JP2006140098A - プロトン伝導体、プロトン交換膜、および燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導体、プロトン交換膜、および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】プロトン伝導性の高いプロトン伝導体、およびメタノール透過性の低いプロトン交換膜、並びにそれを用いた燃料電池を提供すること。
【解決手段】セラミックス骨格と、該セラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基とを有し、かつ細孔の周期構造を形成しているプロトン伝導性多孔質セラミックス、からなることを特徴とするプロトン伝導体とする。また、そのプロトン伝導体と、ポリマー成分とを含有するプロトン交換膜とする。そして、そのプロトン交換膜を電解質膜として用いた燃料電池とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロトン伝導体、プロトン交換膜、および燃料電池に関するものである。
燃料電池は、水の電気分解の逆の反応、すなわち水素と酸素との反応を利用することで、電流を取り出す発電装置である。燃料電池は、従来の他の発電装置に比べて発電効率が高く、また発電による生成物が水であるため、省資源、環境保全等の観点から様々な分野における電源として実用化が期待されている。
一般的な燃料電池は、酸素極、燃料極、及び、それらで挟み込まれた電解質膜、で形成された電解質膜電極接合体(MEA)と、各極から電気を取り出す集電体と、で構成される。そして、酸素極に酸素(又は空気等の酸素含有ガス)を、燃料極に水素(又はメタノール水溶液等の水素イオンを取り出すことが可能な燃料)を供給することで、発電することができる。
燃料電池の電解質膜を形成する材料としては、例えば、溶融炭酸塩、固体酸化物、リン酸、固体高分子等が知られているが、固体高分子電解質膜を使用した固体高分子型燃料電池(以下PEFCとする)は、常温〜90℃という低い温度で作動可能であり、薄型・軽量化を図ることができることから、次世代のエネルギーデバイスとして盛んに研究が行われている。PEFCの中でも、メタノール水溶液を燃料として燃料極に供給し、メタノールから直接水素イオンを取り出す方式を採用したダイレクトメタノール型燃料電池(以下DMFCとする)は、水素ボンベやメタノールから水素を取り出す改質器などが不要であり、さらなる小型化が可能であることから、携帯機器用電源等への適用が期待されている。
このような燃料電池における固体高分子電解質膜として用いられるプロトン交換膜は、現在、パーフルオロスルホン酸系や炭化水素系のポリマーをプロトン伝導体として含有するものが主流である。このような有機系のプロトン伝導体はプロトン伝導性に優れているものの、メタノール水溶液により膨潤しやすく、メタノール透過性が高いことが知られている。このため、このようなプロトン交換膜をDMFCの電解質膜として用いると、メタノールが燃料電池の燃料極で反応せず酸素極側に透過する所謂クロスオーバーと呼ばれる現象が発生し、発電効率が低下する傾向があった。この現象は特に高濃度のメタノール水溶液を使用した際に顕著にみられ、結果として高エネルギー密度化が図れないという問題があった。
そこで、膨潤しにくい無機系のプロトン伝導体を含有するプロトン交換膜の開発も行われている。特許文献1には、酸化ケイ素と、リン酸またはその誘導体等のブレーンステッド酸を主体とする無機系の化合物に、スルホン基を側鎖に持つ重合体を複合化したプロトン伝導体からなるプロトン交換膜が開示されている。特許文献2では、メタノール不透過性有機材料と、SiO2及びP25を含む無機系プロトン伝導材料とを具備するプロトン伝導体からなるプロトン交換膜が開示されている。しかしながら、ケイ素酸化物と併用するリン系の化合物は水に対する安定性に乏しく、DMFCの電解質膜としては長期信頼性に欠けるものであった。
特許文献3には、シリカなどの無機物に酸性官能基を化学結合により導入した無機系の物質を、高分子材料により結着してなるプロトン伝導体からなるプロトン交換膜が開示されている。無機物に酸性官能基を導入する方法としては、酸性官能基を有する、または後処理で酸性官能基を導入可能な、シランカップリング剤により表面処理を行う方法が記載されている。
特開平10−69817公報 特開2001−93543公報 特開2001−155744公報
しかしながら、通常の無機物に表面処理して酸性官能基を導入する方法では、無機物に導入される酸性官能基の数に限度があると考えられる。したがって、このような無機物を用いてもプロトン伝導性の向上はあまり見込めず、さらなる特性の向上が望まれている。
本発明は、プロトン伝導性の高いプロトン伝導体、およびメタノール透過性の低いプロトン交換膜、並びにそれを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明のプロトン伝導体は、セラミックス骨格と、該セラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基とを有し、かつ細孔の周期構造を形成しているプロトン伝導性多孔質セラミックス、からなることを特徴とするものである。
