JP2006136330A - 無細胞タンパク質合成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下の方法により合成反応の効率を高める(1)生体抽出物を含む合成反応溶液(反応相)と基質およびエネルギー源供給溶液(供給相)を直接接触させ、反応相に生じた副生成物を供給相へ排除することによって反応持続時間を延長させる。(2)コムギ胚芽抽出物を含む反応溶液をプレインキュベーションした後に希釈することによって、合成反応の持続時間を延長させ反応効率を高める。(3)合成反応の停止後の反応液に、ゲルろ過カラムや半透膜を用いてタンパク質合成に必要なアミノ酸、ATP,GTPおよびクレアチリン酸等の基質およびエネルギー源を再供給すると同時に、反応で生じた副生成物を不連続的に排除して反応の効率を高める。
【選択図】なし
Description
さらに、限外ろ過膜法や透析膜法等を利用して手動で行う連続式無細胞タンパク質合成方法は、少数の遺伝子からのタンパク質合成には利用できるものの、多数の遺伝子からのタンパク質生産を高効率で行うことは困難であった。そこで、多数の遺伝子からのタンパク質生産を高効率で行うことを可能にするハイスループット多検体用全自動タンパク質合成システムの開発に向けて、従来の連続式無細胞タンパク質合成法の欠点が解決された新技術を開発することが急務となっている。
本発明の一態様は、生体抽出物を含む合成反応溶液(反応相)と基質およびエネルギー源供給溶液(供給相)とを直接的に接触させ、両相の接触界面を介した自由拡散により、供給相の基質およびエネルギー源分子を反応相の翻訳反応系へ連続的に供給すると共に、反応相で生じた副生成物を排除することにより、合成反応の持続時間を延長し、合成反応の効率を高めることを特徴とする拡散連続バッチ式による無細胞タンパク質合成方法である。
また本発明は、前記無細胞タンパク質合成方法において、生体抽出物としてコムギ胚芽抽出液を使用することを特徴とする無細胞タンパク質合成方法であり得る。
さらに本発明は、前記無細胞タンパク質合成方法において、生体抽出物として大腸菌抽出液を使用することを特徴とする無細胞タンパク質合成方法であり得る。
また、前記無細胞タンパク質合成方法において、反応相で生じた副生成物を供給相へ希釈排除することを特徴とする無細胞タンパク質合成方法も本発明の範囲に含まれる。
さらに、前記無細胞タンパク質合成方法において、反応相と供給相との間に形成される直接的な接触界面が垂直面状であることを特徴とする無細胞タンパク質合成方法も本発明の範囲に含まれる。
また本発明の一態様は、コムギ胚芽抽出液を含む無細胞タンパク質合成反応溶液をプレインキュべーション(前保温)の後に、基質およびエネルギー源供給溶液を加えてコムギ胚芽抽出液を含む無細胞タンパク質合成反応溶液を希釈することを特徴とする無細胞タンパク質合成方法である。
さらに、本発明の一態様は、バッチ式無細胞タンパク質合成方法において、合成反応停止後の反応溶液にゲルろ過カラムまたは半透膜を用いてタンパク質合成に必要なアミノ酸、ATP、GTPやクレアチンリン酸等の原料やエネルギー源を再供給すると同時に、反応で生じた副生成物を反応溶液から排除することにより、合成反応の効率を高めることを特徴とする無細胞タンパク質合成方法である。
「1.バッチ式無細胞タンパク質合成方法において、以下の工程を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成方法。
1)合成反応停止後の反応溶液に、アミノ酸、ATP、GTP及びクレアチンリン酸のいずれか1以上を再供給する工程
2)合成反応停止後の反応溶液に生じた副生成物を反応溶液から排除する工程
2.上記再供給する工程及び排除する工程を、ゲルろ過カラムまたは半透膜を用いて行うことを特徴とする前項1の無細胞タンパク質合成方法。
3.上記再供給する工程及び排除する工程の後に、タンパク質合成反応を再開する工程を行うことを特徴とする前項1又は2項の無細胞タンパク質合成方法。
4.再供給する工程、排除する工程及び合成反応を再開する工程を繰り返すことを特徴とする前項3項の無細胞タンパク質合成方法。」
コムギ胚芽抽出物は、既報〔Madin K.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000),97,559−564〕(WO00/68412号公報)に記載された方法に準じて得た。
