JP2006145137A - 防食及び煤塵付着防止性能を有する伝熱管 - Google Patents

防食及び煤塵付着防止性能を有する伝熱管 Download PDF

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淑亮 石黒
Motoroku Nakao
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Abstract

【課題】経済上や性能上、また装置の大型化などの問題を引き起こすことなくボイラ燃焼排熱を利用する低温熱交換器において腐食及び煤塵付着防止性能を有する伝熱管を提供することである。
【解決手段】伝熱管(母材15)の表面に機能の異なる2層の被膜を形成することにより達成できる。2層の被膜のうち外面側の第2層目の被膜16を撥水性を有する被膜として伝熱管を腐食から保護すると同時に、伝熱管の表面に煤塵や水滴が付着しにくいようにし、内面側の第1層目の被膜19をフクレ発生寿命の長い被膜とすることにより、伝熱管全体として薄い被膜厚さとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、火力発電設備に関わり、特に低温熱交換器における腐食及び煤塵の付着を防止する性能を有する被覆を施した伝熱管に関する。
火力発電設備には、発電効率及び排煙処理効率を向上させるため、ボイラ排ガス系統に燃焼排熱を利用した熱交換器が設置されることが多い。
図2は石炭焚ボイラの排ガス処理系統のフローの一例を示す。ボイラ1を出た排ガスは、空気予熱器2において、ボイラ燃焼用空気20を予熱するため熱交換される。石炭焚ボイラでは、排ガス中に多くの煤塵や硫黄酸化物が含まれるため、電気集塵機6や脱硫装置8が必須である。そしてこれらの装置の運転効率や構成材料の健全性、煙突からの排出に必要な排ガス温度などを総合的に考慮して、空気予熱器2出口からの排ガス温度を一旦低下させ、排ガスを煙突から排出させる前に適切な温度まで昇温するため、ガスガスヒータ(Gas-Gas-heater 以下、GGHと表す)3が設置されている。
GGH3と電気集塵機6と通風機7及び9の排ガス処理系統上の設置位置は、使用燃料や運用条件などに応じてプラントにより異なるが、図2の例では脱硫装置8の前流にGGH3の熱回収部4、脱硫装置8の後流にGGH3の再加熱部5が配置されている。
GGH3では、熱回収部4と再加熱部5の間が連結されており、通常熱媒11で熱伝達が行われる。GGH熱回収部4のガス温度は、入口で約100〜160℃、出口で約60〜100℃、再加熱部5のガス温度は、入口で約40〜70℃、出口で約70〜110℃程度である。
熱回収部4及び再加熱部5の伝熱管には、熱交換がされやすいように伝熱効率の高いフィンチューブが多用される。伝熱管やフィンの材質は、管内の水や蒸気の温度や圧力の条件及び管外(ガス側)の温度条件によって使い分けられるが、経済性、施工性及び汎用性の点から、炭素鋼とされることが多い。
このようなGGH3においては、以下の3つの問題点がある。
第1の問題点は、低温で温度差の小さい熱交換器であるため、大きな伝熱面積を必要とし、装置が大型となることである。第2の問題点は、熱回収部4においては主に煤塵の付着、再加熱部5においては主に凝縮水滴の付着による伝熱の阻害及び通風抵抗の増大が起こりやすいことである。第3の問題点は、熱交換器が低温であるため、排ガス中に含まれる酸や水分の凝縮、あるいは飛散灰に含まれる塩化物により伝熱管の腐食が起こりやすいことである。
前記装置が大型化するという問題は、伝熱管配置及び伝熱管に設けられるフィンの伝熱管単位長さあたりの山数を密にすることで解決できるが、このようにすると煤塵や水滴の付着が伝熱管のフィン巻き付け部に起こりやすく、伝熱の阻害及び通風抵抗増大の問題がいっそう大きくなり、従来のブロアによる除塵法では付着物の除去が不十分である。伝熱管材料の腐食は、腐食生成物による煤塵等の付着が加速することも加わって進行する。しかし、実用上充分な耐食性を持つステンレス鋼の適用は、装置規模が大きいことから、コスト増大が膨大なものとなり、有効な策とは言えない。
特開平6−26786号公報 特開平3−45893号公報
上記従来技術に対し、伝熱管表面を防食及び煤塵付着防止効果の高い被膜、例えば撥水性の高い樹脂で被覆する方法が考えられる。すなわち、前記被覆により伝熱管の表面を腐食環境から遮断すると同時に、被膜上の水滴を流下しやすくするができ、煤塵や付着水の伝熱管表面からの脱離を容易にすることができる。
上記特許文献1においては、金属板の表面に特定粒径のフッ素樹脂を分散させた被膜を施すことにより、不純物の付着や結露、着霜などを防止する熱交換プレートの構成が記載されている。
