定する免疫比濁法あるいはその散乱光を測定する免疫比朧法(ネフロメトリー法)、
(5)モエシン又はその部分ペプチドを放射性同位元素で標識し、生体試料と反応させ抗原抗体反応を検出するラジオイムノアッセイ、
(6)モエシン又はその部分ペプチドを含む組織の凍結薄切片あるいは細胞をスライドガラス上に貼り付け、生体試料を切片上に滴下することにより反応させ、蛍光色素と結合した二次抗体とさらに反応させて、蛍光を顕微鏡下で検出する蛍光抗体法、
(7)モエシン又はその部分ペプチドをチップ上に固定して生体試料を流すことにより親和性をみる表面プラズモン共鳴解析法。
(8)電気泳動により分離展開したゲル内のモエシン又はその部分ペプチドを、ニトロセルロース膜等に転写し、生体試料と反応させ抗原抗体反応を検出するウエスタンブロッティング法。
例えば検出手段がELISA法の場合、具体的には、下記のように検出及び/又は定量を行なうことができる。すなわち、慣用のELISAの手法に従い、例えば、モエシン又はその部分ペプチドで被覆したマルチウエルプレートの各ウエルに生体試料を供し、各ウエルに酵素標識した2次抗体を添加して反応させ、酵素基質を添加した後、該酵素により生じた産物を検出及び/又は定量することにより、抗原抗体反応の検出及び/又は定量を行なうことができる。
前記ELISA法の場合、標識に用いられる酵素としては、通常、ELISA法に用いられる慣用の酵素であればよく、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、エステラーゼ、β−D−グルクロニダーゼなどが挙げられる。より高感度で安定な検出を達成することが可能である観点から、ペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼが望ましい。また、酵素基質は、用いる酵素により適宜選択することができ、例えば、ペルオキシダーゼの場合、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンなどが用いられ、アルカリホスファターゼの場合、パラニトロフェニルリン酸ナトリウムなどが用いられる。
酵素により生じた産物の検出及び/又は定量は、該産物の吸光度を測定することにより行なうことができる。例えば、酵素基質として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いた場合、450nmにおける吸光度を測定すればよい。
例えば、検出手段が蛍光免疫測定法(FIA)の場合、蛍光色素としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allophycocyanin)、Cy−3、Cy−5等が挙げられる。
また、例えば、検出手段が化学発光免疫測定法(CLIA)の場合、化学蛍光(ケミルミネッセンス)としては、アクリジニウムエステル等が挙げられる。
生体試料中にモエシンを特異的に認識する抗体が検出された場合、当該生体試料の由来する対象は、再生不良性貧血を発症する/している可能性が高いと判断することができる。この場合、生体試料中のモエシンを特異的に認識する抗体価が高いほど再生不良性貧血を発症する/している可能性が高いとすることもできる。逆に、生体試料中にモエシンを特異的に認識する抗体が検出されない場合、当該生体試料の由来する対象は、再生不良性貧血を発症する/している可能性が低いと判断することができる。
上記発症可能性を判断する場合、その判断基準は抗体の検出・未検出のみに限定されるわけでない。例えば、健常対象由来の生体試料中のモエシンを特異的に認識する抗体量の平均値±3SD等をカットオフ値と設定し、カットオフ値以上であれば対象は再生不良性貧血を発症する/している可能性が高いと判断し、逆にカットオフ値以下であれば対象は再生不良性貧血を発症する/している可能性が低いと判断してもよい。
また、血液中の網状赤血球数、血小板数、白血球数等を指標に、再生不良性貧血を発症していることが判明している患者において、本発明の検査方法により、モエシンを特異的に認識する抗体が検出された場合、該患者は自己免疫性再生不良性貧血を発症している可能性が高いと判定することができる。この場合、該患者は免疫抑制療法の対象として適していると判断することもできる。また、モエシンを特異的に認識する抗体が検出されない場合、該患者は造血幹細胞異常性再生不良性貧血もしくはその他の原因による貧血を発症している可能性が高いと判定することができる。この場合、該患者は免疫抑制療法の対象として適さないと判断することもできる。本発明の検査方法は、特に、再生不良性貧血が自己免疫性再生不良性貧血か造血幹細胞異常性再生不良性貧血かを判別するのに優れている。
