JP2006143540A - 圧電磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低温焼成を可能とし、比誘電率を向上させた高い圧電歪定数を有する圧電磁器組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に、一部をSr元素で置換する圧電磁器組成物とし、組成式をPb1-xSrx[(Ni1/3Nb2/3)aZrbTic]O3(但し、0<x≦0.02、0.32≦a≦0.42、0.22≦b≦0.28、a+b+c=1)とする。出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が7〜40m2/gの酸化チタン粉末を使用し、混合粉砕工程後、比表面積が10m2/g以上の混合粉末を作製し、800〜900℃で仮焼することで、焼結助剤を使用せずに950℃以下の低温焼成が可能となり、比誘電率が高く、約40pC/N向上した圧電歪定数を有する圧電磁器組成物を得る。
【選択図】 なし
Description
本発明は、圧電磁器組成物及びその製造方法に関し、特に、圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ等に好適なチタン酸ジルコン酸鉛組成系の材料に関する。
圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ等は、電気エネルギーを機械エネルギーへ変換する逆圧電効果を利用した素子である。圧電式アクチュエータを例にとると、従来の電磁式アクチュエータに比べ、小型化が可能となり、消費電力や発熱量は少なく、さらに応答速度が速いという優れた特徴を有している。また、位置精度が高く、ミクロンレベルでの変位量の制御を可能とすることから、半導体製造のマスフロー装置や精密位置調整装置等へ、すでに実用化されている。近年、新たな分野としてマイクロマシン等への応用が注目されている。
これらのデバイスは、セラミックスを多層に積層することにより変位効率を高めており、その製造過程において圧電磁器組成物からなるグリーンシートに導体ペーストを印刷し、内部電極層を形成、積層することで一体構造を形成している。さらに、その圧電磁器組成物と内部電極層からなる積層構造体は、同時焼成することで素子を製造している。よって、焼成の際に、電極材料の溶融や圧電磁器組成物との反応を防ぐ必要がある。そのためには、焼成時に内部電極層が溶融しない範囲の低温で焼成可能な圧電磁器組成物が要求される。
また、前述の積層体よりなる圧電素子に使用する圧電磁器組成物は、特に圧電歪定数の高い値を示すものが好適であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電磁器組成物が使用されてきた。さらに、圧電歪定数を高めるための条件として、電気エネルギーと機械エネルギーとの変換効率を示す電気機械結合係数(Kp)と比誘電率のより大きいな材料が求められている。
さらに、前述の圧電素子は、様々な周囲環境条件下で、安定に動作することが求められている。例えば、高温環境下で使用される産業機器への応用や基板実装工程での熱処理では、圧電素子が高温下にさらされる状況が増えている。このようないわゆる熱衝撃に対して、圧電磁器成物自体の耐久性、すなわち、高温環境下においても圧電特性の変化が小さいことが要求され、素子自体が安定して駆動できることが不可欠となる。
また、前述の圧電素子は、高温環境下で、各使用温度範囲内で安定した圧電特性が得られることが求められている。このようないわゆる熱衝撃に対して、圧電磁器組成物自体からの焦電荷発生が小さいことが要求される。この焦電荷の発生に依存して、圧電特性は劣化し、圧電素子の駆動精度に誤差を生じる。この焦電荷の発生を抑制するためには、圧電磁器組成物の温度特性、特に相転移温度であるキュリー温度(Tc)が重要な材料パラメータとなる。
近年、前述の圧電素子は、パソコンや携帯電話等といったデジタル電化製品へ搭載されることが増加している。これらのデジタル電化製品は、高集積化が進むにつれ、自己発熱量が多くなってきている。これらの製品へ圧電素子を搭載する場合には、圧電素子は100℃近傍の高温下での連続駆動を強いられる。このような環境下でも、圧電特性を劣化させずに安定駆動させる必要がある。このような環境下では、使用される圧電磁器組成物のキュリー温度(Tc)が150℃以下のものは、連続駆動時に圧電特性が劣化する可能性が高い。100℃近傍の高温下での連続駆動時には、キュリー温度(Tc)が150℃以上ある圧電磁器組成物が必要となる。
チタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電磁器組成物は、焼成温度が1200〜1300℃と高温である。焼成の際に、酸化鉛が蒸発し、組成変動するために、理想的な化学量論比を持つ圧電磁器組成物が得られないという問題がある。また、圧電アクチュエータ等の積層体よりなる圧電デバイスは、圧電磁器組成物と内部電極層を同時に焼成して製造するので、高温下での電極層の溶融や圧電磁器組成物との反応を防ぐ必要がある。その対策として、高融点のPtやPdなどの高価な貴金属を用いることが一般的であるが、この場合は、素子のコスト高という問題が発生する。これらの問題の解決には、圧電磁器組成物の焼成温度を下げることが有効である。例えば、比較的安価なAg含有量の高いAg−Pd合金、あるいはAg、Cuなどの内部電極層を使用できれば、素子の低コスト化が可能となる。
低温焼成を行うために、低融点の添加物やガラスフリットを使用し、液相焼結法で圧電磁器組成物を低温で緻密化させた場合は、強誘電性を持たない液相成分がそのまま粒界に残り、主成分の圧電特性に比べ、圧電特性が劣化する。さらに、低融点の添加物やガラスフリットを使用し積層体を形成した場合は、添加物等と内部電極が反応し、異相が生成され、同様に圧電特性が劣化する。
また、チタン酸ジルコン酸鉛組成系の圧電磁器組成物に低融点の炭酸塩あるいは酸化物を添加することで、圧電磁器組成物の焼結温度を下げることを開示した従来技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
しかしながら、焼結温度が960℃以上であり、Agの融点(960℃)と同等であるために、非常に安価なAgを内部電極層として使用することは困難である。また、有害元素のCdを用いていることから、環境に対する配慮を欠いており、実用的ではない。
本発明は、前述の問題点を解決すべくなされたもので、その技術課題は、焼結助剤を使用せずに950℃以下の低温焼成を可能とし、比誘電率が高く、高い圧電歪定数を有し、キュリー温度Tc=150℃以上の圧電磁器組成物及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための第1の発明は、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、一部をSr元素で置換する圧電磁器組成物とし、組成式をPb1-xSrx[(Ni1/3Nb2/3)aZrbTic]O3(但し、0<x≦0.02、0.32≦a≦0.42、0.22≦b≦0.28、a+b+c=1)とする圧電磁器組成物である。
上記目的を達成するための第2の発明は、出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が7〜40m2/gの酸化チタン粉末を用いることを特徴とする第1の発明の圧電磁器組成物の製造方法である。
上記目的を達成するための第3の発明は、比表面積が10m2/g以上の混合粉末を800〜900℃で仮焼することを特徴とする第1の発明の圧電磁器組成物の製造方法である。
上記目的を達成するための第4の発明は、出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が10〜40m2/gの酸化チタン粉末を使用し、混合粉砕工程後、比表面積が10m2/g以上の混合粉末を800〜900℃で仮焼し、成形することにより950℃以下で焼成することを特徴とする第1の発明の圧電磁器組成物の製造方法である。
本発明により、焼結助剤を使用せずに950℃以下の低温焼成を可能とし、比誘電率が高く、高い圧電歪定数を有し、キュリー温度Tc=150℃以上の圧電磁器組成物及びその製造方法の提供が可能となる。本発明の圧電磁器組成物を用いることにより、焼成時の酸化鉛の蒸発による組成変動を防ぐことができ、さらに圧電アクチュエータ、圧電スピーカー、超音波モーター、マイクロポンプ等の積層デバイスへ、融点の低い、安価なAg含有量の高いAg−Pd合金、あるいはAg、Cuなどの内部電極層を使用することが可能となり、素子の低コスト化が可能となる。
本発明の最良の形態に係る圧電磁器組成物は、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、一部をSr元素で置換する圧電磁器組成物とし、組成式をPb1-xSrx[(Ni1/3Nb2/3)aZrbTic]O3(但し、0<x≦0.02、0.32≦a≦0.42、0.22≦b≦0.28、a+b+c=1)としたものとする。
Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、Pbサイトの一部をSr元素で置換することで、相転移温度をシフトさせ、室温付近の比誘電率(ε)を向上できる。しかし、Sr置換量を増やしすぎると比誘電率(ε)は向上するものの、逆に電気機械結合係数(Kp)が大幅に低下し、圧電歪定数自体が劣化する。また、相転移温度であるキュリー温度(Tc)が低くなる。高温環境下、例えば100℃近傍の温度環境下で使用した場合には、キュリー温度(Tc)が150℃以下のものは、連続駆動中に圧電歪特性が劣化する。よって、キュリー温度(Tc)が150℃以上で、かつ高い圧電歪特性を有するために、その組成範囲を0<x≦0.02の範囲とする。
