膜分離技術は逆浸透膜や限外ろ過膜、精密ろ過膜を用いて海水・かん水の脱塩、半導体洗浄用の超純水の製造、食品の分離または濃縮等のように高品位な水が必要とされる用途を中心に研究が進められてきた。しかし最近では水質保全の観点から排水処理にも膜分離技術を適用しようとする研究が進められている。
排水処理の多くでは沈殿処理を伴うため、その代替として膜分離技術が実施できれば、広大な沈殿池の省略あるいは縮小ができ、スペースメリットが非常に大きい。排水処理プロセス中には溶解性の有機物の分解を目的として、微生物(活性汚泥)により排水中の有機物を分解した後にフロック化した微生物と処理水を分離する活性汚泥処理プロセスが広く用いられている。このプロセスでは膜分離技術の使用で、微生物の濃度が高められ分解処理の効率が向上する上、活性汚泥と処理水の分離が効率よく行えるというメリットが期待されている。このような点から高濃度(MLSS5000〜15000mg/L)活性汚泥水の固液分離用途に向けての膜分離技術の研究が行われている。
分離膜は主に平膜、管状膜、中空糸膜等があり、これらを利用して実際に使用する形となった膜モジュールが形成される。平膜や管状膜はその形態から固形分の多い原水の濃縮や固液分離などに適しており、中空糸膜は単位容積当たりの膜面積が大きく取れるため、装置化の際に非常にコンパクトであり、また、大量処理にも適している。
膜分離技術では、処理する原水の性状によってその性能が大きく左右される。雑多な成分を含有する排水中での使用は膜の目詰まりが懸念される。活性汚泥処理の面から考えると、被ろ過物である活性汚泥の濃度が高いほど効率化され、一方、膜分離プロセスでは活性汚泥の濃度が高いと膜の目詰まりが進行しやすい。この用途では高濃度原水に対する非常に高い固液分離性能と安定性を有する分離膜モジュールが要求されてきた。
この用途へはまず、管状膜モジュールが使用され、原水である活性汚泥水をモジュール内に循環供給して膜面に流速を与えながら固液分離を行うクロスフローろ過が実施された。このように運転することで膜表面の原水流で膜面を洗浄しながら固液分離が可能であり、膜表面への固形分の堆積や、膜の目詰まりを防止しながら運転が可能であった。
しかしこの方式では活性汚泥の濃度が高くなると膜モジュール内への原水供給が困難になる上、常に膜面に原水を循環供給するために、動力コストが高価になる。再利用水など排水処理の中でも一部の高品位な水の製造に採用は限定されていた。
近年、排水中に分離膜モジュールを浸漬してモジュールの透過側をポンプで吸引、サイホン、あるいは水槽の水位差を利用する方法で処理水を取得する省エネルギーな分離膜モジュールの研究が行われている。浸漬タイプは膜面の洗浄を曝気による気泡に加えて槽内に形成される旋回流を利用して膜面を洗浄しながら固液分離を行うことができ非常に低コストで運転が可能である。
平膜モジュールでは特公平4−70958号公報のような活性汚泥水の分離装置が試用されつつある。これは槽内の旋回流によって膜面に堆積する(汚泥)被ろ過物を剥離除去でき、膜面全体に均一な原水の流れを起こし膜面を洗浄しながらろ過が行えるものである。
中空糸膜モジュールは平膜と比較して、単位容積当たりの膜面積を大きく取れる点で有利であり、大量処理に適しており、低コストで大量の処理が要求される排水処理用途での使用が望まれる。
中空糸膜モジュールの運転の際にはろ過により膜面に堆積する汚れが中空糸膜束の内側に侵入すると除去が困難であり、運転を続けると、中空糸膜間が汚れ物質で閉塞し運転継続が困難であるため、運転中に水槽内の中空糸膜を気泡によって揺動させることで汚れを除去する方法が多く用いられている。これによって中空糸膜は常に揺動し、汚れ物質による中空糸膜間の閉塞は抑えられる。
しかしこの方法では中空糸膜根元付近ではその揺動が小さくなるため、この付近には汚泥が堆積し、中空糸膜間を閉塞しやすくなる。