また、上記特許文献2においてはアルミニウムフィンを水に対する接触角が90度以上の撥水性被膜で覆い、その被膜上に微細突起を形成した熱交換器用フィン材の構成が記載されている。伝熱管を撥水性被膜で被覆した場合、撥水性の向上に伴って、伝熱性が低下するので被膜はできるだけ薄く、熱伝導率の高い材料を適用するのが望ましい。ところが被膜を薄くすると被膜外面の温度が高いことから、被膜内面が冷却される温度勾配のある環境下では、湿潤により被膜にフクレが生じやすくなるという問題があった。なお、フクレとは、被膜表面に生じる大小の水ぶくれが無数に生じる現象を言う。
本発明者らが被膜のフクレ発生寿命の要因について鋭意研究を重ねた結果、被膜のフクレ発生寿命は、温度、被膜厚さ、被膜材質、下地処理条件に依存性があることを見出した。
まず温度に関してGGH再加熱部5の温度領域では、ガス温度が高いほどフクレ発生寿命は短く、ガス温度が低くなるほどフクレ発生寿命は長くなる。次に被膜厚さは、厚いほどフクレ発生寿命は長く、薄いほど短くなる。次に材質としては、例えば、高撥水性のフッ素樹脂は、水蒸気透過性が高く、フクレが発生しやすい。このように被膜単独で十分なフクレ発生寿命を確保するためには、被膜厚さを厚くする必要があるが、そのようにすると伝熱特性が低下してしまうことから、装置規模を大型化しなければならないという問題が生じる。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に対して、経済上や性能上、また装置の大型化などの問題を引き起こすことなくボイラなどの燃焼排熱を利用する低温熱交換器において、防食及び煤塵付着防止性能を有する伝熱管を提供することにある。
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、多数の管からなり、該管の外面側を気体が流れる管式熱交換器の伝熱管において、伝熱管外面は樹脂製の2層の被膜からなり、伝熱管母材側の第1層目の被膜はフクレ発生寿命の長い被膜からなり、第2層目の被膜は撥水性を有する被膜からなる防食及び煤塵の付着防止性能を有する伝熱管である。
請求項2記載の発明は、前記第1層目の被膜はシリコーン樹脂系被膜であり、前記第2層目の被膜はフッ素樹脂系被膜からなる請求項1記載の防食及び煤塵の付着防止性能を有する伝熱管である。
(作用)
図4(a)は、撥水性被膜16を形成した母材15上に凝縮した水滴17と母材表面との接触角θ1を模式的に示す断面図であり、図4(b)は、被膜のない母材15上に凝縮した水滴17’と母材表面との接触角θ2を模式的に示す断面図である。
図4(a)に示す水滴17は図4(b)に示す水滴17’に比べて接触角が大きい(θ1>θ2)。球状に近い図4(a)に示す撥水性被膜状の水滴17は、扁平な形状の被膜のない伝熱管母材上の図4(b)に示す水滴17’に比べて、伝熱管表面との接触面積が小さい。したがって、図4(a)の水滴17は、外力により表面上を移動しやすいので、鉛直面に付着している水滴17は流下しやすい。また、伝熱管表面に対して垂直な方向への加速度が生じたときには脱離しやすい。
そこで請求項1記載の発明によれば、伝熱管母材側の第1層目の被膜としてフクレ発生寿命の長い被膜を形成し、外面の第2層目の被膜として撥水性被膜を形成している。すなわち、外面の第2層目の撥水性被膜により、煤塵や水滴の脱離が容易に起こる状態として腐食及び煤塵の付着を防止するとともに膜厚を薄くする。また、第1層目のフクレ発生寿命の長い被膜により、被膜母材界面でのフクレの発生を起きにくくするとともに膜厚を薄くする。これにより、被膜に要求されるフクレ発生寿命を満足させながら、撥水性被膜単一の場合よりも全体として薄い被膜厚に抑えることができ、伝熱性能の低下も少なくすることができる。
そして請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の作用に加えて、伝熱管母材側の第1層目のシリコーン樹脂系被膜は、フクレ発生を防止し、また前記第2層目のフッ素樹脂系被膜が撥水性を有することから、伝熱管の腐食を防止し、煤塵の付着を防止する。
本発明によれば、経済上や性能上、装置の大型化などの問題を引き起こすことなくボイラなどの燃焼排熱を利用する低温熱交換器において、防食及び煤塵付着防止性能を有する伝熱管を提供することができる。そして例えば火力発電設備における低温熱回収部の伝熱効率向上、材料の腐食防止及び通風損失の低減が図れ、装置の小型化並びにプラントの運用効率の向上に多大の効果がある。
以下に本発明の実施例を、図面と共に説明する。
図1は、被覆が2層の被膜からなり、伝熱管母材15側の第1層目にフクレ発生寿命の長い被膜19、第2層目に撥水性を有する被膜16を形成した防食及び煤塵の付着防止効果に優れる伝熱管の概略断面図を示す。図3(a)は本実施例のフィンチューブ12の側面図を示し、図3(b)は図3(a)のS−S線矢視断面図を示す。図3においてフィン14の表面両側にも、図示していないが2層の被膜が形成されている。