特に、前記プロトン伝導性多孔質セラミックス中に前記プロトン伝導性官能基が均一に存在していることが好ましい。このようなプロトン伝導体は、前記プロトン伝導性官能基、前記プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及び前記プロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、の少なくとも1種を、セラミックス骨格形成と同時に導入することで、プロトン伝導性多孔質セラミックスを形成する工程を有する方法により好適に製造できる。
また、本発明のプロトン交換膜は、前記のプロトン伝導体と、ポリマー成分とを含有するものである。
また、本発明の燃料電池は、前記のプロトン交換膜を電解質膜として用いたものである。
本発明によれば、プロトン伝導性の高いプロトン伝導体、およびメタノール透過性の低いプロトン交換膜、並びにそれを用いた燃料電池を提供できる。
本発明のプロトン伝導体は、セラミックス骨格と、そのセラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基とを有し、かつ細孔の周期構造を形成しているプロトン伝導性多孔質セラミックス、からなるものである。セラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基を持つプロトン伝導性多孔質セラミックスからなるプロトン伝導体とすることで、水への安定性の高いプロトン伝導体となる。
セラミックス骨格を構成する材料としては、最終的に細孔の周期構造が形成可能なものであれば良く、例えば、SiO2,TiO2,Al23,ZrO2等の材料が挙げられる。セラミックス骨格は1種の材料で構成されていても良く、適宜選択した2種以上の材料の複合体で構成されていても良い。特にナノスケールの細孔による周期構造を容易に形成可能であることから、セラミックス骨格はSiO2で構成されていることが好ましい。
セラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基としては、例えば、スルホ基[−SO3H]、カルボキシル基[−CO2H]等が挙げられる。プロトン伝導性官能基は、プロトン伝導性多孔質セラミックスの骨格中に1種が結合していても良く、適宜選択した2種以上が結合していても良い。水への安定性が高いことから、スルホ基が好ましい。
本発明のプロトン伝導体であるプロトン伝導性多孔質セラミックスは、上記のセラミックス骨格にプロトン伝導性官能基が化学結合しているものであるが、プロトン伝導性官能基が直接セラミックス骨格を形成する原子に結合していても良く、適宜選択した2価の官能基を介してセラミックス骨格を形成する原子に結合していても良い。合成の容易さから、アルキレン基、フェニレン基を介してプロトン伝導性多孔質セラミックスの骨格中に結合していることが好ましい。上記アルキレン基としては、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐したアルキレン基から適宜選択することができる。
ここで、プロトン伝導性多孔質セラミックスは、細孔の周期構造を形成していることが重要である。「細孔の周期構造」とは、大きさが均一で規則的な配列をなしている細孔構造を意味する。例えば、直径数Åという非常に小さい細孔で形成されたゼオライト構造、MCM−41、SBA−15に代表される直径1〜50nm程度のナノスケールの細孔で形成されたヘキサゴナル構造、層状のラメラ構造等が挙げられる。このような構造を形成していることで、プロトン伝導性多孔質セラミックスの表面積が非常に大きくなるためその表面で有効に作用するプロトン伝導性官能基が多くなり、また、細孔が規則的な配列をなしているため表面のプロトン伝導性官能基によるプロトン伝導路が形成されやすくなり、高いプロトン伝導性が実現できるようになるものと考えられる。なお、細孔が周期構造を形成していることは、例えば透過型電子顕微鏡観察やX線回折測定で確認することができる。
周期構造を形成している細孔の細孔径分布には特に制限はないが、周期構造を形成することから、その分布の細孔径の最頻値は0.5nm〜100nmであることが好ましい。より高いプロトン伝導性を発現できることから、その最頻値は1nm〜50nmであることがより好ましく、1nm〜10nmであることがさらに好ましい。また、プロトン交換膜としたときのメタノール透過性が低くなることから、その最頻値は3nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm〜3nmである。なお、この細孔径分布は、窒素吸着法により測定することができる。
本発明では、効果的にプロトン伝導性が発現されることから、プロトン伝導性多孔質セラミックスはヘキサゴナル構造を形成していることが好ましい。また、1〜50nm程度のメソ孔を有する材料は一般にメソポーラス材料と呼ばれ、その中にヘキサゴナル構造を有するものが幾つか知られている。例えば、その骨格がSiO2で構成されたメソポーラスシリカが代表的である。
