JP2006144749A - 燃料噴射弁 - Google Patents

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元幸 安部
Yoshio Okamoto
良雄 岡本
Noriyuki Maekawa
典幸 前川
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政徳 三富士
Atsushi Sekine
篤 関根
Toru Ishikawa
石川  亨
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Abstract

【課題】 種々の内燃機関に適合させるのにより好適な燃料噴射弁を実現する。
【解決手段】 燃料噴射弁10は、噴射孔12に柱状の噴孔ピース14が挿入されてなり、噴孔ピース14は、周方向に分散させて燃料噴射流路16a、16b、16cを形成するものであり、燃料噴射流路16aは、断面積又は断面形状のいずれか一方が燃料噴射流路16b、16cと異ならせることにより、燃料の噴霧の広がりや貫徹力などの噴霧状態を制御できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、内燃機関に燃料を供給する燃料噴射弁に関する。
例えば、自動車のエンジンとして利用される内燃機関に燃料を供給する燃料噴射弁は、先端に穿孔された燃料噴射孔を介して内燃機関内に燃料を噴射するように形成されたものが知られている。
また、燃料噴射弁の燃料噴射孔に噴射調整部材を挿入し、挿入された噴射調整部材の表面と燃料噴射孔の内面との間に形成される微細な燃料噴射流路を介して燃料を噴射することにより、液体燃料を霧状にすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−189443号公報
ところで、内燃機関としては、例えば筒内直接噴射式やポート噴射式など種々のものがあることから、内燃機関の形態に応じて燃料の噴霧状態を調整することが要望される。
しかし、特許文献1のような従来の燃料噴射弁は、燃料の噴霧状態の調整について配慮されていない。したがって、例えば、筒内直接噴射式では、点火プラグの周囲まで燃料が適切に噴霧されずに燃焼が不安定になったり、シリンダボア壁面やピストン冠面に燃料が付着して排気中の未燃燃料成分や煤が増大する。ポート噴射式では、吸気弁に燃料が付着することに起因して未燃燃料成分の排出が増大する。このような問題を回避しようとすると、燃料噴射弁の搭載位置に一定の制限が生じ、結果として内燃機関の部品レイアウトや燃料コンセプトの自由度が制約される。
本発明の課題は、種々の内燃機関に適合させるのにより好適な燃料噴射弁を実現することにある。
上記課題を解決するため、本発明の燃料噴射弁は、燃料噴射孔に柱状の噴射調整部材が挿入されてなり、噴射調整部材は、周方向に分散させて複数の燃料噴射流路を形成するものであり、燃料噴射流路の少なくとも1つは、断面積又は断面形状のいずれか一方が他の燃料噴射流路と異なることを特徴とする。
このようにすれば、燃料噴射弁に燃料が供給されると、供給された燃料は複数の燃料噴射流路を介してそれぞれ噴霧される。噴霧される各燃料は、各燃料噴射流路の断面積や断面形状に応じて噴霧量が異なる。したがって、燃料噴射弁から噴霧された燃料は、各燃料噴射流路の断面積や断面形状に由来した広がりや貫徹力を有することになる。
すなわち、各燃料噴射流路の断面積や断面形状を調整することにより、噴霧の広がりや貫徹力などの噴霧状態を調整できる。この調整については、噴射調整部材の形状を変えることにより簡単にできるから、種々の内燃機関に燃料噴射弁を適合させることが容易になる。
また、燃料噴射流路の断面積又は断面形状を異ならせることに代えて、又はそれと共に、各燃料噴射流路を周方向に不等間隔で位置させることができる。これにより、例えば、各燃料噴射流路の断面積又は断面形状が同じときでも、燃料噴射弁により噴霧される燃料は、各燃料噴射流路の位置に由来した広がりや貫徹力を有することになる。すなわち、各燃料噴射流路の間隔を周方向に調整することにより、噴霧状態を調整できる。
この場合において、噴射調整部材については、燃料噴射孔の内面に対向する外周面に周方向に分散させて複数の切り欠きを形成し、各切り欠きの表面と噴射孔の内面との間に燃料噴射流路を形成できる。すなわち、各切り欠きの大きさや形を変えることにより、燃料噴射流路の断面積又は断面形状を調整でき、燃料の噴霧状態を調整できる。
また、燃料噴射流路の断面については、扁平部と、その扁平部の両側を連結する湾曲部とにより区画して形成するのが望ましい。これにより、燃料噴射流路を通流する液体燃料は、断面形状に由来した渦流を生じるため、液膜形成された燃料として噴射される。その結果、一般の燃料噴射弁の燃料噴射流路の数を減らしつつ、燃料の微粒化をより促進できる。
また、燃料噴射孔については、先端部が先端側に向うにつれて拡径して形成することができる。これにより、燃料噴射孔に導かれた燃料は、燃料噴射孔の内面に沿って噴霧されるため、先端部の傾斜角度に対応して噴霧の広がりがより大きくなる。すなわち、先端部の広がりを調整することにより、燃料の噴霧の広がりを調整できる。
また、燃料噴射孔については、先端側の対向する内面の傾斜角度を異ならせることができる。これにより、燃料噴射弁により噴霧された燃料は、先端側内面の傾斜角度に応じて噴霧方向が偏向する。すなわち、先端側の内面の傾斜角度を調整することにより、燃料の噴霧の偏りを調整できる。