そこで特開平3−242230号公報のように管路内に多本数の中空糸膜を根元部で小束に分けて分散状態で配置し、根元付近への固形分の堆積を防止しているが、管路内への原水供給によって動力コストが高くなること、小束の中空糸膜間では閉塞が起こり使用が困難であった。特開平8−155275号公報のように原水槽内で下方からの曝気による気泡を伴う上昇流を根元付近に直接当てて汚れを除去する技術がある。中空糸膜の先端が封止された自由端であり、中空糸膜に絡むものが除去される構造となっている。
また一方で中空糸膜束自体を板状の薄束とし、平膜モジュールと同様に特開平6−7646号公報のようにシート状に中空糸膜を配した形状のモジュールや、特公平7−83823号公報のようにプレート状の中空糸膜モジュールが研究されている。このモジュールを使用すると中空糸膜が多本数厚く束ねられておらず、膜束の内側に汚れが侵入しても除去は容易である。
特公平4−70958号公報
特開平3−242230号公報
特開平8−155275号公報
特開平6−7646号公報
特公平7−83823号公報
以下図面に基づいて本発明の詳細を説明するが、本発明はこれら図面により限定されるものではない。
図1、図2に本発明の一例を示す。中空糸膜1は先端部2で各々独立した自由端となっている。他端は平板状に固定されて固定部3を形成し、集水部材4により中空糸膜1を透過した処理水を集める集水部5を形成した中空糸膜モジュール6となっている。
中空糸膜1の先端部2が各々独立しているとは、先端部2が支持、拘束されず、あるいは近隣の中空糸膜1とも互いに独立していればよい。モジュール6内の中空糸膜1が各々自由端となり、自在に揺動可能となる。このモジュール6を水槽内に形成される旋回流の上昇流部に中空糸膜先端部2が上、集水部5が下となるように配置することで、高濃度の活性汚泥水中での使用においても、その水流によって中空糸膜1膜面には汚泥が堆積しにくく、水流によって自在に揺動するため中空糸膜間に汚泥が堆積しにくく、し渣の絡みも起こりにくい。また、し渣が絡んだ場合にも中空糸膜先端部2から容易に除去される。下方からモジュールに付与される水流は集水部5が非常に薄く平板状であるため高い水流を抵抗を小さくそのままに中空糸膜1に付与でき、し渣の絡みを防止できる。
ここでいう自由端とは中空糸膜1の先端部2が互いに何にも拘束されず、中空糸膜1の先端部2が自在に揺動可能な状態をいうものである。モジュールの一端がU字状のループとなっていると、中空糸膜1は揺動するが、ループ部にし渣が絡み付きにやすく、絡んだし渣は除去されにくい。つまり中空糸膜の形状は流れの終端となる部分には特異な形状を有さないことが好ましい。
図3に示すように中空糸膜1は他端では引き揃えられて線状に集合していることが好ましい。通常は中空糸膜を集合させるために固定部3が設けられる。線状に集合している形状であれば同じく線状の集水部5の形成が可能であり、下方からの水流を抵抗なくそのまま上側に位置する中空糸膜束に通すことができ汚泥の堆積、し渣の絡みを防止できる。従来の中空糸膜モジュール6では固定部3付近の中空糸膜1根元部分は揺動性が小さいため汚泥堆積、し渣の絡みが起こりやすかったが、平板状の固定部3であれば、この部分への堆積自体が小さなものとなり、堆積した時点で中空糸膜1の自在な揺動と水流によって上方に移動し、中空糸膜先端部2からより容易に除去される。
このような固定部3であれば複数の中空糸膜1の束に厚みがないため、中空糸膜束の内側も中空糸膜モジュール6最外部の中空糸膜1と同様に効果的に揺動し、固定部3付近の汚泥剥離除去が容易である。よって膜面積を増加させる目的で、この平板状の固定部3に多本数の中空糸膜1を集束することが可能である。