メソポーラスシリカは、一般に、界面活性剤をテンプレートとして、ゾル−ゲル法により製造できることが知られている。界面活性剤としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、EO−PO−EOトリブロックコポリマー等の両親媒性ブロックコポリマーなどが好ましく使用される。この界面活性剤の種類を適宜選択することで、所望の細孔径分布を有するメソポーラスシリカを得ることができる。
プロトン伝導性多孔質セラミックスが有するプロトン伝導性官能基は、そのセラミックス骨格中に化学的に結合していれば、表面に局在化して存在していても良く、均一に存在していても良い。より多くのプロトン伝導性官能基を存在させることができることから、プロトン伝導性官能基はプロトン伝導性多孔質セラミックス中に均一に存在していることが好ましい。
プロトン伝導性官能基が均一に存在しているプロトン伝導性多孔質セラミックスは、プロトン伝導性官能基、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及びプロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、の少なくとも1種を、セラミックス骨格の形成と同時に導入する方法で製造することができる。より具体的には、プロトン伝導性官能基、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及びプロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、のいずれかを有し、かつセラミックス骨格を形成可能な原料を用いて、セラミックス骨格を形成することで、プロトン伝導性官能基が均一に存在しているプロトン伝導性多孔質セラミックスとなる。セラミックス骨格を形成する原料としては、上記のものの他に、セラミックス骨格を形成可能な他の原料を併用することもできる。
プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基を有する原料を用いた場合は、その後に、所定の方法でプロトン伝導性官能基に変換すれば良い。例えば、チオール基[−SH]を有する原料を用いた場合は、セラミックス骨格にチオール基が導入されることとなるが、そのチオール基はH22等による酸化処理によりスルホ基[−SO3H]に変換することができる。
プロトン伝導性官能基を導入可能な官能基を有する原料を用いた場合は、その後に、所定の方法でプロトン伝導性官能基を導入すれば良い。例えば、フェニル基[−C65]を有する原料を用いた場合は、セラミックス骨格にフェニル基が導入されることとなるが、そのフェニル基を発煙硫酸等によりスルホ化することでスルホ基[−SO3H]を導入することができる。
プロトン伝導性官能基が表面に局在化して存在するプロトン伝導性多孔質セラミックスは、先にセラミックス骨格を形成した後、プロトン伝導性官能基、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及びプロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、のいずれかを有する表面処理剤で表面処理する方法で製造することができる。また、前述のような方法で、プロトン伝導性官能基、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及びプロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、のいずれかが均一に存在するプロトン伝導性多孔質セラミックスを製造し、さらにプロトン伝導性官能基、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及びプロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、のいずれかを有する表面処理剤で表面処理する方法とすることもできる。前述と同様に、プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基は、表面処理後に所定の方法でプロトン伝導性官能基に変換することができる。また、プロトン伝導性官能基を導入可能な官能基には、表面処理後に所定の方法でプロトン伝導性官能基を導入することができる。
プロトン伝導性多孔質セラミックス中に含まれるプロトン伝導性官能基の数は、セラミックス骨格を構成する材料、細孔の周期構造、プロトン伝導性官能基の種類、合成方法等を考慮して、目的とするプロトン伝導性が発現できるように適宜設定することができる。
例えば、SiO2でセラミックス骨格を形成し、プロトン伝導性官能基としてスルホ基[−SO3H]を導入したプロトン伝導性官能基においては、S原子の数とSi原子の数の比S/Siが0.05〜0.50であることが好ましい。より好ましくは0.07〜0.30であり、さらに好ましくは0.10〜0.20である。これらの原子の数の比はエネルギー分散型X線分析装置により測定できる。