また、噴射調整部材については、切り欠きの先端側の表面に、その表面から径方向に突出する流路屈曲部を有して形成できる。これによれば、各燃料噴射流路に導かれた燃料は、切り欠き表面に沿って通流した後、流路屈曲部に衝突することにより、進行方向が軸方向から径方向に曲げられる。進行方向が変わった燃料は、燃料噴射孔からシャワー状に噴霧されることになり、噴霧の広がりをより一層大きくできる。
本発明によれば、種々の内燃機関に適合させるのにより好適な燃料噴射弁を実現できる。
(第1の実施形態)
本発明を適用した燃料噴射弁の第1の実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態の燃料噴射弁10の断面図である。図2Aは、図1の燃料噴射弁10の先端側の拡大断面図である。図2Bは、図2Aの燃料噴射弁10を先端側(図示の矢印X側)から見た図である。なお、説明の便宜上、燃料噴射弁10の燃料導入側を基端側と称し、燃料噴射側を先端側と適宜称する。
燃料噴射弁10は、例えば自動車のエンジンとして利用される内燃機関(以下、エンジンという)に燃料を供給するものである。この燃料噴射弁10は、先端に穿孔された燃料噴射孔12(以下、噴射孔12という)を介してエンジンに燃料を供給する。
本発明に係る燃料噴射弁10は、図1及び図2に示すように、噴射孔12に柱状の噴射調整部材としての噴孔ピース14が挿入される。噴孔ピース14は、周方向に分散させて複数の燃料噴射流路(例えば、3つの燃料噴射流路16a、16b、16c)を形成するものである。燃料噴射流路16a、16b、16cの少なくとも1つは、断面積又は断面形状の一方が他のものと異なる。例えば、燃料噴射流路16aは、燃料噴射流路16b、16cよりも断面積が大きく形成されている。燃料噴射流路16a、16b、16cの各断面は、扁平部と、扁平部の両側を弓状に連結する湾曲部とにより区画された形状である。
より具体的に、燃料噴射弁10について説明する。図1に示すように、燃料噴射弁10は、通常時閉式の電磁弁として構成されたものであり、燃料が導入される供給口17を有する筒形のコア18と、コア18の先端側に軸方向に進退可能に連設された筒形のアンカ20と、アンカ20の内面の先端側に支持された挟持腕を有するジョイント22と、ジョイント22に固定されて軸方向に延在する中実の弁体24と、弁体24の外面を燃料通流用の隙間を介して包囲する筒形のノズル部材26などから構成されている。また、コア18の先端側をコイル収納用の空間を介して包囲するノズルホルダ27と、アンカ20とノズル部材26の基端側とを包囲するヨーク29が備えられている。
コア18は、内部にスプリング30が配設されている。スプリング30は、進退部材32を介してアンカ20に連接されている。アンカ20は、コア18と同じ内径を有する小径部と、その小径部よりも内径が大きい大径部とを有して形成されている。アンカ20の小径部は、内面に進退部材32が固定されている。アンカ20の大径部は、内面にジョイント22が支持されている。ジョイント22は、軸方向に延在する挟持腕を有し、その挟持腕により弁体24が挟まれている。弁体24は、弁体ガイド34を介してノズル部材26に同軸に収納されている。ノズル部材26は、アンカ20の外径と同じ内径を有する大径部と、その大径部よりも内径が小さい小径部とを有して形成されている。ノズル部材26の大径部は、内周面に接触する円板形の弁体ガイド34が配設されている。ノズルホルダ27は、コア18の先端側の外径よりも大きい内径を有し、コア18との間に形成された空間にコイル36が配設されている。コイル36にコネクタ38が接続されている。
図2に示すように、ノズル部材26は、先端の縁が軸方向に延びて形成されている。換言すれば、ノズル部材26は、先端側に大径部を有する。ノズル部材26の大径部の中に、弁体ガイド40が収納されている。弁体ガイド40は、ガイド穴が中央に形成された板状部材である。この弁体ガイド40は、ノズル部材26の内径よりも小さい外径を有し、ノズル部材26の内面との間に、燃料流路としての隙間を形成する。さらに弁体ガイド40は、ノズルプレート28に接触する側の面に、燃料流路としての溝が刻まれている。この溝は、弁体ガイド40の外周側から内周側にかけて水平方向に延在して形成されたものであり、燃料流路41として利用される。このような弁体ガイド40のガイド穴に弁体24の先端が軸方向に進退可能に位置される。また、ノズル部材26は、大径部の先端側開口にノズルプレート28がはめ込まれている。ノズルプレート28は、噴射孔12としての貫通孔が中央に形成された板状部材である。噴射孔12は、基端側に円錐面状のシート部42を有する。シート部42は、軸方向に進退する弁体の先端が離着座する弁座である。このような噴射孔12に噴孔ピース14が圧入される。
図3は、図1及び図2の噴孔ピース14の拡大斜視図である。図3に示すように、噴孔ピース14は、噴射孔12の内面に対応する円柱形の部材を切削加工することにより形成される。なお、噴孔ピース14の材料としては、例えば、ステンレスなどを用いればよい。
より具体的には、噴孔ピース14は、噴射孔12の内面に対向する外周面に周方向に分散させて複数の切り欠きが形成される。例えば、図3に示すように、噴孔ピース14は、周方向に分散させて複数(例えば、3つ)の切り欠き面44a〜44cが形成されている。切り欠き面44a〜44cは、図2Bのように噴射孔12の内面との間に3つの微細な隙間を形成する。各隙間は、エンジンに燃料を噴霧する燃料噴射流路16a〜16cとしての役割を担う。ここでの燃料噴射流路16aは、燃料噴射流路16b、16cよりも断面積が大きく形成されている。