なお、本明細書中において、自己免疫性再生不良性貧血とは、造血幹細胞が自己のリンパ球や抗体等により攻撃され減少することに起因する再生不良性貧血を意味し、造血幹細胞異常性再生不良性貧血とは、造血幹細胞が後天性の遺伝子異常により増殖・分化しないことに起因する再生不良性貧血を意味する。
また、本発明では、生体試料中のモエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬が提供される。
該物質としては、上述の方法においてモエシンを特異的に認識する抗体の検出を達成しうるものであれば特に限定されないが、好ましくはモエシン又はその部分ペプチドである。また、本発明で検出される抗モエシン抗体が、複数の抗原決定基を認識する抗体群である場合、モエシン中に存在する多くの抗原決定基に、それぞれ特異的に認識する抗体を網羅的に検出させることにより、検出感度を向上させるという観点から、該物質はモエシン(タンパク質の全長)であることが好ましい。
モエシン又はその部分ペプチドは、粉末、溶液等の形態で提供されてもよく、あるいは、血球、ゼラチン粒子、プレート、ラテックス粒子、硝子ビーズ、スライドガラス、チップ、マイクロタイタープレート、遠心管、マイクロビーズ、メンブレン、ペーパーディスク等の不溶性担体に担持された形で提供されてもよい。尚、容器上の担体においては、該担体に保持される溶液が接触する部位、例えばマイクロタイタープレートの場合には、ウエルの部位にモエシン又はその部分ペプチドが担持される。なお、モエシン又はその部分ペプチドの不溶性担体への担持は、公知の方法により行うことができる。
本発明の検査用試薬を用いれば、上述の方法により、容易に再生不良性貧血を検査することができる。
本発明の検査用試薬はまた、上述の検出方法で使用される試薬等をさらに含む、再生不良性貧血検査用キットとすることもできる。該試薬等としては、具体的に、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、蛍光色素、反応容器、陽性対照、陰性対照、検査プロトコールを記載した指示書等が挙げられる。これらの要素は、必要に応じて予め混合しておくこともできる。該キットを使用することにより、本発明の再生不良性貧血の検査が簡便となり、早期の治療方針決定に非常に有用である。
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1) ヒト急性骨髄性白血病由来のUT−7細胞のライセートを用いたウェスタンブロッティングによる抗原抗体反応
約1×107個のUT−7細胞をダルベッコPBS(137mM NaCl、1.4mM リン酸カリウム、4.3mM リン酸ナトリウム、2.7mM KCl)で2回洗浄後、電気泳動用のローディング液(62.5mM Tris・HCl pH6.8、10%グリセロール、5%β−メルカプトエタノール、0.001%ブロムフェノールブルー(BPB)、2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))500μlに溶解し、超音波処理をおこなった。そのライセートをウェル当たり10μlずつロードし、10%ポリアクリルアミドゲル上で0.1%SDS含有1倍泳動液(25mM Tris・HCl、192mM グリシン pH8.4)で電気泳動を行った。ゲルの一部はクマシーブリリアントブルー(CBB)染色を行いバンドの大きさを確認した。結果を図1のレーン1に示す。図中でレーンmは分子量マーカー、レーン1はクマシーブリリアントブルー染色である。
染色しないゲル中のタンパク質はメタノール含有転写緩衝液中で190mA定電流で1.5時間かけてpolyvinylidene difluoride(PVDF) membrane(Millipore、Bedford、MA)上に電気的に移し取った。上記PVDF膜を5%スキムミルク溶液中で4℃で一晩ブロッキングした。その後、1%BSA−TBS(25mM tris(hydroxymethyl)aminomethane(Tris)−buffered solution containing 150mM NaCl、 2.5mM KCl)で200倍に希釈した正常人血清、再生不良性貧血患者血清、あるいは抗モエシン抗体 (Clone 38/87、 Neomarkers社)と1〜2時間室温で反応させた後、TBS−T(TBS及び0.05% Tween 20(TBS−T、pH7.5))で3回洗浄した。TBSでさらに1回洗浄し1%BSA−TBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ヒトIgG Fcγ分画(Jackson ImmunoResearch社)もしくはアルカリフォスファターゼ標識ラビット抗マウスIgG(Chemicom社)と1時間室温で反応させた。TBS−Tで3回洗浄し、TBSで1回洗浄後、BCIP/NBT phosphatase substrate system(KPL社)を用いて発色させ、再生不良性貧血患者血清と反応するバンドが77kDであることを確認した。77kDのバンドは再生不良性貧血患者血清の9検体中4検体と反応した。一方、正常人血清では10検体中2検体と反応することがわかった。その代表的パターンを図1に示した。レーン2からレーン5は正常ヒト血清、レーン6からレーン9は再生不良性貧血患者血清、レーン10は抗モエシン抗体である。