固定部3での中空糸膜本数はそのモジュールの膜面積となるため処理量を決定する大きな因子となる。中空糸膜本数は多いほうが膜面積を大きくでき好ましい。しかし中空糸膜固定部の形状に対して本数を選定して配列することが好ましい。中空糸膜1に垂直な固定部断面の厚さt方向に多本数の中空糸膜を配列すると膜束が厚みを持つため、汚泥による中空糸膜間閉塞が起こりやすくなる。この厚さ方向に配列する中空糸膜の本数は、特に限定するものではないが、固定部断面厚さt、中空糸膜外径dに制約を受ける。この厚さ方向に対して50本以内であることが好ましく、更に好ましくは30本以内、最も好ましくは10本以内であることである。
図3、図4のように線状の固定部は断面が薄く形成されていることが好ましいが、固定部が長方形の断面を持つ場合、断面形状の幅Wと厚さtとの比が10≦W/t≦300の範囲にあるように薄い固定部であることが好ましく、より好ましくは30≦W/t≦100である。しかし薄く線状に固定されていれば特に限定するものではない。
固定部3の幅Wと厚さt以外にも固定部3の固定部切断端からの高さHは、長期使用に際して透過側を液密に形成し続ける耐性に大きく影響を及ぼす。Hが大きいと強固に中空糸膜を集束することができる。反面、透過水の経路が長くなるため、小さいほうが透過水の圧損が小さくなる。モジュールの大きさに関わらず、固定部3切断端からの高さHが30≦H≦65mm程度であれば非常に強固であり好ましい。しかし平板状の固定部とは特にこれに限定されるものではない。
固定部は平板状であってもそこに配列される中空糸膜本数は固定部の厚さ方向には2〜15本が好ましく、より好ましくは5〜10本程度である。長さ方向にはできるだけ多本数の糸を集束して膜面積を増やすことが好ましい。長さ方向/厚さ方向の糸本数の比は200〜1500程度が好ましい。
固定部3ではポリマーで中空糸膜が固定されていることが好ましい。より好ましくはエポキシ系接着材、ウレタン接着剤を用いて中空糸膜間を接着固定することである。最も好ましくはウレタン接着材の使用である。ウレタン接着剤であれば硬化後も柔らかく、切断が容易であり、後の作業が易化される。
また、固定部3の形成は型枠の中で接着材とともに中空糸膜間を固定し、硬化後型枠を外し、固定部3としてもよいし、予め用意した固定部材内で中空糸膜間を接着固定するのもよい。部材の有無については特に限定するものではない。
中空糸膜間へのポリマーあるいは接着材の充填には、特に限定するのもではないが、一般の中空糸膜モジュールの製作と同様に遠心成型法や静置法も好ましい。より好ましくは接着材の塗布により中空糸膜間に浸透させる方法である。中空糸膜束は非常に薄いため束表面からの塗布により中空糸膜間へ接着材などが浸透しやすい。型枠内で一時固定した中空糸膜端部に、更に接着材などを注入した後に、中空糸膜を揺動させると中空糸膜間への浸透性が向上しより好ましい。
静置法や、塗布によって固定部3を形成する際には中空糸膜間に固定部表面から充填する接着材やポリマーが這い上がり固定される。遠心成型法等であれば均一な固定部界面が形成され好ましい。しかし、方法については揺動性を損なわないような固定方法であれば特に限定するものではない。
このようにして形成された固定部3で中空糸膜内部を開口して、集水部を形成し、原水側と透過水側と区分される。固定部形成の際に既に中空糸膜内部が開口しているものはそのまま集水部を形成すればよい。
図5にその一例を示す。このように切断開口された固定部3は集水部材4を取り付けて透過水を取り出す集水部5を形成する。集水部材4を取りつける方法にはネジ、フランジなどがあるが、特に限定するものではない。しかし固定部3と同様に平板状の構造を形成するためには、好ましくは接着によって取り付けることである。接着であれば、平板状の固定部3の形状をそのままに薄い集水部を形成することができる。集水部5は薄く形成されれば、下方からの水流を膜面に付与でき、モジュール6もコンパクトになるため好ましい。しかし集水可能な構造であればよく、この形状に特に限定されるものではない。