各切り欠き面44a〜44cのそれぞれに隣接して接触面46a〜46cが位置されている。例えば、切り欠き面44aの周方向の隣、つまり切り欠き面44aと切り欠き面44bとの間に接触面46aが位置している。接触面46aは、噴射孔12の内面に対応した曲率を有する弧面である。さらに接触面46aの基端側に、接触面46aと同心の弧面である逃げ面48aが形成される。逃げ面48aは、噴射孔12の内径よりも小さい曲率を有する。この逃げ面48aの基端側に、傾斜面49aを介して張出部50aが形成されている。張出部50aは、噴孔ピース14の基端側の端部から径方向につば状に張り出して形成されたものである。傾斜面49aは、張出部50aから逃げ面48aにわたって軸心方向に向って傾斜している。傾斜面49aの傾斜角は、図2のシート部42の傾斜角に対応している。図示の便宜上、接触面46a、逃げ面48a、傾斜面49a、張出部50aを中心に説明したが、他の接触面46b、46cや、逃げ面48b、48cや、傾斜面49b、49cや、張出部50b、50cも同様である。
噴孔ピース14の製造は、プレス加工によっても行われる。この場合、ステンレスなどの材料が、三面カットされた三角柱形の部材としてプレス加工される。加工された三角柱形の部材は、長手方向に延びる稜線が面取りされる。なお、接触面46aや逃げ面48aは、噴射孔12に挿入するに際しての精度が要求されるため、面取り処理は、切削または研削により行われる。これにより、接触面46aや逃げ面48aを有する噴孔ピース14が製造される。
このような噴孔ピース14は、図2に示すように、噴射孔12に圧入される。圧入された噴孔ピース14は、傾斜面(例えば、傾斜面49a)がシート部42に沿って密着する。したがって、噴孔ピース14は、噴射孔12に位置して保持される。
図4は、弁体24の先端部がシート部42に着座した状態を示している。弁体24の先端部は、先端側に向うにつれて径が絞られると共に、先端に平坦面を有している。ここでの平坦面は、噴孔ピース14の天井面と平行である。このような弁体24の先端部がシート部42に線接触することにより、燃料流路41を通流する燃料がシールされる。
図4の状態において、図1のコネクタ38に電流を供給すると、供給された電流に基づきコイル36により磁界が発生する。発生した磁界は、コア18とアンカ20との間に磁気吸引力を生じさせる。これによって、磁気吸引力に起因して、基端方向に向う変位力がアンカ20に発生する。発生した変位力がスプリング30の付勢力を超えると、アンカ20は基端方向に移動する。アンカ20の移動に随伴して、弁体24が基端側に変位することにより、弁体24の先端部がシート部42から離座する。
図5Aは、弁体24の先端部がシート部42から離座した状態を示している。図5Aに示すように、燃料流路41が燃料噴射流路16a〜16cに連通している。したがって、燃料噴射弁10に燃料が供給されると、供給された燃料は燃料流路41に流入する。流入した燃料は、シート部42の表面を介し、燃料噴射流路16a〜16cに導かれる。導かれた燃料は、燃料噴射流路16a〜16cの噴射口からエンジン内に噴霧される。所定後、図1のコネクタ38に供給している電流を遮断すると、弁体24は先端方向に変位して図4に示す状態に戻る。すなわち、コネクタ38への電流供給と遮断を所定タイミングで繰り返すことにより、弁体24は軸方向に進退して図4の状態と図5Aの状態が繰り返される。
図5Bは、燃料噴射弁10を先端側から見た図であり、燃料噴射流路16a〜16cに燃料が通流する状態を示している。図5Bに示すように、各燃料噴射流路16a〜16cは、断面が半円形である。その断面形状に由来して、液体燃料は、液膜状となって各燃料噴射流路16a〜16cから噴霧される。すなわち、燃料の微粒化がより促進される。例えば、図5Bに示すように、燃料噴射流路16a〜16cに燃料が通流すると、その燃料の流れに起因した渦流が燃料噴射流路16a〜16c内に生じる。その渦流は、切り欠き面44a〜44cの表面を端側から中央側に向った後に噴射孔12の内面側に向う流れと、噴射孔12の内面を中央側から端側に向う流れとにより形成される。ここでの中央とは、例えば、燃料噴射流路16aの場合、噴射孔12の内面から切り欠き面44aまでの距離が最も大きい位置である。このような渦流に起因して、各燃料噴射流路16a〜16cから噴霧される燃料は、燃料噴射弁10の中心軸から外側方向と、切り欠き面44a〜44cの平面方向に拡散されることにより、液膜状になって噴霧される。要するに、噴射孔12の断面が半円形であることに起因して、液体燃料の微粒化が促進される。
図6Aは、燃料噴射弁10から燃料が噴霧された状態を上段に、その噴霧された燃料の断面形状を模式的に下段に示す図である。図6Aに示すように、各燃料噴射流路16a〜16cから燃料60a〜60cが噴霧されている。燃料60aは、燃料噴射流路16aから噴霧された燃料に対応している。同様に、燃料60b、60cは、燃料噴射流路16b、16cに対応している。図からわかるように、燃料60aは、流量が多いと共に噴霧の広がりや貫徹力が大きい。これに対し、燃料60b、60aは、流量が少ないと共に噴霧の広がりや貫徹力が小さい。これは、燃料噴射流路16aの断面積が、燃料噴射流路16b、16cの断面積よりも大きいことに起因する。
図7は、燃料噴射弁10がエンジンに搭載された例を示す図である。より具体的には、図7は、側方噴射式の筒内噴射ガソリンエンジンを示す図であり、成層燃焼のための燃料噴射が行われた態様を模式的に現している。