図3におけるフィンチューブ12の構成材料(母材)は、炭素鋼であり、フィン14及び管15の表面に2層の被膜が形成されている。本実施例における被膜材料として、母材15側の第1層目の被膜19には、シリコーン含有フェニル樹脂を用いている。被膜19の施工は、スプレ、浸漬、刷毛塗り等方法を問わない。なお、水蒸気透過性が低く、フクレ発生寿命の長い樹脂であれば被膜19の材質を問わず、エポキシ変性シリコーン樹脂などでも良い。
第2層目の被膜16には、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂を用いている。一般にフッ素樹脂は、撥水性が高く、耐熱性に優れ、酸やアルカリに対しても耐性が高いことから、伝熱管の保護被膜として適している。またフッ素樹脂の表面は摩擦係数が小さく、水滴が接着しにくい。被膜16の施工は樹脂焼き付け塗装、テープ被覆後焼き付けなど、方法は問わない。なお、撥水性があり、適用箇所における耐熱性を有しているものであれば被膜16の材質を問わず、他のフッ素樹脂、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などでも良い。
第1層目の被膜19として、膜厚0.1mmのシリコーン樹脂被膜を形成し、第2層目の被膜16として膜厚0.1mmのフッ素樹脂被膜を形成した試験片は、12,000時間以上経過してもフクレ発生が認められなかった。
図5には、デュポン式ブリスター試験装置を用い、外面側を70℃の純水、内面側を外気放冷とした条件下におけるフクレ発生寿命と、被膜厚さとの関係を示す。膜厚0.1mmのフッ素樹脂被膜のフクレ発生寿命は、樹脂の種類にもよるが数十〜数百時間の範囲にある。一方膜厚0.1mmのシリコーン樹脂被膜のフクレ発生寿命は数千時間以上である。
図5によれば、被膜厚さが0.1mmにおけるシリコーン樹脂系被膜のフクレ発生寿命と、同0.6mmにおけるフッ素樹脂系被膜のフクレ発生寿命がほぼ同じである。このことから仮にフッ素樹脂で同等のフクレ発生寿命を達成するには膜厚を少なくとも0.6mm以上にする必要があることが分かる。
さらに図5によれば、1000時間以上のフクレ発生寿命を達成するのにフッ素樹脂の単一層被膜とした場合では、少なくとも1mm以上の被膜厚さが必要であることが分かる。
したがって、伝熱管母材15上に第1層目にフクレ発生寿命の長い被膜19を形成し、その外面の第2層目に撥水性被膜16を形成することで、煤塵や水滴の脱離が容易に起こる状態として腐食及び煤塵の付着を防止するとともに膜厚を薄くすることができる。これにより、被膜16,19に要求されるフクレ発生寿命を満足させながら、撥水性被膜単一の場合よりも全体として薄い被膜厚に抑えることができ、伝熱性能の低下も少なくすることができる。
本発明は、低温熱交換器における腐食及び煤塵の付着防止性能が必要とされる伝熱管に利用可能性がある。また本発明は、低温熱交換器に限らず、他の技術分野においても、耐腐食及び煤塵付着防止性能が要求される火力発電設備又は空調装置などの伝熱管に応用できる。
本発明の実施例の伝熱管表面の被覆の構成を示す概略断面図である。 石炭焚ボイラの排煙処理系のフローの一例を示す図である。 母材側の第1層にフクレ発生寿命の長い被膜、外面側の第2層に撥水性被膜を形成したフィンチューブの外観側面図(図3(a))と、図3(a)のS−S線矢視断面図(図3(b))である。 撥水性被膜を形成した母材に凝縮した水滴と表面との接触角を模式的に示す伝熱管の断面図(図4(a))と、被膜のない母材に凝縮した水滴と表面との接触角を模式的に示す伝熱管の断面図(図4(b))である。 母材上の被膜厚さとフクレ発生寿命との関係を示す図である。
符号の説明
1 ボイラ 2 空気予熱器
3 ガスガスヒータ(GGH)4 熱回収部
5 再加熱部 6 電気集塵機
7 通風機 8 脱硫装置
9 通風機 10 煙突
11 熱媒 12 フィンチューブ
14 フィン 15 母材(管)
16 第2層目被膜(撥水性被膜)
17,17’ 水滴
19 第1層目被膜(シリコーン樹脂系被膜)
20 ボイラ用燃焼空気
θ1,θ2 接触角

Claims (2)

  1. 多数の管からなり、該管の外面側を気体が流れる管式熱交換器の伝熱管において、
    伝熱管外面は樹脂製の2層の被膜からなり、伝熱管母材側の第1層目の被膜はフクレ発生寿命の長い被膜からなり、第2層目の被膜は撥水性を有する被膜からなることを特徴とする防食及び煤塵の付着防止性能を有する伝熱管。
  2. 前記第1層目の被膜はシリコーン樹脂系被膜であり、前記第2層目の被膜はフッ素樹脂系被膜からなることを特徴とする請求項1記載の防食及び煤塵の付着防止性能を有する伝熱管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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