約1×107個のUT−7細胞をダルベッコPBS(137mM NaCl、1.4mM リン酸カリウム、4.3mM リン酸ナトリウム、2.7mM KCl)で2回洗浄後、電気泳動用のローディング液(62.5mM Tris・HCl pH6.8、10%グリセロール、5%β−メルカプトエタノール、0.001%ブロムフェノールブルー(BPB)、2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))500μlに溶解し、超音波処理をおこなった。そのライセートをウェル当たり10μlずつロードし、10%ポリアクリルアミドゲル上で0.1%SDS含有1倍泳動液(25mM Tris・HCl、192mM グリシン pH8.4)で電気泳動を行った。ゲルの一部はクマシーブリリアントブルー(CBB)染色を行いバンドの大きさを確認した。結果を図1のレーン1に示す。図中でレーンmは分子量マーカー、レーン1はクマシーブリリアントブルー染色である。
染色しないゲル中のタンパク質はメタノール含有転写緩衝液中で190mA定電流で1.5時間かけてpolyvinylidene difluoride(PVDF) membrane(Millipore、Bedford、MA)上に電気的に移し取った。上記PVDF膜を5%スキムミルク溶液中で4℃で一晩ブロッキングした。その後、1%BSA−TBS(25mM tris(hydroxymethyl)aminomethane(Tris)−buffered solution containing 150mM NaCl、 2.5mM KCl)で200倍に希釈した正常人血清、再生不良性貧血患者血清、あるいは抗モエシン抗体 (Clone 38/87、 Neomarkers社)と1〜2時間室温で反応させた後、TBS−T(TBS及び0.05% Tween 20(TBS−T、pH7.5))で3回洗浄した。TBSでさらに1回洗浄し1%BSA−TBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ヒトIgG Fcγ分画(Jackson ImmunoResearch社)もしくはアルカリフォスファターゼ標識ラビット抗マウスIgG(Chemicom社)と1時間室温で反応させた。TBS−Tで3回洗浄し、TBSで1回洗浄後、BCIP/NBT phosphatase substrate system(KPL社)を用いて発色させ、再生不良性貧血患者血清と反応するバンドが77kDであることを確認した。77kDのバンドは再生不良性貧血患者血清の9検体中4検体と反応した。一方、正常人血清では10検体中2検体と反応することがわかった。その代表的パターンを図1に示した。レーン2からレーン5は正常ヒト血清、レーン6からレーン9は再生不良性貧血患者血清、レーン10は抗モエシン抗体である。
(実施例2) 77kDのバンドの質量分析による解析
約1×107個のUT−7細胞を0.5mlPBS中で37℃1時間インキュベート後、Kendro社製Biofuge fresoで500rpm3分間遠心分離した。得られた上清を前述の電気泳動用ローディング液に溶解し電気泳動を行い、CBB染色を行った。CBB染色したゲル中の77kDバンドを切り出した後、100mM Na2S2O3、30mM [Fe(CN)6]K3を予め用意し、用時1:1に調製して数分で脱色した。脱色して黄色くなったゲルを目視で透明になるまで水にて洗浄した。何回か水を入れ替えたのち、10分〜15分位でゲルが透明になるのを確認した。次に洗浄に用いた水を抜き、ゲルを約1mm3の大きさに細分化し乾固した。必要量のTrypsin(Promega社)を含んだ50mM ammonium bicarbonate pH8.0 2% acetonitrileで37℃一晩処理し、目的タンパク質を断片化した。断片化したペプチドはZipTipを用いて抽出、脱塩、濃縮も同時に行った。最後に質量分析(MALDI−TOF/MS(ペプチドマスフィンガープリンティング法))によりアミノ酸配列を決定し、データベースで検索した結果、77kDタンパク質はモエシンであることが判明した。