図7に示すように、エンジン70は、中央側から端側にかけて傾斜した天井面を有する筒72と、筒72の天井頂部に設けられた点火プラグ74と、筒72の天井傾斜部に配設された吸気弁76や排気弁78と、筒72の底部に冠面が臨んで配設されたピストン80などから構成される。そして、筒72の側壁に燃料噴射弁10が搭載される。より具体的には、燃料噴射弁10は、吸気弁76側の側壁に配設されている。
一般に、筒内噴射エンジンにおいては、いわゆる成層燃焼を行わせるために、圧縮工程で燃料を噴射し、噴射した燃料と空気との混合比が大きい部分を点火プラグの近傍にのみ形成させる必要がある。成層燃焼とは、全体としては薄い混合気の中に濃い混合気の層状部分を作り、点火による燃焼を確実に行うことである。このとき、全体の空燃比を薄くして燃費を改善させるには、燃料が薄い部分と濃い部分との濃度差が大きい状態、つまり成層度の高い状態を形成することが望ましい。換言すれば、全体の空燃比が薄くても点火プラグの周囲に十分な濃度の混合気を作ることが必要となる。このためには、筒内に噴射された燃料は、そのガス流動に起因する拡散が進行する前に点火されることが必要である。すなわち、燃料の噴射から点火までの時間を短くすることが求められる。さらに、燃焼に起因する熱効率を向上させるために、熱発生率が圧縮上死点付近で最大になるように点火時期を設定することが求められる。この点火時期に対応させて、燃料の噴射時期についても、圧縮上死点に近い圧縮工程の後期に設定することが必要になる。
このような事情から、燃料の噴射時期は圧縮工程の後期に設定されるが、圧縮工程後期は、筒内の圧力が比較的高いのが一般的である。このため、燃料噴射弁から噴射される燃料は、点火プラグに到達するに十分な貫徹力を有することが求められる。その一方で、噴射された燃料の全てを点火プラグに指向させると、点火プラグがくすぶりを起こす場合があるため、燃料をある程度分散して噴霧することが必要になる。
この点、本実施形態の燃料噴射弁10によれば、燃料噴射弁10に燃料が供給されると、供給された燃料は、燃料噴射流路16a〜16cを介して筒72内に噴霧される。噴霧された各燃料は、燃料噴射流路16a〜16cの断面積や断面形状に応じて噴霧量が異なる。したがって、図6Aのように燃料噴射弁10から噴霧された燃料は、燃料噴射流路16a〜16cの断面積や断面形状に由来した広がりや貫徹力を有することになる。
例えば、図7に示すように、燃料噴射弁10から噴霧された燃料82、84は、噴霧状態(例えば、噴霧の広がりや貫徹力)が異なる。なお、図示の便宜上、燃料82は、図6Aの燃料60aに対応し、燃料84は燃料60b、60cに対応している。ここで、噴霧された燃料82は、燃料84よりも広がりや貫徹力が大きい。したがって、筒72内の圧力が大きい圧縮工程後期でも、点火プラグ74に燃料82を到達させることができる。その一方、噴霧された燃料84は、燃料82よりも広がりや貫徹力が小さい。したがって、図のように、燃料82の到達距離が小さくなるので、点火プラグ74のくすぶりを回避すると共に成層度の高い状態を形成できる。
また、ピストン80の冠面や筒72の内面は、オイルなどで冷却されているのが通常である。したがって、ピストン80の冠面や筒72の内面に燃料が衝突して付着すると、付着した燃料に起因して、排気中の未燃燃料成分(HC)や煤が増大する。この点、本実施形態によれば、ピストン80の冠面や筒72の内面に到達する燃料82の量を少なくできるため、HCや煤の発生を抑制できる。
このように本実施形態によれば、燃料噴射流路16a〜16cの断面積や断面形状を調整することにより、噴霧の広がりや貫徹力などの噴霧状態を調整できる。この調整については、単一の噴孔ピース14の形状を変えることで簡単に行うことができる。したがって、種々のエンジンにより適した形態で燃料噴射弁10を搭載できる。換言すれば、燃料噴射流路16a〜16cの断面積や断面形状を新しい次元の自由度として調整することにより、燃料の噴霧状態を制御できる。
また、燃料噴射流路16a〜16cについては、図2Bに示すように、断面が扁平部と湾曲部とにより区画された形状である。これにより、燃料噴射流路16a〜16cを通流する液体燃料は、断面形状に由来した渦流を生じるため、液膜形成された燃料として噴射される。その結果、噴霧燃料の微粒化をより促進できる。
また、噴孔ピース14については、図3又は図4に示すように、逃げ面48aは、噴射孔12に圧入する際に逃げとして作用する。したがって、逃げ面48aを形成することにより、傾斜面49a〜49cとシート部42とを密着させることが容易になる。また、噴孔ピース14は、接触面46a〜49cの先端側の角をテーパー形状や丸み形状に形成するのが望ましい。これにより、噴孔ピース14を容易に噴射孔12に圧入できる。
本実施形態による他の効果として、いわゆるデッドボリウムを低減できる効果がある。デッドボリウムとは、燃料通路の体積であり、その大きさは、燃料噴射弁が閉状態のときに残留する燃料量に影響を与える。一般の筒内噴射式エンジンなどでは、デッドボリムに残留した燃料は、筒体内の膨張行程(燃焼)の高温に曝されるため、温度が上昇する。ここで燃料は、蒸留温度が比較的低い軽質成分と、蒸留温度が高い重質成分とを含んでいる。したがって、残留燃料が高温になると、残量燃料のうち主に軽質成分が蒸発し、主に重質成分が残留する。残留した重質成分は、デッドボリム内にカーボンの堆積物として残る。そして、カーボン堆積物に起因して燃料流路が閉塞するいわゆるカーボンデポジットが生じる場合がある。カーボンデポジットに対する耐性が低いと、エンジンの温度が低い部分に燃料噴射弁を設置する必要が生じるため、エンジン部品のレイアウトや燃料コンセプトの自由度が制約される。