本発明のプロトン伝導体と、ポリマー成分とを含有するプロトン交換膜とすることもできる。
ポリマー成分としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のような耐メタノール膨潤性を持つものが好適に用いられる。さらに、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)のようなエラストマーを用いることも好ましい。特に好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンである。ポリマー成分は1種でも良く、適宜選択した2種以上を併用しても良い。
上記のプロトン交換膜は、高いプロトン伝導性を有していることから、燃料電池の電解質膜として好適に用いることができる。メタノール透過性が低いことから、ダイレクトメタノール型燃料電池の電解質膜として特に好適に用いることができる。
燃料電池の構成としては、例えば、酸素極、燃料極、及び、それらで挟み込まれた電解質膜、で形成された電解質膜電極接合体(MEA)と、各極から電気を取り出す集電体と、酸素極に酸素(又は空気等の酸素含有ガス)を、燃料極に水素(又はメタノール水溶液等の水素イオンを取り出すことが可能な燃料)を供給する機構と、で構成することができる。それぞれの構成要素は、従来公知のものまたはそれと同様の機能を発現可能なものとすることができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、メソポーラスシリカの合成時にチオール基[−SH]を有するシラン化合物を併用して、セラミックス骨格の形成と同時にチオール基を導入し、そのチオール基を酸化処理によりスルホ基[−SO3H]に変換することで、プロトン伝導性官能基が均一に存在しているメソポーラスシリカを作製した。その手順を以下に示す。
30質量%メタノール水溶液100gに、水酸化ナトリウム[NaOH]0.57gと、界面活性剤である臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム[C1633N(CH33 +Br-:C16TAB]1.97gとを溶解させた。この溶液に、オルトケイ酸テトラメチル[Si(OCH34:TMOS]4.89gと、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン[(CH3O)3SiC36SH:MPTMS]2.52gとの混合溶液を滴下し、45℃で12h保持した。その後、95℃で36h保持し、得られた沈殿を取り出し、洗浄・乾燥した。
得られた沈殿物から界面活性剤、ナトリウムなどの不純物を取り除くために、4質量%の濃塩酸を含むメタノール中にその粒子を投入し、24h還流した。これにより、チオール基が均一に存在しているメソポーラスシリカの粒子が得られた。
この粒子を、30質量%H22水溶液中、室温で24h撹拌することによりチオール基をスルホ基に酸化することで、スルホ基が均一に存在しているメソポーラスシリカを得た。
使用した原料の組成(molar ratio)は以下の通りである。
MPTMS:TMOS:C16TAB:NaOH:H2O:MeOH
=1:2.5:0.42:1.11:272:66
得られたメソポーラスシリカを透過型電子顕微鏡にて観察したところ、細孔が周期構造を形成していることが確認できた。また、得られたメソポーラスシリカの細孔径分布を窒素吸着法により測定したところ、細孔径の最頻値は1.4nmであった。
(実施例2)
実施例2として、メソポーラスシリカを合成後、チオール基を有するシラン化合物により表面処理を施し、そのチオール基を酸化処理によりスルホ基に変換することで、表面にプロトン伝導性官能基が存在しているメソポーラスシリカを作製した。その手順を以下に示す。
界面活性剤であるPluronicP123(商品名、BASF社製)4gを水30gに溶解させ、これに2M−HClを120g加えた。さらにオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC254:TEOS)8.5gを加えて20h撹拌した。ここで沈殿が生じた。さらに80℃の恒温槽に1昼夜静置し、得られた沈殿を取り出し、洗浄・乾燥した。これを熱処理することにより界面活性剤を除去することで、メソポーラスシリカを作製した。なお、熱処理条件は、昇温速度1℃/minで500℃まで昇温し、その温度で6h保持とした。
得られたメソポーラスシリカをめのう乳鉢で粉砕後、遊星型ボールミルを用いてさらに粉砕し、その後ふるいを用いて10μm以上の粒子を取り除いた。トルエン198gにMPTMS2gを混合した溶液に、ふるい分けを行った粒子を1g投入し、24h還流した。ろ過・洗浄・乾燥後、30質量%H22水溶液中、室温で24h撹拝することによりチオール基をスルホ基に酸化することで、表面にスルホ基が存在しているメソポーラスシリカを得た。