また、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成反応においての翻訳鋳型となるmRNAの合成を行うために、遠藤が構築した汎用性のあるプラスミドpEU1(図6)(WO01/27260号公報)を利用した。目的のタンパク質をコードする遺伝子としてはクラゲのグリーン蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(gfp遺伝子)を用い、上記プラスミドに常法に従って挿入した。得られたプラスミドをHindIIIで切断して直鎖型とし、これを転写鋳型として常法によりmRNAを合成した。合成されたmRNAは、5′末端にCAPをもたず、非翻訳配列として5′末端にAMV−Ω配列を、3′末端にプラスミド由来の500塩基を有している。上記AMV−Ω配列とは、アルファルファモザイクウイルスmRNA(AMV−mRNA)の5′末端リーダー構造とタバコモザイクウイルスmRNA(TMV−mRNA)の5′末端Ω配列とを直列に結合した塩基配列をいう(WO01/27260号公報)。これら非翻訳配列の付加により、RNAの安定性が増強され、その結果このmRNAを用いると無細胞タンパク質合成効率が上昇する。また、5′末端にCAPを有するmRNAを用いても、下記同様の結果が得られた。
このタンパク質合成反応液を、口径7mm、5mm、および3mmの反応容器(それぞれ、マイクロタイタープレート、1.5mL容量の試験管、および0.2mL容量の試験管)に加え、その上に5倍容量の供給溶液〔30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、2.85mM ジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mM クレアチンリン酸、0.380mM スペルミジンおよび20種類のL型アミノ酸(0.3mM)〕を界面が乱れないように静かに重層し、静置条件下、26℃で3、6、9、および17時間インキュベーションしてタンパク質合成反応を行った。合成されたタンパク質量の測定は常法に従って放射性同位体のトリクロル酢酸不溶画分への取り込みを指標として行い、合成されたタンパク質の確認はオートラジオグラフィーにより常法通り行った〔Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230〕〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,559−564〕。
対照として、従来のバッチ式無細胞タンパク質合成方法を実施した。この方法において、mRNA、コムギ胚芽抽出物、およびこれらを含むタンパク質合成反応液は上記拡散連続バッチ式無細胞タンパク質合成方法に用いたものと同一であるが、供給溶液を添加しない点が異なる。
図2の(A)から明らかなように、従来のバッチ式(○――○)では反応開始後1時間でタンパク質合成反応は停止した。この結果は既報の結果〔Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230〕〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,559−564〕と完全に一致している。
一方、口径7mmの反応容器(界面の面積は0.385cm2)を用いた重層方式(大きい□――□)では反応開始17時間に至っても合成反応が継続し、その合成量は従来のバッチ法の9倍以上に達した。さらにサイズの異なる反応容器を用いてこの合成反応に及ぼす反応相と供給相間の界面面積の影響を調べた結果、反応開始9時間後における合成効率は、口径7mmの反応容器を用いたときと比較して、口径5mmの反応容器(界面の面積は0.196cm2)(中位の□――□)では91%、また口径3mmの反応容器(界面の面積は0.071cm2)(小さい□――□)では75%であった。