この点、本実施形態によれば、燃料の噴霧状態を制御するに際し、噴射孔12に詰め物としての噴孔ピース14を挿入するため、噴射孔12でデッドボリウムとなり得る隙間が減少する。したがって、燃料噴射弁10−2のデッドボリウムが比較的小さくなり、カーボン堆積に対する耐性が工場する。なお、図4でのデッドボリウムは、シート部42の弁体24が着座する位置よりも下流から、燃料噴射流路16a〜16cの燃料の噴射位置までの流路体積である。
これに対し、微細な燃料噴射流路を形成する一般技術(例えば、特開平8−189443号公報)では、燃料の噴霧状態を制御するには、複数の噴射孔を形成し、各噴射孔のそれぞれに燃料調整部材をはめ込むことになる。したがって、燃料噴射流路の数が増大し、結果としてデッドボリウムが大きくなる。
さらに、弁体24は、図2や図4に示すように、先端に平坦面を有することから、弁体24の先端と噴孔ピース14の天井面との間に形成される隙間が減少する。その結果、デッドボリウムをより一層小さくできる。
図6Bを参照して本実施形態の変形例を説明する。図6Bは、燃料噴射弁10aから燃料が噴霧された状態を上段に、噴霧された燃料の断面形状を模式的に下段に示す図である。図6Bの上段に示すように、燃料噴射弁10aと図6Aの燃料噴射弁10と異なる点は、噴孔ピース14の先端がノズルプレート28の端面よりも突出して設けられていることにある。換言すれば、図6Aの噴孔ピース14は、飛び出し量がゼロであるのに対し、図6Bの噴孔ピース14は、ノズルプレート28の端面から所定量Lだけ飛び出している。すなわち、図6Bの噴孔ピース14は、長手方向の長さが噴射孔12の長手方向の長さよりも大きく形成されている。
そして、図6Bに示すように、噴霧された各燃料88a〜88cは、噴孔ピース14の突出に由来して断面方向に拡散する。すなわち、図6Bの各燃料88a〜88cは、図6Aに示す例よりも噴霧の広がりが径方向に大きくなっている。ここでの燃料88aは、燃料噴射流路16aから噴霧された燃料に対応し、噴霧の流量が多いと共に噴霧の広がりが大きい。これに対し、燃料88b、88cは、燃料噴射流路16b、16cに対応し、噴霧の流量が少ないと共に噴霧の広がりが小さい。
図6A及び図6Bからわかるように、噴孔ピース14の飛び出し量Lを調整することにより、燃料の噴霧の広がりを調整できる。その結果、エンジン70の形態を考慮して噴霧の広がりを調整することにより、様々なエンジンに燃料噴射弁10を適合させることが容易になる。例えば、エンジン70の吸気弁76や排気弁78の配設位置や、燃料噴射弁10から筒72の内壁及びピストン80の冠面までの距離などを考慮すればよい。
また、本実施形態による他の効果として、燃料噴射弁10の製造や加工を容易にできる効果がある。例えば、ノズルプレート28やノズル先端部に微細な燃料噴射流路を精密に穿孔することは困難を伴う場合が多い。この点、本実施形態によれば、燃料噴射流路16a〜16cを形成するに際し、ノズルプレート28とは別の部材である単一の噴孔ピース14が用いられる。この噴孔ピース14の形状を加工することにより、燃料噴射流路16a〜16cの断面積や断面形状、あるいは形成位置などを任意に調整できる。その結果、ノズルプレート28やノズル先端部に孔を直接的に形成するときよりも、燃料噴射弁10の製造や加工が容易になる。
また、噴孔ピース14は、図2及び図3に示すように、傾斜面49a、張出部50aにより噴射孔12に位置して保持される。換言すれば、噴射孔12に噴孔ピース14を挿入するに際し、溶接などの処理が不要となり、燃料噴射弁10の組み立てが容易になる。
第1の実施形態に基づき本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、燃料噴射流路16a〜16cの数、断面積、断面形状については、エンジン70の形態を考慮して適宜変更できる。
また、各燃料噴射流路16a〜16cについては、周方向に不等間隔に分散させて形成してもよい。これにより、燃料噴射流路16a〜16cの断面積又は断面形状が同じときでも、燃料噴射弁10から噴霧される燃料は、燃料噴射流路16a〜16cの位置に由来した広がりや貫徹力を有する。より具体的には、燃料噴射流路16a〜16c間の間隔を狭くすれば、噴霧燃料の例えば貫徹力を大きくできる。このように各燃料噴射流路16a〜16cの間隔を周方向に調整して噴孔ピース14を形成することにより、燃料の噴霧状態を制御できる。換言すれば、燃料噴射流路16a〜16cの位置を新しい次元の自由度とみて、その各位置を周方向に非対称に調整することにより、燃料の噴霧状態を制御できる。
要するに、本実施形態の燃料噴射弁10によれば、燃料の噴霧形状を制御すると共に、デッドボリムを低減してカーボン体積を抑制することを両立可能な多孔ノズルとしてのマルチホールインジェクタを実現できる。その結果、エンジンの部品レイアウトや燃料コンセプトの自由度が増大するため、種々のエンジンに燃料噴射弁10を適合させることが容易になる。
(第2の実施形態)
本発明を適用した燃料噴射弁の第2の実施形態について図8ないし図12を中心に参照して説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、燃料の噴霧の広がりをより調整することにある。したがって、第1の実施形態と相互に対応する箇所については同一符号を付し、相違点を中心に説明する。
図8Aは、本実施形態の燃料噴射弁10−2の先端側の拡大断面図である。図8Bは、図8Aの燃料噴射弁10−2を先端側から見た図である。本実施形態の燃料噴射弁10−2が例えば図2の燃料噴射弁10と異なる点は、噴孔ピース14−2やノズルプレート28−2を中心とした構造にある。