約1×107個のUT−7細胞を0.5mlPBS中で37℃1時間インキュベート後、Kendro社製Biofuge fresoで500rpm3分間遠心分離した。得られた上清を前述の電気泳動用ローディング液に溶解し電気泳動を行い、CBB染色を行った。CBB染色したゲル中の77kDバンドを切り出した後、100mM Na2S2O3、30mM [Fe(CN)6]K3を予め用意し、用時1:1に調製して数分で脱色した。脱色して黄色くなったゲルを目視で透明になるまで水にて洗浄した。何回か水を入れ替えたのち、10分〜15分位でゲルが透明になるのを確認した。次に洗浄に用いた水を抜き、ゲルを約1mm3の大きさに細分化し乾固した。必要量のTrypsin(Promega社)を含んだ50mM ammonium bicarbonate pH8.0 2% acetonitrileで37℃一晩処理し、目的タンパク質を断片化した。断片化したペプチドはZipTipを用いて抽出、脱塩、濃縮も同時に行った。最後に質量分析(MALDI−TOF/MS(ペプチドマスフィンガープリンティング法))によりアミノ酸配列を決定し、データベースで検索した結果、77kDタンパク質はモエシンであることが判明した。
(実施例3) 抗原タンパク質の製造
1. モエシンの発現ベクターの作成
名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報薬理学講座よりモエシンのcDNAを入手し、Kpn Iをもちいてコーディング部位を含む領域を切り出し、pET−44c(Novagen社、Madison、WI)に組込んだ。
2. 遺伝子組換えモエシンの大腸菌による発現
実施例3の1で得られた発現プラスミドpET−44c−moesinを用いて大腸菌BL21(Novagen社)を形質転換させ、得られた単一コロニーを発現実験の種菌とした。独立した4クローンをアンピシリン100μg/ml含有のLB(ルリアベターニ)プレート上に一面に塗布し、37℃で一夜静置培養した。プレートの菌体を白金耳でかきとり、アンピシリン含有LB培地3mlに植え、37℃で約1.5時間振とう培養を行った。その後、吸光度550nm(OD550)を測定し、20mlの同培地にOD550=0.2となるように培養液を加え、振とう培養を続けた。培養後、約2時間でOD550=0.8に達した時点でIPTG(isopropyl−1−thio−β−D−galactoside)を終濃度1mMになるように加えた。IPTG添加から、0、4、18時間後において、菌のOD550=1.0相当を13000rpm、2分間遠心後集菌した。サンプル液を上記電気泳動用ローディング液に溶解し、そのライセート10μlをウエルにロードして10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ない、組換えモエシンの発現を確認した。精製用の菌体の発現は100mLスケールで行い、18〜20時間培養を続け、トミー精工製RL−131で3000rpm、30分間の遠心により菌を集めた。
3.遺伝子組換えモエシンの精製
菌体を1× Binding Buffer(His・BindKits、Novagen社) 40mlに懸濁した後、1mlずつエッペンドルフチューブに分注し、約1分間の超音波破砕を3回繰り返した後、3000rpmで30分間遠心し、沈渣を得た。この沈渣を20ml 1×Binding Bufferで洗浄し、6M尿素を含む1×Binding Buffer 5mlで60分間氷上においた後、溶出した上清を遠心により回収した。上清中に含まれるHisタグのついた組換えモエシンはHis・BindKits(Novagen社)の変性条件下でのプロトコールに従い、クロマトグラフィ分離し、抗原蛋白とした。
1. モエシンの発現ベクターの作成
名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報薬理学講座よりモエシンのcDNAを入手し、Kpn Iをもちいてコーディング部位を含む領域を切り出し、pET−44c(Novagen社、Madison、WI)に組込んだ。
2. 遺伝子組換えモエシンの大腸菌による発現