しかし、接着によって集水部を形成する場合、固定部3の端部が鋭利であるとここでの集水部材との接着剤の浸透が悪く、完成後に集水部との間に漏れを生じる場合がある。このため、製作性を考慮すると、固定部3の形状は端部での図4のように丸みを帯びていることが好ましい。丸みを帯びていれば集水部材4との接着の際に接着材が行きわたりやすく均一に接着され、この部分でのリークが防止できる。さらに好ましくは接着される集水部材4側も丸みを帯びていることである。端部での丸みの半径Rは2〜10mm程度であることが好ましく、更に好ましくは端部での丸みRは固定部の厚みtに対してt/8≦R≦t/2の範囲にあることである。集水部材側の丸みもこれに準じたものであることが好ましい。
集水部材4は固定部3の形状を保つようであれば特に限定するものではない。図1に示すような形状も好ましい。また更に好ましくは集水部材4の底部が丸みを帯びていることである。これにより下方からの上昇流をより抵抗を小さくして中空糸膜に付与できる。最も好ましくは図5のように集水部材4が薄肉部7と厚肉部8からなることで、すなわち、集水部の厚みがその長さ方向に変化することである。このようであれば薄肉部7で平板状の固定部の厚さを保ちつつ、厚肉部8には透過水を抜き出すための透過水取出し部9を設けることができ非常に取り扱いやすくなる。厚みの増す厚肉部8はできるだけ薄いほうが好ましいが、部材の取り付けなどを考慮すると薄肉部7での厚さに対して厚さ方向両側に+2〜15mm程度であることが好ましい。厚さの変化については、なだらかに変化するのも良いし、丸みを帯びて変化するのも良い。好ましくは図5のように角型に段差を有するものである。
図6のように中空糸膜1を効果的に揺動させるためには中空糸膜外径dとモジュール6の中空糸膜長Lが重要である。中空糸膜長Lとは固定部3上部から中空糸膜先端までの中空糸膜1の長さである。中空糸膜外径dが大きく、モジュールの中空糸膜長Lが小さいと揺動性は低下する傾向にある。揺動性を考慮すると中空糸膜外径dとモジュール中空糸膜長Lは2.0×102≦L/d≦5.0×103であることが最も好ましい。中空糸膜長はモジュール内で均一であることが好ましいが、揺動性を欠かない範囲であれば不均一であってもよく特に限定するものではない。
本用途で使用する中空糸膜モジュール6の中空糸膜1はしなやかに揺動するようにするため十分な強度とそれが効果的に働く形状を有していることが好ましい。素材の強度面では外力に対する強度が300〜700g/mm2程度で、脆いと使用が困難であるため、30〜90%程度の伸度を有していることが好ましい。中空糸膜形状面でも中空糸膜外径に対して1〜3割程度の膜厚を有していることがより好ましい。しかし、揺動性を損なわないのであれば強度や膜厚等は特に限定するものではない。
本発明の中空糸膜モジュール6に使用する中空糸膜1は、限外濾過膜、精密濾過膜が適当であり、運転動力の低い逆浸透膜でも良い。中空糸膜の外表面で汚れを除去し、内表面に向かって透過水が流れる外圧型多孔質中空糸膜を使用してあれば、それ以上の形式は特に問わない。また、膜構造においても対称膜、非対称膜等を限定するものではない。
中空糸膜素材としては、中空糸が形成されるものであれば特に限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることが可能である。
図7のように中空糸膜1の外表面で汚れを除去するため自由端である中空糸膜の先端部2は封止されていることが好ましい。ここでいう封止とは中空糸膜先端部2が被ろ過物を除去する能力を有することを意味するものであって、高い水質が要求されるのであれば接着材やポリマーなどの充填材10を充填し完全に封止するのも好ましい。ポリマーであれば膜素材と同じ素材であれば、接着剤のように他の中空糸膜との接着が起こらず、封止が容易であり好ましい。