図8A及び図8Bに示すように、ノズルプレート28−2は、噴射孔12−2としての貫通孔が中央に形成されている。噴射孔12−2は、先端部が先端側に向うにつれて拡径して形成されている。換言すれば、噴射孔12−2は、先端側に円錐面状のテーパー部90が形成されている。このような噴射孔12−2に噴孔ピース14−2がはめ込まれる。なお、テーパー部90に代えて、凹部を設けてもよい。要は、噴射孔12−2の下流側が裾広がりの形態であればよい。
図9は、図8の噴孔ピース14−2の拡大斜視図である。図9に示すように、噴孔ピース14−2が例えば図3の噴孔ピース14と異なる点は、各切り欠き面44a〜44cの先端側の表面に、その表面から径方向に突出する流路屈曲部としての段付き部92a〜92cを有することにある。例えば、切り欠き面44aは、先端側の端部に段付き部92aを有する。段付き部92aは、切り欠き面44aの表面から径方向に突出している。段付き部92aの径方向側の表面は、接触面46aと同じ曲率を有する弧面である。換言すれば、噴孔ピース14は、その先端で切り欠き面44aがない形状、つまり切り欠き面44aが噴孔ピース14の底面まで達しない形状に構成されている。段付き部92aを中心に説明したが、切り欠き面44bの先端側に有する段付き部92bや、切り欠き面44cの先端側に有する段付き部92cも同様である。このような段付き部92a〜92cは、図8や図10に示すように、テーパー部90の傾斜開始位置よりも先端側(燃料通流方向の下流側)であり、かつノズルプレート28−2の端面よりも基端側(燃料通流方向の上流側)に位置される。
図10Aは、燃料噴射弁10−2の弁体24の先端部がシート部42から離座した状態を示している。図10Bは、燃料噴射弁10−2を先端側から見た図であり、燃料噴射流路16a〜16cに燃料が通流する状態を示している。図10Aに示すように、燃料噴射流路16a〜16cに燃料が導かれると、導かれた燃料の一部は、燃料噴射流路16a〜16cを通流する過程で、テーパー部90の表面に沿って噴霧される。他の燃料は、段付き部92a〜92cに衝突することで進行方向が軸方向から径方向に曲げられた後、テーパー90の表面に反射されながら又は直接に噴射される。噴霧される燃料は、図10Bに示すように、中心軸から径方向外側に広がりながらシャワー状に噴霧される。すなわち、燃料噴射弁10−2から噴霧される燃料は、テーパー部90や段付き部92aにより噴霧の広がりがより大きくなる。
さらに、燃料噴射流路16a〜16cを通流する燃料が段付き部92a〜92cに衝突することにより、液体の液膜形成を図ることでき、燃料の微粒化をより促進できる。
図11Aは、燃料噴射弁10−2から燃料が噴霧された状態を上段に、上段の燃料噴霧の断面図を下段に示す図である。図11Aに示すように、各燃料噴射流路16a〜16cから燃料94a〜94cが噴霧されている。燃料94aは、燃料噴射流路16aから噴霧された燃料に対応している。同様に、燃料94b、94cは、燃料噴射流路16b、16cに対応している。ここでの燃料94aは、流量が多いと共に噴霧の広がりや貫徹力が大きい。これに対し、燃料94b、94aは、流量が少ないと共に噴霧の広がりや貫徹力が小さい。これは、燃料噴射流路16aの断面積が、燃料噴射流路16b、16cの断面積よりも大きいことに起因する。そして、図11Aの燃料94a〜94cは、図6A及び図6Bと比較すると、噴霧の径方向の広がりがより大きい。
本実施形態によれば、燃料噴射弁10−2に導かれた燃料は、テーパー部90に沿って噴霧されるため、テーパー部90の傾斜角を調整してノズルプレート28−2を形成することにより、燃料の噴霧の広がりを制御できる。また、テーパー部90の傾斜開始位置や、テーパー部90と段付き部92a〜92cとの位置関係を調整することにより、燃料の噴霧の広がりを制御できる。
また、第1の実施形態(例えば、図6B)で説明したのと同様に、噴孔ピース14−2の先端がノズルプレート28−2の端面よりも突出して設けてもよい。これにより、燃料の噴霧の広がりをより制御できる。ただし、段付き部92a〜92cは、ノズルプレート28−2の端面よりも基端側に位置される。
また、テーパー部90を形成せずに、段付き部92a〜92cのみによっても燃料の噴霧の広がりを制御できる。この場合、段付き部92a〜92cは、ノズルプレート28−2の端面よりも燃料噴射方向の下流側に位置される。これにより、噴霧された燃料は、テーパー部90が形成されたときよりも、噴霧の広がりが大きくなる。したがって、噴霧の広がりがより一層求められるときは、テーパー部90を形成せずに、段付き部92a〜92cにより噴霧の広がりを制御するのが望ましい。なお、段付き部92a〜92cを形成せずに、テーパー部90だけで燃料の噴霧の広がりを制御してもよい。
図12は、燃料噴射弁10−2がエンジンに搭載された例を示す図である。より具体的には、図12は、直上噴射式の筒内噴射エンジン96(以下、エンジン96という)を示す図であり、成層燃焼のための燃料噴射が行われた態様を模式的に現している。
図12に示すように、エンジン96が例えば図7のエンジン70と異なる点は、燃料噴射弁10−2が天井頂部に搭載されると共に、燃料噴射弁10−2の近傍に点火プラグ74が配設されたことにある。図の燃料噴射弁10−2は、筒72内に燃料98、100を噴霧している。燃料98は、燃料噴射流路16aから噴霧される燃料に対応し、噴霧方向が点火プラグ74側に向いている。一方、燃料100は、燃料噴射流路16b、16cから噴霧される燃料に対応している。