得られたメソポーラスシリカを透過型電子顕微鏡にて観察したところ、細孔が周期構造を形成していることが確認できた。また、得られたメソポーラスシリカの細孔径分布を窒素吸着法により測定したところ、細孔径の最頻値は6.2nmであった。
(比較例1)
比較例1として、TEOSを加水分解して作製したシリカゲル粒子に、実施例2と同様の方法で表面処理を行い、表面にスルホ基が存在しているシリカゲル粒子を得た。TEOSの加水分解は、以下の方法で行った。
TEOS:エタノール:H2O:MeOH=1:4:10:0.017(モル比)で混合した混合物を35℃でふたをしたまま1週間エージングし、その後ふたを取って35℃で1週間乾燥することで、ドライゲルを得た。得られたドライゲルをメノウ乳鉢で粉砕し、その後400℃で10hの熱処理を施してシリカゲル粒子を得た。
得られたシリカゲル粒子の構造を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、細孔が周期構造を形成していないことが確認できた。
(評価)
実施例1および2、並びに比較例1で得られた試料に、2.5質量%のPTFEをバインダとして添加し、ペレット状(大きさ:φ13mm)に成型し、得られたペレットの両面にAuスパッタにより電極を作製した。この試料を用いて、恒温恒湿槽内にて交流インピーダンス法によりプロトン伝導度を測定した。また、エネルギー分散型X線分析装置により、SとSiの原子数比を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2006140098
表1の結果より、プロトン伝導性官能基を導入したメソポーラスシリカを用いた実施例1及び2では、プロトン伝導性官能基を導入したシリカゲルを用いた比較例1よりも高いプロトン伝導性を示した。これは、メソポーラスシリカが細孔の周期構造を持つためと考えられる。
さらに、スルホ基が均一に存在しているメソポーラスシリカを用いた実施例1では、表面にスルホ基が存在している実施例2に比べて、より高いプロトン伝導性を示した。実施例2のような表面処理による方法で製造した場合は、メソポーラスシリカの表面に残存するOH基と表面処理剤が反応して結合を作るため、表面に残存するOH基の数には限りがあること、細孔の内部までは表面処理剤が浸入しにくいこと、等により、プロトン伝導性官能基の導入量があまり多くできないことが考えられる。それに対して、実施例1のように、セラミックス骨格の形成と同時にプロトン伝導性官能基またはそれに変換可能な官能基導入する方法で製造した場合は、より多くのプロトン伝導性官能基が導入できるため、また均一に存在することからプロトン伝導路を形成しやすくなって、プロトン伝導性が向上したものと考えられる。
なお、別途実施例1の試料を30体積%メタノール中で24時間保持したところ、プロトン伝導度はほとんど変化なく、耐水性・耐メタノール性が高いことも確認された。
(実施例3)
実施例3として、実施例1と同様の方法で作製した、スルホ基が均一に存在しているメソポーラスシリカを、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)と複合化して、膜状に成形することで、プロトン交換膜を作製した。その手順を以下に示す。
所定量の上記メソポーラスシリカと、PVdFとを、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)に加え、超音波を印加して分散させた。さらにホモジナイザーを用いて10分間撹拌した。これをガラスシャーレにキャストし、100℃で45分間乾燥させることにより、プロトン交換膜を作製した。膜厚は約160μmとした。PVdFの添加量は、プロトン交換膜の総重量に対し50質量%とした。
(比較例2)
比較例2として、デュボン社のNafion(登録商標)117からなるプロトン交換膜を使用した。膜厚は約175μmとした。
(評価)
実施例3及び比較例2のプロトン交換膜を用いて、メタノールの透過量を測定した。測定方法は、プロトン交換膜の一方に純水を配置し、他方に30体積%メタノールを配置し、これを所定時間放置した後に純水側に透過してきたメタノールをガスクロマトグラフィーを用いて定量した。その結果を表2に示す。
Figure 2006140098
表2より、実施例3及び4のプロトン交換膜は、比較例2のプロトン交換膜よりも1桁以上メタノールの透過量が少なくなった。これは、本発明のプロトン交換膜の方がメタノールによって膨潤しにくいためであると考えられる。
(参考実施例1及び2)
参考実施例1及び2として、細孔径を変えるために界面活性剤の種類を変更したメソポーラスシリカを作製し、実施例3と同様の方法でプロトン交換膜を作製した。
まず、TMOSと、pH2に調整した硫酸水溶液を混合して撹拌した。初期の段階では分離していたが、TMOSの加水分解反応の進行と共にメタノールが生成するため、数分で均一になった。その後、界面活性剤として、参考実施例1では塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(C1225N(CH33 +Cl-:C12TAC)、参考実施例2では塩化ドコシルトリメチルアンモニウム(C2245N(CH33 +Cl-:C22TAC)を加えた。所定時間(参考実施例1:5分間、参考実施例2:25分間)撹拌後、ガラスシャーレに薄く流し込み、50℃で一晩乾燥させた。乾燥した試料をシャーレから削り取り、600℃で4時間熱処理を行って残存する界面活性剤等を除去することでメソポーラスシリカを得た。なお、使用した原料の組成(molar ratio)は以下の通りである。