さらに図8のように好ましくは透過性を有するポリマー11で封止されているものである。これであれば先端部2でもろ過操作が行え、処理量を向上させることも可能である。
また図9のように中空糸膜先端部2に高い力をかけて圧着(圧着部12)させるのも好ましいし、先端部2を熱や超音波で圧着(融着)させることも好ましい。
封止の方法については製作が容易で、安価な方法であればより好ましい。好ましい一例としては中空糸膜1の他端の固定部3を先に形成し、開口した中空糸膜先端部2から充填材10を微圧で吸引し、先端部のみにこれらを充填する方法があげられる。また充填材10がポリマーの場合はモノマーを吸引後重合することで封止可能である。しかし方法についても特に限定するものではない高濃度の排水中で使用する場合、水質的に問題なければ先端部2は開放(先端開放部13)していてもよい。これは運転中に高濃度の固形分により先端部が封止するからである。図10のように接着しないまでも中空糸膜1の先端部2に応力をかけて変形(圧接あるいは圧壊)させておけば(先端開放部13)速やかに固形分による封止が起こりやすく、且つ製作も容易であり好ましい。図10は偏平に変形させた場合の一例であるが、変形させる形状はこれに限定されるものではない。
先端部2への処理を施す際には、処理後の先端部2に突起などが見られると、し渣が絡みやすくなるため、突起のないように平滑に処理を施すことが好ましい。
使用する用途と要求される水質によって先端部2の封止、開放を適宜選定することが好ましい。また予め先端部2を封止した中空糸膜1を使用してもよいし、先に他端の固定部3を形成してもよく、その方法、順序については特に限定するものではない。
図11のように集水部から透過水に移送する透過水取出し部9が接続あるいは集水部材4と一体に設けられていることが好ましい。透過水取出し部9は図5のように集水部材4に取り付けられるノズルのようなものでもよいし、チューブであってもよい。好ましくは更に剛性を有していることで、これによりユニット化や取り扱いが簡便になる。パイプなどが安価で且つ剛性を有しておりより好ましい。
図11のように本発明の中空糸膜モジュール6は保護板14を有していることが好ましい。この保護板14は取り扱いの際にモジュール6の中空糸膜1の損傷などを防止できる。また使用の際に中空糸膜1の乱れを防止可能である。保護板14は中空糸膜モジュール6全体を覆っていてもよいし、中空糸膜1部分のみを覆っているものであってもよい。保護板14は2組4面あるモジュール側面のうち、面積の大きい1組の少なくとも片側に設けられてあれば、中空糸膜1がもたれかかり好ましく、両側であれば更に取り扱いやすく好ましい。また中空糸膜モジュール6を覆うように取り付けられてあるのもが好ましいが、形状については特に限定するものではない。保護板14は中空糸膜モジュール6と一体であることが好ましいが、使用の際に膜モジュール6に取り付けるものでもよく、隣接していれば特に限定するものではない。図11は保護板14を両側に有し、透過水取出し部9として角パイプを用い、角パイプに保護板14を取り付けた例である。このようにすると取り扱いが非常に容易であり好ましい。
図12、図13のように複数の中空糸膜モジュール1を並列に配置し中空糸膜モジュールユニット15を形成することで、処理量を上げることが可能となり大量処理の際に非常に好ましい。各中空糸膜モジュール6は中空糸膜間への汚泥の堆積を防止するため集水部の間は5〜40mm程度間隔を空けて並列されるのが好ましい。集水部材が厚肉部と薄肉部を有する場合は集水部同士を密着させ、薄肉部で形成される空間により原水効果的に流動し好ましい。このように並列してモジュール6を配置する場合、保護板は各モジュールの片側にあれば両側のモジュールで保護板を共有でき、隣接するモジュール同士の中空糸膜も絡みがなく好ましい。両側にあればモジュールの取り扱いが容易であるためより好ましい。しかし並列に配置していればよく保護板の設置については特に限定するものではない。