一般に、直上噴射式の筒内噴射エンジンにおいては、例えば、燃料噴射弁と点火プラグとの配設位置の距離が近い。したがって、燃料噴射弁から噴射された液体燃料によって点火プラグが濡れることがあり、その結果として点火プラグのくすぶりが起こる場合がある。これを回避するため、燃料噴射弁は、噴射燃料が点火プラグに直撃しないように配設される。しかし、燃料噴射弁の配設位置に起因して、噴射燃料が、点火プラグで点火されずにそのプラグを通過することがあり、その結果として燃焼安定性が劣化する場合がある。また、筒内の圧力変動により燃料の噴霧方向が変わることに起因して、燃焼安定性が劣化することもある。
この点、本実施形態の燃料噴射弁10−2によれば、図12に示すように、テーパー部90と段付き部92a〜92cの作用により、燃料の噴霧の広がりが大きくなると共に、微粒化も促進される。したがって、噴霧された燃料98は、エントレインメント(空気の巻き込み)を生じて滞留し易くなる。その結果、燃料98が点火プラグ74に直撃しないように燃料噴射弁10−2を配設したときでも、燃料98は点火プラグ74の周囲に比較的長い時間にわたって滞留することになり、燃焼安定性を確保できる。
また、燃料噴射流路16b、16cから噴霧された燃料100は、流量が小さいことに起因して貫徹力が小さいため、筒72内の圧力が高い条件では到達距離が短い。このため、燃料100が例えばピストン80の冠面に付着することを抑制でき、HCや煤の排出を抑えることができる。
さらに、一般の直上噴射式の筒内噴射エンジンでは、燃料噴射弁が点火プラグの近傍に配置される。したがって、燃料噴射弁の先端が比較的高温に曝されることに起因してカーボン堆積し易い状態となる。この点、本実施形態によれば、第1の実施形態でも説明したように、燃料噴射弁10−2は、単一の噴孔ピース14−2を噴射孔12に挿入するため、噴射孔12でデッドボリウムとなり得る空隙間が減少する。したがって、燃料噴射弁10−2のデッドボリウムが比較的小さくなり、カーボン堆積に対する耐性が向上する。その結果、燃料噴射弁10−2を例えば高温位置に配置することができことになり、レイアウトの自由度が増大する。また、燃料噴射弁10−2を冷却するための冷却水水路などが不要になる。さらに、シリンダヘッド内の水路の設計自由度が増大する。
上述したように、本実施形態の燃料噴射弁10−2は、エンジン96のような直上噴射式のエンジンに適合させるのにより好適なものであり、燃費を改善すると共に排気を抑制したエンジンを実現できる。
第2の実施形態に基づき本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、テーパー部90は、噴孔ピース14−2の軸心に対して対称なものとしたが、これに代えて、噴孔ピース14−2の先端側の対向する内面の傾斜角度を異ならせることができる。換言すれば、噴孔ピース14−2の開口中心は、噴孔ピース14−2の軸心からずれている。これにより、燃料噴射弁10−2から噴霧された燃料は、噴孔ピース14−2の先端側内面の傾斜角度に応じて噴霧方向が偏向する。すなわち、先端側内面の傾斜角度を調整することにより、燃料の噴霧の偏りを調整できるから、様々なエンジンに燃料噴射弁10−2を適合させることがより容易になる。
(第3の実施形態)
本発明を適用した燃料噴射弁の第3の実施形態について図13及び図14を中心に参照して説明する。本実施形態が第1及び第2の実施形態と異なる点は、噴霧の扁平度合いや偏りをより調整することにある。したがって、第1及び第2の実施形態と相互に対応する箇所については同一符号を付し、相違点を中心に説明する。
図13Aは、本実施形態の燃料噴射弁10−3の先端側の拡大断面図である。図13Bは、図13Aの燃料噴射弁10−3を先端側から見た図である。図13A及び図13Bに示すように、燃料噴射弁10−3が例えば図8の燃料噴射弁10−2と異なる点は、ノズルプレート28−3の端面に溝102a、102bが刻設されたことにある。溝102a、102bは、ノズルプレート28−3の端面全体にわたって平行に延在し、溝102aと溝102bの間に噴射孔12が位置している。ここで噴射孔12の先端側は、溝102a、溝102bの一部を形成する。溝102a、102bは、軸方向に刻まれた平面と、その平面の基端側の端からノズルプレート28−3の端面までにわたって径方向側に向って傾斜して刻まれた平面とを含んで形成されている。
本実施形態では、溝102a、102bとの間に位置する噴射孔12に噴孔ピース14−2を圧入すると、溝102aが燃料噴射流路16aに連通すると共に、溝102bが燃料噴射流路16bに連通する。すなわち、例えば図8のテーパー部90に代えて、傾斜した平面を有する溝102a、102bが設けられている。
このような燃料噴射弁10−3から燃料が噴霧された状態を図11Bに示す。図11Bに示すように、各燃料噴射流路16a〜16cから燃料104a〜104cが噴霧されている。燃料104aは、燃料噴射流路16aに対応している。同様に、燃料104b、104cは、燃料噴射流路16b、16cに対応している。そして、図11Bに示すように、燃料104a〜104cは、図11Aと比較すると、溝102a、102bの延在方向に扁平になると共に、燃料104bや燃料104cの噴霧の広がりが小さくなっている。また、溝102aの傾斜角が溝102bよりも大きいため、噴霧の中心位置が噴孔ピース14の軸心からずれている。換言すれば、噴射孔12は、先端側の対向する内面の傾斜角度を異ならせることができる。このような噴霧状態は、溝102a、102bの形状に由来している。