また、PbサイトにSr元素の変わりにアルカリ土類元素であるBa、Caで置換した場合には、Sr元素同様、圧電歪定数は向上するものの、950℃以下での低温焼成が困難になる。
また、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3(a)量がa<0.32の場合は、低温焼成が困難となる。a>0.42の場合は、相転移温度であるキュリー温度(Tc)が低くなり、使用限界温度が低くなる。高温環境下、例えば100℃近傍の温度環境下で使用した場合には、キュリー温度(Tc)が150℃以下のものは、連続駆動中に圧電歪特性が劣化する。よって、キュリー温度(Tc)が150℃以上で、かつ高い圧電歪特性を有するために、その組成範囲を0.32≦a≦0.42の範囲とする。
また、圧電歪定数は電気機械結合係数(Kp)及び比誘電率(ε)が大きくなるモルフォトロビック相境界(MPB)付近で最も大きくなる。PbZrO3(b)量及びzPbTiO3(c)量がそれぞれMPB付近をはずれる場合には、電気機械結合係数(Kp)及び比誘電率(ε)が低下し、圧電歪定数も低下する。よって、キュリー温度(Tc)が150℃以上で、かつ高い圧電歪定数を有するための組成範囲は、MPB付近である0.22≦b≦0.28の範囲とする。
また、出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が7〜40m2/gの酸化チタン粉末を用いて、さらに原料の混合粉砕後における比表面積が10m2/g以上となる混合粉末を作製し、800〜900℃で仮焼することで、950℃以下の低温焼成を可能とする。得られた圧電磁器組成物は、比誘電率が高く、高い圧電歪定数を有する。
酸化ジルコニウム粉末及び酸化チタン粉末の比表面積がそれぞれ20、10m2/gよりも小さい場合は、低温焼成が困難となる。比表面積が40m2gよりも大きい場合は、混合工程で粉末同士が凝集しやすくなるので、均一に分散することが難しくなる。均一な混合ができない場合は、低温焼成も困難になり、異相となるパイロクロア相の生成率が増え、圧電歪定数も劣化する。混合粉末の比表面積が10m2/gより小さい場合は、仮焼工程での原料粉末間の反応性が悪くなり、より高い仮焼温度が必要となり、低温焼成が困難となる。その結果、異相となるパイロクロア相の生成率が増え、圧電歪定数も劣化する。
仮焼温度が800℃より低い場合も、異相となるパイロクロア相の生成率が大幅に増え、低温焼成も困難になり、圧電歪定数も低下する。逆に、900℃より高い場合は、仮焼粉末が粒成長し、粗大化するので、粉砕時間が増加し、粉砕媒体からのコンタミネーションが増え、粉砕工程での取り扱いが難しくなる。
さらに、950℃以下での低温焼成が可能となることで、従来、焼成過程で問題となっていた酸化鉛の蒸発による組成変動を抑えることができる。積層素子へ応用した場合には、比較的安価なAg含有量の高いAg−Pd合金、あるいはAg、Cuなどの内部電極層を使用することを可能とし、素子の低コスト化が可能となる。
次に、本発明に係わる圧電磁器組成物について、実施例1で説明する。表1は、本発明と従来法との組成、焼成温度および材料特性(比誘電率、圧電歪定数、キュリー温度)の相関を示したものである。
出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、NiO、Nb2O5、SrO粉末を用いる。但し、出発原料のPb元素は、Pb3O4を、Sr元素は炭酸塩、シュウ酸塩のように仮焼時に酸化物になるものを使用する。なお、ZrO2粉末は、純度99.9%、比表面積30m2/gの粉末を用い、TiO2は純度99%、比表面積7m2/gの粉末を用いた。表1のNo.1〜No.29に示すように、出発原料をそれぞれ所定の組成式Pb1-xSrx[(Ni1/3Nb2/3)aZrbTic]O3(但し、0<x≦0.02、0.32≦a≦0.42、0.22≦b≦0.28、a+b+c=1)になるように秤量した。
これらの原料粉末をそれぞれボールミルで湿式混合・回収・乾燥後、アルミナ匣鉢中で825℃にて仮焼を行った。得られた粉末は、再びボールミルで20時間湿式粉砕を行った。その後、乾燥し、目的とする粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20×厚さ5mmに成形した。この成形体を925〜1200℃で6時間焼成し、焼結体を作製した。作製した焼結体を1mmの厚さに加工した後、両面に銀ペーストを塗布して500℃で焼き付けて電極を形成した。このようにして得られた各試料をシリコンオイル中で2kV/mmで10分間、高温分極処理を行った。
得られた円板試料は、インピーダンスアナライザ(HP4194A)を用いて共振周波数(fr)、反共振周波数(fa)、電気機械結合係数(Kp)、比誘電率(ε)の測定を行ない、圧電歪定数(d31)を算出した。その結果を表1に示す。