並列した複数の中空糸膜モジュールユニット15がユニット容器16に収容されていると設置、取り出しが簡単に行え好ましい。ユニット容器16は中空糸膜モジュールユニット15を収容した際にユニット容器16内の中空糸膜モジュールに原液が流動するよう上下部が開放していればよく、金属製であっても、樹脂で形成されるものでもよく材質については特に限定するものではない。並列された中空糸膜モジュール6各々の一部を収容するものもコンパクトで好ましく、中空糸膜モジュールユニット15全部収容するものでも取り扱いが容易であり好ましい。また各々の中空糸膜モジュール6間仕切りを有するものであればモジュールの並列が容易であり且つ任意のモジュールが容易に脱着可能となり更に好ましい。
このような中空糸膜モジュールユニット15を図14のように散気装置17の上方に配置することで、散気で水槽内に形成される旋回流の上昇流部分にモジュールユニット15が配置されることになり散気による気泡と上昇流によって膜面に付着する汚泥がかきとられ汚泥が堆積しにくく好ましい。加えてモジュールの集水部が下で、中空糸膜が上になるように散気装置17の上方に配置することが更にも好ましく、これにより上昇流により汚泥がかきとられるだけではなく、し渣が中空糸膜に絡み付きにくく、絡んだし渣も中空糸膜先端部から除去され、中空糸膜モジュールに汚泥の付着、し渣の絡みが起こらなくなる。散気装置17はパイプや角パイプに複数の穴が開けられているものもよいし、多孔質のパイプでもよい。空気の供給を受け気体噴出可能なものであれば特に限定するものではない。散気装置17は収容される水槽と独立に配置されていることが好ましく、より好ましくはユニット容器と一体に散気装置17が配置されていることであり、この様であると散気装置17に対して膜ユニット15がずれることがなく均一な散気が行える。
中空糸膜が上になるように使用すると水位が下がった際に、旋回流が起こらなくなり、散気により中空糸膜が乱れてしまう。給排水等により液位が下がる場合は排水時には散気を停止して、液位の低下速度を低くして排水することで、中空糸膜モジュールユニット15は個々の中空糸膜モジュールに保護板を設けてあるため、排水された際にも中空糸膜が保護板にもたれかかり中空糸膜が倒れたり乱れたりせず好ましい。液位の低下速度は特に限定はしないが、3〜50mm/sが好ましく、より好ましくは5〜30mm/sである。
保護板を設けない場合は排水した際に中空糸膜束が倒れるため、図15のようにモジュールユニットが反転軸20を軸として、反転可能であることもさらに好ましい。このようであれば液位が下がった際に、中空糸膜モジュールユニット15を反転軸20で反転することができ、中空糸膜が倒れない。反転は構造的にはモジュールユニットを収容する容器16とともに行われる構造であることが好ましい。従ってユニット容器16には中空糸膜モジュール6がユニット容器16から外れることを防止する止め具を有していることが好ましい。
また中空糸膜モジュールユニット15からは槽内の液を排水した後に液切りとともに多量の付着物が下方に落下する。特に図13のようにモジュールユニットが反転する場合はその量が多く、モジュールユニットの下方に配置された散気装置17の散気孔を閉塞する。従って散気装置17は実質上モジュールユニットの直下には配置せず、中空糸膜モジュールユニット15の下方投影面に対して中空糸膜モジュールユニット15占有位置の外側で占有面積の2倍以内の範囲に配置されていることが好ましい。より好ましくは1.5倍以内であり、最も好ましくは1.2倍以内である。このようであればモジュールの反転に関わらず、下方に落下した汚れが散気装置17を閉塞することがなく好ましい。