図14は、燃料噴射弁10−3がエンジンに搭載された例を示す図である。より具体的には、図14は、図7のエンジン70に燃料噴射弁10−3を搭載した図を示し、成層燃焼のための燃料噴射が行われた態様を模式的に現している。図14に示すように、燃料噴射弁10−3は、筒72の吸気弁76側の側壁に搭載されている。図の燃料噴射弁10−2は、筒72内に燃料106、108を噴霧している。燃料106は、燃料噴射流路16aから噴霧される燃料に対応している。噴霧方向が点火プラグ74側に向いている。一方、燃料108は、燃料噴射流路16b、16cから噴霧される燃料に対応している。
一般の筒内噴射エンジンにおいては、燃料噴射弁を取り付けるのに際して、吸気ポートやシリンダブロックに干渉しないように取り付け角度を決める必要がある。このため、燃料噴射弁の取り付け角度に一定の制限が生じ、結果として内燃機関の部品レイアウトや燃料コンセプトの自由度が制約される。
この点、本実施形態によれば、第1及び第2の実施形態の効果に加えて、溝102a、102bの大きさや傾斜角を調整することにより、噴霧の扁平度合いや偏りを制御できる。したがって、燃料噴射弁10−3の取り付け角度の設計自由度が増大する。また、噴霧燃料の扁平度合いや偏りを制御することにより、燃料の燃焼性能を高くするのに適した噴霧形状を選定できるので、燃費をより改善すると共に排気中のHC等をより抑制したエンジンを実現できる。
第3の実施形態に基づき本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、溝102a、102bが燃料噴射流路16a、16bに連通する形態であれば、溝102a、102bの形成位置をノズルプレート28−3の端面の一部としてもよい。
以上、第1ないし第3の実施形態によれば、筒内直接噴射式やポート噴射式などの種々の内燃機関の形態に適合させて、微粒化が優れた噴霧を形成するとともに、燃料の噴霧状態(例えば、噴霧の広がり、噴霧の貫徹力、噴霧の扁平度合い、噴霧の偏り)を制御できる燃料噴射弁10−1〜10−3を実現できる。
本発明を適用した第1の実施形態の燃料噴射弁の断面図である。 図1の燃料噴射弁の先端側の断面図と、燃料噴射弁を先端側から見た図である。 図1及び図2の噴孔ピースの斜視図である。 図2の弁体の先端部がシート部に着座した状態を示す図である。 図2の弁体がシート部から離座した状態を示すと共に、燃料噴射弁を先端側から見た図である。 第1の実施形態の燃料噴射弁から燃料が噴霧された状態と、噴霧された燃料の断面形状を模式的に下段に示す図である。 図1の燃料噴射弁がエンジンに搭載された例を示す図である。 本発明を適用した第2の実施形態の燃料噴射弁の先端側の断面図と、燃料噴射弁を先端側から見た図である。 図8の噴孔ピースの斜視図である。 図8の弁体がシート部から離座した状態を示すと共に、燃料噴射弁を先端側から見た図である。 第2の実施形態の燃料噴射弁から燃料が噴霧された状態と、噴霧された燃料の断面形状を模式的に下段に示す図である。 図8の燃料噴射弁がエンジンに搭載された例を示す図である。 本発明を適用した第3の実施形態の燃料噴射弁の先端側の断面図である。 図13の燃料噴射弁がエンジンに搭載された例を示す図である。
符号の説明
10 燃料噴射弁
12 噴射孔
14 噴孔ピース
16a、16b、16c 燃料噴射流路
24 弁体
26 ノズル部材
28 ノズルプレート
40 弁体ガイド
42 シート部
90 テーパー面
92a、92b、92c 段付き部

Claims (7)

  1. 燃料噴射孔に柱状の噴射調整部材が挿入されてなり、前記噴射調整部材は、周方向に分散させて複数の燃料噴射流路を形成するものであり、前記燃料噴射流路の少なくとも1つは、断面積又は断面形状のいずれか一方が他の前記燃料噴射流路と異なることを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 燃料噴射孔に柱状の噴射調整部材が挿入されてなり、前記噴射調整部材は、周方向に分散させて複数の燃料噴射流路を形成するものであり、前記各燃料噴射流路は、前記周方向に不等間隔で位置されてなることを特徴とする燃料噴射弁。
  3. 前記噴射調整部材は、前記燃料噴射孔の内面に対向する外周面に周方向に分散させて複数の切り欠きが形成され、前記各切り欠きの表面と前記噴射孔の内面との間に前記燃料噴射流路が形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料噴射弁。
  4. 前記燃料噴射流路の断面は、扁平部と、該扁平部の両側を連結する湾曲部とにより区画されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載する燃料噴射弁。
  5. 前記燃料噴射孔は、先端部が先端側に向うにつれて拡径してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料噴射弁。
  6. 前記燃料噴射孔は、先端側の対向する内面の傾斜角度が異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料噴射弁。
  7. 前記噴射調整部材は、前記切り欠きの先端側の表面に、該表面から径方向に突出する流路屈曲部を有して形成されることを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射弁。
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