試料19(x=0)は、Pbサイトの一部をSr元素で置換しないものである。この試料は、Sr置換量が0<x≦0.02の範囲にあるものと比べ、比誘電率と圧電歪定数が低かった。試料25(x=0.03)、試料26(x=0.04)、試料27(x=0.05)のように、Sr置換量(x)を増やしすぎると圧電歪定数が劣化し、相転移温度であるキュリー温度(Tc)が低くなった。使用限界温度が低くなると、高温環境下での使用が困難になる。
試料28(置換元素=Ca)、試料29(置換元素=Ba)のように、PbサイトをSr元素の変わりにアルカリ土類元素であるCa、Baで置換した場合は、Sr元素同様、比誘電率と圧電歪定数は向上したが、950℃以下での低温焼成ができなかった。
試料1(a=0.20)のようにPb(Ni1/3Nb2/3)O3(a)量がa<0.32の場合は、950℃以下での低温焼成ができなかった。試料18(a=0.50)のようにa>0.42の場合は、相転移温度であるキュリー温度(Tc)が低くなった。
試料8(b=0.20)および試料14(b=0.30)のように、PbZrO3(b)量及びPbTiO3(c)量がそれぞれMPB付近をはずれる場合は、比誘電率および圧電歪定数が低下した。
次に、本発明に係わる圧電磁器組成物の製造方法について実施例2で説明する。出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、NiO、Nb2O5、SrO粉末を用い、さらに、表2に示すように、ZrO2、TiO2に関しては純度、比表面積の異なる原料粉末をそれぞれ用いた。圧電磁器組成物の組成については、実施例1の試料と同様のものとし、ZrO2粉末とTiO2粉末の比表面積の選択を除いて、実施例1と同様のものとした。表2は、本発明と従来法とのZrO2原料粉末およびTiO2原料粉末条件の違いによる焼成温度および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。
ZrO2粉末の純度が99.9%より低純度の試料11−7(純度=99.0%)および比表面積が20m2/gよりも小さい試料11−1(比表面積=7m2/g)、試料11−2(比表面積=13m2/g)は、950℃以下での低温焼成ができなかった。また、比表面積が40m2/gより大きいZrO2粉末は製造されておらず、現時点では入手できなかった。
TiO2粉末の比表面積が7m2/gよりも小さい試料11−8(比表面積=2m2/g)、試料11−9(比表面積=5m2/g)は、950℃以下での低温焼成ができなかった。また、比表面積が40m2/gより大きいTiO2粉末は製造されておらず、現時点では入手できなかった。TiO2粉末の純度が99%より低純度の試料11−15(純度=98%)は、圧電歪定数(d31)が劣化するのに対して、99%より高純度の試料11−17(純度=99.9%)では、圧電歪定数(d31)は、ほぼ同等の値であった。
次に、本発明に係わる圧電磁器組成物の製造方法について実施例3で説明する。出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、NiO、Nb2O5、SrO粉末を用い、さらに、ZrO2粉末に関しては、純度99.9%、比表面積30m2/gとする粉末を用い、TiO2に関しては、純度99%、比表面積7m2/gとする粉末を用いた。圧電磁器組成物の組成については、実施例1の試料と同様のものとし、ZrO2粉末とTiO2粉末を混合した混合粉末の比表面積の選択を除いて、実施例1と同様のものとした。表3は、本発明と従来法との混合粉末の比表面積の違いによる焼成温度および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。
これらの原料粉末をボールミルで湿式混合し、比表面積の異なる混合粉末を回収、乾燥後、アルミナ匣鉢中で825℃にて仮焼を行い、得られた粉末を再びボールミルで20時間、湿式粉砕を行った。その後、乾燥し、目的とする粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20×厚さ5mmに成形した。この成形体を925〜1100℃で6時間焼成し、焼結体を作製した。さらに、作製した焼結体を1mmの厚さに加工した後、両面に銀ペーストを塗布して500℃で焼き付けて電極を形成した。このようにして得られた各試料をシリコンオイル中で2kV/mmで10分間、高温分極処理を行った。
得られた円板試料は、インピーダンスアナライザ(HP4194A)を用いて共振周波数(fr)、反共振周波数(fa)、電気機械結合係数(Kp)、比誘電率(ε)の測定を行い、圧電歪定数(d31)を算出した。その結果を表3に示す。