実施例3の1で得られた発現プラスミドpET−44c−moesinを用いて大腸菌BL21(Novagen社)を形質転換させ、得られた単一コロニーを発現実験の種菌とした。独立した4クローンをアンピシリン100μg/ml含有のLB(ルリアベターニ)プレート上に一面に塗布し、37℃で一夜静置培養した。プレートの菌体を白金耳でかきとり、アンピシリン含有LB培地3mlに植え、37℃で約1.5時間振とう培養を行った。その後、吸光度550nm(OD550)を測定し、20mlの同培地にOD550=0.2となるように培養液を加え、振とう培養を続けた。培養後、約2時間でOD550=0.8に達した時点でIPTG(isopropyl−1−thio−β−D−galactoside)を終濃度1mMになるように加えた。IPTG添加から、0、4、18時間後において、菌のOD550=1.0相当を13000rpm、2分間遠心後集菌した。サンプル液を上記電気泳動用ローディング液に溶解し、そのライセート10μlをウエルにロードして10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ない、組換えモエシンの発現を確認した。精製用の菌体の発現は100mLスケールで行い、18〜20時間培養を続け、トミー精工製RL−131で3000rpm、30分間の遠心により菌を集めた。
3.遺伝子組換えモエシンの精製
菌体を1× Binding Buffer(His・BindKits、Novagen社) 40mlに懸濁した後、1mlずつエッペンドルフチューブに分注し、約1分間の超音波破砕を3回繰り返した後、3000rpmで30分間遠心し、沈渣を得た。この沈渣を20ml 1×Binding Bufferで洗浄し、6M尿素を含む1×Binding Buffer 5mlで60分間氷上においた後、溶出した上清を遠心により回収した。上清中に含まれるHisタグのついた組換えモエシンはHis・BindKits(Novagen社)の変性条件下でのプロトコールに従い、クロマトグラフィ分離し、抗原蛋白とした。
(実施例4) 遺伝子組換えモエシンを用いた患者血清中の抗モエシン抗体の検出
1.ウエスタンブロッティング
実施例3で得られた抗原タンパク質を1ウエルあたり200ng電気泳動した。そのゲル中の抗原タンパク質をメタノール含有転写緩衝液中で、190mA定電流で1.5時間かけてPVDF膜上に電気的に移し取った。上記PVDF膜を5%スキムミルク溶液中で4℃で一晩ブロッキングを行った。その後、1%BSA−PBSで200倍に希釈した正常人血清、患者血清あるいは抗モエシン抗体と1〜2時間室温で反応させた後TBS−Tで3回洗浄した。さらにTBSで1回洗浄し1%BSA−PBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ヒトIgG Fcγ分画(Jackson ImmunoResearch社)もしくはアルカリフォスファターゼ標識ラビット抗マウスIgG(Chemicom社)と1時間室温で反応させた。TBS−Tで3回洗浄し、さらにTBSで1回洗浄後、BCIP/NBT phosphatase substrate system(KPL社)を用いて発色を起こさせた。図2はその代表的なパターンを示したものである。レーンmは分子量マーカー、レーン1からレーン2は正常ヒト血清、レーン3からレーン5は再生不良性貧血患者血清、レーン6は抗モエシン抗体の結果を示す。
2.ELISA
実施例3で得られた組換えタンパク質250〜500ngを96−well Nunc−Immuno plate(Nalge−Nunc International、Roskilde、Denmark)に4℃で一夜コートした。Phosphate−buffered saline(PBS) containing 10% fetal calf serum(PBS−FCS)で3回洗浄後PBS−FCSを加え、4℃で一夜ブロッキングしたものをELISA用プレートとした。1000倍に希釈した血清を50μl加え、室温で60分間インキュベートした。PBS−FCSで3回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG(1:5000、 Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で60分間インキュベートし、同様に洗浄した。その後、3, 3',5, 5'−tetramethylbenzidine(TMB)substrate(Pierce、Rockford、IL)による発色操作を行い、OD450の吸光度を測定した。この結果を図3に示す。正常ヒト血清(B)の平均値±3SDを各々の抗原に対するカットオフ値(OD450=0.284)とした場合、再生不良性貧血患者の47%が有意に高い抗体価を示した。すなわちこのELISA系を用いることにより、免疫病態をもつ再生不良性貧血を治療前に診断することができる。
1.ウエスタンブロッティング