また図2の(B)に示したオートラジオグラフィーは、従来のバッチ法および拡散連続バッチ式で合成されたタンパク質の合成反応時間経過と合成産物の分子量および合成量の両方について、図2の(A)に示した14C−ロイシン取り込みの測定によるタンパク質合成量の検討で得られた実験結果を完全に支持するものであった。図2の(B)中で拡散連続バッチ式は重層方式と表示している。また、拡散連続バッチ式によるタンパク質合成結果は、口径7mmの反応容器における結果のみを示した。
以上の結果から<1>コムギ胚芽抽出液を用いる拡散連続バッチ式タンパク質合成方法が従来のバッチ法に比べて著しく合成効率の高いこと、<2>その合成効率は反応相と供給相間の界面面積が大きいほど優れていることが明らかとなった。また、この方法による合成収量の上昇が合成反応時間の持続によることも判明した。
また図2の(B)に示したオートラジオグラフィーは、図2の(A)に示した14C−ロイシン取り込みの測定によるタンパク質合成量の検討で得られた実験結果を完全に支持するものであった。
この希釈バッチ式無細胞タンパク質合成方法は、実施例1に示した拡散連続バッチ式よりは合成効率が劣るものの、タンパク質合成量は従来のバッチ法に比べて約3倍であり、有意に高い合成効率を示した。
また、上記希釈バッチ式無細胞タンパク質合成方法において、プレインキュべーション反応操作を省略した場合には、上記のような顕著な合成反応の持続現象は見られなかった。さらに、大腸菌抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系では、希釈バッチ式の効果は認められなかった。
以上、コムギ胚芽抽出物を用いる無細胞タンパク質合成系では、希釈バッチ式無細胞タンパク質合成方法も有効なタンパク質合成手段であることが実証された。
mRNAの転写鋳型となるプラスミドは木川らの報告しているT7−ファージプロモーター配列を有するpK7−RAS〔Kigawa,T.,et al.,(1995)J.Biomol.NMR,6,129−134〕を基に、RAS遺伝子をクラゲのGFP遺伝子に入れ替えたものを用いた。
さらに、大腸菌抽出液を用いて、転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成系(実施例6を参照)でまずmRNAを合成した後に、実施例1と同様に反応溶液上に供給溶液を重層して静置条件下で30℃にてタンパク質合成反応を行っても、上記同様の結果が得られた。
また、この方法においても、下記実施例6に示した転写・翻訳一体型タンパク質合成法で、mRNAを転写反応溶液で合成した後に、引き続きゲルろ過法や透析法等で該転写反応溶液の組成を翻訳反応に適した組成からなる溶液に変換し、得られた溶液を合成反応溶液として用いて上記同様にタンパク質合成を行ったときに同様の結果が得られた。
上記本発明に係る無細胞タンパク質合成方法は、従来行われていた膜を用いる連続式無細胞タンパク質合成法に見られる膜の材質強度の低さ、目詰まりによる膜機能の低下、および操作の煩雑性等の欠点を持たず、そのため従来法と比較して格段に高い効率でタンパク質合成を行うことができる。従って、上記本発明に係る技術は今後のゲノムプロジェクト完了と共にもたらされる膨大な数の遺伝子についての機能解析や構造解析の基盤となる遺伝子産物(タンパク質)生産の自動化に向けた基本要素技術となろう。特に、多検体用全自動無細胞タンパク質合成ロボット開発等、無細胞タンパク質合成システムの自動化に向けた要素技術として不可欠であると言える。
Claims (4)
- バッチ式無細胞タンパク質合成方法において、以下の工程を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成方法。
1)合成反応停止後の反応溶液に、アミノ酸、ATP、GTP及びクレアチンリン酸のいずれか1以上を再供給する工程
2)合成反応停止後の反応溶液に生じた副生成物を反応溶液から排除する工程 - 上記再供給する工程及び排除する工程を、ゲルろ過カラムまたは半透膜を用いて行うことを特徴とする請求の範囲第1項の無細胞タンパク質合成方法。
- 上記再供給する工程及び排除する工程の後に、タンパク質合成反応を再開する工程を行うことを特徴とする請求の範囲第1又は2項の無細胞タンパク質合成方法。
- 再供給する工程、排除する工程及び合成反応を再開する工程を繰り返すことを特徴とする請求の範囲第3項の無細胞タンパク質合成方法。
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