混合粉末の比表面積が10m2/gより小さい試料11−A(比表面積=7m2/g)は、950℃以下での低温焼成ができず、圧電歪定数も劣化した。それに対して、混合粉末の比表面積が10m2/g以上の試料11−B(比表面積=10m2/g)、試料11−C(比表面積=15m2/g)、試料11−D(比表面積=20m2/g)、試料11−E(比表面積=25m2/g)は、950℃以下での低温焼成が可能で、圧電歪定数も、ほぼ同等の値であった。
次に、本発明に係わる圧電磁器組成物の製造方法について実施例4で説明する。出発原料としてPbO、ZrO2、TiO2、NiO、Nb2O5、SrO粉末を用い、さらに、ZrO2粉末に関しては、純度99.9%、比表面積30m2/gとする粉末を用い、TiO2粉末に関しては、純度99%、比表面積7m2/gとする粉末を用いた。圧電磁器組成物の組成については、実施例1の試料と同様のものとし、ZrO2粉末とTiO2粉末を混合した混合粉末の仮焼温度の選択を除いて、実施例1と同様のものとした。表4は、本発明と従来法との仮焼温度および焼成温度の条件の違いによる焼成温度、パイロクロア量および材料特性(圧電歪定数)の相関を示したものである。
これらの原料粉末をボールミルで湿式混合し、比表面積が10m2/g以上となる混合粉末を回収、乾燥後、750〜950℃と温度を変え、仮焼を行った。また、粉末X線回折により得られた仮焼粉末の生成相について調べた。その後、得られた仮焼粉末を再びボールミルで20時間湿式粉砕を行い、乾燥し、目的とする粉末を得た。回収した粉末にバインダーを添加して、一軸加圧成形よりφ20×厚さ5mmに成形した。この成形体を925〜1100℃で6時間焼成し、焼結体を作製した。
作製した圧電磁器組成物について共振周波数(fr)、反共振周波数(fa)、電気機械結合係数(Kp)、比誘電率(ε)の測定を行い、圧電歪定数(d31)を算出した。その結果を表4に示す。
ZrO2粉末とTiO2粉末を混合した混合粉末の仮焼温度が800℃より低い試料11−a(仮焼温度=750℃)、試料11−b(仮焼温度=775℃)は、950℃以下での低温焼成ができず、異相となるパイロクロア相の生成率が大幅に増え、圧電歪定数も低下した。それに対して、混合粉末の仮焼温度が800℃〜900℃の試料11−c(仮焼温度=800℃)、試料11−d(仮焼温度=850℃)、試料11−e(仮焼温度=875℃)、試料11−f(仮焼温度=900℃)は、950℃以下での低温焼成が可能で、圧電歪定数も、ほぼ同等の値であった。また、900℃よりも高い試料11−g(仮焼温度=925℃)、試料11−h(仮焼温度=950℃)は、仮焼粉末が粒成長し、粗大化し、粉砕時間が増加し、粉砕媒体からのコンタミネーションが増加した。そのために、次工程まで進めることができなかった。
以上より、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、一部をSr元素で置換する圧電磁器組成物とすることで、比誘電率が高く、圧電歪定数が約40pC/N向上した圧電磁器組成物が得られる。さらに、出発原料の純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が7〜40m2/gの酸化チタン粉末を用い、さらに混合粉砕工程後、比表面積が10m2/g以上の混合粉末を作製し、この混合粉末を800〜900℃で仮焼することで、焼結助剤を使用せずに950℃以下で低温焼成が可能となる。この圧電磁器組成物を用いることで、焼成時の酸化鉛の蒸発による組成変動を防ぐことができ、圧電アクチュエータ等の積層デバイスに、融点の低い、安価なAg含有量の高いAg−Pd合金、Ag、Cuなどの内部電極層を使用することを可能とし、素子の低コスト化が可能となる。
Claims (4)
- Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbZrO3−PbTiO3を主成分とするペロブスカイト化合物に対して、一部をSr元素で置換する圧電磁器組成物とし、組成式をPb1-xSrx[(Ni1/3Nb2/3)aZrbTic]O3(但し、0<x≦0.02、0.32≦a≦0.42、0.22≦b≦0.28、a+b+c=1)とする圧電磁器組成物。
- 出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が7〜40m2/gの酸化チタン粉末を用いることを特徴とする請求項1記載の圧電磁器組成物の製造方法。
- 比表面積が10m2/g以上の混合粉末を800〜900℃で仮焼することを特徴とする請求項1記載の圧電磁器組成物の製造方法。
- 出発原料に純度が99.9%以上、比表面積が20〜40m2/gの酸化ジルコニウム粉末、純度が99%以上、比表面積が10〜40m2/gの酸化チタン粉末を使用し、混合粉砕工程後、比表面積が10m2/g以上の混合粉末を800〜900℃で仮焼し、成形することにより950℃以下で焼成することを特徴とする請求項1記載の圧電磁器組成物の製造方法。
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