中空糸膜モジュールユニット15占有位置の外側の散気装置17からの気泡を導くため、モジュールユニット15の下方から散気装置17を覆うように、散気装置17はスカート18に覆われていることが好ましい。スカート18はモジュールユニット15から下方に向かって開口面積が広がっており、スカート18の下端が散気装置17の設置位置よりも低いことで散気装置17を覆う構造になっていることが好ましい。スカート18の形状は図13のように下方に向かって開口面積が広がっているものであれば特に限定するものではない。材質についても同様である。
複数の中空糸膜モジュールを並列して透過水を取り出す場合には各モジュールを透過水取得手段に接続するのもよいが、各々のモジュールを図13のような連結部材19を介して接続するとポンプ等の透過水取得手段を用いる場合にはポンプ台数が少なくなり好ましい。より好ましくは中空糸膜モジュールユニットの各中空糸膜モジュールの透過水取出し部が連結部材19を介して接続されることである。
このような中空糸膜モジュールユニットに、連結部材内側が通常負圧にされる透過水取得手段、散気装置に気体供給手段を接続することで汚水処理装置を形成する。
原水は本発明の中空糸膜モジュールを使用した際に効果の高い排水用途ではもとの原水として、下水、し尿、農業集落排水、生活廃水、凝集排水等があげられる各分野での使用は好ましいが、使用用途は特に限定されるものではない。清澄な水のろ過に用いることも好ましい。
通常の装置は水槽中で使用され、中空糸膜モジュールユニットが配置でき、且つ処理する排水量に見合った水槽であれば特に限定するものではない。活性汚泥処理槽内に直接浸漬するのもよいし、別途膜分離槽を設けて、中空糸膜モジュールユニットを運転するのも好ましい。
透過水取得手段は浸漬される水槽の水位での圧力を0としたときにそれに対して透過水取得位置を負圧とするものであれば特に限定をするものではなく、ポンプ等も好ましく、エゼクタ等であれば省エネルギーであり更に好ましい。水位差のみ、あるいは水位差を利用したサイホンであれば、省エネルギーであり且つ、吸引ではないため1kgf/cm2以上の差圧で操作可能であるため最も好ましい。
気体供給手段はコンプレッサーやブロアなどが好ましいが、安価に散気装置に気体供給が行えれば手段は特に限定するものではない。
汚水処理装置の運転にはろ過、停止を周期的、あるいは定期的に実施し膜面への汚れの付着量を低く抑えるのも好ましいし、単にろ過のみを実施するのも好ましい。また更に中空糸膜であるため透過水を逆向きに流し、膜面から透過水を吹き出させ汚れを除去する逆圧洗浄を実施し、ろ過圧力を回復させる運転を実施するのも好ましい。逆圧洗浄に関しては周期的に実施することが好ましく、ろ過差圧よりも高い圧力で水を押し戻すことが好ましい。更に好ましくは定期的に水槽内を水に置換してすすぎ洗浄を実施することであり、これによって膜面に付着する物質をほとんど除去でき効果的である。これらの運転方法が実施可能な装置構成であることが好ましいが、どの運転方法を実施するかは原水の状況により適宜選定することが好ましく。特に限定するものではない。
ただ汚水処理装置は水位が所定の位置より低下した際には散気装置が停止する構造であるものが好ましく、この用にすることで膜も乱れがなくなり好ましい。更にモジュールユニットが反転する構造を用いた場合は水槽内の水位の低下によって、中空糸膜モジュールユニットの反転を制御するものが好ましく、こうすることで水位が低下した際の膜も乱れを防止できる。
中空糸膜モジュールの自由端である一端も他端と同様に接着材にて固定し集水部材を設けた両端固定のモジュール(有効長750mm、全長890mm)3つを製作し、実施例1と同様のユニット容器に収容して、同条件での運転を実施した。約750時間ぐらいで運転圧力が40kPaにまで達し、運転継続が困難であった。モジュールを取り出すと上部の中空糸膜にし渣が絡み付いており、そこに汚泥が堆積していた。両モジュールの運転結果を図16に示す。