実施例3で得られた抗原タンパク質を1ウエルあたり200ng電気泳動した。そのゲル中の抗原タンパク質をメタノール含有転写緩衝液中で、190mA定電流で1.5時間かけてPVDF膜上に電気的に移し取った。上記PVDF膜を5%スキムミルク溶液中で4℃で一晩ブロッキングを行った。その後、1%BSA−PBSで200倍に希釈した正常人血清、患者血清あるいは抗モエシン抗体と1〜2時間室温で反応させた後TBS−Tで3回洗浄した。さらにTBSで1回洗浄し1%BSA−PBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ヒトIgG Fcγ分画(Jackson ImmunoResearch社)もしくはアルカリフォスファターゼ標識ラビット抗マウスIgG(Chemicom社)と1時間室温で反応させた。TBS−Tで3回洗浄し、さらにTBSで1回洗浄後、BCIP/NBT phosphatase substrate system(KPL社)を用いて発色を起こさせた。図2はその代表的なパターンを示したものである。レーンmは分子量マーカー、レーン1からレーン2は正常ヒト血清、レーン3からレーン5は再生不良性貧血患者血清、レーン6は抗モエシン抗体の結果を示す。
2.ELISA
実施例3で得られた組換えタンパク質250〜500ngを96−well Nunc−Immuno plate(Nalge−Nunc International、Roskilde、Denmark)に4℃で一夜コートした。Phosphate−buffered saline(PBS) containing 10% fetal calf serum(PBS−FCS)で3回洗浄後PBS−FCSを加え、4℃で一夜ブロッキングしたものをELISA用プレートとした。1000倍に希釈した血清を50μl加え、室温で60分間インキュベートした。PBS−FCSで3回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG(1:5000、 Jackson ImmunoResearch)を加え、室温で60分間インキュベートし、同様に洗浄した。その後、3, 3',5, 5'−tetramethylbenzidine(TMB)substrate(Pierce、Rockford、IL)による発色操作を行い、OD450の吸光度を測定した。この結果を図3に示す。正常ヒト血清(B)の平均値±3SDを各々の抗原に対するカットオフ値(OD450=0.284)とした場合、再生不良性貧血患者の47%が有意に高い抗体価を示した。すなわちこのELISA系を用いることにより、免疫病態をもつ再生不良性貧血を治療前に診断することができる。
上述した結果から明らかなように、本発明の検査方法を用いれば、再生不良性貧血が自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血のいずれかを判別することができるため、適切な治療方針の決定を速やかに下すことができる。以上より、この自己抗原タンパク質を用いた免疫学的検出法は再生不良性貧血の自己抗原に基づく血清診断法であり、簡便かつ信頼性が高いことから極めて利用価値が高い。
Claims (6)
- 生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出することを含む、再生不良性貧血の検査方法。
- 該再生不良性貧血は自己免疫性である、請求項1記載の方法。
- 自己免疫性再生不良性貧血と造血幹細胞異常性再生不良性貧血との判別方法である、請求項1記載の方法。
- 再生不良性貧血に対する免疫抑制療法の適否の判別方法である、請求項1記載の方法。
- 生体試料中の、モエシンを特異的に認識する抗体を検出する物質を含む、再生不良性貧血の検査用試薬。
- 該物質がモエシン又はその部分ペプチドである、請求項5記載の試薬。
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JP2013541713A (ja) * | 2010-10-08 | 2013-11-14 | シャンハイ クーシン バイオテック カンパニー,リミテッド | 免疫性血小板減少症と関連しているモエシン断片 |
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CN113945722A (zh) * | 2021-10-15 | 2022-01-18 | 广东医科大学附属医院 | 一种再生障碍性贫血诊断标志物及其在制备试剂盒中的应用 |
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- 2004-11-17 JP JP2004333725A patent/JP3735676B1/ja active Active
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