TMOS:H2SO4aq:Surfactant
=1:2:0.15
得られたメソポーラスシリカの構造を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、いずれも細孔が周期構造を形成していることが確認できた。ここで、参考実施例2のメソポーラスシリカの構造を透過型電子顕微鏡にて観察した結果を図1に示す。また、得られたメソポーラスシリカの細孔径分布を窒素吸着法により測定したところ、参考実施例1のメソポーラスシリカの細孔径の最頻値は1.2nm、参考実施例2のメソポーラスシリカの細孔径の最頻値は2.3nm、であった。
(参考実施例3)
参考実施例3として、実施例2と同様の方法で作製したメソポーラスシリカ(表面処理を行う前のもの)を用いて、実施例3と同様の手法でプロトン交換膜を作製した。
(評価)
参考実施例1〜3及び比較例2で作製したプロトン交換膜を用いて、メタノールの透過量を測定した。測定方法は、膜の一方に純水を配置し、他方に30体積%メタノール水溶液(参考実施例1〜3)または8体積%メタノール水溶液(比較例2)を配置し、これを4時間放置した後に純水側に透過してきたメタノールをガスクロマトグラフィーを用いて定量した。なお、8体積%メタノール水溶液は、パーフルオロスルホン酸系プロトン交換膜を用いたときのクロスオーバーの影響が少ないと考えられている濃度のものである。
参考実施例1〜3のプロトン交換膜のメタノール透過量と、そこに含まれるメソポーラスシリカの細孔径の最頻値との関係を図2に示した。また、比較例2のプロトン交換膜のメタノール透過量の値を併せて示した。
細孔径の最頻値が3nm以下となる細孔の周期構造を形成しているメソポーラスシリカを用いた参考実施例1及び2のプロトン交換膜のメタノール透過量は、8体積%メタノール水溶液を用いたときの比較例2のプロトン交換膜のメタノール透過性よりも低くなった。これより、30体積%という高濃度であっても、細孔径の最頻値が3nm以下のメソポーラスシリカには、十分なメタノール透過量の低減効果があることが分かった。
透過型電子顕微鏡でメソポーラスシリカを観察した結果の一例である。 メソポーラスシリカの細孔径とメタノール透過量の関係を示す図である。

Claims (11)

  1. セラミックス骨格と、該セラミックス骨格に化学結合したプロトン伝導性官能基とを有し、かつ細孔の周期構造を形成しているプロトン伝導性多孔質セラミックス、からなることを特徴とするプロトン伝導体。
  2. 前記細孔の周期構造が、ヘキサゴナル構造である請求項1に記載のプロトン伝導体。
  3. 前記細孔の周期構造における細孔径の最頻値が3nm以下である請求項1または2に記載のプロトン伝導体。
  4. 前記セラミックス骨格が、SiO2で形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  5. 前記プロトン伝導性官能基として、スルホ基を有する請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  6. 前記プロトン伝導性多孔質セラミックス中に前記プロトン伝導性官能基が均一に存在している請求項1〜5のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  7. 前記プロトン伝導性多孔質セラミックスが、
    前記プロトン伝導性官能基、前記プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及び前記プロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、の少なくとも1種を、セラミックス骨格の形成と同時に導入することで、形成されたものである請求項6に記載のプロトン伝導体。
  8. 請求項6に記載のプロトン伝導体の製造方法において、
    前記プロトン伝導性官能基、前記プロトン伝導性官能基に変換可能な官能基、及び前記プロトン伝導性官能基を導入可能な官能基、の少なくとも1種を、セラミックス骨格の形成と同時に導入することで、プロトン伝導性多孔質セラミックスを形成する工程を有することを特徴とするプロトン伝導体の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載のプロトン伝導体と、ポリマー成分とを含有するプロトン交換膜。
  10. 請求項9に記載のプロトン交換膜を電解質膜として用いた燃料電池。
  11. ダイレクトメタノール型燃料電池である請求項10に記載の燃料電池。
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